説明

地被植物養生用防草シート

【課題】地被植物によって土壌を覆うことによって土壌緑化するにあたり、植栽後に土壌を覆うまでに多少の時間がかかる地被植物であっても適用可能であり、雑草の繁殖を抑制でき、かつ地被植物が良好に植生できるシートを提供することを課題とする。
【解決手段】ポリ乳酸系重合体を含む熱可塑性重合体からなる多数の連続繊維が集積してなる不織布によって構成され、連続繊維同士は不織布の厚み方向に機械的に三次元交絡することなく単に堆積した状態で、連続繊維の一部が溶融または軟化することにより連続繊維同士が熱接着して形態保持し、不織布には多数の貫通孔が穿孔されていることを特徴とする地被植物養生用防草シートを要旨とするものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、平地や法面等の地表面を覆い、雑草の繁殖を抑えるために植生させるシダ類等の地被植物を養生するためのシートに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、公園、庭園、宅地、道路、法面等の緑化が盛んになっている。それに伴って植物栽培や美観保持のために、雑草を防ぐための努力がなされており、特に近年では雑草の繁殖を抑える手段として、人手による雑草除去や除草剤の使用により、雑草除去を行っている。しかしながら、人手による雑草除去は非常に大変な作業であり、除草剤の使用は土壌の汚染が危惧される。また、一方、雑草の繁殖を防ぐ方法として、防草シートが用いられている。例えば、ポリエチレンテレフタレート等からなる樹脂シート、金属製シート、紙製シート等が知られている。
【0003】
ポリエチレンテレフタレート等からなる樹脂シート、金属製シートは、土壌表面や土中で分解しないため、使用後に回収しなければならず手間がかかるばかりか、回収後、不要になったシートの廃棄処理が環境汚染の点から問題がある。一方、紙製シートでは、強力が低いため、施工時に破れ等が生じやすく、また、透水性に劣るため、雨水が溜まる等の問題がある。
【0004】
このような問題を解決する防草シートとして、本件出願人は、生分解性を有する熱可塑性脂肪族ポリエステルからなる不織布にて構成された防草シートを提案している(特許文献1、2)。このシートによれば、生分解性を有しているため回収の手間を要せず、使用時はシートが有する耐候性により生分解しにくいものになっている。
【0005】
また、最近では、防草シートを施工するのではなく、景観を考慮して地被植物を植生させることにより防草するという試みがなされている。地被植物の植栽方法として、セルロース繊維によって構成されるマルチシートを使用し、ヒメイワダレソウを植生、繁殖させて土壌を覆う方法が提案されている(特許文献3)。この方法では、ヒメイワダレソウを植栽後、3ヶ月程度経過すれば、ヒメイワダレソウが増殖して土壌を覆い、一方、ヒメイワダレソウが増殖している間にマルチシートは徐々に分解を開始し、半年程度でほぼ分解が完了するというものである。
【0006】
特許文献3記載の方法に用いるマルチシートは、ヒメイワダレソウのように増殖能力が高く、早く繁殖する植物に適するものであり、植栽後に土壌を覆うまでに時間がかかる地被植物に適用しようとすると、植物が土壌を覆うよりもマルチシートの分解が早く、雑草が繁殖してしまうことになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平11−229260号公報
【特許文献2】特開2005−229862号公報
【特許文献3】特開2009−50219号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、地被植物により土壌を覆うことで土壌緑化するにあたり、植栽後に土壌を覆うまでに多少の時間がかかる地被植物であっても適用可能であり、雑草の繁殖を抑制でき、かつ地被植物が良好に植生できるシートを提供することを課題とする。
【0009】
本発明者は、前記課題を達成するために、シートにおいて、防草の機能と緑化の機能とを同時に進行させるために鋭意検討を行なった。そして、防草効果を保持しながら、地被植物の根の活着を向上させることを検討した結果、本発明に到達した。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、ポリ乳酸系重合体を含む熱可塑性重合体からなる多数の連続繊維が集積してなる不織布によって構成され、連続繊維同士は不織布の厚み方向に機械的に三次元交絡することなく単に堆積した状態で、連続繊維の一部が溶融または軟化することにより熱接着して形態保持し、不織布には多数の貫通孔が穿孔されていることを特徴とする地被植物養生用防草シートを要旨とするものである。
【0011】
また、本発明は、スパンボンド法によって、溶融紡糸により得られたポリ乳酸系重合体を含む熱可塑性重合体からなる多数の連続繊維を集積させた不織ウェブに、連続繊維の一部が溶融または軟化する温度で熱処理を施し、連続繊維同士を熱接着により一体化させた後、穿孔針を用いて、多数の貫通孔を形成させることを特徴とする地被植物養生用防草シートの製造方法を要旨とするものである。
【0012】
以下、本発明について、詳細に説明する。
【0013】
本発明の地被植物養生用防草シートは、多数の連続繊維が集積してなる不織布によって構成される。連続繊維を用いる理由は、繊維端を有する短繊維であると、シート表面に飛来種子が着きやすく、シート自体が雑草繁殖のための育苗シートになる恐れがあるためである。連続繊維であると、繊維端がないため、シート表面が平滑となり飛来種子が着きにくい。本発明の防草シートを構成する連続繊維は、ポリ乳酸系重合体を含む熱可塑性重合体からなる。
【0014】
本発明に用いるポリ乳酸系重合体としては、ポリ−D−乳酸、ポリ−L−乳酸、D−乳酸とL−乳酸との共重合体(D、L−乳酸共重合体)が挙げられる。これらの異なるポリ乳酸系重合体同士をブレンドしたブレンド体でもよい。ポリ乳酸系重合体の融点は、150℃以上がよい。ポリ乳酸系重合体の融点が150℃以上であると、高い結晶性を有しているため、紡糸の際の冷却性が良好となり、スパンボンド法により良好に不織布を得ることができる。また、スパンボンド法による高速紡糸によってポリ乳酸系重合体の結晶配向が進み、得られる地被植物養生用防草シートの耐熱性、耐候性、機械的強力が優れたものとなる。D、L−乳酸共重合体を用いる場合は、融点が150℃以上となる共重合比のものを選択するとよい。すなわち、共重合比(モル比)が、L−乳酸あるいはD−乳酸のいずれかが95モル%以上100モル%未満のものを用いるとよい。共重合比が、前記範囲を外れると、共重合体の融点が150℃未満となり、または非晶性となる。
【0015】
ポリ乳酸系重合体のメルトフローレート(以下、MFRと略記する。)は、20g/10分〜100g/10分のものを用いると、スパンボンド法により良好に溶融紡糸ができる。ここで、MFRは、ASTM−D−1238に記載の方法に準じて、温度210℃、荷重20.2N(2160gf)で測定した値である。
【0016】
本発明の目的を損なわない範囲内で、連続繊維を構成する熱可塑性重合体には、上記したポリ乳酸系重合体以外の熱可塑性重合体を用いてもよい。例えば、ポリ乳酸系重合体に他の重合体をブレンドしたブレンド体を用いて連続繊維とてもよく、また、ポリ乳酸系重合体と他の重合体と複合して複合繊維としてもよい。
【0017】
連続繊維を構成する熱可塑性重合体には、各々必要に応じて、艶消し剤、結晶核剤等の各種添加剤を本発明の効果を損なわない範囲で添加してもよい。とりわけ、タルク、酸化チタン、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム等の結晶核剤を添加することにより、紡出・冷却工程での糸条間の融着(ブロッキング)を防止し、また、不織布の製造工程において、繊維の結晶配向化を向上させ、得られるシートの機械的強力、耐熱性、耐候性を向上させることができる。添加する結晶核剤の量は、0.1〜3質量%の範囲が有用である。
【0018】
連続繊維を構成する熱可塑性重合体には、顔料を含有させるとよい。すなわち、本発明の地被植物養生用防草シートを構成する連続繊維は、顔料を含有してなる原着繊維であることが好ましい。原着繊維は、顔料を予め練り込んだ重合体を溶融紡糸して得られる繊維であり、このような原着繊維を用いることにより、後加工による染色が不要となり、染色により繊維が熱劣化することなく、経時的な強力低下が少なく耐候性に優れたシートを得ることができる。なお、顔料の含有量は、繊維の全質量に対して、0.5〜2質量%であるとよい。顔料としては、カーボンブラック等の黒色顔料を用いることが好ましい。黒色顔料による原着繊維を用いたシートは、明度が低く遮光性が高くなるため、防草シート下に光を透過しにくくなるため、雑草の生育を効果的に妨げることができる。このような観点から、本発明の防草シートは、原着繊維から構成され、明度を表す指標であるL*値(JIS Z 8729)が40以下であることが好ましい。L*値は、100に近づくほど明度が高く白色になり、一方、0に近づくほど明度が低く黒色になることを示す。また、敷設する場所や周りの景観や美観等に応じて、上記した黒色顔料以外の他の顔料も添加し、色度を適宜選択して、茶、緑等の色彩にしてもよい。
【0019】
連続繊維の単糸繊度は、特に限定しないが、1デシテックス以上程度であればよい。単糸繊度が1デシテックス以上とすることにより、得られる防草シートにおいて、要求性能を満足しうる適度な機械的強力を有するものとなる。上限としては、スパンボンド製造工程においての紡糸糸条の冷却性や操業性を考慮して、11デシテックス程度がよい。このような理由から2.5〜5デシテックスが好ましい。
【0020】
本発明の地被植物養生用防草シートは、多数の連続繊維が集積してなる不織布によって構成されるが、連続繊維の一部が溶融または軟化することにより連続繊維同士が熱接着して不織布として形態保持している。ここで、熱接着の形態としては、構成繊維同士の接点が熱接着している形態、不織布が部分的に熱圧着された熱圧着部を有しており、その熱圧着部に存在する繊維が溶融または軟化して繊維同士を熱接着している形態が挙げられる。構成繊維同士がその接点で熱接着している形態は、不織ウェブに熱風等を吹き付けることにより得ることができる。部分的に熱圧着された熱圧着部を有している形態は、不織ウェブを熱エンボス装置に通すこと(熱エンボス加工)により得ることができる。本発明においては、機械的強力がより優れることから、熱エンボス加工を施すことにより熱圧着部を有する形態の不織布であることが好ましい。なお、本発明における不織布は、構成繊維同士が熱接着しているものであるが、繊維同士が熱接着により、繊維を構成している熱可塑性重合体が溶融して、不織布表面が全面的にフィルム状になったものではなく、繊維と繊維との間には隙間が存在する。したがって、防草シートとしては、厚み方向に適度な透水性を保持しており、防草シート上からの降雨や散水による水分は、防草シートの表面に溜まることなく、速やかに防草シートの厚み方向を上から下にシート下の土壌側へ移行し、土壌に水分が浸透するため、防草シート下の土壌に根を張っている地被植物を良好に生育させることができる。したがって、防草シート上から地被植物に充分な水分を補給することができ、さらには液肥の散布も可能である。防草シートが有する透水性をより向上させるために、防草シートには、親水性油剤が付与されていることが好ましい。
【0021】
本発明における不織布は、構成繊維である連続繊維同士が不織布の厚み方向に機械的に三次元交絡することなく単に堆積された状態で熱接着されている。すなわち、不織布を構成している繊維の繊維軸方向が、厚み方向を向いているのではなく、二次元方向(平面方向)を向いて存在している。厚み方向に機械的に三次元交絡しているとは、多数の連続繊維が堆積してなるウェブ(繊維軸方向が二次元方向を向いて存在しているウェブ)に、機械的に交絡処理を施して、繊維軸方向が厚み方向に向くようにして、平面方向だけでなく、三次元方向にも繊維同士が交絡しているものをいう。機械的な交絡処理手段としては、ニードルパンチ処理が挙げられる。また、高圧液体流を作用させるスパンレース処理が挙げられる。機械的に交絡処理が施されて繊維同士が三次元的に交絡してなる不織布は、繊維同士の交絡によって、不織布表面では、繊維がループ状に不織布表面よりも浮き上がって存在し、不織布内部では繊維間の空隙が大きい。このような繊維同士が三次元的に交絡してなる不織布を防草シートとして用いた場合、飛来種子が、不織布表面のループ状の繊維に絡まりやすく、また、不織布表面に付着した飛来種子の根が繊維間の空隙に入りやすく、繊維同士が三次元的に交絡してなる不織布が、飛来種子を育苗するための土壌の代わりとなって機能することになってしまう。したがって、本発明における不織布として、構成繊維同士が機械的に三次元交絡したものは用いない。
【0022】
本発明における不織布には、多数の貫通孔が穿孔されている。穿孔による多数の貫通孔は、地被植物の根が活着しやすくするためのものであり、特に地被植物が匍匐茎により増殖する場合に防草シートの厚み方向を根が貫通して土壌に活着しやすくするためのものである。貫通孔がないと、匍匐茎からの根が防草シート上に浮いた状態で存在することとなり、土壌に根付かず増殖できない。この穿孔による多数の貫通孔は、30個/cm2以上有しているとよい。貫通孔は、ニードルにより穿孔すればよく、ニードルの直径(太さ)は、300〜1000μm程度がよい。例えば、不織布化の手段に一般に用いられるニードルパンチ機を使用し、ブレード部にバーブを有しない針をセットし、これに通して穿孔することができる。また、ニードルパンチ機に通す不織布が、繊維同士が熱接着により強固に形態保持しているものであれば、ニードルパンチ機にセットする針としてバーブを有する針であってもよい。繊維同士が強固に熱接着されていることから繊維の自由度がないため、バーブに繊維を引っかけて繊維同士を三次元的に交絡させることなく、穿孔することができる。穿孔の際には、繊維同士が熱接着してなる箇所や熱エンボス装置により形成された熱圧着部に針が貫通すると、明瞭な貫通孔を形成することができる。ニードルパンチ機にセットして穿孔に用いる針は30〜40番手程度の太さのものがよい。
【0023】
本発明の地被植物植生用防草シートの目付は、敷設する場所や使用、植物等に応じて適宜選択すればよいが、50〜300g/m2程度であることが好ましい。50g/m2以上とすることにより、防草シートとして要求される機械的強力を保持することができる。300g/m2を超えると、防草シートが生分解するまでに時間がかかりすぎ、伸びた茎からの根が活着することを要する匍匐性の地被植物の根が活着し難くなる。またコスト的にも不利となり、作業性にも劣る傾向にある。このような理由から、70〜200g/m2が好ましく、80〜150g/m2がより好ましい。
【0024】
本発明の防草シートにおいては、縦方向(MD)および横方向(CD)の引張強力がいずれも30N/5cm以上であること、また、破断伸度が10%以上であることが好ましい。引張強力が30N/5cm未満あるいは、破断伸度が10%未満であると、防草シートとして実用的な機械的強力を有しているとはいい難く、施工時に破れやすく作業性に劣る傾向となる。引張強力および破断伸度は、JIS−L−1906に準じて、以下の方法により測定した値をいう。すなわち、長さ20cm、幅5cmの試料片10点を作成し、各試料について、定速伸張型引張試験機(オリエンテック社製テンシロンUTM−4−1−100)を用い、つかみ間隔10cm、引張速度20cm/分で伸張し、得られた切断時荷重値(N/5cm幅)の平均値を引張強力(N/5cm)とする。破断伸度は、上記により得られた切断時の伸度の平均値を破断伸度とする。なお、破断伸度においては、防草シートの縦方向と横方向とを測定し、得られた値のすべての平均値を破断伸度(%)とする。
【0025】
本発明の地被植物養生用防草シートは、以下の方法により好適に得られる。まず、連続繊維を構成するポリ乳酸系重合体を含む熱可塑性重合体を用意し、通常の溶融紡糸装置に供給してスパンボンド法により溶融紡糸を行い、この紡出糸条を牽引細化した後に、移動式捕集面上に公知の開繊器にて開繊させながら、多数の連続繊維を集積させて不織ウェブを得る。スパンボンド法は溶融紡糸工程から冷却・延伸工程、開繊工程、堆積工程までが直結していることから、生産効率に優れており、連続繊維からなる不織ウェブを容易に得ることができる。溶融紡糸した糸条は、3000〜6000m/分の高速気流で牽引細化するとよい。
【0026】
多数の連続繊維が集積した不織ウェブには、熱処理を施して、連続繊維の一部を溶融または軟化させて、繊維同士を熱接着により一体化させる。熱処理方法は、上記したように熱風乾燥機に通す方法、熱エンボス装置に通す方法が挙げられる。熱風乾燥機に通す場合は、熱風乾燥機の設定温度は、処理速度にもよるが、連続繊維を構成する熱可塑性重合体のうち、溶融または軟化させる熱可塑性重合体の融点と同程度の温度とする。熱エンボス装置に通す場合の熱エンボス装置を構成する両ロールの設定温度は、処理速度にもよるが、連続繊維を構成する熱可塑性重合体のうち、溶融または軟化させる熱可塑性重合体の融点よりも40℃低い温度と同程度の温度とする。具体的には、融点170℃のポリ乳酸系重合体によって構成される連続繊維によって構成される不織ウェブを熱エンボス装置に通す場合は、両ロールの設定温度を125℃〜134℃の範囲とする。熱エンボス装置における線圧は、294〜686N/cm程度とする。
【0027】
次いで、熱処理を施して得られた不織布には、穿孔針により、多数の貫通孔を設けることで、本発明の地被植物養生用防草シートを得ることができる。上記したようにニードルパンチ機を用い、刺針密度30回/cm2以上の条件で貫通孔を形成させるとよい。刺針密度の上限は、100回/cm2程度とする。
【0028】
本発明の地被植物養生用防草シートは、以下のように使用する。まず、地被植物を植栽する土壌全体に本発明の防草シートを敷設する。なお、敷設の際には、貫通孔を穿孔した際に、穿孔針を設置した側を上面(土壌面に接する面とは、反対の面)として敷設するとよい。防草シートが有する貫通孔の穿孔方向と植物の根が入り込む方向とを同じ向きとすることで、より植物の根が入り込みやすくなるためである。次いで、敷設した本発明の防草シートに切り込みあるいは孔を設け、この切り込み部分あるいは孔の部分に地被植物の苗を植えて植栽する。植物の種類によって異なるが、1年足らず、あるいは数ヶ月〜半年程度で防草シート全体に亘って植物が繁殖する。繁殖にあたっては、植物の根が防草シートの貫通孔を通じて土壌に根付き広がっていく。防草シート全体に植物が繁殖するまでの間は、防草シートの存在により、雑草の繁殖を防ぐことができる。また、地被植物が土壌全体に根付き繁殖した後は、本発明の防草シートが生分解性を有するポリ乳酸系重合体によって構成されるため、時間をかけて徐々に生分解されるため、そのまま放置しておくことができる。
【発明の効果】
【0029】
本発明の地被植物養生用防草シートは、ポリ乳酸系重合体を含む連続繊維からなる不織布によって構成される。そして、連続繊維同士は、三次元交絡することなく単に堆積した状態で、連続繊維の一部が溶融または軟化することにより熱繊維着して形態保持している。したがって、シート表面には、飛来種子が付着しにくく、良好に防草効果を奏することができる。そして、本発明の地被植物養生用防草シートには、多数の貫通孔が穿孔されているため、植えつけた地被植物の苗が増殖する際に、貫通孔を通じて根が土壌に活着することができ、地被植物を良好に植生させることができる。したがって、本発明の地被植物養生用防草シートによれば、地被植物を良好に植生させる一方で、地被植物が土壌を覆い尽くすまでの間は、防草の機能を果たすことができる。また、本発明のシート自体は、生分解性を有するため、そのまま放置しておくことができる。
【実施例】
【0030】
以下、実施例により本発明を具体的に説明する。なお、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。下記の実施例および比較例における各物性値等は、以下により求めた。
(1)重合体の融点(℃);パーキンエルマ社製示差走査型熱量計DSC−7型を用い、試料質量を5mg、昇温速度を10℃/分として測定して得られた融解吸熱曲線の吸熱ピークの極値を与える温度を融点Tm(℃)とした。
(2)目付(g/m2);不織布から縦10cm×横10cmの試料片各10点を作製し、標準状態における各試料片の質量(g)を秤量し、得られた値の平均値を単位面積当たりに換算して、不織布の目付(g/m2)とした。
(3)L*値:色彩色差計(データプロセッサ DP−300、測定ヘッド CR−310:ミノルタ社製)を用い、測定箇所の試料の目付が300g/m2以上となるように、シートを折りたたみ、設置して測定した。測定の際は、測定個所を変えて4個所測定し、得られた値の平均値をL*値とした。
【0031】
実施例1
ポリ乳酸系重合体として、融点168℃、MFR70g/10分のD、L−乳酸共重合体(共重合比 L−乳酸/D−乳酸=98.6/1.4(モル%))を主成分とし、マスターバッチとして、上記重合体80質量部にタルク20質量部を含有させたマスターバッチ(M1)と、融点155℃、MFR60g/10分のD、L−乳酸共重合体(共重合比 L−乳酸/D−乳酸=95.5/4.5(モル%)のポリ乳酸系重合体(76.7質量部)に下記(1)〜(3)の顔料を含有させたマスターバッチ(M2)とを用意した。
(1)イエロー系顔料 14.7質量部
(2)レッド系顔料 4.8質量部
(3)カーボンブラック 3.8質量部
【0032】
溶融紡糸に際しては、主成分であるポリ乳酸系重合体中の顔料の含量合計が1.7質量%となるように配合したものを使用した。この重合体をエクストルーダー型押し出し機を用いて紡糸温度210℃で溶融し、単孔吐出量1.39g/分の条件下で溶融紡糸した。
紡出糸条を公知の冷却装置にて冷却した後、引き続いて紡糸口金の下方に設けたエア−サッカーにて高速で牽引細化し、公知の開繊器具を用いて開繊させ、移動するスクリーンコンベア上に捕集堆積させ不織ウエブを得た。なお、開繊性は良好であり、得られた連続繊維の単糸繊度は2.8デシテックスであった。
【0033】
次いで、得られた不織ウエブをエンボスロールとフラットロールとからなるエンボス装置(両ロールの表面温度は130℃、線圧343N/cm)に通して部分的に熱圧着し、次いで、親水性油剤(DIC社製 品番「UN−12」)を繊維質量に対して固形分質量で0.2質量%付与して目付110g/m2の不織布を得た。
【0034】
引き続き、該不織布にニードルパンチ加工(40番手の針、針深12.5mm、刺針密度64回/cm2)を施し、貫通孔が穿孔された本発明の地被植物養生用防草シートを得た。得られたシートの強力はMD/CD=50/70(N/5cm幅)、伸度は7%、L*値は35であった。ルーペで観察したところ、穿孔による貫通孔が約40個/cm2有していた。
【0035】
実施例2
ニードルパンチ加工の刺針密度を90回/cm2としたこと以外は、実施例1と同様にして地被植物養生用防草シートを得た。得られたシートの強力はMD/CD=50/70(N/5cm幅)、伸度は15%、L*値は35であった。ルーペで観察したところ、穿孔による貫通孔が約65個/cm2有していた。
【0036】
比較例1
実施例1において、ニードルパンチ加工を施さない不織布を比較例1のシートとした。得られたシートの強力はMD/CD=180/90(N/5cm幅)、伸度は15%、L*値は34であった。
【0037】
比較例2
ポリ乳酸系不織布に代わり、コットンを水流交絡にて一体化した不織布(目付100g/m2)を比較例2のシートとした。得られたシートの強力はMD/CD=140/40(N/5cm幅)、伸度は80%、L*値は76であった。
【0038】
実施例1〜2および比較例1〜2のシートを土壌に敷設し、1m間隔に切り込みを入れヒメイワダレソウの苗を定植し、防草効果と地被植物養生効果を確認した。また、別の場所にも同様に土壌にシートを敷設し、同様に切り込みを入れてムカデ芝の苗を定植し、防草効果と地被植物養生効果を確認した。なお、評価については、以下のとおりである。
<防草効果>
定植から3ヶ月経過後、シートを敷設した場所におけるシートによる防草効果を下記基準により目視評価した。
○:雑草の繁殖はなく、十分な防草効果があった。
×:雑草が繁殖している。
<地被植物養生効果>
定植から3ヶ月経過後、植物の養生状況を観察し、下記基準により評価した。
○:伸びた茎からの根が十分活着し、良好な養生状態であった。
×:伸びた茎からの根が全く活着していなかった。
【0039】
実施例1〜2は防草効果、地被植物養生効果共に評価は○であった。一方、比較例1は防草効果については評価○であったが、地被植物養生効果は評価×であり、比較例2は防草効果:×、地被植物養生効果:○であった。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリ乳酸系重合体を含む熱可塑性重合体からなる多数の連続繊維が集積してなる不織布によって構成され、連続繊維同士は不織布の厚み方向に機械的に三次元交絡することなく単に堆積した状態で、連続繊維の一部が溶融または軟化することにより熱接着して形態保持し、不織布には多数の貫通孔が穿孔されていることを特徴とする地被植物養生用防草シート。
【請求項2】
30個/cm2以上の貫通孔が穿孔されていることを特徴とする請求項1記載の地被植物養生用防草シート。
【請求項3】
連続繊維が原着繊維であり、L*値が40以下であることを特徴とする請求項1または2記載の地被植物養生用防草シート。
【請求項4】
目付が50〜300g/m2であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項記載の地被植物養生用防草シート。
【請求項5】
親水性油剤が付与されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項記載の地被植物養生用防草シート。
【請求項6】
スパンボンド法によって、溶融紡糸により得られたポリ乳酸系重合体を含む熱可塑性重合体からなる多数の連続繊維を集積させた不織ウェブに、連続繊維の一部が溶融または軟化する温度で熱処理を施し、連続繊維同士を熱接着により一体化させた後、穿孔針を用いて、多数の貫通孔を形成させることを特徴とする地被植物養生用防草シートの製造方法。


【公開番号】特開2011−92067(P2011−92067A)
【公開日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−248145(P2009−248145)
【出願日】平成21年10月28日(2009.10.28)
【出願人】(000004503)ユニチカ株式会社 (1,214)
【Fターム(参考)】