説明

増粘多糖類用継粉抑制剤

【課題】増粘多糖類を液体に分散または溶解させる際に発生する継粉を効果的に抑制する継粉抑制剤、該継粉抑制剤と増粘多糖類とを含む増粘剤および/またはゲル化剤、ならびに、該増粘剤および/またはゲル化剤を含む、ゾル状またはゲル状の飲食品を提供する。
【解決手段】増粘多糖類とともにポリ−γ−グルタミン酸またはその塩を用いた増粘多糖類用継粉抑制剤。該継粉抑制剤とキサンタンガム、グアガム、ジェランガム、ペクチン、カラギナン、ローカストビーンガムおよび大豆食物繊維からなる群から選択される一種以上を含む、増粘剤および/またはゲル化剤。該増粘剤および/またはゲル化剤を用いたゾル状またはゲル状の飲食品ならびに嚥下補助飲食品。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、増粘多糖類用継粉抑制剤に関する。
【背景技術】
【0002】
ゾル状またはゲル状食品を調製する際の継粉(ダマ)の発生を抑制する技術として、特許文献1に記載のものがある。同文献には、水不溶性カルシウムが継粉防止剤として機能することが記載されている。また、水不溶性カルシウムを材料粉末中に含有させることにより、水等の液状食品に容易かつ簡便に溶解または分散するゾル状食品およびゲル状食品を提供できるとされている。
【0003】
また、技術分野は異なるが、ポリ−γ−グルタミン酸に関する技術として、特許文献2〜4に記載のものがある。
特許文献2には、HMペクチン、アルカリ処理ゼラチン、またはカラギナンおよびローカストビーンガムを含むゲル状組成物の調製時に、ポリグルタミン酸を併用することにより、ゲル強度を高めることが記載されている。
特許文献3には、特定のハイドロコロイドとポリグルタミン酸を併用して、ハイドロコロイドの粘度を増加させることが記載されている。
特許文献4には、ポリ−γ−グルタミン酸を用いてプロテイン飲料等の粉末飲食物の液体への分散性を改善する技術が記載されている。
【特許文献1】特開2005−304378号公報
【特許文献2】特開2006−129792号公報
【特許文献3】特開2006−81419号公報
【特許文献4】特開2007−104920号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、増粘多糖類を液体に分散または溶解させる際の継粉の発生を抑制する新たな技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明によれば、ポリ−γ−グルタミン酸またはその塩を含有する、増粘多糖類用継粉抑制剤が提供される。
また、本発明によれば、上記本発明における増粘多糖類用継粉抑制剤と、増粘多糖類と、を含む、増粘剤および/またはゲル化剤が提供される。
また、本発明によれば、上記本発明における増粘剤および/またはゲル化剤を含む、ゾル状またはゲル状の飲食品が提供される。
【0006】
本発明において、ポリ−γ−グルタミン酸とは、構成アミノ酸がグルタミン酸である高分子化合物である。
本発明によれば、増粘多糖類とポリ−γ−グルタミン酸とを併用することにより、増粘多糖類を液体に分散または溶解させる際に、継粉が発生することを効果的に抑制することができる。
【0007】
なお、これらの各構成の任意の組み合わせや、本発明の表現を方法、装置などの間で変換したものもまた本発明の態様として有効である。
【0008】
たとえば、本発明によれば、前記本発明における増粘多糖類用継粉抑制剤と、増粘多糖類とを混合する工程と、
前記工程で得られた混合物を液体に加えて攪拌することにより、前記液体を増粘および/またはゲル化させる工程と、
を含む、飲食品の製造方法が提供される。
【0009】
また、本発明によれば、前記本発明における増粘多糖類用継粉防止剤を含む、嚥下補助剤が提供される。
また、本発明によれば、前記本発明における増粘剤および/またはゲル化剤を含む、嚥下補助剤が提供される。
【発明の効果】
【0010】
以上説明したように、本発明によれば、増粘多糖類とともにポリ−γ−グルタミン酸またはその塩を用いることにより、増粘多糖類を液体に分散または溶解させる際の継粉の発生を効果的に抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明における増粘多糖類継粉抑制剤は、増粘多糖類とともに用いられて、増粘多糖類を液体に分散または溶解させる際の継粉の発生を抑制するものであり、ポリ−γ−グルタミン酸(以下、γ−PGAとも呼ぶ。)またはその塩を含有する。呈味改善剤の形態には特に制限はないが、たとえば顆粒状または粉末状とすることができる。こうすることにより、粉末状の増粘多糖類と予め混合した後、混合物を液体中に添加して用いることができるため、増粘多糖類の分散安定性をより一層向上させて、継粉の発生をさらに確実に抑制することができる。
【0012】
本発明において、γ−PGAの重量平均分子量は、継粉をより一層確実に抑制する観点では、たとえば3000以上、好ましくは5000以上、さらに好ましくは1万以上である。
また、γ−PGAの重量平均分子量は、少ない添加量で継粉をさらに安定的に抑制する観点では、たとえば300万以下、好ましくは100万以下、さらには好ましくは30万以下である。
なお、γ−PGAの重量平均分子量は、たとえば光散乱法により測定される。
【0013】
本発明に用いられるγ−PGAは、納豆の粘質物中のγ−PGAを抽出して用いてもよく、納豆菌等のバチリス属の菌体外に分泌するγ−PGAを用いてもよい。また、納豆粘質物中の、あるいは納豆菌が同時に分泌するレバンを含んでいても何ら支障がない。また、所定の分子量のγ−PGAを得るには、当該分子量より大きいγ−PGAを酸あるいはγ結合を分解する腸内には存在しない特殊な酵素により低分子化する方法と、納豆菌等の培養により当該分子量のγ−PGAを分泌させる方法があるが、そのどちらのγ−PGAを用いても何ら影響しない。
【0014】
γ−PGAは一般にナトリウム塩として得られるが、カリウム塩、カルシウム塩およびマグネシウム塩等の他の金属塩あるいはフリーのポリグルタミン酸であってもよい。
【0015】
本発明において、増粘多糖類用継粉抑制剤とともに用いられる増粘多糖類としては、増粘多糖類用継粉抑制剤とともに用いたときに、増粘多糖類用継粉抑制剤を用いない場合に比べて分散液または溶解液の粘度を減少させるものが好ましく、たとえば、デンプン類、デキストリン、ジェランガム(「ジェラン」とも略記する。)、キサンタンガム、グアガム、ペクチンおよびι(イオタ)−カラギナン等のカラギナン、ローカストビーンガム、大豆食物繊維およびコンニャクイモ抽出物からなる群から選択される一種以上の増粘多糖類が挙げられる。増粘多糖類として、好ましくはジェランガム、デンプン類、デキストリン、キサンタンガム、グアガム、ペクチン、ι−カラギナン、ローカストビーンガムおよび大豆食物繊維からなる群から選択される一種以上の増粘多糖類が挙げられる。さらに好ましくはジェランガム、キサンタンガム、グアガム、ペクチン、ι−カラギナン、ローカストビーンガムおよび大豆食物繊維からなる群から選択される一種以上の増粘多糖類が挙げられる。
【0016】
なお、本発明において、増粘多糖類自体の用途に特に制限はなく、たとえば、飲食品等の粘度を増加させる増粘剤、飲食品等をゲル化させるゲル化剤、飲食品等の安定化剤等であってもよい。また、これらの複数の機能を兼ね備えるものであってもよい。
【0017】
本発明における増粘剤および/またはゲル化剤は、上記本発明における増粘多糖類用継粉抑制剤と、増粘多糖類と、を含む。
また、本発明における増粘剤および/またはゲル化剤は、増粘多糖類として、デンプン類、デキストリン、ジェランガム、キサンタンガム、グアガム、ペクチンおよびι−カラギナン等のカラギナン、ローカストビーンガム、大豆食物繊維およびコンニャクイモ抽出物からなる群から選択される一種以上を含み、好ましくはデンプン類、デキストリン、ジェランガム、キサンタンガム、グアガム、ペクチン、ι−カラギナン、ローカストビーンガムおよび大豆食物繊維からなる群から選択される一種以上を含み、さらに好ましくはジェランガム、キサンタンガム、グアガム、ペクチン、ι−カラギナン、ローカストビーンガムおよび大豆食物繊維からなる群から選択される一種以上を含む。これらの増粘多糖類と組み合わせて用いることにより、γ−PGAの継粉抑制作用をより一層効果的に発揮させることができる。
【0018】
なお、デンプン類として、さらに具体的には、ヒドロキシプロピル化デンプン等の各種化工デンプンが挙げられる。
また、ジェランガムとして、具体的には、ネイティブジェランガムおよびアシル化ジェランガムが挙げられる。
【0019】
増粘多糖類に対するγ−PGAの配合割合は、継粉をより一層確実に抑制する観点では、たとえば1重量%以上、好ましくは5重量%以上である。
また、増粘多糖類に対するγ−PGAの配合割合の上限に特に制限はないが、少ない添加量で継粉をさらに安定的に抑制する観点では、たとえば30重量%以下、好ましくは15重量%以下である。
【0020】
増粘多糖類の性状は、混合操作の簡便性を維持しつつ増粘多糖類用継粉抑制剤との混合物の均一性を高める観点では、たとえば粉末状、顆粒等の粒状とする。
【0021】
本発明においては、増粘多糖類とγ−PGAを共存させることにより、飲食品中に継粉が形成されるのが効果的に抑制されて、飲食品を所望の粘度またはかたさに調節することができる。このため、増粘多糖類用継粉防止剤またはこれを含む増粘剤は、たとえば嚥下補助剤として好適に用いることができる。また、本発明における飲食品は、上記本発明における増粘多糖類用継粉抑制剤またはこれを含む増粘剤を含むものであり、たとえば嚥下補助食品として好適である。
【0022】
なお、γ−PGAを用いることにより増粘多糖類の溶解または分散時の継粉形成が抑制されることは、従来、全く知られていなかった。
また、背景技術の項で前述した特許文献2および3においては、ポリグルタミン酸を特定のハイドロコロイドに加えることにより、それぞれ、ゲル強度および粘度を高めている。これに対し、本発明においては、増粘多糖類用継粉抑制剤を用いても、用いない場合と比べて著しい粘度増加は認められず、むしろ粘度は減少する傾向にあり、増粘多糖類の溶解性を向上させることにより、継粉を抑制するものである。
【0023】
本発明における増粘剤および/またはゲル化剤は、増粘多糖類用継粉抑制剤を含むため、これを用いることにより、分散または溶解時の継粉が効果的に抑制される。具体的には、500mlビーカー中の20℃の水100mlに添加し、スプーンを用いて10秒間で30回掻き混ぜたときに、粒径1cm以上の継粉の数が、たとえば3個以下となる。
【0024】
本発明において、飲食品の種類や物性に特に制限はないが、たとえばゾル状またはゲル状の飲食品であり、具体例として、ゼリー、プリン等の冷蔵保存されるデザート類;
ポタージュスープ等のスープ類およびシチュー類(液体状スープや喫食時にお湯や水をかけてつくる粉末乾燥スープなどを含む);
ラーメンやうどんなどの麺類のつゆやスープ(液体状スープや喫食時にお湯や水をかけてつくる粉末乾燥スープなどを含む);
シェイク類(液体状シェイクや喫食時にお湯や水をかけてつくる粉末シェイクなどを含む);
フレンチドレッシング等のドレッシング類;
水産または畜肉練り製品;ならびに
pH3以上pH7未満の酸性飲料及び弱酸性飲料、たとえば抽出液(コーヒー、紅茶、緑茶など)、果汁(オレンジ、リンゴ、パイナップル、グレープフルーツ、ストロベリーなど)、酢(黒酢、リンゴ酢、ブルーベリー酢など)、有機酸(リンゴ酸、乳酸、クエン酸、フマル酸、酒石酸など)及びその塩、乳酸菌など微生物を乳に作用させて得られる発酵産生物の有機酸
等が挙げられる。
ゼリー状食品等では、うまく増粘多糖類が分散されないという課題が解決され所望の増粘多糖類が使用できるようになった結果、従来品に比べ喉越の良い高品質の食品が提供できた。
また加熱耐性のある増粘多糖類も分散または溶解させて使用できるため、レトルト食品などの加熱食品においても高品質の物性の食品を提供することができる。
なお、γ−PGAは、液体中にγ−PGAイオンの状態で存在していてもよいし、γ−PGAナトリウム塩等の塩の状態で存在していてもよい。
【0025】
また、本発明の飲食品は、たとえば以下の方法で調製することができる。
まず、本発明における増粘多糖類用継粉抑制剤と、増粘多糖類とを混合する。このとき、増粘多糖類用継粉抑制剤および増粘多糖類がいずれも粉体の状態で混合するとよい。次に、増粘多糖類用継粉抑制剤および増粘多糖類の混合工程で得られた混合物を液体に加えて攪拌することにより、液体を増粘および/またはゲル化させる。以上により、増粘多糖類の分散液が得られる。その後、得られた分散液を用いて所望の飲食品を調製することができる。
【0026】
液体を添加する前に増粘多糖類用継粉抑制剤および増粘多糖類を混合し、混合物を液体中に加えることにより、混合物の均一性がさらに向上し、継粉の発生をさらに安定的に抑制することができる。
【0027】
なお、液体を増粘および/またはゲル化させる際の攪拌条件は特に制限されないが、上記方法によれば、継粉の発生が効果的に抑制されるため、攪拌条件を厳密に調整したり、攪拌速度を著しく高めたりしなくても、増粘多糖類を容易に分散させることができる。たとえば、実施例で後述するように、ビーカー等の容器に収容されている液体に混合粉を振り入れ、ガラス棒等を用いて10秒間で15回程度の軽い攪拌を行うことによっても、継粉のない液体を得ることが可能となる。
【0028】
また、一般に、増粘多糖類を液体に溶解または分散させる際に、液体の温度が低温であると、特に継粉が生じやすい傾向にあるが、本発明においては、増粘多糖類を分散させる際にγ−PGAを含む増粘多糖類用継粉抑制剤を共存させることにより、液体がたとえば10℃以下の低い温度である場合にも、継粉の形成を効果的に抑制することができる。
【0029】
なお、継粉形成を抑制する観点では、上述したように、増粘多糖類用継粉抑制剤と増粘多糖類とをあらかじめ混合しておくことが好ましいが、実用上支障ない程度に継粉の発生を抑制できれば、混合順序はこれには限られない。たとえば、増粘多糖類用継粉抑制剤をあらかじめ液体中に溶解しておき、これに増粘多糖類を加えてもよい。
【0030】
また、以上においては、増粘多糖類の分散液をあらかじめ調整しておき、飲食品の原料として用いる方法を例に説明したが、飲食品を定法で製造した後、喫食時に増粘多糖類用継粉抑制剤および増粘多糖類の混合粉を飲食品に加えることにより、飲食品の粘度またはかたさを調整することもできる。また増粘多糖類とγ−PGAとともに炭酸水素ナトリウムを併用すると、更に増粘多糖類の分散、溶解性があがる。
【0031】
飲食品への増粘多糖類用継粉抑制剤の添加量は、継粉形成を実用上支障ない程度に抑制できれば特に制限はないが、増粘多糖類の分散体の均一性をさらに向上させる観点では、飲食品全体に対するγ−PGAの割合をたとえば0.01重量%以上、好ましくは0.05重量%以上、さらに好ましくは0.1重量%以上とする。
また、飲食品への増粘多糖類用継粉抑制剤の添加量の上限は、飲食品本来の味の変化をより確実に抑制する観点では、たとえば5重量%以下、好ましくは2重量%以下、さらに好ましくは1重量%以下である。
【0032】
以上、本発明を実施形態に基づいて説明した。これらはあくまで例示であり、種々の変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
【0033】
たとえば、以上の実施形態における増粘多糖類用継粉抑制剤、増粘剤および/またはゲル化剤または飲食品は、pH調整剤、各種ミネラルをさらに含んでいてもよい。pH調整剤としては、リン酸などの無機酸及びその塩、炭酸水素ナトリウム、クエン酸及びその塩などが好適に使用される。ミネラル類としては、カルシウム、鉄、マグネシウム、亜鉛、銅、セレンなどの生体必須ミネラルの一部あるいは全部が対象となる。また、用いるミネラルの形態には制限はないが、たとえばカルシウムでは、塩化カルシウム、クエン酸カルシウム、グリセロリン酸カルシウム、グルコン酸カルシウム、水酸化カルシウム、炭酸カルシウム、乳酸カルシウム、パントテン酸カルシウム、ピロリン酸二水素カルシウム、硫酸カルシウム、リン酸三カルシウム、リン酸一水素カルシウム、リン酸二水素カルシウムなどの化学的合成品の食品添加物、及び貝カルシウム、骨カルシウムなどの天然カルシウムが対象となる。鉄では、塩化第二鉄、クエン酸第一鉄ナトリウム、クエン酸鉄、クエン酸鉄アンモニウム、グルコン酸第一鉄、乳酸鉄、ピロリン酸第一鉄、ピロリン酸第二鉄、硫酸第一鉄などの化学的合成品の食品添加物、及びヘム鉄などの天然鉄が対象となる。
【0034】
また、飲食品全体に対するミネラル類の合計濃度は、ミネラル類を効率よく摂取する観点では、たとえば0.01重量%以上、好ましくは0.1重量%以上、さらに好ましくは0.5重量%以上とする。
【実施例】
【0035】
以下の実施例において、特に断りのない場合、単位は重量%である。
【0036】
(実施例1)
本実施例では、以下の手順で、各種増粘多糖類を含むとろみ調整剤を調製し、増粘多糖類の溶解性およびとろみ調整剤の流動性を評価した。
【0037】
(とろみ調整剤の調製)
増粘多糖類の粉体およびγ−PGA(分子量約3万、味の素株式会社製カルテイク、登録商標)をビニール袋に入れて混合した。一方、室温(20℃)の水を500mlビーカーに入れ、これに上記粉体の混合物を振り入れて、スプーンで攪拌した。攪拌速度は10秒間で30回とした。
各とろみ調整剤の配合を表1に示す。表1に示したように、各種増粘剤について、それぞれ、γ−PGAを配合したものと未配合の試料を調製した。
【0038】
表1の配合に用いた増粘多糖類は、それぞれ、以下の通りである。
配合例A1、A2:ヒドロキシプロピル化デンプン(日澱化学工業株式会社製、G−800)
配合例A3、A4:ローカストビーンガム(三晶株式会社製、RJ−200−J)
配合例A5、A6:ジェランガム(三栄源エフ・エフ・アイ株式会社製、ケルコゲルHT)
配合例A7、A8:コンニャクイモ抽出物(清水化学株式会社製、レオックスRS)
配合例A9、A10:ι−カラギーナン(三晶株式会社製、J−J)
配合例A11、A12:ジェランガム(三栄源エフ・エフ・アイ株式会社製、ケルコゲルHT)
配合例A13、A14:ι−カラギーナン(三晶株式会社製、J−J)
配合例A15、A16:ジェランガム(三栄源エフ・エフ・アイ株式会社製、ケルコゲルHT)
配合例A17、A18:増粘多糖類、デキストリン、でん粉(市販トロミ調整剤A)
配合例A19、A20:デキストリン、増粘多糖類、塩化カリウム(市販トロミ調整剤B)
配合例A21、A22:増粘多糖類、デキストリン、でん粉(市販トロミ調整剤C)
配合例A23、A24:キサンタンガム(微粉)(三栄源エフ・エフ・アイ株式会社製、サンエースS)
配合例A25、A26:キサンタンガム(顆粒)(三栄源エフ・エフ・アイ株式会社製、サンエースG)
また、表1において、「多糖類添加量」、「PGA添加量」および「水添加量」は、組成物中の増粘多糖類、γ−PGAおよび水の配合(重量部)を示し、「粉体総量」は、組成物中の粉体の合計の配合(重量部)を示す。「多糖類」および「PGA」の項目は、固形分中の増粘多糖類およびγ−PGAの配合(重量%)を示す。
【0039】
(とろみ調整剤の評価)
得られたとろみ調整剤の流動性および溶解性を評価した。評価結果を表1に示した。表1において、評価基準は、それぞれ以下の通りある。
(流動性)
S:固体
P1:硬いペースト状
P2:ペースト状
P3:滑らかなペースト状
(溶解性)
×:溶けない
△:溶けるがダマが残る
○:溶ける
◎:良く溶ける
【0040】
表1に示したように、γ−PGAを配合することにより、溶解性が向上した。
また、各調製例で得られた増粘多糖類を含むとろみ調整剤については、いずれも、増粘多糖類を含まないものに対する異味は感じられない程度であった。
【0041】
【表1】

【0042】
(実施例2)
本実施例では、キサンタンガム、デキストリンおよびγ−PGAを含む顆粒状の増粘剤を製造し、水への溶解性および粘度を評価した。
【0043】
(増粘剤の製造)
表2は、本実施例で製造した増粘剤の配合を示す表である。
デキストリン(パインフロー、松谷化学工業株式会社製)、キサンタンガム(エコーガム、大日本住友製薬株式会社製)およびγ−PGA(分子量約3万、味の素株式会社製カルテイク、登録商標)を表2に示した重量比となるように秤量、混合した後、流動層造粒を行った。混合物のカサ比重は、0.279g/mlだった。
【0044】
造粒により得られた顆粒を、孔径1000μmのメッシュに通過させ、通過した粒子を増粘剤として得た。
【0045】
【表2】

【0046】
(増粘剤の評価)
各配合例で得られた増粘剤を200mlの水(20℃)に加えたときの溶解性を評価した。評価結果を表3および図1に示す。
【0047】
なお、表3における評価基準は以下の通りである。
×:ダマあり
△:わずかなダマあり
○:ダマなし
【0048】
また、図1は、各配合例で得られた増粘剤1gを200mlの水(20℃)に溶解させたときの様子を示す図である。
さらに、各配合例で得られた増粘剤の粘度を測定した。結果を表4に示す。なお、表4において、「NG」とは、ダマが生じたため粘度測定が不可能だったことを示す。
【0049】
表3、4および図1に示したように、γ−PGA10%(粉体含量)の添加により、ダマが生じなくなり増粘多糖類の溶解性が飛躍的に向上した。
【0050】
【表3】

【0051】
【表4】

【0052】
(実施例3)
本実施例では、γ−PGAを併用することによるジェランガムの溶解性および粘度の変化を詳細に検討した。
【0053】
ジェランガム(三栄源エフ・エフ・アイ株式会社製、ケルコゲルHT)粉体およびγ−PGA(分子量約3万、味の素株式会社製カルテイク、登録商標)をビニール袋に入れて混合した。一方、室温(20℃)の水を500mlビーカーに入れ、これに上記粉体の混合物を振り入れて、スプーンで攪拌した。攪拌速度は10秒間で30回程度とした。
【0054】
粘度の測定は、粉体を攪拌した直後に行い、ジェランガムがゲル化する前の状態で行った。B型粘度計(ブルックフィールド社製)を用い、No4、5rpmの条件で行った。結果を表5および図2に示す。
【0055】
また、ダマの数の評価結果を表6に示す。表6では、ダマの評価基準を以下のようにした。
○:ダマ0個
△:ダマ5個未満
×:ダマ5個以上
【0056】
【表5】

【0057】
【表6】

【0058】
表5、表6および図2より、γ−PGAを添加することによりジェランガムの溶解性は著しく向上した。また、粘度はγ−PGA添加量が増えるにつれて低下する傾向にあった。
【0059】
(実施例4)
本実施例では、各種増粘多糖類について、多糖類とγ−PGAの比率や、粉体濃度、pH、溶媒の温度を変えたときの継粉の抑制効果を詳細に検討した。
【0060】
水または飲料(商品名「カルピスウォーター」カルピス株式会社製)100mlを500mlビーカーに入れ、これに表7〜表15に示す割合で多糖類とγ−PGA、必要に応じてクエン酸、クエン酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、を添加して、スプーンで攪拌した。攪拌速度は、10秒間で30回程度とした。
【0061】
表7〜表15において、以下の増粘多糖類を用いた。
キサンタンガム(表7、表13、表14、表15):三栄源エイ・エフ・アイ株式会社製、サンエースNXG−S
グアガム(表8):三晶株式会社製、メイプログァー CSAA M−175
ペクチン(表9):三晶株式会社製、200
ι−カラギーナン(表10):三晶株式会社製、J−J
ローカストビーンガム(表11):三晶株式会社製、RL−200−J
大豆食物繊維(表12):三栄源エイ・エフ・アイ株式会社製、大豆食物繊維
また、γ−PGAについては、表7〜表15のいずれも、γ−PGA(分子量約3万、味の素株式会社製カルテイク、登録商標)を用いた。
【0062】
また、ダマの抑制評価の結果を表7〜表15に示す。表7〜表15において、ダマの評価基準を以下のようにした。
○:ダマ0個
△:ダマ5個未満
×:ダマ5個以上
表7〜表15において、評価を行っていない配合は空欄とした。
【0063】
【表7】

【0064】
【表8】

【0065】
【表9】

【0066】
【表10】

【0067】
【表11】

【0068】
【表12】

【0069】
【表13】

【0070】
【表14】

【0071】
【表15】

【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】実施例における増粘剤の溶解性の評価結果を示す図である。
【図2】実施例における増粘剤の粘度の測定結果を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリ−γ−グルタミン酸またはその塩を含有する、増粘多糖類用継粉抑制剤。
【請求項2】
キサンタンガム、グアガム、ジェランガム、ペクチン、カラギナン、ローカストビーンガムおよび大豆食物繊維からなる群から選択される一種以上の前記増粘多糖類とともに用いられる、請求項1に記載の増粘多糖類用継粉抑制剤。
【請求項3】
前記ポリ−γ−グルタミン酸の重量平均分子量が3000以上300万以下である、請求項2に記載の増粘多糖類用継粉抑制剤。
【請求項4】
請求項1乃至3いずれかに記載の増粘多糖類用継粉抑制剤と、増粘多糖類と、を含む、増粘剤および/またはゲル化剤。
【請求項5】
前記増粘多糖類が、キサンタンガム、グアガム、ジェランガム、ペクチン、カラギナン、ローカストビーンガムおよび大豆食物繊維からなる群から選択される一種以上を含む、請求項4に記載の増粘剤および/またはゲル化剤。
【請求項6】
前記増粘多糖類に対する前記ポリ−γ−グルタミン酸の割合が、1重量%以上30重量%以下である、請求項5に記載の増粘剤および/またはゲル化剤。
【請求項7】
請求項4乃至6いずれかに記載の増粘剤および/またはゲル化剤を含む、ゾル状またはゲル状の飲食品。
【請求項8】
嚥下補助飲食品である、請求項7に記載の飲食品。
【請求項9】
請求項1乃至3いずれかに記載の増粘多糖類用継粉防止剤を含む、嚥下補助剤。
【請求項10】
請求項4乃至6いずれかに記載の増粘剤および/またはゲル化剤を含む、嚥下補助剤。
【請求項11】
請求項1乃至3いずれかに記載の増粘多糖類用継粉抑制剤と、増粘多糖類とを混合する工程と、
前記工程で得られた混合物を液体に加えて攪拌することにより、前記液体を増粘および/またはゲル化させる工程と、
を含む、飲食品の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−95341(P2009−95341A)
【公開日】平成21年5月7日(2009.5.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−242198(P2008−242198)
【出願日】平成20年9月22日(2008.9.22)
【出願人】(000000066)味の素株式会社 (887)
【Fターム(参考)】