説明

埋込型照明器具

【課題】器具本体内の蓄電池の装着部を器具本体の開口面から広範囲にわたって視認できるとともに固定具の操作を不要にし、蓄電池の交換作業を簡略化する。
【解決手段】蓄電池7の装着部51を第1面5Aに形成した支持板5を、器具本体1の内部で回転軸9を支点に揺動自在に支持した。支持板5は、器具本体1の底面1Aと第1面5Aとの成す角度が90度の第1の位置と、器具本体1の底面1Aと第1面5Aとの成す角度が60度程度の第2の位置との間に揺動する。支持板5が第2の位置にあるときに、装着部51と器具本体1の内側面1Cとの間には、装着部51に対して蓄電池7を第1面5Aの法線方向に着脱するために十分な空間が形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、光源点灯用の回路部品を天井又は側壁内に埋め込み、光源を天井又は側壁から露出させて配置される埋込型照明器具に関する。
【背景技術】
【0002】
緊急時の避難経路を表示する誘導灯のように、光源点灯用の回路部品を天井又は側壁内に埋め込み、光源を天井又は側壁から露出させて配置される埋込型照明器具がある。天井に設置される誘導灯では、電源及び回路部品を収納した箱状の器具本体を天井に形成された埋込孔に下方から挿入し、器具本体の底面から延出した表示ユニットを天井の下方に露出させるようにしたものがある(例えば、特許文献1参照。)。器具本体の底面にはフランジが形成されており、フランジの上面は、天井面に当接する。
【0003】
誘導灯は、緊急時に商用電源ラインが切断された場合でも光源の点灯状態を維持する必要があり、器具本体内に補助電源としての蓄電池が収納されている。蓄電池は、経時的に蓄電量が低下するため、適切なタイミングで交換しなければならない。
【0004】
そこで、従来の誘導灯では、器具本体の底面を開放面とし、蓄電池を器具本体内に底面を経由して垂直方向に着脱自在にしている。器具本体内の蓄電池の装着部には、装着部に装着された蓄電池の底面に当接する固定具が備えられている。固定具は、蓄電池の落下を防止する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−175710公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、従来の埋込型照明器具では、装着部に蓄電池が垂直方向に沿って着脱されるため、開口面から装着部の一面側のみが露出しており、装着部の位置を正確に視認することが困難であった。また、蓄電池の交換に際して、固定具の操作が必要になる。このため、従来の埋込型照明器具では、蓄電池の交換作業が煩雑になる問題がある。
【0007】
この発明の目的は、器具本体内の蓄電池の装着部を器具本体の開口面から広範囲にわたって視認できるとともに、固定具の操作を不要にし、蓄電池の交換作業を簡略化できる埋込型照明器具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明の埋込型照明器具は、器具本体、支持板及び回転軸を備えている。器具本体は、一面を開放面にした筐体である。支持板は、回路部品を保持するとともに第1面に蓄電池が法線方向に着脱される装着部を備えた板状体である。回転軸は、器具本体の内部で第1面が開放面となす角度を変更自在にして支持板を保持する。
【0009】
この構成では、器具本体の内部で、支持板の第1面と器具本体の開放面とのなす角度を変化させることができる。回路部品を保持する支持板の第1面には、装着部に蓄電池が着脱される。第1面と開放面とのなす角度を90度よりも小さくすると、第1面が開放面から外部に露呈し、装着部と器具本体の内面との空間が装着部の法線方向について拡がる。
【0010】
この構成において、回転軸は、第1面と開放面とのなす角度が略90度となる第1の位置と第1面と開放面との成す角度が90度よりも小さい第2の位置との間で支持板を保持するものとすることが好ましい。第1の位置で支持板を器具本体内に安定して保持することができるとともに第1面と反対側の第2面と器具本体の内面との間に他のユニットを収納可能な空間を形成することができ、第2の位置で装着部に対する蓄電池の着脱作業を容易に行うことができる。
【0011】
また、支持板における第1面の反対側の面である第2面に、光源を収納した光源ユニットが法線方向に着脱される取付部材を備えることが好ましい。第1の位置で第2面と器具本体の内面との間に形成される空間を有効に活用することができる。取付部材が第2面から延出して形成されている場合には、器具本体の第2面に対向する側面に取付部材が貫通する孔部を形成することが好ましい。支持板を第2の位置に移動させる際に取付部材と器具本体の内面との干渉を避けることができる。
【0012】
さらに、支持板を第1の位置で弾性的に固定する固定部材を備えることが好ましい。取付部材に他のユニットが装着された状態で、支持板の移動を規制して他のユニットを安定した状態で保持することができる。
【発明の効果】
【0013】
この発明によれば、器具本体内の蓄電池の装着部を器具本体の開口面から広範囲にわたって視認できるとともに、固定具の操作を不要にし、蓄電池の交換作業を簡略化できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】この発明の実施形態に係る埋込型照明器具である誘導灯の組立図である。
【図2】(A)及び(B)同誘導灯の側面断面図である。
【図3】(A)及び(B)は同誘導灯における蓄電池交換時の斜視図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
図1に示すように、この発明の実施形態に係る埋込型照明器具である誘導灯10は、器具本体1、光源ユニット2、表示板3、カバー4を備えている。
【0016】
器具本体1は、例えば金属平板を素材としてプレス加工によって成形された底面1Aを開放面とする筐体である。器具本体1の矩形を呈する底面1Aの周縁部には、フランジ部11〜14が形成されている。器具本体1の互いに対向する2側面のそれぞれには取付バネ15が固定されている。器具本体1は、例えば天井に形成された埋込孔101に下方から挿入される。フランジ部11〜14の上面が埋込孔101の周囲における天井の下面に当接するとともに、取付バネ15が埋込孔101の内周面に圧接する。器具本体1は、取付バネ15の弾性力によって天井に固定される。
【0017】
光源ユニット2は、光を下方に照射する光源を備えている。光源は、例えばLEDアレイである。光源ユニット2には、器具本体1内に収納された回路ユニット6に接続されたコネクタ61,62が装着される。光源ユニット2には、回路ユニット6の端子部60に嵌入された商用電源線102から、コネクタ61,62を介して電源が供給される。
【0018】
表示板3は、内部に導光板を備え、上面の装着部3Aに光源ユニット2が装着される。導光板は、光源ユニット2の光源の光を表示面に配光する。
【0019】
カバー4は、天井に取り付けられた器具本体1の底面1Aを被覆する。カバー4には、中央部に貫通孔4Aが形成されている。貫通孔4Aには、上端を器具本体1の内部で保持された表示板3が貫通する。
【0020】
図2に示すように、器具本体1の内部には、支持板5が、上端部に嵌入する支持ピン9を支点として揺動自在に配置されている。支持ピン9は、この発明の回転軸であり、一例として器具本体1の互いに対向する側面に外部から螺合して貫通している。
【0021】
支持板5は、一例として金属平板のプレス加工によって板状体に構成されている。支持板5は、電源回路等を構成する回路部品を収納した回路ユニット6を第1面5Aに保持する。第1面5Aには、装着部51が形成されている。装着部51には蓄電池7が着脱自在に装着される。支持板5の第2面5Bには、この発明の取付部材である取付ピン8が延出している。取付ピン8には、表示板3の上端部に形成された孔部が水平方向に外嵌することで、表示板3が装着される。
【0022】
支持板5は、器具本体1内で、図2(A)に示す第1の位置と、図2(B)に示す第2の位置と、の間に揺動する。支持板5が第1の位置にある時、第1面5Aと器具本体1の底面1Aとの成す角度θ1は90度である。支持板5が第2の位置ある時、第1面5Aと器具本体1の底面面1Aとの成す角度θ2は略60度である。
【0023】
図2(A)に示すように、支持板5が第1の位置にある時に、支持板5の第2面5Bと器具本体1の内側面1Bとの間には、取付ピン8に表示板3を着脱するために十分な空間が形成されている。即ち、取付ピン8と内側面1Bとの間の距離は、表示板3の幅よりも大きい。このため、取付ピン8に装着された表示板3を、取付ピン8から離間する位置まで水平方向に移動させることができる。
【0024】
図2(B)に示すように、支持板5が第2の位置にある時に、支持板5の第1面5Aの装着部51と器具本体1の内側面1Cとの間には、蓄電池7を装着部51に第1面5Aの法線方向に沿って着脱するために十分な空間が形成される。即ち、装着部51は支持板5において第1面5Aの下端側に寄せて形成されており、支持板5は上端部を支点に揺動する。このため、支持板5が第2の位置にあるときには、支持板5の下端側が内側面1Cから大きく離間する。この時、第1面5Aが器具本体1の底面である底面1Aから下方に露呈する。
【0025】
支持板5には、折曲片52が第1面5A側に折り曲げて延出している。折曲片52には、突起52Aが形成されている。突起52Aは、支持板5が第1の位置にあるときに、器具本体1の内側面に形成された凹部16に弾性的に嵌入し、支持板5の移動を規制する。これによって、取付ピン8に表示板3を装着した状態の支持板5を、器具本体1内で安定した状態に保持できる。
【0026】
なお、支持板5が第2の位置にあるときに、突起52Aが弾性的に嵌入する別の凹部を器具本体1の内側面に形成し、第2の位置からの支持板5の移動を規制するようにしてもよい。
【0027】
器具本体1の第2面5Bが対向する側面には、支持板5が第2の位置に移動する際に取付ピン8が貫通する孔部17が形成されている。取付ピン8は、支持板5を第2の位置に移動させる際に、孔部17を貫通するため器具本体1に干渉することがない。
【0028】
図3に示すように、蓄電池7の交換時には、器具本体1から光源ユニット2、表示板3、カバー4を取り外した状態で、支持板5を図3(A)に示す第1の位置から図3(B)に示す第2の位置に向けて矢印A方向に揺動させる。これよって、支持板5に装着されている蓄電池7が底面1Aから下方に露呈する。
【0029】
次いで、蓄電池7の端子部7Aに形成された弾性片7Bを押圧して回路ユニット6の凹部6Aとの係合を解除し、端子部7Aを摘んだ状態で蓄電池7を装着部51から第1面5Aの法線方向に引き抜く。これによって、使用済みの蓄電池7が装着部51から取り外される。
【0030】
この後、新たな蓄電池7を底面1Aから器具本体1内に挿入し、装着部51に第1面5Aの法線方向に沿って、弾性片7Bが回路ユニット6の凹部6Aに嵌入するまで移動させる。これによって、装着部51に新たな蓄電池7が装着される。
【0031】
上記のように、蓄電池7の装着部51が第1面5Aに形成された支持板5を、器具本体1の内側面1Cから離間する方向に揺動させることで、蓄電池7の着脱に際して装着部51と内側面1Cとの間に十分な空間を形成することができる。この時、作業者は、装着部51に装着された蓄電池7、及び蓄電池7を装着すべき装着部51を、器具本体1の下方から底面1Aを経由して視認することができる。このため、作業者は蓄電池7の交換作業を極めて容易に行うことができる。
【0032】
なお、上記の実施形態では、本願発明を天井に埋設される誘導灯に適用した場合について説明したが、本願発明はこれに限るものではない。本願発明は、天井に埋設される他の照明器具や壁面に埋設される照明器具にも同様に適用できる。
【0033】
上述の実施形態の説明は、すべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上述の実施形態ではなく、特許請求の範囲によって示される。さらに、本発明の範囲には、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0034】
1−器具本体
2−光源ユニット
3−表示板
4−カバー
5−支持板
6−回路ユニット
7−蓄電池
8−取付ピン(取付部材)
9−支持ピン(回転軸)
10−誘導灯
101−埋込孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一面を開放面にした筐体である器具本体と、
照明用の光源に対する電源回路を含む回路部品を保持するとともに、第1面に蓄電池が法線方向に着脱される装着部を備えた板状体の支持板と、
器具本体の内部で第1面が開放面となす角度を変更自在にして支持板を保持する回転軸と、を備えた埋込型照明器具。
【請求項2】
前記回転軸は、第1面と開放面とのなす角度が略90度となる第1の位置と第1面と開放面との成す角度が90度よりも小さい第2の位置との間で支持板を保持する請求項1に記載の埋込型照明器具。
【請求項3】
前記支持板における前記第1面の反対側の面である第2面に、光源を収納した光源ユニットが法線方向に着脱される取付部材を備えた請求項1又は2に記載の埋込型照明器具。
【請求項4】
前記支持板を第1の位置で弾性的に固定する固定部材を備えた請求項1乃至3の何れかに記載の埋込型照明器具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−23155(P2011−23155A)
【公開日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−165394(P2009−165394)
【出願日】平成21年7月14日(2009.7.14)
【出願人】(000001074)クロイ電機株式会社 (49)
【Fターム(参考)】