説明

基材の仮固定方法、半導体装置および仮固定用組成物

【課題】部分的に形成した接着層と剥離層とを有する仮固定材を介して仮固定する方法において、基材と支持体とを貼り合わせる際、基材や支持体と仮固定材との間で浮きなく、仮固定材を形成できる基材の処理方法を提供する。
【解決手段】(1)重合体(A)、および前記重合体(A)と実質的に非混和性の化合物(B)を含有する仮固定用組成物により、基材上に、接着層および剥離層をこの順に形成する工程;(2)前記剥離層の一部を除き、接着層を介して、前記基材と支持体を仮固定する工程;(4)前記接着層の一部を除き、基材上に、接着層の残部、剥離層の残部および支持体をこの順に形成する工程;ならびに(5)支持体から加工後の基材を剥離する工程;をこの順で有する基材の仮固定方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基材の仮固定方法、半導体装置、および基材を処理する際に、基材を支持体上に仮固定するために用いることができる仮固定材の形成に好適な原料組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体ウエハなどの基材を加工(例:ダイシング、裏面研削、フォトファブリケーション)や移動(例:ある装置から別の装置へ基材を移動)するに際して、支持体から基材がずれて動かないように、仮固定材などを用いて基材と支持体とを仮固定する必要がある。そして、加工および/または移動終了後は、基材を支持体から剥離する必要がある。
例えば、特許文献1には、基材や支持体の周縁部で基材と支持体とを接着層を介して接着し、それ以外の部分は、基材を支持体から剥離するのに有利な機能を有する層(例えば、剥離剤で形成された層:剥離層)を有する仮固定材を用いた仮固定する方法が提案されていた。
【0003】
このような仮固定材を形成するための手段として、接着層および剥離層は、各々別に形成する方法、例えば、1)支持体の周縁部以外の部分に剥離層を形成し、また、基材の全面に接着層を形成し、その後、支持体と基材とを、剥離層と接着層が向かい合うように貼り合わせることで形成する方法、2)基材上に接着層を形成し、次いで、接着層上の周縁部以外の部分に剥離層を形成し、その後、支持体と基材とを、接着層および剥離層を介して貼り合わせることで形成する方法、3)基材上の周縁部以外の部分に剥離層を形成し、次いで、周縁部に接着層を分注して形成し、その後、支持体と基材とを、接着層および剥離層を介して貼り合わせることで形成する方法、が提案されていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表2011−510518号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、剥離層を塗布により形成する際、基材の種類によっては、塗布液と基材がはじき、基材上に均一に剥離層を形成することが困難である。また、剥離層を塗布により形成する際、基材上に均一に薄く剥離層を形成することは困難であるため、剥離層は厚膜で形成することになる。このため、基材と支持体を貼り合わせる際、剥離層が不均一であることや、剥離層が厚膜であることにより、基材や支持体と、仮固定材との間で浮きが生じ、基材の加工の際に、この浮きが原因で支持体から基材が脱落するという課題がある。特に基材が、大きかったり、重かったりする場合は、支持体から基材が脱落するという課題が顕著に出てくる。
【0006】
本発明の課題は、特許文献1の基材の仮固定方法のように、部分的に形成した接着層と剥離層とを有する仮固定材を介して仮固定する方法において、基材と支持体とを貼り合わせる際、基材や支持体と仮固定材との間で浮きなく、仮固定材を形成できる基材の仮固定方法を提供すること、ならびに前記基材の仮固定方法に関連した仮固定用組成物および半導体装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは上記課題を解決すべく鋭意検討を行った。その結果、以下の構成を有する基材の仮固定方法により上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。すなわち本発明は、例えば以下の[1]〜[8]に関する。
【0008】
[1](1)重合体(A)、および前記重合体(A)と実質的に非混和性の化合物(B)を含有する仮固定用組成物により、基材上に、接着層および剥離層をこの順に形成する工程;
(2)前記剥離層の一部を除き、接着層を介して、前記基材と支持体を仮固定する工程;
(4)前記接着層の一部を除き、基材上に、接着層の残部、剥離層の残部および支持体をこの順に形成する工程;ならびに
(5)支持体から加工後の基材を剥離する工程;
をこの順で有する基材の仮固定方法。
[2]前記接着層が、シクロオレフィン系重合体(A1)を含有する接着層である前記[1]の基材の仮固定方法。
[3]前記工程(4)が、前記接着層の一部を炭化水素系溶剤に溶解させることで除き、基材上に、接着層の残部、剥離層の残部および支持体をこの順に形成する工程;である前記[2]の基材の仮固定方法。
[4]前記剥離層の膜厚が、1〜1000nmである前記[1]の基材の仮固定方法。
[5]前記[1]〜[4]の基材の仮固定方法に用いられる仮固定用組成物であって、重合体(A)、および前記重合体(A)と実質的に非混和性の化合物(B)を含有する仮固定用組成物。
[6]前記重合体(A)が、シクロオレフィン系重合体(A1)である前記[5]の仮固定用組成物。
[7]シクロオレフィン系重合体(A1)100質量部と、フッ素原子を有する繰り返し単位を有する重合体(B1)を1〜30質量部含有する組成物。
[8]前記[1]の基材の仮固定方法により得られる半導体装置。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、基材と支持体とを貼り合わせる際、基材や支持体と仮固定材との間で浮きなく、仮固定材を形成できる基材の仮固定方法を提供すること、ならびに前記基材の仮固定方法に関連した仮固定用組成物および半導体装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】基材の仮固定方法の一実施態様の模式図。
【図2】基材の仮固定方法の一実施態様の模式図。
【図3】基材の仮固定方法の一実施態様の模式図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の基材の仮固定方法、前記基材の仮固定方法に関連した仮固定用組成物、および前記基材の仮固定方法によって得られる半導体装置について説明する。
本発明において仮固定用組成物とは、仮固定材を形成するための組成物である。仮固定材とは、半導体ウエハなどの基材を加工(例:ダイシング、裏面研削、フォトファブリケーション(例:レジストパターンの形成、メッキ等による金属バンプ形成、化学気相成長等による膜形成、RIEなどによる加工))や移動(例:ある装置から別の装置へ基材を移動)するに際して、支持体から基材がずれて動かないように基材を仮固定するために用いられる仮固定材のことである。
【0012】
1.基材の仮固定方法
本発明の基材の仮固定方法は、
(1)重合体(A)、および前記重合体(A)と実質的に非混和性の化合物(B)を含有する仮固定用組成物により、基材上に、接着層および剥離層をこの順に形成する工程;
(2)前記剥離層の一部を除き、接着層を介して、前記基材と支持体を仮固定する工程;
(4)前記接着層の一部を除き、基材上に、接着層の残部、剥離層の残部および支持体をこの順に形成する工程;ならびに
(5)支持体から加工後の基材を剥離する工程;
をこの順で有する。以下、上記各工程をそれぞれ、工程(1)〜工程(5)ともいう。
【0013】
本発明では、重合体(A)、および重合体(A)と実質的に非混和性の化合物(B)を含有する仮固定用組成物から、基材上に、接着層および剥離層を形成することから、接着層上に、均一に薄く剥離層を形成することができる。ここから、剥離層の一部を除去することで、接着部、剥離層の残部および接着層の残部を有する仮固定材を形成することができる。このため、基材や支持体と仮固定材との間で浮きなく、基材と支持体とを貼り合わせることができる。
【0014】
1−1.工程(1)
工程(1)の模式図を、図1(a)および図1(b)に示す。工程(1)は、基材10上に、重合体(A)、および前記重合体(A)と実質的に非混和性の化合物(B)を含有する仮固定用組成物を塗布することで、仮固定用組成物からなる塗膜20を形成し、次いで、塗膜20から、重合体(A)と化合物(B)が層分離することで、重合体(A)をより多く含有する接着層21、および化合物(B)をより多く含有する剥離層22を基板10上に形成する。
【0015】
加工の対象物である基材10としては、例えば、半導体ウエハ、ガラス基板、樹脂基板、金属基板、金属箔を有する基板が挙げられる。半導体ウエハには、通常はバンプや配線、絶縁膜などが形成されている。樹脂塗膜としては、例えば、有機成分を主成分として含有する層が挙げられ;具体的には、感光性材料から形成される感光性樹脂層、絶縁性材料から形成される絶縁性樹脂層、感光性絶縁樹脂材料から形成される感光性絶縁樹脂層などが挙げられる。
【0016】
基材上に塗膜20形成するに際して、塗膜20を面内で均一に形成するため、基材表面を予め表面処理することもできる。表面処理の方法としては、例えば、基材表面に予め表面処理剤を塗布する方法が挙げられる。
【0017】
表面処理剤としては、例えば、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、ヘキサメチルジシラザンなどのシリコン系化合物が挙げられる。これらは、スピンコート法や、ガス状にして基材上に形成する。
【0018】
仮固定用組成物の塗布方法としては、スピンコート法、等の従来公知の塗布方法を用いることができる。スピンコート法では、基材の大きさにより適宜決められ、例えば、12インチのシリコンウエハの場合、通常、回転速度が300〜3,500rpm(好ましくは500〜1,500rpm)、加速度が500〜15,000rpm/秒、回転時間が30〜300秒という条件で行われる。
【0019】
仮固定用組成物を塗布して塗膜20を形成した後は、接着層21と剥離層22の形成を促進するために、および、仮固定用組成物中に溶剤を含む場合は、溶剤を蒸発させるためにホットプレート等で加熱処理を行うことができる。加熱処理の温度は、通常150〜275℃、好ましくは150〜260℃であり、時間が2〜15分、より好ましくは3〜10分である。塗膜20の膜厚は、通常、5〜500μmである。
【0020】
後述のとおり、化合物(B)は、重合体(A)よりも低い表面エネルギーを有していることから、層分離により、化合物(B)は塗膜20の表面に偏在する。この偏在により、重合体(A)をより多く含む接着層21と、化合物(B)をより多く含む剥離層22が形成される。なお、ここで剥離層22とは、化合物(B)が、60重量%以上含む層を示し、接着層21とは、塗膜から形成する層において、剥離層22以外の層を示す。
なお、剥離層中に含まれる化合物(B)の含有量は、X線電子分光法(ESCA:Electron Spectroscopy for Chemical Analysis)にて測定した値である。
【0021】
接着層21の膜厚は、通常、5〜500μmである。また、基材10の接着層21形成面側に、バンプなどの突起物がある場合、当該突起物を保護するために、接着層で突起物を覆うことがある。このことから、突起物の高さにより接着層21の膜厚は適宜決めることができるが、突起物を有する場合、突起物の高さ1に対して、通常、接着層21の膜厚は、1.5以上で形成する。
【0022】
剥離層22の膜厚は、通常、1〜1000nmであり、好ましくは、5〜900nm、より好ましくは10〜800nmである。
【0023】
1−1−1.仮固定用組成物
仮固定用組成物は、重合体(A)と、および前記重合体(A)と実質的に非混和性の化合物(B)を含有する。また、必要に応じて溶剤(C)を含有する。
【0024】
<重合体(A)>
重合体(A)は、熱硬化性樹脂でも、熱可塑性樹脂でも、どのような重合体であってもよい。これらの中でも、工程(4)において、接着層の一部を、溶剤にて容易に除去するためには、熱可塑性樹脂が好ましい。
【0025】
熱可塑性樹脂としては、シクロオレフィン系樹脂、ポリエーテル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリイミド系樹脂などの溶融温度の高い樹脂;ノボラック樹脂、C5系石油樹脂、C9系石油樹脂、C5系/C9系混合石油樹脂、シクロペンタジエン系樹脂、ビニル置換芳香族化合物の重合体、オレフィンとビニル置換芳香族化合物との共重合体、シクロペンタジエン系化合物とビニル置換芳香族化合物との共重合体、これらの水素添加物などの溶融温度の低い樹脂;を挙げられる。熱可塑性樹脂は、2種以上組み合わせて使うことができる。例えば、溶融温度の高い樹脂と溶融温度の低い樹脂を組み合わせることで、接着層の溶融温度を制御することができる。これらの中でも、シクロオレフィン系樹脂(A1)が好ましい。
【0026】
シクロオレフィン系重合体(A1)としては、例えば、環状オレフィンの付加共重合体、環状オレフィンの開環メタセシス重合体、前記開環メタセシス重合体を水素化して得られる重合体が挙げられる。このようなシクロオレフィン系重合体(A1)の重合方法は従来公知である。シクロオレフィン系重合体(A1)のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により測定される重量平均分子量(Mw)は、ポリスチレン換算で、通常5,000〜1,000,000、好ましくは10,000〜500,000である。
【0027】
環状オレフィンとしては、例えば、ノルボルネン系オレフィン、テトラシクロドデセン系オレフィン、ジシクロペンタジエン系オレフィン、およびこれらの誘導体が挙げられる。前記誘導体としては、例えば、アルキル基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜10のアルキル基)、アルキリデン基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜10のアルキリデン基)、アラルキル基(好ましくは炭素数7〜30、より好ましくは炭素数7〜18のアラルキル基)、シクロアルキル基(好ましくは炭素数3〜30、より好ましくは炭素数3〜18のシクロアルキル基)、ヒドロキシ基、アルコキシ基(好ましくは炭素数1〜10のアルコキシ基)、アセチル基、シアノ基、アミド基、イミド基、シリル基、およびアリール基などによる置換誘導体が挙げられる。
【0028】
シクロオレフィン系重合体(A1)の市販品としては、例えば、日本ゼオン(株)製の「ZEONOR(ゼオノア)」や「ZEONEX(ゼオネックス)」、JSR(株)製の「ARTON(アートン)」、TOPAS ADVANCED POLYMERS社製の「TOPAS(トパス)」、三井化学(株)製の「APEL(アペル)」などが挙げられる。
【0029】
<化合物(B)>
重合体(A)と実質的に非混和の化合物(B)とは、仮固定用組成物では重合体(A)や他の成分と均一に溶解もしくは分散しているが、仮固定用組成物から塗膜を形成するときに重合体(A)や他の成分との溶解性もしくは分散性が低下する化合物を示す。
【0030】
化合物(B)は、重合体(A)よりも低い表面エネルギーを有している。このため、重合体(A)と化合物(B)を含有する塗膜において、化合物(B)は塗膜の表面に偏在し、剥離層を形成する。前記、表面エネルギーは、通常、重合体(A)の表面エネルギーよりも、0.01mN/m以上、好ましくは0.1mN/m以上低い。
【0031】
化合物(B)としては、フッ素原子を有する繰り返し単位を有する重合体(B1)であることが好ましい。このような繰り返し単位の具体例としては、特開2007−163606号公報、特開2011−095623号公報および特開2011−170284号公報に記載の重合体等が挙げられる。
化合物(B)としては、例えば、特開2007−163606号公報に記載の、珪素原子を有する化合物等を用いることもできる。
【0032】
これらの中でも、下記一般式(b1)および/または(b2)で表される繰り返し単位を有する重合体(B1−1)が、良好に接着層21と剥離層22を形成でき、均一な剥離層を形成できることから、基材と支持体とを貼り合わせる際、基材や支持体と仮固定材との間で浮きなく、仮固定材を形成できるため、好ましい。
【0033】
【化1】

【0034】
一般式(b1)および(b2)中、Rは、水素原子、メチル基、又はトリフルオロメチル基を示す。一般式(b1)中、Rfは、少なくとも1つの水素原子がフッ素原子で置換された炭素数1〜30の炭化水素基を示す。一般式(b2)中、Rは、(n+1)価の連結基を示す。nは、1〜3の整数を示す。Rは、水素原子又は1価の有機基を示す。Rfは、相互に独立に、水素原子、電子吸引性基を示す。
【0035】
一般式(b1)中のRfの例としては、少なくとも1つの水素原子がフッ素原子で置換された炭素数1〜6の直鎖状又は分岐状の脂肪族炭化水素基や、少なくとも1つの水素原子がフッ素原子で置換された炭素数4〜20の脂環式炭化水素基又はそれから誘導される基がある。
【0036】
少なくとも1つの水素原子がフッ素原子で置換された炭素数1〜6の直鎖状又は分岐状の脂肪族炭化水素基の例としては、メチル基、エチル基、1−プロピル基、2−プロピル基、1−ブチル基、2−ブチル基、2−(2−メチルプロピル)基、1−ペンチル基、2−ペンチル基、3−ペンチル基、1−(2−メチルブチル)基、1−(3−メチルブチル)基、2−(2−メチルブチル)基、2−(3−メチルブチル)基、ネオペンチル基、1−ヘキシル基、2−ヘキシル基、3−ヘキシル基、1−(2−メチルペンチル)基、1−(3−メチルペンチル)基、1−(4−メチルペンチル)基、2−(2−メチルペンチル)基、2−(3−メチルペンチル)基、2−(4−メチルペンチル)基、3−(2−メチルペンチル)基、3−(3−メチルペンチル)基、又はこれらの部分フッ素化或いはこれらのパーフルオロアルキル化した基等を挙げることができる。
【0037】
また、少なくとも1つの水素原子がフッ素原子で置換された炭素数4〜20の脂環式炭化水素基又はそれから誘導される基の例としては、シクロペンチル基、シクロペンチルメチル基、1−(1−シクロペンチルエチル)基、1−(2−シクロペンチルエチル)基、シクロヘキシル基、シクロヘキシルメチル基、1−(1−シクロヘキシルエチル)基、1−(2−シクロヘキシルエチル基)、シクロヘプチル基、シクロヘプチルメチル基、1−(1−シクロヘプチルエチル)基、1−(2−シクロヘプチルエチル)基、2−ノルボルニル基等の脂環式炭化水素基、またはこれらの部分フッ素化或いはこれらのパーフルオロアルキル化した基等がある。
【0038】
一般式(b2)中、Rは、水素原子又は1価の有機基を示す。1価の有機基としては炭素数1〜30の1価の置換基を有していてもよい炭化水素基を挙げることができる。
【0039】
炭素数1〜30の1価の炭化水素基の例としては、炭素数1〜10で直鎖状又は分岐状の脂肪族炭化水素基や炭素数3〜30の脂環式炭化水素基があり、炭素数1〜7の直鎖状または分岐鎖状のアルキル基及び炭素数3〜7の脂環式炭化水素基が好ましい。
【0040】
炭素数1〜10で直鎖状又は分岐状の脂肪族炭化水素基としては、メチル基、エチル基、1−プロピル基、2−プロピル基、1−ブチル基、2−ブチル基、2−(2−メチルプロピル)基、1−ペンチル基、2−ペンチル基、3−ペンチル基、1−(2−メチルブチル)基、1−(3−メチルブチル)基、2−(2−メチルブチル)基、2−(3−メチルブチル)基、ネオペンチル基、1−ヘキシル基、2−ヘキシル基、3−ヘキシル基、1−(2−メチルペンチル)基、1−(3−メチルペンチル)基、1−(4−メチルペンチル)基、2−(2−メチルペンチル)基、2−(3−メチルペンチル)基、2−(4−メチルペンチル)基、3−(2−メチルペンチル)基、3−(3−メチルペンチル)基等を挙げることができる。また、炭素数3〜30の脂環式炭化水素基としては、シクロペンチル基、シクロペンチルメチル基、1−(1−シクロペンチルエチル)基、1−(2−シクロペンチルエチル)基、シクロヘキシル基、シクロヘキシルメチル基、シクロヘプチル基、2−ノルボルニル基等を挙げることができる。また、この炭化水素基は置換基を有していてもよい。
【0041】
一般式(b2)中、Rは、(n+1)価の連結基を示す。連結基の例としては、単結合又は炭素数1〜30の(n+1)価の炭化水素基がある。また、これらの炭化水素基と、酸素原子、硫黄原子、イミノ基、カルボニル基、−CO−O−基、又は−CO−NH−基との組み合わせがある。
【0042】
一般式(b2)中、Rfは水素原子または電子吸引性基を示す。電子求引性基としては、フッ素原子、又は少なくとも1つの水素原子がフッ素原子で置換された炭素数1〜30の炭化水素基、ニトロ基、シアノ基等を挙げることができる。少なくとも1つの水素原子がフッ素原子で置換された炭素数1〜30の炭化水素基としては、前記Rfと同様のことがいえる。
【0043】
繰り返し単位(b1)および/または(b2)を有する重合体(B1−1)は、公知の方法、例えば、重合開始剤や連鎖移動剤の存在下、重合溶剤中で、繰り返し単位(b1)を与える単量体および/または繰り返し単位(b2)を与える単量体と、必要に応じて他の単量体(b3)を、ラジカル重合することによって合成できる。
【0044】
繰り返し単位(b1)を与える単量体としては、トリフルオロメチル(メタ)アクリル酸エステル、2,2,2−トリフルオロエチル(メタ)アクリル酸エステル、パーフルオロエチル(メタ)アクリル酸エステル、パーフルオロn−プロピル(メタ)アクリル酸エステル、パーフルオロi−プロピル(メタ)アクリル酸エステル、パーフルオロn−ブチル(メタ)アクリル酸エステル、パーフルオロi−ブチル(メタ)アクリル酸エステル、パーフルオロt−ブチル(メタ)アクリル酸エステル、2−(1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロピル)(メタ)アクリル酸エステル、1−(2,2,3,3,4,4,5,5−オクタフルオロペンチル)(メタ)アクリル酸エステル、パーフルオロシクロヘキシルメチル(メタ)アクリル酸エステル、1−(2,2,3,3,3−ペンタフルオロプロピル)(メタ)アクリル酸エステル、1−(3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,9,9,10,10,10−ヘプタデカフルオロデシル)(メタ)アクリル酸エステル、1−(5−トリフルオロメチル−3,3,4,4,5,6,6,6−オクタフルオロヘキシル)(メタ)アクリル酸エステル等がある。繰り返し単位(b1)を与える単量体は、市販品を用いることができる。
【0045】
繰り返し単位(b2)を与える単量体としては、下記一般式(b2−m1)〜(b2−m5)に示す単量体がある。
【0046】
【化2】

【0047】
一般式(b2−m1)〜(b2−m5)中、R及びRは、一般式(b2)中のR及びRと同じである。
【0048】
前記他の単量体(b3)としては、下記一般式(b3−m1)〜(b3−m4)に示す単量体や、トリフルオロメチル(メタ)アクリル酸エステル、2,2,2−トリフルオロエチル(メタ)アクリル酸エステル、パーフルオロエチル(メタ)アクリル酸エステル、パーフルオロn−プロピル(メタ)アクリル酸エステル、パーフルオロi−プロピル(メタ)アクリル酸エステル、パーフルオロn−ブチル(メタ)アクリル酸エステル、パーフルオロi−ブチル(メタ)アクリル酸エステル、パーフルオロt−ブチル(メタ)アクリル酸エステル、2−(1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロピル)(メタ)アクリル酸エステル、1−(2,2,3,3,4,4,5,5−オクタフルオロペンチル)(メタ)アクリル酸エステル、パーフルオロシクロヘキシルメチル(メタ)アクリル酸エステル、1−(2,2,3,3,3−ペンタフルオロプロピル)(メタ)アクリル酸エステル、1−(3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,9,9,10,10,10−ヘプタデカフルオロデシル)(メタ)アクリル酸エステル、1−(5−トリフルオロメチル−3,3,4,4,5,6,6,6−オクタフルオロヘキシル)(メタ)アクリル酸エステル、(((トリフルオロメチル)スルホニル)アミノ)エチル−1−メタクリレート、2−(((トリフルオロメチル)スルホニル)アミノ)エチル−1−アクリレート等を挙げることができる。
【0049】
【化3】

【0050】
重合体(B1−1)中に含まれる、繰り返し構造単位(b1)および繰り返し構造単位(b2)の含有割合は、重合体中の全繰り返し構造単位の合計を100mol%とした場合、通常100mol%以下であり、好ましくは50〜100mol%であり、より好ましくは60〜100mol%である。
【0051】
重合体(B1−1)のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により測定される重量平均分子量(Mw)は、ポリスチレン換算で、通常1000〜100000、好ましくは1000〜30000である。実施例の記載に従い測定した値である。
【0052】
化合物(B)の含有量は、重合体(A)100質量部に対して、通常、1〜50質量部、好ましくは2〜30質量部である。化合物(B)の含有量が前記範囲にあると、基材や支持体と仮固定材との間で浮きなく、仮固定材を形成できることから好ましい。
また、化合物(B)が、フッ素原子を有する繰り返し単位を有する重合体(B1)であり、重合体(A)が、シクロオレフィン系重合体(A1)の場合、シクロオレフィン系重合体(A1)100質量部に対して、フッ素原子を有する繰り返し単位を有する重合体(B1)は、1〜30質量部、好ましくは2〜20質量部、より好ましく3〜15質量部は含有するのが好ましい。フッ素原子を有する繰り返し単位を有する重合体(B1)の含有量が前記範囲にあると、基材や支持体と仮固定材との間で浮きなく、仮固定材を形成できることから好ましい。
【0053】
<溶剤(C)>
仮固定用組成物は、仮固定用組成物のハンドリング性を向上させるために、または、重合体(A)や化合物(B)などの、仮固定用組成物中に含まれる成分を均一に混合するために用いることができる。
【0054】
溶剤(C)としては、重合体(A)および化合物(B)を溶解できる溶剤であればどのようなものでも良いが、例えば、リモネン、メシチレン、ジペンテン、ピネン、ビシクロヘキシル、シクロドデセン、1−tert−ブチル−3,5−ジメチルベンゼン、ブチルシクロヘキサン、シクロオクタン、シクロヘプタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の炭化水素類、アニソール、4−メチル−2−ペンタノール、1−ブチルアルコール、2−ブチルアルコール、イソブチルアルコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールメチルエーテル、ジグライム等のアルコール/エーテル類、酢酸エチル、乳酸エチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、γ−ブチロラクトン等のエステル/ラクトン類、シクロヘキサノン、等のケトン類、N−メチル−2−ピロリジノン等のアミド/ラクタム類が挙げられ、これらは1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、重合体(A)としてシクロオレフィン系重合体(A1)を用いる場合、シクロオレフィン系重合体(A1)の溶解性等の観点から、炭化水素類が好ましい。
【0055】
<その他の成分>
仮固定用組成物は、必要に応じて、さらに、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシランなど密着助剤を、仮固定材の伸びを向上させる目的で特開2003−191375号公報などに記載のエラストマーを、仮固定後剥離する際、露光により仮固定材を分解させ剥離を容易におこさせるために、ルシリンTPO(BASF社製)、イルガキュア651(BASF社製)およびカーボンブラックなどの紫外線吸収剤を、仮固定材の酸化を防止するために、TINUVIN479(BASF社製)などの酸化防止剤を、添加することができる。
【0056】
<仮固定用組成物の調製>
仮固定用組成物の調製には、上記成分を均一に混合することで行う。また、不純物を除く目的で、適宜、濾過を行うこともできる。仮固定用組成物中に含まれる重合体(A)の含有量は、通常、5〜70重量%、化合物(B)の含有量は、通常、0.01〜10重量%である。
【0057】
1−2.工程(2)
工程(2)の模式図を、図1(c)、図2(a)、および図2(b)に示す。工程(2)は、剥離層22の一部を除くことで、接着層21の一部を表出させる。次いで、剥離層の残部24および接着層21を有する側から、支持体40を押し当てることで、剥離層の除去した部分30を接着層21の一部が占めることにより、接着層21の一部が接着部23となる。次いで、接着部23を介して基材10と支持体40を仮固定する。つまり、接着層21から形成した、接着部23、剥離層の残部24、接着層の残部25を有する仮固定材を介して、基材10と支持体40を仮固定する。
【0058】
剥離層22の除去は、通常、剥離層22を溶解可能な溶剤と接触させることにより除去する。剥離層22が溶解可能な溶剤であればどのような溶剤であってもよいが、通常、上述の仮固定用組成物で挙げた溶剤、または、上述の繰り返し構造単位(b2)のような極性基を有している場合は、水並びに水酸化テトラメチルアンモニウム水溶液などを用いる。剥離層22と溶剤との接触時間および温度は、溶剤の種類、剥離層の厚さにより適宜選ばれ、通常、1〜10000秒、10〜40℃である。
【0059】
剥離層22を除去する場所は、基材の周縁上方に形成した剥離層が好ましい。工程(4)において、接着部23が他の層や部材(基材、支持体およびその他の層や部など)によって囲まれていると、接着部を除去するのは非常に困難となる。剥離層22を除去した場所に接着部23が形成されることから、剥離層22を除去する場所は、接着部23が、接着部が基材、支持体およびその他の層や部によって囲まれない場所に形成できる、基材の周縁上方に形成した剥離層が好ましい。
【0060】
また、工程(3)では、種々のプロセス溶剤が用いられることが多く、当該プロセス溶剤が仮固定材に接触することになる。接着部23を基材10の周縁部に形成することで、前記プロセス溶剤に対して相対的に耐性の劣る(溶解する)剥離層の残部24などを、接着部23により保護できる。したがって、前記プロセス溶剤による制限を受けることなく、剥離層の残部24の材質の選択を広げることができることから、剥離層22を除去する場所は、基材の周縁上に形成した剥離層が好ましい。
【0061】
前記支持体40としては、例えば、ガラスやシリコンなどの取扱いが容易で且つ硬くて平坦な面を有するものを用いられる。
支持体を、押し当てる際、接着層21は加熱しながら(通常、50〜350℃で10〜300秒)行っても良い。接着層21を加熱しながら行うことで、表出させた接着層21の表面30と支持体40との接着を容易に行うことができる。
【0062】
1−3.工程(3)
工程(3)の模式図を、図2(c)に示す。工程(3)は、前記基材10を加工する工程、つまり、支持体上に仮固定された基材10(被加工基材)を加工し、加工基材11を得る工程である。基材10の加工処理としては、例えば、基材の薄膜化(例:裏面研削);エッチング加工、スパッタ膜の形成、メッキ処理およびメッキリフロー処理などから選ばれる一以上の処理を含むフォトファブリケーション;ならびにダイシングが挙げられる。
【0063】
工程(3)では、種々のプロセス溶剤が用いられることが多く、当該プロセス溶剤が仮固定材に接触することになる。本発明では、当該プロセス溶剤に対して耐性を有する、シクロオレフィン系重合体(A1)を含有する接着層を用いることで、前記プロセス溶剤によりダメージを受けることなく基材の処理が可能となる。
【0064】
また、工程(3)のフォトファブリケーションにおいては、メッキリフロー処理など高温処理を行われることが多く、仮固定材には耐熱性が必要となる。重合体(A)に耐熱性に優れたシクロオレフィン系重合体(A1)を用いることで、高温処理を行っても仮固定材はダメージを受けることなく基材の処理が可能となる。
【0065】
1−4.工程(4)
工程(4)の模式図を、図3(a)に示す。工程(4)は、接着層の一部(接着部23を含む)を除き、基材上に、接着層の残部26、剥離層の残部27および支持体をこの順に形成する工程である。剥離層の残部27とは、接着部23を除いた後の剥離層の残部のことである。
【0066】
接着部23を含む接着層の一部を除く方法として、例えば、溶剤で溶解させる方法などのウェットプロセスを用いた方法;プラズマ処理、アッシング処理またはオゾン処理などのドライプロセスを用いた方法が挙げられる。これらのなかでも、溶剤の種類を選択することで、被加工基材へのダメージを最小限に抑えることができることから、ウェットプロセスを用いた方法が好ましい。
【0067】
前記溶剤としては、例えば、リモネン、メシチレン、ジペンテン、ピネン、ビシクロヘキシル、シクロドデセン、1−tert−ブチル−3,5−ジメチルベンゼン、ブチルシクロヘキサン、シクロオクタン、シクロヘプタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の炭化水素類、アニソール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジグライム等のアルコール/エーテル類、炭酸エチレン、酢酸エチル、酢酸N−ブチル、乳酸エチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、炭酸プロピレン、γ−ブチロラクトン等のエステル/ラクトン類、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、メチルイソブチルケトン、2−ヘプタノン等のケトン類、N−メチル−2−ピロリジノン等のアミド/ラクタム類が挙げられる。
【0068】
これらの中でも、被加工基材へのダメージを抑えるためには、炭化水素類が好ましい。また、シクロオレフィン系重合体(A1)を含有する仮固定用組成物を用いれば、接続部にはシクロオレフィン系重合体(A1)を含有することになることから、シクロオレフィン系重合体(A1)を容易に溶解できる炭化水素類が好ましい。
【0069】
ウェットプロセスを用いた方法としては、例えば、溶剤に浸漬する方法、溶剤をスプレーする方法、溶剤に浸漬しながら超音波を加える方法が挙げられる。溶剤の温度は、通常20〜80℃、好ましくは20〜50℃である。浸漬時間は、通常、1〜180分である。
【0070】
1−5.工程(5)
工程(5)の模式図を、図3(b)に示す。工程(5)は、支持体から加工後の基材を剥離する工程であり、通常、剥離層の残部27より剥離する。剥離する際に加える力の方向は、加工後の基材11がダメージを受けなければどのような方向でもよい。例えば、支持体と基材とを支持体の表面に略水平方向にずらす剪断処理(通常、0.1〜5N/cm)により、支持体から基材を剥離すればよく、あるいは、支持体の表面に対して略垂直方向に基材を引っ張ることで、支持体から基材を剥離すればよい。
【0071】
例えば、基材を支持体の表面に対して水平方向にスライドさせると同時に、支持体を固定する、あるいは前記基材に付加される力に拮抗する力を支持体に付加することによって、基材を支持体から剥離する。なお、本発明において「剪断」とは、支持体と基材との仮固定面の略平行方向に力を作用させることをいう。
【0072】
また、剥離層が熱や光により接着する力を下げるものである場合、剥離層の残部27に、加熱処理や露光処理を行った後、もしくは、加熱処理や露光処理を行いながら、剥離を行っても良い。
【0073】
剥離後の基材11には、通常、接着層や剥離層の残部が残存しているため、溶剤(通常、上述の仮固定用組成物を製造する際に使用されうる溶剤)で洗浄し、除去する。洗浄方法としては、基材を洗浄液に浸漬する方法、基材に洗浄液をスプレーする方法、基材を洗浄液に浸漬しながら超音波を加える方法などが挙げられる。洗浄液の温度は特に限定されないが、好ましくは20〜80℃、より好ましくは20〜50℃である。
【0074】
本発明の基材の仮固定方法は、基材の種類を選ばず、基材や支持体と仮固定材との間で浮きなく、仮固定材を形成することができる。このため、現代の経済活動の場面で要求される様々な加工処理(例:各種材料表面の微細化加工処理、各種表面実装、半導体ウエハや半導体素子の運搬)等に好適である。
【0075】
3.半導体装置
本発明の半導体装置は、本発明の基材の処理方法によって得られる。本発明の基材の処理方法は、基材の種類を選ばず、基材や支持体と仮固定材との間で浮きなく、仮固定材を形成することができる。
このため、前記半導体素子等の半導体装置は仮固定材による汚染(例:シミ、焦げ)が極めて低減されたものとなっている。また、本発明の半導体装置は、基材自体や基材が有する各部材の破損・損耗が極めて低減されたものとなっている。
【実施例】
【0076】
以下、本発明の一実施態様を、実施例をもとにより具体的に説明する。
【0077】
1.化合物(B)の合成
[合成例1]化合物(B−1)の合成
46.8gのメタクリル酸(1,1,1−トリフルオロ−2−トリフルオロメチル−2−ヒドロキシ−4−ブチル)エステル(下記式(b2−m2−1))、及び4.5gの2,2’−アゾビス−(2−メチルプロピオン酸メチル)を40gのイソプロパノールに溶解させ、単量体溶液を調製した。窒素で置換したフラスコにイソプロパノール50gを準備し、フラスコ内を80℃に加熱しながら、前記単量体溶液を2時間かけて滴下した。滴下後、更に80℃で1時間加熱し、次いで、3.2gのビニルスルホン酸を含有するイソプロパノール溶液10gを30分かけて滴下した。その後、80℃で1時間加熱した後、冷却して共重合液を得た。得られた共重合液は、溶媒を4−メチル−2−ペンタノール溶液に置換し、化合物(B−1)の4−メチル−2−ペンタノール溶液を得た。化合物(B−1)の重量平均分子量(Mw)は10,000であった。13CNMRによる、下記式(b2−m2−1)の単量体由来の構造単位の含有割合は、化合物(B−1)中の全繰り返し構造単位の合計を100mol%とした場合、98mol%であった。
【0078】
【化4】

【0079】
[合成例2]化合物(B−2)の合成
46.8gのメタクリル酸(1,1,1−トリフルオロ−2−トリフルオロメチル−2−ヒドロキシ−4−ブチル)エステル(前記式(b2−m2−1))、及び4.5gの2,2’−アゾビス−(2−メチルプロピオン酸メチル)を40gのイソプロパノールに溶解させ単量体溶液をフラスコ内に準備し、フラスコ内を80℃で4時間30分加熱した。その後、フラスコ内を30℃以下に冷却して、共重合液を得た。得られた共重合液をn−ヘキサンで精製後、4−メチル−2−ペンタノール溶液に置換し、化合物(B−2)の4−メチル−2−ペンタノール溶液を得た。化合物(B−2)の重量平均分子量(Mw)は10,000であった。
【0080】
なお、Mwは、下記の条件によるGPCにより測定した。
装置:HLC−8120(東ソー製)
カラム:G2000HXL2本、G3000HXL1本、G4000HXL1本(以上、東ソー製)
溶出溶剤:テトラヒドロフラン
カラム温度:40℃
流速:1.0mL/分
標準物質:単分散ポリスチレン
【0081】
1.仮固定用組成物の準備
[実施例1]仮固定用組成物1の調製
100質量部のシクロオレフィン重合体(商品名「ARTON R5300」、JSR(株)製)と、40質量部の水添C9系石油樹脂(商品名「アルコンP−140」、荒川化学工業(株)製)と、3質量部の商品名「TINUVIN 479」(BASF社製)と、7質量部の前記合成例1で得た化合物(B−1)と、25質量部の4−メチル−2−ペンタノールと、350質量部のメシチレンとを混合することにより、仮固定用組成物1を調製した。
【0082】
[実施例2]仮固定用組成物2の調製
100質量部のシクロオレフィン重合体(商品名「ARTON R5300」、JSR(株)製)と、40質量部の水添C9系石油樹脂(商品名「アルコンP−140」、荒川化学工業(株)製)と、3質量部の商品名「TINUVIN 479」(BASF社製)と、7質量部の前記合成例2で得た化合物(B−2)と、25質量部の4−メチル−2−ペンタノールと、350質量部のメシチレンとを混合することにより、仮固定用組成物2を調製した。
【0083】
[参考例1]組成物1の調製
100質量部のシクロオレフィン重合体(商品名「ARTON R5300」、JSR(株)製)と、40質量部の水添C9系石油樹脂(商品名「アルコンP−140」、荒川化学工業(株)製)と、3質量部の商品名「TINUVIN 479」(BASF社製)と、350質量部のメシチレンとを混合することにより、組成物1を調製した。
【0084】
[参考例2]組成物2
100質量部の前記合成例1で得た化合物(B−1)と、70質量部の4−メチル−2−ペンタノールとを混合することにより、組成物2を調製した。
【0085】
3.評価
[実施例3]
実施例1で調製した仮固定用組成物1を、スピンコート法で、直径8インチのシリコンウエハ上に塗布し、ホットプレートを用いて160℃で5分間、さらに230℃で8分間加熱し、厚さ40μmの塗膜を得た。塗膜を有する基板を縦1cm、横1cmの正方形に切断した。次いで、切断した基板の塗膜上に、縦0.5cm、横0.5cmの正方形のマスキングテープを塗膜の表面の中央に貼り付けた。マスキングテープを貼り付けた基板を、4−メチル−2−ペンタノール(23℃)に10秒間浸漬後、マスキングテープをはがした。
次いで、マスキングテープをはがした後の基板と、ガラス基板(縦2cm、横2cm、正方形)とを、ダイボンダー装置を用いて、180℃で5Nの力を60秒間加え、シリコンウエハとガラス基板とを仮固定材を介して仮固定した。ガラス基板と、仮固定材との間に気泡なく、仮固定されていることを目視により確認できた。また、万能ボンドテスター(商品名「デイジ4000」、デイジ社製)を用いて、ガラス基板と平行方向に剪断力(500μm/秒の速度で、23℃で20N/cm)を加えたが、シリコンウエハおよびガラス基板はずれずに保持していることから、基材や支持体と仮固定材との間で浮きなく仮固定できていることを確認できた。
次いで、仮固定した基材を、メシチレン(23℃)に10分間浸漬し、その後、浸漬後の基材を万能ボンドテスター(商品名「デイジ4000」、デイジ社製)を用いて、ガラス基板と平行方向に剪断力(500μm/秒の速度で、23℃で5N/cm以下)を加えたところ、シリコンウエハをガラス基板から剥離することができた。
【0086】
[実施例4]
実施例2で調製した仮固定用組成物2を、スピンコート法で、直径8インチのシリコンウエハ上に塗布し、ホットプレートを用いて160℃で5分間、さらに230℃で8分間加熱し、厚さ40μmの塗膜を得た。塗膜を有する基板を縦1cm、横1cmの正方形に切断した。次いで、切断した基板の塗膜上に、縦0.5cm、横0.5cmの正方形のマスキングテープを塗膜の表面の中央に貼り付けた。マスキングテープを貼り付けた基板を、4−メチル−2−ペンタノール(23℃)に10秒間浸漬後、マスキングテープをはがした。
次いで、マスキングテープをはがした後の基板と、ガラス基板(縦2cm、横2cm、正方形)とを、ダイボンダー装置を用いて、180℃で5Nの力を60秒間加え、シリコンウエハとガラス基板とを仮固定材を介して仮固定した。ガラス基板と、仮固定材との間に気泡なく、仮固定されていることを目視により確認できた。また、万能ボンドテスター(商品名「デイジ4000」、デイジ社製)を用いて、ガラス基板と平行方向に剪断力(500μm/秒の速度で、23℃で20N/cm)を加えたが、シリコンウエハおよびガラス基板はずれずに保持していることから、基材や支持体と仮固定材との間で浮きなく仮固定できていることを確認できた。
次いで、仮固定した基材を、メシチレン(23℃)に10分間浸漬し、その後、浸漬後の基材を万能ボンドテスター(商品名「デイジ4000」、デイジ社製)を用いて、ガラス基板と平行方向に剪断力(500μm/秒の速度で、23℃で5N/cm以下)を加えたところ、シリコンウエハをガラス基板から剥離することができた。
【0087】
[比較例1]
参考例1で調製した組成物1を、スピンコート法で、直径8インチのシリコンウエハ上に塗布し、ホットプレートを用いて160℃で5分間、さらに230℃で8分間加熱し、厚さ40μmの塗膜を形成した。得られた基板を縦1cm、横1cmの正方形に切断し、組成物1から形成した塗膜を有する基板を得た。
縦0.7cm、横0.7cmの正方形のマスキングテープを貼った直径8インチのガラス基板上に、参考例2で調製した組成物2を、スピンコート法で塗布し、ホットプレートを用いて200℃で5分間加熱し、厚さ15μmの塗膜を形成した。マスキングテープが塗膜の表面の中央となるように、マスキングテープの周りを、縦2cm、横2cmの正方形に切断した。切断したガラス基板を、4−メチル−2−ペンタノール(23℃)に5分間浸漬後、マスキングテープを剥離し、縦0.7cm、横0.7cmの組成物2から形成した塗膜を有するガラス基板を得た。
組成物1から形成した塗膜を有する基板と、縦0.7cm、横0.7cmの組成物2から形成した塗膜を有するガラス基板とを、ダイボンダー装置を用いて、180℃で5Nの力を60秒間加え、シリコンウエハとガラス基板とを仮固定材を介して仮固定した。ガラス基板と、仮固定材との間に気泡を確認した。
【0088】
[参考例3]
実施例1で調製した仮固定用組成物1を、スピンコート法で、直径8インチのシリコンウエハ上に塗布し、ホットプレートを用いて160℃で5分間、さらに230℃で8分間加熱し、シリコンウエハと厚さ40μmの塗膜とを有する基板を得た。得られた基板を縦1cm、横1cmの正方形に切断した。
切断後の基板と、ガラス基板(縦2cm、横2cm、正方形)とを、ダイボンダー装置を用いて、220℃で15Nの力を120秒間加え、シリコンウエハとガラス基板とを仮固定用組成物1から形成した塗膜を介して仮固定した。
次いで、仮固定した基材を、密着強度試験器((株)山本鍍金試験器製)を用いて、ガラス基板と垂直方向に力(1mm/秒の速度で、23℃で14N/cm)を加えたところ、基板から、ガラス基板は剥離した。
【0089】
[参考例4]
実施例1で調製した仮固定用組成物1を、スピンコート法で、直径8インチのシリコンウエハ上に塗布し、ホットプレートを用いて160℃で5分間、さらに230℃で8分間加熱し、シリコンウエハと厚さ40μmの塗膜とを有する基板を得た。得られた基板を縦1cm、横1cmの正方形に切断した。次いで、切断した基板を、4−メチル−2−ペンタノール(23℃)に10秒間浸漬した。
浸漬後の基板と、ガラス基板(縦2cm、横2cm、正方形)とを、ダイボンダー装置を用いて、220℃で15Nの力を120秒間加え、シリコンウエハとガラス基板とを仮固定用組成物1から形成した塗膜を介して仮固定した。
次いで、仮固定した基材を、密着強度試験器((株)山本鍍金試験器製)を用いて、ガラス基板と垂直方向に力(1mm/秒の速度で、23℃で20N/cm)を加えたが、シリコンウエハおよびガラス基板はずれずに保持していることが確認できた。
【0090】
参考例3および参考例4の結果より、実施例1および実施例2において、剥離層が形成しており、また、4−メチル−2−ペンタノールにより、剥離層を除去できることが推定できた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(1)重合体(A)、および前記重合体(A)と実質的に非混和性の化合物(B)を含有する仮固定用組成物により、基材上に、接着層および剥離層をこの順に形成する工程;
(2)前記剥離層の一部を除き、接着層を介して、前記基材と支持体を仮固定する工程;
(4)前記接着層の一部を除き、基材上に、接着層の残部、剥離層の残部および支持体をこの順に形成する工程;ならびに
(5)支持体から加工後の基材を剥離する工程;
をこの順で有する基材の仮固定方法。
【請求項2】
重合体(A)が、シクロオレフィン系重合体(A1)である請求項1の基材の仮固定方法。
【請求項3】
前記工程(4)が、前記接着層の一部を炭化水素系溶剤に溶解させることで除き、基材上に、接着層の残部、剥離層の残部および支持体をこの順に形成する工程;である請求項2の基材の仮固定方法。
【請求項4】
前記剥離層の膜厚が、1〜1000nmである請求項1の基材の仮固定方法。
【請求項5】
請求項1〜請求項4の基材の処理方法に用いられる仮固定用組成物であって、重合体(A)、および前記重合体(A)と実質的に非混和性の化合物(B)を含有する仮固定用組成物。
【請求項6】
前記重合体(A)が、シクロオレフィン系重合体(A1)である請求項5の仮固定用組成物。
【請求項7】
シクロオレフィン系重合体(A1)100質量部と、フッ素原子を有する繰り返し単位を有する重合体(B1)を1〜30質量部含有する組成物。
【請求項8】
請求項1の基材の仮固定方法を使って得られる半導体装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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