説明

塗膜転写具

【課題】凹凸段差を有する被転写面への塗膜の転写を確実にし、使用者の手に対する反発振動を緩和し、かつ終了時の塗膜を切れやすくし、塗膜転写位置の正確な位置決めを可能にすること。
【解決手段】ケース10内に、転写テープ1を巻装する送出リール21と、送出リールから送り出された転写テープのテープ基材を巻き取る巻取リール22と、送出・巻取機構30と、転写テープを被転写面に押圧する押圧ローラ41を有する転写ヘッド40と、を具備する塗膜転写具において、転写ヘッドは、自由端部に押圧ローラを回転可能に支持し、転写テープの移動方向に揺動可能なスイングアーム42と、非使用時にスイングアームを転写テープが送られる方向とは逆の方向に弾性力を付勢するばね部材43と、を具備し、転写ヘッドとケースとの間に、スイングアームが揺動する際に摩擦を付与する摩擦手段47を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は塗膜転写具に関するもので、更に詳細には、テープ基材に担持された例えば粘着剤や顔料を含む不透明の修正塗料剤等の塗膜を被転写面に転写可能にする塗膜転写具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、例えばポスターや写真等の貼付や封筒の糊付けあるいは誤字の修正等にテープ基材の片面に粘着剤や修正塗料剤等の塗膜を担持した転写テープが使用されている。この転写テープはロール状にリールに巻装され、転写具のケースに配設されて使用されている。
【0003】
上記転写テープから塗膜を被転写面(修正面)に転写(修正)する転写具としては、例えば、ケース(容器)内に、テープ基材の片面に塗膜を有する転写テープを巻装する送出リールと、送出リールから送り出された転写テープのテープ基材を巻き取る巻取リールと、送出リール及び巻取リールをそれぞれ支持して回転すると共に、互いに噛合するギアからなる送出・巻取機構と、転写テープが送出リールから送り出され巻取リールに巻き取られる間で内側のテープ基材側から転写テープを被転写面に押圧する押圧ローラを有する転写ヘッドと、を具備する塗膜転写具が知られている。
【0004】
また、この種の塗膜転写具においては、使用に際し決まった姿勢で転写テープの塗膜端位置を被転写面に接触可能にし、かつ転写開始位置の正確性の向上が望まれている。
【0005】
そこで、従来では、転写ヘッドを、転写テープの移動方向に揺動(扇回)可能なスイングアームと、スイングアームに当接して、非使用時にスイングアームを転写テープが送られる方向とは逆の方向に弾性力を付勢する粘性を有する弾性材と、を具備するものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0006】
また、別のこの種の転写具として、上記弾性材を複数とすると共に、スイングアームの揺動(扇回)中心を挟んで両側面に当接し、少なくとも一つが粘性を有する連続気泡を有した材料で形成したものが知られている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2009−119835号公報(特許請求の範囲、図11)
【特許文献2】特開2009−132132号公報(特許請求の範囲、図12)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1及び特許文献2に記載のものにおいては、いずれも弾性材は、非使用時にスイングアームを転写テープが送られる方向とは逆の方向に弾性力を付勢する機能を有するものである。したがって、特許文献1及び特許文献2に記載のものは、転写時の振動を吸収することができるが、被転写面に凹凸段差がある場合には、弾性材の振動吸収のみでは押圧ローラの押圧面が凹凸段差面に追従しきれず塗膜の確実な転写が不十分となり、塗膜のむらが生じる懸念があった。
【0009】
この発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、凹凸段差を有する被転写面への塗膜の転写を確実にし、使用者の手に対する反発振動を緩和し、かつ終了時の塗膜を切れやすくし、塗膜転写位置の正確な位置決めを可能にする塗膜転写具を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、この発明は、ケース内に、テープ基材の片面に塗膜を有する転写テープを巻装する送出リールと、上記送出リールから送り出された転写テープのテープ基材を巻き取る巻取リールと、上記送出リール及び巻取リールをそれぞれ支持して回転すると共に、互いに噛合するギアからなる送出・巻取機構と、上記転写テープが上記送出リールから送り出され上記巻取リールに巻き取られる間で内側のテープ基材側から転写テープを被転写面に押圧する押圧ローラを有する転写ヘッドと、を具備する塗膜転写具であって、 上記転写ヘッドは、自由端部に上記押圧ローラを回転可能に支持し、上記転写テープの移動方向に揺動可能なスイングアームと、非使用時に上記スイングアームを上記転写テープが送られる方向とは逆の方向に弾性力を付勢するばね部材と、を具備し、 上記転写ヘッドと上記ケースとの間に、上記スイングアームが揺動する際に摩擦を付与する摩擦手段を設ける、ことを特徴とする。
【0011】
このように構成することにより、ばね部材の弾性力によって転写時の振動を吸収することができ、摩擦手段の摩擦作用によって転写時の振動を緩和し、かつスイングアームの揺動を遅延させることができる。
【0012】
この発明において、上記摩擦手段は、上記転写ヘッドと上記ケースとの間に設けられて、上記スイングアームが揺動する際に摩擦を付与する機能を有するものであれば任意のものでよく、例えば、上記摩擦手段を、上記スイングアームと上記ケースの対向する面のいずれか一方の面に突設されて他方の面に接触する粘弾性材料で形成してもよく、あるいは、上記スイングアームと上記ケースの対向する面間に介在される粘弾性材料で形成されるパッキン部材を用いてもよい。この場合、上記粘弾性材料として、例えばポリビニルアルコール(PVA)や発泡ポリウレタン等の高分子あるいは合成ゴム等の粘弾性材料を用いることができる。
【0013】
また、この発明において、上記摩擦手段は、上記スイングアームの揺動方向と直交する両面と上記ケース側の対向する面の双方に設けられている方が好ましい。
【0014】
加えて、この発明において、上記スイングアームは、上記ケースに横架される支持軸に回転自在に嵌合する円筒部と、上記ケースに横架されるガイド軸を遊貫する円弧状ガイド孔と、を具備し、上記ばね部材は、上記スイングアームの円筒部から突設される波形状に屈曲される板ばねにて形成されると共に、先端側面が上記ガイド軸に弾接してなる構造とする方が好ましい。
【発明の効果】
【0015】
この発明の塗膜転写具によれば、上記のように構成されているので、以下のような効果が得られる。
【0016】
(1)転写ヘッドとケースとの間に設けられる摩擦手段によって、ばね部材の弾性力によって転写時の振動を吸収することができ、摩擦手段の摩擦作用によって転写時の振動を緩和し、かつスイングアームの揺動を遅延させることができるので、凹凸段差を有する被転写面への塗膜の転写を確実にし、使用者の手に対する反発振動を緩和し、かつ終了時の塗膜を切れやすくし、塗膜転写位置の正確な位置決めを可能にすることができる。
【0017】
(2)摩擦手段をスイングアームの揺動方向と直交する両面とケースの対向する面の双方に設けることにより、転写時の転写ヘッド全体の振動の緩和を確実にすることができるので、上記(1)に加えて更に凹凸段差を有する被転写面への塗膜の転写を確実にすることができる。
【0018】
(3)スイングアームに、ケースに横架される支持軸に回転自在に嵌合する円筒部と、ケースに横架されるガイド軸を遊貫する円弧状ガイド孔とを設け、ばね部材を、スイングアームの円筒部から突設される波形状に屈曲される板ばねにて形成すると共に、先端側面をガイド軸に弾接することにより、上記(1),(2)に加えて更に構成部材の削減が図れると共に、構造を簡単にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】この発明に係る塗膜転写具の使用状態を示す概略斜視図である。
【図2】上記塗膜転写具の要部を示す正面断面図(a)及び(a)のI部拡大断面図(b)である。
【図3】図3のII−II線に沿う断面図である。
【図4】この発明における転写部を示す概略斜視図である。
【図5】上記塗膜転写具の要部を示す分解斜視図である。
【図6】この発明における転写部を示す分解斜視図である。
【図7】この発明に係る塗膜転写具の使用状態を示す概略断面図である。
【図8】使用時の転写状態を示す要部拡大断面図である。
【図9】この発明における摩擦手段の別の形態を示す分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に、この発明の実施形態について、添付図面に基づいて詳細に説明する。ここでは、この発明に係る塗膜転写具を粘着転写具に適用した場合について説明する。
【0021】
この発明に係る塗膜転写具は、図2及び図3に示すように、ケース10内に、テープ基材2の片面に塗膜である粘着剤3を担持する転写テープ1を巻装する送出リール21と、送出リール21から送り出された転写テープ1のテープ基材2を巻き取る巻取リール22と、送出リール21及び巻取リール22をそれぞれ支持して回転すると共に、互いに噛合するギア31,32からなる送出・巻取機構30と、転写テープ1が送出リール21から送り出され巻取リール22に巻き取られる間で内側のテープ基材側から転写テープ1を被転写面4に押圧する押圧ローラ41を有する転写ヘッド40と、を具備している。
【0022】
上記ケース10は、互いに着脱可能に嵌合するベース11とカバー12とで構成されている。この場合、カバー12の両側に突設された一対の係止爪12aがベース11に設けられた係止受け部11aにいわゆるスナップ係合してベース11とカバー12が着脱可能に嵌合するようになっている。なお、ベース11とカバー12の嵌合は着脱可能であれば、必ずしもこのような構造とする必要はない。
【0023】
これらベース11とカバー12は、例えば透明性の合成樹脂製材料にて形成されており、使用者の手Hの人差し指Fと親指Tとの間に包み込まれやすいように流線形を有する側壁14を有し、ベース11とカバー12の一端の側壁14が切り掛かれた開口部15に転写ヘッド40が配設されている。転写ヘッド40のケース10から露呈する部分はケース10に揺動可能に装着されるキャップ16によって閉塞されるようになっている。
【0024】
ベース11には、送出・巻取機構30を構成する送出ギア31と巻取ギア32をそれぞれ回転可能に支持する支持ピン17a,17bが突設されており、開口部15側に位置する支持ピン17aには送出ギア31が時計方向に回転可能に装着されている。また、開口部15と反対の他端部側に位置する支持ピン17bには、送出ギア31と噛合して反時計方向に回転する巻取ギア32が装着されている。この場合、巻取ギア32の歯数は送出ギア31の歯数より十分少なくなっており、送出ギア31に対して巻取ギア32が多く回転し得るようになっている。
【0025】
また、送出ギア31には、割溝付きのスリーブ33aを有する逆転防止機能を有するリテーナ33が取り付けられており、巻取ギア32には、割溝付きのスリーブ32aが一体に形成されている。そして、送出ギア31のスリーブ33aに送出リール21が回転方向が規制されて着脱可能に装着され、巻取ギア32のスリーブ32aには巻取リール22が回転方向が規制されて着脱可能に装着されるようになっている。なお、送出リール21と巻取リール22は、ベース11の内側に収容されてカバー12と対峙する内カバー13によって支持されている。なお、内カバー13には、カバー12の側壁14上端に突設された係止爪12bと係脱可能に係合する係止受け部13aが設けられており、内カバー13はカバー12に対して着脱可能に装着されるようになっている。また、内カバー13によって支持される送出リール21と巻取リール22の上端部は、カバー12の内側に突設される中空状の補助支持ピン17c,17dの基端部に放射状に設けられた複数の押さえリブ17e,17fに回転及び着脱可能に係合している。なお、補助支持ピン17c,17dはそれぞれベース11から突設された支持ピン17a,17bと協働して送出リール21と巻取リール22を回転可能に支持する。
【0026】
なお、内カバー13における開口部15側の両側にはガイドピン17g,17hが突設されており、これらガイドピン17g,17hには、それぞれ第1及び第2のガイドローラ23,24が回転可能に支持されている。この場合、第1のガイドローラ23は、送出リール21から送り出されて転写ヘッド40の押圧ローラ41に掛け渡される転写テープ1の内側に接触可能になっている。また、第2のガイドローラ24は、押圧ローラ41から巻取リール22に巻き取られる転写テープ1のテープ基材2の内側に接触可能になっている。このように配設される第1,第2のガイドローラ23,24によって使用時の転写テープ1の弛みを防止することができる。
【0027】
上記転写ヘッド40は、図3、図4及び図6に示すように、自由端部に押圧ローラ41を回転可能に支持し、転写テープ1の移動方向に揺動可能な二又状のスイングアーム42と、非使用時にスイングアーム42を転写テープ1が送られる方向とは逆の方向に弾性力を付勢するばね部材43とを具備している。
【0028】
この場合、スイングアーム42は、ケース10に横架される支持軸50に回転自在に嵌合する円筒部44と、ケース10{内カバー13を含む}に横架されるガイド軸51を遊貫する円弧状ガイド孔45と、を具備している。また、両スイングアーム42の自由端部間には、押圧ローラ41を回転自在に支持する軸ピン46が架設されている。
【0029】
この場合、図3に示すように、支持軸50は、ケース10を構成するカバー12と内カバー13から対向する方向に突出し、先端同士が凹凸嵌合するそれぞれ先端に向かって縮径テーパー状の第1の軸部50aと第2の軸部50bとからなる鼓型に形成されている。一方、スイングアーム42の円筒部44の貫通孔44aは、軸方向の中心部が最小径となり両端開口部に向かって拡径テーパー状に形成されている。このように形成される支持軸50の軸方向の小径中心部50cと円筒部44の貫通孔44aの最小径部44bとが係合することにより、支持軸50と円筒部44はスラスト方向(軸方向)にずれないように規制され、ラジアル方向(回転方向と直交する方向)に回動可能でかつ支持軸50又は円筒部44(貫通孔44a)が傾斜し、押圧ローラ41が被転写面4により一層密着する。
【0030】
上記ばね部材43は、スイングアーム42の円筒部44から突設される波形状に屈曲される中間が切り欠かれた二又状の板ばねにて形成されると共に、先端側面がガイド軸51に弾接して、ばね部材43の弾発力(弾性力)によって、常時スイングアーム42を転写テープ1が送られる方向、つまり転写テープ1の粘着剤3が被転写面4に転写される方向とは逆の方向(図2の左方向)に押圧している。この場合、ガイド軸51は、ケース10を構成するカバー12と内カバー13から対向する方向に突出し、先端同士が当接する2つの軸半体51a,51bによって構成されている。
【0031】
上記のように、転写ヘッド40にスイングアーム42とばね部材43を一体に形成することにより、構成部材の削減が図れると共に、部材の組付けを容易にすることができる。
【0032】
また、上記のように形成される転写ヘッド40とケース10側との間には、スイングアーム42が揺動する際に摩擦を付与する摩擦手段47が設けられている。この場合、摩擦手段47は、スイングアーム42の外面に突設される例えばポリビニルアルコール(PVA)や発泡ポリウレタン等の高分子あるいは合成ゴム等の粘弾性材料からなり、先端平坦面47aがケース10側{具体的にはベース11とカバー12}の内面に接触する弾性変形可能な摩擦突起にて形成されている。なお、摩擦手段すなわち摩擦突起47は、スイングアーム42に代えてケース10側{内カバー13を含む}の内面に突設してもよい。また、スイングアーム42とケース10を同様に弾性変形可能な材料、例えばポリアセタール(POM)やポリカーボネート(PC)製材料で形成する場合は、摩擦突起47をスイングアーム42又はケース10側内カバー13を含む}と一体に形成することができる。
【0033】
上記のように、転写ヘッド40とケース10側との間に、スイングアーム42が揺動する際に摩擦を付与する摩擦突起47(摩擦手段)を設けることにより、スイングアーム42の揺動の際のばね部材43による振動を吸収し動きを遅延させることができる。したがって、被転写面の凹凸段差面に押圧ローラ41を追従させることができ、押圧段差面への転写性向上が図れると共に、使用者の手に対する反発振動が緩和され、心地よい使用感をもたらすことができる。
【0034】
また、上記のように形成される内カバー13は、テープ基材2の片面に塗膜である粘着剤3を担持する転写テープ1を巻装する送出リール21と、送出リール21から送り出されて、粘着剤3が剥離した転写テープ1のテープ基材2を巻き取る巻取リール22と、転写ヘッド40及び第1,第2のガイドローラ23,24を支持している。この場合、送出リール21から繰り出され、巻取リール22に巻き取られる間の転写テープ1の弧状部のテープ基材2の内側は、順に第1のガイドローラ23、押圧ローラ41及び第2のガイドローラ24に掛け渡された状態になっている。また、図3に示すように、仮止め部材60によって送出リール21に巻装されている転写テープ1の繰り出しと巻取リール22の回転が阻止された状態で送出リール21と巻取リール22は維持されている。
【0035】
次に、この発明に係る塗膜転写具の使用態様について、図7及び図8を参照して説明する。まず、送出リール21、巻取リール22、転写ヘッド40及び第1,第2のガイドローラ23,24を支持する内カバー13に設けられた係止受部13aに、カバー12に設けられた係止爪12bを係合して、内カバー13をカバー12の内側にセットする。この状態で、送出リール21と巻取リール22は、カバーに突設された補助支持ピン17c,17dの基端部に放射状に設けられた押さえリブ17e,17fに回転可能に係合する。次に、カバー12に取り付けられた内カバー13をベース11の内側に収容して、送出リール21と巻取リール22を、ベース11に取り付けられた送出ギア31の支持ピン17aと巻取ギア32の支持ピン17bに回転方向が規制された状態に装着する。この状態で、カバー12の係止爪12aをベース11の係止受け部11aに係合させて、ベース11とカバー12を結合する。
【0036】
使用者はケース10を手で持ち、被転写面4の支点P1に押圧ローラ41を押し当てて転写テープ1の粘着剤3を被転写面4に接触させ、矢印Aの方向に引く。すると、スイングアーム42はばね部材43の弾性力に抗して時計方向に回動(移動)する一方、転写テープ1は送出リール21から送り出されて粘着剤3(塗膜)が被転写面4に転写される。この転写時においては、転写ヘッド40とケース10側との間に設けられた摩擦突起47(摩擦手段)により、スイングアーム42の揺動の際のばね部材43による振動を吸収し動きを遅延させるので、図8に示すように、被転写面4の凹凸段差面4aに押圧ローラ41を追従させることができ、凹凸段差面4aへの転写性向上が図れると共に、使用者の手に対する反発振動が緩和され、心地よい使用感をもたらすことができる。
【0037】
所定の範囲に渡って粘着剤3(塗膜)を転写した後、転写具を手前に振り払うように持ち上げると、粘着剤3(塗膜)は終点P2で切れる。この際、ばね部材43の弾性力によってスイングアーム42は元の位置復帰すなわち転写テープ1の送り方向と逆方向に回動(移動)するが、摩擦突起47(摩擦手段)が固定側のベース11の内面及びカバー12の内面に摩擦接触することにより摩擦を付与してスイングアーム42の振動を吸収して動きを遅延させるので、粘着剤3(塗膜)の横切れ(幅方向の切れ)の向上が図れる。すなわち、ばね部材43のみの弾性力においては押圧ローラ41が被転写面4に追従して粘着剤3の横切れが不安定になるが、摩擦突起47(摩擦手段)の遅延作用によって粘着剤3の横切れを確実にすることができる。
【0038】
上記のように転写終了時には、転写テープ1の粘着剤3の横切れが確実になるので、押圧ローラ41には常に粘着剤3付きテープ部分1aが接触し、次回の使用に際して、被転写面4の支点P1に押圧ローラ41を押し当てると、被転写面4の支点P1の位置に粘着剤3を位置させることができる。
【0039】
なお、上記実施形態においては、摩擦手段47が、転写ヘッド40のスイングアーム42とケース10側{具体的にはベース11とカバー12}の内面に接触する弾性変形可能な摩擦突起47にて形成される場合について説明したが、図9に示すように、摩擦手段をスイングアーム42とケース10側{具体的にはベース11とカバー12}の対向する面間に介在される粘弾性材料で形成されるパッキン部材48としてもよい。なお、パッキン部材48は、スイングアーム42又はケース10側{具体的にはベース11とカバー12}のいずれか一方に接着されていてもよい。
【0040】
また、上記実施形態では、この発明に係る塗膜転写具を粘着転写具に適用した場合について説明したが、粘着剤に代えて修正塗料剤の塗膜を担持した転写テープを用いた塗膜転写具にも適用できることは勿論である。
【符号の説明】
【0041】
1 転写テープ
2 テープ基材
3 粘着剤(塗膜)
4 被転写面
10 ケース
11 ベース
12 カバー
13 内カバー
21 送出リール
22 巻取リール
30 送出・巻取機構
31 送出ギア
32 巻取ギア
40 転写ヘッド
41 押圧ローラ
42 スイングアーム
43 ばね部材
44 円筒部
45 円弧状ガイド孔
47 摩擦突起(摩擦手段)
48 パッキン部材(摩擦手段)
50 支持軸
51 ガイド軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケース内に、テープ基材の片面に塗膜を有する転写テープを巻装する送出リールと、上記送出リールから送り出された転写テープのテープ基材を巻き取る巻取リールと、上記送出リール及び巻取リールをそれぞれ支持して回転すると共に、互いに噛合するギアからなる送出・巻取機構と、上記転写テープが上記送出リールから送り出され上記巻取リールに巻き取られる間で内側のテープ基材側から転写テープを被転写面に押圧する押圧ローラを有する転写ヘッドと、を具備する塗膜転写具であって、
上記転写ヘッドは、自由端部に上記押圧ローラを回転可能に支持し、上記転写テープの移動方向に揺動可能なスイングアームと、非使用時に上記スイングアームを上記転写テープが送られる方向とは逆の方向に弾性力を付勢するばね部材と、を具備し、
上記転写ヘッドと上記ケースとの間に、上記スイングアームが揺動する際に摩擦を付与する摩擦手段を設ける、
ことを特徴とする塗膜転写具。
【請求項2】
上記摩擦手段は、上記スイングアームと上記ケースの対向する面のいずれか一方の面に突設されて他方の面に接触する粘弾性材料で形成される、ことを特徴とする請求項1記載の塗膜転写具。
【請求項3】
上記摩擦手段は、上記スイングアームと上記ケースの対向する面間に介在される粘弾性材料で形成されるパッキン部材である、ことを特徴とする請求項1記載の塗膜転写具。
【請求項4】
上記摩擦手段は、上記スイングアームの揺動方向と直交する両面と上記ケース側の対向する面の双方に設けられている、ことを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の塗膜転写具。
【請求項5】
上記スイングアームは、上記ケースに横架される支持軸に回転自在に嵌合する円筒部と、上記ケースに横架されるガイド軸を遊貫する円弧状ガイド孔と、を具備し、
上記ばね部材は、上記スイングアームの円筒部から突設される波形状に屈曲される板ばねにて形成されると共に、先端側面が上記ガイド軸に弾接してなる、
ことを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の塗膜転写具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−136450(P2011−136450A)
【公開日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−296747(P2009−296747)
【出願日】平成21年12月28日(2009.12.28)
【出願人】(000004020)ニチバン株式会社 (80)
【Fターム(参考)】