説明

壁パネルの連結構造

【課題】
壁パネルどうしを連結した一連の壁にあって、該壁が、壁面に垂直な方向に働く力により面外変形して壁パネルの連結部において破断を引き起こすのを防止することができる壁パネルの連結構造を提供する。
【解決手段】
本発明の壁パネルの連結構造は、第1および第2の壁パネルW1、W2の端辺が突き合わされた状態で、長手方向において、第1および第2の壁パネルW1、W2を引き寄せて締結する第1の締結手段1と、第1および第2の壁パネルW1、W2の端辺が突き合わされた状態で、該第1および第2の壁パネルW1、W2の厚さ方向において、第1の突出部W11と第2の突出部W21とを引き寄せて締結する第2の締結手段2と、を備えているものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、隣り合う壁パネルの端辺どうしを突き合わせて該壁パネルを壁面方向に延伸するように連結し、一連の壁を形成する壁パネルの連結構造に係り、特に、貯水槽など、内部に圧力がかかるような槽の槽壁に用いられるものに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、蓄熱槽のような貯水槽の槽壁に用いられる壁部材にあっては、貯水量など多様な槽の大きさに対応するため、あらかじめ決められた寸法の壁パネルを用い、この壁パネルを単独で、または、所望の寸法となるように連結して構築していた。
【0003】
そして、連結タイプの壁パネルの場合には、その連結は、例えば、図10に示したように、平面状の端部を有する壁パネルW’、W’どうしを突き合わせ、その間にパッキン3’を挟み込み、貯水槽外に設けられた取付部材10’を介してボルト・ナット11’、12’などの締結手段1’により、壁パネルW’、W’どうしを互いに引き寄せて水密状態となるように連結していた(例えば、非特許文献1の第6頁参照)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】株式会社ブリジストン、FRPパネル蓄熱槽「エネストック」製品カタログ、改0912 1500A
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述したような壁パネルの連結構造にあっては、単に壁パネルどうしを引き寄せて連結するものであり、壁面方向における接合強度は比較的強いものの、壁面に垂直な方向に働く力には脆弱であり、例えば、貯水槽内の水圧が上昇した場合、壁パネルが貯水槽の外側方向に向かって面外変形(膨出)してしまい、特に壁パネルの連結部において破断、漏水を引き起こし易いという問題点があった。
【0006】
本発明は、上述した問題点を解決するためになされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に係る発明は、隣り合う壁パネルの端辺どうしを突き合わせて該壁パネルを壁面方向に延伸するように連結し、一連の壁を形成する壁パネルの連結構造であって、連結する壁パネルは、第1の壁パネルと第2の壁パネルであり、第1の壁パネルの端辺には、第1の突出部と第1の受入部とが設けられ、第2の壁パネルの端辺には、第2の突出部と第2の受入部とが設けられ、前記第1の突出部は、前記第2の受入部に受け入れられると共に、前記第2の突出部は前記第1の受入部に受け入れられるものであり、前記第1および第2の壁パネルの端辺が突き合わされた状態で、前記壁面方向に沿って、前記第1および第2の壁パネルを引き寄せて締結する第1の締結手段と、前記第1および第2の壁パネルの端辺が突き合わされた状態で、該第1および第2の壁パネルの厚さ方向に沿って、前記第1の突出部と前記第2の突出部とを引き寄せて締結する第2の締結手段と、を備えている壁パネルの連結構造である。
【0008】
請求項2に係る発明は、請求項1記載の壁パネルの連結構造におけて、第2の締結手段は、第1の突出部を第1の壁パネルの厚さ方向に貫通する貫通孔と、第2の突出部に設けられ、前記第1および第2の壁パネルの端辺が突き合わされた状態で、前記貫通孔に臨むように形成された雌ねじ部と、前記第1の突出部の外側部から前記貫通孔を介して前記雌ねじ部に螺合し、前記外側部に着座する座面を有する有頭雄ねじ部材と、により構成されているものである。
【0009】
請求項3に係る発明は、請求項1または2記載の壁パネルの連結構造において、壁パネルは、箱形形状の貯水槽の側壁であり、突き合わされる第1の壁パネルと第2の壁パネルとの間には、パッキンが介在しているものである。
【発明の効果】
【0010】
請求項1に記載の壁パネルの連結構造によれば、第1および第2の壁パネルの端辺が突き合わされた状態で、壁面方向に沿って、前記第1および第2の壁パネルを引き寄せて締結する第1の締結手段と、前記第1および第2の壁パネルの端辺が突き合わされた状態で、該第1および第2の壁パネルの厚さ方向に沿って、第1の突出部と第2の突出部とを引き寄せて締結する第2の締結手段と、を備えているため、第1および第2の壁パネルの壁面方向の引っ張り接合強度を高めるのみならず、壁面に垂直な方向の押圧強度を高めることができ、壁パネルどうしを強固に連結することができる。
【0011】
請求項2に記載の発明によれば、請求項1記載の壁パネルの連結構造の効果に加え、第2の締結手段は、第1の突出部を第1の壁パネルの厚さ方向に貫通する貫通孔と、第2の突出部に設けられ、前記第1および第2の壁パネルの端辺が突き合わされた状態で、前記貫通孔に臨むように形成された雌ねじ部と、前記第1の突出部の外側部から前記貫通孔を介して前記雌ねじ部に螺合し、前記外側部に着座する座面を有する有頭雄ねじ部材と、により構成されているため、簡易な構成で第1および第2の壁パネルの厚さ方向の押圧強度を高めることができる。
【0012】
請求項3に記載の発明によれば、請求項1または2記載の壁パネルの連結構造の効果に加え、壁パネルは、箱形形状の貯水槽の側壁であり、突き合わされる第1の壁パネルと第2の壁パネルとの間には、パッキンが介在しているため、連結部からの漏水を効果的に防ぐことができ、しかも、貯水槽内の水圧が高くなったとしても、該連結部が貯水槽外側方向に膨出して破断するのを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の壁パネルの連結構造を用いた貯水槽の概略的斜視図である。
【図2】図1のK部を拡大して示した概略的正面図である。
【図3】本発明の要部を示した図であり、図2のX−X線で切断した概略的断面図である。
【図4】第1の壁パネルと第2の壁パネルの構成を説明するための概略的断面図である。
【図5】本発明の壁パネルの連結構造における壁パネルの連結過程について示した概略的断面図である。
【図6】本発明の壁パネルの連結構造における壁パネルの連結過程について示した概略的断面図である。
【図7】本発明の壁パネルの連結構造における壁パネルの連結過程について示した概略的断面図である。
【図8】本発明の壁パネルの連結構造における壁パネルの連結過程について示した概略的断面図である。
【図9】図3の変形例を示した概略的断面図である。
【図10】従来の壁パネルの連結構造を説明するための概略的断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の一実施例を、図1〜図4を参照して説明する。図1において、Tは、本発明の壁パネルの連結構造を、箱形形状の蓄熱用の貯水槽の側壁に適用した例であり、図2は、図1の貯水槽TのK部を拡大して示した概略的正面図を、図3は、図2のX−X線で切断した概略的断面図を、それぞれ示している。なお、各図において、Wは壁パネルを示している。
【0015】
壁パネルの連結構造は、図3に示したように、隣り合う壁パネルW、Wの端辺どうしを突き合わせて該壁パネルWを壁面方向に延伸するように連結し、一連の壁を形成するもので、概略的に、壁パネルWと、第1の締結手段1と、第2の締結手段2とにより構成されている。
【0016】
連結する壁パネルW、Wは、第1の壁パネルW1と第2の壁パネルW2であり(以下、連結する壁パネルW、Wを、「第1の壁パネルW1」、「第2の壁パネルW2」という)、第1の壁パネルW1の端辺には、図4に示したように、第1の突出部W11と第1の受入部W12とが設けられ、第2の壁パネルW2の端辺には、第2の突出部W21と第2の受入部W22とが設けられている。
【0017】
ここで、第1の突出部W11は、第2の受入部W22に受け入れられると共に、第2の突出部W21は第1の受入部W12に受け入れられるものである。具体的には、図4に示したように、第1および第2の突出部W11、W21は、断面コ字状であり、第1および第2の受入部W12、W22は、それぞれ第1および第2の突出部W11、W21に対応した断面L字状の空間で構成されている。なお、第1および第2の突出部W11、W21の厚さは、壁パネルWの厚さの約半分である。
【0018】
この第1および第2の突出部W11、W21、並びに、第1および第2の受入部W12、W22は、端部が平面形状の板部材の該端部を印籠決りして形成したり、同図に示したように、予めこれら突出部W11、W21、および、受入部W12、W22の外形となるように成形された枠体8(耐食性を有するステンレス鋼等の金属や耐熱性塩化ビニル樹脂等のプラスチック材料などで形成)の内部に、例えば、ウレタンフォームなどの強化プラスチック(FRP)や無機質材などが充填されている。
【0019】
第1の締結手段1は、第1および第2の壁パネルW1、W2の端辺が突き合わされた状態で、壁面方向に沿って、第1および第2の壁パネルW1、W2を引き寄せて締結するもので、例えば、図3に示したように、壁パネルW1、W2のそれぞれの側面端部に取付部材10、10が取り付けられ、これら取付部材10、10がボルト・ナット11、12により緊締され、壁パネルW1、W2どうしが引き寄せられて締結されている。取付部材10は、例えば、L字鋼(アングル鋼)や溝形鋼(チャンネル鋼)などである(図3では、L字鋼(アングル鋼)を例示)。
【0020】
第2の締結手段2は、
第1および第2の壁パネルW1、W2の端辺が突き合わされた状態で、該第1および第2の壁パネルW1、W2の厚さ方向(壁面に垂直な方向)に沿って、第1の突出部W11と第2の突出部W21とを引き寄せて締結するもので、例えば、図3に示したように、第1の突出部W11を第1の壁パネルW1の厚さ方向に貫通する貫通孔23と、第2の突出部W21に設けられ、第1および第2の壁パネルW1、W2の端辺が突き合わされた状態で、貫通孔23に臨むように形成された雌ねじ部22と、第1の突出部W11の外側部から貫通孔23を介して雌ねじ部23に螺合し、外側部(第1の壁パネルW1の第1の締結手段1側の部位)に着座する座面を有する有頭雄ねじ部材21(例えば、ボルト)と、により構成されている。
【0021】
なお、連結部における水密性を向上させる場合にあっては、同図に示したように、パッキン3を、突き合わされる第1の壁パネルW1と第2の壁パネルW2との間に介在させるようにしてもよい。このパッキン3には、例えば、エチレンプロピレンゴム(EPTゴム)、シリコーンゴムなどが用いられる。
【0022】
次に、上述した実施例のように構成される壁パネルの連結構造にあって、壁パネルどうしの連結方法について、図5〜図8を参照して説明する。なお、以下に説明する壁パネルの連結構造は、突き合わされる第1および第2の壁パネルW1、W2の間にパッキン3を介在させたものであり、また、雌ねじ部22は、枠体8内にナットが埋設された構成の例である。
【0023】
まず、図5に示したように、第2の壁パネルW2の側面端部(貯水槽Tの外側面側の端部)に取付部材10であるL字鋼をボルト13により取り付け、パッキン3を間に介在させて第1の壁パネルW1の端辺と第2の壁パネルW2の端辺とを突き合わせる。
【0024】
そして、図6に示したように、第1の壁パネルW1の側面端部に取付部材10であるL字鋼を、該L字鋼の平面部が前述の第2の壁パネルW2に取り付けられたL字鋼(取付部材10)の平面部に対応するように配置し、これらL字鋼どうしをボルト11およびナット12を用いて弱く仮締めする。
【0025】
そして、ボルト11およびナット12を仮締めした状態で、図7に示したように、第2の締結手段2を作用させる、すなわち、有頭雄ねじ部材21を貫通孔23に挿通し、第2の壁パネルW2の雌ねじ部22のナットに螺合させ、この有頭雄ねじ部材21と前述のボルト・ナット11、12とを交互に締め上げて徐々に緊締するもので(図8参照)、締め上げる過程においてパッキン3が第1の壁パネルW1と第2の壁パネルW2との隙間をうめ、最終的に両者の連結部が水密状態となる(図3参照)。
【0026】
ところで、上述した実施例にあっては、図2に示したように、第1の締結手段1と第2の締結手段2とを上下方向に沿って交互に配置する例について示したが、第1の締結手段1と第2の締結手段2とが正面視水平方向に並んで位置するように配置してもよい(不図示)。
【0027】
また、上述した実施例にあっては、第1の壁パネルW1と第2の壁パネルW2と間の全体に亘ってパッキン3を設ける例について示したが、水密状態が保たれるのであれば、図9に示したように、第1の壁パネルW1と第2の壁パネルW2と間の一部に設けるようにしたり、図示していないが、パッキン3を設けなくてもよい。
【0028】
さらに、上述した実施例にあっては、第1の壁パネルW1と第2の壁パネルW2とを水平方向に連結する例について示したが、これに限らず、第1の壁パネルW1と第2の壁パネルW2とを、例えば、垂直方向に連結するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0029】
W 壁パネル
W1 第1の壁パネル
W2 第2の壁パネル
W11 第1の突出部
W12 第1の受入部
W21 第2の突出部
W22 第2の受入部
1 第1の締結手段
2 第2の締結手段2
21 有頭雄ねじ部材
22 雌ねじ部
23 貫通孔
3 パッキン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
隣り合う壁パネルの端辺どうしを突き合わせて該壁パネルを壁面方向に延伸するように連結し、一連の壁を形成する壁パネルの連結構造であって、
連結する壁パネルは、第1の壁パネルと第2の壁パネルであり、
第1の壁パネルの端辺には、第1の突出部と第1の受入部とが設けられ、
第2の壁パネルの端辺には、第2の突出部と第2の受入部とが設けられ、
前記第1の突出部は、前記第2の受入部に受け入れられると共に、前記第2の突出部は前記第1の受入部に受け入れられるものであり、
前記第1および第2の壁パネルの端辺が突き合わされた状態で、前記壁面方向に沿って、前記第1および第2の壁パネルを引き寄せて締結する第1の締結手段と、
前記第1および第2の壁パネルの端辺が突き合わされた状態で、該第1および第2の壁パネルの厚さ方向に沿って、前記第1の突出部と前記第2の突出部とを引き寄せて締結する第2の締結手段と、を備えていることを特徴とする壁パネルの連結構造。
【請求項2】
第2の締結手段は、
第1の突出部を第1の壁パネルの厚さ方向に貫通する貫通孔と、
第2の突出部に設けられ、前記第1および第2の壁パネルの端辺が突き合わされた状態で、前記貫通孔に臨むように形成された雌ねじ部と、
前記第1の突出部の外側部から前記貫通孔を介して前記雌ねじ部に螺合し、前記外側部に着座する座面を有する有頭雄ねじ部材と、により構成されていることを特徴とする請求項1記載の壁パネルの連結構造。
【請求項3】
壁パネルは、箱形形状の貯水槽の側壁であり、突き合わされる第1の壁パネルと第2の壁パネルとの間には、パッキンが介在していることを特徴とする請求項1または2記載の壁パネルの連結構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−256653(P2011−256653A)
【公開日】平成23年12月22日(2011.12.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−133644(P2010−133644)
【出願日】平成22年6月11日(2010.6.11)
【出願人】(394018661)東西工業株式会社 (2)
【Fターム(参考)】