説明

基板の温度測定装置

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】この発明は、熱処理装置、例えば光照射加熱装置(ランプアニール装置)、スパッタリング装置、CVD装置、エピタキシャル成長装置などにより半導体基板等の各種基板(以下、「ウエハ」という)に対して各種の熱処理を施す場合に、熱処理中のウエハの温度を接触式で測定する温度測定装置に関し、特に、ウエハに測温体を接触させてウエハの温度を測定する装置において、ウエハに測温体が適正に接触しているか否かを簡易に検知できるようにするための技術に係るものである。
【0002】
【従来の技術】各種の熱処理装置によりウエハに対し加熱炉内等において各種の熱処理を施して半導体装置等を製造する場合、熱処理中のウエハの温度を正確に測定することが極めて重要である。ウエハの温度を測定する方法には、温度検知器の測温体をウエハに直接に接触させて測温する接触式と、赤外線放射温度計を用いてウエハ表面から放射されるエネルギーを検知することにより測温する非接触式とがある。このうち、ウエハの温度を接触式で測定する温度測定装置として、特開平4−148545号公報には、測温体の一部を平坦面に形成し、その測温体の平坦面でウエハの一部を支持して、ウエハに測温体を面接触させるようにした装置が開示されている。このウエハの温度測定装置の構成を図9ないし図11に基づいてより詳しく以下に説明する。
【0003】図9は、ウエハの温度測定装置が使用される熱処理装置、この例では光照射型熱処理装置の概略構成の1例を示し、一部を縦断面で表わした要部正面図であり、図10は、温度測定装置の測温体を、図9に示した装置のウエハ支持器(サセプタ)の一部及びウエハと共に示した平面図であり、図11は、温度測定装置の測温体でウエハの一部を支持している状態を説明するための斜視図である。但し、図9では、測温体の図示を省略しており、また図11では、サセプタの図示を省略している。
【0004】最初に、図9により、光照射型熱処理装置の概略構成について説明する。図において、40は、ウエハの挿入及び取出し用の開口42を備えた加熱炉であり、この加熱炉40は、赤外線透過性を有する石英ガラスによって形成されている。また、加熱炉40の開口42に連接するように、筒状に形成された前室44が設けられている。この前室44の前端開口面は、蓋体46によって閉塞されるようになっており、前室44の前端面と蓋体46との当接面には樹脂製パッキン48が装着されていて、蓋体46による加熱炉40の密閉時に加熱炉40内を気密に保持できるような構造となっている。また、加熱炉40の上下方向にはそれぞれ、加熱炉40の上壁面及び下壁面に対向してハロゲンランプ、キセノンアークランプ等の光照射用光源50が複数個列設されている。また、各光源50の背後には、反射板52がそれぞれ配設されている。
【0005】蓋体46の内面側には、石英製のサセプタ(ウエハ支持器)54が固設されており、サセプタ54のウエハ支持部56にウエハ10が載置されて支持されている。また、蓋体46の外面側は支持ブロック58に固着されており、図示しない駆動機構により支持ブロック58を矢印方向に直線移動させることにより、蓋体46を開閉させるとともに、開口42を通して加熱炉40内へウエハ10を搬入し、また加熱炉40内からウエハ10を搬出する構成となっている。そして、多数枚のウエハを1枚ずつ連続して順次熱処理する場合は、加熱炉40内から熱処理後のウエハ10が搬出されると、その熱処理後のウエハ10は図示しない搬送アームによりサセプタ54上から取り去られ、続いて、次に熱処理しようとするウエハが搬送アームによりサセプタ54上へ移載され、その未処理ウエハが再び加熱炉40内へ搬入されて次の熱処理操作が行なわれる。
【0006】そして、図10に示すように、ウエハ10は、石英製のサセプタ54の先端の円環部60に突出形成された2本の突出支持部62、62と、温度測定装置の測温体64の先端部分との3点で水平に支持されている。尚、サセプタ54及び測温体64は、図示しない部分で固定されて水平に保持されている。測温体64は、例えばシース熱電対を細管状の被覆部材に内挿して、シース熱電対の全身を被覆部材で被覆した構造を有している。被覆部材は、例えばCVD法によって製造された高純度SiC(シリコンカーバイド)から形成されており、高耐熱性、高熱伝導性を有し、また、薄肉で細管状に形成されているため、ウエハ10に比べて熱容量が極めて小さく、さらに、ウエハ30の表面に対する汚染源となるような不純物質を含有していないため、ウエハ10に対して汚染性を有しない。また、シース熱電対は、例えばシース部の外径が0.3mm、長さが200mm程度であり、細管状被覆部材の先端付近まで深く挿入されている。
【0007】測温体64の被覆部材は、図11に示すように、先端が閉塞された細長い円管状に形成されており、例えば外径が0.8mm、内径が0.4mm、長さが200mm程度のものである。また、測温体64の被覆部材の先端部は、例えば幅が0.5mm、長さが15mm程度の平坦面66に加工形成されており、測温体64は、その先端部の平坦面66でウエハ10と面接触するように配置される。
【0008】上記したような構成を有する測温体64は、その先端部の平坦面66で先端から10mm程度にわたってウエハ10を支持していて、常にウエハ10と面接触している。そして、図9に示したような光照射型熱処理装置によりウエハ10が熱処理される過程で、ウエハ10が加熱されてその表面温度が上昇すると、熱伝導により測温体64の被覆部材も加熱されて温度が上昇する。このとき、測温体64の被覆部材は、ウエハ10に比べて熱容量が極めて小さく、またウエハ10と面接触しているので、熱伝導効率が極めて高いため、測温体64の被覆部材は、熱伝導により加熱されて速やかにウエハ10の温度と同一温度になる。そして、被覆部材の先端付近まで内挿されているシース熱電対によって被覆部材の先端部の温度が正確に測定される。
【0009】ところで、上記したように温度測定装置の測温体をウエハに直接接触させてウエハの温度を測定する方法では、その測温精度は、測温体とウエハとの接触状態に大きく依存する。すなわち、ウエハをサセプタ上に載せ損なったり、湾曲等のウエハの形状不良があったり、サセプタや測温体のセッティングが悪かったりすると、測温体とウエハとの接触状態が悪くなり、ウエハの正確な温度を測定することができなくなる。そこで、測温体とウエハとが適正に接触しているか否かを確認する必要があるが、この接触状態の良否は、従来、目視により測温体とウエハとがほぼ適正に接触していることを確認した上で、ウエハに対し実際に熱処理を施し、熱処理後においてウエハを検査し、その検査データに基づいてウエハが目的の温度で熱処理されているか否かを判定することにより、その確認を行なうようにしていた。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、例えば半導体装置の製造工程において、ウエハの1枚1枚に対し上記のような確認を行ないながらウエハの熱処理を行なっていたのでは、極めて生産性が悪くなる。一方、生産性の低下を避けるために、何百枚或いは何千枚のウエハを熱処理するごとに1回だけ上記確認を行なうようにしたときには、その一連の熱処理の途中において何らかの原因により測温体とウエハとの接触状態の悪化が生じても、それを確認することができず、そのまま次の確認操作が行なわれる時点まで不良な熱処理が行なわれる恐れがあり、歩留まりの低下を招く、といった問題点がある。
【0011】この発明は、以上のような事情に鑑みてなされたものであり、ウエハの温度を接触式で測定しながらウエハに対し熱処理を施す場合に、熱処理前にウエハと測温体との接触状態が適正であるか否かを自動的に検知することができるウエハの温度測定装置を提供することを技術的課題とし、もって、生産性を損なうことなく、測温の信頼性を確保するとともに不良な熱処理を未然に防止してウエハの熱処理における歩留まりの低下を防ぐことを目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】この発明は、加熱手段によって加熱されるウエハの温度を、そのウエハに温度検知手段の測温体を接触させて測定するようにした温度測定装置において、以下の各手段を備えたことを特徴とする。すなわち、この発明に係る温度測定装置は、加熱され、ウエハに接触していない状態の測温体に、室温下にあるウエハが適正に接触した時点から測温体が時間の経過に従って温度降下するときの状態変化を表わす特性値を入力するための入力手段と、この入力手段によって入力された前記特性値を記憶する記憶手段と、加熱され、ウエハに接触していない状態の測温体に、室温下にある被処理ウエハが接触した時点から測温体が時間の経過に従って温度降下するときの状態変化を表わす数値を算出する演算手段と、この演算手段によって算出された前記数値と前記記憶手段に記憶された前記特性値とを比較し、その比較結果に基づいて測温体と被処理ウエハとの接触状態が適正であるか否かを判定し、測温体と被処理ウエハとの接触状態が適正でないと判定されたときに異常信号を出力する比較判定手段と、この比較判定手段から出力される異常信号を受けて作動する、画面表示や音で異常を報知する警報器、加熱手段の駆動を停止させてウエハの熱処理を中止する駆動制御器などの出力手段とを備えている。
【0013】
【作用】上記構成の温度測定装置では、加熱された状態の測温体に室温状態のウエハが適正に接触した場合における、その接触時点から時間経過に従って測温体が温度降下するときの状態変化を表わす特性値を予め求めておき、ウエハの熱処理に先立って入力手段によりその特性値を入力し記憶手段に記憶させておく。そして、実際にウエハを熱処理してその熱処理後のウエハを取り去った後の測温体、熱処理を行なうことなく測温体を加熱炉内に挿入しておき、その加熱炉内から取り出した直後の測温体など、加熱された状態にある測温体に、室温下に置かれていた被処理ウエハを接触させ、測温体の温度変化を測定し、その測温結果に基づいて演算手段により、測温体と被処理ウエハとの接触時点から時間経過に従って測温体が温度降下するときの状態変化を表わす数値が算出される。次に、比較判定手段において、演算手段によって算出された前記数値と記憶手段に記憶された前記特性値とが比較され、その比較結果に基づいて測温体と被処理ウエハとの接触状態が適正であるか否かが判定され、その接触状態が適正でないと判定されたときに、比較判定手段から異常信号が出力される。そして、この異常信号が警報器、加熱手段の駆動制御器等の出力手段に送信されて、当該ウエハの熱処理が中止される。一方、比較判定手段から異常信号が出力されないときは、当該ウエハの熱処理工程へ進む。以上のようにして、ウエハの熱処理前に測温体とウエハとの接触状態が適正であるか否かが自動的に検知される。
【0014】次に、図2に基づいて、測温体とウエハとの接触状態が適正であるか否かを判別する方法の1例を具体的に説明する。
【0015】例えば、熱処理後のウエハを、約300〜500℃の温度に加熱された状態で加熱炉外へ搬出した場合、このウエハに接触している測温体も同一温度となっている。そして、熱処理後のウエハと未処理のウエハとがサセプタ(ウエハ支持器)に載せ換えられる直前には、測温体は冷されて大体100〜250℃程度の温度となっている。一方、次に熱処理しようとするウエハは室温下にあり、この室温状態のウエハがサセプタに載せ換えられ、ウエハが測温体に接触すると、測温体は、それより低温のウエハから熱伝導によって急激に冷される。このとき、測温体の温度の時間的変化は、ウエハとの接触状態に大きく依存し、測温体とウエハとの接触状態が適正である場合に比べて接触状態が不良であるときは、降温程度が緩やかになる。そこで、測温体とウエハとの接触状態が適正である場合における温度変化を予め求めておき、この温度変化の状態と被処理ウエハを測温体に接触させたときにおける温度変化の状態との比較から、被処理ウエハと測温体との接触状態の適否を検知しようとするものである。その検知方法の1例を具体的に示すと、次の通りである。
【0016】室温状態のウエハがサセプタ上に載置されて測温体に接触した時点をt0、そのt0時点における測温体の温度をθ0として、そのt0時点以後における測温体の温度の時間的変化の例を図2に示す。図中、曲線Aが、測温体とウエハとの接触状態が適正であるときの温度変化、曲線Bが、その接触状態が悪いときの温度変化をそれぞれ示している。図にも示されている通り、測温体とウエハとの接触状態が適正であるときは、ウエハから測温体への熱伝導が速やかに行なわれるため、接触状態が悪い場合に比べて温度降下が早い。
【0017】ここで、t0時点から一定時間(例えば5秒)経過したt2時点における曲線A及びBにおける各温度をそれぞれθ2a、θ2bとし、その途中のt1時点(例えばt0時点から1.5秒経過した時点)における曲線A及びBにおける各温度をそれぞれθ1a、θ1bとする。そして、t0時点からt2時点までの温度降下量(θ0−θ2a、θ0−θ2b)に対するt0時点からt1時点までの温度降下量(θ0−θ1a、θ0−θ1b)の比率(以下、「到達率」という)をそれぞれRa、Rbとすると、Ra=(θ0−θ1a)/(θ0−θ2a)×100(%)、Rb=(θ0−θ1b)/(θ0−θ2b)×100(%)となり、Ra>Rbとなる。そこで、測温体とウエハとの接触状態の適否を判別する基準の到達率をRth(Ra≧Rth>Rb)として設定しておき、処理しようとするウエハごとに到達率Rを算出して、R≧Rthであれば接触状態が正常であり、R<Rthであれば接触状態が不良であると判別するようにする。
【0018】
【実施例】以下、この発明の好適な実施例について図面を参照しながら説明する。
【0019】図1は、この発明に係るウエハの温度測定装置の概略構成の1例を、熱処理装置の構成の一部と共に示すブロック図である。このウエハの温度測定装置が使用される熱処理装置の構成例、並びに、この温度測定装置の測温体の構成例については、図9ないし図11を参照しながら上記したので、それらの詳細な説明は省略する。
【0020】図1において、出力ユニット30は、サイリスタSCRを内蔵しており、温度制御器32からの出力に応じ、加熱炉40に配設された光源50(図9参照)の出力を制御するものである。CPU18の熱処理装置制御回路26は、メモリ装置16に記憶されている出力プログラムに基づき、ウエハに熱処理を施す際に光源50の出力を制御するための制御信号を温度制御器32へ送り、温度制御器32は、測温体12によって検出され温度変換器34を通して入力された温度検出信号と、熱処理装置制御回路26から送られた制御信号とにより、出力ユニット30へ駆動信号を出力する。
【0021】そして、このウエハの温度測定装置は、キーボード14、メモリ装置16、演算回路20、比較回路22、判定回路24及び警報器28などを備えている。キーボード14は、加熱された状態の測温体12と室温下にあるウエハとが適正に接触した場合における測温体12の温度の時間的変化の状態を表わす特性値、例えば測温体とウエハとの接触状態の適否を判別する基準となる上記した到達率Rthを入力するためのものであり、また、メモリ装置16には、キーボード14によって入力された前記基準到達率Rthが記憶され、また、測温体12によって検出された所定時間後、例えば1.5秒後と5.0秒後の温度が記憶される。演算回路20では、メモリ装置16に記憶された一定時間ごとの検出温度に基づき、加熱された状態の測温体12に次に熱処理されるべき室温状態のウエハが接触したときの、測温体12の温度の時間的変化の状態を表わす数値、例えば上記した到達率Rが算出される。また、比較回路22では、演算回路20によって算出された前記到達率Rとメモリ装置16に記憶された前記基準到達率Rthとが比較され、その比較結果に基づいて判定回路24では、測温体12と被処理ウエハとの接触状態が適正であるか否かの判定が行なわれる。そして、判定回路24により、測温体12と被処理ウエハとの接触状態が適正でないと判定されたときは、判定回路24から警報器28へ異常信号が送られ、警報器28により、ディスプレイ画面上にエラーメッセージを表示したり警報音を発したりするなどして、測温体12と被処理ウエハとの接触状態が不良であることをオペレータに知らせる。また、同時に、判定回路24から熱処理装置制御回路26へ異常信号が送られ、出力プログラムに基づいて光源50を駆動させるのを停止させて加熱を止めたり、或いは、光源50を低出力で駆動させて加熱炉40内部を保温状態に加熱したりする。また、被処理ウエハを加熱炉40内へ搬入するのを止めて、ウエハの熱処理工程へ移行するのを止める。一方、判定回路24により、測温体12と被処理ウエハとの接触状態が適正であると判定されたときは、判定回路24から熱処理装置制御回路26へ正常信号が送られ、ウエハの熱処理工程へと進む。
【0022】図7は、加熱された状態の測温体に室温(23℃)下にあるウエハを接触させたときに、時間経過に従って測温体の温度が降下する様子を示したグラフ図である。図7において、曲線Iは、図8に示したようにウエハ10と測温体12との隙間dが0μmであるときの測温体12の温度変化を示し、曲線IIは、前記隙間dが20μmであるときの測温体12の温度変化を示し、また、曲線IIIは、前記隙間dが50μmであるときの測温体12の温度変化を示す。図7から分かるように、測温体12とウエハ10との接触状態の如何によって測温体12の温度変化の状態が相違する。従って、上記したように、測温体12の温度の時間的変化の状態を表わす数値、例えば到達率に基づいて測温体12とウエハ10との接触状態の適否を判別できることが確認された。
【0023】次に、図3ないし図6に示したフローチャートに基づいて、このウエハの温度測定装置による検知動作の1例について説明する。
【0024】熱処理後のウエハ10を載置支持したサセプタ54が加熱炉40内から搬出され、熱処理後のウエハ10が搬送アームによってサセプタ54上から取り去られ、次に熱処理しようとするウエハ10が搬送アームによってサセプタ54上へ移載されると、まず、測温体12から温度変換器34を介して入力される温度検出信号が、所定の高温(θ0)付近の温度を示しているか否かをチェックする。これは、入力されている温度検出信号が、メモリ装置16が予め記憶している所定のしきい値(θc:例えば100℃)よりも高い温度を示しているか否かを、比較回路22にて比較判断してなされる。もし、入力されている温度検出信号が所定のしきい値θc以下の温度を示している場合には、測温関係の機器が故障している旨の測温機器異常信号を第2の警報器29に出力し、そのディスプレイ画面上にエラーメッセージを表示するなどの警報処理を行なう。これにより、万一、測温体12や温度変換器34が故障しているために、測温体の降温レートの算出が困難になったり、誤って算出してしまって、基板が載置されているにもかかわらず載置されていないと誤った判断をしてしまうような虞がなくなる。
【0025】次に、サセプタ54上に被処理ウエハ10が載置されたことを検出する。この検出は、例えば図4に示すように、測温体12の温度変化率をチェックすることにより行なわれる。すなわち、サセプタ54上に室温状態のウエハ10が載置されると、測温体12がウエハ10に接触することによって測温体12の温度が急激に降下することになるため、測温体12の降温レートが、予め実験により求めておいた、ウエハが載置されたと判断するときの基準レートと等しいかそれ以上の値になったときに、サセプタ54上にウエハ10が載置されたと判断する。そして、そのt0時点における測温体12の温度θ0をメモリ装置16に記憶する。
【0026】次に、予め設定された時点における測温体12の温度を順次メモリ装置16に記憶していく。この処理により、図5に示すように、サセプタ54上にウエハ10が載置されたt0時点からT1時間(1.5秒)経過したt1時点における測温体12の温度θ1がメモリ装置16に記憶され、続いて、t0時点からT2時間(5.0秒)経過したt2時点における測温体12の温度θ2がメモリ装置16に記憶される。
【0027】測温体12の温度の記憶処理が終了すると、図3に示すように、測温体12とウエハ10との接触状態が適正であるか否かが判別される。この判別は、演算回路20、比較回路22及び判定回路24において、到達率R=(θ0−θ1)/(θ0−θ2)×100(%)を算出し、その算出された到達率Rと、予め実験により求めておいた、測温体12とウエハ10との接触状態が適正であると判断するときの基準到達率Rthとを比較し、R≧Rthであれば接触状態が正常であり、R<Rthであれば接触状態が不良であると判定することにより行なわれる。そして、測温体12とウエハ10との接触状態が正常であると判定されたときは、そのままウエハ10の熱処理工程へと進む。一方、測温体12とウエハ10との接触状態が異常であると判定されたときは、警報処理が行なわれる。この警報処理は、例えば図6に示すように、被処理ウエハ10を加熱炉40内へ搬入するのを中止し、警報器28のディスプレイ画面上にエラーメッセージを表示することにより行なわれる。
【0028】この発明に係るウエハの温度測定装置は上記したような構成を有しているが、この発明の範囲は、上記説明並びに図面の内容によって限定されず、要旨を逸脱しない範囲で種々の変形例を包含し得る。例えば、上記説明では、到達率といったパラメータを使用して測温体と基板との接触状態の適否を判定するようにしたが、その判定は別の値、例えば測温体と基板との接触時点から一定時間経過後における測温体の温度降下量、一定時点における温度勾配などの数値を媒介として行なうようにしてもよい。また、測温体は、ウエハに直接に接触して測温するものであればよく、その構成、形状なども上記実施例のものに限定されない。さらに、上記説明では、熱処理装置として光照射型熱処理装置を例示したが、スパッタリング装置、CVD装置、エピタキシャル成長装置などにおけるウエハの温度測定装置としても、この発明は適用し得るし、また、上記実施例のようにサセプタ及び測温体を加熱炉に出し入れするのではなく、サセプタ及び測温体を加熱炉内に常時固定しておき、ウエハを搬送アームにより加熱炉に出し入れして、ウエハを炉内に設置されたサセプタと搬送アームとの間で移載する構成の熱処理装置のウエハ温度測定装置としても、この発明は適用し得る。
【0029】
【発明の効果】この発明は以上説明したように構成されかつ作用するので、種々の熱処理装置により各種基板に対して熱処理を施す場合に、この発明に係る基板の温度測定装置を使用して基板の温度測定を行なうようにしたときは、熱処理前に基板と測温体との接触状態の適否を自動的に検知することができるため、生産性を損なうことなく、測温の信頼性を確保するとともに不良な熱処理を未然に防止して基板の熱処理における歩留まりの低下を防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明に係る基板の温度測定装置の概略構成の1例を、熱処理装置の構成の一部と共に示すブロック図である。
【図2】この発明に係る基板の温度測定装置において測温体と基板との接触状態が適正であるか否かを判別する方法の1例を具体的に説明するためのグラフ図である。
【図3】この発明に係る基板の温度測定装置による検知動作の1例について説明するためのフローチャートである。
【図4】図3に示した検知動作中、サセプタ上へのウエハの載置検出処理の1例を説明するためのフローチャートである。
【図5】図3に示した検知動作中、測温体の温度の記憶処理の1例を説明するためのフローチャートである。
【図6】図3に示した検知動作中、警報処理の1例を説明するためのフローチャートである。
【図7】加熱された状態の測温体に室温下にあるウエハを接触させたときに、時間経過に従って測温体の温度が降下する様子を示したグラフ図である。
【図8】ウエハと測温体とが接触した状態を示す一部拡大図である。
【図9】基板の温度測定装置が使用される熱処理装置(光照射型熱処理装置)の概略構成の1例を示し、一部を縦断面で表わした要部正面図である。
【図10】基板の温度測定装置の測温体を、図9に示した熱処理装置のウエハ支持器(サセプタ)の一部及びウエハと共に示した平面図である。
【図11】基板の温度測定装置の測温体でウエハの一部を支持している状態を説明するための斜視図である。
【符号の説明】
10 ウエハ
12 基板の温度測定装置の測温体
14 キーボード(入力手段)
16 メモリ装置(記憶手段)
18 CPU
20 演算回路
22 比較回路
24 判定回路
28 警報器

【特許請求の範囲】
【請求項1】 加熱手段によって加熱される基板の温度を、その基板に温度検知手段の測温体を接触させて測定するようにした基板の温度測定装置において、加熱され、基板に接触していない状態の前記測温体に、室温下にある基板が適正に接触した時点から測温体が時間の経過に従って温度降下するときの状態変化を表わす特性値を入力するための入力手段と、この入力手段によって入力された前記特性値を記憶する記憶手段と、加熱され、基板に接触していない状態の前記測温体に、室温下にある被処理基板が接触した時点から測温体が時間の経過に従って温度降下するときの状態変化を表わす数値を算出する演算手段と、この演算手段によって算出された前記数値と前記記憶手段に記憶された前記特性値とを比較し、その比較結果に基づいて前記測温体と被処理基板との接触状態が適正であるか否かを判定し、測温体と被処理基板との接触状態が適正でないと判定されたときに異常信号を出力する比較判定手段と、この比較判定手段から出力される異常信号を受けて作動する出力手段とを備えたことを特徴とする基板の温度測定装置。

【図2】
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【図6】
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【図8】
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【図11】
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【図9】
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【図1】
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【図4】
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【図3】
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【図7】
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【図10】
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【図5】
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【特許番号】第2824003号
【登録日】平成10年(1998)9月4日
【発行日】平成10年(1998)11月11日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平5−51597
【出願日】平成5年(1993)2月16日
【公開番号】特開平6−244259
【公開日】平成6年(1994)9月2日
【審査請求日】平成8年(1996)12月2日
【出願人】(000207551)大日本スクリーン製造株式会社 (2,640)
【参考文献】
【文献】特開 平4−326540(JP,A)
【文献】特開 平5−333093(JP,A)
【文献】実開 平2−8141(JP,U)