説明

塞栓物を捕捉する捕捉体

【課題】本発明は、従来にない作用効果を発揮する画期的な塞栓物を捕捉する捕捉体を提供することを目的とする。
【解決手段】人体の管1内に配され該管1内の体液の通過を許容し且つ体液により該管1内を移動する塞栓物2を捕捉する捕捉体4であって、この捕捉体4は、前記管1に挿通され該捕捉体4を該管1内の任意の位置に配するための長尺体3にスライド移動自在に設けられており、更に、この捕捉体4は、縮径状態から拡径状態となって該管1内に架設されることで前記塞栓物2を捕捉するように構成されたものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塞栓物を捕捉する捕捉体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、人体の管1内に形成された塞栓物2、例えば血管内に形成されたコレステロールの堆積物や、胆管内に形成された胆石などの塞栓物2を除去するための管内塞栓物除去具31が提案されている。本実施例と同一構成部分には同一符号を付した。
【0003】
この管内塞栓物除去具31は、人体の管1内に嵌挿し得る管状の空気導入体31aと、この空気導入体31aの先端部に設けられ該空気導入体31aから空気が導入されることで膨らむバルーン体31bとから成り、塞栓物2を除去する塞栓物除去治療に際し、人体の管1内の塞栓物2が形成された部位に縮状態のバルーン体31bを配し、この状態でバルーン体31bを膨らませて該塞栓物2を押圧して破壊するものである。この際、塞栓物2は管1の内壁1aから剥離される。
【0004】
ところで、この管内塞栓物除去具31により例えば血管1内の塞栓物2を破壊した場合、この塞栓物2が血液により流され毛細血管まで達し、梗塞を起こしてしまう危険がある為、管内塞栓物除去具31により破壊した塞栓物2は捕捉する必要がある。
【0005】
そこで、従来においても例えば特開2003−10193号に開示される人体の管内において破壊した塞栓物を捕捉する捕捉体(以下、従来例という。)が種々提案されている。
【0006】
これら従来例は、ワイヤ本体の先端部に塞栓物2を捕捉する捕捉体を設けた構成であり、具体的には、この捕捉体は自身の弾性により縮径状態から拡径状態へと変形可能となっており、拡径状態では、人体の管1内の塞栓物2を捕捉するように構成されている。
【0007】
【特許文献1】特開2003−10193号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところが、これら従来例は、いずれも捕捉体が人体の管1内で架設される拡径状態において、不意にワイヤ本体が押されたり或いは引かれたりした際、このワイヤ本体とともに捕捉体も移動する構成の為、該管1の内壁を傷つけてしまうという問題点があった。
【0009】
本発明は、上述した問題点に着目し、種々の実験・研究を繰り返し行った結果、従来にない作用効果を発揮する画期的な塞栓物を捕捉する捕捉体を開発した。
【課題を解決するための手段】
【0010】
添付図面を参照して本発明の要旨を説明する。
【0011】
人体の管1内に配され該管1内の体液の通過を許容し且つ体液により該管1内を移動する塞栓物2を捕捉する捕捉体4であって、この捕捉体4は、前記管1に挿通され該捕捉体4を該管1内の任意の位置に配するための長尺体3にスライド移動自在に設けられており、更に、この捕捉体4は、縮径状態から拡径状態となって該管1内に架設されることで前記塞栓物2を捕捉するように構成されていることを特徴とする塞栓物を捕捉する捕捉体に係るものである。
【0012】
また、請求項1記載の塞栓物を捕捉する捕捉体において、前記捕捉体4は、前記長尺体3にスライド移動自在に被嵌される一対の筒状部材6間に設けられていることを特徴とする塞栓物を捕捉する捕捉体に係るものである。
【0013】
また、請求項1,2いずれか1項に記載の塞栓物を捕捉する捕捉体において、前記長尺体3には該捕捉体4のスライド移動を規制するスライド阻止手段7が設けられていることを特徴とする塞栓物を捕捉する捕捉体に係るものである。
【0014】
また、請求項1〜3いずれか1項に記載の塞栓物を捕捉する捕捉体において、前記捕捉体4は、パイプ体8を被嵌することで縮径状態が保持される構成であり、このパイプ体8の被嵌を解除した際、拡径状態となるように構成されていることを特徴とする塞栓物を捕捉する捕捉体に係るものである。
【0015】
また、請求項1〜4いずれか1項に記載の塞栓物を捕捉する捕捉体において、前記捕捉体4の端部は先端側程径小に設けられていることを特徴とする塞栓物を捕捉する捕捉体に係るものである。
【0016】
また、請求項1〜5いずれか1項に記載の塞栓物を捕捉する捕捉体において、前記捕捉体4は複数本の線材4aにより形成されたカゴ状体であることを特徴とする塞栓物を捕捉する捕捉体に係るものである。
【0017】
また、請求項6記載の塞栓物を捕捉する捕捉体において、前記カゴ状体は、先端側には捕捉部4Aが形成され、基端側には複数本の線材4aが結束され前記塞栓物2を前記捕捉部4Aに導入する開口部4Bが形成されていることを特徴とする塞栓物を捕捉する捕捉体に係るものである。
【発明の効果】
【0018】
本発明は上述のように構成したから、前述した従来例と異なり、人体の管内を傷つけることなく該管内の塞栓物を確実且つ良好に捕捉することができるなど従来にない作用効果を発揮する画期的な塞栓物を捕捉する捕捉体となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
好適と考える本発明の実施形態を、図面に基づいて本発明の作用を示して簡単に説明する。
【0020】
例えば管内塞栓物除去具31を用いた塞栓物除去治療に際し、捕捉体4を人体の管1内に配するとともに、縮径状態から拡径状態として管1内に架設し(張設し)、この状態で管内塞栓物除去具31で破壊されて体液により管1内を移動する塞栓物2を捕捉する。
【0021】
ところで、本発明は、捕捉体4は、人体の管1に挿通され該捕捉体4を管1内の任意の位置に配するための長尺体3にスライド移動自在に設けられている。
【0022】
従って、捕捉体4を管1内の任意の位置に架設した状態において、何らかの原因により長尺体3が引動若しくは押動されても捕捉体4は移動することはなく、よって、管1内に架設される捕捉体4により管1の内壁が傷付いてしまうことが可及的に防止されることになる。
【実施例】
【0023】
本発明の具体的な実施例について図面に基づいて説明する。
【0024】
本実施例は、人体の管1内に配され該管1内の体液の通過を許容し且つ体液により該管1内を移動する塞栓物2を捕捉する捕捉体4であって、この捕捉体4は、前記管1に挿通され該捕捉体4を該管1内の任意の位置に配するための長尺体3にスライド移動自在に設けられており、更に、この捕捉体4は、縮径状態から拡径状態となって該管1内に架設されることで前記塞栓物2を捕捉するように構成されたものである。尚、本実施例では、人体の血管1に形成されたコレステロールの堆積物(塞栓物2)を捕捉する構成としているが、これに限られるものではない。
【0025】
具体的には、本実施例は、人体の血管1に配設される捕捉体4と、この捕捉体4を血管1の所定位置まで配設するための捕捉体配設具9とから成る。
【0026】
捕捉体4は、図1,2に図示したように適宜な金属製(ステンレス製)の線材4aで構成されており、複数本の線材4aの先端部及び基端部を束ねて内部に空洞部Sを有するカゴ状体に構成されている。従って、この捕捉体4は、血管1内の血液の通過を許容し且つ血液により該血管1内を移動する塞栓物2を捕捉する。尚、線材4aはチタン製でも良いなど本実施例の特性を発揮する素材であれば適宜採用し得るものである。
【0027】
具体的には、捕捉体4を構成する各線材4aは、基端側から先端側にかけて螺旋状(ねじれ状)に癖付けされており、この螺旋状の線材4a同士の先端部及び基端部は筒状部材6により束ねられている。尚、線材4aの全てを螺旋状とせず一部の線材のみ螺旋状とするようにしても良い。
【0028】
この線材4aを螺旋状とする構成から、拡径方向への強い力(架設力)が得られることになる為、血管1内に架設した状態で配設された捕捉体4に血液の流圧が加わっても、当該架設部位から流されずに保持する張力が得られることになる。
【0029】
また、捕捉体4の基端部には、複数本の線材4aが3箇所において結束され、塞栓物2を捕捉体4(捕捉部4A)内に導入する開口部4Bが3箇所形成されている。
【0030】
この捕捉体4に設けられる開口部4Bの数は、3つに限られるものではないが、捕捉体4の強度や塞栓物2を捕捉する際の開口度合を考慮すると3つが最適である。
【0031】
また、本実施例は、図3に図示したように線材4a同士の先端部及び基端部を集束する筒状部材6は、後述する捕捉体配設具9に係る長尺体3にスライド移動自在に被嵌されるものであり、この各筒状部材6の先端部は端部側程径小に形成されている。
【0032】
従って、捕捉体4を長尺体3に設けた際、捕捉体4は筒状部材6を介して長尺体3に対してスライド移動自在となり、この捕捉体4のスライド移動は後述する長尺体3に設けられるスライド阻止手段7により規制される。
【0033】
捕捉体配設具9は、長尺体3とパイプ体8とパイプ支持体10で構成されている。
【0034】
長尺体3は、図1,2に図示したように適宜な金属製の部材(ステンレス)を線状に形成したものであり、その長さは少なくとも先端部に設けられる捕捉体4を血管1の所定位置へ配設し得る長さに設定されている。尚、長尺体3はチタン製でも良いなど本実施例の特性を発揮する素材であれば適宜採用し得るものである。
【0035】
また、長尺体3の先端部位置及び該位置から基端側の所定位置(前記基端部の筒状部材6の内側)には、ストッパー7が設けられている。
【0036】
このストッパー7は、前述した捕捉体4の先端部及び基端部に設けられる筒状部材6の先端側へのスライドを阻止して筒状部材6の抜け止め作用を発揮するスライド阻止手段7であり、基端側のストッパー7は捕捉体4の先端部に設けられる筒状部材6の基端側へのスライドも阻止する。
【0037】
また、この先端側のストッパー7は、長尺体3の先端を若干残した位置に設けられており、このストッパー7から突出する細い長尺体3の先端突出部3aは人体の血管1に挿入する際のガイドとなる。
【0038】
尚、このストッパー7は長尺体3に別体に設けた径大体(例えば被嵌固定したパイプ状のもの)、また、長尺体3に一体に設けた径大体(長尺体3の一部分を膨出形成したもの)、など筒状部材6の移動が阻止される構成であればどのようなものでも良い。
【0039】
パイプ体8は、図1に図示したように適宜な柔軟性を有する合成樹脂製の部材(ポリエチレン)を管状に形成したものであり、前述した長尺体3に被嵌し得る径にして血管1に挿通するに適した径に設定されている。尚、パイプ体8はポリエチレン製に限らず低摩擦係数の材料(例えばシリコン樹脂など)であれば適宜採用し得るものである。
【0040】
また、パイプ体8は、縮径させた捕捉体4に被嵌し得るように構成されている。
【0041】
従って、パイプ体8内にあり縮径状態の捕捉体4は、長尺体3に対してパイプ体8を引動して離脱すると拡径状態となる。
【0042】
パイプ支持体10は、図1に図示したように適宜な合成樹脂製の部材を管状に形成したものであり、前述したパイプ体8に被嵌し得る径に設定されている。
【0043】
このパイプ支持体10は、先端部に縮径状態の捕捉体4を収納したパイプ体8を血管1に挿入する際に該パイプ体8が挿入されるものである。
【0044】
以上の構成からなる本実施例における血管1内に形成された塞栓物2を除去する塞栓物除去治療での使用方法について説明する。
【0045】
まず、捕捉体4を長尺体3の先端部に付設し、この捕捉体4付きの長尺体3にパイプ体8を被嵌して血管1へ挿入する。この捕捉体4を血管1へ配する際の挿入方向は血液が流れる方向に向けて挿入する。
【0046】
続いて、図5に図示したように予め確認されている塞栓物2が形成されている部位よりも下流側の位置にパイプ体8の先端が届いた時点で挿入を止め、図6に図示したように長尺体3を持ってパイプ体8の基端部を引き動すると、パイプ体8に被嵌されていた捕捉体4は露出するとともに縮径状態から拡径状態となる。
【0047】
この状態において、捕捉体4は、血液の通過を許容しつつ血管1の内壁1aに当接している。この際、何らかの原因により不意に長尺体3が引動若しくは押動されたとしても捕捉体4は直ちに移動することはない。
【0048】
続いて、図7に図示したように管内塞栓物除去具31を塞栓物2が形成されている部位まで挿入し、バルーン体31bを膨らませて塞栓物2を破壊すると、図8に図示したようにこの破壊されて内壁1aから剥離された塞栓物2は血液により流され、捕捉体4により捕捉される。
【0049】
また、血管1から捕捉体4を撤去する場合には、長尺体3を押さえてパイプ体8を前方へ押し出すことで再び捕捉体4にパイプ体8を被嵌させた状態としてから引き抜くことになる。
【0050】
本実施例は上述のように構成したから、人体の血管1を傷つけることなく該血管1内の塞栓物2を確実且つ良好に捕捉することができ、しかも、簡易構造故にコスト安にして量産性に秀れることになる。
【0051】
また、本実施例は、長尺体3に捕捉体4のスライド移動を規制するスライド阻止手段7を設けたから、長尺体3から捕捉体4が外れてしまうことを防止することができる(捕捉体4だけを血管1内に残してしまう危険を回避することができる。)。
【0052】
また、本実施例は、捕捉体4は、パイプ体8に被嵌されて縮径状態が保持される構成であり、このパイプ体8の被嵌を解除した際、拡径状態となるように構成されているから、捕捉体4の縮径状態と拡径状態が簡易且つ迅速に得られることになる。
【0053】
また、本実施例は、捕捉体4の端部は先端側程径小に設けられているから、より一層血管1内を傷つけてしまうことを防止することができる。
【0054】
また、本実施例は、捕捉体4は適宜な線材4aをカゴ状体に形成して構成されており、先端側に捕捉部4A形成され、基端側に複数本の線材4aが三本の束に結束されて塞栓物2の通過を許容する3つの開口部4Bが形成されているから、塞栓物2を確実に捕捉体4内に取り込み捕捉することができることになる。
【0055】
尚、本発明は、本実施例に限られるものではなく、各構成要件の具体的構成は適宜設計し得るものである。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】本実施例を示す斜視図である。
【図2】本実施例に係る要部の斜視図である。
【図3】本実施例に係る要部の説明図である。
【図4】本実施例に係る要部の説明図である。
【図5】本実施例の使用状態説明図である。
【図6】本実施例の使用状態説明図である。
【図7】本実施例の使用状態説明図である。
【図8】本実施例の使用状態説明図である。
【符号の説明】
【0057】
1 管
2 塞栓物
3 長尺体
4 捕捉体
4A 捕捉部
4B 開口部
4a 線材
6 筒状部材
7 スライド阻止手段
8 パイプ体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
人体の管内に配され該管内の体液の通過を許容し且つ体液により該管内を移動する塞栓物を捕捉する捕捉体であって、この捕捉体は、前記管に挿通され該捕捉体を該管内の任意の位置に配するための長尺体にスライド移動自在に設けられており、更に、この捕捉体は、縮径状態から拡径状態となって該管内に架設されることで前記塞栓物を捕捉するように構成されていることを特徴とする塞栓物を捕捉する捕捉体。
【請求項2】
請求項1記載の塞栓物を捕捉する捕捉体において、前記捕捉体は、前記長尺体にスライド移動自在に被嵌される一対の筒状部材間に設けられていることを特徴とする塞栓物を捕捉する捕捉体。
【請求項3】
請求項1,2いずれか1項に記載の塞栓物を捕捉する捕捉体において、前記長尺体には該捕捉体のスライド移動を規制するスライド阻止手段が設けられていることを特徴とする塞栓物を捕捉する捕捉体。
【請求項4】
請求項1〜3いずれか1項に記載の塞栓物を捕捉する捕捉体において、前記捕捉体は、パイプ体を被嵌することで縮径状態が保持される構成であり、このパイプ体の被嵌を解除した際、拡径状態となるように構成されていることを特徴とする塞栓物を捕捉する捕捉体。
【請求項5】
請求項1〜4いずれか1項に記載の塞栓物を捕捉する捕捉体において、前記捕捉体の端部は先端側程径小に設けられていることを特徴とする塞栓物を捕捉する捕捉体。
【請求項6】
請求項1〜5いずれか1項に記載の塞栓物を捕捉する捕捉体において、前記捕捉体は複数本の線材により形成されたカゴ状体であることを特徴とする塞栓物を捕捉する捕捉体。
【請求項7】
請求項6記載の塞栓物を捕捉する捕捉体において、前記カゴ状体は、先端側には捕捉部が形成され、基端側には複数本の線材が結束され前記塞栓物を前記捕捉部に導入する開口部が形成されていることを特徴とする塞栓物を捕捉する捕捉体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−93295(P2008−93295A)
【公開日】平成20年4月24日(2008.4.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−280720(P2006−280720)
【出願日】平成18年10月13日(2006.10.13)
【出願人】(000105279)ケイセイ医科工業株式会社 (16)
【Fターム(参考)】