説明

埋没物探査システム

【課題】迅速かつ正確に埋没物等の探査を行うことができる埋没物探査システムを提供する。
【解決手段】埋没物に反応する電磁探査センサと、地面と前記電磁探査センサとの距離を計測する距離計と、前記電磁探査センサに配設されたターゲット手段と、前記ターゲット手段の位置を測定する位置測定手段と、入力された始点、終点、左右幅からメッシュを作成するメッシュ作成手段と、前記位置測定手段からのデータを前記メッシュ上の座標に変換する座標変換手段と、前記電磁探査センサからのデータを前記距離計からのデータに依存して処理するセンサデータ処理手段と、前記座標変換手段により変換された、前記メッシュ上の座標に対応するブロックに前記センサデータ変換手段により変換されたデータを対応させるデータ合成手段と、を含む埋没物探査システムである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は埋没物探査システムに関し、更に詳しくは、電磁探査センサを使用する埋没物探査システムに関する。
【背景技術】
【0002】
大規模地震等自然災害で道路法面等が土砂崩落により被災した場合の復旧に際しては、崩落状況を始めとして家屋、車両、人の埋没の有無を速やかに把握し、緊急復旧計画を立案する必要がある。
【0003】
土砂崩落現場において、人の接近が困難であったり二次災害の危険がある被災現場での情報収集及び状況把握、復旧作業は、一般に困難である。被災地において埋没車両等を検知する場合、できるだけ人間が直接測定したり、歩き回らないことが望ましい。被災現場における、安全で迅速かつ正確な埋没物調査を実施するためには、無人で探査が可能であれば都合が良い。
【0004】
ところで、近年、建設分野におけるIT技術の利用例として、建設機械(重機)にGPSや自動追尾式TSを搭載した情報化施工が行われている。その中で振動ローラやタイヤローラなどの締め固め機械の転圧状況をリアルタイムに管理するために、「転圧締固め回数管理システム」が提案されている(特許文献1)。
【0005】
【特許文献1】特開2003−64725号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
埋没物と作業機械の位置関係をリアルタイムに把握しながら探査掘削作業を行うことができれば、効率的な掘削作業や救助活動が可能となる。
【0007】
リアルタイムの埋没物探査を行うには電磁探査センサを使用するのが好ましい。しかしながら、電磁探査センサは、地盤の磁場応答による影響を受けやすく、かつ、センサの感度は距離に依存する。一方、土砂崩落現場等の埋没物探査の対象となる現場は、地表が荒れている場合が多く、電磁探査センサの地上からの距離を一定に保つことは困難である。したがって、電磁探査により精度良く埋没物探査を行うためには、測定時の電磁探査センサの地上からの距離を考慮することが必要である。
【0008】
本発明は、このような従来技術の有する問題点に鑑みてなされたものであり、その課題とするところは、安全で正確な埋没物探査を行い得るシステムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは上記課題を達成すべく鋭意検討した結果、以下に示す埋没物探査システム、埋没物探査方法および埋没物探査プログラムによって、上記課題を達成することが可能であることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
即ち、本発明によれば、以下に示す埋没物探査システム等が提供される。
【0011】
[1] 埋没物に反応する電磁探査センサと、地面と前記電磁探査センサとの距離を計測する距離計と、前記電磁探査センサに配設されたターゲット手段と、前記ターゲット手段の位置を測定する位置測定手段と、前記電磁探査センサ、前記距離計および前記位置測定手段から送られたデータを処理する情報処理手段とを含み、前記情報処理手段が、入力された始点、終点、左右幅からメッシュを作成するメッシュ作成手段と、前記位置測定手段からのデータを前記メッシュ上の座標に変換する座標変換手段と、前記電磁探査センサからのデータを前記距離計からのデータに依存して処理するセンサデータ処理手段と、前記座標変換手段により変換された、前記メッシュ上の座標に対応するブロックに前記センサデータ変換手段により変換されたデータを対応させるデータ合成手段と、を含む埋没物探査システム。
【0012】
[2] 入力された始点、終点、左右幅からメッシュを作成し、位置測定手段からのデータを前記メッシュ上の座標に変換し、電磁探査センサからのデータを距離計からのデータに依存して変換し、変換された、前記メッシュ上の座標に対応するブロックに、処理されたデータを対応させる埋没物探査方法。
【0013】
[3] コンピュータに、入力された始点、終点、左右幅からメッシュを作成させ、位置測定手段からのデータをメッシュ上の座標に変換させ、電磁探査センサからのデータを距離計からのデータに依存して変換させ、変換された、前記メッシュ上の座標に対応するブロックに、処理されたデータを対応させる埋没物探査プログラム。
【発明の効果】
【0014】
本発明の埋没物探査システムによれば、迅速かつ正確に埋没物等の探査を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の実施の最良の形態について説明するが、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、当業者の通常の知識に基づいて、以下の実施の形態に対し適宜変更、改良等が加えられたものも本発明の範囲に入ることが理解されるべきである。
【0016】
本発明を図面を参照しつつ説明する。図1は本発明の埋没物探査システムの一実施形態を示す模式図である。図1の埋没物探査システムのハードウエア構成は、埋没物に反応する電磁探査センサ1、地面と電磁探査センサとの距離を計測する距離計2、電磁探査センサに配設されたターゲット手段としてのトータルステーションターゲット(TSターゲット)3、位置測定手段としての自動追尾トータルステーション(自動追尾TS)4、電磁探査センサ1、距離計2および自動追尾TS4から送られたデータを処理する情報処理手段としてのコンピュータ5、電磁探査センサ1からの信号を変換・増幅するアンプ6、自動追尾TSからのデータをコンピュータ5に無線送信する無線送信機7および無線送信機7からの無線通信によるデータを受信し、コンピュータ5に送信する無線受信機8からなる。ここで、アンプ6、無線送信機7および無線受信機8は、任意の装置であり、省略可能である。また、図1の埋没物探査システムのうち、電磁探査センサ1、距離計2、TSターゲット3、コンピュータ5、アンプ6および無線受信機8は移動体に設置される。
【0017】
図2は、図1の埋没物探査システムの機能ブロック図である。図2において、コンピュータ5は、中央処理装置100、記憶手段200および入出力ポートから構成されている。中央処理装置100は、記憶手段200に格納されているコンピュータプログラムを読み込むことにより、メッシュ作成手段110、座標変換手段120、センサデータ変換手段130およびデータ合成手段140として機能する。記憶手段200は、上記コンピュータプログラム、各種パラメータ等が格納されている領域を有するほか、電磁探査センサ1等から得られたデータ等を記憶する領域を有する。なお、コンピュータ5は、その入力ポートを介して、距離計2、アンプ6、無線受信機8、キーボード12およびポインティングデバイス13と接続されている。ここで、アンプ6は電磁探査センサ1に接続されており、また、無線受信機8は無線送信機7からの信号を受信可能であり、無線送信機7は位置測定手段としての自動追尾TS4に接続されている。また、コンピュータ5は、その出力ポートを介してディスプレイ9、プリンタ10、外部記録メディア11に接続されている。
【0018】
[電磁探査センサ]
本発明においては、電磁探査センサ(機)を使用する。埋没物を探査するためのセンサとしては、電気探査機、磁気探査機、電磁探査機、地中レーダー探査機(広義には電磁探査機の範疇に入る)が使用し得る。しかしながら、これらのうち、計測データからリアルタイムに埋没物の有無を判定するには次の理由で電磁探査が好ましい。
【0019】
電気探査機は、電極を地盤に設置する必要があり、移動測定ができない。また、リアルタイム測定も不可能である。
【0020】
磁気探査機は、地球磁場の微妙な変化を測定するため、基本的には移動後の静止状態での測定となる。また、移動体(重機やヘリコプター等)への搭載は、移動体が磁場を乱すことから不可能であり、結果として、人力を主体として測定する必要がある。また、ノイズに弱いという弱点を有する。
【0021】
地中レーダー探査機は、地表面からの距離を5cm以内程度に保つ必要があり、凹凸があると探査走行できない。また、移動測定(相対比較)が主体であり、移動せず静止の状態では判別評価できない。
【0022】
これらに対して電磁探査機は、静止状態でも移動状態でも測定が可能であり、地表面の影響が少なく、凹凸があっても測定が出来、重機からの距離をある程度(約3m)離せば、重機に搭載しても、影響を受けないという利点を有する。
【0023】
[距離計]
本発明において使用する距離計は超音波式、レーザー式、距離画像センサ、マイクロ波センサ等のいずれでも良い。これらのうち、確実に反射が得られる、天候(雨天、霧、太陽光)の影響を受けない、応答性が良好であるという理由で超音波式のものが好ましい。
【0024】
[ターゲット手段]
ターゲット手段とは、位置を測定する際の目標となる対象である。位置を測定するためにトータルステーションを使用する場合には、トータルステーションターゲットがターゲット手段に相当する。トータルステーションターゲットとは、トータルステーションで測量する際の目標物であり、通常、プリズムを備える。本発明においては、トータルステーションターゲットを電磁探査センサに配設する。ここで、電磁探査センサに配設するとは、電磁探査センサに直接配設することのみならず、電磁探査センサとトータルステーションターゲットとを同一の物体に配設することをも含むものである。要は、トータルステーションターゲットと電磁探査センサとの位置関係が明らかとなるように固定していれば良い。位置測定手段としてGPS(グローバルポジショニングシステム)を採用する場合には、ターゲット手段はGPSアンテナとなる。
【0025】
[位置測定手段]
位置測定手段は、ターゲット手段の位置を測定するための手段である。好ましい位置測定手段として、トータルステーションを例示することができる。本発明で使用し得るトータルステーションは土木分野で広く使用されているトータルステーションのいずれでも良い。しかしながら、自動追尾トータルステーションが好ましい。また、位置測定手段として、GPSを採用することもできる。使用し得るGPSの例としてRTK(リアルタイムキネティック)−GPSを例示することができる。
【0026】
[情報処理手段]
本発明に使用する情報処理手段としてのコンピュータは各装置へのデータ通信機能を備える。また、必要に応じてディスプレイ、プリンタ等の出力装置を備えることができる。本発明に使用し得るコンピュータとしては、汎用のパーソナルコンピュータを例示することができる。
【0027】
次に図1の埋没物探査システムの作用を説明する。
【0028】
[メッシュ作成]
図3を参照しつつメッシュ作成の手順を説明する。現場において、まず、電磁探査センサ1(およびTSターゲット3)を始点位置Aに配置して、TS4により始点位置Aの現場座標を得る。次に電磁探査センサ1を終点位置Bまで移動させ、TS4により終点位置Bの現場座標を得る。以上の手順で法線(始点A−終点B)が得られる。次に、キーボード12またはポインティングデバイス13により幅を指定する。幅は、ピッチ数で指定する。ピッチは、探査装置の1回の計測による検出範囲として設定されている(図3中、(a))。
【0029】
このようにして面が定義されるとメッシュ14が作成される(図3中、(b))。得られたメッシュ14は、所定の角度回転させることにより、法線をy軸とする数学座標系に変換される(図3中、(c))。以上の一連の処理はメッシュ作成手段110により行われる。このようにして得られたメッシュ14の特定のブロック15に対応する点での電磁探査センサ1のデータは、CSV形式で取り扱うことができる。
【0030】
[探査データの処理]
次に図4を参照しつつ、各データが処理される様子を説明する。図4中、ステップS10において、コンピュータ5は自動追尾TS4からのデータの入力を受け付け、ステップS20に進む。自動追尾TS4により現場座標系で計測されたデータは、ステップS20において、座標変換手段120により、対応するメッシュ14上の座標に変換される。次いで、ステップS30に進む。ステップS30において、コンピュータ5は電磁探査センサ1からのデータの入力を受け付け、その後、ステップS40において、距離計2からのデータを受け付ける。次いで、ステップS50に進む。ステップS50において、センサデータ変換手段130により、ステップS30で受け付けられた電磁探査センサ1からのデータが、ステップS40で受け付けられた距離計2からのデータに基づいて変換される。この際の変換の例は、別途詳しく説明する。次いでステップS60に進む。ステップS60において、ステップS50で変換された電磁探査センサ1からのデータが、ステップS20において、変換されたメッシュ14上の座標に対応するブロック15と関連付けられ、図4の処理が終了する。
【0031】
次に図5を参照しつつ、図4の処理中、ステップS50の距離計からの入力に基づきセンサデータを変換する処理の例を説明する。図5中、ステップS70において、距離計2からの入力データの値が所定範囲内か否か判定される。所定範囲内の場合には、ステップS80に進み、所定範囲外の場合には、ステップS90に進む。ステップS80において、電磁探査センサ1からのデータが採用され、処理が終わる。一方、ステップS90において、電磁探査センサ1からのデータは採用されず、処理が終わる。
【0032】
図5の処理により、電磁探査センサ1からのデータは、測定時における電磁探査センサ1の地面からの距離が所定の距離である場合のみに採用されるから、このようにして採用されたデータは測定時の誤差が少なく、埋没物の正確な探査が可能となる。
【0033】
図4の処理により得られたデータは、中央処理装置100中の、図示しないコンター作成手段によりさらに処理され、その後、出力ポートを介して、リアルタイムでディスプレイ9に表示することが可能である。このようにしてディスプレイに表示した例を図6に示す。
【0034】
図4の処理により得られたデータはまた、記憶手段200に格納することも可能である。記憶手段200に格納されたデータは、中央処理装置100中のコンター作成手段により処理された後に、出力ポートを介してプリンタ10からプリントアウトすることができ、また、コンター作成処理後または、生データのままで、出力ポートを介して、外部記録メディア11に記録することも可能である。図7はこのようにしてプリントアウトされた例を示す。図8は図7のマップを拡大表示してプリントアウトした例である。なお、外部記録メディアとしては、フラッシュメモリを内蔵した各種メモリ製品や、CDR、DVDR等の光学メディア、フレキシブルディスクのような磁気メディアが例示できるがこれらに限定されない。
【0035】
以上説明した埋没物探査システムによれば、埋没物探査対象エリアについて、探査結果を容易にディスプレイ、プリンタ等に出力することができ、これらを参酌することにより、漏れなく、迅速に埋没物探査を行うことができる。さらに、電磁探査センサからのデータは、距離計からのデータに依存して処理されるので、測定時電磁探査センサの地上高に基づく誤差を低減できる。
【0036】
以上説明した埋没物探査システムは、主に、有人の移動体に搭載されることを念頭においているが、無人の移動体に搭載することもできる。この場合には、コンピュータ5を移動体に搭載することを止める等、当業者に公知の方法でシステムを構成することができる。このような無人埋没物探査システムは、二次災害の発生を予防することができる。
【0037】
また、上記では位置測定手段としてトータルステーションを採用した場合について説明したが、位置測定手段として、GPSを使用することもできる。さらに、トータルステーションとGPSとを組み合わせて使用することもできる。
【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明は、災害時等の埋没車両等を探知する際に利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明の埋没物探査システムの一実施形態を示す模式図である。
【図2】図1の埋没物探査システムの機能ブロック図である。
【図3】メッシュを作成する手順を示す図である。
【図4】各データの処理を示すフローチャートである。
【図5】センサデータの変換処理の一例を示すフローチャートである。
【図6】得られたデータをディスプレイ表示した例を示す図である。
【図7】得られたデータをマップ表示したプリントアウトの例である。
【図8】図7のマップを拡大表示したプリントアウトの例である。
【符号の説明】
【0040】
1:電磁探査センサ、2:距離計、3:トータルステーション(TS)ターゲット、4:自動追尾トータルステーション(TS)、5:コンピュータ、6:アンプ、7:無線送信機、8:無線受信機、9:ディスプレイ、10:プリンタ、11:外部記録メディア、12:キーボード、13:ポインティングデバイス、14:メッシュ、15:ブロック、100:中央処理装置、110:メッシュ作成手段、120:座標変換手段、130:センサデータ変換手段、140:データ合成手段、200:記憶手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
埋没物に反応する電磁探査センサと、
地面と前記電磁探査センサとの距離を計測する距離計と、
前記電磁探査センサに配設されたターゲット手段と、
前記ターゲット手段の位置を測定する位置測定手段と、
前記電磁探査センサ、前記距離計および前記位置測定手段から送られたデータを処理する情報処理手段とを含み、
前記情報処理手段が、
入力された始点、終点、左右幅からメッシュを作成するメッシュ作成手段と、
前記位置測定手段からのデータを前記メッシュ上の座標に変換する座標変換手段と、
前記電磁探査センサからのデータを前記距離計からのデータに依存して処理するセンサデータ処理手段と、
前記座標変換手段により変換された、前記メッシュ上の座標に対応するブロックに前記センサデータ変換手段により変換されたデータを対応させるデータ合成手段と、
を含む埋没物探査システム。
【請求項2】
入力された始点、終点、左右幅からメッシュを作成し、
位置測定手段からのデータを前記メッシュ上の座標に変換し、
電磁探査センサからのデータを距離計からのデータに依存して変換し、
変換された、前記メッシュ上の座標に対応するブロックに、処理されたデータを対応させる埋没物探査方法。
【請求項3】
コンピュータに、
入力された始点、終点、左右幅からメッシュを作成させ、
位置測定手段からのデータをメッシュ上の座標に変換させ、
電磁探査センサからのデータを距離計からのデータに依存して変換させ、
変換された、前記メッシュ上の座標に対応するブロックに、処理されたデータを対応させる埋没物探査プログラム。

【図2】
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【図3】
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【図5】
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【図1】
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【図4】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−276254(P2009−276254A)
【公開日】平成21年11月26日(2009.11.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−128926(P2008−128926)
【出願日】平成20年5月15日(2008.5.15)
【出願人】(501119757)国土交通省中部地方整備局長 (12)
【出願人】(391023518)社団法人日本建設機械化協会 (19)
【出願人】(591088537)日本物理探鑛株式会社 (6)