基板処理方法および基板処理装置
【課題】基板の下面からエッチング液を回り込ませて基板の上面端部をベベルエッチングする技術において、エッチング幅を小さくかつ均一にする。
【解決手段】第1または第2の薬液供給源211,212から供給されるエッチング液を下面処理ノズル2から吐出するのに先立って、DIWを下面処理ノズル2から吐出させてウエハ裏面Wbに供給しておく。エッチング液の非等方的な広がりはDIWの層によって修正されるため、エッチング液の局所的な集中に起因するエッチングむらが防止される。このため、ウエハ回転速度を上げたりエッチング液の供給量を少なくすることができ、エッチング幅を小さくすることができる。
【解決手段】第1または第2の薬液供給源211,212から供給されるエッチング液を下面処理ノズル2から吐出するのに先立って、DIWを下面処理ノズル2から吐出させてウエハ裏面Wbに供給しておく。エッチング液の非等方的な広がりはDIWの層によって修正されるため、エッチング液の局所的な集中に起因するエッチングむらが防止される。このため、ウエハ回転速度を上げたりエッチング液の供給量を少なくすることができ、エッチング幅を小さくすることができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、半導体ウエハ、フォトマスク用ガラス基板、液晶表示用ガラス基板、プラズマ表示用ガラス基板、光ディスク用基板などの各種基板に処理液を供給して該基板をエッチング処理する基板処理装置および基板処理方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の基板の製造工程においては、略水平状態に保持した基板を回転させながら基板下面にエッチング液を供給し、遠心力の作用により周縁部に広がったエッチング液を基板の上面端部に回り込ませることで基板上面のうちその端部のみをエッチング処理する、いわゆるベベルエッチング処理が行われる。このような処理を実行する基板処理方法および装置としては、例えば特許文献1に記載されたものがある。
【0003】
この種の技術においては、基板上のできるだけ広い面積をデバイスとして有効に活用するために、基板上面の端部におけるエッチング幅をできるだけ小さく、かつ均一にすることが求められる。特に半導体デバイス製造の技術分野においては、半導体ウエハの大口径化に伴って増加するウエハ周縁部のロスを抑えるため、エッチング幅を例えば1mm以下にまで減少させることが望まれる。
【0004】
【特許文献1】特開2004−006672号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
エッチング幅を小さくするための手法としては、基板上面へのエッチング液の回り込み量を少なくするためにエッチング液の供給量を少なくし基板の回転速度を高めることが考えられる。しかしながら、詳しくは後述するが、本願発明者らの実験によればこのようにすると平均的なエッチング幅を小さくすることはできるものの、局所的に大きくエッチングされる部分が出現するなど、エッチング幅の均一性の観点からはさらなる改善の余地があることが確認された。
【0006】
この発明は上記課題に鑑みなされたものであり、基板の下面からエッチング液を回り込ませて基板の上面端部をエッチングする技術において、エッチング幅を小さくかつ均一にすることのできる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願発明者らの実験によれば、上記したエッチング幅の不均一さは以下のようにして発生していることが明らかになった。すなわち、基板の回転速度が比較的低速でエッチング液の供給量が多い従来のベベルエッチング処理においては、基板下面に供給されたエッチング液がその表面張力および回転による遠心力の作用で外側に向けてほぼ等方的に、つまりどの方向においても均等に周囲に広がることが期待できた。これに対し、エッチング幅を小さくするべく基板の回転速度を上げたりエッチング液の供給量を少なくしようとすると、エッチング液の広がりが必ずしも等方的にならず放射状の筋になって周囲に広がってゆく場合があり、結果としてエッチング液が基板上面端部のいくつかの領域に集中して流れ込みその部分だけが大きくエッチングされることとなっていた。
【0008】
上記知見に鑑み、この発明にかかる基板処理方法は、基板を略水平状態に保持し略鉛直軸周りに回転させる基板保持工程と、回転する前記基板下面のエッチング液供給領域に向けてエッチング液を供給し前記基板の上面端部に前記エッチング液を回り込ませることにより前記基板の上面端部をエッチングするエッチング工程とを備え、前記エッチング工程の実行前に、前記基板下面に前液を供給して、該基板下面のうち前記エッチング液供給領域の周囲を取り囲む周囲領域を前液により濡れた状態にする前処理工程をさらに備えることを特徴としている。
【0009】
また、この発明にかかる基板処理装置は、基板を略水平状態に保持し略鉛直軸周りに回転させる基板保持手段と、回転する前記基板下面のエッチング液供給領域に向けてエッチング液を供給することで前記基板の上面端部に前記エッチング液を回り込ませ前記基板の上面端部をエッチングするエッチング液供給手段と、前記エッチング液供給手段からのエッチング液の供給に先立って、前記基板下面に前液を供給して該基板下面のうち前記エッチング液供給領域の周囲を取り囲む周囲領域を前液により濡れた状態にする前液供給手段とを備えることを特徴としている。
【0010】
このように構成された発明では、基板下面のうちエッチング液が供給されるエッチング液供給領域の周囲を取り囲むように、予め前液により濡らされた領域が形成される。そのため、供給されたエッチング液が基板の端部に到達する前に前液で濡れた領域に接することになる。こうして前液で濡れた領域では乾燥した領域よりもエッチング液に対する濡れ性が高く液が広がりやすいため、エッチング液の非等方的な広がりが緩和される。すなわち、エッチング液が上記したように放射状の筋となって広がったとしても、予め前液により濡らされた領域を通過することでその広がり方向がより等方的に、つまり基板端部各部に向けて均等に広がるように修正される。この濡れた領域はエッチング液供給領域の周囲を取り囲むように形成されているため、基板下面に供給されたエッチング液がどの方向に流れたとしても基板端部への到達はより等方的に行われることになる。
【0011】
このように、この発明では、基板下面に供給されたエッチング液が等方的に端部に到達するようになっている。そのため、従来のベベルエッチング技術よりも基板の回転速度を高めたりエッチング液の供給量を少なくしても、エッチング幅の均一性が損なわれるのを防止することが可能となる。その結果、この発明によれば、エッチング幅を均一に保ちつつ、従来のベベルエッチング技術よりもエッチング幅を小さくすることができる。
【0012】
ここで、前液により濡らされた領域としては、基板下面のエッチング液供給領域と基板下面端部との間に少なくともエッチング液供給領域の周囲を取り囲む環状に形成されれば足り、基板下面全体に前液を供給する必要は必ずしもない。また前液により濡らされた領域がエッチング液供給領域に接している必要もない。
【0013】
なお、ここでいう「前液」の概念としては、純水や脱イオン水(deionized water;DIW)を含み、さらにそのほか炭酸水、電解イオン水、水素水および磁気水などの機能水を含む。
【0014】
上記のように構成された基板処理方法において、例えば、前記前処理工程では、前記基板の下面端部を含む前記周囲領域を前液により濡れた状態とするようにしてもよい。前記したように、本発明の趣旨によれば基板下面のエッチング液供給領域と基板下面端部との間の領域を少なくとも前液で濡らしておけばよいが、基板下面端部まで濡らしておくことによって、基板上面端部へのエッチング液の回り込み量をより等方的にしてエッチング幅を均一にすることができる。
【0015】
また、前記エッチング工程では、前記基板の上面端部近傍に、前記基板の回転中心から外側に向かう気流を形成するようにしてもよい。こうすることで、エッチング液が基板上面に大きく回り込むのを防止してエッチング幅をより小さくすることができる。
【0016】
また、前記エッチング工程では、前記基板上面に対向部材を近接配置させ、前記対向部材と前記基板上面とに挟まれる空間に前記気流を形成することができる。こうすることで、エッチング液が基板上面に大きく回り込むことがより確実に防止され、エッチング幅を小さくかつ均一にすることができる。
【0017】
なお、前記前処理工程では、前記基板下面の略中央部に向けて前液を供給するようにしてもよく、また前記基板下面の周縁部に向けて前液を供給するようにしてもよい。いずれの場合においても、前液により濡れた領域を通ることでエッチング液の非等方的な広がりが緩和されて、均一なエッチング幅を得ることができる。特に前記基板下面の略中央部に向けて前液を供給するようにした場合には、基板下面全体を前液により濡らしておくことで、エッチング液の非等方的な広がり自体を抑えることが可能となる。
【0018】
また、前記エッチング工程では、前記前処理工程よりも前記基板の回転速度を高くするようにしてもよい。前処理工程ではエッチング液供給領域を取り囲む周囲領域に前液を供給しておくことが必要である一方、この領域に大量の前液が存在することは後続のエッチングの処理効率の点からは必ずしも好ましくない。そこで、エッチング工程における基板の回転速度を前処理工程よりも高くすることで、基板に付着する前液の量を減らすようにしてもよい。
【0019】
また、前述の基板処理装置においては、前記基板の上面と対向する基板対向面を有し前記基板の上面に近接配置される対向部材と、前記対向部材と前記基板上面とに挟まれる空間に前記基板の回転中心から外側に向かう気流を形成する気流形成手段とをさらに備えるようにしてもよい。このようにすれば、基板上面へのエッチング液の回り込み量を少なくしてエッチング幅をより小さくすることができる。
【0020】
また、前記基板保持手段には、前記基板の下面に当接して前記基板を下方から支持するための支持部が上向きに突設され、前記支持部により支持された前記基板の上面に対し前記対向部材が近接配置され、前記気流形成手段が前記対向部材の下面から気体を吐出することで前記気流を形成するとともに該気流により前記基板を前記支持部に押し付けることによって前記基板が保持されるようにしてもよい。このように対向部材から気体を吐出することにより基板を支持部に押し付け基板を保持するようにすることで、基板を保持するための保持ピン等を基板の端面に当接させることなく基板を保持することが可能となる。このため、基板上面端部各部へのエッチング液の回り込み量のばらつきを少なくしエッチング幅を均一にすることができる。
【0021】
また、前記エッチング液供給手段は、前記基板の下面に向けて開口し該開口部に向けて前記エッチング液を給送する給送管を備える一方、前記前液供給手段は、前記給送管の内部空間のうち前記開口部に接する一部空間に前液を注入するようにしてもよい。このような構成では、給送管を通って基板下面に向けて供給されるエッチング液が、給送管の開口部に接する内部空間に注入された前液を押し出すように作用する。こうして押し出された前液が予め基板下面に供給された後にエッチング液が供給されることとなるので、上記のような機能を簡単な装置構成によって実現することができる。
【0022】
これとは異なり、前記前液供給手段は、前記基板下面の周縁部に向けて前液を供給するように構成されてもよい。前記したように、前液は少なくともエッチング液供給領域を取り囲むように基板下面に供給されればよいので、基板下面の周縁部に向けて前液を供給する構成であっても上記効果を得ることが可能である。この場合において、例えば基板端面にチャックピンを当接させて基板を保持するように構成された装置では、チャックピンに洗浄液を供給して洗浄するための構成に本発明の前液供給手段としての機能を兼備させることも可能である。
【発明の効果】
【0023】
この発明によれば、基板下面のうちエッチング液が供給されるエッチング液供給領域の周囲を取り囲む周囲領域を、予め前液により濡らしておく。そのため、基板下面に供給されたエッチング液が非等方的に広がったとしても、濡れた周囲領域を通ることでその非等方性が緩和され、基板の端部へのエッチング液の到達はより等方的となる。このためエッチング幅の均一性を保ちながらエッチング幅を小さくすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
<第1実施形態>
図1はこの発明にかかる基板処理装置の第1実施形態を示す図である。また、図2は図1の基板処理装置の主要な制御構成を示すブロック図である。この基板処理装置は、半導体ウエハ等の略円形基板Wの上面端部に存在する薄膜(不要物)をエッチング除去する装置である。または、この基板処理装置は、基板Wの上面端部および基板裏面Wbに存在する薄膜をエッチング除去する装置である。ここで、処理対象となっている基板Wには、金属膜、シリコン窒化膜(SiN膜)やシリコン酸化膜等の薄膜が基板表面Wfに形成された基板や上記薄膜が表裏面Wf,Wbに形成された基板が含まれる。なお、この実施形態では、基板表面Wfとはデバイスパターンが形成されるデバイス形成面を意味している。
【0025】
この基板処理装置は、基板表面Wfを上方に向けた状態で基板Wを略水平姿勢に保持して回転させるスピンチャック1と、スピンチャック1に保持された基板Wの下面(裏面Wb)の中央部に向けて処理液を供給する下面処理ノズル2と、基板表面側からスピンチャック1に保持された基板Wの端部に対して局部的に処理液を供給するノズル3と、スピンチャック1に保持された基板Wの表面Wfに対向配置された対向部材5とを備えている。
【0026】
スピンチャック1では、中空の回転支軸11がモータを含むチャック回転機構13の回転軸に連結されており、チャック回転機構13の駆動により回転軸Jに対して回転支軸11が回転可能となっている。この回転支軸11の上端部にはスピンベース15が一体的にネジなどの締結部品によって連結されている。そして、装置全体を制御する制御ユニット8からの動作指令に応じてチャック回転機構13が作動することによりスピンベース15が回転軸Jを中心に回転する。スピンベース15の上面151には、基板Wの下面に当接して基板Wを下方から支持するための支持ピン152が上向きに突設されている。支持ピン152の本数は特に限定されないが、例えば等角度間隔で3本設けることにより、ウエハWを水平にかつ安定して支持することが可能となる。
【0027】
また、中空の回転支軸11には処理液供給管21が挿通されており、その上端に下面処理ノズル2が結合されている。処理液供給管21は、必要に応じて処理液供給管21に薬液やDIWなどの処理液を供給したり、処理液供給管21内に残留する液体を吸引除去したりする供給・吸引ユニット20に接続されている。
【0028】
供給・吸引ユニット20は、処理液供給管21に接続された配管201と、それぞれ開閉バルブ221、222を介して配管201に接続されて互いに異なる薬液を供給する第1および第2の薬液供給源211、212と、開閉バルブ223を介して配管201に接続されてDIWを供給するDIW供給源213と、開閉バルブ225を介して配管201に接続されて、例えばコンバムや真空ポンプの作用により配管201内の液体を吸引する吸引機構215とを備えている。供給・吸引ユニット20内の開閉バルブ221ないし225および吸引機構215は制御ユニット8により制御される。
【0029】
この実施形態では、第1および第2の薬液供給源211、212のいずれかから供給される薬液、またはこれらから供給される薬液を混合してなる薬液をエッチング液として下面処理ノズル2からウエハ裏面Wbの略中心に向けて供給することができる。薬液の種類はエッチング除去すべき薄膜の材料に応じて定められ、例えば銅薄膜に対してはSC−2(塩酸と過酸化水素水との混合液)、タングステン薄膜に対してはフッ酸と硝酸とを混合したものがエッチング液として用いられる。
【0030】
また、回転支軸11の内壁面と処理液供給管21の外壁面の隙間は、環状のガス供給路23を形成している。このガス供給路23はガス供給ユニット18と接続されており、基板裏面Wbと該基板裏面Wbに対向するスピンベース15の上面とに挟まれた空間に窒素ガスを供給できる。なお、この実施形態では、ガス供給ユニット18から窒素ガスを供給しているが、空気や他の不活性ガスなどを吐出するように構成してもよい。
【0031】
スピンチャック1の上方には、スピンチャック1に支持された基板Wに対向する円盤状の対向部材5が水平に配設されている。対向部材5はスピンチャック1の回転支軸11と同軸上に配置された回転支軸51の下端部に一体回転可能に取り付けられている。この回転支軸51には対向部材回転機構54が連結されており、制御ユニット8からの動作指令に応じて対向部材回転機構54のモータを駆動させることで対向部材5が回転中心Jを中心に回転する。また、制御ユニット8は対向部材回転機構54をチャック回転機構13と同期するように制御することで、スピンチャック1と同じ回転方向および同じ回転速度で対向部材5を回転駆動することもできる。
【0032】
また、対向部材5は対向部材昇降機構55と接続され、対向部材昇降機構55の昇降駆動用アクチュエータ(例えばエアシリンダーなど)を作動させることで、対向部材5をスピンベース15に近接して対向させたり、逆に離間させることが可能となっている。例えば基板処理装置に対して基板Wが搬入出される際には、制御ユニット8はスピンチャック1から上方に十分に離れた離間位置に対向部材5を上昇させる。その一方で、基板Wに対して膜除去処理を施す際には、制御ユニット8はスピンチャック1に保持された基板Wの表面Wfのごく近傍に設定された近接位置まで対向部材5を下降させる。これにより、対向部材5の下面501と基板表面Wfとが近接した状態で対向配置される。
【0033】
回転支軸51の中空部には、ガス供給路57が形成されている。このガス供給路57はガス供給ユニット18と接続されており、基板表面Wfと対向部材5の下面501とに挟まれた間隙空間SPに窒素ガスを供給可能となっている。ガス供給路57から間隙空間SPに供給された窒素ガスは、図1に破線矢印で示すように、基板Wの周方向に広がり基板表面Wfに沿って外側に向かって流れてゆく。
【0034】
図3は対向部材を下方から見た図である。この対向部材5の下面501は基板Wの直径と同等以上の平面サイズを有している。このため、対向部材5が近接位置に配置されると基板表面全体を覆って基板表面Wf上の雰囲気を外部雰囲気から遮断可能となっている。この対向部材5の下面501には、複数のガス吐出口502が形成されている。これらのガス吐出口502は、スピンチャック1に保持される基板Wの表面Wfの端部よりも内側位置に対向する位置に、回転軸Jの位置に対応する回転中心AOを中心とする円周に沿って等角度間隔に形成されている。これらのガス吐出口502は対向部材5の内部に形成されたガス流通空間503に連通しており、ガス流通空間503にガス供給路57を介して窒素ガスが供給されると、複数のガス吐出口502を介して窒素ガスが間隙空間SPに供給される。
【0035】
そして、対向部材5が近接位置に位置決めされた状態で、複数のガス吐出口502から間隙空間SPに窒素ガスが供給されると、間隙空間SPの内部圧力が高まり基板Wがその裏面Wbに当接する支持ピン152に押圧される。この押圧状態のまま制御ユニット8の動作指令に応じてスピンベース15が回転すると、基板裏面Wbと支持ピン152との間に発生する摩擦力によって基板Wが支持ピン152に支持されながらスピンベース15とともに回転する。なお、間隙空間SPに供給された窒素ガスは基板Wの径方向外側へと流れていく。すなわち、この実施形態は、ガス圧によってウエハWを支持ピン152に押し付けることによってウエハWを保持する、いわゆる押し付けチャック機構を有している。
【0036】
この対向部材5の周縁部には、対向部材5を上下方向(鉛直軸方向)に貫通するノズル挿入孔52が形成され、対向部材5の下面501に開口部521が形成されている。そして、このノズル挿入孔52にノズル3が挿入されて該挿入状態でノズル3から基板Wの表面周縁部に向けて処理液を吐出して基板Wの端部に対して局部的に処理液を供給することができる。この構成によれば、対向部材5が基板表面Wfを覆うことで基板Wの表面中央部に処理液が付着するのを防止しながら、ノズル3をノズル挿入孔52に挿入させることでノズル3から表面周縁部に直接に処理液を供給することができる。
【0037】
ノズル3は、図1に示すように、水平方向に延びるノズルアーム31の一方端に取り付けられている。このノズルアーム31の他方端はノズル移動機構33(図2)に接続されている。さらに、ノズル移動機構33はノズル3を水平方向に所定の回動軸回りに揺動させるとともに、ノズル3を昇降させることができる。このため、制御ユニット8からの動作指令に応じてノズル移動機構33が駆動されることで、ノズル3を対向部材5のノズル挿入孔52に挿入して表面周縁部に向けて薬液またはDIWを吐出可能な処理位置P31と、基板Wから離れた待機位置P32との間で移動させることができる。
【0038】
また、対向部材5のノズル挿入孔52の内壁には、ガス導入口505が開口されており、ガス導入口505からノズル挿入孔52の内部空間に窒素ガスを供給可能となっている。ガス導入口505はガス流通空間503を介してガス供給ユニット18に連通している。したがって、ガス供給ユニット18から窒素ガスが圧送されると、ノズル挿入孔52の内部空間に窒素ガスが供給される。これにより、ノズル3が待機位置P32に位置決めされた状態、つまり、ノズル3がノズル挿入孔52に未挿入の状態では、ノズル挿入孔52の上下双方の開口から窒素ガスが噴出される。このため、ノズル挿入孔52にノズルが未挿入の状態でも、処理液がノズル挿入孔52の内壁に付着するのが防止される。
【0039】
なお、図示を省略しているが、上記のように構成されたスピンベース15の周囲を取り囲むように、使用済みの処理液をその種類別に回収するための処理液回収機構が設けられている。この処理液回収機構としては、例えば特開2004−153078号公報に記載された構造のものを適用することができる。
【0040】
次に、上記のように構成された基板処理装置の動作について説明する。この基板処理装置は、ウエハWの上面端部に付着した薄膜をエッチングにより除去する、いわゆるベベルエッチング処理を行うための装置である。この装置では、スピンベース15を回転させながら下面処理ノズル2からエッチング液をウエハWの下面に供給することによってエッチング液をウエハWの上面端部に回り込ませ、これによりウエハWの上面端部をエッチング処理する。
【0041】
エッチングにより薄膜を除去されるウエハWの端部領域は、デバイスとして有効に利用することのできない領域である。したがって、ベベルエッチング処理によりエッチングされるウエハWの上面端部領域の幅(エッチング幅)はできるだけ小さく、しかもウエハWの周上において均一であることが望ましい。スピンベース15の回転速度を上げたり、供給するエッチング液の量を少なくすれば、ウエハWの上面に回り込むエッチング液の量が少なくなるためエッチング幅が小さくなると期待される。しかしながら、本願発明者らが実際にこのようにして実験を行ったところ、エッチング幅が位置により変化し部分的に極端に大きくなる現象(エッチングむら)が生じることがわかった。
【0042】
図4はエッチングむらの様子を模式的に示す図である。また、図5はエッチングむらの発生原理を説明するための図である。図4(a)に示すように、表面Wf全体を覆うように薄膜TFが形成されたウエハWを用いて、600〜1000rpmで回転させたウエハの上面に対向部材5から200〜300L/min(リッター/分)程度の窒素ガスを供給するとともに、ウエハ下面に下面処理ノズル2から0.5〜1.0L/min程度のエッチング液を供給してベベルエッチング処理を行った。
【0043】
理想的なベベルエッチング処理では、ウエハ表面Wfに形成された薄膜TFのうちウエハ端部に近い部分がエッチング除去されて、図4(b)に示すように、ウエハ周縁部には一定幅Widの薄膜除去領域RRが出現するはずである。実際の装置でも、ウエハの回転速度が比較的低く、エッチング液供給量が多い場合にはこのようにほぼ均一なエッチング幅が得られる。
【0044】
ここで、エッチング幅を小さくしようとしてウエハの回転速度を高めたりエッチング液の供給量を少なくすると、図4(c)に示すように、平均的なエッチング幅Wavについては小さくできるが、局所的にエッチング幅が大きな不規則領域IRが現れる、すなわちエッチングむらが生じる。例えばエッチング幅が1mm以下になるように条件を設定したとき、不規則領域IRの出現数は数箇所〜数十箇所程度であり、その出現位置はランダムである。また不規則領域IRにおけるエッチング幅の最大値Wmaxは2mm以上となる場合があった。また、不規則領域の出現数や最大幅については、エッチング処理時間との相関があまり見られず、ごく短時間のエッチングによっても発生していることから、エッチングむらはエッチングの初期段階で発生していると考えられる。
【0045】
この現象については次のようなモデルにより説明することができる。図5(a)に示すように、ベベルエッチング処理は、回転方向R1に回転するウエハWの裏面Wbの中心付近のエッチング液供給領域SRに向けて、下面処理ノズル2からエッチング液Letを吐出することによって行われる。エッチング液供給領域SRに供給されたエッチング液Letは、その表面張力および遠心力によって、ウエハ裏面Wbに沿ってその中心から外側に向かって径方向に広がってゆく。このとき、ウエハWの端部領域ERでは、エッチング液Letが表面Wf側にも回り込み、この部分に形成された薄膜TFをエッチング除去する。
【0046】
ウエハ表面Wfにおけるエッチング幅Wetは、ウエハの回転速度、エッチング液Letの供給量およびウエハ表面Wfに沿って流れる窒素ガスの流量に依存する。すなわち、ウエハの回転速度を高くすると、エッチング液に作用する遠心力が強くなるためウエハ表面Wfに回り込むエッチング液の量が少なくなる。エッチング液の供給量を少なくした場合も同様である。また、ウエハ表面Wfに沿って外向きに流れる窒素ガス流はウエハ表面側に回りこんだエッチング液がさらに内側に入り込んでくるのを押し留める作用があり、その流量を多くするとエッチング液を外側へ押しやる作用が強くなるのでウエハ表面Wfに回り込むエッチング液の量は少なくなる。いずれもエッチング幅を左右するパラメータとなる。エッチング幅を小さくするには、ウエハの回転速度を高くする、エッチング液の供給量を少なくする、ウエハ表面Wfに供給するガス量を多くする、のいずれかあるいはそれらを組み合わせて実施することが望ましい。
【0047】
しかしながら、ただ単にウエハ回転速度を高めた、あるいはエッチング液の流量を少なくした状態でウエハ裏面Wbにエッチング液を供給開始すると、遠心力による液の広がりに対するエッチング液の供給量が不足して、図5(b)に示すように、エッチング液Letが等方的に広がらずに放射状の筋となって広がる場合がある。
【0048】
その結果、図5(c)に示すように、ウエハWの端部領域ERでは、局所的に大量のエッチング液Letが流れ込む部分と、流れ込むエッチング液の少ない部分とが現れる。しばらく時間が経つとエッチング液が周方向にも移動して端部領域ERの全周にほぼ均等に行き渡るが、このようにエッチング液の供給開始直後に起こる不均一な放射状の流れによって、局所的に大量のエッチング液がウエハ表面Wfに回り込んでエッチングむらを生じさせると考えられる。これはウエハ表面Wf側のガス流量によっては制御することができない。このような知見に鑑み、この実施形態では、以下のようにしてエッチングむらの防止を図っている。
【0049】
図6はこの実施形態のベベルエッチング処理の原理を説明するための図である。この実施形態では、ウエハ裏面Wbのエッチング液供給領域SRへのエッチング液供給に先立ってウエハ裏面Wbに前液としての純水(DIW)を供給し、このエッチング液供給領域SRの周囲を完全に取り囲むように、DIWによって濡れた前処理領域PRを形成するようにしている。こうすると、たとえエッチング液Letが非等方的な筋となって広がったとしても、端部領域ERに到達する前に必ず前処理領域PRを通ることになる。乾燥したウエハ裏面Wbに比べると、DIWで濡れた前処理領域PRではエッチング液が広がりやすい。このため、図6に矢印で示したように、前処理領域PRに到達したエッチング液Letの方向が分散し、以後のエッチング液の広がりはより等方的となる。その結果、端部領域ERの一部にエッチング液が集中的に流れ込むおそれが少なくなり、エッチングむらが抑制される。
【0050】
図7は前処理領域の例を示す図である。前処理領域PRについては、ウエハ裏面Wbのうち、エッチング液供給領域SRと端部領域ERとの間の領域でエッチング液供給領域SRを連続した環状に取り囲む周囲領域を含むように形成されればよい。したがって、例えば図7(a)に示すように、エッチング液供給領域SRを取り囲む円環状に前処理領域PRを形成することができる。この場合において、エッチング液供給領域SRと前処理領域PRとが互いに接している必要は必ずしもない。
【0051】
また、例えば図7(b)に示すように、端部領域ERまで含むように前処理領域PRを形成してもよい。このようにすると、端部領域ERへのエッチング液の不均一な到達をより確実に防止することができる。また、前処理領域PRがエッチング液供給領域SRの少なくとも一部とオーバーラップするようにしたり、さらには図7(c)に示すようにエッチング液供給領域SRの全体を含むように前処理領域PRを形成してもよい。このようにすると、エッチング液の非等方的な広がりそのものが抑制されるので、より効果的にエッチングむらを防止することができる。
【0052】
図8はこの実施形態におけるベベルエッチング処理を示すフローチャートである。より詳しくは、この実施形態の基板処理装置において、複数のウエハに対し連続的にベベルエッチング処理を行う動作を示すフローチャートである。まず、対向部材5を離間位置に退避させた状態で、1枚のウエハWを外部より搬入してスピンベース15上に載置し、対向部材5を近接させて窒素ガスを吐出させることにより、ウエハWを保持する(ステップS101)。そして、スピンベース15を回転させることにより、ウエハWを所定の回転速度で回転させる(ステップS102)。この時点では対向部材5を回転させない。またこのときウエハ裏面Wb側にもガス供給路23を通して窒素ガスが供給される。こうしてウエハWの周囲は不活性ガス雰囲気に保たれる。
【0053】
続いて、開閉バルブ223を所定時間だけ開き、DIW供給源213からのDIWを下面処理ノズル2から吐出させウエハ裏面Wbの略中央部に前液として供給する前処理を行う(ステップS103)。供給されたDIWは遠心力によりウエハ裏面Wb全体に広がり、図7(c)に示すように、ウエハ裏面Wb全体に前処理領域PRが形成される。このとき処理液回収機構は、DIWを回収するための状態に設定される。
【0054】
次に、処理液回収機構をエッチング液を回収するための状態に変更し、開閉バルブ221,222のいずれかまたはその両方を開いてエッチング液を下面処理ノズル2から吐出させウエハ裏面Wbに供給する(ステップS104)。これによりウエハ表面Wfの端部にエッチング液が回り込んでこの部分の薄膜がエッチング除去される。また、ウエハ裏面Wbにも薄膜が形成されている場合には、これも同様にエッチング除去される。このとき、好ましい条件としては例えばウエハ回転速度を1000rpm、エッチング液の吐出量を1L/min、ウエハ表面Wfにおける窒素ガスの流量を300L/minとすることができる。これにより、平均エッチング幅Wavとして0.6mmを得た。
【0055】
エッチング液の供給を所定時間継続した後その供給を停止し、処理液回収機構をDIWを回収するための状態に戻してからノズル3および下面処理ノズル2からDIWを供給してウエハ裏面および表面端部のリンス処理を行う(ステップS105)。これによりウエハWに付着したエッチング液が洗い流される。DIWの供給停止後、スピンベース15の回転速度を高めて液を振り切りウエハを乾燥させるスピン乾燥を行う(ステップS106)。このとき窒素ガスを吐出させながら対向部材5をスピンベース15と同じ速度で回転させることにより、水分を含んだ周囲雰囲気がウエハ表面Wf近傍に回り込むことが防止される。
【0056】
こうして1枚のウエハWに対する処理が終了すると、対向部材5およびスピンベース15の回転を停止させるとともに対向部材5を上方に退避させて、処理済みのウエハWを外部へ搬出する(ステップS107)。続けて処理すべきウエハがある場合には(ステップS108)、新たな未処理ウエハWを搬入し上記と同様にしてスピンベース15に保持し(ステップS110)、スピンベース15の回転を開始する(ステップS111)。
【0057】
上記した1枚目のウエハWに対する処理では、エッチング液の吐出に先立って下面処理ノズル2からDIWをウエハ裏面Wbに供給した(ステップS103)。しかし、2枚目以降のウエハに対する処理では、開閉バルブ223を開くことなく直ちにエッチング液の吐出を行う(ステップS104)。このようにする理由は以下の通りである。
【0058】
図9は2枚目以降のウエハに対する前処理を説明するための図である。先のウエハWに対するリンス処理が終了した時点では、図9(a)に示すように、下面処理ノズル2に連通する処理液供給管21の内部空間のうちノズル開口部2aに隣接する空間にはリンス処理に使用されたリンス液(DIW)が残留した状態となっている。この実施形態では、リンス処理終了後に吸引機構215による管内の残留液の吸引を行わずに処理済みウエハの搬出および未処理ウエハの搬入を行っているため、新たな未処理ウエハWが搬入された時点でも処理液供給管21の内部にはDIWが残留したままとなっている。
【0059】
そして、新たな未処理ウエハWに対しエッチング液Letを供給すべく開閉バルブ221,222の少なくとも一方が開かれると、図9(b)に示すように、第1の薬液供給源211および/または第2の薬液供給源212から供給されて処理液供給管21内を上昇してくるエッチング液Letが、管内に残留していたDIWを押し上げて下面処理ノズル2からウエハ裏面Wbに向け吐出させることになる。すなわち、2枚目以降のウエハ処理においては、管内に残留しているDIWと、薬液供給源から送り出されるエッチング液Letの押圧力とを利用して前処理を行わせることができる。このため、1枚目のウエハ処理の場合のようにDIW供給源213からDIWを送り出す必要がない。
【0060】
このように、この実施形態では、先の処理で処理液供給管21内に残留しているリンス液としてのDIWを吸引除去せず、次のウエハ処理時にこの残留DIWを前液として利用して前処理を行う。このため、DIWの使用量を少なくすることができ、また処理ごとに管内の残留液を吸引したり、開閉バルブ223を新たに開閉してDIWを供給したりする必要がないので、複数枚のウエハについて高いスループットで処理を行うことが可能となっている。
【0061】
図8に戻ってベベルエッチング処理の説明を続ける。上記のようにして2枚目のウエハWについて前処理およびエッチングを行った後、1枚目と同様にリンス処理およびスピン乾燥を行う。以後、同様に処理を繰り返すことで必要な全てのウエハに対し順次処理を行うことができる。最後のウエハに対する処理が終了した後、すなわちステップS108において次のウエハなしと判断したときには、開閉バルブ214を開くとともに吸引機構215を動作させることにより、処理液供給管21および配管201の管内に残留する液体を吸引・廃棄して全体の処理を終了する。
【0062】
以上のように、この実施形態では、ウエハ表面の端部をエッチング処理するベベルエッチング処理において、ウエハ裏面へのエッチング液の供給に先立って、ウエハ裏面WbにDIWにより濡れた前処理領域PRを形成している。この前処理領域PRは、少なくともウエハ裏面のエッチング液供給領域SRを取り囲む周囲領域を含むように形成される。そのため、エッチング液がその供給開始初期において非等方的な筋状に広がったとしても、前処理領域PRを通ることでその広がり方向が等方的に修正されて、ウエハの端部領域ERの一部に集中的に流れ込むことが防止される。これにより、ウエハ表面端部におけるエッチングむらの発生が抑制される。
【0063】
そして、このようにエッチングむらの発生が抑制されているため、この実施形態の基板処理装置では、従来のベベルエッチング技術よりも高いウエハ回転速度、少ないエッチング液供給量でベベルエッチング処理を行うことが可能であり、その結果、エッチング幅を従来よりも小さく、かつ均一にすることができる。例えば、これまでの技術ではエッチング幅を1mm以下とすることは困難であったが、本実施形態の装置では前記条件で平均エッチング幅Wavを0.6mm程度まで小さくすることができ、エッチング幅の位置によるばらつきについても±0.1mm以下に抑えることができた。
【0064】
<第2実施形態>
図10はこの発明にかかる基板処理装置の第2実施形態を示す図である。この実施形態の基板処理装置は、第1実施形態のもの(図1)と比較すると、スピンベース15の外周部近傍にチャックリンスノズル4が設けられている点が最も大きな違いである。チャックリンスノズル4は制御ユニット8により制御される開閉バルブ224を介してDIW供給源213に接続されており、スピンベース15の側方から回転軸J方向にDIWを吐出する。チャックリンスノズル4は、スピンベース15上に設けられた支持ピン152に付着する薬液を洗い流す際に使用される。この点を除く他の構成は第1実施形態と同じであるため、ここでは同一構成には同一符号を付して説明を省略する。
【0065】
次に、この実施形態の動作上の特徴について説明する。前述の第1実施形態では、ウエハ裏面Wbにエッチング液を供給するのに先立って、下面処理ノズル2から前液としてDIWを吐出して前処理を行っていた(図8のステップS103)。これに対し、この第2実施形態では、ステップS103において下面処理ノズル2ではなくチャックリンスノズル4からDIWを吐出させることによって前処理を行う。すなわち、回転するウエハWの裏面Wbに向けて、側方のチャックリンスノズル4からDIWが供給されて前処理が行われる。そして、チャックリンスノズル4からのDIW供給の停止後に、下面処理ノズル2からのエッチング液の供給を開始する。
【0066】
こうすると、図7(b)に示すように、ウエハ端部領域ERを含む環状の前処理領域PRが形成されることになる。このようにしても、非等方的に広がるエッチング液の広がり方向をより等方的に修正して、エッチングむらの発生を抑制することができる。
【0067】
また、このようにすると、前処理領域PRの面積が第1実施形態よりも少ない。さらに、第1実施形態ではエッチング液によって管内の残留DIWを押し出すことで前処理を行っておりDIWとエッチング液とがほぼ間断なく供給されるのに対し、第2実施形態ではチャックリンスノズル4からのDIW供給の停止後にエッチング液の供給を開始しているため、エッチング液の供給開始時点では前処理領域PRにおけるDIWの液膜がより薄くなっている。これらのことは、エッチング開始時点でウエハ裏面Wbに付着しているDIWの量が大幅に少なくなることを意味しており、したがってこの実施形態では、エッチング初期段階で使用されるエッチング液がDIWによってほとんど薄められることなく回収され得る。つまり、この実施形態では、薬液の回収効率がより高く、回収した薬液を再利用することによってその使用量を削減することが可能である。
【0068】
また、第1実施形態では処理液供給管21内に残留していたリンス液をエッチング液で押し出すことによって前処理を行っていたが、第2実施形態では前処理のためのDIWを別途供給するので管内の残留DIWは不要である。そこで、リンス処理後、次のウエハが搬入されるよりも前に、例えばスピン乾燥中に、吸引機構215による管内の残留液の吸引を行わせる。また、ウエハ1枚ごとにチャックリンスノズル4からのDIW吐出が必要であるため、図8におけるステップS111の実行後はステップS104ではなくステップS103が実行される。
【0069】
<第3実施形態>
次に、この発明にかかる基板処理装置の第3実施形態について説明する。第2実施形態の装置では薬液の回収効率を高めてこれを有効に再利用することができるが、前処理のためにDIWを供給するための構成(チャックリンスノズル4)が別途必要となる。以下に説明する第3実施形態の装置は、チャックリンスノズルを設けない装置において第2実施形態と同様の高い薬液回収効率を実現するものである。
【0070】
図11はこの発明にかかる基板処理装置の第3実施形態を示す図である。第3実施形態の装置では、ガス供給ユニット18から供給される窒素ガスが、制御ユニット8により制御される開閉バルブ226を介して配管201に案内されている点で第1実施形態の装置と異なっており、これ以外の構成は第1実施形態のものと同一である。そこで、ここでも第1実施形態と同一の構成には同一符号を付して説明を省略する。
【0071】
図12は第3実施形態におけるベベルエッチング処理を示すフローチャートである。なお、第3実施形態の基板処理装置の動作も一部を除いて基本的に第1実施形態のもの(図8)と同じであるので、同一の処理ステップには同一符号を付して説明を省略する。この実施形態の動作は、1枚目のウエハWに対する処理が終了した後、処理液供給管21内にDIWを残留させておくところまでは第1実施形態と同じである。そして、次のウエハを搬入し回転開始させた後(ステップS110,S111)、開閉バルブ226を所定時間開くことにより、配管201内に窒素ガスを導入する(ステップS112)。配管201およびこれに接続された処理液供給管21内に残留するDIWは、導入された窒素ガスによって押し上げられて下面処理ノズル2から吐出される。こうして吐出されたDIWの前液により、ウエハ裏面Wbに前処理領域PRが形成される。以後の動作は第1実施形態と同じである。
【0072】
このようにすると、窒素ガスによって押し出された管内のDIWがウエハ裏面Wbに供給された後、エッチング液がウエハ裏面Wbに供給されるまでに少しの間がある。この間に処理液回収機構の切り換えを行うことができ、またこの間に前処理領域PRのDIW液膜の厚さが減少するので、第2実施形態の装置と同様に、薬液の回収効率を高めることが可能である。
【0073】
<その他>
以上説明したように、上記した各実施形態では、スピンベース15および対向部材5がそれぞれ本発明の「基板保持手段」および「対向部材」として機能している。また、スピンベース15に設けられた支持ピン152が本発明の「支持部」として機能している。また、ガス供給ユニット18およびガス供給路57が一体として本発明の「気流形成手段」として機能している。
【0074】
また、これらの実施形態では、第1および第2の薬液供給源211,212、開閉バルブ221,222、下面処理ノズル2等が一体として本発明の「エッチング液供給手段」として機能しており、特に処理液供給管21が本発明の「給送管」として機能している。また、純水供給手段であるDIW供給源213および開閉バルブ223が本発明の「前液供給手段」として機能している。
【0075】
また、上記各実施形態では、図8のステップS101,S102が本発明の「基板保持工程」、ステップS103が「前処理工程」、ステップS104が「エッチング工程」にそれぞれ相当している。
【0076】
なお、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて上述したもの以外に種々の変更を行うことが可能である。例えば、上記各実施形態の基板処理装置は、ウエハWをスピンベース15上の支持ピン152に載置しこれらを対向部材5から吐出させた窒素ガスによって押し付けることでウエハを保持する押し付けチャック方式の装置であるが、ウエハの端面に側方(および下方)から支持ピンを当接させることでウエハを保持するように構成された装置に対しても、本発明を適用することが可能である。また「前液」として使用し得る液体は純水やDIWに限定されず、ウエハや薄膜、薬液の種類に応じて種々のものを使用可能である。
【0077】
また、上記実施形態では、前処理工程とエッチング工程との間でウエハの回転速度を特に変更していない。これは、前処理工程において前液としてのDIWがウエハの表面側まで回り込んだとしても、その回り込み量がエッチング工程と同程度となるようにすることでエッチング幅を安定させるためである。この点からは、前処理工程におけるDIWの供給位置やその供給量についても、エッチング工程におけるそれらと同一条件としておくことが好ましい。
【0078】
また、例えば前処理工程からエッチング工程に移る際に回転速度を上げるようにしてもよい。このように、エッチング開始時の回転速度を前処理よりも高くすると、ウエハWの前処理領域PRに残留するDIWの量が少なくなるため、エッチング液の効率的な回収が容易となるからである。DIWとエッチング液とが切れ目なく供給される第1実施形態においては、次第に回転速度を上昇させながら前処理を行うようにすればよい。
【0079】
また、例えば、上記各実施形態の基板処理装置は、乾燥した状態で外部から搬入されるウエハに対してベベルエッチング処理を行い乾燥させる装置であるが、他の処理と組み合わせて実行するものであってもよい。例えば、公知のエッジリンス処理の後に本発明のベベルエッチング処理を行うような装置としてもよい。エッジリンス処理の実行後であってもウエハ裏面が乾燥していれば前述した過大な回り込みが発生しエッチングむらを生じさせることがあり、またウエハ端部のうちエッジリンス処理された領域を超えて内側にまでエッチング液が回り込んでしまうことを避ける必要があるからである。
【産業上の利用可能性】
【0080】
この発明は、略水平に保持した基板の下面からエッチング液を供給してその上面端部をエッチング処理する基板処理方法および装置に適用することが可能であり、その処理対象となる基板としては、半導体ウエハ、フォトマスク用ガラス基板、液晶表示用ガラス基板、プラズマ表示用ガラス基板、光ディスク用基板などが利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0081】
【図1】この発明にかかる基板処理装置の第1実施形態を示す図である。
【図2】図1の基板処理装置の主要な制御構成を示すブロック図である。
【図3】対向部材を下方から見た図である。
【図4】エッチングむらの様子を模式的に示す図である。
【図5】エッチングむらの発生原理を説明するための図である。
【図6】ベベルエッチング処理の原理を説明するための図である。
【図7】前処理領域の例を示す図である。
【図8】第1実施形態におけるベベルエッチング処理を示すフローチャートである。
【図9】2枚目以降のウエハに対する前処理を説明するための図である。
【図10】この発明にかかる基板処理装置の第2実施形態を示す図である。
【図11】この発明にかかる基板処理装置の第3実施形態を示す図である。
【図12】第3実施形態におけるベベルエッチング処理を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0082】
2…下面処理ノズル(エッチング液供給手段)
5…対向部材
15…スピンベース(基板保持手段)
18…ガス供給ユニット(気流形成手段)
21…処理液供給管(給送管)
57…ガス供給路(気流形成手段)
152…支持ピン(支持部)
211,212…第1および第2の薬液供給源(エッチング液供給手段)
213…DIW供給源(前液供給手段)
221,222…開閉バルブ(エッチング液供給手段)
223…開閉バルブ(前液供給手段)
S101,S102…基板保持工程
S103…前処理工程
S104…エッチング工程
W…ウエハ(基板)
【技術分野】
【0001】
この発明は、半導体ウエハ、フォトマスク用ガラス基板、液晶表示用ガラス基板、プラズマ表示用ガラス基板、光ディスク用基板などの各種基板に処理液を供給して該基板をエッチング処理する基板処理装置および基板処理方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の基板の製造工程においては、略水平状態に保持した基板を回転させながら基板下面にエッチング液を供給し、遠心力の作用により周縁部に広がったエッチング液を基板の上面端部に回り込ませることで基板上面のうちその端部のみをエッチング処理する、いわゆるベベルエッチング処理が行われる。このような処理を実行する基板処理方法および装置としては、例えば特許文献1に記載されたものがある。
【0003】
この種の技術においては、基板上のできるだけ広い面積をデバイスとして有効に活用するために、基板上面の端部におけるエッチング幅をできるだけ小さく、かつ均一にすることが求められる。特に半導体デバイス製造の技術分野においては、半導体ウエハの大口径化に伴って増加するウエハ周縁部のロスを抑えるため、エッチング幅を例えば1mm以下にまで減少させることが望まれる。
【0004】
【特許文献1】特開2004−006672号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
エッチング幅を小さくするための手法としては、基板上面へのエッチング液の回り込み量を少なくするためにエッチング液の供給量を少なくし基板の回転速度を高めることが考えられる。しかしながら、詳しくは後述するが、本願発明者らの実験によればこのようにすると平均的なエッチング幅を小さくすることはできるものの、局所的に大きくエッチングされる部分が出現するなど、エッチング幅の均一性の観点からはさらなる改善の余地があることが確認された。
【0006】
この発明は上記課題に鑑みなされたものであり、基板の下面からエッチング液を回り込ませて基板の上面端部をエッチングする技術において、エッチング幅を小さくかつ均一にすることのできる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願発明者らの実験によれば、上記したエッチング幅の不均一さは以下のようにして発生していることが明らかになった。すなわち、基板の回転速度が比較的低速でエッチング液の供給量が多い従来のベベルエッチング処理においては、基板下面に供給されたエッチング液がその表面張力および回転による遠心力の作用で外側に向けてほぼ等方的に、つまりどの方向においても均等に周囲に広がることが期待できた。これに対し、エッチング幅を小さくするべく基板の回転速度を上げたりエッチング液の供給量を少なくしようとすると、エッチング液の広がりが必ずしも等方的にならず放射状の筋になって周囲に広がってゆく場合があり、結果としてエッチング液が基板上面端部のいくつかの領域に集中して流れ込みその部分だけが大きくエッチングされることとなっていた。
【0008】
上記知見に鑑み、この発明にかかる基板処理方法は、基板を略水平状態に保持し略鉛直軸周りに回転させる基板保持工程と、回転する前記基板下面のエッチング液供給領域に向けてエッチング液を供給し前記基板の上面端部に前記エッチング液を回り込ませることにより前記基板の上面端部をエッチングするエッチング工程とを備え、前記エッチング工程の実行前に、前記基板下面に前液を供給して、該基板下面のうち前記エッチング液供給領域の周囲を取り囲む周囲領域を前液により濡れた状態にする前処理工程をさらに備えることを特徴としている。
【0009】
また、この発明にかかる基板処理装置は、基板を略水平状態に保持し略鉛直軸周りに回転させる基板保持手段と、回転する前記基板下面のエッチング液供給領域に向けてエッチング液を供給することで前記基板の上面端部に前記エッチング液を回り込ませ前記基板の上面端部をエッチングするエッチング液供給手段と、前記エッチング液供給手段からのエッチング液の供給に先立って、前記基板下面に前液を供給して該基板下面のうち前記エッチング液供給領域の周囲を取り囲む周囲領域を前液により濡れた状態にする前液供給手段とを備えることを特徴としている。
【0010】
このように構成された発明では、基板下面のうちエッチング液が供給されるエッチング液供給領域の周囲を取り囲むように、予め前液により濡らされた領域が形成される。そのため、供給されたエッチング液が基板の端部に到達する前に前液で濡れた領域に接することになる。こうして前液で濡れた領域では乾燥した領域よりもエッチング液に対する濡れ性が高く液が広がりやすいため、エッチング液の非等方的な広がりが緩和される。すなわち、エッチング液が上記したように放射状の筋となって広がったとしても、予め前液により濡らされた領域を通過することでその広がり方向がより等方的に、つまり基板端部各部に向けて均等に広がるように修正される。この濡れた領域はエッチング液供給領域の周囲を取り囲むように形成されているため、基板下面に供給されたエッチング液がどの方向に流れたとしても基板端部への到達はより等方的に行われることになる。
【0011】
このように、この発明では、基板下面に供給されたエッチング液が等方的に端部に到達するようになっている。そのため、従来のベベルエッチング技術よりも基板の回転速度を高めたりエッチング液の供給量を少なくしても、エッチング幅の均一性が損なわれるのを防止することが可能となる。その結果、この発明によれば、エッチング幅を均一に保ちつつ、従来のベベルエッチング技術よりもエッチング幅を小さくすることができる。
【0012】
ここで、前液により濡らされた領域としては、基板下面のエッチング液供給領域と基板下面端部との間に少なくともエッチング液供給領域の周囲を取り囲む環状に形成されれば足り、基板下面全体に前液を供給する必要は必ずしもない。また前液により濡らされた領域がエッチング液供給領域に接している必要もない。
【0013】
なお、ここでいう「前液」の概念としては、純水や脱イオン水(deionized water;DIW)を含み、さらにそのほか炭酸水、電解イオン水、水素水および磁気水などの機能水を含む。
【0014】
上記のように構成された基板処理方法において、例えば、前記前処理工程では、前記基板の下面端部を含む前記周囲領域を前液により濡れた状態とするようにしてもよい。前記したように、本発明の趣旨によれば基板下面のエッチング液供給領域と基板下面端部との間の領域を少なくとも前液で濡らしておけばよいが、基板下面端部まで濡らしておくことによって、基板上面端部へのエッチング液の回り込み量をより等方的にしてエッチング幅を均一にすることができる。
【0015】
また、前記エッチング工程では、前記基板の上面端部近傍に、前記基板の回転中心から外側に向かう気流を形成するようにしてもよい。こうすることで、エッチング液が基板上面に大きく回り込むのを防止してエッチング幅をより小さくすることができる。
【0016】
また、前記エッチング工程では、前記基板上面に対向部材を近接配置させ、前記対向部材と前記基板上面とに挟まれる空間に前記気流を形成することができる。こうすることで、エッチング液が基板上面に大きく回り込むことがより確実に防止され、エッチング幅を小さくかつ均一にすることができる。
【0017】
なお、前記前処理工程では、前記基板下面の略中央部に向けて前液を供給するようにしてもよく、また前記基板下面の周縁部に向けて前液を供給するようにしてもよい。いずれの場合においても、前液により濡れた領域を通ることでエッチング液の非等方的な広がりが緩和されて、均一なエッチング幅を得ることができる。特に前記基板下面の略中央部に向けて前液を供給するようにした場合には、基板下面全体を前液により濡らしておくことで、エッチング液の非等方的な広がり自体を抑えることが可能となる。
【0018】
また、前記エッチング工程では、前記前処理工程よりも前記基板の回転速度を高くするようにしてもよい。前処理工程ではエッチング液供給領域を取り囲む周囲領域に前液を供給しておくことが必要である一方、この領域に大量の前液が存在することは後続のエッチングの処理効率の点からは必ずしも好ましくない。そこで、エッチング工程における基板の回転速度を前処理工程よりも高くすることで、基板に付着する前液の量を減らすようにしてもよい。
【0019】
また、前述の基板処理装置においては、前記基板の上面と対向する基板対向面を有し前記基板の上面に近接配置される対向部材と、前記対向部材と前記基板上面とに挟まれる空間に前記基板の回転中心から外側に向かう気流を形成する気流形成手段とをさらに備えるようにしてもよい。このようにすれば、基板上面へのエッチング液の回り込み量を少なくしてエッチング幅をより小さくすることができる。
【0020】
また、前記基板保持手段には、前記基板の下面に当接して前記基板を下方から支持するための支持部が上向きに突設され、前記支持部により支持された前記基板の上面に対し前記対向部材が近接配置され、前記気流形成手段が前記対向部材の下面から気体を吐出することで前記気流を形成するとともに該気流により前記基板を前記支持部に押し付けることによって前記基板が保持されるようにしてもよい。このように対向部材から気体を吐出することにより基板を支持部に押し付け基板を保持するようにすることで、基板を保持するための保持ピン等を基板の端面に当接させることなく基板を保持することが可能となる。このため、基板上面端部各部へのエッチング液の回り込み量のばらつきを少なくしエッチング幅を均一にすることができる。
【0021】
また、前記エッチング液供給手段は、前記基板の下面に向けて開口し該開口部に向けて前記エッチング液を給送する給送管を備える一方、前記前液供給手段は、前記給送管の内部空間のうち前記開口部に接する一部空間に前液を注入するようにしてもよい。このような構成では、給送管を通って基板下面に向けて供給されるエッチング液が、給送管の開口部に接する内部空間に注入された前液を押し出すように作用する。こうして押し出された前液が予め基板下面に供給された後にエッチング液が供給されることとなるので、上記のような機能を簡単な装置構成によって実現することができる。
【0022】
これとは異なり、前記前液供給手段は、前記基板下面の周縁部に向けて前液を供給するように構成されてもよい。前記したように、前液は少なくともエッチング液供給領域を取り囲むように基板下面に供給されればよいので、基板下面の周縁部に向けて前液を供給する構成であっても上記効果を得ることが可能である。この場合において、例えば基板端面にチャックピンを当接させて基板を保持するように構成された装置では、チャックピンに洗浄液を供給して洗浄するための構成に本発明の前液供給手段としての機能を兼備させることも可能である。
【発明の効果】
【0023】
この発明によれば、基板下面のうちエッチング液が供給されるエッチング液供給領域の周囲を取り囲む周囲領域を、予め前液により濡らしておく。そのため、基板下面に供給されたエッチング液が非等方的に広がったとしても、濡れた周囲領域を通ることでその非等方性が緩和され、基板の端部へのエッチング液の到達はより等方的となる。このためエッチング幅の均一性を保ちながらエッチング幅を小さくすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
<第1実施形態>
図1はこの発明にかかる基板処理装置の第1実施形態を示す図である。また、図2は図1の基板処理装置の主要な制御構成を示すブロック図である。この基板処理装置は、半導体ウエハ等の略円形基板Wの上面端部に存在する薄膜(不要物)をエッチング除去する装置である。または、この基板処理装置は、基板Wの上面端部および基板裏面Wbに存在する薄膜をエッチング除去する装置である。ここで、処理対象となっている基板Wには、金属膜、シリコン窒化膜(SiN膜)やシリコン酸化膜等の薄膜が基板表面Wfに形成された基板や上記薄膜が表裏面Wf,Wbに形成された基板が含まれる。なお、この実施形態では、基板表面Wfとはデバイスパターンが形成されるデバイス形成面を意味している。
【0025】
この基板処理装置は、基板表面Wfを上方に向けた状態で基板Wを略水平姿勢に保持して回転させるスピンチャック1と、スピンチャック1に保持された基板Wの下面(裏面Wb)の中央部に向けて処理液を供給する下面処理ノズル2と、基板表面側からスピンチャック1に保持された基板Wの端部に対して局部的に処理液を供給するノズル3と、スピンチャック1に保持された基板Wの表面Wfに対向配置された対向部材5とを備えている。
【0026】
スピンチャック1では、中空の回転支軸11がモータを含むチャック回転機構13の回転軸に連結されており、チャック回転機構13の駆動により回転軸Jに対して回転支軸11が回転可能となっている。この回転支軸11の上端部にはスピンベース15が一体的にネジなどの締結部品によって連結されている。そして、装置全体を制御する制御ユニット8からの動作指令に応じてチャック回転機構13が作動することによりスピンベース15が回転軸Jを中心に回転する。スピンベース15の上面151には、基板Wの下面に当接して基板Wを下方から支持するための支持ピン152が上向きに突設されている。支持ピン152の本数は特に限定されないが、例えば等角度間隔で3本設けることにより、ウエハWを水平にかつ安定して支持することが可能となる。
【0027】
また、中空の回転支軸11には処理液供給管21が挿通されており、その上端に下面処理ノズル2が結合されている。処理液供給管21は、必要に応じて処理液供給管21に薬液やDIWなどの処理液を供給したり、処理液供給管21内に残留する液体を吸引除去したりする供給・吸引ユニット20に接続されている。
【0028】
供給・吸引ユニット20は、処理液供給管21に接続された配管201と、それぞれ開閉バルブ221、222を介して配管201に接続されて互いに異なる薬液を供給する第1および第2の薬液供給源211、212と、開閉バルブ223を介して配管201に接続されてDIWを供給するDIW供給源213と、開閉バルブ225を介して配管201に接続されて、例えばコンバムや真空ポンプの作用により配管201内の液体を吸引する吸引機構215とを備えている。供給・吸引ユニット20内の開閉バルブ221ないし225および吸引機構215は制御ユニット8により制御される。
【0029】
この実施形態では、第1および第2の薬液供給源211、212のいずれかから供給される薬液、またはこれらから供給される薬液を混合してなる薬液をエッチング液として下面処理ノズル2からウエハ裏面Wbの略中心に向けて供給することができる。薬液の種類はエッチング除去すべき薄膜の材料に応じて定められ、例えば銅薄膜に対してはSC−2(塩酸と過酸化水素水との混合液)、タングステン薄膜に対してはフッ酸と硝酸とを混合したものがエッチング液として用いられる。
【0030】
また、回転支軸11の内壁面と処理液供給管21の外壁面の隙間は、環状のガス供給路23を形成している。このガス供給路23はガス供給ユニット18と接続されており、基板裏面Wbと該基板裏面Wbに対向するスピンベース15の上面とに挟まれた空間に窒素ガスを供給できる。なお、この実施形態では、ガス供給ユニット18から窒素ガスを供給しているが、空気や他の不活性ガスなどを吐出するように構成してもよい。
【0031】
スピンチャック1の上方には、スピンチャック1に支持された基板Wに対向する円盤状の対向部材5が水平に配設されている。対向部材5はスピンチャック1の回転支軸11と同軸上に配置された回転支軸51の下端部に一体回転可能に取り付けられている。この回転支軸51には対向部材回転機構54が連結されており、制御ユニット8からの動作指令に応じて対向部材回転機構54のモータを駆動させることで対向部材5が回転中心Jを中心に回転する。また、制御ユニット8は対向部材回転機構54をチャック回転機構13と同期するように制御することで、スピンチャック1と同じ回転方向および同じ回転速度で対向部材5を回転駆動することもできる。
【0032】
また、対向部材5は対向部材昇降機構55と接続され、対向部材昇降機構55の昇降駆動用アクチュエータ(例えばエアシリンダーなど)を作動させることで、対向部材5をスピンベース15に近接して対向させたり、逆に離間させることが可能となっている。例えば基板処理装置に対して基板Wが搬入出される際には、制御ユニット8はスピンチャック1から上方に十分に離れた離間位置に対向部材5を上昇させる。その一方で、基板Wに対して膜除去処理を施す際には、制御ユニット8はスピンチャック1に保持された基板Wの表面Wfのごく近傍に設定された近接位置まで対向部材5を下降させる。これにより、対向部材5の下面501と基板表面Wfとが近接した状態で対向配置される。
【0033】
回転支軸51の中空部には、ガス供給路57が形成されている。このガス供給路57はガス供給ユニット18と接続されており、基板表面Wfと対向部材5の下面501とに挟まれた間隙空間SPに窒素ガスを供給可能となっている。ガス供給路57から間隙空間SPに供給された窒素ガスは、図1に破線矢印で示すように、基板Wの周方向に広がり基板表面Wfに沿って外側に向かって流れてゆく。
【0034】
図3は対向部材を下方から見た図である。この対向部材5の下面501は基板Wの直径と同等以上の平面サイズを有している。このため、対向部材5が近接位置に配置されると基板表面全体を覆って基板表面Wf上の雰囲気を外部雰囲気から遮断可能となっている。この対向部材5の下面501には、複数のガス吐出口502が形成されている。これらのガス吐出口502は、スピンチャック1に保持される基板Wの表面Wfの端部よりも内側位置に対向する位置に、回転軸Jの位置に対応する回転中心AOを中心とする円周に沿って等角度間隔に形成されている。これらのガス吐出口502は対向部材5の内部に形成されたガス流通空間503に連通しており、ガス流通空間503にガス供給路57を介して窒素ガスが供給されると、複数のガス吐出口502を介して窒素ガスが間隙空間SPに供給される。
【0035】
そして、対向部材5が近接位置に位置決めされた状態で、複数のガス吐出口502から間隙空間SPに窒素ガスが供給されると、間隙空間SPの内部圧力が高まり基板Wがその裏面Wbに当接する支持ピン152に押圧される。この押圧状態のまま制御ユニット8の動作指令に応じてスピンベース15が回転すると、基板裏面Wbと支持ピン152との間に発生する摩擦力によって基板Wが支持ピン152に支持されながらスピンベース15とともに回転する。なお、間隙空間SPに供給された窒素ガスは基板Wの径方向外側へと流れていく。すなわち、この実施形態は、ガス圧によってウエハWを支持ピン152に押し付けることによってウエハWを保持する、いわゆる押し付けチャック機構を有している。
【0036】
この対向部材5の周縁部には、対向部材5を上下方向(鉛直軸方向)に貫通するノズル挿入孔52が形成され、対向部材5の下面501に開口部521が形成されている。そして、このノズル挿入孔52にノズル3が挿入されて該挿入状態でノズル3から基板Wの表面周縁部に向けて処理液を吐出して基板Wの端部に対して局部的に処理液を供給することができる。この構成によれば、対向部材5が基板表面Wfを覆うことで基板Wの表面中央部に処理液が付着するのを防止しながら、ノズル3をノズル挿入孔52に挿入させることでノズル3から表面周縁部に直接に処理液を供給することができる。
【0037】
ノズル3は、図1に示すように、水平方向に延びるノズルアーム31の一方端に取り付けられている。このノズルアーム31の他方端はノズル移動機構33(図2)に接続されている。さらに、ノズル移動機構33はノズル3を水平方向に所定の回動軸回りに揺動させるとともに、ノズル3を昇降させることができる。このため、制御ユニット8からの動作指令に応じてノズル移動機構33が駆動されることで、ノズル3を対向部材5のノズル挿入孔52に挿入して表面周縁部に向けて薬液またはDIWを吐出可能な処理位置P31と、基板Wから離れた待機位置P32との間で移動させることができる。
【0038】
また、対向部材5のノズル挿入孔52の内壁には、ガス導入口505が開口されており、ガス導入口505からノズル挿入孔52の内部空間に窒素ガスを供給可能となっている。ガス導入口505はガス流通空間503を介してガス供給ユニット18に連通している。したがって、ガス供給ユニット18から窒素ガスが圧送されると、ノズル挿入孔52の内部空間に窒素ガスが供給される。これにより、ノズル3が待機位置P32に位置決めされた状態、つまり、ノズル3がノズル挿入孔52に未挿入の状態では、ノズル挿入孔52の上下双方の開口から窒素ガスが噴出される。このため、ノズル挿入孔52にノズルが未挿入の状態でも、処理液がノズル挿入孔52の内壁に付着するのが防止される。
【0039】
なお、図示を省略しているが、上記のように構成されたスピンベース15の周囲を取り囲むように、使用済みの処理液をその種類別に回収するための処理液回収機構が設けられている。この処理液回収機構としては、例えば特開2004−153078号公報に記載された構造のものを適用することができる。
【0040】
次に、上記のように構成された基板処理装置の動作について説明する。この基板処理装置は、ウエハWの上面端部に付着した薄膜をエッチングにより除去する、いわゆるベベルエッチング処理を行うための装置である。この装置では、スピンベース15を回転させながら下面処理ノズル2からエッチング液をウエハWの下面に供給することによってエッチング液をウエハWの上面端部に回り込ませ、これによりウエハWの上面端部をエッチング処理する。
【0041】
エッチングにより薄膜を除去されるウエハWの端部領域は、デバイスとして有効に利用することのできない領域である。したがって、ベベルエッチング処理によりエッチングされるウエハWの上面端部領域の幅(エッチング幅)はできるだけ小さく、しかもウエハWの周上において均一であることが望ましい。スピンベース15の回転速度を上げたり、供給するエッチング液の量を少なくすれば、ウエハWの上面に回り込むエッチング液の量が少なくなるためエッチング幅が小さくなると期待される。しかしながら、本願発明者らが実際にこのようにして実験を行ったところ、エッチング幅が位置により変化し部分的に極端に大きくなる現象(エッチングむら)が生じることがわかった。
【0042】
図4はエッチングむらの様子を模式的に示す図である。また、図5はエッチングむらの発生原理を説明するための図である。図4(a)に示すように、表面Wf全体を覆うように薄膜TFが形成されたウエハWを用いて、600〜1000rpmで回転させたウエハの上面に対向部材5から200〜300L/min(リッター/分)程度の窒素ガスを供給するとともに、ウエハ下面に下面処理ノズル2から0.5〜1.0L/min程度のエッチング液を供給してベベルエッチング処理を行った。
【0043】
理想的なベベルエッチング処理では、ウエハ表面Wfに形成された薄膜TFのうちウエハ端部に近い部分がエッチング除去されて、図4(b)に示すように、ウエハ周縁部には一定幅Widの薄膜除去領域RRが出現するはずである。実際の装置でも、ウエハの回転速度が比較的低く、エッチング液供給量が多い場合にはこのようにほぼ均一なエッチング幅が得られる。
【0044】
ここで、エッチング幅を小さくしようとしてウエハの回転速度を高めたりエッチング液の供給量を少なくすると、図4(c)に示すように、平均的なエッチング幅Wavについては小さくできるが、局所的にエッチング幅が大きな不規則領域IRが現れる、すなわちエッチングむらが生じる。例えばエッチング幅が1mm以下になるように条件を設定したとき、不規則領域IRの出現数は数箇所〜数十箇所程度であり、その出現位置はランダムである。また不規則領域IRにおけるエッチング幅の最大値Wmaxは2mm以上となる場合があった。また、不規則領域の出現数や最大幅については、エッチング処理時間との相関があまり見られず、ごく短時間のエッチングによっても発生していることから、エッチングむらはエッチングの初期段階で発生していると考えられる。
【0045】
この現象については次のようなモデルにより説明することができる。図5(a)に示すように、ベベルエッチング処理は、回転方向R1に回転するウエハWの裏面Wbの中心付近のエッチング液供給領域SRに向けて、下面処理ノズル2からエッチング液Letを吐出することによって行われる。エッチング液供給領域SRに供給されたエッチング液Letは、その表面張力および遠心力によって、ウエハ裏面Wbに沿ってその中心から外側に向かって径方向に広がってゆく。このとき、ウエハWの端部領域ERでは、エッチング液Letが表面Wf側にも回り込み、この部分に形成された薄膜TFをエッチング除去する。
【0046】
ウエハ表面Wfにおけるエッチング幅Wetは、ウエハの回転速度、エッチング液Letの供給量およびウエハ表面Wfに沿って流れる窒素ガスの流量に依存する。すなわち、ウエハの回転速度を高くすると、エッチング液に作用する遠心力が強くなるためウエハ表面Wfに回り込むエッチング液の量が少なくなる。エッチング液の供給量を少なくした場合も同様である。また、ウエハ表面Wfに沿って外向きに流れる窒素ガス流はウエハ表面側に回りこんだエッチング液がさらに内側に入り込んでくるのを押し留める作用があり、その流量を多くするとエッチング液を外側へ押しやる作用が強くなるのでウエハ表面Wfに回り込むエッチング液の量は少なくなる。いずれもエッチング幅を左右するパラメータとなる。エッチング幅を小さくするには、ウエハの回転速度を高くする、エッチング液の供給量を少なくする、ウエハ表面Wfに供給するガス量を多くする、のいずれかあるいはそれらを組み合わせて実施することが望ましい。
【0047】
しかしながら、ただ単にウエハ回転速度を高めた、あるいはエッチング液の流量を少なくした状態でウエハ裏面Wbにエッチング液を供給開始すると、遠心力による液の広がりに対するエッチング液の供給量が不足して、図5(b)に示すように、エッチング液Letが等方的に広がらずに放射状の筋となって広がる場合がある。
【0048】
その結果、図5(c)に示すように、ウエハWの端部領域ERでは、局所的に大量のエッチング液Letが流れ込む部分と、流れ込むエッチング液の少ない部分とが現れる。しばらく時間が経つとエッチング液が周方向にも移動して端部領域ERの全周にほぼ均等に行き渡るが、このようにエッチング液の供給開始直後に起こる不均一な放射状の流れによって、局所的に大量のエッチング液がウエハ表面Wfに回り込んでエッチングむらを生じさせると考えられる。これはウエハ表面Wf側のガス流量によっては制御することができない。このような知見に鑑み、この実施形態では、以下のようにしてエッチングむらの防止を図っている。
【0049】
図6はこの実施形態のベベルエッチング処理の原理を説明するための図である。この実施形態では、ウエハ裏面Wbのエッチング液供給領域SRへのエッチング液供給に先立ってウエハ裏面Wbに前液としての純水(DIW)を供給し、このエッチング液供給領域SRの周囲を完全に取り囲むように、DIWによって濡れた前処理領域PRを形成するようにしている。こうすると、たとえエッチング液Letが非等方的な筋となって広がったとしても、端部領域ERに到達する前に必ず前処理領域PRを通ることになる。乾燥したウエハ裏面Wbに比べると、DIWで濡れた前処理領域PRではエッチング液が広がりやすい。このため、図6に矢印で示したように、前処理領域PRに到達したエッチング液Letの方向が分散し、以後のエッチング液の広がりはより等方的となる。その結果、端部領域ERの一部にエッチング液が集中的に流れ込むおそれが少なくなり、エッチングむらが抑制される。
【0050】
図7は前処理領域の例を示す図である。前処理領域PRについては、ウエハ裏面Wbのうち、エッチング液供給領域SRと端部領域ERとの間の領域でエッチング液供給領域SRを連続した環状に取り囲む周囲領域を含むように形成されればよい。したがって、例えば図7(a)に示すように、エッチング液供給領域SRを取り囲む円環状に前処理領域PRを形成することができる。この場合において、エッチング液供給領域SRと前処理領域PRとが互いに接している必要は必ずしもない。
【0051】
また、例えば図7(b)に示すように、端部領域ERまで含むように前処理領域PRを形成してもよい。このようにすると、端部領域ERへのエッチング液の不均一な到達をより確実に防止することができる。また、前処理領域PRがエッチング液供給領域SRの少なくとも一部とオーバーラップするようにしたり、さらには図7(c)に示すようにエッチング液供給領域SRの全体を含むように前処理領域PRを形成してもよい。このようにすると、エッチング液の非等方的な広がりそのものが抑制されるので、より効果的にエッチングむらを防止することができる。
【0052】
図8はこの実施形態におけるベベルエッチング処理を示すフローチャートである。より詳しくは、この実施形態の基板処理装置において、複数のウエハに対し連続的にベベルエッチング処理を行う動作を示すフローチャートである。まず、対向部材5を離間位置に退避させた状態で、1枚のウエハWを外部より搬入してスピンベース15上に載置し、対向部材5を近接させて窒素ガスを吐出させることにより、ウエハWを保持する(ステップS101)。そして、スピンベース15を回転させることにより、ウエハWを所定の回転速度で回転させる(ステップS102)。この時点では対向部材5を回転させない。またこのときウエハ裏面Wb側にもガス供給路23を通して窒素ガスが供給される。こうしてウエハWの周囲は不活性ガス雰囲気に保たれる。
【0053】
続いて、開閉バルブ223を所定時間だけ開き、DIW供給源213からのDIWを下面処理ノズル2から吐出させウエハ裏面Wbの略中央部に前液として供給する前処理を行う(ステップS103)。供給されたDIWは遠心力によりウエハ裏面Wb全体に広がり、図7(c)に示すように、ウエハ裏面Wb全体に前処理領域PRが形成される。このとき処理液回収機構は、DIWを回収するための状態に設定される。
【0054】
次に、処理液回収機構をエッチング液を回収するための状態に変更し、開閉バルブ221,222のいずれかまたはその両方を開いてエッチング液を下面処理ノズル2から吐出させウエハ裏面Wbに供給する(ステップS104)。これによりウエハ表面Wfの端部にエッチング液が回り込んでこの部分の薄膜がエッチング除去される。また、ウエハ裏面Wbにも薄膜が形成されている場合には、これも同様にエッチング除去される。このとき、好ましい条件としては例えばウエハ回転速度を1000rpm、エッチング液の吐出量を1L/min、ウエハ表面Wfにおける窒素ガスの流量を300L/minとすることができる。これにより、平均エッチング幅Wavとして0.6mmを得た。
【0055】
エッチング液の供給を所定時間継続した後その供給を停止し、処理液回収機構をDIWを回収するための状態に戻してからノズル3および下面処理ノズル2からDIWを供給してウエハ裏面および表面端部のリンス処理を行う(ステップS105)。これによりウエハWに付着したエッチング液が洗い流される。DIWの供給停止後、スピンベース15の回転速度を高めて液を振り切りウエハを乾燥させるスピン乾燥を行う(ステップS106)。このとき窒素ガスを吐出させながら対向部材5をスピンベース15と同じ速度で回転させることにより、水分を含んだ周囲雰囲気がウエハ表面Wf近傍に回り込むことが防止される。
【0056】
こうして1枚のウエハWに対する処理が終了すると、対向部材5およびスピンベース15の回転を停止させるとともに対向部材5を上方に退避させて、処理済みのウエハWを外部へ搬出する(ステップS107)。続けて処理すべきウエハがある場合には(ステップS108)、新たな未処理ウエハWを搬入し上記と同様にしてスピンベース15に保持し(ステップS110)、スピンベース15の回転を開始する(ステップS111)。
【0057】
上記した1枚目のウエハWに対する処理では、エッチング液の吐出に先立って下面処理ノズル2からDIWをウエハ裏面Wbに供給した(ステップS103)。しかし、2枚目以降のウエハに対する処理では、開閉バルブ223を開くことなく直ちにエッチング液の吐出を行う(ステップS104)。このようにする理由は以下の通りである。
【0058】
図9は2枚目以降のウエハに対する前処理を説明するための図である。先のウエハWに対するリンス処理が終了した時点では、図9(a)に示すように、下面処理ノズル2に連通する処理液供給管21の内部空間のうちノズル開口部2aに隣接する空間にはリンス処理に使用されたリンス液(DIW)が残留した状態となっている。この実施形態では、リンス処理終了後に吸引機構215による管内の残留液の吸引を行わずに処理済みウエハの搬出および未処理ウエハの搬入を行っているため、新たな未処理ウエハWが搬入された時点でも処理液供給管21の内部にはDIWが残留したままとなっている。
【0059】
そして、新たな未処理ウエハWに対しエッチング液Letを供給すべく開閉バルブ221,222の少なくとも一方が開かれると、図9(b)に示すように、第1の薬液供給源211および/または第2の薬液供給源212から供給されて処理液供給管21内を上昇してくるエッチング液Letが、管内に残留していたDIWを押し上げて下面処理ノズル2からウエハ裏面Wbに向け吐出させることになる。すなわち、2枚目以降のウエハ処理においては、管内に残留しているDIWと、薬液供給源から送り出されるエッチング液Letの押圧力とを利用して前処理を行わせることができる。このため、1枚目のウエハ処理の場合のようにDIW供給源213からDIWを送り出す必要がない。
【0060】
このように、この実施形態では、先の処理で処理液供給管21内に残留しているリンス液としてのDIWを吸引除去せず、次のウエハ処理時にこの残留DIWを前液として利用して前処理を行う。このため、DIWの使用量を少なくすることができ、また処理ごとに管内の残留液を吸引したり、開閉バルブ223を新たに開閉してDIWを供給したりする必要がないので、複数枚のウエハについて高いスループットで処理を行うことが可能となっている。
【0061】
図8に戻ってベベルエッチング処理の説明を続ける。上記のようにして2枚目のウエハWについて前処理およびエッチングを行った後、1枚目と同様にリンス処理およびスピン乾燥を行う。以後、同様に処理を繰り返すことで必要な全てのウエハに対し順次処理を行うことができる。最後のウエハに対する処理が終了した後、すなわちステップS108において次のウエハなしと判断したときには、開閉バルブ214を開くとともに吸引機構215を動作させることにより、処理液供給管21および配管201の管内に残留する液体を吸引・廃棄して全体の処理を終了する。
【0062】
以上のように、この実施形態では、ウエハ表面の端部をエッチング処理するベベルエッチング処理において、ウエハ裏面へのエッチング液の供給に先立って、ウエハ裏面WbにDIWにより濡れた前処理領域PRを形成している。この前処理領域PRは、少なくともウエハ裏面のエッチング液供給領域SRを取り囲む周囲領域を含むように形成される。そのため、エッチング液がその供給開始初期において非等方的な筋状に広がったとしても、前処理領域PRを通ることでその広がり方向が等方的に修正されて、ウエハの端部領域ERの一部に集中的に流れ込むことが防止される。これにより、ウエハ表面端部におけるエッチングむらの発生が抑制される。
【0063】
そして、このようにエッチングむらの発生が抑制されているため、この実施形態の基板処理装置では、従来のベベルエッチング技術よりも高いウエハ回転速度、少ないエッチング液供給量でベベルエッチング処理を行うことが可能であり、その結果、エッチング幅を従来よりも小さく、かつ均一にすることができる。例えば、これまでの技術ではエッチング幅を1mm以下とすることは困難であったが、本実施形態の装置では前記条件で平均エッチング幅Wavを0.6mm程度まで小さくすることができ、エッチング幅の位置によるばらつきについても±0.1mm以下に抑えることができた。
【0064】
<第2実施形態>
図10はこの発明にかかる基板処理装置の第2実施形態を示す図である。この実施形態の基板処理装置は、第1実施形態のもの(図1)と比較すると、スピンベース15の外周部近傍にチャックリンスノズル4が設けられている点が最も大きな違いである。チャックリンスノズル4は制御ユニット8により制御される開閉バルブ224を介してDIW供給源213に接続されており、スピンベース15の側方から回転軸J方向にDIWを吐出する。チャックリンスノズル4は、スピンベース15上に設けられた支持ピン152に付着する薬液を洗い流す際に使用される。この点を除く他の構成は第1実施形態と同じであるため、ここでは同一構成には同一符号を付して説明を省略する。
【0065】
次に、この実施形態の動作上の特徴について説明する。前述の第1実施形態では、ウエハ裏面Wbにエッチング液を供給するのに先立って、下面処理ノズル2から前液としてDIWを吐出して前処理を行っていた(図8のステップS103)。これに対し、この第2実施形態では、ステップS103において下面処理ノズル2ではなくチャックリンスノズル4からDIWを吐出させることによって前処理を行う。すなわち、回転するウエハWの裏面Wbに向けて、側方のチャックリンスノズル4からDIWが供給されて前処理が行われる。そして、チャックリンスノズル4からのDIW供給の停止後に、下面処理ノズル2からのエッチング液の供給を開始する。
【0066】
こうすると、図7(b)に示すように、ウエハ端部領域ERを含む環状の前処理領域PRが形成されることになる。このようにしても、非等方的に広がるエッチング液の広がり方向をより等方的に修正して、エッチングむらの発生を抑制することができる。
【0067】
また、このようにすると、前処理領域PRの面積が第1実施形態よりも少ない。さらに、第1実施形態ではエッチング液によって管内の残留DIWを押し出すことで前処理を行っておりDIWとエッチング液とがほぼ間断なく供給されるのに対し、第2実施形態ではチャックリンスノズル4からのDIW供給の停止後にエッチング液の供給を開始しているため、エッチング液の供給開始時点では前処理領域PRにおけるDIWの液膜がより薄くなっている。これらのことは、エッチング開始時点でウエハ裏面Wbに付着しているDIWの量が大幅に少なくなることを意味しており、したがってこの実施形態では、エッチング初期段階で使用されるエッチング液がDIWによってほとんど薄められることなく回収され得る。つまり、この実施形態では、薬液の回収効率がより高く、回収した薬液を再利用することによってその使用量を削減することが可能である。
【0068】
また、第1実施形態では処理液供給管21内に残留していたリンス液をエッチング液で押し出すことによって前処理を行っていたが、第2実施形態では前処理のためのDIWを別途供給するので管内の残留DIWは不要である。そこで、リンス処理後、次のウエハが搬入されるよりも前に、例えばスピン乾燥中に、吸引機構215による管内の残留液の吸引を行わせる。また、ウエハ1枚ごとにチャックリンスノズル4からのDIW吐出が必要であるため、図8におけるステップS111の実行後はステップS104ではなくステップS103が実行される。
【0069】
<第3実施形態>
次に、この発明にかかる基板処理装置の第3実施形態について説明する。第2実施形態の装置では薬液の回収効率を高めてこれを有効に再利用することができるが、前処理のためにDIWを供給するための構成(チャックリンスノズル4)が別途必要となる。以下に説明する第3実施形態の装置は、チャックリンスノズルを設けない装置において第2実施形態と同様の高い薬液回収効率を実現するものである。
【0070】
図11はこの発明にかかる基板処理装置の第3実施形態を示す図である。第3実施形態の装置では、ガス供給ユニット18から供給される窒素ガスが、制御ユニット8により制御される開閉バルブ226を介して配管201に案内されている点で第1実施形態の装置と異なっており、これ以外の構成は第1実施形態のものと同一である。そこで、ここでも第1実施形態と同一の構成には同一符号を付して説明を省略する。
【0071】
図12は第3実施形態におけるベベルエッチング処理を示すフローチャートである。なお、第3実施形態の基板処理装置の動作も一部を除いて基本的に第1実施形態のもの(図8)と同じであるので、同一の処理ステップには同一符号を付して説明を省略する。この実施形態の動作は、1枚目のウエハWに対する処理が終了した後、処理液供給管21内にDIWを残留させておくところまでは第1実施形態と同じである。そして、次のウエハを搬入し回転開始させた後(ステップS110,S111)、開閉バルブ226を所定時間開くことにより、配管201内に窒素ガスを導入する(ステップS112)。配管201およびこれに接続された処理液供給管21内に残留するDIWは、導入された窒素ガスによって押し上げられて下面処理ノズル2から吐出される。こうして吐出されたDIWの前液により、ウエハ裏面Wbに前処理領域PRが形成される。以後の動作は第1実施形態と同じである。
【0072】
このようにすると、窒素ガスによって押し出された管内のDIWがウエハ裏面Wbに供給された後、エッチング液がウエハ裏面Wbに供給されるまでに少しの間がある。この間に処理液回収機構の切り換えを行うことができ、またこの間に前処理領域PRのDIW液膜の厚さが減少するので、第2実施形態の装置と同様に、薬液の回収効率を高めることが可能である。
【0073】
<その他>
以上説明したように、上記した各実施形態では、スピンベース15および対向部材5がそれぞれ本発明の「基板保持手段」および「対向部材」として機能している。また、スピンベース15に設けられた支持ピン152が本発明の「支持部」として機能している。また、ガス供給ユニット18およびガス供給路57が一体として本発明の「気流形成手段」として機能している。
【0074】
また、これらの実施形態では、第1および第2の薬液供給源211,212、開閉バルブ221,222、下面処理ノズル2等が一体として本発明の「エッチング液供給手段」として機能しており、特に処理液供給管21が本発明の「給送管」として機能している。また、純水供給手段であるDIW供給源213および開閉バルブ223が本発明の「前液供給手段」として機能している。
【0075】
また、上記各実施形態では、図8のステップS101,S102が本発明の「基板保持工程」、ステップS103が「前処理工程」、ステップS104が「エッチング工程」にそれぞれ相当している。
【0076】
なお、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて上述したもの以外に種々の変更を行うことが可能である。例えば、上記各実施形態の基板処理装置は、ウエハWをスピンベース15上の支持ピン152に載置しこれらを対向部材5から吐出させた窒素ガスによって押し付けることでウエハを保持する押し付けチャック方式の装置であるが、ウエハの端面に側方(および下方)から支持ピンを当接させることでウエハを保持するように構成された装置に対しても、本発明を適用することが可能である。また「前液」として使用し得る液体は純水やDIWに限定されず、ウエハや薄膜、薬液の種類に応じて種々のものを使用可能である。
【0077】
また、上記実施形態では、前処理工程とエッチング工程との間でウエハの回転速度を特に変更していない。これは、前処理工程において前液としてのDIWがウエハの表面側まで回り込んだとしても、その回り込み量がエッチング工程と同程度となるようにすることでエッチング幅を安定させるためである。この点からは、前処理工程におけるDIWの供給位置やその供給量についても、エッチング工程におけるそれらと同一条件としておくことが好ましい。
【0078】
また、例えば前処理工程からエッチング工程に移る際に回転速度を上げるようにしてもよい。このように、エッチング開始時の回転速度を前処理よりも高くすると、ウエハWの前処理領域PRに残留するDIWの量が少なくなるため、エッチング液の効率的な回収が容易となるからである。DIWとエッチング液とが切れ目なく供給される第1実施形態においては、次第に回転速度を上昇させながら前処理を行うようにすればよい。
【0079】
また、例えば、上記各実施形態の基板処理装置は、乾燥した状態で外部から搬入されるウエハに対してベベルエッチング処理を行い乾燥させる装置であるが、他の処理と組み合わせて実行するものであってもよい。例えば、公知のエッジリンス処理の後に本発明のベベルエッチング処理を行うような装置としてもよい。エッジリンス処理の実行後であってもウエハ裏面が乾燥していれば前述した過大な回り込みが発生しエッチングむらを生じさせることがあり、またウエハ端部のうちエッジリンス処理された領域を超えて内側にまでエッチング液が回り込んでしまうことを避ける必要があるからである。
【産業上の利用可能性】
【0080】
この発明は、略水平に保持した基板の下面からエッチング液を供給してその上面端部をエッチング処理する基板処理方法および装置に適用することが可能であり、その処理対象となる基板としては、半導体ウエハ、フォトマスク用ガラス基板、液晶表示用ガラス基板、プラズマ表示用ガラス基板、光ディスク用基板などが利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0081】
【図1】この発明にかかる基板処理装置の第1実施形態を示す図である。
【図2】図1の基板処理装置の主要な制御構成を示すブロック図である。
【図3】対向部材を下方から見た図である。
【図4】エッチングむらの様子を模式的に示す図である。
【図5】エッチングむらの発生原理を説明するための図である。
【図6】ベベルエッチング処理の原理を説明するための図である。
【図7】前処理領域の例を示す図である。
【図8】第1実施形態におけるベベルエッチング処理を示すフローチャートである。
【図9】2枚目以降のウエハに対する前処理を説明するための図である。
【図10】この発明にかかる基板処理装置の第2実施形態を示す図である。
【図11】この発明にかかる基板処理装置の第3実施形態を示す図である。
【図12】第3実施形態におけるベベルエッチング処理を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0082】
2…下面処理ノズル(エッチング液供給手段)
5…対向部材
15…スピンベース(基板保持手段)
18…ガス供給ユニット(気流形成手段)
21…処理液供給管(給送管)
57…ガス供給路(気流形成手段)
152…支持ピン(支持部)
211,212…第1および第2の薬液供給源(エッチング液供給手段)
213…DIW供給源(前液供給手段)
221,222…開閉バルブ(エッチング液供給手段)
223…開閉バルブ(前液供給手段)
S101,S102…基板保持工程
S103…前処理工程
S104…エッチング工程
W…ウエハ(基板)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を略水平状態に保持し略鉛直軸周りに回転させる基板保持工程と、
回転する前記基板下面のエッチング液供給領域に向けてエッチング液を供給し前記基板の上面端部に前記エッチング液を回り込ませることにより前記基板の上面端部をエッチングするエッチング工程と
を備え、
前記エッチング工程の実行前に、前記基板下面に前液を供給して、該基板下面のうち前記エッチング液供給領域の周囲を取り囲む周囲領域を前液により濡れた状態にする前処理工程をさらに備えることを特徴とする基板処理方法。
【請求項2】
前記前処理工程では、前記基板の下面端部を含む前記周囲領域を前液により濡れた状態とする請求項1に記載の基板処理方法。
【請求項3】
前記エッチング工程では、前記基板の上面端部近傍に、前記基板の回転中心から外側に向かう気流を形成する請求項1または2に記載の基板処理方法。
【請求項4】
前記エッチング工程では、前記基板上面に対向部材を近接配置させ、前記対向部材と前記基板上面とに挟まれる空間に前記気流を形成する請求項3に記載の基板処理方法。
【請求項5】
前記前処理工程では、前記基板下面の略中央部に向けて前液を供給する請求項1ないし4のいずれかに記載の基板処理方法。
【請求項6】
前記前処理工程では、前記基板下面の周縁部に向けて前液を供給する請求項1ないし4のいずれかに記載の基板処理方法。
【請求項7】
前記エッチング工程では、前記前処理工程よりも前記基板の回転速度を高くする請求項1ないし6のいずれかに記載の基板処理方法。
【請求項8】
基板を略水平状態に保持し略鉛直軸周りに回転させる基板保持手段と、
回転する前記基板下面のエッチング液供給領域に向けてエッチング液を供給することで前記基板の上面端部に前記エッチング液を回り込ませ前記基板の上面端部をエッチングするエッチング液供給手段と、
前記エッチング液供給手段からのエッチング液の供給に先立って、前記基板下面に前液を供給して該基板下面のうち前記エッチング液供給領域の周囲を取り囲む周囲領域を前液により濡れた状態にする前液供給手段と
を備えることを特徴とする基板処理装置。
【請求項9】
前記基板の上面と対向する基板対向面を有し前記基板の上面に近接配置される対向部材と、
前記対向部材と前記基板上面とに挟まれる空間に前記基板の回転中心から外側に向かう気流を形成する気流形成手段と
をさらに備える請求項8に記載の基板処理装置。
【請求項10】
前記基板保持手段には、前記基板の下面に当接して前記基板を下方から支持するための支持部が上向きに突設されており、
前記支持部により支持された前記基板の上面に対し前記対向部材が近接配置され、前記気流形成手段が前記対向部材の下面から気体を吐出することで前記気流を形成するとともに該気流により前記基板を前記支持部に押し付けることによって前記基板が保持される請求項9に記載の基板処理装置。
【請求項11】
前記エッチング液供給手段は、前記基板の下面に向けて開口し該開口部に向けて前記エッチング液を給送する給送管を備える一方、
前記前液供給手段は、前記給送管の内部空間のうち前記開口部に接する一部空間に前液を注入する請求項8ないし10のいずれかに記載の基板処理装置。
【請求項12】
前記前液供給手段は、前記基板下面の周縁部に向けて前液を供給する請求項8ないし10のいずれかに記載の基板処理装置。
【請求項1】
基板を略水平状態に保持し略鉛直軸周りに回転させる基板保持工程と、
回転する前記基板下面のエッチング液供給領域に向けてエッチング液を供給し前記基板の上面端部に前記エッチング液を回り込ませることにより前記基板の上面端部をエッチングするエッチング工程と
を備え、
前記エッチング工程の実行前に、前記基板下面に前液を供給して、該基板下面のうち前記エッチング液供給領域の周囲を取り囲む周囲領域を前液により濡れた状態にする前処理工程をさらに備えることを特徴とする基板処理方法。
【請求項2】
前記前処理工程では、前記基板の下面端部を含む前記周囲領域を前液により濡れた状態とする請求項1に記載の基板処理方法。
【請求項3】
前記エッチング工程では、前記基板の上面端部近傍に、前記基板の回転中心から外側に向かう気流を形成する請求項1または2に記載の基板処理方法。
【請求項4】
前記エッチング工程では、前記基板上面に対向部材を近接配置させ、前記対向部材と前記基板上面とに挟まれる空間に前記気流を形成する請求項3に記載の基板処理方法。
【請求項5】
前記前処理工程では、前記基板下面の略中央部に向けて前液を供給する請求項1ないし4のいずれかに記載の基板処理方法。
【請求項6】
前記前処理工程では、前記基板下面の周縁部に向けて前液を供給する請求項1ないし4のいずれかに記載の基板処理方法。
【請求項7】
前記エッチング工程では、前記前処理工程よりも前記基板の回転速度を高くする請求項1ないし6のいずれかに記載の基板処理方法。
【請求項8】
基板を略水平状態に保持し略鉛直軸周りに回転させる基板保持手段と、
回転する前記基板下面のエッチング液供給領域に向けてエッチング液を供給することで前記基板の上面端部に前記エッチング液を回り込ませ前記基板の上面端部をエッチングするエッチング液供給手段と、
前記エッチング液供給手段からのエッチング液の供給に先立って、前記基板下面に前液を供給して該基板下面のうち前記エッチング液供給領域の周囲を取り囲む周囲領域を前液により濡れた状態にする前液供給手段と
を備えることを特徴とする基板処理装置。
【請求項9】
前記基板の上面と対向する基板対向面を有し前記基板の上面に近接配置される対向部材と、
前記対向部材と前記基板上面とに挟まれる空間に前記基板の回転中心から外側に向かう気流を形成する気流形成手段と
をさらに備える請求項8に記載の基板処理装置。
【請求項10】
前記基板保持手段には、前記基板の下面に当接して前記基板を下方から支持するための支持部が上向きに突設されており、
前記支持部により支持された前記基板の上面に対し前記対向部材が近接配置され、前記気流形成手段が前記対向部材の下面から気体を吐出することで前記気流を形成するとともに該気流により前記基板を前記支持部に押し付けることによって前記基板が保持される請求項9に記載の基板処理装置。
【請求項11】
前記エッチング液供給手段は、前記基板の下面に向けて開口し該開口部に向けて前記エッチング液を給送する給送管を備える一方、
前記前液供給手段は、前記給送管の内部空間のうち前記開口部に接する一部空間に前液を注入する請求項8ないし10のいずれかに記載の基板処理装置。
【請求項12】
前記前液供給手段は、前記基板下面の周縁部に向けて前液を供給する請求項8ないし10のいずれかに記載の基板処理装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2009−266951(P2009−266951A)
【公開日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−112700(P2008−112700)
【出願日】平成20年4月23日(2008.4.23)
【出願人】(000207551)大日本スクリーン製造株式会社 (2,640)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年4月23日(2008.4.23)
【出願人】(000207551)大日本スクリーン製造株式会社 (2,640)
【Fターム(参考)】
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