説明

変動荷重検出パッド及びこれを用いた変動荷重検出板、分布型変動荷重検出板、並びに変動荷重検出装置

【課題】薄型で、且つ、大きな変動荷重を検出することが可能な変動荷重検出パッド及びこれを用いた変動荷重検出板、分布型変動荷重検出板、並びに変動荷重検出装置を提供することを目的とする。
【解決手段】変動荷重検出パッド1は、高分子圧電材料から形成された圧電板11と、圧電板11を挟む一対の電極板12、13と、一対の電極板12、13を挟む一対の絶縁板14、15とを備える。そして、一対の電極板12、13はそれぞれ圧電板11に直に面接触し、且つ、非接着である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、変動荷重検出パッド及びこれを用いた変動荷重検出板、分布型変動荷重検出板、並びに変動荷重検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
1kN(100kg)〜1MN(100ton)もの大きな変動荷重の計測、モニタリング技術が求められている。このような大きな変動荷重の計測等が求められる対象としては、例えば、クレーン車におけるアウトリガーのベース底面の変動荷重、コンテナトレーラのコンテナと車両との間の変動荷重、軌道と枕木の間の変動荷重、プレス機械の変動荷重、車両の衝突衝撃力などが挙げられる。
【0003】
このような重量物の変動荷重の測定では、薄型で、受圧面積が大きく、且つ、大きな変動荷重を計測可能な測定装置が要求される。また、状況によっては対象物が負荷する荷重に加え、ずれ力を検出することを要求される。
【0004】
薄型で受圧面積が大きい圧力検出装置として、特許文献1に代表される変動荷重検出パッドが知られている。圧力検出装置には圧力を検出する素子として圧電フィルムが用いられており、圧電フィルムは、フィルム面の押圧、或いは、フィルム面方向への伸縮によって、フィルムの厚みを変化させ、この厚みの変化に応じて生じる電荷変動を両面に配置されている電極膜を介して取り出すことで、作用している荷重を検出するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−226858号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1等に開示されているように、通常、圧電板の表面に蒸着やスパッタリングによる金属膜、或いは導電性ペーストなどの電極膜が形成されたものが使用されている。これらの電極膜は非常に薄く強度が弱いので、大きな荷重が作用すると、電極膜のひび割れや剥離が生じる。このため、大きな変動荷重の計測には用いることは困難である。
【0007】
本発明は、上記事項に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、薄型で、且つ、大きな変動荷重を検出することが可能な変動荷重検出パッド及びこれを用いた変動荷重検出板、分布型変動荷重検出板、並びに変動荷重検出装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る変動荷重検出パッドは、
高分子圧電材料から形成された圧電板と、
前記圧電板を挟む一対の電極板と、
前記一対の電極板を挟む一対の絶縁板と、を備え、
前記一対の電極板はそれぞれ前記圧電板に直に面接触し、且つ、非接着であり、
負荷される荷重に応じて前記圧電板の厚みを変化させ、前記圧電板から前記荷重に応じた電圧を出力させる、ことを特徴とする。
【0009】
また、前記一対の電極板のうち少なくとも一方が前記圧電板の面積よりも小さいことが望ましい。
【0010】
また、前記電極板が金属板であることが望ましい。
【0011】
また、前記金属板が耐腐食性の金属板或いは表面に錆止め処理が施された金属板であることが好ましい。
【0012】
また、前記絶縁板は、硬質樹脂素材から構成されていてもよい。
【0013】
また、前記絶縁板は、前記荷重を前記一対の電極板に分散させる弾性素材から構成されていてもよい。
【0014】
本発明に係る変動荷重検出板は、
上記いずれかの変動荷重検出パッドと、
前記変動荷重検出パッドを挟む一対の受圧板と、
前記一対の受圧板を互いに押し合わせて前記変動荷重検出パッドと一体的に固定させる固定部材と、を備えることを特徴とする。
【0015】
また、前記圧電板に所定の負荷が加わるように前記固定部材によって固定され、
前記所定の負荷を超える荷重に応じて前記圧電板の厚み変化を生じさせるように構成してもよい。
【0016】
本発明の第1の観点に係る分布型変動荷重検出板は、上記いずれかの変動荷重検出パッドが同一平面上に複数配置されていることを特徴とする。
【0017】
本発明の第2の観点に係る分布型変動荷重検出板は、上記いずれかの変動荷重検出板が同一平面上に複数配置されていることを特徴とする。
【0018】
本発明に係る変動荷重検出装置は、
凹部が形成されて受圧面及び垂下部を有する断面コの字状の受圧部材と、
前記垂下部内壁に対向配置される一対の上記の変動荷重検出板と、
前記一対の変動荷重検出板に当接するずれ力伝達部を有し、前記ずれ力伝達部が前記受圧部材の凹部に内包される支持部材と、
前記受圧部材と前記支持部材との間に配置された弾性板と、を備え、
前記受圧部材に負荷される荷重によって前記受圧面に沿って生じるずれ力が前記ずれ力伝達部に伝達され、
前記ずれ力伝達部によって前記一対の変動荷重検出板のいずれかが押圧され、
前記一対の変動荷重検出板からそれぞれ出力される電圧の差から前記ずれ力を検出する、ことを特徴とする。
【0019】
また、前記一対の変動荷重検出板が二組それぞれ対向配置され、一組の前記変動荷重検出板を結ぶ線と他の一組の前記変動荷重検出板を結ぶ線とが十字状に交差するよう構成してもよい。
【0020】
また、前記凹部が円盤状であり、前記凹部の周壁に複数対の前記変動荷重検出板がそれぞれ対向配置され、
前記支持部材は複数対の前記変動荷重検出板に当接する円盤状の前記ずれ力伝達部を備えていてもよい。
【0021】
更に、前記支持部材の底面に上記いずれかの変動荷重検出パッドが配置され、前記受圧部材に加わる変動荷重を検出するよう構成してもよい。
【発明の効果】
【0022】
本発明に係る変動荷重検出パッドは、機械的強度を有する一対の電極板で圧電板を挟んだ形態である。そして、圧電板と電極板とは直に面接触しており、且つ、非接着である。
【0023】
電極板は機械的強度を有するので、大きな荷重が作用しても、電極板にひび割れ等が生じにくく、大きな変動荷重の計測に用いることができる。
【0024】
また、電極板と圧電板とは非接着であるので、電極板と圧電板との間に接着層がなく、静電容量が生じない。更に、ポアソン効果による電極板の面方向への伸びが生じない。このため、電極板に挟まれた圧電板は、面に沿って伸ばされることなく、負荷される荷重に応じて厚み方向に圧縮されるので、変動荷重を精度良く検出できる利点がある。
【0025】
更に、それぞれ薄い圧電板、電極板、絶縁板から構成されるため、薄型で、且つ、受圧面積を大きく構成することができ、様々な使用用途に適応させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】実施の形態1に係る変動荷重検出パッドの外観斜視図である。
【図2】実施の形態1に係る変動荷重検出パッドの平面透視図である。
【図3】図2のA−A’断面図である。
【図4】図2のB−B’断面図である。
【図5】(A)は電極膜が形成された圧電板の断面図、(B)は圧縮荷重が加わった状態の断面図である。
【図6】電極板の曲げ変形による影響を説明する図である。
【図7】凹凸がある場所での変動荷重検出パッドの使用状況を示す断面図である。
【図8】実施の形態2に係る変動荷重検出板の断面図である。
【図9】実施の形態3に係る分布型変動荷重検出板の外観斜視図である。
【図10】実施の形態4に係る変動荷重検出装置の外観斜視図である。
【図11】図10のA−A’断面図である。
【図12】実施の形態4に係る変動荷重検出装置の部分断面図である。
【図13】実施の形態4に係る変動荷重検出装置の支持部材の平面図である。
【図14】(A)は実施の形態5に係る変動荷重検出装置の外観斜視図、(B)はA−A’断面図、(C)はB−B’断面図である。
【図15】実施の形態6に係る変動荷重検出装置の外観斜視図である。
【図16】実施の形態6に係る変動荷重検出装置の支持部材の外観斜視図である。
【図17】図15のA−A’断面図である。
【図18】実施の形態7に係る変動荷重検出装置の断面図である。
【図19】実施の形態8に係る変動荷重検出装置の断面図である。
【図20】実施例1における荷重と変動荷重検出パッドの出力との関係を示す図である。
【図21】実施例2における荷重と変動荷重検出パッドの出力との関係を示す図である。
【図22】実施例3における荷重と変動荷重検出パッドの出力との関係を示す図である。
【図23】実施例4における荷重と変動荷重検出装置の出力との関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
(実施の形態1)
実施の形態1に係る変動荷重検出パッド1は、図1の外観斜視図、図2の平面透視図、図3及び図4の断面図に示すように、主として、圧電板11と、圧電板11を挟む一対の電極板12、13と、電極板12、13を挟む一対の絶縁板14、15と、スペーサ16を介して圧電板11と電極板12、13と絶縁板14、15とを一体に固定する接着部材17とから構成される。
【0028】
圧電板11は、フィルム状の薄膜であり、柔軟性を備える高分子圧電材料から形成されている。圧電板11の具体的な素材の一例を挙げると、ポリフッ化ビニリデンや、シアン化ビニリデン等である。圧電板11は、たとえば、市販の厚さ20μm〜200μm、弾性率約3000MPaのポリフッ化ビニリデンを所定の形状寸法に切り出して用いればよい。
【0029】
高分子圧電材料から構成された圧電板11は、板面が押圧されることによって、圧電板11の厚みが変化し、この厚みの変化に応じた電荷変動が生じる。この電荷変動、即ち電圧を両面に配置されている電極板12、13を介して検出することで、変動荷重検出パッド1に作用している荷重を測定することができる。
【0030】
電極板12、13は、圧電板11を挟むように配置されている。それぞれの電極板12、13は圧電板11に直に面接触し、且つ、圧電板11に非接着である。そして、それぞれの電極板12、13には、圧電板11が発生する電荷信号を出力するための電気配線(不図示)を接続する端子部18、19が設けられている。圧電板11に蒸着、スパッタリングあるいは導電性ペーストなどによって電極膜が形成され、電極膜に配線を接続する方法では、電極膜が薄いので配線の接続方法が限られていたが、電極板12、13は金属板であるので、ハンダ付け、カシメ、ネジ止めなど、種々の方法で容易に端子部18、19に配線を接続することができる。
【0031】
電極板12、13には、ともに、面内には強度を有し、面外にはある程度の柔軟性を有する薄い金属板を用いる。
【0032】
電極板12、13は、圧電板11と直に接触して配置されるので、長期間使用した場合でも、接触面に錆が生じにくいステンレス、アルミ、銅など、耐腐食性の金属板であることが好ましい。或いは、電極板12、13は、錆の発生を抑えるために、少なくとも圧電板11と接する面に貴金属メッキ(金メッキ、銀メッキ等)等、錆止め処理が施された金属板であってもよい。
【0033】
電極板12、13の少なくとも一方は、圧電板11の面積より小さく構成するとよい。電極板12、13がともに圧電板11の寸法よりも大きいと、圧電板11からはみ出した部分で電極板12、13が接触してしまい、圧電板11から発生する電荷信号が計測できないおそれがあるためである。
【0034】
電極板12、13は圧電板11の表面と直に接触し、圧電板11との境界面には強い圧力が作用するので、電極板12、13の圧電板11に接触する面は、滑らかな平面に加工したものを用いるとよい。滑らかさの程度としては、圧電板11に傷を付けない研磨仕上げ(精密仕上げ)程度の滑らかさであればよい。
【0035】
絶縁板14、15は、電極板12、13と圧縮力を負荷する対象物との間を電気的に絶縁する作用を備える。対象物の負荷により、絶縁板14、15にも大きな圧力が加わるので、絶縁板14、15は電気絶縁性が高く、且つ、弾性率が大きい材料から構成される。絶縁板14、15として、樹脂シート、樹脂板、繊維強化樹脂シート等の硬質樹脂が用いられ、具体的には、ポリエチレンテレフタラート樹脂、ナイロン樹脂、硬質塩化ビニル、ベークライト等が挙げられる。
【0036】
絶縁板14と電極板12、及び、絶縁板15と電極板13は、それぞれ接着部材17で接着されている。更に、絶縁板14と絶縁板15の縁同士は、絶縁板14、15の縁全域に渡って、スペーサ16を介し、接着部材17で接着されている。このようにして、圧電板11、電極板12、13、絶縁板14、15が一体的に固定され、変動荷重検出パッド1が形成されている。
【0037】
接着部材17として、接着剤や粘着材等、絶縁板14と絶縁板15とを接着し得る種々のものが用いられる。圧電板11、及び電極板12、13を積層し、その厚みが大きい場合には、必要に応じてスペーサ16を挟んで接着してもよい。
【0038】
また、圧電板11の寸法(面積)が小さい場合には、絶縁板14、15の縁同士を、接着部材17を介して接着するだけで、圧電板11と電極板12、13と絶縁板14、15とを一体に固定することができるが、圧電板11の寸法が大きい場合には、以下のように構成するとよい。
【0039】
図2の透視図、及び、図4の断面図に示すように、圧電板11及び電極板12、13に1箇所又は複数箇所の対応する開口部を設け、開口部分にもスペーサ16を介して絶縁板14、15同士を接着する。図2では、圧電板11及び電極板12、13に2箇所の円形状の開口部を設けている。
【0040】
上記のように構成することで、圧電板11と電極板12、13とが非接着であっても、圧電板11と電極板12、13との相互のずれを防止することができる。
【0041】
以上のように構成された変動荷重検出パッド1では、変動荷重検出パッド1の厚み方向に圧縮荷重を受けると、圧電板11が圧縮荷重に応じて圧縮され、圧縮量に応じた電荷を発生する。そして、この電荷を電極板12、13、及び、端子部18、19を介して取り出すことで、変動荷重検出パッド1に負荷された変動荷重を精度良く検出することができる。
【0042】
ここで、本実施の形態に係る変動荷重検出パッド1において、電極板12、13として金属板を用いる理由、及び、電極板12、13と圧電板11とが非接着である理由について説明する。
【0043】
まず、電極板12、13として金属板を用いる理由について説明する。
【0044】
前述のように、従来では圧電板11の両面に蒸着やスパッタリング等の極薄い電極膜が形成されているが、この電極膜は強度が低いので、大きな変動荷重が作用すると、電極膜のひび割れや、電極膜の剥離が生じる。このため、大きな変動荷重の検出ができない。
【0045】
一方、本実施の形態に係る変動荷重検出パッド1では、金属板から構成される電極板12、13を用いているため、変動荷重検出パッド1に大きな圧縮力が作用しても、強度の高い電極板12、13の破損は生じにくい。したがって、変動荷重検出パッド1は、負荷される大きな変動荷重にも十分に耐え得ることができ、大きな変動荷重の検出を可能にしている。
【0046】
更に、電極板12、13に金属板を用いるもう一つの理由について、図5を参照して説明する。
【0047】
図5(A)は、従来の蒸着又はスパッタリング等で圧電板11両面に薄い電極膜20、21を形成し、電極膜20、21上に弾性層22、23を設けた場合の変動荷重検出パッド51の断面を模式的に示しており、また、図5(B)は、変動荷重検出パッド51に剛性板24、25を介して圧縮力が加わった状態の断面図を模式的に示している。
【0048】
矢印で示すように、変動荷重検出パッド51に厚み方向に圧縮力が作用すると図5(B)に示すように、圧電板11は厚さ方向に縮むと同時に、圧電板11自身のポアソン効果によって面に沿って(圧縮力に対して垂直方向)伸びる変形をする。また、圧縮力が作用すると、弾性層22、23も厚さ方向に縮むと同時に、弾性層22、23のポアソン効果によって面に沿って(圧縮力に対して垂直方向)伸びる変形をする。この弾性層22、23の伸びは、弾性層22、23の弾性率が小さいほど大きく、また弾性層22、23の厚さが厚いほど大きくなる。
【0049】
電極膜20、21が蒸着やスパッタリング等で形成されている場合、電極膜20、21は弾性層22、23の伸びに対して強度的に抵抗しないので、弾性層22、23が伸びることにより、圧電板11も引き伸ばされることになる。したがって、圧電板11は、圧縮荷重を受けて厚さ方向に縮むことに加え、弾性層22、23による圧電板11の引き伸ばしにより、余計に厚さ方向に縮むことになる。
【0050】
圧縮力は圧電板11の表面全体に作用するのに対して、弾性層22、23が圧電板11を水平方向に引き伸ばす力は薄い圧電板11の切断面に作用する。このため、弾性層22、23が圧電板11を引き伸ばすことによって生じる圧電板11の厚さ変化は、圧縮荷重による厚さ変化に対し、無視できない量である。このため、圧電板11からは、圧縮歪みによる電荷変動に加え、無視できない量の引き伸ばし歪みによる電荷変動が生じる。したがって、負荷される圧縮荷重と圧電板11からの電荷変動が比例しなくなり、圧縮荷重の精度の高い検出ができないことになる。
【0051】
たとえば、圧電体の両面にアルミ蒸着電極膜を付けた一辺が100mm四角の圧電フィルム(厚さ80μm)の両面に、厚さが異なるポリエチレンテレフタラート樹脂シート(0.2mm、0.7mm、1.2mm、1.7mm)をそれぞれゴム系接着剤で接着して、これを油圧サーボ試験機の圧縮平板の上に置き、上面側に60×60mm四角の金属の加圧板を置いて、繰り返し圧縮力2.5トンを負荷したときのセンサ出力を表1に示す。計測装置の構成は後述する実施例1で説明するものと同様である。表1より電極膜が薄い場合には、弾性層22、23の厚さによって圧電体の出力は変化し、弾性層が厚くなるほど出力が大きくなることがわかる。
【表1】

【0052】
これに対して本実施の形態に係る変動荷重検出パッド1は、電極板12、13が強度を有する金属板である。このため、変動荷重検出パッド1に負荷される圧縮力で、弾性層22、23のポアソン効果による水平方向の伸びが生じても、電極板12、13が引き伸ばされることはない。電極板12、13は、例えば、ステンレス薄板の場合、厚さ0.1mm以上あれば弾性層22、23の厚さや弾性率による影響を受けない。したがって、電極板12、13が引き伸ばされることはないので、電極板12、13に挟まれた圧電板11も引き伸ばされることがない。
【0053】
また、電極膜が蒸着やスパッタリングなどの極薄い電極膜の場合には、弾性層が圧電板を水平方向に引き伸ばす影響が、圧縮力を負荷した面積の外側にもある程度及ぶ。このため、圧電板の出力が荷重負荷面積の影響を受けることになる。即ち、たとえ同じ力を加えたとしても、力が加わっている面積によって、圧電板からの電荷変動が異なることになり、精度の高い測定が困難になる。
【0054】
これに対して本発明の変動荷重検出パッド1は、圧縮力を受けると、電極板12、13は接触摩擦によって圧電板11の面に沿った伸びを拘束する。即ち、圧電板11には、圧縮力による厚さ変化のみが生じるようになる。このため、荷重負荷面積の影響をほとんど受けず、圧縮力に応じた電荷を発生するので、変動荷重を精度よく検出することができる。
【0055】
以上説明したように、本発明の変動荷重検出パッド1では、電極板12、13として金属板を用いることにより、パッド寸法が小さくても、或いは大きくても圧縮力と圧電板11からの出力との比例定数が変化せず、更に、圧電板11の出力が、荷重負荷面積の影響をほとんど受けない利点を備えている。
【0056】
続いて、本実施の形態に係る変動荷重検出パッド1において、電極板12、13と圧電板11とが非接着である理由について説明する。
【0057】
電極板12、13と圧電板11とが接着されている場合、電極板12、13と圧電板11との間に、接着部材或いは粘着部材からなる接着層が生じることになる。これによって、電極板12、13と圧電板11の間で静電容量が生じ、圧電板11の出力信号が大幅に小さくなってしまう。
【0058】
また、圧電板11の表面に電極板12、13が接着されていると、大きな圧縮力が作用した場合に、電極板12、13と圧電板11の間に介在する接着層の厚さ変化が生じる。接着層の厚さ変化が生じると、電極板12、13と圧電板11表面で構成された静電容量が変化することとなり、検出精度が低下してしまう。
【0059】
これに対して、本実施の形態に係る変動荷重検出パッド1では、電極板12、13と圧電板11表面とが非接着状態にあるので、電極板12、13面と圧電板11表面の間隔が零になり、静電容量が生じないので精度の高い計測を実現できる。
【0060】
また、電極板12、13は薄い金属薄板から構成されているとよい。電極板12、13として、厚い金属板が用いられている場合、変動荷重検出パッド1は使用中に圧縮力を受けて面外に撓むこともある。たとえば、図6に示すように圧縮力を受けて、電極板12、13の紙面下側に向けて凸状に曲げ変形したとする。このとき、電極板12、13は弾性率の大きい金属板であるので、上下の電極板12、13は、図6の一点鎖線で示すそれぞれの中立軸周りに曲がる。すると、紙面上、上側の電極板12の圧電板11と接触する面は曲げ変形によって伸びる歪みを生じる。また、下側の電極板13の圧電板11と接触する表面は曲げ変形によって縮む歪みを生じる。すると電極板12、13と圧電板11の間の摩擦力によって、圧電板11の上側表面は伸びる歪みを生じ、圧電板11の下側表面は縮む歪みを生じる。その結果、圧電板11は曲げ変形による出力を生じるようになる。
【0061】
これに対して、電極板12、13が薄い金属薄板であれば、電極板12、13が曲げ変形しても電極板12、13表面の曲げ歪みの変化が少なく、変動荷重検出パッド1が使用中に面外に撓んだ場合でも精度の高い計測が可能になる。
【0062】
続いて、変動荷重検出パッド1の耐荷力について説明する。変動荷重検出パッド1において、圧電板11に作用する圧力は、絶縁板14、15、及び、電極板12、13を介して伝達される。例えば、面積が小さい方の電極板12の表面が一辺50mmの正方形であって、100kN(10ton)の圧縮荷重が変動荷重検出パッド1両面の中央部に作用した場合、圧電板11に作用する圧力は40MPa(σ=100,000(N)/(50×50)mm=40)である。たとえば、圧電板11の厚さを0.1mmとすると、40MPaの圧力によって生じる圧電板11の厚さの縮み量は約0.0013mm((δ=σ×h/E=40(MPa)×0.1(mm)/3000(MPa))であり、圧電板11の厚みの約1.3%である。この厚み変化は圧電板11の耐荷能力の範囲にある。つまり、50mm四角の加圧板寸法の変動荷重検出パッド1で10トンの圧縮力が計測可能である。
【0063】
次に、変動荷重検出パッド1の全体の剛性を、上記圧電板11の縮み量に加えて、仮に、電極板12、13がともに厚さ0.1mmのステンレス板、一対の絶縁板14、15がともに厚さ0.2mmで弾性率E=2500MPaの樹脂板である場合について概略計算したものを表2に示す。
【表2】

【0064】
同表において、変動荷重検出パッド1の全体厚さは0.7mmである。この変動荷重検出パッド1に100kN(10ton)の圧縮力を加えたときの全体厚さの縮み量の合計は0.0078mmと極わずかである。このように本実施の形態に係る変動荷重検出パッド1は大きな圧縮力に対して剛性のある構成となっている。
【0065】
上記では、硬質樹脂シートを用いた絶縁板14、15について説明したが、絶縁板14、15として、電極板12、13に圧縮荷重を分散させるクッション部材としての機能を兼ねる弾性素材から構成してもよい。絶縁板14、15として、例えば、天然ゴム、合成ゴム、布引ゴム等の低弾性率の素材を用いるとよい。
【0066】
絶縁板14、15として、弾性素材を用いた場合、重量物たとえば、トレーラの台車表面や、コンクリートの地面等に設置して対象物の圧縮力を計測する際に効果的である。このような場合、変動荷重検出パッド1を載置しようとする台車やコンクリート等の支持部材の表面に砂粒が付着していること、溶接のスパッタが付いていること、或いは、局部的に撓んでおり平面ではないことがある。
【0067】
図7に、圧縮力を負荷する対象物26の表面、及び、載置台27の表面に砂粒28が付着している箇所で変動荷重検出パッド1を使用した場合の断面を模式的に示す。ゴム板のような低弾性率の絶縁板14、15により、対象物26と載置台27の表面の砂粒28による凹凸の影響を吸収して、電極板12、13になだらかに圧縮力を伝達するようになる。
【0068】
また、変動荷重検出パッド1は、圧電板11が柔軟性を有する高分子材料から構成されていること、及び、電極板12、13は強度を備え、且つ、面外に撓むことが可能な金属薄板であるため、圧電板11と電極板12、13が圧力の分布に応じて撓み変形することができる。
【0069】
このため、変動荷重検出パッド1を載置しようとする台車やコンクリート等に砂粒が付着している等、載置する箇所に凹凸を有する場合でも精度良く変動荷重を計測することができる。
【0070】
また、変動荷重検出パッド1は、圧電板11と電極板12、13がスペーサ16の部分を除き、変動荷重検出パッド1の略全面にわたって配置されているので、受圧面積の大きい変動荷重検出パッド1を実現することができる。また、受圧面の形状は、矩形の他、用途に応じて自由に製作して用いることができる。
【0071】
(実施の形態2)
続いて、実施の形態2に係る圧縮力を検出する変動荷重検出板2について図8の断面図を参照して説明する。
【0072】
変動荷重検出板2は、上述した変動荷重検出パッド1を、一対の受圧板31、32で挟み、固定部材33でこれらを一体的にした構成である。
【0073】
固定部材33として、例えば、上述した変動荷重検出パッド1に設けた開口部にボルトを通してナットで締め付ける固定具が用いられる。
【0074】
受圧板31、32は、それぞれ機械的強度を有する金属等から形成される。
【0075】
変動荷重検出パッド1の開口部の直径をボルト直径より少し大きめに製作してボルト及びナットで締め付け、2枚の受圧板31、32が変動荷重検出パッド1を圧縮するように互いに押圧した状態となる。このように固定することで、変動荷重検出パッド1内に配置されている圧電板11には、所定の負荷が加わった状態、即ち、所定の厚み程、圧電板11が圧縮された状態となる。
【0076】
このようにすると、所定の圧縮力を越える圧縮力に対して変動荷重検出板2が抵抗無く厚み変化を生じさせる、即ち、所定の圧縮力を超える圧縮力に応じて、圧電板11の厚み変化を生じさせることができる。
【0077】
また、変動荷重検出パッド1の寸法を変動荷重検出板2の寸法の大部分にわたって配設するようにすると、薄くて、受圧面積が大きく、強度の高い変動荷重検出板2を構成することができる。
【0078】
また、固定部材33はボルト頭部およびナットが受圧板31、32から突出しない埋め込み状態にするとよい。そして、変動荷重検出板2は、載置台等の上に置いての使用、あるいは一方の面を粘着シートで固定しての使用、或いは受圧板31、32のどちらか一方を大きく作製してネジ等により壁等に固定して使用することができる。なお、受圧板31、32同士の周囲の隙間はゴム系接着剤などでシールしてもよい。
【0079】
(実施の形態3)
続いて、実施の形態3に係る分布型変動荷重検出板3について、図9を参照して説明する。分布型変動荷重検出板3は、図9の外観斜視図に示すように、上述した変動荷重検出パッド1を同一平面上に複数配置した構成である。このように、変動荷重検出パッド1を配置することで、どの箇所にどの程度の荷重が加わっているのか、容易に検出することができる。
【0080】
変動荷重検出パッド1は、全て同寸法のものを用いるとよい。また、変動荷重検出パッド1は、それぞれの端面を接着して配置しても、剛性板等の上にそれぞれの変動荷重検出パッド1を配置してもよい。なお、図9では、変動荷重検出パッド1を二次元状に配置しているが、一次元的に配置してもよく、使用用途に応じて適宜適切な配置にすればよい。
【0081】
また、実施の形態2に係る変動荷重検出板2を用い、同様に、同一平面上に二次元的、或いは一次元的に配列させて用いてもよい。
【0082】
(実施の形態4)
続いて、上述した変動荷重検出板2を用いた、圧縮荷重が加わった際のずれ力を検出する変動荷重検出装置4について説明する。
【0083】
図10の外観斜視図、図11の断面図を示すように、実施の形態4に係る変動荷重検出装置4は、主として、受圧面及び垂下部を有する断面コの字状の受圧部材41と、垂下部内壁に対向配置される一対の変動荷重検出板2a、2a’と、一対の変動荷重検出板2a、2a’に当接するずれ力伝達部44a、44a’を有し、ずれ力伝達部44a、44a’が受圧部材41に内包される支持部材43と、受圧部材41と支持部材43との間に配置された弾性板42とから構成される。
【0084】
受圧部材41は、一方の底面が開口した函体であり、機械的強度を備える金属等の素材から形成されている。受圧部材41の垂下部内壁には、一対の変動荷重検出板2a、2a’が対向して配置されている。変動荷重検出板2a、2a’は、上述した変動荷重検出板2と同様の構成であるため、説明を省略する。なお、図では受圧部材41は、函体の場合について説明しているが、1軸のずれ力を検出する場合には、板状部材が断面コの字状に折り曲げられた形態であってもよい。
【0085】
支持部材43は、金属等機械的強度の高い素材から形成されている。支持部材43は、断面コの字状の受圧部材41に一部が内包されており、支持部材43と受圧部材41の受圧面の裏面との間には弾性板42が配置されている。支持部材43は、ベース46等に固定されていてもよい。そして、ベース46には、壁や載置台等にネジ等で固定して使用するための孔45が設けられていてもよい。
【0086】
受圧部材41の垂下部に対向する支持部材43の側面に、ずれ力伝達部44a、44a’が形成されている。ずれ力伝達部44a、44a’は、受圧部材41の垂下部に配置された変動荷重検出板2a、2a’に向けて円弧状に突出し、それぞれのずれ力伝達部44a、44a’が、変動荷重検出板2a、2a’と接触している。
【0087】
前記ずれ力伝達部44a、44a’の両端の円孤部は、ずれ力伝達部44a、44a’の幅の中心と接触部を半径とする円弧状に加工してある。また、図示はしていないが、受圧部材41の両端の垂下部には、ずれ力伝達部44a、44a’に変動荷重検出板2a、2a’を押しつけて接触させるための調節ネジ等が備えられている。
【0088】
弾性板42は受圧部材41の底面の圧縮力を支持部材43に伝達するとともに、ずれ力を伝達しない特性を備える。つまり、受圧部材41が受けたずれ力は垂下部に固定された一対の変動荷重検出板2a、2a’からずれ力伝達部44a、44a’を介して支持部材43に伝達するようにしたものである。弾性板42には、ゴム板、硬質ゴム板、あるいは軟質塩化ビニル、フッ素樹脂板のような低弾性率の板を用いるとよい。
【0089】
弾性板42が圧縮力を受けると、図12の破線で示す元の状態から、実線で示す状態に厚さ方向に大きく縮むと同時に、幅方向にも広がって支持部材43からはみ出すので、矩形に形成する場合、弾性板42の形状は図13の平面図で示すように、圧縮力が作用した状態で支持部材43の上面の寸法に略一致する形状に作製するとよい。図13に示すように、各辺を内方に湾曲させた形状の弾性板42にすることで、圧縮力が加わった際に、破線で示す形状に変形することになる。
【0090】
続いて、上記変動荷重検出装置4のずれ力の検出原理について説明する。受圧部材41の表面に圧縮力と同時にずれ力が作用すると、圧縮力によって弾性板42は厚さ方向に縮む。また、圧縮力が受圧部材41の中央からずれた位置に作用する場合は、受圧部材41はわずかに回転する。
【0091】
また、弾性板42は摩擦力によってずれ力の一部を支持部材43に伝達するように感じられるが、実際には、ずれ力によって弾性板42を剪断変形させようとしても、ずれ力伝達部44a、44a’は両端の円弧部が変動荷重検出板2a、2a’と接触していること、及び、変動荷重検出板2a、2a’が厚さ方向に硬いので、受圧部材41が変動荷重検出板2a、2a’を介してずれ力伝達部44a、44a’押しても、受圧部材41はずれ力の方向にほとんど変位することができない。
【0092】
つまり、弾性板42は弾性率が小さいので、ずれ力によって容易に剪断変形するものであるが、ずれ力伝達部44a、44a’が受圧部材41の変位を止めることになる。このため、弾性板42は剪断変形せず、ずれ力をほとんど伝達しないことになる。
【0093】
このため、ずれ力のほとんど全てが、一対の変動荷重検出板2a、2a’に伝達されることになるので、一対の変動荷重検出板2a、2a’、すなわち、それぞれの変動荷重検出板2a、2a’内に配置されている圧電板11からの出力を取り出し、その差分を計測することでずれ力を計測できるのである。
【0094】
以上説明したように、本実施の形態に係るずれ力を検出する変動荷重検出板4は、起歪部を宙に浮かせないで圧縮力を弾性板42で受け止める構造であるので、薄くて、受圧面積が大きく、強度の高い変動荷重検出板4を提供することができる。
【0095】
なお、本実施の形態に係るずれ力の検出原理は、変動荷重検出板2a、2a’が厚さ方向に硬いことが必要であるが、厚さ方向に硬いものであれば従来のセラミクスなどの圧電体であっても適用することができる。
【0096】
(実施の形態5)
また、上記では、1軸方向のずれ力を検出する形態について説明したが、2軸方向のずれ力を検出する形態にすることもできる。例えば、以下の構成にすればよい。
【0097】
図14(A)は、実施の形態5に係る変動荷重検出装置5の外観斜視図、図14(B)、図14(C)は、それぞれ図14(A)のA−A’断面図、B−B’断面図である。受圧部材41は、垂下部分がX軸方向及びX軸方向に直交するY軸方向の2方向に設けられた函体である。そして、図14(B)に示すように、受圧部材41のX軸方向に対向するそれぞれの垂下部内壁に変動荷重検出板2a、2a’が配置され、また、図14(C)に示すように、Y軸方向に対向するそれぞれの垂下部内壁に変動荷重検出板2b、2b’が配置されている。したがって、支持部材43のX軸方向に突出させて形成されたずれ力伝達部44a、44a’がそれぞれ変動荷重検出板2a、2a’と当接するように配置され、また、支持部材43のY軸方向に突出させて形成されたずれ力伝達部44b、44b’がそれぞれ変動荷重検出板2b、2b’と当接するように配置されている。
【0098】
このように構成することで、変動荷重検出板2a、2a’からの出力電圧の差、及び、変動荷重検出板2b、2b’からの出力電圧の差を検出することにより、受圧部材41の受圧面に作用するX軸及びY軸方向のずれ力を検出することができる。
【0099】
(実施の形態6)
更に、複数対の変動荷重検出板2を用いて、複数軸のずれ力を検出する形態とすることもできる。複数軸のずれ力を検出するには、例えば、以下の構成にすればよい。
【0100】
図15は、実施の形態6に係る変動荷重検出装置6の外観斜視図、図16は支持部材43の外観斜視図、図17は、図15のA−A’断面図である。
【0101】
受圧部材41は、受圧面を底面とする扁平の円筒から構成されており、つまり、内部に円盤状の凹部が形成されているものである。受圧部材41に形成されたこの円盤状の凹部にずれ力伝達部44が形成された支持部材43が内包されている。
【0102】
ベース46に固定された支持部材43は、扁平の円柱体であり、円柱体の全周に渡り外方へ向けて円弧状に突出したずれ力伝達部44が形成されている。支持部材43と受圧部材41の受圧面の裏面との間に弾性板42が配置されている。
【0103】
そして、受圧部材41の凹部周壁には、図17に示すように、受圧部材41の中心を中心点として、複数対の変動荷重検出板2a、2a’、2b、2b’、2c、2c’、2d、2d’、2e、2e’、2f、2f’、2g、2g’、2h、2h’がそれぞれ放射状に配置されている。
【0104】
上記の構成とすることで、受圧部材41の受圧面に作用する複数軸のずれ力を検出することができる。
【0105】
(実施の形態7)
続いて、実施の形態7に係る変動荷重検出装置7について、図18の断面図を参照して説明する。変動荷重検出装置7は、上述した変動荷重検出装置4の別の構成の一例を示すものである。
【0106】
受圧部材41の垂下部の幅を広くして、支持部材43のずれ力伝達部44a、44a’の幅を小さくした構成である。また、弾性板42はずれ力伝達部44a、44a’の左右2箇所に設けて圧縮力を支持部材43に伝達するようにしたものである。また、図18では支持部材43をピン等の固定部材47で対象物に固定するようにしているが、図を上下逆転させて、支持部材43を上側に、受圧部材41を下側にして使用してもよい。また、上記同様に2軸のずれ力を検出するように構成してもよい。
【0107】
(実施の形態8)
続いて、受圧部材41の受圧面に垂直方向に作用する圧縮力と、受圧面の表面に沿う方向に作用するずれ力の両方を検出する変動荷重検出装置8について図19を用いて説明する。
【0108】
変動荷重検出装置8は、実施の形態4で説明した変動荷重検出装置4において、支持部材43とベース46との間に、実施の形態1で説明した変動荷重検出パッド1を挟み込んだ構成である。
【0109】
例えば、支持部材43とベース46との間に、変動荷重検出パッド1を挟み込んで、所定の圧力を加えてボルト・ナット等の固定部材48で固定することで、固定部材48の圧縮力を越える圧縮力に対して変動荷重検出パッド1が抵抗無く厚み変化を生じうるように固定することができる。
【0110】
このように構成することで、受圧部材41の受圧面に作用する圧縮力と、ずれ力との双方を同時に検出することができる。
【0111】
(実施例1)
絶縁板としてポリエチレンテレフタラート樹脂板を用いた変動荷重検出パッドについて実験を行った。一辺が80mm四角で厚さ80μmの圧電板の両面に、厚さ0.1mmのステンレスの電極板を圧電板と直に接触するように配置し、その両側に厚さ0.2mmのポリエチレンテレフタラート樹脂板を接着して縁部分を固定した変動荷重検出パッド(以下、変動荷重検出パッドA1と記す)を作製した。
【0112】
変動荷重検出パッドA1を容量200KNの油圧サーボ疲労試験機の圧縮平板に挟んで2Hzの繰り返し速度で圧縮力を加えた。
【0113】
電極板には電気配線を接続し、電気配線には積分回路を接続し(コンデンサ4.4μFを並列に接続)、積分回路の出力を電圧記録計(入力インピーダンス1ΜΩ、オムニエースRA1300、NEC三栄)に接続して、油圧サーボ疲労試験機のロードセルの荷重波形と同時に記録した。
【0114】
図20は、試験機のロードセルで記録した圧縮力の変動幅と変動荷重検出パッドA1の出力の変動幅の関係の一例を示すが、変動荷重検出パッドA1の出力は荷重と良い比例関係にあることがわかる。
【0115】
また、図20に、一辺が20mm四角および40mm四角で同じ構成の変動荷重検出パッドA1を用いた実験結果も示しているが、パッド出力はパッド寸法の影響を受けないことがわかる。
【0116】
また、最大100kN(約10ton)の正弦波形を2000回繰り返して負荷したが、変動荷重検出パッドの出力波形には変化が見られなかった。したがって、変動荷重検出パッドA1は、電極板として金属板を用いているので、破損することもなく耐荷重が大きいことがわかる。
【0117】
(実施例2)
続いて、アルミ蒸着電極膜を形成した圧電フィルムを用いた場合の耐用性について検証した。
【0118】
アルミ蒸着電極膜を付けた一辺が100mm四角の圧電フィルム(厚さ80μm)の両面に、厚さ0.5mmのシリコンゴム板をゴム系接着剤で接着した出力増幅部材を設けた変動荷重検出パッド(以下、これを変動荷重検出パッドB1と記す)を作成した。また、厚さ1mmのシリコンゴム板を用いて同様に変動荷重検出パッド(以下、変動荷重検出パッドB2と記す)作成した。更に、実施例1と同様の構成で、圧電板の寸法を一辺が100mm四角とした変動荷重検出パッド(以下、変動荷重検出パッドA2と記す)を作成した。
【0119】
これらの変動荷重検出パッドB1、B2、A2を、それぞれ油圧サーボ疲労試験機の圧縮平板の上に置き、上面側に40×40mm四角、60×60mm四角、又は100×100mm四角の金属の加圧板を置いて、繰り返し圧縮力を負荷した。計測装置の構成は実施例1で説明したものと同じである。
【0120】
その結果を図21に示す。アルミ蒸着電極膜を形成した変動荷重検出パッドB1、B2では、×印で示すように、40×40mm四角の加圧板で荷重した場合、それぞれ約0.7トン、2.0トンの荷重で電極膜にひび割れが生じ、それ以上の荷重を計測することができなかった。一方、金属板を電極板に用いた変動荷重検出パッドA2では、それ以上の荷重でも破損することなく計測できていることがわかる。
【0121】
また、変動荷重検出パッドB1、B2の出力は、シリコンゴム板による荷重負荷面積によって変化し、荷重負荷面積が小さい方がセンサ出力は大きくなっており、一定の出力が生じていない。一方、変動荷重検出パッドA2では、面方向に伸びにくい金属板を電極板として用いているため、加圧板の面積の相違による荷重負荷面積による影響を受けず、いずれも一定の出力が生じていることがわかる。
【0122】
(実施例3)
絶縁板としてシリコンゴム板を用いた変動荷重検出パッドについて実験を行った。
【0123】
厚さ80ミクロンの圧電フィルムの両面に0.1mm厚のステンレス板を配置し、その外側の両面にゴム硬度70で厚さ1mmのシリコンゴム板を接着した、一辺が50mm四角の変動荷重検出パッド(以下、変動荷重検出パッドA3と記す)を作成した。
【0124】
この変動荷重検出パッドA3の底面に直径0.7mmの針金を2本略平行に敷き、変動荷重検出パッドA3上面には直径0.7mmの針金1本を底面の針金とほぼ直交するように置いて、両側を油圧サーボ疲労試験機の圧縮平板で挟んで繰り返して圧縮力を加えた。
【0125】
また、変動荷重検出パッドA3の底面と上面に厚さ0.5mmのアルミ板を千鳥状にずらせて置いて圧縮平板で繰り返して圧縮力を加えた。
【0126】
その結果を図22に示す。針金を置いた場合でも、また、アルミ板を置いた場合でも、針金等を置かない場合と同様に、変動荷重検出パッドA3は加えた荷重とセンサ出力が精度良く比例関係を示すことがわかる。
【0127】
(実施例4)
実施の形態4で説明した変動荷重検出装置を用いて実験を行った。
【0128】
実験室では大きなずれ力を負荷することが困難なため、変動荷重検出装置の支持部材を油圧サーボ疲労試験機の水平なベッドの上に傾斜させておき、アクチュエータに先端部を丸くした押し棒を取り付けて1Hzの繰り返し速度で受圧板の上面を押した。傾斜角度は8.8度、14度、17.2度、あるいは45度にした。
【0129】
そして、試験機のロードセルの波形とセンサの出力波形を記録した。ずれ力は試験機のベッドと支持部材の傾斜角度θから、押し棒に加えた力Wにsinθを乗じて、ずれ力=W×sinθで求めた。
【0130】
図23にずれ力と変動荷重検出装置の出力との関係を示す。グラフより、変動荷重検出装置は、ずれ力とセンサ出力が精度良く比例関係を示すことがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0131】
以上説明したように、本発明に係る変動荷重検出パッドは、薄型でありながら、耐荷重が大きく、大きな変動荷重を検出することができる。したがって、クレーン車におけるアウトリガーのベース底面の変動荷重、コンテナトレーラのコンテナと車両との間の変動荷重、軌道と枕木の間の変動荷重、プレス機械の変動荷重、車両の衝突衝撃力等、大きな荷重を測定する際に利用可能である。
【符号の説明】
【0132】
1 変動荷重検出パッド
2、2a〜2h、2a’〜2h’変動荷重検出板
3 分布型変動荷重検出板
4 変動荷重検出装置
5 変動荷重検出装置
6 変動荷重検出装置
7 変動荷重検出装置
8 変動荷重検出装置
11 圧電板
12 電極板
13 電極板
14 絶縁板
15 絶縁板
16 スペーサ
17 接着部材
18 端子部
19 端子部
20 電極膜
21 電極膜
22 弾性層
23 弾性層
24 剛性板
25 剛性板
26 対象物
27 載置台
28 砂粒
31 受圧板
32 受圧板
33 固定部材
41 受圧部材
42 弾性板
43 支持部材
44 ずれ力伝達部
44a、44a’、44b、44b’ずれ力伝達部
45 孔
46 ベース
47 固定部材
48 固定部材
51 変動荷重検出パッド

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高分子圧電材料から形成された圧電板と、
前記圧電板を挟む一対の電極板と、
前記一対の電極板を挟む一対の絶縁板と、を備え、
前記一対の電極板はそれぞれ前記圧電板に直に面接触し、且つ、非接着であり、
負荷される荷重に応じて前記圧電板の厚みを変化させ、前記圧電板から前記荷重に応じた電圧を出力させる、ことを特徴とする変動荷重検出パッド。
【請求項2】
前記一対の電極板のうち少なくとも一方が前記圧電板の面積よりも小さいことを特徴とする請求項1に記載の変動荷重検出パッド。
【請求項3】
前記電極板が金属板であることを特徴とする請求項1又は2に記載の変動荷重検出パッド。
【請求項4】
前記金属板が耐腐食性の金属板或いは表面に錆止め処理が施された金属板であることを特徴とする請求項3に記載の変動荷重検出パッド。
【請求項5】
前記絶縁板は、硬質樹脂素材から構成されることを特徴とする請求項1に記載の変動荷重検出パッド。
【請求項6】
前記絶縁板は、前記荷重を前記一対の電極板に分散させる弾性素材から構成されていることを特徴とする請求項1に記載の変動荷重検出パッド。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれかに記載の変動荷重検出パッドと、
前記変動荷重検出パッドを挟む一対の受圧板と、
前記一対の受圧板を互いに押し合わせて前記変動荷重検出パッドと一体的に固定させる固定部材と、を備えることを特徴とする変動荷重検出板。
【請求項8】
前記圧電板に所定の負荷が加わるように前記固定部材によって固定され、
前記所定の負荷を超える荷重に応じて前記圧電板の厚み変化を生じさせる、ことを特徴とする請求項7に記載の変動荷重検出板。
【請求項9】
請求項1乃至6のいずれかに記載の変動荷重検出パッドが同一平面上に複数配置されていることを特徴とする分布型変動荷重検出板。
【請求項10】
請求項7又は8に記載の変動荷重検出板が同一平面上に複数配置されていることを特徴とする分布型変動荷重検出板。
【請求項11】
凹部が形成されて受圧面及び垂下部を有する断面コの字状の受圧部材と、
前記垂下部内壁に対向配置される一対の請求項7又は8に記載の変動荷重検出板と、
前記一対の変動荷重検出板に当接するずれ力伝達部を有し、前記ずれ力伝達部が前記受圧部材の凹部に内包される支持部材と、
前記受圧部材と前記支持部材との間に配置された弾性板と、を備え、
前記受圧部材に負荷される荷重によって前記受圧面に沿って生じるずれ力が前記ずれ力伝達部に伝達され、
前記ずれ力伝達部によって前記一対の変動荷重検出板のいずれかが押圧され、
前記一対の変動荷重検出板からそれぞれ出力される電圧の差から前記ずれ力を検出する、ことを特徴とする変動荷重検出装置。
【請求項12】
前記一対の変動荷重検出板が二組それぞれ対向配置され、一組の前記変動荷重検出板を結ぶ線と他の一組の前記変動荷重検出板を結ぶ線とが十字状に交差していることを特徴とする請求項11に記載の変動荷重検出装置。
【請求項13】
前記凹部が円盤状であり、前記凹部の周壁に複数対の前記変動荷重検出板がそれぞれ対向配置され、
前記支持部材は複数対の前記変動荷重検出板に当接する円盤状の前記ずれ力伝達部を備えていることを特徴とする請求項11に記載の変動荷重検出装置。
【請求項14】
更に、前記支持部材の底面に請求項1乃至6のいずれかに記載の変動荷重検出パッドが配置され、前記受圧部材に加わる変動荷重を検出する請求項11乃至13のいずれかに記載の変動荷重検出装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate

【図20】
image rotate

【図21】
image rotate

【図22】
image rotate

【図23】
image rotate


【公開番号】特開2011−43442(P2011−43442A)
【公開日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−192557(P2009−192557)
【出願日】平成21年8月21日(2009.8.21)
【出願人】(504136568)国立大学法人広島大学 (924)
【Fターム(参考)】