説明

塩化ビニル系樹脂組成物

【課題】安価であり、更に成形体の機械的強度物性を高めることができる塩化ビニル系樹脂組成物を提供する。
【解決手段】本発明に係る塩化ビニル系樹脂組成物は、塩化ビニル系樹脂100重量部と、23℃で液体である液体エポキシ樹脂1重量部以上、30重量部以下とを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、安価であり、かつ成形体の機械的強度物性を高めることができる塩化ビニル系樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
塩化ビニル系樹脂は、比較的優れた機械的強度物性を有し、かつ、他の樹脂に比べて安価である。このため、従来、塩化ビニル系樹脂を用いた成形体は、広い分野で用いられている。
【0003】
上記成形体を得るための塩化ビニル系樹脂組成物の一例として、下記の特許文献1には、塩化ビニル系樹脂100重量部と、粒径3μm以下の炭酸カルシウム1〜20重量部とを含む塩化ビニル系樹脂組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−26686号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の塩化ビニル系樹脂を用いた成形体では、機械的強度物性に比較的優れているものの、機械的強度物性の更なる向上が求められている。
【0006】
また、特許文献1に記載のように、成形体の体積の増大(かさ増し)を目的として、増量剤として炭酸カルシウムを塩化ビニル系樹脂に添加した場合には、機械的強度物性が低くなるという問題がある。
【0007】
本発明は、安価であり、更に成形体の機械的強度物性を高めることができる塩化ビニル系樹脂組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の広い局面によれば、塩化ビニル系樹脂100重量部と、23℃で液体である液体エポキシ樹脂1重量部以上、30重量部以下とを含む、塩化ビニル系樹脂組成物が提供される。
【0009】
本発明に係る塩化ビニル系樹脂組成物のある特定の局面では、充填材がさらに含まれている。
【0010】
本発明に係る塩化ビニル系樹脂組成物の他の特定の局面では、上記充填材は炭酸カルシウムである。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る塩化ビニル系樹脂組成物は、塩化ビニル系樹脂100重量部と、23℃で液体である液体エポキシ樹脂1重量部以上、30重量部以下とを含むので、安価であり、更に成形体の機械的強度物性を高めることができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0013】
本発明に係る塩化ビニル系樹脂組成物は、塩化ビニル系樹脂100重量部と、23℃で液体である液体エポキシ樹脂1重量部以上、30重量部以下とを含む。
【0014】
上記組成を有する塩化ビニル系樹脂組成物は、安価である。また、本発明に係る塩化ビニル系樹脂組成物における上記組成の採用により、成形体の機械的強度物性を高めることができる。これは、塩化ビニル系樹脂組成物を成形した成形体において、液体エポキシ樹脂が内部の隙間に入り込み、塩化ビニル系樹脂の主鎖の動きを抑制するためであると考えられる。
【0015】
上記塩化ビニル系樹脂としては、例えば、塩化ビニルモノマーの単独重合体、塩化ビニルモノマーと塩化ビニルと共重合可能なビニルモノマーとの共重合体等が挙げられる。該共重合体は、50重量%以上の塩化ビニルモノマーと50重量%以下の塩化ビニルと共重合可能なビニルモノマーとの共重合体であることが好ましい。
【0016】
上記塩化ビニルモノマーと共重合可能なビニルモノマーとしては特に限定されず、例えば、酢酸ビニル、アクリロニトリル、塩化ビニリデン、エチレン、ビニルエーテル、マレイン酸、無水マレイン酸、アクリル酸エステル、フッ化ビニル及びマレイミド等が挙げられる。上記ビニルモノマーは、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0017】
上記液体エポキシ樹脂は、少なくとも1個のエポキシ基を有する有機化合物をいう。上記液体エポキシ樹脂としては、例えばビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールAD型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂及びクレゾールノボラック型エポキシ樹脂等が挙げられる。上記液体エポキシ樹脂は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。上記エポキシ樹脂の分子量は1000未満であることが望ましい。上記エポキシ樹脂の分子量は500以下であってもよい。分子量が大きくなると、エポキシ樹脂が固体になるか又は粘度が高くなるので、成形時の流動性が悪化する。この結果、成形体内に均一に分散できず所望の効果を得ることが困難になる。上記エポキシ樹脂の分子量が小さいと、成形体の機械的強度物性がより一層高くなる。
【0018】
上記塩化ビニル系樹脂100重量部に対して、上記液体エポキシ樹脂の含有量は1重量部以上、30重量部以下である。上記液体エポキシ樹脂の含有量が1重量部以下であると、得られる成形体中の隙間に入り込む液体エポキシ樹脂の量が少なくなることなどから、成形体の機械的強度物性が低くなる。上記液体エポキシ樹脂の含有量が30重量部を超えても、機械的強度物性の向上効果を得るのに過剰となることがあり、更に上記液体エポキシ樹脂の含有量がかなり多くなると塩化ビニル系樹脂の含有量がかなり少なくなる結果、成形体の機械的強度物性が低くなる傾向がある。成形体の機械的強度物性をより一層効果的に高める観点からは、上記塩化ビニル系樹脂100重量部に対する上記液体エポキシ樹脂の含有量は、好ましくは20重量部以下である。
【0019】
成形体の機械的強度物性を効果的に高め、かつ成形体の体積を増大させ、成形体のコストを低くする観点からは、上記塩化ビニル系樹脂組成物は、充填材を含むことが好ましい。
【0020】
上記充填材としては、無機充填材、有機充填材及び有機無機複合充填材等が挙げられる。なかでも、無機充填材が好ましい。上記充填材は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0021】
上記無機充填材としては、層状珪酸塩、炭酸カルシウム、タルク、クレー、マイカ、硫酸バリウム、フライアッシュ及びガラス繊維等が挙げられる。成形体の機械的強度物性を効果的に高め、成形体の体積を増大させ、成形体のコストを低くする観点からは、上記充填材は、炭酸カルシウムであることが好ましい。
【0022】
上記充填材の平均粒径は、好ましくは10nm以上、好ましくは50μm以下である。上記充填材の平均粒径が上記上限以下であると、成形体内で充填材の分散性が高くなり、機械的強度物性がより一層高くなる。
【0023】
上記平均粒径に関しては、充填材種によって粒子の凝集状態も異なるが、通常は一次粒子が凝集し二次粒子、三次粒子として存在する。上記充填材の平均粒径は、粉体として存在している状態での粒子の平均粒径を指す。
【0024】
上記塩化ビニル系樹脂100重量部に対して、上記充填材の含有量は好ましくは0.1重量部以上、好ましくは50重量部以下である。上記充填材の含有量が上記下限以上であると、成形体の体積が効果的に増大し、成形体のコストが低くなる。上記充填材の含有量が上記上限以下であると、成形体中での充填材間の距離が大きくなる結果、成形体に力が加わった際に、塩化ビニル系樹脂と充填材との界面を力が伝わり難くなってクラックが生じ難くなり、成形体の機械的強度物性がより一層高くなる。
【0025】
上記塩化ビニル系樹脂組成物は、必要に応じて、熱安定剤、安定化助剤、滑剤、加工助剤、酸化防止剤、光安定剤及び顔料等の添加剤を添加してもよい。
【0026】
上記熱安定剤としては特に限定されず、有機錫系熱安定剤、鉛系熱安定剤、カルシウム−亜鉛系熱安定剤、バリウム−亜鉛系熱安定剤及びカドミウム−バリウム系熱安定剤等が挙げられる。上記熱安定剤は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0027】
上記有機錫系熱安定剤としては、例えば、ジメチル錫メルカプト、ジブチル錫メルカプト、ジオクチル錫メルカプト、ジブチル錫マレート、ジブチル錫マレートポリマー、ジオクチル錫マレート、ジオクチル錫マレートポリマー、ジブチル錫ラウレート及びジブチル錫ラウレートポリマー等が挙げられる。上記鉛系熱安定剤としては、ステアリン酸鉛、二塩基性亜燐酸鉛及び三塩基性硫酸鉛等が挙げられる。
【0028】
上記熱安定剤の使用量は特に限定されない。上記熱安定剤の使用量の一例を挙げると、上記塩化ビニル系樹脂100重量部に対して、好ましくは1重量部以上、好ましくは5重量部以下である。
【0029】
上記安定化助剤としては特に限定されず、例えば、エポキシ化大豆油、エポキシ化アマニ油、エポキシ化テトラヒドロフタレート、エポキシ化ポリブタジエン、及びリン酸エステル等が挙げられる。上記安定化助剤は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0030】
上記滑剤としては特に限定されず、例えば、パラフィンワックス系滑剤、ポリオレフィンワックス系滑剤、ステアリン酸系滑剤、アルコール系滑剤及びエステル系滑剤等が挙げられる。上記滑剤は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0031】
上記滑剤の使用量は特に限定されない。上記滑剤の使用量の一例を挙げると、上記塩化ビニル系樹脂100重量部に対して、好ましくは0.3重量部以上、好ましくは3重量部以下である。
【0032】
上記加工助剤としては特に限定されず、例えば、重量平均分子量10万〜200万のアルキルアクリレート/アルキルメタクリレート共重合体であるアクリル系加工助剤等が挙げられる。上記加工助剤の具体例としては、n−ブチルアクリレート/メチルメタクリレート共重合体、及び2−エチルヘキシルアクリレート/メチルメタクリレート/ブチルメタクリレート共重合体等が挙げられる。上記加工助剤は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0033】
上記酸化防止剤としては特に限定されず、例えば、フェノール系酸化防止剤等が挙げられる。上記酸化防止剤は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0034】
上記光安定剤としては特に限定されず、例えば、サリチル酸エステル系、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系及びシアノアクリレート系等の紫外線吸収剤、並びにヒンダードアミン系の光安定剤等が挙げられる。上記光安定剤は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0035】
上記顔料としては特に限定されず、例えば、アゾ系、フタロシアニン系、スレン系及び染料レーキ系等の有機顔料、並びに酸化物系、クロム酸モリブデン系、硫化物−セレン化物系及びフェロシアン化物系等の無機顔料等が挙げられる。上記顔料は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0036】
また、成形時の加工性を高める目的で、上記塩化ビニル系樹脂組成物は可塑剤を含んでいてもよい。上記可塑剤としては特に限定されず、例えば、ジブチルフタレート、ジ−2−エチルヘキシルフタレート、及びジ−2−エチルヘキシルアジペート等が挙げられる。上記可塑剤は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0037】
以下、実施例を挙げて本発明を更に詳しく説明する。本発明は以下の実施例のみに限定されない。
【0038】
実施例及び比較例の塩化ビニル系樹脂組成物を得るために、以下の材料を用意した。
【0039】
(塩化ビニル系樹脂)
塩化ビニル系樹脂(徳山積水工業社製「PVC TS−1000R」、重合度1000)
【0040】
(液体エポキシ樹脂)
液体エポキシ樹脂(ノガワケミカル社製「DE−1081P」、23℃で液体)
液体エポキシ樹脂(DIC社製「EPICLON850」、23℃で液体、分子量500以下)
【0041】
(充填材)
炭酸カルシウム(白石工業社製「白艶華CCR」)
【0042】
(熱安定剤)
熱安定剤(有機錫系熱安定剤、日東化成工業社製「ONZ−7F」)
【0043】
(滑剤)
滑剤(ヘキスト社製「WAX−OP」)
【0044】
(実施例1)
塩化ビニル系樹脂(徳山積水工業社製「PVC TS−1000R」、重合度1000)100重量部と、液体エポキシ樹脂(ノガワケミカル社製「DE−1081P」、23℃で液体)1重量部と、錫系熱安定剤(日東化成工業社製「ONZ−7F」)1重量部と、滑剤(ヘキスト社製「WAX−OP」)0.5重量部とを配合し、混練し、塩化ビニル系樹脂組成物を得た。
【0045】
得られた塩化ビニル系樹脂組成物を、ミキシングロール機(安田精機製作所社製、No.191)で加熱混練し、成形して、シートを得た。得られたたシートを5枚重ねて、高温プレス機にて加熱及びプレスして、厚み3mmの成形体を得た。
【0046】
(実施例2〜13及び比較例1,2)
配合成分の種類及び配合量を下記の表1に示すように変更したこと以外は実施例1と同様にして、塩化ビニル系樹脂組成物を得た。得られた塩化ビニル系樹脂組成物を用いて、実施例1と同様にして、成形体を得た。
【0047】
(評価)
ASTM D638に準拠した方法で、材料試験機オートグラフ(島津製作所社製)を用いて、得られた成形体の引張強度を測定した。
【0048】
結果を下記の表1に示す。
【0049】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
塩化ビニル系樹脂100重量部と、23℃で液体である液体エポキシ樹脂1重量部以上、30重量部以下とを含む、塩化ビニル系樹脂組成物。
【請求項2】
充填材をさらに含む、請求項1に記載の塩化ビニル系樹脂組成物。
【請求項3】
前記充填材が炭酸カルシウムである、請求項2に記載の塩化ビニル系樹脂組成物。

【公開番号】特開2013−95909(P2013−95909A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−243048(P2011−243048)
【出願日】平成23年11月7日(2011.11.7)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)
【Fターム(参考)】