説明

垂直液晶配向剤

【課題】残像・焼き付き特性に優れた垂直液晶配向剤を提供すること。
【解決手段】アミック酸繰返し単位35モル%以下およびイミド繰返し単位75モル%以上からなり、これらの繰返し単位のテトラカルボン酸二無水物に由来する単位として2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物または1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−5(テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラル)−ナフト[1,2−c]フラン−1,3−ジオン等に由来する単位を50モル%以上含有しまたジアミンに由来する単位として炭素数10〜20のアルキル基等の置換基を有するジアミノベンゼンまたは炭素数4〜40の脂環式骨格を有するビス(アミノベンゼン)に由来する単位を8モル%以上含有するイミド化重合体からなる垂直配向型液晶配向剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は垂直液晶配向剤に関する。さらに詳しくは、残像特性に優れた垂直液晶配向剤に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、液晶表示素子としては、透明導電膜が設けられている基板表面にポリアミック酸、ポリイミドなどからなる液晶配向膜を形成して液晶表示素子用基板とし、その2枚を対向配置してその間隙内に正の誘電異方性を有するネマチック型液晶の層を形成してサンドイッチ構造のセルとし、液晶分子の長軸が一方の基板から他方の基板に向かって連続的に90度捻れるようにした、いわゆるTN型(Twisted Nematic)液晶セルを有するTN型液晶表示素子が知られている。
また、TN型液晶表示素子に比してコントラストが高くて、その視角依存性の少ないSTN(Super Twisted Nematic)型液晶表示素子や、垂直配向型液晶表示素子が開発されている。このSTN型液晶表示素子は、ネマチック型液晶に光学活性物質であるカイラル剤をブレンドしたものを液晶として用い、液晶分子の長軸が基板間で180度以上にわたって連続的に捻れる状態となることにより生じる複屈折効果を利用するものである。
【0003】
また近年では、新規な液晶表示素子の開発も盛んであり、その中の一つとして、液晶を駆動するための2つの電極を片側の基板に櫛歯状に配置し、基板面に平行な電界を発生させ、液晶分子をコントロールする横電界型液晶表示素子が提案されている(特許文献1参照)。この素子は一般的にインプレーンスイッチング型(IPS型)と呼ばれ、広視野角特性に優れることで知られている。また最近では光学補償フィルムを使用し、広視野角特性をさらに向上させることで、階調反転や色調変化のないブラウン管にも匹敵する広視野角を得られることが大きな特徴となっている。
上記とは別の液晶表示素子として、負の誘電異方性を有する液晶分子を基板に垂直に配向させてなるMVA(Multi domain Vertical Alignment)方式やPVA(Patterned Vertical Alignment)方式と呼ばれる垂直配向型液晶表示素子が提案されている。これらのMVA方式やPVA方式の液晶表示素子は、視野角・コントラストが優れるのみでなく、液晶配向膜の形成においてラビング処理を行わなくて良いなど、製造工程の面でも優れている。
【0004】
現在、垂直配向型液晶配向膜として、特許文献2や特許文献3に記載されているように、垂直配向性に優れ、残像消去時間が短い垂直配向型液晶配向剤が要求されている。しかしながら近年の液晶表示素子の普及率拡大に伴い、液晶配向膜により達成しうる表示品位向上や生産性向上への要求はよりレベルの高いものとなりつつあり、従来の技術では解決が困難になってきている。特に残像もしくは焼き付きといった表示品位を大幅に低下させてしまう現象はこれまで、駆動により液晶配向膜内に残留してしまう電圧(残留DC)を指標としていた。しかしながら、近年の垂直配向膜においては、残留DCが小さいことが、必ずしも良好な残像特性や焼き付き特性を発現するわけではないことが見出されてきている。本発明の目的は、残像・焼き付き特性に関する新たな評価手法を見出すと供に、上記残像・焼き付き特性に優れた液晶配向膜を与える液晶配向剤を提供することである。
【特許文献1】特開平7−261181号公報
【特許文献2】特開2003−295194号公報
【特許文献3】特開2004−94179号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、残像・焼き付き特性に優れた垂直液晶配向剤を提供することにある。
本発明のさらに他の目的および利点は、以下の説明から明らかになろう。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によれば、本発明の上記目的および利点は、下記式(I−1)で表されるアミック酸繰返し単位および下記式(I−2)で表されるイミド繰返し単位からなり、上記式(I−1)のPおよび(I−2)のPとして下記式(II−1)〜(II−2)のそれぞれで表される四価の有機基のうち少なくとも一方を50%以上含有し、かつ上記式(I−1)のQおよび(I−2)のQとして下記式(III−1)〜(III−2)のそれぞれで表される二価の有機基を少なくとも8%以上含有し、そしてこれらの繰返し単位の合計に対し該イミド繰返し単位が75モル%以上を占めるイミド化重合体を含有することを特徴とする垂直配向型液晶配向剤によって達成される。
【0007】
【化1】

【0008】
(ここでPはテトラカルボン酸を構成する4価の有機基を示し、かつQはジアミンを構成する2価の有機基を示す。)
【0009】
【化2】

【0010】
(ここでPはテトラカルボン酸を構成する4価の有機基を示し、かつQはジアミンを構成する2価の有機基を示す。)
【0011】
【化3】

【0012】
(ここで、Rは、相互独立に水素原子または1価の有機基を示す。)
【0013】
【化4】

【0014】
(上式中、Xは、単結合、−O−、−CO−、−COO−、−OCO−、−NHCO−、−CONH−、−S−、メチレン基、炭素数2〜6のアルキレン基およびフェニレン基であり、Rは、炭素数10〜20のアルキル基、炭素数4〜40の脂環式骨格を有する1価の有機基または炭素数6〜20のフッ素原子を有する1価の有機基であり、Rは、
炭素数4〜40の脂環式骨格を有する2価の有機基である。)
【発明の効果】
【0015】
本発明の液晶配向剤により形成される垂直液晶配向膜は、垂直配向性に優れ、かつ液晶表示素子の表示品位を極めて低下させる残像を発生しにくい表示素子を与える好適な液晶配向膜が得られる。
本発明の液晶表示素子は、種々の装置に有効に使用することができ、例えば、卓上計算機、腕時計、置時計、携帯電話、計数表示板、ワードプロセッサ、パーソナルコンピュータ、液晶テレビなどの表示装置として好適に用いることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明について詳細に説明する。本発明の垂直液晶配向剤(以下、「本発明の液晶配向剤」ともいう)に用いられるイミド化重合体は、テトラカルボン酸二無水物とジアミン化合物とを有機溶剤中で反応させて得られるポリアミック酸重合体のアミック酸部分を脱水環化することで得られる。このとき、上記式(I−1)および(I−2)におけるPおよびPで表される4価の有機基であるテトラカルボン酸二無水物として、前記式(II−1)もしくは(II−2)で示される骨格を有するテトラカルボン酸二無水物を50%以上含有し、かつ上記式(I−1)および(I−2)におけるQおよびQで表される2価の有機基であるジアミン化合物として、前記式(III−1)〜(III−2)で示される骨格を有するジアミンを8%以上含有してなる。以下、本発明に用いることのできるポリアミック酸、ポリイミドの製法について述べる。
【0017】
[テトラカルボン酸二無水物]
上記イミド化重合体に用いることのできるテトラカルボン酸二無水物としては、例えば、ブタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、1,2−ジメチル−1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、1,2−ジエチル−1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、1,3−ジメチル−1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、1,3−ジエチル−1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、1,3−ジクロロ−1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−テトラメチル−1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ジシクロヘキシルテトラカルボン酸二無水物、2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物、3,5,6−トリカルボキシノルボルナン−2−酢酸二無水物、2,3,4,5−テトラヒドロフランテトラカルボン酸二無水物、1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−5(テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)−ナフト[1,2−c]−フラン−1,3−ジオン、1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−5−メチル−5(テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)−ナフト[1,2−c]−フラン−1,3−ジオン、1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−5−エチル−5(テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)−ナフト[1,2−c]−フラン−1,3−ジオン、1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−7−メチル−5(テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)−ナフト[1,2−c]−フラン−1,3−ジオン、1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−7−エチル−5(テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)−ナフト[1,2−c]−フラン−1,3−ジオン、1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−8−メチル−5(テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)−ナフト[1,2−c]−フラン−1,3−ジオン、1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−8−エチル−5(テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)−ナフト[1,2−c]−フラン−1,3−ジオン、1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−5,8−ジメチル−5(テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)−ナフト[1,2−c]−フラン−1,3−ジオン、5−(2,5−ジオキソテトラヒドロフラル)−3−メチル−3−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸二無水物、ビシクロ[2,2,2]−オクト−7−エン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物、下記式(1)および(2)で表される化合物などの脂肪族および脂環式テトラカルボン酸二無水物;
【0018】
【化5】

【0019】
(式中、RおよびRは、芳香環を有する2価の有機基を示し、RおよびRは、水素原子またはアルキル基を示し、複数存在するRおよびRは、それぞれ同一でも異なっていてもよい。)
【0020】
ピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ジメチルジフェニルシランテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−テトラフェニルシランテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−フランテトラカルボン酸二無水物、4,4’−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルスルフィド二無水物、4,4’−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルスルホン二無水物、4,4’−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルプロパン二無水物、3,3’,4,4’−パーフルオロイソプロピリデンジフタル酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、ビス(フタル酸)フェニルホスフィンオキサイド二無水物、p−フェニレン−ビス(トリフェニルフタル酸)二無水物、m−フェニレン−ビス(トリフェニルフタル酸)二無水物、ビス(トリフェニルフタル酸)−4,4’−ジフェニルエーテル二無水物、ビス(トリフェニルフタル酸)−4,4’−ジフェニルメタン二無水物、エチレングリコール−ビス(アンヒドロトリメリテート)、プロピレングリコール−ビス(アンヒドロトリメリテート)、1,4−ブタンジオール−ビス(アンヒドロトリメリテート)、1,6−ヘキサンジオール−ビス(アンヒドロトリメリテート)、1,8−オクタンジオール−ビス(アンヒドロトリメリテート)、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン−ビス(アンヒドロトリメリテート)、下記式(3)〜(6)で表される化合物などの芳香族テトラカルボン酸二無水物を挙げることができる。これらは1種単独でまたは2種以上組み合わせて用いられる。
【0021】
【化6】

【0022】
これらのうち、2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物、1,2,3,4
−シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物、1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−
8−メチル−5(テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)−ナフト[1,2−c]−フラン−1,3−ジオン、1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−8−エチル−5(テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)−ナフト[1,2−c]−フラン−1,
3−ジオン(以下「2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物等」という。)、から選ばれる少なくとも一種のテトラカルボン酸二無水物を50%以上含有することが好ましく、特性向上の観点から70%以上がより好ましく、80%以上がさらに好ましい。また、その他のテトラカルボン酸二無水物としては、本発明の液晶配向剤の効果を十分に得る上で、2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物等以外の脂環系のテトラカルボン酸二無水物を用いることが好ましい。
【0023】
[ジアミン化合物]
上記式(I−1)および(I−2)で表される重合体におけるQおよびQは、それぞれ上記式(III−1)および(III−2)で表されるジアミンの残基に相当する。本発明によれば、上記式(III−1)および(III−2)で表されるジアミンを全重合体中に含有されるジアミンに対して8%以上含有し、より好ましくは10%以上含有する。上記式(III−1)において、Rで表される炭素数10〜20のアルキル基としては、例えばn−デシル基、n−ドデシル基、n−ペンタデシル基、n−ヘキサデシル基、n−オクタデシル基、n−エイコシル基などが挙げられる。また、炭素数4〜40の脂環式骨格を有する1価の有機基としては、例えばシクロブタン、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロデカンなどのシクロアルカン由来の脂環式骨格;ノルボルネン、アダマンタンなどの有橋脂環式骨格;コレステロール、コレスタノールなどのステロイド骨格、を有する一価の有機基などが挙げられる。上記脂環式骨格を有する一価の有機基は、ハロゲン原子、好ましくはフッ素原子で置換された基であっても良い。また、炭素数6〜20のフッ素原子を有する1価の有機基としては、例えばn−ヘキシル基、n−オクチル基、n−デシル基などの炭素数6〜20の直鎖状アルキル基;シクロヘキシル基、シクロオクチル基などの炭素数6〜20の脂環式炭化水素基;フェニル基、ビフェニル基などの炭素数6〜20の芳香族炭化水素基などの有機基における水素原子の一部または全部を、フッ素原子またはフルオロアルキル基で置換した基が挙げられる。
【0024】
次に、上記式(III−2)において、Rで表される炭素数4〜40の脂環式骨格を有する2価の有機基としては、例えばシクロブタン、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロデカンなどのシクロアルカン由来の脂環式骨格;ノルボルネン、アダマンタンなどの有橋脂環式骨格;コレステロール、コレスタノールなどのステロイド骨格、を有する二価の有機基などが挙げられる。上記脂環式骨格を有する二価の有機基は、ハロゲン原子、好ましくはフッ素原子で置換された基であっても良い。
【0025】
また上記イミド化重合体の合成において、本発明の効果を損なわない程度に、他のジアミン化合物を併用することができる。他のジアミン化合物としては、例えばp−フェニレンジアミン、2−メチル−1,4−フェニレンジアミン、2−エチル−1,4−フェニレンジアミン、2,5−ジメチル−1,4−フェニレンジアミン、2,5−ジエチル−1,4−フェニレンジアミン、2,3,5,6−テトラメチル−1,4−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルエタン、4,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、2,2’−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル、2,2’−ジ(トリフルオロメチル)−4,4’−ジアミノビフェニル、2,2’−ジエチル−4,4’−ジアミノビフェニル、3,3’−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル、3,3’−ジ(トリフルオロメチル)−4,4’−ジアミノビフェニル、3,3’−ジエチル−4,4’−ジアミノビフェニル、4,4’−ジアミノベンズアニリド、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、1,5−ジアミノナフタレン、2,2’−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル、5−アミノ−1−(4’−アミノフェニル)−1,3,3−トリメチルインダン、6−アミノ−1−(4’−アミノフェニル)−1,3,3−トリメチルインダン、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,3’−ジアミノベンゾフェノン、3,4’−ジアミノベンゾフェノン、4,4’−ジアミノベンゾフェノン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(4−アミノフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、9,9−ビス(4−アミノフェニル)−10−ヒドロアントラセン、2,7−ジアミノフルオレン、9,9−ビス(4−アミノフェニル)フルオレン、4,4’−メチレン−ビス(2−クロロアニリン)、2,2’,5,5’−テトラクロロ−4,4’−ジアミノビフェニル、2,2’−ジクロロ−4,4’−ジアミノ−5,5’−ジメトキシビフェニル、3,3’−ジメトキシ−4,4’−ジアミノビフェニル、1,4,4’−(p−フェニレンイソプロピリデン)ビスアニリン、4,4’−(m−フェニレンイソプロピリデン)ビスアニリン、2,2’−ビス[4−(4−アミノ−2−トリフルオロメチルフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、4,4’−ジアミノ−2,2’−ビス(トリフルオロメチル)ビフェニル、4,4’−ビス[(4−アミノ−2−トリフルオロメチル)フェノキシ]−オクタフルオロビフェニル、4−(4−n−ヘプチルシクロヘキシル)フェノキシ−2,4−ジアミノベンゼンなどの芳香族ジアミン;
1,1−メタキシリレンジアミン、1,3−プロパンジアミン、テトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ヘプタメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、4,4−ジアミノヘプタメチレンジアミン、1,4−ジアミノシクロヘキサン、イソホロンジアミン、テトラヒドロジシクロペンタジエニレンジアミン、ヘキサヒドロ−4,7−メタノインダニレンジメチレンジアミン、1,3−ジ(アミノメチル)シクロヘキサン、トリシクロ[6.2.1.02,7]−ウンデシレンジメチルジアミン、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルアミン)などの脂肪族および脂環式ジアミン;
2,3−ジアミノピリジン、2,6−ジアミノピリジン、3,4−ジアミノピリジン、2,4−ジアミノピリミジン、5,6−ジアミノ−2,3−ジシアノピラジン、5,6−ジアミノ−2,4−ジヒドロキシピリミジン、2,4−ジアミノ−6−ジメチルアミノ−1,3,5−トリアジン、1,4−ビス(3−アミノプロピル)ピペラジン、2,4−ジアミノ−6−イソプロポキシ−1,3,5−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−メトキシ−1,3,5−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−フェニル−1,3,5−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−メチル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−1,3,5−トリアジン、4,6−ジアミノ−2−ビニル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−5−フェニルチアゾール、2,6−ジアミノプリン、5,6−ジアミノ−1,3−ジメチルウラシル、3,5−ジアミノ−1,2,4−トリアゾール、6,9−ジアミノ−2−エトキシアクリジンラクテート、3,8−ジアミノ−6−フェニルフェナントリジン、1,4−ジアミノピペラジン、3,6−ジアミノアクリジン、ビス(4−アミノフェニル)フェニルアミンなどの、分子内に2つの1級アミノ基および該1級アミノ基以外の窒素原子を有するジアミン;
下記式(7)で表されるジアミノオルガノシロキサン;
【0026】
【化7】

【0027】
(式中、Rは炭素数1〜12の炭化水素基を示し、複数存在するRは、それぞれ同一でも異なっていてもよく、pは1〜3の整数であり、qは1〜20の整数である。)
下記式(8)および(9)で表される化合物などを挙げることができる。これらのジアミン化合物は、単独でまたは2種以上組み合わせて用いることができる。
【0028】
【化8】

【0029】
(式中、yは2〜12の整数であり、zは1〜5の整数である。)
これらジアミン化合物のうち、上記式(III−1)および(III−2)で表されるジアミン化合物の具体例としては、垂直配向性の観点から、下記式(10)〜(20)で表されるジアミンを好ましいものとして挙げることができる。
【0030】
【化9】

【0031】
【化10】

【0032】
また他のジアミン化合物として、p−フェニレンジアミン、2−メチル−1,4−フェニレンジアミン、2−エチル−1,4−フェニレンジアミン、2,5−ジメチル−1,4−フェニレンジアミン、2,5−ジエチル−1,4−フェニレンジアミン、2,3,5,6−テトラメチル−1,4−フェニレンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン
、2,2’−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル、2,2’−ジ(トリフルオロメチル)−4,4’−ジアミノビフェニル、2,2’−ジエチル−4,4’−ジアミノビフェニル、3,3’−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル、3,3’−ジエチル−4,4’−ジアミノビフェニル、3,3’−ジ(トリフルオロメチル)−4,4’−ジアミノビフェニル、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノベンゾフェノン、2,2−ビス(4−アミノフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、から選ばれる少なくとも一種のジアミンを10%以上含有することが好ましく、20%以上含有することがより好ましい。
【0033】
[ポリアミック酸の合成]
ポリアミック酸の合成反応に供されるテトラカルボン酸二無水物とジアミンの使用割合は、ジアミンのアミノ基1当量に対して、テトラカルボン酸二無水物の酸無水物基が0.2〜2.0当量となる割合が好ましく、さらに好ましくは0.8〜1.2当量となる割合である。 ポリアミック酸の合成反応は、有機溶媒中において、通常−20℃〜150℃、好ましくは0〜100℃の温度条件下で行われる。
ここで、有機溶媒としては、合成されるポリアミック酸を溶解できるものであれば特に制限はなく、例えば1−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、γ−ブチロラクトン、テトラメチル尿素、ヘキサメチルホスホルトリアミドなどの非プロトン系極性溶媒;m−クレゾール、キシレノール、フェノール、ハロゲン化フェノールなどのフェノール系溶媒を例示することができる。また、有機溶媒の使用量(α)は、通常、テトラカルボン酸二無水物およびジアミン化合物の総量(β)が、反応溶液の全量(α+β)に対して0.1〜30重量%に
なるような量であることが好ましい。
【0034】
なお、上記有機溶媒には、ポリアミック酸の貧溶媒であるアルコール類、ケトン類、エステル類、エーテル類、ハロゲン化炭化水素類、炭化水素類などを、生成するポリアミック酸が析出しない範囲で併用することができる。斯かる貧溶媒の具体例としては、例えばメチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、シクロヘキサノール、4−ヒドロキシ−4−メチル−2−ペンタノン、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、トリエチレングリコール、エチレングリコールモノメチ
ルエーテル、乳酸エチル、乳酸ブチル、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、メチルメトキシプロピオネ−ト、エチルエトキシプロピオネ−ト、シュウ酸ジエチル、マロン酸ジエチル、ジエチルエーテル、エチレングリコールメチルエーテル、エチレングリコールエチルエーテル、エチレングリコール−n−プロピルエーテル、エチレングリコール−i−プロピルエーテル、エチレングリコール−n−ブチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、テトラヒドロフラン、ジクロロメタン、1,2−ジクロロエタン、1,4−ジクロロブタン、トリクロロエタン、クロルベンゼン、o−ジクロルベンゼン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ベンゼン、トルエン、キシレンなどを挙げることができる。
【0035】
以上のようにして、ポリアミック酸を溶解してなる反応溶液が得られる。そして、この反応溶液を大量の貧溶媒中に注いで析出物を得、この析出物を減圧下乾燥することによりポリアミック酸を得ることができる。また、このポリアミック酸を再び有機溶媒に溶解させ、次いで貧溶媒で析出させる工程を1回または数回行うことにより、ポリアミック酸を精製することができる。
【0036】
[ポリイミドの合成]
本発明の液晶配向剤を構成するポリイミドは、上記ポリアミック酸を脱水閉環することにより合成することができる。本発明で用いるポリイミドは、イミド化率100%未満の、部分的に脱水閉環されたものであってもよい。ここでいう「イミド化率」とは、ポリイミドの全繰り返し単位中、イミド環またはイソイミド環を有する繰り返し単位の割合を、百分率で表した値である。ポリアミック酸の脱水閉環は、(i)ポリアミック酸を加熱する方法により、または(ii)ポリアミック酸を有機溶媒に溶解し、この溶液中に脱水剤および脱水閉環触媒を添加し必要に応じて加熱する方法により、縮合させて合成する方法が用いられる。
上記(i)のポリアミック酸を加熱する方法における反応温度は、好ましくは50〜200℃であり、より好ましくは60〜170℃である。反応温度が50℃未満では脱水閉環反応が十分に進行せず、反応温度が200℃を超えると得られるポリイミドの分子量が低下することがある。
【0037】
一方、上記(ii)のポリアミック酸の溶液中に脱水剤および脱水閉環触媒を添加する方法において、脱水剤としては、例えば無水酢酸、無水プロピオン酸、無水トリフルオロ酢酸などの酸無水物を用いることができる。脱水剤の使用量は、所望するイミド化率によるが、ポリアミック酸の繰り返し単位1モルに対して0.01〜20モルとするのが好ましい。また、脱水閉環触媒としては、例えばピリジン、コリジン、ルチジン、トリエチルアミンなどの3級アミンを用いることができる。しかし、これらに限定されるものではない。脱水閉環触媒の使用量は、使用する脱水剤1モルに対して0.01〜10モルとするのが好ましい。イミド化率は上記の脱水剤、脱水閉環剤の使用量が多いほど高くすることができる。イミド化率は液晶配向膜の特性発現の観点から75〜100%が好ましく、80〜100%がより好ましい。なお、脱水閉環反応に用いられる有機溶媒としては、ポリアミック酸の合成に用いられるものとして例示した有機溶媒と同じものを挙げることができる。そして、脱水閉環反応の反応温度は、好ましくは0〜180℃であり、より好ましくは10〜150℃である。また、このようにして得られる反応溶液に対し、ポリアミック酸の精製方法におけると同様の操作を行うことにより、ポリイミドを精製することができる。
【0038】
[末端修飾型の重合体]
本発明のポリアミック酸/ポリイミドは、分子量が調節された末端修飾型のものであってもよい。この末端修飾型の重合体を用いることにより、本発明の効果が損われることなく液晶配向剤の塗布特性などを改善することができる。このような末端修飾型の重合体は、ポリアミック酸を合成する際に、酸一無水物、モノアミン化合物、モノイソシアネート化合物などを反応系に添加することにより合成することができる。ここで、酸一無水物としては、例えば無水マレイン酸、無水フタル酸、無水イタコン酸、n−デシルサクシニック酸無水物、n−ドデシルサクシニック酸無水物、n−テトラデシルサクシニック酸無水物、n−ヘキサデシルサクシニック酸無水物などを挙げることができる。また、モノアミン化合物としては、例えばアニリン、シクロヘキシルアミン、n−ブチルアミン、n−ペンチルアミン、n−ヘキシルアミン、n−ヘプチルアミン、n−オクチルアミン、n−ノニルアミン、n−デシルアミン、n−ウンデシルアミン、n−ドデシルアミン、n−トリデシルアミン、n−テトラデシルアミン、n−ペンタデシルアミン、n−ヘキサデシルアミン、n−ヘプタデシルアミン、n−オクタデシルアミン、n−エイコシルアミンなどを挙げることができる。また、モノイソシアネート化合物としては、例えばフェニルイソシアネート、ナフチルイソシアネートなどを挙げることができる。
【0039】
[重合体の対数粘度]
以上のようにして得られるポリアミック酸および/またはポリイミドは、その対数粘度(ηln)の値が好ましくは0.05〜10dl/g、より好ましくは0.05〜5dl/gである。
本発明における対数粘度(ηln)の値は、N−メチル−2−ピロリドンを溶媒として用い、濃度が0.5g/100ミリリットルである溶液について30℃で粘度の測定を行い、下記式(A)によって求められるものである。
【0040】
【数1】

【0041】
[垂直液晶配向剤]
本発明の液晶配向剤を得るためには、上記ポリイミド重合体が、好ましくは、有機溶媒中に溶解含有されて構成される。また本発明の液晶配向剤を調製する際の温度は、好ましくは0℃〜200℃であり、より好ましくは20℃〜60℃である。
【0042】
本発明の液晶配向剤を構成する有機溶媒としては、例えば、N−メチル−2−ピロリドン、γ−ブチロラクトン、γ−ブチロラクタム、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、4−ヒドロキシ−4−メチル−2−ペンタノン、エチレングリコールモノメチルエーテル、乳酸ブチル、酢酸ブチル、メチルメトキシプロピオネ−ト、エチルエトキシプロピオネ−ト、エチレングリコールメチルエーテル、エチレングリコールエチルエーテル、エチレングリコール−n−プロピルエーテル、エチレングリコール−i−プロピルエーテル、エチレングリコール−n−ブチルエーテル(ブチルセロソルブ)、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテートなどを挙げることができる。
【0043】
本発明の液晶配向剤における固形分濃度は、粘性、揮発性などを考慮して選択されるが、好ましくは1〜10重量%の範囲にある。すなわち、本発明の液晶配向剤は、基板表面に塗布され、液晶配向膜となる樹脂膜が形成されるが、固形分濃度が1重量%未満である場合には、この樹脂膜の膜厚が過小となって良好な液晶配向膜を得ることができず、固形分濃度が10重量%を超える場合には、樹脂膜の膜厚が過大となって良好な液晶配向膜を得ることができず、また、液晶配向剤の粘性が増大して塗布特性が劣るものとなる。
【0044】
本発明の液晶配向剤は、好ましくは、分子内に少なくとも2つのエポキシ基を有する化合物をさらに含有する。かかるエポキシ化合物としては、下記式(IV−1)および(IV−2)で表されるエポキシ基含有化合物を、ポリアミック酸重合体およびポリイミド重合体の合計を100重量部に対し、5〜50重量%含有するものが好ましい。
【化11】

【0045】
(ここで式中、yは2〜6の整数であり、zは1〜4の整数であり、R4aはy価の有機基であり、R4bはz価の有機基である。)
かかるエポキシ化合物としては、例えば、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、トリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、グリセリンジグリシジルエーテル、2,2−ジブロモネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,3,5,6−テトラグリシジル−2,4−ヘキサンジオール、N,N,N’,N’,−テトラグリシジル−1,4−フェニレンジアミン、N,N,N’,N’,−テトラグリシジル−m−キシレンジアミン、N,N,N’,N’,−テトラグリシジル−2,2’−ジメチル−4.4’−ジアミノビフェニル、2,2−ビス[4−(N,N−ジグリシジル−4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、N,N,N’,N’,−テトラグリシジル−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、1,3−ビス(N,N−ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン、1,3−ビス(N,N−ジグリシジルアミノメチル)ベンゼンなどを挙げることができる。かかるエポキシ基含有化合物の含有量としては、5重量%以上50重量%以下含有して成り、より好ましくは10〜45重量部含有して成る。
【0046】
また本発明の液晶配向剤には、目的の物性を損なわない範囲内で、基板表面に対する接着性を向上させる観点から、官能性シラン含有化合物が含有されていてもよい。かかる官能性シラン含有化合物としては、例えば3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、2−アミノプロピルトリメトキシシラン、2−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3−ウレイドプロピルトリメトキシシラン、3−ウレイドプロピルトリエトキシシラン、N−エトキシカルボニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−エトキシカルボニル−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−トリエトキシシリルプロピルトリエチレントリアミン、N−トリメトキシシリルプロピルトリエチレントリアミン、10−トリメトキシシリル−1,4,7−トリアザデカン、10−トリエトキシシリル−1,4,7−トリアザデカン、9−トリメトキシシリル−3,6−ジアザノニルアセテート、9−トリエトキシシリル−3,6−ジアザノニルアセテート、N−ベンジル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−ベンジル−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−ビス(オキシエチレン)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−ビス(オキシエチレン)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−(N−アリルーNーグリシジル)アミノプロピルトリメトキシシラン、3−(N,N−ジグリシジル)アミノプロピルトリメトキシシランなどを挙げることができる。
【0047】
[液晶配向剤を用いた表示素子の製造]
本発明の垂直配向型液晶配向剤を用いた液晶表示素子は、例えば次の方法によって製造することができる。
(1)パターニングされた透明導電膜が設けられている基板の一面に、本発明の液晶配向剤を例えばロールコーター法、スピンナー法、印刷法、インクジェット法などの方法によって塗布し、次いで、塗布面を加熱することにより塗膜を形成する。ここに、基板としては、例えばフロートガラス、ソーダガラスなどのガラス;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエーテルスルホン、ポリカーボネートなどのプラスチックからなる透明基板を用いることができる。基板の一面に設けられる透明導電膜としては、酸化スズ(SnO)からなるNESA膜(米国PPG社登録商標)、酸化インジウム−酸化スズ(In−SnO)からなるITO膜などを用いることができる。これらの透明導電膜のパターニングには、フォト・エッチング法や予めマスクを用いる方法が用いられる。液晶配向剤の塗布に際しては、基板表面と樹脂膜との接着性をさらに良好にするために、例えば官能性シラン含有化合物、官能性チタン含有化合物などを予め塗布することもできる。液晶配向剤塗布後の加熱温度は、好ましくは80〜300℃であり、より好ましくは120〜250℃である。なお、本発明の液晶配向剤は、塗布後に有機溶媒を除去することによって配向膜となる樹脂膜を形成するが、未だ完全にイミド化が進んでいないときには、さらに加熱することによって脱水閉環を進行させ、よりイミド化された樹脂膜とすることもできる。形成される樹脂膜の膜厚は、好ましくは0.001〜1μmであり、より好ましくは0.005〜0.5μmである。
【0048】
(2)上記のようにして垂直液晶配向膜が形成された基板を2枚作製し、2枚の基板を、間隙(セルギャップ)を介して対向配置し、2枚の基板の周辺部をシール剤を用いて貼り合わせ、基板表面およびシール剤により区画されたセルギャップ内に液晶を注入充填し、注入孔を封止して液晶セルを構成する。そして、液晶セルの外表面、すなわち、液晶セルを構成する透明基板側に、偏光板を配することにより、液晶表示素子が得られる。
ここに、シール剤としては、例えば硬化剤およびスペーサーとしての酸化アルミニウム球を含有するエポキシ樹脂などを用いることができる。
【0049】
液晶としては、ネマティック型液晶およびスメクティック型液晶を挙げることができる。その中でもネマティック型液晶が好ましく、例えばシッフベース系液晶、アゾキシ系液晶、ビフェニル系液晶、フェニルシクロヘキサン系液晶、エステル系液晶、ターフェニル系液晶、ビフェニルシクロヘキサン系液晶、ピリミジン系液晶、ジオキサン系液晶、ビシクロオクタン系液晶、キュバン系液晶などを用いることができる。また、これらの液晶に、例えばコレスチルクロライド、コレステリルノナエート、コレステリルカーボネートなどのコレステリック型液晶や商品名「C−15」「CB−15」(メルク社製)として販売されているようなカイラル剤などを添加して使用することもできる。さらに、p−デシロキシベンジリデン−p−アミノ−2−メチルブチルシンナメートなどの強誘電性液晶も使用することができる。
また、液晶セルの外表面に貼り合わされる偏光板としては、ポリビニルアルコールを延伸配向させながら、ヨウ素を吸収させたH膜と称される偏光膜を酢酸セルロース保護膜で挟んだ偏光板またはH膜そのものからなる偏光板を挙げることができる。
【実施例】
【0050】
以下、実施例により、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
なお、実施例および比較例の各種測定は、下記の方法により行った。
(1)垂直配向性評価
上記方法にて作製した液晶表示素子を、クロスニコル下で電圧無印加時および交流電圧12V(ピーク−ピーク)印加時に、液晶表示素子に対し垂直方向から目視で観察したとき、光漏れ等表十不良なく黒表示がなされたとき「良好」とした。
(2)輝度による残像評価
2組の液晶表示素子を準備し、そのうち一つは直流電圧1V(素子A)、もう一つは直流電圧5V(素子B)を室温にて2時間印加する。その後直流電圧2.5V印加において観測される素子Aと素子Bの輝度を256階調で表した際に、その輝度差が15以下のものを「残像良好」とした。
【0051】
合成例1(ポリイミド重合体の合成)
テトラカルボン酸二無水物として、2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物22.4g(0.1モル)、ジアミン化合物としてp−フェニレンジアミン9.8g(0.09モル)および上記式(10)で表される化合物5.3g(0.01モル)を、N−メチル−2−ピロリドン150gに溶解させ、60℃で4時間反応させた。次いで、反応溶液を大過剰のメチルアルコールに注いで反応生成物を沈澱させた。その後、メチルアルコールで洗浄し、減圧下40℃で15時間乾燥させることにより、対数粘度1.05dl/gのポリアミック酸33.2gを得た。得られたポリアミック酸20gをN−メチル−2−ピロリドン380gに溶解させ、ピリジン12.6gおよび無水酢酸16.3gを添加し110℃で4時間脱水閉環させ、上記と同様にして沈殿、洗浄、減圧を行い、対数粘度0.92dl/g、イミド化率88%のポリイミド(これを「ポリイミド(A−1)」とする)14.8gを得た。
【0052】
合成例2(ポリイミド重合体の合成)
合成例1において、ピリジン10.5gおよび無水酢酸13.6gを用いた以外は合成例1と同様にしてイミド化反応を行い、対数粘度0.85dl/g、イミド化率83%のポリイミド(これを「ポリイミド(A−2)」とする)15.4gを得た。
【0053】
合成例3(ポリイミド重合体の合成)
合成例2において、ジアミン化合物としてp−フェニレンジアミン9.3g(0.085モル)および上記式(10)で表される化合物7.9g(0.015モル)を用いた以外は合成例2と同様にして、ポリアミック酸を得、さらにこれを用いて合成例1と同様にしてイミド化反応を行い、対数粘度0.71dl/g、イミド化率82%のポリイミド(これを「ポリイミド(A−3)」とする)12.5gを得た。
【0054】
合成例4(ポリイミド重合体の合成)
テトラカルボン酸二無水物として、2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物22.4g(0.1モル)、ジアミン化合物としてp−フェニレンジアミン3.8g(0.035モル)、2,2’−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル10.7g(0.05モル)および上記式(10)で表される化合物7.9g(0.015モル)を、N−メチル−2−ピロリドン179gに溶解させ、60℃で4時間反応させた。次いで、反応溶液を大過剰のメチルアルコールに注いで反応生成物を沈澱させた。その後、メチルアルコールで洗浄し、減圧下40℃で15時間乾燥させることにより、対数粘度0.82dl/gのポリアミック酸36.2gを得た。得られたポリアミック酸20gをN−メチル−2−ピロリドン380gに溶解させ、ピリジン8.8gおよび無水酢酸11.4gを添加し110℃で4時間脱水閉環させ、上記と同様にして沈殿、洗浄、減圧を行い、対数粘度0.53dl/g、イミド化率82%のポリイミド(これを「ポリイミド(A−4)」とする)13.6gを得た。
【0055】
合成例5(ポリイミド重合体の合成)
合成例1において、テトラカルボン酸二無水物として1,3,3a,4,5,9b−ヘキサ
ヒドロ−8−メチル−5(テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)−ナフト[1,2−c]−フラン−1,3−ジオン6.3g(0.02モル)および2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物17.8g(0.08モル)を用い、ジアミン化合物としてp−フェニレンジアミン6.0g(0.055モル)、4,4’−ジアミノジフェニルメタン6.0g(0.03モル)および上記式(10)で表される化合物7.9g(0.015モル)を用いた以外は合成例1と同様にして、ポリアミック酸を得、さらにこれを用いて合成例1と同様にしてイミド化反応を行い、対数粘度0.41dl/g、イミド化率85%のポリイミド(これを「ポリイミド(A−5)」とする)12.5gを得た。
【0056】
合成例6(ポリイミド重合体の合成)
合成例1において、ジアミン化合物としてp−フェニレンジアミン7.1g(0.065モル)、4,4’−ジアミノジフェニルメタン4.0g(0.02モル)および上記式(10)で表される化合物7.9g(0.015モル)を用いた以外は合成例1と同様にして、ポリアミック酸を得、さらにこれを用いて合成例1と同様にしてイミド化反応を行い、対数粘度0.77dl/g、イミド化率88%のポリイミド(これを「ポリイミド(A−6)」とする)14.8gを得た。
【0057】
合成例7(ポリイミド重合体の合成)
合成例6において、ピリジン9.5gおよび無水酢酸12.3gを用いた以外は合成例6と同様にしてイミド化反応を行い、対数粘度0.65dl/g、イミド化率83%のポリイミド(これを「ポリイミド(A−7)」とする)13.1gを得た。
【0058】
合成例8(ポリイミド重合体の合成)
合成例4において、ジアミン化合物としてp−フェニレンジアミン7.1g(0.065モル)、2,2’−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル4.3g(0.02モル)および上記式(10)で表される化合物7.9g(0.015モル)を用いた以外は合成例4と同様にして、ポリアミック酸を得、さらにこれを用いて合成例1と同様にしてイミド化反応を行い、対数粘度0.69dl/g、イミド化率84%のポリイミド(これを「ポリイミド(A−8)」とする)12.2gを得た。
【0059】
合成例9(ポリイミド重合体の合成)
合成例1において、ジアミン化合物としてp−フェニレンジアミン5.5g(0.05モル)、1,3−ジ(アミノメチル)シクロヘキサン5.0g(0.035モル)および上記式(10)で表される化合物7.9g(0.015モル)を用いた以外は合成例1と同様にして、ポリアミック酸を得、さらにこれを用いて合成例1と同様にしてイミド化反応を行い、対数粘度0.49dl/g、イミド化率87%のポリイミド(これを「ポリイミド(A−9)」とする)14.2gを得た。
【0060】
合成例10(ポリイミド重合体の合成)
合成例6において、ピリジン5.7gおよび無水酢酸8.4gを用いた以外は合成例6と同様にしてイミド化反応を行い、対数粘度0.55dl/g、イミド化率70%のポリイミド(これを「ポリイミド(A−10)」とする)15.2gを得た。
【0061】
合成例11(ポリイミド重合体の合成)
テトラカルボン酸二無水物として、2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物22.4g(0.1モル)、ジアミン化合物としてp−フェニレンジアミン8.7g(0.08モル)および上記式(10)で表される化合物10.6g(0.02モル)を、N−メチル−2−ピロリドン167gに溶解させ、60℃で4時間反応させた。次いで、反応溶液を大過剰のメチルアルコールに注いで反応生成物を沈澱させた。その後、メチルアルコールで洗浄し、減圧下40℃で15時間乾燥させることにより、対数粘度0.62dl/gのポリアミック酸32.2gを得た。得られたポリアミック酸20gをN−メチル−2−ピロリドン380gに溶解させ、ピリジン3.8gおよび無水酢酸4.9gを添加し110℃で4時間脱水閉環させ、上記と同様にして沈殿、洗浄、減圧を行い、対数粘度0.43dl/g、イミド化率54%のポリイミド(これを「ポリイミド(A−11)」とする)17.6gを得た。
【0062】
実施例1
合成例1で得られたポリイミド(A−1)を、γ―ブチロラクトン/N−メチル−2−ピロリドン/ブチルセロソルブ混合溶液(重量比40/45/15)に溶解させて、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル(分子量約400;エポキシ化合物1)を重合体100に対して40重量部溶解させ固形分濃度4重量%の溶液とした。この溶液を孔径1μmのフィルターを用いて濾過し、本発明の膜形成用組成物を調製した。
次に、厚さ1mmのガラス基板の一面に設けられたITO膜からなる透明導電膜上に、当該膜形成用組成物をスピンナーにより塗布し、200℃で60分間乾燥することで、乾燥膜厚0.08μmの被膜を形成した。
【0063】
次に、一対の透明電極/透明電極基板の上記液晶配向膜塗布基板の液晶配向膜を有するそれぞれの外縁に、直径3.5μmの酸化アルミニウム球入りエポキシ樹脂接着剤を塗布した後、液晶配向膜面が相対するように重ね合わせて圧着し、接着剤を硬化させた。次いで、液晶注入口より基板間に、ネガ型液晶(メルク社製、MLC−6608)を充填した後、アクリル系光硬化接着剤で液晶注入口を封止し、基板の外側の両面に偏光板を張り合わせ、液晶表示素子を作製した。得られた液晶表示素子に関して、垂直配向性評価を実施したところ、良好であった。また同一液晶配向剤により作製された2組の液晶表示素子を用いて、輝度による残像評価を実施したところ、輝度差は少なく「残像良好」であった。
【0064】
実施例2〜61
下記表1に示す処方に従って、合成例1〜9で得られたポリイミド(A−1)〜(A−9)と、エポキシ基含有化合物(エポキシ化合物1〜7)とを、γ―ブチロラクトン/N−メチル−2−ピロリドン/ブチルセロソルブ混合溶剤に溶解させ固形分濃度4.0%の溶液を得、この溶液を孔径1μmのフィルターでろ過することにより、本発明の液晶配向剤を調整した。このようにして調整された液晶配向剤の各々を用い、実施例1と同様にして、基板表面上に被膜を形成し、当該液晶配向膜が形成された基板を用いて液晶表示素子を作製した。そして、垂直配向性評価および輝度による残像評価を実施した。結果を表1に示す。
【0065】
比較例1〜24
下記表2に示す処方に従って、実施例1と同様に液晶表示素子を作製した。そして、垂直配向性評価および輝度による残像評価を実施した。結果を表2に併せて示す。
【0066】
【表1】

【0067】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(I−1)で表されるアミック酸繰返し単位および下記式(I−2)で表されるイミド繰返し単位からなり、上記式(I−1)のPおよび(I−2)のPとして下記式(II−1)〜(II−2)のそれぞれで表される四価の有機基のうち少なくとも一方を50%以上含有し、かつ上記式(I−1)のQおよび(I−2)のQとして下記式(III−1)〜(III−2)のそれぞれで表される二価の有機基を少なくとも8%以上含有し、そしてこれらの繰返し単位の合計に対し該イミド繰返し単位が75モル%以上を占めるイミド化重合体を含有することを特徴とする垂直配向型液晶配向剤。
【化1】

(ここでPはテトラカルボン酸を構成する4価の有機基を示し、かつQはジアミンを構成する2価の有機基を示す。)
【化2】

(ここでPはテトラカルボン酸を構成する4価の有機基を示し、かつQはジアミンを構成する2価の有機基を示す。)
【化3】

(ここで、Rは、相互独立に水素原子または1価の有機基を示す。)
【化4】

(上式中、Xは、単結合、−O−、−CO−、−COO−、−OCO−、−NHCO−、−CONH−、−S−、メチレン基、炭素数2〜6のアルキレン基およびフェニレン基であり、Rは、炭素数10〜20のアルキル基、炭素数4〜40の脂環式骨格を有する1価の有機基または炭素数6〜20のフッ素原子を有する1価の有機基であり、Rは、
炭素数4〜40の脂環式骨格を有する2価の有機基である。)
【請求項2】
分子内に少なくとも2つのエポキシ基を含有する化合物をさらに含有しそしてこの化合物が下記一般式(IV−1)および(IV−2)のそれぞれで表される化合物よりなる群から選ばれる少なくとも一種のエポキシ含有化合物を5〜50重量%含有する、請求項1に記載の垂直配向型液晶配向剤。
【化5】

(ここで式中、yは2〜6の整数であり、zは1〜4の整数であり、R4aはy価の有機基であり、R4bはz価の有機基である。)

【公開番号】特開2007−47762(P2007−47762A)
【公開日】平成19年2月22日(2007.2.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−184560(P2006−184560)
【出願日】平成18年7月4日(2006.7.4)
【出願人】(000004178)JSR株式会社 (3,320)
【Fターム(参考)】