説明

基材の表面仕上げ方法、及び基材の製造方法

【課題】プレキャストパネル等の基材の強度を維持しつつ、タイル張りの質感の目地状模様を基材の表面に設けることを可能にする。
【解決手段】基材の表面に流動状態のセメント系材料を打設して前記表面にセメント系材料層を形成するセメント系材料層形成工程と、前記基材を削らないようにしながら前記セメント系材料層の表面に目地状模様の溝部を刻設する目地状模様刻設工程と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイル等の目地を模した目地状模様をセメント組成体等の基材の表面に設ける基材の表面仕上げ方法、及び基材の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、建物の外壁等の意匠性を高めるパネルとしてデザインパネルが知られている。このデザインパネルは、例えば、プレキャストパネル等のセメント組成体にモルタルや接着剤等でタイルや石、レンガ等(以下、「タイル」と総称する)を張り付けてなる。
【0003】
このようなパネルに代えて、最近では、予めプレキャストパネルの表面に格子状の溝部を設け、その溝部を目地部に見立てて着色してタイルに似せて仕上げることが行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−38826号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記のプレキャストパネルは、当該パネル自体の表面に、目地部に見立てた格子状の溝部を直に形成している。すなわち、プレキャストパネル自体に欠損部分を有しているので、パネル自体の強度低下の問題があった。
【0006】
本発明は、上記のような従来の問題に鑑みなされたものであって、プレキャストパネル等の基材の強度を維持しつつ、タイル張りの質感の目地状模様を基材の表面に設けることが可能な基材の表面仕上げ方法、及び基材の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
かかる目的を達成するために請求項1に示す発明は、
基材の表面に流動状態のセメント系材料を打設して前記表面にセメント系材料層を形成するセメント系材料層形成工程と、
前記基材を削らないようにしながら前記セメント系材料層の表面に目地状模様の溝部を刻設する目地状模様刻設工程と、を有することを特徴とする。
【0008】
上記請求項1に示す発明によれば、基材の表面に流動状態のセメント系材料を打設して当該表面にセメント系材料層を形成し、このセメント系材料層の表面に目地状模様の溝部を刻設するが、この刻設の際には、基材については削らないようにする。よって、基材は欠損されず、その強度を維持可能となる。
また、セメント系材料層に刻設された溝部に基づいて基材には目地状模様が付与されるので、基材は、タイル張りの質感を醸し出すことができる。
更には、セメント系材料層を形成した後に目地状模様の溝部を刻設するので、セメント系材料層の表面に溝部以外の残部として島状に現れる複数のタイル相当部の厚さを均等に揃え易くなり、結果、目地状模様の見た目を良好にすることができる。
また、セメント系材料層を形成した後に目地状模様の溝部を刻設するので、この目地状模様の選択により任意のタイル形状を模擬可能である。よって、デザイン自由度に長ける。
【0009】
請求項2に示す発明は、請求項1に記載の基材の表面仕上げ方法であって、
前記目地状模様刻設工程では、前記溝部が前記基材に到達しないように前記セメント系材料層に前記溝部を刻設することを特徴とする。
上記請求項2に示す発明によれば、溝部は基材に到達しないので、基材を確実に削らないようにすることができる。その結果、基材は欠損されず、その強度を確実に維持可能となる。
【0010】
請求項3に示す発明は、請求項1又は2に記載の基材の表面仕上げ方法であって、
前記セメント系材料は、セルフレベリング材であることを特徴とする。
上記請求項3に示す発明によれば、セメント系材料はセルフレベリング材なので、当該セルフレベリング材を基材の表面に打設するだけで、表面が概ね平坦なセメント系材料層を形成可能となる。よって、鏝などで表面を均す回数を削減できて、省力化を図れる。また、均す頻度が減ることに伴って鏝ムラも生じ難くなるので、タイル張りの質感を出し易くなる。
【0011】
請求項4に示す発明は、請求項1乃至3の何れかに記載の基材の表面仕上げ方法であって、
前記セメント系材料を前記基材の表面に打設する前に、前記表面に、前記基材と前記セメント系材料との接着性を増進する表面処理を施す表面処理工程を有することを特徴とする。
上記請求項4に示す発明によれば、セメント系材料との接着性を増進する表面処理が施された基材の表面に、セメント系材料が打設されるので、当該セメント系材料が硬化してなるセメント系材料層を基材に強固に固定することができる。
【0012】
請求項5に示す発明は、請求項4に記載の基材の表面仕上げ方法であって、
前記セメント系材料は、セルフレベリング材であり、
前記表面処理工程では、前記表面処理として、前記基材の表面にセルフレベリング材用プライマーを塗布することを特徴とする。
上記請求項5に示す発明によれば、基材の表面には、セルフレベリング材用プライマーが塗装された後にセルフレベリング材が打設されるので、当該セルフレベリング材が硬化してなるセメント系材料層を、より強固に基材に固定することができる。
【0013】
請求項6に示す発明は、請求項1乃至5のいずれかに記載の基材の表面仕上げ方法であって、
前記基材は、所定方向に連続して成型された連続成型材であることを特徴とする。
上記請求項6に示す発明によれば、基材が連続成型材なので、連続成型材の強度を確保しつつ、当該連続成型材の表面に、タイル張りの質感の目地状模様を設けることが可能となる。
【0014】
請求項7に示す発明は、請求項6に記載の基材の表面仕上げ方法であって、
前記連続成型材には、前記セメント系材料の接着力を増進させる溝状アンカー部が前記所定方向に沿って形成されていることを特徴とする。
上記請求項7に示す発明によれば、連続成型材にセメント系材料の接着力を増進させる溝状アンカー部が形成されているので、溝状アンカー部にセメント系材料が入り込むことにより、セメント系材料層は、より強固に連続成型材に固定される。
また、このとき、溝状アンカー部は、連続成型材の連続方向たる前記所定方向に沿って設けられているので、溝状アンカー部は連続成型材を成形する際に一緒に成形される。よって、成形後の連続成型材を欠損させるような加工をせずに済み、その結果、連続成型材の強度を損なわずに同材を成形することができる。
【0015】
請求項8に示す発明は、請求項1乃至5のいずれかに記載の基材の表面仕上げ方法であって、
前記基材は、現場にてセメント流動物が打設されて形成されていることを特徴とする。
上記請求項8に示す発明によれば、タイル張りの質感を有する床部等を、施工現場に構築可能となる。また、このとき、床部等は断面欠損することなく維持されるので、床部等の耐久性をより長く維持可能となる。
【0016】
請求項9に示す発明は、請求項1乃至8のいずれかに記載の基材の表面仕上げ方法であって、
前記セメント系材料層を塗装する塗装工程を有することを特徴とする。
上記請求項9に示す発明によれば、セメント系材料層を、模擬すべき目標のタイル色に塗装することができて、これにより、タイル張りの質感をより一層醸し出すことができる。
【0017】
請求項10に示す発明は、請求項1乃至9のいずれかに記載の基材の表面仕上げ方法であって、
前記セメント系材料を前記基材の表面に打設する前に、前記セメント系材料は予め着色されていることを特徴とする。
上記請求項10に示す発明によれば、セメント系材料は、打設前の流動性を有した状態において予め着色されているので、当該セメント系材料を打設して溝部を刻設するだけで、基材の表面に、模擬すべき目標のタイル色の目地状模様を設けることができる。
【0018】
請求項11に示す発明は、請求項10に記載の基材の表面仕上げ方法であって、
前記セメント系材料が硬化してなるセメント系材料層の表面に、表面含浸材又はクリヤ塗料を塗布することを特徴とする。
上記請求項11に示す発明によれば、セメント系材料層の表面は表面含浸材又はクリヤ塗料で覆われるので、汚れ難くなる。
【0019】
請求項12に示す発明は、請求項1乃至11のいずれかに記載の基材の表面仕上げ方法であって、
前記溝部に目地材を充填する充填工程を有することを特徴とする。
上記請求項12に示す発明によれば、目地状模様をなす溝部に、目地材を充填するので、タイル張りの質感をより一層醸し出すことができる。
【0020】
また、請求項13に示す発明は、
基材を準備する基材準備工程と、
前記基材の表面に流動状態のセメント系材料を打設して前記表面にセメント系材料層を形成するセメント系材料層形成工程と、
前記基材を削らないようにしながら前記セメント系材料層の表面に目地状模様の溝部を刻設する目地状模様刻設工程と、を有することを特徴とする基材の製造方法である。
上記請求項13に示す発明によれば、請求項1と同様の作用効果を奏することができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、プレキャストパネル等の基材の強度を維持しつつ、タイル張りの質感の目地状模様を基材の表面に設けることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】図1Aは、第1実施形態に係る外装パネル1の平面図であり、図1Bは、図1A中のB−B矢視図である。
【図2】図2A乃至図2Eは、プレキャストパネル2の表面仕上げ方法の説明図である。
【図3】図3A乃至図3Eは、同表面仕上げ方法の説明図である。
【図4】図4Aは、目地切りカッター40による溝部5mの刻設の様子の概略側面図であり、図4Bは、底部5maにセルフレベリング材5sの皮膜が無い溝部5mの説明図である。
【図5】外装パネル1のバリエーションをまとめた表である。
【図6】図6A乃至図6Eは、施工現場でコンクリート打設により形成された床部11の本体12の表面仕上げ方法の説明図である。
【図7】図7A乃至図7Eは、同表面仕上げ方法の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
===第1実施形態===
図1Aは、第1実施形態に係る目地状模様を有した外装パネル1の平面図である。また、図1Bは、図1A中のB−B矢視図である。
外装パネル1は、基材の一例としてコンクリート製の板状部材でなるプレキャストパネル2と、タイル張りを模擬すべく、プレキャストパネル2の一方の表面2aを略層状に覆って一体に設けられた外層部5と、を有している。
【0024】
外層部5(セメント系材料層に相当)は、セメント系材料の一例としてのセルフレベリング材5s(セメント系材料に相当)を流動状態下で、プレキャストパネル2の表面2aに打設して所定厚みの層状に硬化形成したものを本体とする。そして、この外層部5の略平坦な表面5aには、所定範囲に亘ってタイルの目地部を模した溝部5m,5m…が刻設されている。図示例では、上記所定範囲は表面5aの全面であり、つまり目地状模様に溝部5m,5m…が表面5aの全面に亘って刻設されている。但し、上記所定範囲は全面でなくても良く、表面5aの一部でも良い。以下では、溝部5mのことを目地相当部分5mとも言い、表面5aにおける溝部5m,5m…以外の残部(島状に残った部分)のことを、タイル相当部分5t,5t…とも言う。
【0025】
ここで、図1Bの一部拡大図に示すように、溝部5mは、外層部5にのみ刻設され、プレキャストパネル2には刻設されていない。つまり、溝部5mはプレキャストパネル2には到達していないか、あるいは到達していたとしてもプレキャストパネル2の表面2aは削られていない。よって、プレキャストパネル2の表面2aは一切欠損されずに、同パネル2は、その強度を維持可能となる。
【0026】
なお、望ましくは、溝部5mの深さd5mは、外層部5の厚みt5よりも浅く設定され、これにより、溝部5mの底部5maは、外層部5の材料たる上記セルフレベリング材5sの被膜で覆われる仕様になっていると良い。つまり、溝部5mの底部5maには、プレキャストパネル2の表面2aが露出しない仕様になっていると良い。そして、このような溝部5mの仕様によれば、当該溝部5mを刻設により外層部5に形成する際に、プレキャストパネル2を削ることは確実に回避され、上述の如く同パネル2の強度は確実に保証される。なお、溝部5mの刻設は、目地切りカッター40等の周知の装置によってなされる。目地切りカッター40は、例えば一方向に移動可能な回転刃を有し、当該回転刃を外層部5に対して相対的に移動することにより、移動方向に沿った溝部5mを所定の切り込み深さd40で形成する(図4A)。
【0027】
一方、溝部5mたる目地相当部分5mには、塗料ではない謂わば本物の目地材9が充填されている。すなわち、この目地材9としては、通常のタイル張りの際に使用されるものと同種の充填材が使用されている。例えば、セメントやモルタル、樹脂モルタル等のセメントを主材とする充填材が使用されている。そして、これにより、この目地相当部分5mには、本物の目地材9が充填されているので、外装パネル1は、本物のタイル張りと同様の質感を醸し出す。
【0028】
なお、望ましくは、図1B中の一部拡大図に示すように、溝部5mの縁部5me(つまり、タイル相当部分5tと溝部5mとの境界部分5me)が、目地材9で覆われていないようにすると良い。そうすれば、目地材9が、タイル相当部分5tと面一にはならずに、同タイル相当部分5tよりもへこむようになり、これにより、目地材9を充填後の溝部5mにも適度な陰影が付与されて、より一層タイル張りの質感を醸し出すようになる。
【0029】
また、望ましくは、同拡大図に示すように、溝部5mの縁部5meは角張っていると良い。そしてこのようになっていれば、上述と同様に陰影を高めることができる。
【0030】
タイル相当部分5tは、塗装されている。つまり塗料7によって着色されている。塗料7の種類は、模擬しようとするタイルの種類に応じて選択される。例えば、石板状タイルを模す場合には、石粉を混ぜた塗料7が使用され、レンガタイルを模す場合には、レンガ色の塗料7が使用され、金属タイルを模す場合には、金属色の塗料7が用いられる。
【0031】
この塗装は、タイル相当部分5tのみに施しても良いし、タイル相当部分5tに加えて、タイル相当部分5t以外の部分たる溝部5mに施しても良い。前者のようにタイル相当部分5tにのみ塗装する場合には、溝部5mを不図示のマスキングテープ等により覆ってマスキングしつつ塗料7を塗れば良い。そして、これによれば、溝部5mには塗料7が付着しないので、塗装後に溝部5mに充填すべき目地材9の溝部5mへの接着性を高めることができる。ちなみに、図1Bの例では、溝部5mも塗料7によって塗装されている。
【0032】
このような外層部5は、上述したようにセルフレベリング材5sによって形成される。セルフレベリング材5sは、フロー値が200〜300mmのものが好ましく、特に200〜250mmのものが好ましい。このセルフレベリング材5sのフロー値は、日本建築学会規格JASS15M−103「セルフレベリング材の品質基準」に記載されている方法により測定した値を意味する。セルフレベリング材5sは、セメント系セルフレベリング材、セラミック系セルフレベリング材、石膏系セルフレベリング材、あるいはレジンモルタルなどの各種のセルフレベリング材から任意に選んで使用することができる。これらのセルフレベリング材はいずれも公知であり、実際に使用されている。セメント系セルフレベリング材は、セメント(ポルトランドセメント、アルミナセメント、アーウィン系セメント等)、砂(フライアッシュ、川砂、海砂、珪砂、石灰石等)、そして水を主成分とし、これに任意に、流動化剤(ナフタリン酸系、メラミンスルホン酸系、ポリカルボン酸系、アミノスルホン酸系、リグニンスルホン酸系、カゼイン類等)、硫酸塩(硫酸カリウム、硫酸ナトリウム、硫酸アルミニウム等)、リン酸塩(縮合リン酸塩等)、増粘剤(ポリアクリル酸、ヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロース等)、消泡剤(シリコン系、非イオン系界面活性剤等)などを配合したものである。セラミック系セルフレベリング材は、上記のセメント系セルフレベリング材の砂の一部を、酸化アルミニウム、酸化鉄、酸化チタン、炭化ケイ素などのようなセラミックで置き替えた組成を有する。石膏系セルフレベリング材は、上記のセメント系セルフレベリング材のセメントの一部を石膏で置き替えた組成を有する。本発明の目地状模様を有した外装パネル1を製造するためにはセメント系セルフレベリング材を用いることが好ましい。セルフレベリング材のフロー値は、主として水の含有量を変えることにより調整することができるが、水以外の各種の成分の種類、性状(例、砂の粒度、形状等)、あるいは配合量などを変えることによっても調整可能である。セルフレベリング材は一般に、水以外の成分を配合したプレミックスの状態で販売、供給され、使用する際に所望のフロー値を得るために必要な水を添加配合してセルフレベリング材とする。
【0033】
プレキャストパネル2は、例えば株式会社ノザワ製アスロック(登録商標)のような押出成形セメント板(連続成型材に相当)である。すなわち、セメント、けい酸質原料、及び繊維質原料等の原料を混練後、所定方向を押出方向として中空構造の板状に押出成形してオートクレーブ養生したパネルである。プレキャストパネル2の外層部5側となる一方の表面2aには、後述の図2Aに示すように、溝状アンカー部として、表面2a側が狭く厚み方向の深部側が広く形成された複数条の台形溝2b,2b…が設けられており、隣接する台形溝2b,2b同士の間の表面2aには、台形溝2bと平行に二条の凹部2c,2cが設けられている。よって、図2Bのように、当該表面2aに外層部5を形成すべく上述のセルフレベリング材5sを打設した際には、セルフレベリング材5sが台形溝2b,2b…や凹部2c,2c…に入り込む等してアンカー効果を有効に発揮し、これにより、当該セルフレベリング材5sが硬化してなる外層部5は、押出成形セメント板2たるプレキャストパネル2に強固に固定される。
このような溝状アンカー部としての台形溝2bや凹部2cは、プレキャストパネル2が押出成型される際の押出方向(図2Aではプレキャストパネル2の長手方向)に沿って連続して形成されている。よって、これら台形溝2bや凹部2cも、プレキャストパネル2の押出成形時に速やかに形成される。
【0034】
ちなみに、この押出成形セメント板2のように、内部に繊維質原料を含有することで補強されている場合には、成形後に同セメント板2に疵が入ると、その繊維質原料の断絶を通じて大きく強度低下する虞がある。そのため、前述した外層部5の溝部5mの仕様、つまりプレキャストパネル2には刻設されないような溝部5mの仕様は、特に、プレキャストパネル2として、かかる繊維質原料を含有した押出成形セメント板2を用いた場合に大きな効果を発揮する。
【0035】
図2A乃至図3Eは、プレキャストパネル2の表面仕上げ方法の説明図である。図2A乃至図2Eの斜視図には、プレキャストパネル2を準備するプレキャストパネル準備工程(基材準備工程に相当)と、プレキャストパネル2に外層部5を形成する外層部形成工程(セメント系材料層形成工程に相当)と、外層部5に目地状模様の溝部5mを刻設する溝部刻設工程(目地状模様刻設工程に相当)とを示している。また、図3A乃至図3Eの側面図には、溝部5mが刻設された外層部5を塗装する塗装工程と、溝部5mに目地材9を充填する目地材充填工程(充填工程に相当)とを示している。以下、これらの図を参照しながら、この表面仕上げ方法について詳しく説明する。
【0036】
この表面仕上げに係る全工程は、例えば工場でなされる。そして、先ず、図2Aのように、成形すべき外装パネル1の外形形状に対応するプレキャストパネル2を、台形溝2bが形成された方の面2aを上方に向けながら不図示の工場の作業台に載置する(プレキャストパネル準備工程)。
【0037】
次に、図2Bのようにプレキャストパネル2上に、外層部5を形成するための型枠32を配置する。この型枠32は、プレキャストパネル2の周縁部を囲んで配置される。図示例では、プレキャストパネル2の平面形状が矩形状であることから、型枠32は、プレキャストパネル2の四辺のそれぞれに対応して配された四つの側板32b,32b…を有している。
【0038】
そうしたら、型枠32内に上方から流動状態のセメント系セルフレベリング材5sを打設する。そして、このセメント系セルフレベリング材5sの硬化後に、型枠32を取り外し、これにより、図2Cのようにプレキャストパネル2の上面たる表面2aには、外層部5が一体に形成される(外層部形成工程)。
【0039】
ちなみに、セメント系セルフレベリング材5sは、その高い流動性に基づいて高い自己拡散性を有するので、図2Bに示すように、当該セルフレベリング材5sをプレキャストパネル2の表面2aに打設するだけで、同セルフレベリング材5sは同表面2a上を自ら広がっていき、その結果、図2Cに示すように、自然に、表面5aが概ね平坦な外層部5が形成される。従って、鏝やトンボなどで表面5aを均す回数を削減できて、省力化を図れる。また、均す頻度が減ることに伴って鏝ムラも生じ難くなるので、タイル張りの質感を出し易くなる。
【0040】
次に、図2D及び図2Eに示すように、外層部5の上面たる表面5aに目地状模様の溝部5mを刻設する(溝部刻設工程)。溝部5mの刻設位置は、外装パネル1として完成したときに目地状模様を形成したい位置である。例えば、図示例では、矩形大型タイルを模擬すべく、外層部5の表面5aを格子状に分割するように複数条の溝部5m,5m…が刻設されているが、何等これに限らない。
【0041】
各溝部5mの刻設は、例えば前述の目地切りカッター40を用いて行われる。図4Aに、この目地切りカッター40による刻設の様子の概略側面図を示すが、ここで、目地切りカッター40の切り込み深さd40は、例えば、外層部5の厚み5tよりも若干小さく(浅く)設定されている。これにより、刻設される溝部5mは、外層部5のみに形成され、その下方に位置するプレキャストパネル2に溝部5mが到達することは有効に回避される。つまり、プレキャストパネル2は一切削られること無く、同パネル2は欠損の無い状態に維持され、結果、その強度は高く維持される。ちなみに、目地切りカッター40の切り込み深さd40を、外層部5の厚さt5と同値に設定しても良いが、その場合には、溝部5mの刻設時にプレキャストパネル2の表面2aを目地切りカッター40の回転刃で削らないように細心の注意を払いながら、刻設作業を行うのが望ましい。そして、その場合には、図1Bの一部拡大図の溝部5mに代えて、図4Bに示すような溝部5m、つまりその底部5maにセルフレベリング材5sの皮膜の無い溝部5mが形成されることになる。
【0042】
そうしたら、図3B及び図3Cに示すように、溝部5mが刻設された外層部5の表面5aを、模擬すべきタイル色の塗料7で塗装して着色する(塗装工程)。塗装方法はスプレー50等で塗料7を吹き付けても良いが、刷毛塗りでも良い。また、この塗装の際に、各溝部5mの底部5maをマスキングしても良いし、しなくても良い。そして、溝部5mの底部5maをマスキングしない場合には、マスキング作業を省略できて作業手間の削減を図れる。なお、ここで、後者の場合、つまり、溝部5mの底部5maをマスキングしない場合には、望ましくは、タイル相当部分5tと、溝部5mたる目地相当部分5mとの境界部分となる目地相当部分5mの縁部5me及びその近傍部分に塗りこぼしが出ないように、例えばタイル相当部分5tだけでなく、目地相当部分5mをなす溝部5mにも塗装すると良い。
【0043】
その後、図3D及び図3Eに示すように各溝部5mに対して、それぞれセメントを主材とする目地材9を塗料7の上から充填する(目地材充填工程)。充填には鏝53を用いると良く、そうすれば、溝部5mからタイル相当部分5tへと若干はみ出させながら目地材9を充填できて、その結果、溝部5m内に密実に充填可能となる。また、鏝53によれば、溝部5mからはみ出してタイル相当部分5tに付着した目地材9も、掻き落としにより容易に除去可能である。なお、タイル相当部分5tに付着残存した目地材9は、最終的には、ウエス等の適宜な拭き取り部材によって拭き取られる。これにより、タイル相当部分5tには塗料7が露出し、また、目地相当部分5mたる溝部5mには目地材9が露出し、以上をもって、図1A及び図1Bのような目地状模様を有した外装パネル1が完成する。
【0044】
なお、望ましくは、図2Bの外層部形成工程においてセメント系セルフレベリング材5sをプレキャストパネル2上に打設する前に、プレキャストパネル2の表面2aたる上面に、セメント系セルフレベリング材用のプライマーを塗布すると良い。そうすれば、セメント系セルフレベリング材5sのプレキャストパネル2への接着力の向上を通じて、当該セルフレベリング材5sが硬化してなる外層部5を、より強固にプレキャストパネル2に固定可能となる。このセメント系セルフレベリング材用のプライマーの一例としては、例えば宇部興産株式会社製のUプライマーGのようなアクリル・スチレン共重合樹脂水性エマルションの3〜6倍希釈液等が挙げられる。また、プライマー8の塗布方法としては、スプレー等での吹き付けや、刷毛塗り等が挙げられる。
【0045】
ところで、一般にタイル張りの目地の仕様には、目地幅の太い太目地と、目地幅の細い細目地の二種類がある。そして、前者の太目地の目地幅は5〜8mmであり、後者の細目地の目地幅は1〜3mmである。よって、上述の外装パネル1において、太目地を模擬する場合には、溝部5mは5〜8mmの溝幅で刻設され、他方、細目地を模擬する場合には、溝部5mは1〜3mmの溝幅で刻設される。
【0046】
また、細目地を模擬した場合には、溝部5mの溝幅が狭いため、目地材9の充填が困難となるが、その場合には充填しなくても良い。これは、溝幅が狭い場合は、溝部5mの底部5maは元々外光が当たり難くて暗いことから、細目地を模した溝幅の狭い溝部5mは、目地材9を充填しなくても目地のように暗く見え得るからである。
【0047】
但し、この目地材9を詰めない細目地模擬の場合にあっても、塗装工程において溝部5mにマスキングを施すと良い。マスキングは、例えば溝部5mに溝幅と略同じ厚さのプレート部材を差し込むことでなされる。そして、この状態で外層部5の塗装を行う。ちなみに、この場合にマスキングを行う理由は、細目地模擬の溝部5mの溝幅は、1〜3mmという狭さのため、塗料7の表面張力等により塗布膜が溝部5mを横断して同溝部5mを埋めてしまう虞があるためである。
【0048】
また、上述の4工程のうちで、外層部形成工程及び溝部刻設工程については、上述の工場で行われるが、その後工程の塗装工程及び目地材充填工程については、工場でなく、建物等が構築される施工現場で行っても良い。すなわち、外層部形成工程と溝部刻設工程とが終わった段階のプレキャストパネル2を、施工現場に搬入するとともに、当該プレキャストパネル2を、取り付け対象の建物の躯体壁面に固定した状態で、外層部5の塗装や目地材9の充填を行っても良い。
【0049】
また、上述では、セルフレベリング材5sとして無着色のものを例示した。つまり、セルフレベリング材5sの本来の色であるところの素材色(例えば灰色)を有したセルフレベリング材5sを例示したが、何等これに限るものではない。例えば、打設前の流動状態において予め模擬すべきタイル色に着色されたセルフレベリング材5sを用いても良い。そうすれば、セルフレベリング材5sの硬化後に外層部5に対して塗装をせずに済み、つまり、セルフレベリング材5sを打設するだけで、所望の色の外装パネル1を提供可能となる。そして、これにより、製造時間や施工時間の短縮を図ることができる。
【0050】
このような着色タイプのセルフレベリング材は、例えば、模擬すべきタイル色の顔料や染料などの色材をセルフレベリング材の基材に混ぜ合わせる等して生成される。
【0051】
但し、この着色タイプのセルフレベリング材を用いた場合には、塗料7による塗装が省略されるので、当該塗装に基づく外層部5の汚れ防止効果については期待できなくなる。よって、この防汚性が要求される場合には、外層部5に対して表面含浸材やクリヤ塗料を塗布すると良い。このとき、この表面含浸材やクリヤ塗料に透明なもの(好ましくは、無色透明なもの)を用いれば、着色タイプのセルフレベリング材自体の地の色を生かすことができる。なお、かかる表面含浸材やクリヤ塗料の塗布工程の実施タイミングは、前述の塗装工程と同タイミングである。また、表面含浸材の一例としては、旭化成ジオテック株式会社製のマジカルリペラー(登録商標)や大同塗料株式会社製のアクアシール(登録商標)のようなシラン系表面含浸材や、株式会社NNCコーポレーション製ナノコンスーパ(登録商標)や株式会社エービーシー商会製RCガード(登録商標)のようなけい酸塩系表面含浸材等が挙げられ、またクリヤ塗料の一例としては、AGCコーテック株式会社製のボンフロンAC#1100クリヤーのようなふっ素樹脂クリヤや関西ペイント株式会社製のアレスシリコンクリヤーのようなアクリルシリコン樹脂クリヤ等が挙げられる。
【0052】
ところで、図5に示す表は、上述してきた様々なバリエーションにおいて実施頻度の高いものを、各工程の実施場所(工場で行うのか、施工現場で行うのか)と関連付けてまとめたものである。すなわち、同表のセル中には、各工程の実施場所を示している。また、同セル中の×印は、「用いない」か、あるいは「非実施」の意味である。
【0053】
ちなみに、図5の表では、細目地模擬の外装パネル1の場合には、溝部5mに目地材9を充填しないものとしているが、上述したように、この表は、実施頻度の高いものを示しているだけであり、よって、細目地模擬の溝部5mに目地材9を充填可能であれば、充填しても良い。また、同様に、同表では、太目地模擬の外装パネル1の場合には、溝部5mに目地材9を充填するものとしているが、場合によっては、充填しなくても良い。
【0054】
===第2実施形態===
図6A乃至図7Eは、施工現場でコンクリート打設により形成された床部11の本体12の表面仕上げ方法の説明図である。図6A乃至図6Eの斜視図には、施工現場に床部11の本体12を形成する床部本体形成工程(基材準備工程に相当)と、床部11の本体12に外層部5を形成する外層部形成工程(セメント系材料層形成工程に相当)と、外層部5に目地状模様の溝部5mを刻設する溝部刻設工程(目地状模様刻設工程に相当)とを示している。また、図7A乃至図7Eの側面図には、溝部5mが刻設された外層部5を塗装する塗装工程と、溝部5mに目地材9を充填する目地材充填工程(充填工程に相当)とを示している。
【0055】
以下、これらの図を参照しながら、この表面仕上げ方法について詳しく説明するが、ここで、上述の第1実施形態との主な相違点は、第1実施形態の基材がプレキャストパネル2であったのに対して、この第2実施形態に係る基材は、建物等の施工現場で現場打ちコンクリートにより製造される床部11の本体12である点にある。よって、これ以外の点は概ね上述の第1実施形態と同じであり、同じ構成については同じ符号を付し、その説明については省略する。
【0056】
施工現場で床部11を成形する場合には、先ず、図6Aのように、形成すべき床部11の外形形状に対応させて型枠25を現地で組む。図示例では、型枠25は、底板25aと、底板25aの四辺にそれぞれ対応した配された四つの側板25b,25b…と、を有している。そして、型枠25内に配筋し、同型枠25内に上方から、コンクリート供給管60を介してコンクリート(セメント流動物に相当)を打設し、上面12aを鏝等で平坦に均して床部11の本体12たる打設コンクリート部12を形成する(床部本体形成工程)。
【0057】
ここで、このコンクリートが硬化してなる打設コンクリート部12の上面12aは平坦である。また、当該上面12aは、この後なされる外層部形成工程において外層部5形成用のセルフレベリング材5sが打設される面12aである。そのため、この打設に先んじて、当該上面12aに対し、セルフレベリング材5sとの接着性を増進する表面処理を施す(表面処理工程に相当)。ここでは、表面処理として、図6Bに示すように、当該上面(表面)12aに対してセメント系セルフレベリング材用のプライマー8を塗布する。なお、プライマー8の塗布方法はスプレー等で吹き付けても良いが、刷毛塗りでも良い。
【0058】
そうしたら、このプライマー8が塗装された上面12a上に、外層部5を形成すべく型枠32を配置する。この型枠32は、打設コンクリート部12の周縁部を囲んで配置される。図示例では、打設コンクリート部12の平面形状が矩形状であることから、型枠32は、打設コンクリート部12の四辺のそれぞれに対応して配された四つの側板32b,32b…を有している。
そして、図6Cのように型枠32内に上方から流動状態のセメント系セルフレベリング材5sを打設する。そして、このセメント系セルフレベリング材5sの硬化後に、型枠32を取り外し、これにより、図6Dのように打設コンクリート部12の上面たる表面12aには、外層部5が一体に形成される(外層部形成工程)。
【0059】
次に、同図6D及び図6Eに示すように、外層部5の上面たる表面5aに、目地状模様の溝部5mを刻設する(溝部刻設工程)。溝部5mの刻設位置は、床部11として完成したときに目地状模様を形成したい位置である。図示例では、外層部5の表面5aを格子状に分割するように溝部5mが刻設されているが、何等これに限らない。
【0060】
溝部5mの刻設は、第1実施形態と同様に、例えば目地切りカッター40を用いて行われる。ここで、図4Aに示すように、目地切りカッター40の切り込み深さd40は、例えば、外層部5の厚みt5よりも若干小さく(浅く)設定される。これにより、刻設される溝部5mは、外層部5のみに形成され、その下方に位置する打設コンクリート部12に溝部5mが到達することは有効に回避される。つまり、打設コンクリート部12は一切削られること無く、同打設コンクリート部12は欠損の無い状態に維持され、結果、その耐久性は維持される。ちなみに、目地切りカッター40の切り込み深さd40を、外層部5の厚さt5と同値に設定しても良いが、その場合には、溝部5mの刻設時に打設コンクリート部12の表面12aを目地切りカッター40の回転刃で削らないように細心の注意を払いながら、刻設作業を行うのが望ましい。
【0061】
次に、図7B及び図7Cに示すように、溝部5mが刻設された外層部5の表面5aを、模擬すべきタイル色の塗料7で塗装して着色する(塗装工程)。
【0062】
そうしたら、図7D及び図7Eに示すように各溝部5mに対して、それぞれセメントを主材とする目地材9を塗料7の上から充填し(目地材充填工程)、以上をもって、図7Eに示すような目地状模様を有した床部11が完成する。
【0063】
なお、この第2実施形態についても、前述の第1実施形態の場合と同様に、着色タイプのセルフレベリング材5sを適用可能なことは明らかであるので、その説明については省略する。
【0064】
また、模擬すべきタイルの目地に応じて、細目地及び太目地を選択して溝部5mの溝幅を設定することについても第1実施形態と同様であり、この説明についても省略する。
【0065】
===その他の実施の形態===
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、かかる実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で以下に示すような変形が可能である。
【0066】
上述の第1実施形態では、目地状模様を有したプレキャスト部材の一例としてプレキャストパネル2を例示したが、同様の方法で、目地状模様を有したプレキャスト柱状部材やプレキャスト梁状部材を製造しても良い。
【0067】
上述の実施形態では、模擬対象のタイル形状が矩形の場合を例示した。つまり、目地状模様として格子状模様を例示したが、何等これに限るものではなく、模擬しようとするタイル形状が、三角形や五角形などの多角形でも良いし、楕円や正円等の円形でも良い。
【0068】
上述の第1実施形態では、プレキャストパネル2と外層部5との固定を強固にする目的で、プレキャストパネル2において外層部5側となる一方の表面5aに、台形溝2bと凹部2cとを設けていたが、何等これに限るものではない。例えば、これら台形溝2bや凹部2cを上記表面2aに設けない代わりに、同表面2aに対する表面処理として目荒らしをしても良い。そして、この目荒らしによっても、外層部5をなすセルフレベリング材5sとプレキャストパネル2の表面2aとの接着性を増進させることができる。なお、目荒らしの具体例としては、ウォータージェット加工やサンドブラスト加工等が挙げられる。また、台形溝2b及び凹部2cと、目荒らしとを併用しても良い。すなわち、台形溝2bと凹部2cとが設けられているプレキャストパネル2の表面2aに対して目荒らしを施しても良い。
【0069】
上述の第1実施形態では、プレキャストパネル2として押出成形セメント板を例示したが、これに代えて、株式会社スパンクリートコーポレーション製スパンクリート(登録商標)を用いても良い。そして、このスパンクリートも、所定方向に連続した連続成型材の形態で製造される。すなわち、このスパンクリートは、所定方向に沿って漸次コンクリートが打設されて、同方向に沿った長尺に形成される。よって、タイル張りの質感の目地状模様が設けられた長尺の外装パネル1を容易に製造可能となる。ちなみに、このスパンクリートの場合も、所定方向に連続して成型される過程で、同方向に沿った溝状アンカー部を容易に形成できるので、セルフレベリング材5sとスパンクリートとが強固に固定されてなる外装パネル1を比較的容易に製造可能となる。
【0070】
また、第1実施形態のプレキャストパネル2として、軽量気泡コンクリート板も適用可能である。そして、この軽量気泡コンクリート板の表面には、多数の小孔が存在するので、同表面に打設されたセルフレベリング材5sをより強固に軽量気泡コンクリート板に固定可能となる。なお、軽量気泡コンクリート板の表面に、セメント系セルフレベリング材用のプライマー8を塗布しても良い。
【0071】
上述の第2実施形態では、施工現場にて打設された平坦な打設コンクリート部12の上面12aにプライマー8を塗布してセメント系セルフレベリング材5sを打設する例について説明したが、何等これに限らない。例えば、コンクリート打設時に表面12aに溝状アンカー部を形成すべく型枠を配置しても良いし、表面12aを目荒らしして、プライマー8を塗装することなくセメント系セルフレベリング材5sを打設しても良い。
【0072】
上述の実施形態においては、溝状アンカー部の一例として台形溝2bを挙げたが、必ずしも表面12a側が狭くなくともよい。例えば、開口側と底側との幅がほぼ等しいというような断面矩形状の溝でも構わない。
【0073】
上述の実施形態では、溝部刻設工程の後に塗装工程を行っていたが、何等これに限るものではなく、その順番は逆でも良い。つまり、外層部5の表面5aを、模擬すべきタイル色で塗装した後に、この塗装された外層部5の表面5aに溝部5mを刻設しても良い。
【0074】
上述の実施形態では、溝部5mに目地材9を充填する例について主に説明したが、溝部5mに目地材9を充填しなくても良い。その場合には、例えば、溝部5mを、タイル相当部分5tと異なる色に塗装しても良いし、あるいは、プレキャストパネル2や打設コンクリート部12の地の色を露出させても良い。なお、前者の溝部5mの塗装によっても、タイル張りの質感を有した外装パネル1や床部11を実現可能である。
【0075】
上述の実施形態では、外層部5をセルフレベリング材5sで形成していたが、打設時に流動性を有し所定時間の経過後に硬化するセメント系材料であれば、何等これに限るものではない。例えば、モルタル(カラーモルタルを含む)を用いても良いし、更に言えば、セメントを用いても良い。
【0076】
上述の第1実施形態では、基材としてコンクリート製のプレキャストパネル2を例示したが、コンクリート製に限るものではない。例えば、プレキャストパネル2のセメントには、粗骨材及び細骨材の一方又は両方が混入されていなくても良く、つまり、基材としては、コンクリート製以外に、モルタル製やセメント製等のセメント組成体も適用可能である。
更に言えば、基材として、繊維強化セメント板(ケイカル板、フレキシブルボードなど)や、セメントボード、石膏ボード、金属ボード、木材ボード等も適用可能である。
【0077】
上述の実施形態において、着色タイプのセルフレベリング材5sを用いて外層部5を形成した際に、場合によっては、硬化後に外層部5の表面5aを研磨しても良い。そして、この研磨を施すことにより、石材の風合いなどを醸し出すことも可能であり、その結果、外装パネル1や床部11のデザインバリエーションを増やすことができる。
【0078】
上述の実施形態では、溝部5mを刻設するのに目地切りカッター40を用いていたが、溝部5mを刻設可能であれば何等これに限るものではなく、これ以外の刻設用工具を用いても良い。
【符号の説明】
【0079】
1 外装パネル、
2 プレキャストパネル(基材)、
2a表面、2b 台形溝、2c 凹部、
5 外層部(セメント系材料層)、
5m 溝部、5a 表面、5ma 底部、
5me 縁部(境界部分)、
5s セルフレベリング材(セメント系材料)、
5t タイル相当部分、
7 塗料、8 プライマー、9 目地材、
11 床部、12 打設コンクリート部(基材)、12a 表面、
25 型枠、25a 底板、25b 側板、
32 型枠、32b 側板、
40 目地切りカッター、50 スプレー、53 鏝、
60 コンクリート供給管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材の表面に流動状態のセメント系材料を打設して前記表面にセメント系材料層を形成するセメント系材料層形成工程と、
前記基材を削らないようにしながら前記セメント系材料層の表面に目地状模様の溝部を刻設する目地状模様刻設工程と、を有することを特徴とする基材の表面仕上げ方法。
【請求項2】
請求項1に記載の基材の表面仕上げ方法であって、
前記目地状模様刻設工程では、前記溝部が前記基材に到達しないように前記セメント系材料層に前記溝部を刻設することを特徴とする基材の表面仕上げ方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の基材の表面仕上げ方法であって、
前記セメント系材料は、セルフレベリング材であることを特徴とする基材の表面仕上げ方法。
【請求項4】
請求項1乃至3の何れかに記載の基材の表面仕上げ方法であって、
前記セメント系材料を前記基材の表面に打設する前に、前記表面に、前記基材と前記セメント系材料との接着性を増進する表面処理を施す表面処理工程を有することを特徴とする基材の表面仕上げ方法。
【請求項5】
請求項4に記載の基材の表面仕上げ方法であって、
前記セメント系材料は、セルフレベリング材であり、
前記表面処理工程では、前記表面処理として、前記基材の表面にセルフレベリング材用プライマーを塗布することを特徴とする基材の表面仕上げ方法。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれかに記載の基材の表面仕上げ方法であって、
前記基材は、所定方向に連続して成型された連続成型材であることを特徴とする基材の表面仕上げ方法。
【請求項7】
請求項6に記載の基材の表面仕上げ方法であって、
前記連続成型材には、前記セメント系材料の接着力を増進させる溝状アンカー部が前記所定方向に沿って形成されていることを特徴とする基材の表面仕上げ方法。
【請求項8】
請求項1乃至5のいずれかに記載の基材の表面仕上げ方法であって、
前記基材は、現場にてセメント流動物が打設されて形成されていることを特徴とする基材の表面仕上げ方法。
【請求項9】
請求項1乃至8のいずれかに記載の基材の表面仕上げ方法であって、
前記セメント系材料層を塗装する塗装工程を有することを特徴とする基材の表面仕上げ方法。
【請求項10】
請求項1乃至9のいずれかに記載の基材の表面仕上げ方法であって、
前記セメント系材料を前記基材の表面に打設する前に、前記セメント系材料は予め着色されていることを特徴とする基材の表面仕上げ方法。
【請求項11】
請求項10に記載の基材の表面仕上げ方法であって、
前記セメント系材料が硬化してなるセメント系材料層の表面に、表面含浸材又はクリヤ塗料を塗布することを特徴とする基材の表面仕上げ方法。
【請求項12】
請求項1乃至11のいずれかに記載の基材の表面仕上げ方法であって、
前記溝部に目地材を充填する充填工程を有することを特徴とする基材の表面仕上げ方法。
【請求項13】
基材を準備する基材準備工程と、
前記基材の表面に流動状態のセメント系材料を打設して前記表面にセメント系材料層を形成するセメント系材料層形成工程と、
前記基材を削らないようにしながら前記セメント系材料層の表面に目地状模様の溝部を刻設する目地状模様刻設工程と、を有することを特徴とする基材の製造方法。

【図5】
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【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−184549(P2012−184549A)
【公開日】平成24年9月27日(2012.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−46655(P2011−46655)
【出願日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【出願人】(000000549)株式会社大林組 (1,758)
【Fターム(参考)】