説明

塩ビリサイクルカーペット及びその製造方法

【課題】 リサイクルカーペットのバッキング層に従来よりも高い含有率でカーペット廃材を含有せしめることができる塩ビリサイクルカーペットの製造方法を提供する。
【解決手段】 この発明に係る製造方法は、可塑剤及び塩化ビニル樹脂を混合して塩化ビニル樹脂ペーストゾルを得る工程と、前記塩化ビニル樹脂ペーストゾルに、塩化ビニル樹脂を含有してなるカーペット廃材を粉砕して得られた粒径300μm以下の粉砕物を混合する粉砕物混合工程と、前記粉砕物混合工程を経たペーストゾルに無機充填剤を混合して裏打組成物を得る充填剤添加工程と、前記裏打組成物を表皮材8の裏面に積層一体化する工程とを包含することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、塩化ビニル樹脂を含有したカーペット廃材をバッキング層の構成材料に用いたリサイクルカーペット及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
カーペットの製造の際には裁断端材が多く発生し、また一般家庭やオフィス等から廃棄処分に供されるカーペットの量も膨大なものになる。従来このようなカーペット廃材は、焼却処理されることが多かった。しかるに、塩化ビニル樹脂からなるバッキング剤で裏打ちされたカーペットを焼却処理すると、有害物質が発生しやすいという問題があった。また、近年、地球環境保護の観点から、カーペット廃材を回収してリサイクル利用することが強く要請されている。このような社会的要請に応えるべく、塩化ビニル樹脂を含むカーペット廃材をリサイクル利用して新たなカーペットを製作する技術が開発されている。
【0003】
例えば、カーペット基材の裏面に積層された塩化ビニル樹脂バッキング層中に、塩化ビニル樹脂製のカーペット廃材を粉砕して得られた平均粒度3mm以下の粉砕物を散布により分散含有せしめることによって、塩化ビニル樹脂製のカーペット廃材をリサイクル利用する技術が知られている(特許文献1参照)。
【0004】
また、塩化ビニル樹脂が裏打ちされた廃タイルカーペットの回収品を粉砕した後、ダスト分離装置による風力分離を行うことによって、表面パイル層からなる繊維成分を分離除去した塩化ビニル樹脂粉砕物を回収し、次いで回収した粉砕物を微粉砕、篩選別後、塩化ビニル系樹脂ペーストゾルに0.5〜20重量%の比率で混合し、所定の面上に塗布した後、この面に、基布にパイルをタフトした基材を積層してリサイクルタイルカーペットを製造する技術も公知である(特許文献2参照)。
【0005】
また、塩化ビニル樹脂を裏打ちした廃タイルカーペットの裏打ち層を削り取り、その切削粉末を塩化ビニル系樹脂ペーストゾルに0.5〜20重量%の比率で混合後、塗布ベルトにコーターで塗布した後、基布にパイルをタフトした基材を積層してリサイクルタイルカーペットを得る技術も知られている(特許文献3参照)。
【0006】
上記のような技術を用いれば、塩化ビニル樹脂を含有したカーペット廃材をバッキング層の構成素材の一部に用いたリサイクルカーペットの提供が可能となる。
【特許文献1】特開平4−339645号公報
【特許文献2】特開2004−113384号公報
【特許文献3】特開2004−141434号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記従来技術は、いずれも、リサイクルカーペットのバッキング層に含有せしめ得るカーペット廃材の含有比率は最大でも20重量%が限界であり、バッキング層に混合可能なカーペット廃材の比率は小さかった。このように従来の技術では、カーペット廃材のリサイクル比率は小さく、回収したカーペット廃材のリサイクル利用を十全に図り得るものではなかった。
【0008】
この発明は、かかる技術的背景に鑑みてなされたものであって、リサイクルカーペットのバッキング層に従来よりも高い含有率でカーペット廃材を含有せしめることができる塩ビリサイクルカーペット及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記目的を達成するために、本発明は以下の手段を提供する。
【0010】
[1]可塑剤及び塩化ビニル樹脂を混合して塩化ビニル樹脂ペーストゾルを得る工程と、前記塩化ビニル樹脂ペーストゾルに、塩化ビニル樹脂を含有してなるカーペット廃材を粉砕して得られた粒径300μm以下の粉砕物を混合する粉砕物混合工程と、前記粉砕物混合工程を経たペーストゾルに無機充填剤を混合して裏打組成物を得る充填剤添加工程と、前記裏打組成物を表皮材の裏面に積層一体化する工程とを包含することを特徴とする塩ビリサイクルカーペットの製造方法。
【0011】
[2]可塑剤、滑剤及び塩化ビニル樹脂を混合して塩化ビニル樹脂ペーストゾルを得る工程と、前記塩化ビニル樹脂ペーストゾルに、塩化ビニル樹脂を含有してなるカーペット廃材を粉砕して得られた粒径300μm以下の粉砕物を混合する粉砕物混合工程と、前記粉砕物混合工程を経たペーストゾルに無機充填剤を混合して裏打組成物を得る充填剤添加工程と、前記裏打組成物を表皮材の裏面に積層一体化する工程とを包含することを特徴とする塩ビリサイクルカーペットの製造方法。
【0012】
[3]前記裏打組成物における粉砕物の含有比率が25〜60質量%である前項1または2に記載の塩ビリサイクルカーペットの製造方法。
【0013】
[4]前記粉砕物の粒径が10〜200μmである前項1〜3のいずれか1項に記載の塩ビリサイクルカーペットの製造方法。
【0014】
[5]前記粉砕物のアスペクト比が1〜1.5である前項1〜4のいずれか1項に記載の塩ビリサイクルカーペットの製造方法。
【0015】
[6]前記粉砕物のアスペクト比が1〜1.3である前項1〜4のいずれか1項に記載の塩ビリサイクルカーペットの製造方法。
【0016】
[7]前記裏打組成物における滑剤の含有比率が1〜5質量%である前項2〜6のいずれか1項に記載の塩ビリサイクルカーペットの製造方法。
【0017】
[8]前記滑剤として、炭素数7〜24のオレフィン成分及びポリオキシエチレンポリオキシプロピレンデシルエーテルを用いる前項2〜7のいずれか1項に記載の塩ビリサイクルカーペットの製造方法。
【0018】
[9]前記炭素数7〜24のオレフィン成分が、1−ヘキサデセン及び1−オクタデセンからなるオレフィン成分である前項8に記載の塩ビリサイクルカーペットの製造方法。
【0019】
[10]前記滑剤の併用質量比が、オレフィン成分/ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンデシルエーテル=60/40〜75/25である前項8または9に記載の塩ビリサイクルカーペットの製造方法。
【0020】
[11]前記裏打組成物を、連続走行する離型性ベルト上に塗布してバッキング層を形成し、該バッキング層の未硬化表面に表皮材の裏面を圧着することによって、前記裏打組成物を表皮材の裏面に積層一体化する前項1〜10のいずれか1項に記載の塩ビリサイクルカーペットの製造方法。
【0021】
[12]前記裏打組成物を、連続走行する離型性ベルト上に塗布してバッキング下層を形成し、次いで該下層の未硬化表面に、塩化ビニル樹脂を含有してなるカーペット廃材を粉砕して得られた平均粒径3mm以下の粒状物を散布した後、さらに前記裏打組成物を塗布してバッキング上層を形成し、該上層上に表皮材の裏面を圧着することによって、前記裏打組成物を表皮材の裏面に積層一体化する前項1〜10のいずれか1項に記載の塩ビリサイクルカーペットの製造方法。
【0022】
[13]基布の上面にパイルが植設されると共に該基布の下面に塩化ビニル樹脂組成物からなるバッキング層が形成されてなるカーペットにおいて、前記バッキング層を構成する塩化ビニル樹脂組成物は、塩化ビニル樹脂を含有してなるカーペット廃材を粉砕して得られた粒径300μm以下の粉砕物を25〜60質量%含有した組成物からなることを特徴とする塩ビリサイクルカーペット。
【発明の効果】
【0023】
[1][2]の発明では、塩化ビニル樹脂を含有してなるカーペット廃材の粉砕物として粒径300μm以下のものを用いているので、リサイクルカーペットのバッキング層に従来よりも高い含有率でカーペット廃材を含有せしめることができる。また、先に粉砕物を塩化ビニル樹脂ペーストゾルに混合した後に、無機充填剤を混合するので、裏打組成物の粘度増大を抑制することができ、これにより裏打組成物の塗布性が向上する。
【0024】
また[2]の発明では、滑剤を含有せしめているので、裏打組成物の粘度増大を十分に抑制することができる。
【0025】
[3]の発明では、カーペット廃材のリサイクル比率が大きいので、地球環境保護に十分に貢献できる。
【0026】
[4]の発明では、粉砕物の粒径が10〜200μmであるので、リサイクルカーペットのバッキング層にさらに高い含有率でカーペット廃材を含有せしめることができる。
【0027】
[5]の発明では、粉砕物のアスペクト比が1〜1.5であるから、粉砕物の比表面積が小さくなり、これにより可塑剤吸収による粘度上昇を効果的に抑制できる。
【0028】
[6]の発明では、粉砕物のアスペクト比が1〜1.3であるから、粉砕物の比表面積がさらに小さくなり、これにより可塑剤吸収による粘度上昇をより効果的に抑制することができる。
【0029】
[7]の発明では、裏打組成物における滑剤の含有比率が1〜5質量%であるから、裏打組成物の粘度増大を抑制できると共に、滑剤のブリード現象も効果的に防止できる。
【0030】
[8]の発明では、滑剤として、炭素数7〜24のオレフィン成分及びポリオキシエチレンポリオキシプロピレンデシルエーテルを用いるので、裏打組成物の粘度増大を十分に抑制できる。
【0031】
[9]の発明では、炭素数7〜24のオレフィン成分が、1−ヘキサデセン及び1−オクタデセンからなるオレフィン成分であるから、裏打組成物の粘度増大をより十分に抑制できる。
【0032】
[10]の発明では、滑剤の併用質量比が、オレフィン成分/ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンデシルエーテル=60/40〜75/25であるので、裏打組成物の液状態を良好にすることができる(沈降物がなく、滑剤の分離傾向もない)。
【0033】
[11]の発明では、塩ビリサイクルカーペットを生産効率良く製造できる。
【0034】
[12]の発明では、塩化ビニル樹脂を含有してなるカーペット廃材を粉砕して得られた平均粒径3mm以下の粒状物もリサイクル利用できるので、カーペット廃材のリサイクル比率をさらに向上させることができる。
【0035】
[13]の発明では、バッキング層を構成する塩化ビニル樹脂組成物は、塩化ビニル樹脂を含有してなるカーペット廃材を粉砕して得られた粒径300μm以下の粉砕物を含有しているから、リサイクルカーペットのバッキング層に従来よりも高い含有率である25〜60質量%でカーペット廃材を含有せしめることができる。このようにカーペット廃材のリサイクル比率が大きいので、地球環境保護に十分に貢献できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0036】
この発明に係る塩ビ(塩化ビニル樹脂)リサイクルカーペットの製造方法について説明する。まず、可塑剤及び塩化ビニル樹脂(バージンの塩化ビニル樹脂)を混合して塩化ビニル樹脂ペーストゾルを得る。滑剤も同時に混合せしめるのが好ましい。この時、可塑剤、滑剤、塩化ビニル樹脂の混合順序は特に限定されない。なお、前記バージンの塩化ビニル樹脂としては、粒径1〜10μmのものを用いるのが好ましい。
【0037】
前記可塑剤としては、特に限定されないが、例えばジオクチルフタレート(DOP)、ジブチルフタレート、ジヘキシルフタレート等が挙げられる。これらの中でも、DOPを用いるのが、ベースレジン(塩化ビニル樹脂)粒子界面をより均一に膨潤ゲル化せしめ得る点で、好ましい。
【0038】
次に、前記塩化ビニル樹脂ペーストゾルに、塩化ビニル樹脂を含有してなるカーペット廃材を粉砕して得られた粒径300μm以下の粉砕物を混合する(粉砕物混合工程)。次いで、前記粉砕物混合工程を経たペーストゾルに無機充填剤を混合して裏打組成物を得る(充填剤添加工程)。そして、前記裏打組成物を表皮材の裏面に積層一体化することによって、この発明の塩ビリサイクルカーペット(1)が得られる。
【0039】
上記のように、本製造方法では、塩化ビニル樹脂を含有してなるカーペット廃材の粉砕物として粒径300μm以下のものを用いているので、リサイクルカーペットのバッキング層(4)に従来よりも高い含有率(例えば25〜60質量%)でカーペット廃材を含有せしめることができる。また、先に粉砕物を塩化ビニル樹脂ペーストゾルに混合した後に、無機充填剤を混合するので、裏打組成物の粘度増大を抑制することができ、これにより裏打組成物の塗布性を向上させることができる。
【0040】
前記塩化ビニル樹脂を含有してなるカーペット廃材としては、特に限定されるものではないが、例えばカーペット製造時の裁断端材、一般家庭やオフィス等から出た廃棄処分に供されるカーペットなどが挙げられ、中でも塩化ビニル樹脂を含有してなるバッキング材が好適に用いられる。前記カーペット廃材としては、一部にパイル、不織布等の繊維を含有したものであっても良い。
【0041】
前記塩化ビニル樹脂を含有してなるカーペット廃材の粉砕物としては、粒径が300μm以下の粉砕物を用いる。粒径が300μmを超えると、特に従来よりも高い含有率でカーペット廃材を含有せしめた場合に、得られる裏打組成物の流動性が低下するし、沈降物を生じるので、使用できない。中でも、粒径が10〜200μmの粉砕物を用いるのが好ましく、この場合にはリサイクルカーペットのバッキング層にさらに高い含有率でカーペット廃材を含有せしめることができる利点がある。なお、前記「粒径」とは、粉砕物が異形である場合には、粉砕物の長径を意味するものである。
【0042】
また、前記塩化ビニル樹脂を含有してなるカーペット廃材の粉砕物としては、アスペクト比が1〜1.5であるものを用いるのが好ましい。アスペクト比が1〜1.5であることで粉砕物の比表面積が小さくなり、これにより可塑剤吸収による裏打組成物の粘度上昇を効果的に抑制することができる。中でも、アスペクト比が1〜1.3であるものを用いるのが特に好ましい。なお、前記「アスペクト比」とは、粉砕物の長径を粉砕物の短径で割り算して得られた値である。
【0043】
前記塩化ビニル樹脂を含有してなるカーペット廃材の粉砕物を得るための粉砕手法は、特に限定されるものではないが、例えば塩化ビニル樹脂からなるバッキング層をカーペット廃材から剥離し、この剥離した廃材を粉砕機を用いて粉砕し、得られた粉砕物を風力振動分級等で樹脂分と繊維分に分離し(例えば特開2003−47878号公報に記載の粉砕手法を採用できる)、この分離された樹脂分をさらに微粉化(特願2004−310179号参照)する手法などが挙げられる。
【0044】
前記無機充填剤としては、特に限定されるものではないが、例えば炭酸カルシウム、酸化カルシウム、硫酸バリウム、炭酸バリウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、タルク、カオリンクレー等が挙げられる。
【0045】
前記滑剤としては、特に限定されるものではないが、例えば炭素数7〜24のオレフィン成分、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンデシルエーテル等が挙げられる。これらの中でも、炭素数7〜24のオレフィン成分及びポリオキシエチレンポリオキシプロピレンデシルエーテルを用いるのが好ましく、この場合には裏打組成物の粘度増大を十分に抑制することができる。また、前記炭素数7〜24のオレフィン成分としては、特に限定されないものの、1−ヘキサデセン及び1−オクタデセンからなるオレフィン成分を用いるのが望ましい。
【0046】
また、前記滑剤の併用質量比は、オレフィン成分/ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンデシルエーテル=60/40〜75/25の範囲であるのが好ましい。このような範囲に設定することで、前記裏打組成物の液状態を良好にすることができる(例えば、沈降物がなく、滑剤の分離もないものとできる)。
【0047】
前記裏打組成物における滑剤の含有比率は1〜5質量%であるのが好ましい。1質量%以上であることで裏打組成物の粘度増大を抑制することができると共に、5質量%以下であることで滑剤のブリード現象も効果的に防止できる。なお、前記裏打組成物には、安定剤、顔料等の各種添加剤を含有せしめても良い。
【0048】
次に、前記裏打組成物を表皮材の裏面に積層一体化する方法の一例を図3に示す。まず、連続走行する無端離型性ベルト(30)上に前記裏打組成物を供給管(31)から塗布した後、コーター(32)で一定厚さに成形する。次いで、この一定厚さに成形された裏打組成物(バッキング層)の未硬化表面の上に、基布(2)の上面にパイル(3)が植設されてなる表皮材(8)の裏面を重ね合わせてこれらを上下一対の加圧ロール(21)(22)間に挿通して圧着する。こうして前記裏打組成物を表皮材(8)の裏面に積層一体化する。
【0049】
しかして、得られた積層体を図示しない熱処理炉に導いて加熱して裏打組成物をゲル化せしめてバッキング層(4)を形成せしめることによって、図1に示す塩ビリサイクルカーペット(1)が得られる。即ち、この塩ビリサイクルカーペット(1)は、基布(2)の上面にパイル(3)が植設されてなる表皮材(8)の裏面に塩化ビニル樹脂組成物からなるバッキング層(4)が形成されてなり、前記バッキング層(4)を構成する塩化ビニル樹脂組成物は、塩化ビニル樹脂を含有してなるカーペット廃材を粉砕して得られた粒径300μm以下の粉砕物を含有した組成物からなる。
【0050】
次に、図4に、前記裏打組成物を表皮材の裏面に積層一体化する方法の他の例を示す。まず、連続走行する無端離型性ベルト(30)上に前記裏打組成物を第1供給管(41)から塗布した後、第1コーター(42)で一定厚さに成形する。次いで、この一定厚さに成形された裏打組成物(バッキング下層)の未硬化表面の上に、塩化ビニル樹脂を含有してなるカーペット廃材を粉砕して得られた平均粒径3mm以下の粒状物(10)を散布装置(45)から散布した後、押さえロール(46)で押さえ、さらに第2供給管(43)から前記裏打組成物を塗布し、第2コーター(44)で一定厚さに成形する。この一定厚さに成形された裏打組成物(バッキング上層)の未硬化表面の上に、基布(2)の上面にパイル(3)が植設されてなる表皮材(8)の裏面を重ね合わせてこれらを上下一対の加圧ロール(21)(22)間に挿通して圧着する。こうして前記裏打組成物を表皮材(8)の裏面に積層一体化する。
【0051】
しかして、得られた積層体を図示しない熱処理炉に導いて加熱して裏打組成物をゲル化せしめてバッキング下層(4B)及びバッキング上層(4A)を形成せしめることによって、図2に示す塩ビリサイクルカーペット(1)が得られる。即ち、この塩ビリサイクルカーペット(1)は、基布(2)の上面にパイル(3)が植設されてなる表皮材(8)の裏面に塩化ビニル樹脂組成物からなるバッキング層(4)が形成されてなり、前記バッキング層(4)を構成する塩化ビニル樹脂組成物は、塩化ビニル樹脂を含有してなるカーペット廃材を粉砕して得られた粒径300μm以下の粉砕物を含有した組成物からなる。前記バッキング層(4)は、塩化ビニル樹脂組成物からなるバッキング下層(4B)及び塩化ビニル樹脂組成物からなるバッキング上層(4B)並びに前記バッキング下層(4B)に埋設された平均粒径3mm以下の粒状物(10)…からなる。この粒状物(10)の樹脂分は、加熱ゲル化によって溶融してバッキング下層(4B)の樹脂と一体化する(単一層に形成されていても良い)。この図2に示す塩ビリサイクルカーペット(1)によれば、塩化ビニル樹脂を含有してなるカーペット廃材を粉砕して得られた平均粒径3mm以下の粒状物(10)…もリサイクル利用できるので、カーペット廃材のリサイクル比率をさらに向上させることができる利点がある。
【0052】
また、この発明によれば、バッキング層(4)を構成する塩化ビニル樹脂裏打組成物は、塩化ビニル樹脂を含有してなるカーペット廃材を粉砕して得られた粒径300μm以下の粉砕物を含有しているから、リサイクルカーペットのバッキング層(4)に従来よりも高い含有率である25〜60質量%でカーペット廃材を含有せしめることが可能となる。このようにカーペット廃材のリサイクル比率を大きくできるので、地球環境保護に十分に貢献できる。
【0053】
なお、前記ゲル化のための加熱温度は150〜190℃に設定するのが好ましく、加熱時間は通常5〜15分で十分である。
【0054】
この発明において、前記基布(2)としては、特に限定されるものではないが、例えばスパンボンド不織布、ニードルパンチ不織布、織布等が挙げられる。また、前記基布(2)の素材としては、特に限定されるものではないが、例えばポリエステル系繊維、ポリアミド系繊維、ポリオレフィン系繊維等の熱可塑性繊維、またこれら各繊維の複合化繊維、或いはアセテート等の半合成繊維、レーヨン等の再生繊維、麻、綿などの天然繊維、或いはまたこれら繊維を混綿したもの等が挙げられる。
【0055】
また、前記パイル(3)の素材は、特に限定されるものではないが、例えばポリエステル繊維、ナイロン繊維、ポリプロピレン繊維、アクリル繊維、レーヨン繊維等の繊維からなるもの等が好適に用いられ、その他、麻、綿、羊毛等の天然繊維からなるもの等が挙げられる。前記パイル(3)の形態も特に限定されず、例えばカットパイル、ループパイル等が挙げられる。
【0056】
また、寸法安定性を付与するために、ガラス基布、ポリエステル基布等を表皮材(8)とバッキング層(4)の間に挿入配置せしめても良い。なお、図4に示す構成を採用する場合には、ガラス基布、ポリエステル基布等を第1コーター(42)の下に挿通せしめることによってこれら基布を粒状物(10)の下に積層するのが好ましい。
【0057】
この発明に係る塩ビリサイクルカーペット(1)は、特に限定されるものではないが、例えばタイルカーペット、床敷物等として用いられるが、中でもタイルカーペットとして好適である。
【実施例】
【0058】
次に、この発明の具体的実施例について説明するが、この発明はこれら実施例のものに特に限定されるものではない。
【0059】
<実施例1>
使用済みタイルカーペット(基布の上面にパイルが植設されてなる表皮材の裏面に塩化ビニル樹脂組成物からなるバッキング層が積層されたもの)からバッキング層(カーペット廃材)を剥がし取り、該バッキング層を粉砕機を用いて粉砕し、得られた粉砕物を風力分級で樹脂分と繊維分に分離した。分離して得られた樹脂分からなる粉砕物の平均粒径は250μmであり、そのアスペクト比は1.3であった。
【0060】
次に、DOP94質量部にカーボンブラック(顔料)3.2質量部、Ba/Zn系安定剤0.1質量部を配合して十分に攪拌混合した後、さらに滑剤Y(1−ヘキサデセン約56質量%及び1−オクタデセン約43質量%含有)を5.2質量部、滑剤Z(ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンデシルエーテル)を2.5質量部配合して十分に攪拌混合し、次いで平均粒径5μmの塩化ビニル樹脂(バージンの塩化ビニル樹脂)を100質量部配合して十分に攪拌混合することによって、塩化ビニル樹脂ペーストゾルを得た。この塩化ビニル樹脂ペーストゾルに、前記粉砕物(樹脂分)を188質量部配合して十分に攪拌混合した後、さらに炭酸カルシウム(充填剤)を195質量部配合して十分に攪拌混合することによって、裏打組成物を得た。
【0061】
次に、図3に示すように、連続走行する無端離型性ベルト(ベルトの表面にポリテトラフルオロエチレン層がコートされたもの)(30)上に前記裏打組成物を供給管(31)から塗布した後、コーター(32)で一定厚さに成形し、次いでこの一定厚さに成形された裏打組成物(バッキング層)の未硬化表面の上に、目付120g/m2のPET(ポリエチレンテレフタレート)繊維製スパンボンド不織布からなる基布(2)の上面にナイロン糸からなる目付450g/m2のパイル(3)がタフトされてなる表皮材(8)の裏面を重ね合わせてこれらを上下一対の加圧ロール(21)(22)間に挿通して圧着せしめた後、裏打組成物を160℃で加熱してゲル化せしめることによって、図1に示す構成からなる塩ビリサイクルカーペット(1)を得た。
【0062】
<実施例2>
粉砕物(樹脂分)として平均粒径150μm(アスペクト比1.2)のものを用いた以外は、実施例1と同様にして、塩ビリサイクルカーペット(1)を得た。
【0063】
<実施例3>
粉砕物(樹脂分)として平均粒径100μm(アスペクト比1.1)のものを用いた以外は、実施例1と同様にして、塩ビリサイクルカーペット(1)を得た。
【0064】
<実施例4、5>
滑剤の配合量を表1に示すとおりとした以外は、実施例1と同様にして、塩ビリサイクルカーペット(1)を得た。
【0065】
<実施例6>
滑剤として滑剤Y(1−ヘキサデセン約56質量%及び1−オクタデセン約43質量%含有)のみ(表2参照)を用いるものとした以外は、実施例1と同様にして、塩ビリサイクルカーペット(1)を得た。
【0066】
<実施例7>
滑剤として滑剤Z(ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンデシルエーテル)のみ(表2参照)を用いるものとした以外は、実施例1と同様にして、塩ビリサイクルカーペット(1)を得た。
【0067】
<実施例8>
充填剤として、炭酸カルシウムに代えて、酸化カルシウムを用いるものとした(表2参照)以外は、実施例1と同様にして、塩ビリサイクルカーペット(1)を得た。
【0068】
<実施例9>
充填剤として、炭酸カルシウムに代えて、硫酸バリウムを用いるものとした(表2参照)以外は、実施例1と同様にして、塩ビリサイクルカーペット(1)を得た。
【0069】
<実施例10>
裏打組成物中の粉砕物の含有比率が43.0質量%となるように配合した(表2参照)以外は、実施例1と同様にして、塩ビリサイクルカーペット(1)を得た。
【0070】
<比較例1>
粉砕物(樹脂分)として平均粒径320μm(アスペクト比1.3)のものを用いた以外は、実施例1と同様にして、塩ビリサイクルカーペットを得た。
【0071】
<比較例2>
DOP94質量部にカーボンブラック(顔料)3.2質量部、Ba/Zn系安定剤0.1質量部を配合して十分に攪拌混合した後、さらに滑剤Y(1−ヘキサデセン約56質量%及び1−オクタデセン約43質量%含有)を5.2質量部、滑剤Z(ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンデシルエーテル)を2.5質量部配合して十分に攪拌混合し、次いで実施例3と同じ粉砕物(樹脂分)を188質量部配合して十分に攪拌混合した後、平均粒径5μmの塩化ビニル樹脂(バージンの塩化ビニル樹脂)を100質量部配合して十分に攪拌混合することによって、塩化ビニル樹脂ペーストゾルを得た。この塩化ビニル樹脂ペーストゾルに、炭酸カルシウム(充填剤)を195質量部配合して十分に攪拌混合することによって、裏打組成物を得た。この裏打組成物を用いて、実施例1と同様にして、塩ビリサイクルカーペットを得た。
【0072】
<比較例3>
DOP94質量部にカーボンブラック(顔料)3.2質量部、Ba/Zn系安定剤0.1質量部を配合して十分に攪拌混合した後、さらに滑剤Y(1−ヘキサデセン約56質量%及び1−オクタデセン約43質量%含有)を5.2質量部、滑剤Z(ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンデシルエーテル)を2.5質量部配合して十分に攪拌混合し、次いで平均粒径5μmの塩化ビニル樹脂(バージンの塩化ビニル樹脂)を100質量部配合して十分に攪拌混合することによって、塩化ビニル樹脂ペーストゾルを得た。この塩化ビニル樹脂ペーストゾルに、炭酸カルシウム(充填剤)を195質量部配合して十分に攪拌混合した後、さらに実施例3と同じ粉砕物(樹脂分)を188質量部配合して十分に攪拌混合することによって、裏打組成物を得た。この裏打組成物を用いて、実施例1と同様にして、塩ビリサイクルカーペットを得た。
【0073】
<比較例4>
DOP94質量部にカーボンブラック(顔料)3.2質量部、Ba/Zn系安定剤0.1質量部を配合して十分に攪拌混合した後、さらに滑剤Y(1−ヘキサデセン約56質量%及び1−オクタデセン約43質量%含有)を5.2質量部、滑剤Z(ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンデシルエーテル)を2.5質量部配合して十分に攪拌混合し、次いで平均粒径5μmの塩化ビニル樹脂(バージンの塩化ビニル樹脂)100質量部及び実施例3と同じ粉砕物(樹脂分)188質量部を同時に配合して十分に攪拌混合することによって、塩化ビニル樹脂ペーストゾルを得た。この塩化ビニル樹脂ペーストゾルに炭酸カルシウム(充填剤)を195質量部配合して十分に攪拌混合することによって、裏打組成物を得た。この裏打組成物を用いて、実施例1と同様にして、塩ビリサイクルカーペットを得た。
【0074】
【表1】

【0075】
【表2】

【0076】
【表3】

【0077】
なお、表中の粘度の測定は、BL型粘度計(4号ローター、6rpm、1分後に測定)を用いて行った。
【0078】
上記のようにして得られた各裏打組成物の液状態の評価を表1〜3に示す。実施例1〜5、8〜10では、リサイクルカーペットのバッキング層に高い含有率でカーペット廃材を含有せしめているにも関わらず、裏打組成物の液状態は良好であり(沈降物がなく、滑剤の分離もない)、高品質のリサイクルカーペットを製造することができた。
【0079】
また、実施例6では、滑剤Yの一部が分離していたが、裏打組成物の液状態は比較的良好であり、リサイクルカーペットのバッキング層に高い含有率でカーペット廃材を含有せしめているにも関わらず、比較的高品質のリサイクルカーペットが得られた。また、実施例7では、裏打組成物に沈降物が僅かに観察されたものの、裏打組成物の液状態は比較的良好であり、リサイクルカーペットのバッキング層に高い含有率でカーペット廃材を含有せしめているにも関わらず、比較的高品質のリサイクルカーペットが得られた。
【0080】
これに対し、粉砕物の平均粒径が320μmであった比較例1では、裏打組成物の液状態は砂泥状であり状態不良であった。また、可塑剤に、粉砕物、バージンの塩化ビニル樹脂、炭酸カルシウムをこの順序で配合した比較例2では、裏打組成物は分散不良状態となり、裏打組成物を良好状態に裏打ちすることができなかった。また、可塑剤に、バージンの塩化ビニル樹脂、炭酸カルシウム、粉砕物をこの順序で配合した比較例3では、裏打組成物は分散不良状態となり、裏打組成物を良好状態に裏打ちすることができなかった。また、可塑剤に、バージンの塩化ビニル樹脂及び粉砕物を同時に混合した後、さらに炭酸カルシウムを配合した比較例4では、裏打組成物の流動性が悪く、裏打組成物を良好状態に裏打ちすることができなかった。
【図面の簡単な説明】
【0081】
【図1】この発明に係る塩ビリサイクルカーペットの一実施形態を示す断面図である。
【図2】この発明に係る塩ビリサイクルカーペットの他の実施形態を示す断面図である。
【図3】製造方法の一例を示す概略側面図である。
【図4】製造方法の他の例を示す概略側面図である。
【符号の説明】
【0082】
1…塩ビリサイクルカーペット
2…基布
3…パイル
4…バッキング層
4A…バッキング上層
4B…バッキング下層
8…表皮材
10…粒状物
30…離型性ベルト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
可塑剤及び塩化ビニル樹脂を混合して塩化ビニル樹脂ペーストゾルを得る工程と、
前記塩化ビニル樹脂ペーストゾルに、塩化ビニル樹脂を含有してなるカーペット廃材を粉砕して得られた粒径300μm以下の粉砕物を混合する粉砕物混合工程と、
前記粉砕物混合工程を経たペーストゾルに無機充填剤を混合して裏打組成物を得る充填剤添加工程と、
前記裏打組成物を表皮材の裏面に積層一体化する工程とを包含することを特徴とする塩ビリサイクルカーペットの製造方法。
【請求項2】
可塑剤、滑剤及び塩化ビニル樹脂を混合して塩化ビニル樹脂ペーストゾルを得る工程と、
前記塩化ビニル樹脂ペーストゾルに、塩化ビニル樹脂を含有してなるカーペット廃材を粉砕して得られた粒径300μm以下の粉砕物を混合する粉砕物混合工程と、
前記粉砕物混合工程を経たペーストゾルに無機充填剤を混合して裏打組成物を得る充填剤添加工程と、
前記裏打組成物を表皮材の裏面に積層一体化する工程とを包含することを特徴とする塩ビリサイクルカーペットの製造方法。
【請求項3】
前記裏打組成物における粉砕物の含有比率が25〜60質量%である請求項1または2に記載の塩ビリサイクルカーペットの製造方法。
【請求項4】
前記粉砕物の粒径が10〜200μmである請求項1〜3のいずれか1項に記載の塩ビリサイクルカーペットの製造方法。
【請求項5】
前記粉砕物のアスペクト比が1〜1.5である請求項1〜4のいずれか1項に記載の塩ビリサイクルカーペットの製造方法。
【請求項6】
前記粉砕物のアスペクト比が1〜1.3である請求項1〜4のいずれか1項に記載の塩ビリサイクルカーペットの製造方法。
【請求項7】
前記裏打組成物における滑剤の含有比率が1〜5質量%である請求項2〜6のいずれか1項に記載の塩ビリサイクルカーペットの製造方法。
【請求項8】
前記滑剤として、炭素数7〜24のオレフィン成分及びポリオキシエチレンポリオキシプロピレンデシルエーテルを用いる請求項2〜7のいずれか1項に記載の塩ビリサイクルカーペットの製造方法。
【請求項9】
前記炭素数7〜24のオレフィン成分が、1−ヘキサデセン及び1−オクタデセンからなるオレフィン成分である請求項8に記載の塩ビリサイクルカーペットの製造方法。
【請求項10】
前記滑剤の併用質量比が、オレフィン成分/ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンデシルエーテル=60/40〜75/25である請求項8または9に記載の塩ビリサイクルカーペットの製造方法。
【請求項11】
前記裏打組成物を、連続走行する離型性ベルト上に塗布してバッキング層を形成し、該バッキング層の未硬化表面に表皮材の裏面を圧着することによって、前記裏打組成物を表皮材の裏面に積層一体化する請求項1〜10のいずれか1項に記載の塩ビリサイクルカーペットの製造方法。
【請求項12】
前記裏打組成物を、連続走行する離型性ベルト上に塗布してバッキング下層を形成し、次いで該下層の未硬化表面に、塩化ビニル樹脂を含有してなるカーペット廃材を粉砕して得られた平均粒径3mm以下の粒状物を散布した後、さらに前記裏打組成物を塗布してバッキング上層を形成し、該上層上に表皮材の裏面を圧着することによって、前記裏打組成物を表皮材の裏面に積層一体化する請求項1〜10のいずれか1項に記載の塩ビリサイクルカーペットの製造方法。
【請求項13】
基布の上面にパイルが植設されると共に該基布の下面に塩化ビニル樹脂組成物からなるバッキング層が形成されてなるカーペットにおいて、
前記バッキング層を構成する塩化ビニル樹脂組成物は、塩化ビニル樹脂を含有してなるカーペット廃材を粉砕して得られた粒径300μm以下の粉砕物を25〜60質量%含有した組成物からなることを特徴とする塩ビリサイクルカーペット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−326152(P2006−326152A)
【公開日】平成18年12月7日(2006.12.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−157020(P2005−157020)
【出願日】平成17年5月30日(2005.5.30)
【出願人】(390014487)住江織物株式会社 (294)
【出願人】(000002129)住友商事株式会社 (42)
【出願人】(503471695)リファインバース株式会社 (4)
【Fターム(参考)】