説明

基板冷却装置

【目的】 高温処理された基板を目標温度に高速で冷却するとともに、その冷却後における面内温度分布の均一性を向上する。
【構成】 基板Wを載置して冷却する冷却プレート6を設けた処理室5内の天井側に副冷却プレート18を設け、この副冷却プレート18により、冷却プレート6上に載置された基板Wの上方となる処理室5内の雰囲気温度を、冷却プレート6で基板Wを冷却しようとする目標温度に冷却する。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、半導体ウエハ、フォトマスク用のガラス基板、液晶表示装置用のガラス基板、光ディスク用の基板等の基板を、フォトリソグラフィー工程の中で、フォトレジスト液塗布や現像工程の前後において高温に加熱処理された基板を常温付近の目標温度に冷却するために、処理室内に、冷却手段を備えた冷却プレートを設置し、基板を冷却プレートに支持させて冷却するようにした基板冷却装置に関する。
【0002】
【従来の技術】この種の基板冷却装置では、基板を支持する冷却プレートに備えられている冷却手段を高精度に温度制御することで、冷却プレートの温度を一定の温度に保つように構成している。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、このような基板冷却装置では、基板の温度を所望の温度に冷却するとともに、基板表面における温度分布を均一にすることが要求される。そのために実際に、冷却室内に設けられる冷却プレートは、冷却手段により一定の温度に保たれ、かつ温度分布が均一になるようにその形状や制御が設計されている。ところが、そのように設計された冷却プレートを使用しても、実際には処理される基板の面内温度分布の均一性が低下する問題点が発生していた。
【0004】そこで、本発明者が鋭意研究したところ、冷却プレートが設けられる処理室内の天井付近の温度が目標温度よりも高い場合に、冷却プレートで目標温度近くまで冷却されている基板に対して、熱伝導や熱対流、更には天井壁面からのふく射熱等により逆に熱を供給することになってしまい、冷却後における面内温度分布の均一性が低下する原因となっていたことが判明した。また、このような基板冷却装置は、基板の加熱処理を行う基板加熱装置の下部あるいは左右に設けられることが多く、しかも装置全体を小型化するために、それらの装置が近接して設けられることが多いが、上述の問題は、そのような場合に特に顕著に発生することが判明した。
【0005】また、そのような場合に、冷却プレートの温度を目標温度に制御していても、処理室内における冷却プレートの上方空間での雰囲気温度が目標温度よりも高くなり、基板を目標温度まで冷却するのに時間を要する欠点もあった。
【0006】本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、高温処理された基板を目標温度に高速で冷却するとともに、その冷却後における面内温度分布の均一性を向上できるようにすることを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明は、上述のような目的を達成するために、処理室内に、冷却手段を備えた冷却プレートを内設し、その冷却プレートに支持させた基板を冷却するようにした基板冷却装置において、処理室内の、冷却プレートに支持された基板の上方となる箇所に、冷却プレートで冷却しようとする目標温度に冷却する副冷却手段を備えた副冷却器を設けて構成する。
【0008】
【作用】本発明の基板冷却装置の構成によれば、処理室内の上部側に副冷却器を設けることにより、冷却プレート上に支持されている基板と対向している処理室天井壁面からのふく射熱が抑制される。また、その処理室内の雰囲気温度が冷却プレートで冷却しようとする目標温度に維持されることによって、基板の面内温度分布の均一性が乱されることはなく、また、基板の目標温度への冷却速度も向上する。
【0009】
【実施例】次に、本発明の実施例を図面に基づいて詳細に説明する。
【0010】図1は、本発明に係る基板冷却装置の実施例を示す全体縦断面図であり、ハウジング2内の下方に基板冷却装置3が設けられ、その上方に基板加熱装置4が設けられている。
【0011】基板冷却装置3は、処理室5内に冷却プレート6を設けるとともに、その冷却プレート6に形成した貫通孔7を通じて基板支持ピン8を昇降可能に設けて構成され、基板支持ピン8を上昇させた状態で基板搬送ロボット(図示せず)により基板Wの搬入・搬出を行い、そして、基板支持ピン8を下降させることにより、基板Wを冷却プレート6上に載置して支持できるようになっている。図示しないが、基板支持ピン8…を一体的に保持した支持部材9にエアシリンダが連動連結され、そのエアシリンダの伸縮によって基板支持ピン8…を昇降するように構成されている。
【0012】冷却プレート6は、基板Wを載置するアルミ製の伝熱プレート10と、図2の平面図に示すように、第1の給水管11および第1の排水管12を接続したアルミ製の水冷式の水冷板13と、伝熱プレート10と水冷板13との間に介在された急冷用のペルチェ素子14…とから構成されている。図中15は、伝熱プレート10に埋め込まれ、伝熱プレート10の温度を測定する測温抵抗素子を示している。
【0013】処理室5内の天井に、第2の給水管16および第2の排水管17を接続した水冷式のアルミ製の副冷却プレート18が設けられ、処理室5内の、冷却プレート6上に載置された基板Wの上方となる処理室5内の雰囲気の温度を、冷却プレート6で基板Wを冷却しようとする目標温度(例えば、20℃)と同じ温度に冷却するように構成されている。
【0014】基板加熱装置4は、処理室19内に、板状ヒータなどの加熱手段を備えた加熱プレート20を備えて構成され、基板冷却装置3におけると同様に、基板支持ピンの昇降と搬送ロボットとにより基板Wを搬入・搬出するとともに、搬入した基板Wを加熱プレート20に載置して高温(例えば、 150℃)で加熱処理するようになっている。
【0015】以上の構成により、基板加熱装置4で高温処理された基板Wを基板冷却装置3で常温などの目標温度まで冷却するときに、処理室5内の雰囲気温度を副冷却プレート18で目標温度まで冷却し、冷却プレート6によって基板Wが目標温度まで冷却される間に雰囲気温度との温度勾配を発生させず、周囲から基板Wに熱を供給することなく基板Wを高速で冷却するとともに、その冷却後における基板Wの面内温度分布の均一性を向上できるようになっている。
【0016】次に、実験結果について説明する。3個の冷却プレートを用意し、各冷却プレートを本実施例装置に使用し、以下の方法で測定を行った。これは、サンプルとした冷却プレートごとに、特性のがらつきがあることを考慮したためである。
【0017】基板Wとして直径8インチの単結晶シリコン半導体ウエハを使用する。基板Wの冷却しようとする目標温度を20℃に設定し、基板Wを載置する冷却プレート6の温度をそれと同じ20℃に保つよう制御する。そして、副冷却プレート18に冷却水を供給して処理室5内を一定温度Tに保った状態で、その基板Wの温度分布幅を下のように測定する。この実験を、一定温度Tを約15℃から約30℃までの複数の値に設定して繰り返し行った。
【0018】温度分布幅は、各一定温度Tにおいて、基板Wの中心と、中心から半径90mmの仮想円上で45°づつずらせた位置の合計9点の温度を測定し、その最大温度と最小温度との差を温度分布幅として求めた。そして、その温度分布幅を縦軸に、そして、処理室5内の温度を横軸にそれぞれとってプロットしたところ、図3のグラフに示す結果を得た。
【0019】上記結果から、いずれの冷却プレートにあっても、雰囲気温度Tが冷却プレートの温度に近くなればなる程温度分布幅が小さく、面内温度分布の均一性を向上できることが明らかであった。
【0020】上記実施例では、冷却プレート6に水冷板13とペルチェ素子14…の両方を設けているが、両者のいずれか一方のみを設けても良く、また、冷媒式の冷却部材などの他の手段を設けても良く、それらをして冷却手段と総称する。
【0021】また、上記実施例では、副冷却プレート18を処理室5の天井側にのみ設けているが、本発明としては、副冷却プレート18に相当するものを処理室5の天井側に加えて側壁側に設けても良い。
【0022】なお、上記実施例において、副冷却プレート18が本発明でいう副冷却器に相当する。上記実施例では、副冷却プレート18において、第2の給水管16から第2の排水管17に冷却水を通す水冷式の冷却手段を備えているが、水冷式の冷却手段に代えてペルチェ素子を設けるとか、水冷式の冷却手段とペルチェ素子を併設するとか、冷媒式の冷却部材などの他の手段を設けるなどしても良く、それらをして副冷却手段と総称する。
【0023】また、上記実施例では、基板Wを冷却プレート6上に直接載置して支持するようにしたが、例えば、冷却プレート6に所定の深さの有底の穴を複数形成し、この穴に穴の深さより大径の直径数百ミクロンのセラミックボールを嵌入した構成により、そのセラミックボールの上に基板Wを載せ、冷却プレート6と基板Wとの間に所定の微小な隙間を保った状態で基板Wを支持するようにしても良い(図示せず)。
【0024】
【発明の効果】以上説明したように、本発明の基板冷却装置によれば、副冷却器により、冷却プレート上に支持されている基板と対向している処理室天井壁面からのふく射熱を抑制できることと、また、その処理室内の雰囲気温度が目標温度に維持されて、処理室内の空気等による熱対流が基板に与える熱的な影響も抑制されることと相まって、基板の面内温度分布の均一性を向上させることができ、しかも、基板の目標温度への冷却速度も向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る基板冷却装置の実施例を示す全体縦断面図である。
【図2】要部の平面図である。
【図3】面内温度分布の均一性を示すグラフである。
【符号の説明】
3…基板冷却装置
5…処理室
6…冷却プレート
13…水冷板
14…ペルチェ素子
16…第2の給水管
17…第2の排水管
18…副冷却プレート
W…基板

【特許請求の範囲】
【請求項1】 処理室内に、冷却手段を備えた冷却プレートを内設し、前記冷却プレートに支持させた基板を冷却するようにした基板冷却装置において、前記処理室内の、前記冷却プレートに支持された前記基板の上方となる箇所に、前記冷却プレートで冷却しようとする目標温度に冷却する副冷却手段を備えた副冷却器を設けてあることを特徴とする基板冷却装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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