変形追随性遮水材
【課題】充填性及び施工性に優れ、海水環境に適した砂質系の変形追随性遮水材を提供する。
【解決手段】変形追随性遮水材10は、砂1と、海水2と、高膨潤性ベントナイト3と、を混合してなるものである。
【解決手段】変形追随性遮水材10は、砂1と、海水2と、高膨潤性ベントナイト3と、を混合してなるものである。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鋼管矢板の継手部などに用いられる土質系の変形追随性遮水材に関し、特に、海水環境に適した変形追随性遮水材に関する。
【背景技術】
【0002】
管理型産業廃棄物最終処分場などの遮水工においては、例えば、鋼管矢板の継手部の充填材として、遮水性及び変形追随性を有する変形追随性遮水材が用いられている。このような変形追随性遮水材には、土質系、アスファルト系、セメント系に属するものがあるが、特に海面処分場の側面遮水工においては、従来、土質系に属するもののうち粘土系の変形追随性遮水材が用いられている(例えば、特許文献1など参照)。なお、土質系の変形追随性遮水材には、通常、ベントナイトが含まれている。
【特許文献1】特開2002−336811号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、従来の変形追随性遮水材(粘土系)にあっては、粘性の高い粘土を主材にしているので、所定のワーカビリティ(例えば、ポンプ圧送や水中打設などの作業性)を得るためには水分量を多く必要とし、比重が小さくなる(約1.3t/m3、水中では0.3t/m3程度)。その結果、従来の変形追随性遮水材(粘土系)では、自重沈下量や収縮量が大きくなり、充填性及び施工性に問題があった。すなわち、従来の変形追随性遮水材(粘土系)は比重が小さいので、例えば、鋼管矢板の継手部などに変形追随性遮水材を充填する際に密実に充填することができず、充填性に問題があった。また、従来の変形追随性遮水材(粘土系)は比重が小さいので、鋼管矢板の壁面との密着性が弱く、界面に間隙が生じやすくなり、施工性に問題があった。その結果、鋼管矢板の壁面と充填した変形追随性遮水材との間の遮水性能が特に低下しやすい。
【0004】
さらに、従来の変形追随性遮水材(粘土系)にあっては、膨潤土として一般のベントナイトが用いられているものの、一般のベントナイトは、塩濃度が高い海水中では膨潤性が失われやすく、時間経過とともに凝集して沈殿しやすい。そのため、一般のベントナイトを用いた従来型の変形追随性遮水材にあっては、海面処分場の側面遮水工などにおいて遮水性能を十分に発揮することができず、海水環境に適したものとはいえない。
【0005】
本発明は、上記の問題点を鑑みてなされたものであり、その目的は、充填性及び施工性に優れ、海水環境に適した変形追随性遮水材(砂質系)を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明の変形追随性遮水材は、最大粒径が5mm以下であり均等係数が5〜10である砂と、海水と、高膨潤性ベントナイトと、を混合してなることとする。
【0007】
また、本発明において、前記高膨潤性ベントナイトは、清水中での膨潤度が23〜30mL/2gであり、且つスメクタイト含有量が60〜70質量%であることを特徴とする。
【0008】
また、本発明において、前記高膨潤性ベントナイトは、水溶性ポリマーを含有することを特徴とする。
【0009】
また、本発明において、前記水溶性ポリマーは、前記高膨潤性ベントナイトに対する含有量が1質量%以下であることを特徴とする。
【0010】
また、本発明において、前記高膨潤性ベントナイトが60〜200kg/m3含まれていることを特徴とする。
【0011】
また、本発明において、前記高膨潤性ベントナイトは、水溶性ポリマーを含有せず、該高膨潤性ベントナイトが150〜200kg/m3含まれていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、充填性及び施工性に優れ、海水環境に適した変形追随性遮水材(砂質系)を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、添付図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。
【0014】
===変形追随性遮水材10の材料構成及びその性質===
図1は、本発明の変形追随性遮水材(砂質系:図1(a)参照)、及び従来の変形追随性遮水材(粘土系:図1(b)参照)を示す拡大模式図である。
【0015】
図1(a)に示すように、本発明の変形追随性遮水材10は、砂1と、海水2と、高膨潤性ベントナイト3と、を混合してなるものである。各材料の混合方法は、特に限定されるものではなく、砂1、海水2、高膨潤性ベントナイト3を同時若しくは順次に混合することとしてもよい。例えば、砂1及び海水2を混合してから、これらの混合物に高膨潤性ベントナイト3を添加し、これらの各材料を混合することとしてもよい。かかる変形追随性遮水材10は、以下の(1)〜(5)の性質を有する。
【0016】
(1)変形追随性遮水材10は、適度の粘性を有するとともに比重が大きいので、充填性にも優れており、良好な施工性を有する。例えば、変形追随性遮水材10を水中打設する際、変形追随性遮水材10は適度の粘性を有するので水質を汚濁しにくい。しかも、変形追随性遮水材10は比重が大きいので(1.8〜2.0t/m3)、鋼材との密着性が良く、充填性及び施工性に優れている。
(2)変形追随性遮水材10は、砂1及び高膨潤性ベントナイト3を海水練りしたものであり、塩濃度の高い海水環境下においても遮水性及び変形追随性が保持されるので、海水環境に適している。すなわち、変形追随性遮水材10は、粒径の小さい高膨潤性ベントナイト3が粒径の大きい砂1の粒子間に入り込んで密実な状態にあるので、遮水性を有する。また、変形追随性遮水材10は、粒径の大きい砂1を含んでいるので、圧密されても体積が小さくなりにくく、しかも膨潤した高膨潤性ベントナイト3の粒子を介して砂1の粒子同士が擦れ合うので、変形追随性を有する。
(3)変形追随性遮水材10は、高膨潤性ベントナイト3を含んでいるので、例えば、孔に変形追随性遮水材10を充填したときにはこの高膨潤性ベントナイト3が孔壁の崩壊を防止することとなる。
(4)変形追随性遮水材10においては、砂1が高膨潤性ベントナイト3を囲んだ状態にあるので、高膨潤性ベントナイト3が外部に流出しにくい。
(5)変形追随性遮水材10は、その材料(砂1、海水2、高膨潤性ベントナイト3)が腐食を受けにくい無機物質で構成されているので、耐久性に優れている。
【0017】
一方、図1(b)に示すように、従来の変形追随性遮水材20は、粘土21と、清水22と、一般のベントナイト23と、を混合してなるものである。この変形追随性遮水材20は、粒径の小さな粒子同士(粘土21、一般のベントナイト23)が密実な状態にあり、変形追随性を有する。しかし、海面処分場の側面遮水工などにおいて変形追随性遮水材20を用いた場合には、変形追随性遮水材20を構成する水(清水22)が海水と異なるので、時間の経過とともにその成分が変化して、耐久性が低下することが懸念される。そこで、従来の変形追随性遮水材20の材料構成において、清水22の代わりに海水2を用いることが考えられる。しかしながら、この場合には、一般のベントナイト23が海水2の影響を受けて膨潤性を失うので、遮水性及び変形追随性が低下してしまう。また、従来の変形追随性遮水材20は、前述した如く比重が小さいので(約1.3t/m3、水中では0.3t/m3程度)、変形追随性遮水材10と比べると、充填性及び施工性に劣る。
【0018】
なお、遮水性とは、透水係数が1.0×10−6cm/sec以下であることをいう。また、変形追随性とは、波浪、潮位差、及び地震などにより鋼管矢板にひずみが生じても、その変形に追随して遮水性を損なわない性質をいい、フロー値、ブリーディング率を指標にして評価し、例えば、フロー値(φ8cm×h8cm)が10〜14cmであり、且つブリーディング率が3%以下であることをいう。一方、耐久性とは、海水や処分場内保有水の水質、及び微生物等の影響を受けず、長期的に安定した遮水性能を維持することをいう。なお、施工性とは、狭隘で大深度の充填範囲に対して安定した品質の材料が充填できることをいう。
【0019】
次に、変形追随性遮水材10の材料構成(砂1、海水2、高膨潤性ベントナイト3)について詳細に説明する。
【0020】
<砂1>
砂は、一般的に粒子として非常に強固であり、不透水性を有し、化学的及び物理的に安定している。本発明の砂1は、そのうち最大粒径が5mm以下であり均等係数が5〜10のものである。かかる砂1を用いて変形追随性遮水材10を構成した場合には、材料密度(湿潤密度)が向上し、充填後の自重圧密沈下が低減する(ブリーディング率3%以下)。その際、遮水材1m3当たり、砂1を1000〜1500kg用いるので、変形追随性遮水材10は高密度1.8〜2.0g/cm3となり、粘土を主材にした変形追随性遮水材20(密度;約1.3g/cm3)と比べると、比重が大きくなる。また、変形追随性遮水材10は安価な砂1を主材にしており、しかも高価な高膨潤性ベントナイト3の量が少なくて済むので、粘土を主材にした変形追随性遮水材20と比べると、材料コストが低減することとなる。
【0021】
ところで、砂1を選定するために、砂の選定試験を実施した。その際、下記表1に示す3種の砂、すなわち皆野砂(以下「A砂」という。)、周南砂(以下「B砂」という。)、及び7号珪砂(以下「C砂」という。)を選定対象とした。その結果、前述した最大粒径が5mm以下であり、且つ均等係数が5以上10以下のもの(A砂、B砂)が砂1に適していることが判明した。かかる砂の選定試験の結果を表1,2及び図2〜5に示す。表1は各砂の粒度特性を示し、表2は砂の種類と選定結果を示す。表2は表1及び図2〜5の結果をまとめたものである。なお、図2は砂の粒径加積曲線(ふるい目の開きと通過百分率との関係)を示すグラフ、図3は海水量とフロー値との関係を示すグラフ、図4は海水量とブリーディング率との関係を示すグラフ、図5は海水量と透水係数との関係を示すグラフである。
【0022】
【0023】
表1及び図2に示すように、A砂、B砂、及びC砂は、いずれも最大粒径が5mm以下であるが、A砂とB砂の場合には粒度分布が0.001〜5mmの広い範囲に分散し、C砂の場合には粒径が0.05〜0.5mmの狭い範囲に集中している。すなわち、A砂とB砂は粒度分布の特性を示す均等係数UC(=U60/U10)が約8〜9と大きな値を示し、均等係数5以上10以下の範囲内に属するが、C砂は均等係数UCが1.67と小さな値を示し、均等係数5以上10以下の範囲外に属する。このことから、A砂とB砂は、C砂と比べて粒度分布が良く、密度が大きいことがわかる。そして、表2及び図3〜5に示すように、A砂とB砂を用いて変形追随性遮水材10を構成した場合には、C砂を用いて変形追随性遮水材10を構成した場合と異なり、フロー値(図3参照)、ブリーディング率(図4参照)、及び透水係数(図5参照)がすべて所定基準を満たした(表2参照)。従って、最大粒径が5mm以下であり、且つ均等係数が5以上10以下であるA砂又はB砂を用いて変形追随性遮水材10を構成した場合には、その範囲外に属するC砂を用いて変形追随性遮水材10を構成した場合と比べると、例えば、前述した鋼管矢板の継手部などに変形追随性遮水材10を充填する際に、充填時の空隙が小さくなり、より安定した充填構造が得られることとなる。
【0024】
<海水2>
海水2は、特に限定されるものではないが、海面処分場での遮水工においては、現地の海水と同じものが好ましい。海水2を用いて砂1及び高膨潤性ベントナイト3の海水練りを行うことにより、変形追随性遮水材10は、海水2で構成されることとなる。これにより、変形追随性遮水材10を海面処分場の側面遮水工などに用いた場合であっても、海水の影響を受けにくくなり、耐久性が向上する。
【0025】
<高膨潤性ベントナイト3>
高膨潤性ベントナイト3は、海水中で膨潤性が失われないものであれば限定されるものではないが、特に、清水中での膨潤度が23〜30mL/2gであり、且つスメクタイト含有量が60〜70質量%のものが好ましく(例えば、SW−101(商品名)やスーパークレイ(商品名)など)、より好ましくは、水溶性ポリマーを含有し耐塩性を有するものである(例えば、SW−101など)。
【0026】
水溶性ポリマーを含有する高膨潤性ベントナイトは、水溶性ポリマーを含有しないものと比べて、海水中での膨潤性が失われにくくなる。例えば、水溶性ポリマーを含有するSW−101(水溶性ポリマー0.96%)及び水溶性ポリマーをほとんど含有しないスーパークレイ(水溶性ポリマー0.01%)は、いずれも前述の如く高膨潤性を有するが、SW−101の方がスーパークレイよりも高膨潤性を示す(下記表4参照)。また、SW−101は耐塩性を有するが、スーパークレイは耐塩性を有しない。従って、SW−101の方がスーパークレイよりも海水中での膨潤性が失われにくくなる。なお、水溶性ポリマーとしては、(1)天然高分子、(2)半合成品、(3)合成品のものがある。
【0027】
(1)天然高分子の水溶性ポリマーとしては、デンプン質(例えば、かんしょデンプン、ばれいしょデンプン、タピオカデンプン、小麦デンプン、コーンスターチなど)、マンナン(例えば、こんにゃくなど)、海草類(例えば、ふのり、寒天(ガラクタン)、アルギン酸ナトリウム、カラギーナン、ファーセレランなど)、植物粘質物(例えば、トロロアオイ、トラガントゴム、アラビアゴム、カラヤガム、ガティガム、ガラギーナンなど)、植物種子粉末(例えば、グアーガム、ローストビーンガム、キンスシードガム、サイリュームシードガムなど)、植物抽出物(例えば、ペクチン、ラーチガムなど)、微生物による粘質物(例えば、デキストラン、レバン、プルラン、ニゲラン、セルロース、カードラン、ルティン酸、リンマンナン、サクノシグナルカン、キサンタンガム(ザンタンガム)、ローカスビーンガムなど)、タンパク質(例えば、にかわ、ゼラチン、カゼイン、コラーゲン、コンドロイチン硫酸ナトリウム、アルブミンなど)がある。
【0028】
(2)半合成品の水溶性ポリマーとしては、セルロース系(例えば、ビスコース、メチルセルロース(MC)、エチルセルロース(EC)、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ナトリウム、ニトロセルロース、ヒドロキシプロピルセルロースなど)、デンプン系(例えば、可溶性デンプン、カルボキシメチルデンプン、ジアルデヒドデンプン、コメデンプン、コムギデンプン、デンプングリコール酸ナトリウム、デンプンリン酸エステルナトリウムなど)、アルギン系(例えば、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸プロピレングリコール、アルギン酸プロピレングリコールエステルなど)、タンパク質系(例えば、カゼイン酸ナトリウム、カゼイン酸アンモニウムなど)がある。
【0029】
(3)合成品の水溶性ポリマーとしては、ビニル系(例えば、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリ酢酸ビニル、ポリビニル‐ベンジルエーテル共重合体、カルボキシビニルポリマーなど)、アクリル系(例えば、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリアクリル樹脂アルカノールアミン液、ポリアクリル酸‐(メタ)アクリル酸エステル共重合体、ポリメタクリル酸エチルなど)、ポリエーテル系(例えば、プルロニックポリエーテル、ポリエーテルジアルキルエステル、ポリエーテルジアルキルエーテル、ポリエーテルウレタン変性物、ポリエーテルエポキシ変性物など)、シリコーン系(例えば、メチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサンなど)、無水マレイン酸共重合体系(例えば、ビニルメチルエーテル‐無水マレイン酸共重合物の部分エステル、乾性油脂脂肪酸アリルアルコールエステル‐無水マレイン酸の反応物の半エステルなど)があり、その他のものとして、例えば、ポリエチレンオキシド、ポリエチレングリコール、ポリオキシエチレン‐ポリオキシプロピレン共重合体、繊維系グリコール酸ナトリウム、繊維系グリコール酸カルシウム、アセチレングリコール、アニオン型ポリアクリルアミド、ノニオン型ポリアクリルアミド、アニオン型アクリル系ポリマーなどがある。
【0030】
水溶性ポリマーは、(1)〜(3)に列挙したもののうち、特に、かんしょデンプン、タピオカデンプン、小麦デンプン、ふのり、カラギーナン、ファーセレラン、トロロアオイ、トラガントゴム、アラビアゴム、カラヤガム、ガティガム、ガラギーナン、ローストビーンガム、キンスシードガム、サイリュームシードガム、ラーチガム、レバン、プルラン、ニゲラン、セルロース、カードラン、ルティン酸、リンマンナン、サクノシグナルカン、ローカスビーンガム、にかわ、カゼイン、コラーゲン、コンドロイチン硫酸ナトリウム、アルブミン、ビスコース、エチルセルロース(EC)、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、ナトリウム、ニトロセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、可溶性デンプン、ジアルデヒドデンプン、コメデンプン、コムギデンプン、デンプングリコール酸ナトリウム、デンプンリン酸エステルナトリウム、アルギン酸プロピレングリコール、アルギン酸プロピレングリコールエステル、カゼイン酸ナトリウム、カゼイン酸アンモニウム、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリ酢酸ビニル、ポリビニル‐ベンジルエーテル共重合体、ポリアクリル樹脂アルカノールアミン液、ポリアクリル酸‐(メタ)アクリル酸エステル共重合体、ポリメタクリル酸エチル、プルロニックポリエーテル、ポリエーテルジアルキルエステル、ポリエーテルジアルキルエーテル、ポリエーテルウレタン変性物、ポリエーテルエポキシ変性物、チルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、ビニルメチルエーテル‐無水マレイン酸共重合物の部分エステル、乾性油脂脂肪酸アリルアルコールエステル‐無水マレイン酸の反応物の半エステル、ポリエチレンオキシド、ポリエチレングリコール、ポリオキシエチレン‐ポリオキシプロピレン共重合体、繊維系グリコール酸ナトリウム、繊維系グリコール酸カルシウム、アセチレングリコール、アニオン型ポリアクリルアミド、ノニオン型ポリアクリルアミドが好ましく、より好ましくは、ばれいしょデンプン、コーンスターチ、こんにゃく、寒天(ガラクタン)、グアーガム、ペクチン、デキストラン、キサンタンガム(ザンタンガム)、ゼラチン、メチルセルロース(MC)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、カルボキシメチルデンプン、カルボキシビニルポリマー、アニオン型アクリル系ポリマーである。
【0031】
高膨潤性ベントナイト3は、一般のベントナイト(例えば、株式会社クニミネ社製のクニゲルV1、クニゲルG2など)と異なり、塩濃度が高い海水中であっても膨潤性が失われにくく、時間経過後においても凝集沈殿しにくい。また、高膨潤性ベントナイト3は、一般のベントナイトと比べてブリーディング率が小さいという性質を有する。そして、砂質系の変形追随性遮水材10は、かかる高膨潤性ベントナイト3を用いているので、海水環境下でも優れた遮水機能を有することとなる。
【0032】
ところで、本実施形態においては、高膨潤性ベントナイト3を用いて海水練りベントナイト泥水を作製し、その特性能試験を実施した(図6〜12参照)。その際、砂1及び海水2を混合してから、これらの混合物に高膨潤性ベントナイト3を添加し、さらにこれらの各材料を混合して、海水練り土質系(砂質系)遮水材を作製した。なお、高膨潤性ベントナイト3としては、耐塩性を有するSW−101及び耐塩性を有しないスーパークレイを用い、一般のベントナイトとしては、クニゲルV1を用いた。以下、各特性能試験について説明する。
【0033】
まず、特性能試験として、海水濃度の異なる海水練りベントナイト泥水(3%濃度、500mLメスシリンダーで1日放置したもの)について、ベントナイト粒子の分散・凝集状態を調べた。その結果を図6に示す。
【0034】
図6に示すように、耐塩高膨潤性ベントナイト(SW−101)を用いた場合には、海水濃度が上昇してもベントナイト粒子は分散した状態にあり、膨潤性が失われなかった。一方、一般のベントナイト(クニゲルV1)を用いた場合には、海水濃度10%でも凝集し、40〜100%では完全に凝集状態となり、膨潤性が失われてしまった。
【0035】
次に、ベントナイト泥水のファンネル粘度を測定することによって、ベントナイト粒子の海水中での分散状況を調べた。その際、4種類のベントナイト、すなわち高膨潤性ベントナイト(SW−101、スーパークレイ)及び一般のベントナイト(クニゲルV1、クニゲルG2)について、泥水(濃度3%)のファンネル粘度を測定した。その測定結果を図7に示す。
【0036】
図7に示すように、ファンネル粘度は、4種のベントナイトいずれの場合でも、海水濃度(海水の割合)が増大するのに伴って低下した。その中で一般のベントナイト(クニゲルV1、クニゲルG2)及び高膨潤性ベントナイト(スーパークレイ)は、海水濃度0%(清水)でファンネル粘度が約22秒であったものが海水100%では20秒前後まで低下した。このように海水濃度の増大に伴って、ファンネル粘度が低下したのは、ベントナイト粒子が海水の塩類濃度(主にNaCL)の上昇によって、膨潤・分散が抑制されたためであると推測される。
【0037】
一方、耐塩高膨潤性ベントナイト(SW−101)のファンネル粘度は、海水0%では約37秒と高く、海水100%では22.5秒まで低下したが、他のベントナイトに比べて高い値を示した。このことは、耐塩高膨潤性ベントナイト(SW−101)が海水の塩分濃度の影響を受けにくく、ベントナイト粒子が分散したためであると推測される。なお、ベントナイト粒子が分散したのは、耐塩高膨潤性ベントナイト(SW−101)に含まれている極少量(約1%前後)の水溶性ポリマーの作用によるものである。
【0038】
また、ベントナイト泥水の作製に用いる海水濃度と減圧脱水量との関係について調べた。その結果を図8に示す。
【0039】
図8に示すように、各種のベントナイト泥水の減圧脱水量は、泥水作製時の海水濃度によって影響を受けた。具体的には、減圧脱水量が小さいほど泥水中のベントナイトはよく分散し、良好な泥膜(難透水性)を形成した。4種のベントナイトは、清水で練った場合には、いずれも減圧脱水量が0.5〜4mLと小さい値を示した。しかし、一般のベントナイト(クニゲルV1、クニゲルG2)及び高膨潤性ベントナイト(スーパークレイ)は、海水濃度の増大に伴って、脱水量が急激に増大した。一方、耐塩高膨潤性ベントナイト(SW−101)は、海水濃度が増大しても減圧脱水量がほとんど増大しなかった。このことから、一般のベントナイト(クニゲルV1、クニゲルG2)は、海水練りで使用すると凝集状態の不良泥膜を形成してしまうので、海水練り用の遮水材には適していないと推測される。なお、高膨潤性ベントナイト(スーパークレイ)は、一般のベントナイト(クニゲルV1、クニゲルG2)よりも海水に強いといえるが、海水によって止水性が低下してしまうことは免れない。一方、耐塩高膨潤性ベントナイト(SW−101)は、海水条件において分散して良好な泥膜を形成し、その結果、海水練りの材料としては高膨潤性ベントナイト(スーパークレイ)よりも優れた効果を示した。両者の大きな差異は、高膨潤性ベントナイトに含まれている水溶性ポリマーの作用によるものと推測される。
【0040】
さらに、砂を混合した遮水材としての特性をフロー値10〜14cmにして、ベントナイト量とブリーディング率及び透水係数との関係を調べた。その結果をそれぞれ図9及び図10に示す。
【0041】
図9及び図10に示すように、ベントナイト量が増加するにつれてブリーディング率及び透水係数はいずれも低下する傾向を示した。つまり、ベントナイト量が増加するにつれて、水量が増加するとともに砂の量が少なくなり、ブリーディング率及び透水係数がいずれも低下した。その際、耐塩高膨潤性ベントナイト(SW−101)を用いた場合には、ブリーディング率は数%の小さな値を示し、3%以下の基準を満たした。しかし、一般のベントナイト(クニゲルV1)を用いた場合には、ブリーディング率は大きな値を示し、3%以下の基準を満たさなかった(図9参照)。また、耐塩高膨潤性ベントナイト(SW−101)を用いた場合には、透水係数1.0×10−6cm/sec以下の基準を満たしたが、一般のベントナイト(クニゲルV1)を用いた場合には、この基準を満たさなかった(図10参照)。
【0042】
次に、X線回折法によって、耐塩高膨潤性ベントナイト(SW−101)と一般のベントナイト(クニゲルV1)の鉱物分析を行った。その結果を図11及び表3に示す。なお、表3は図11のグラフをまとめたものである。
【0043】
図11に示すように、いずれのベントナイトも主な粘土鉱物はスメクタイト(S)であり、さらに001反射の位置(それぞれ、12.7Å、12.5Å)からNa型ベントナイトであることがわかった。また、石英(G)と長石(F)は、両ベントナイトに含まれ、耐塩高膨潤性ベントナイト(SW−101)だけに見られた鉱物は、クリストバル石(Cr)と少量の沸石(Z)・雲母粘土(M)・ジプサム(G)であった。一方、一般のベントナイト(クニゲルV1)だけに見られた鉱物は、斜プチロ沸石(Cl)と少量のカルサイト(C)、パラサイト(Py)であった(表3参照)。これらベントナイト中の各種鉱物のうち、分散・膨潤などの活性の原動力になるのはスメクタイトであるが、X線回折では、両ベントナイト間でスメクタイトの質に大差は見られなかった。しかし、耐塩高膨潤性ベントナイト(SW−101)は、一般のベントナイト(クニゲルV1)と比べてスメクタイトのピークが大きかったことから、耐塩高膨潤性ベントナイト(SW−101)の方が一般のベントナイト(クニゲルV1)よりもスメクタイト含有量が多いことが判明した。
【0044】
【0045】
次に、耐塩高膨潤性ベントナイト(SW−101)について、air雰囲気下とN2ガス雰囲気下とで、それぞれ熱分析を実施した。その際、耐塩高膨潤性ベントナイト(SW−101)として、全有機炭素量(TOC)が9.6g/kgすなわち0.96%であり、約1質量%の水溶性ポリマーを含有するものを用いた。また、コントロール実験として、一般のベントナイト(クニゲルV1)についてもair雰囲気下で熱分析を実施した。その結果を図12に示す。
【0046】
図12に示すように、air雰囲気下で見られた311℃の発熱ピークがN2ガス雰囲気下ではほとんど見られなかった。このことから、このピークは有機物の燃焼によるものと推測される。なお、耐塩膨潤性ンベントナイト(SW−101)の310℃付近の質量減少は、air雰囲気下で0.92%、N2ガス雰囲気下で0.84%であった。N2ガス雰囲気下では有機物が燃焼(酸化)しないので、耐塩高膨潤性ベントナイト(SW−101)の有機物含有量は、0.92%−0.84%=0.08%と算出されることとなり、この値は、前述したTOCの値(=約1%)に比べて1桁小さい。その原因として、実験上、N2ガス雰囲気が完全ではなく、微量のair(酸素)が残り、有機物が燃焼したことが考えられる。一方、一般のベントナイト(クニゲルV1)の場合には、有機物による発熱ピークが見られなかった。なお、一般のベントナイト(クニゲルV1)に見られた470℃の発熱ピークは、黄鉄鉱(pyrite)によるものであり、有機物の燃焼によるものではない。
【0047】
以上説明したように、耐塩高膨潤性ベントナイト(SW−101)は、高品質のNa型ベントナイトをベースにして、質量比で約1%の水溶性ポリマー(有機物)を含有するものである。これら高品質のNa型ベントナイトと水溶性ポリマーとが一体となって海水中でもベントナイト粒子を十分に分散させることにより、変形追随性遮水材10は長期にわたって遮水性を維持するものと推測される。なお、水溶性ポリマーの作用によって変形追随性遮水材10の中で一旦分散したベントナイト粒子は、水溶性ポリマーが消失した後でも、砂粒子相互の空隙に分散して密実なクレイペーストを形成する。従って、変形追随性遮水材10は十分な遮水性能を維持するものと推測される。
【0048】
<各材料の配合>
次に、変形追随性遮水材10を構成する各材料の最適な配合量を設定するために、高膨潤性ベントナイト3の量を変えて配合試験を実施した。この配合試験では、遮水材のブリーディング率及び透水係数を測定した。その際、ベントナイトとして、高膨潤性ベントナイト(SW−101、スーパークレイ)及び一般のベントナイト(クニゲルV1、クニゲルG2)を用い、さらに他のベントナイトとして、浅間(国産;(株)ホージュン社製)、赤城(国産;(株)ホージュン社製)、榛名(国産;(株)ホージュン社製)を用いた。それぞれの成分を表4に示す。
【0049】
また、表4に示すベントナイトのうち、耐塩高膨潤性ベントナイト(SW−101)の配合量を変えた場合において、変形追随性遮水材10のブリーディング率及び透水係数の各変化をそれぞれ図13、14に示し、この場合の各材料の配合を表5に示す。一方、高膨潤性ベントナイト(スーパークレイ)の配合量を変えた場合における変形追随性遮水材10のブリーディング率及び透水係数の各変化をそれぞれ図15、16に示す。なお、この場合における各材料の配合とブリーディング率、湿潤密度、及び透水係数との関係を表6に示す。
【0050】
【0051】
図13、14及び表5に示すように、高膨潤性ベントナイトがSW−101の場合には、ベントナイト量が60〜100kg/m3であれば、遮水材のブリーディング率が3%以下の基準を満たすとともに(図13参照)、透水係数が1×10−6cm/sec以下の基準を満たした(図14参照)。なお、ベントナイト量が60kg/m3未満の場合には、ブリーディング率、湿潤密度、及び透水係数がいずれも増加し、基準値を満たさなくなってしまうことが懸念される。他方、ベントナイト量が100kg/m3を超える場合には、コスト増加を招き、しかも砂1の含有量が減少することから変形追随性遮水材10の密度が小さくなってしまう。特に、変形追随性遮水材10が水中打設用の場合には、その密度は1.8〜2.0g/cm3程度が好ましく、これよりも小さくなってしまうと、例えば、鋼管矢板の継手部に変形追随性遮水材10を打設して充填する際に、継手部壁面と変形追随性遮水材10との密着性が失われ、その結果、充填部付近の遮水性能が低下してしまうことが懸念される。このことから、高膨潤性ベントナイトがSW−101の場合には、ベントナイト量が60〜100kg/m3となるように配合しておくことが好ましい。
【0052】
一方、高膨潤性ベントナイトがスーパークレイの場合には、図15、16及び表6に示すように、ベントナイト量が150〜200kg/m3であれば、遮水材のブリーディング率が3%以下の基準を満たすとともに(図15参照)、透水係数が1×10−6cm/sec以下の基準を満たした(図16参照)。なお、ベントナイト量が150kg/m3未満の場合には、透水係数が1×10−6cm/secを超えてしまい、200kg/m3を超える場合には、コスト増を招くとともに、密度が小さくなってしまう。このことから、高膨潤性ベントナイトがスーパークレイの場合には、ベントナイト量が150〜200kg/m3となるように配合しておくことが好ましい。
【0053】
===長期品質保持の確認試験===
ところで、変形追随性遮水材10は、充填する際の圧密沈下量が少ないことが望ましく、さらに充填した後には変形追随性(例えば、変形自在なゲル状の状態)が長期間にわたって良好に保持されることが望ましい。そこで、変形追随性遮水材10の長期品質保持を確認すべく、(1)自重圧密沈下量、(2)透水性、及び(3)変形追随性の確認試験を実施した。以下、各別に説明する。なお、(1)〜(3)の確認試験では、変形追随性遮水材10としてすべて同じものを用いた(表5のNo3に示す配合を参照)。この変形追随性遮水材10の物理特性を表7に示す。
【0054】
【0055】
<(1)自重圧密沈下量の確認>
まず、変形追随性遮水材10の自重圧密沈下量について長期確認試験を実施した。本確認試験では、試験体として、変形追随性遮水材10を充填した初期高さ60cmの円筒形状のものを用意した。また、比較検討のために、粘土系遮水材を充填した試験体を用意した。そして、これらの試験体に遠心模型実験装置を用いて重力加速度の20倍の遠心加速度20Gを作用させて、1/20(換算層厚さ12m)の模型について実験を行い、経過時間と自重圧沈下量との関係を測定した。その測定結果を図17に示す。
【0056】
図17に示すように、変形追随性遮水材10は充填した後、直ちに沈下してほぼ一定の値に収束したが、粘土系遮水材は時間の経過とともに徐々に沈下量が増加した。変形追随性遮水材10、粘土系遮水材の推定最終換算沈下量は、それぞれ98cm、208cm程度となった。このことから、変形追随性遮水材10は、粘土系遮水材よりも自重圧密沈下量が少なく、かつ、沈下が短時間で収束することが確認された。なお、同図に示す推定最終換算沈下量は、いずれも双曲線法により算出したものである。
【0057】
<(2)透水性の確認>
次に、変形追随性遮水材10の透水性について長期透水試験を実施した。本試験では、変形追随性遮水材10を供試体とし、遮水材A、Bを比較対照とした。その試験結果を図18に示す。なお、同図に示す変形追随性遮水材10は耐塩高膨潤性ベントナイト(SW−101)を用いたものであり、遮水材A、Bは、それぞれ一般のベントナイト(クニゲルV1)、一般のベントナイト(クニゲルG2)用いたものである。
【0058】
図18に示すように、変形追随性遮水材10の場合には、時間が経過しても透水係数がほぼ一定に維持され、1.0×10−6cm/sec以下の基準を常に満たした。しかし、遮水材A、Bの場合には、時間経過とともに透水係数が増大し、基準値1.0×10−6cm/secを超えてしまった。このことから、変形追随性遮水材10は、遮水材A、Bと比べ、長期にわたって遮水性を維持することがわかる。
【0059】
<(3)変形追随性の確認>
次に、変形追随性遮水材10の変形追随性について確認試験を実施した。本確認試験では、三軸試験機を用いて連続繰返し載荷試験を行い、変形追随性遮水材10について繰り返し回数、軸差応力及び軸ひずみを測定した。比較検討のために、一般的な砂(最大粒径2mm、均等係数4.54)についても同様の測定を行った。その測定結果を図19、20に示す。
【0060】
なお、図19(a)〜図19(c)は、それぞれ変形追随性遮水材10に係る繰り返し回数と軸差応力との関係、繰り返し回数と軸ひずみとの関係、軸ひずみと軸差応力との関係を示す図である。また、図20(a)〜図20(c)は、それぞれ一般的な砂に係る繰り返し回数と軸差応力との関係、繰り返し回数と軸ひずみとの関係、軸ひずみと軸差応力との関係を示す図である。
【0061】
図19(a)〜図19(c)に示すように、変形追随性遮水材10に応力振幅20kPaの載荷を加えると、軸ひずみ量はほぼ一定の幅で増減を繰り返し、繰り返し回数が1000回まで軸差応力と軸ひずみとの関係はほとんど同じ軌跡を示した。従って、変形追随性遮水材10は繰り返し載荷において、ひずみ量に大きな変化が生じにくく、弾性的挙動を保持することが確認された。つまり、本実施形態において用いられる変形追随性遮水材10は、波浪、潮位差、地震等により外力が繰り返し遮水壁に作用して遮水壁が変形しても、この遮水壁の変形に応じて長期間にわたって変形可能で、継手部における変形追随性遮水材10の亀裂及び破断等を生じない。一方、図20(a)〜図20(c)に示すように、一般的な砂に応力振幅20kPaの載荷を加えると、軸ひずみ量は徐々に増加し、繰り返し回数が20回を越えると急激に増加して砂と水とが分離し、破壊が生じた。
【0062】
以上のことから、変形追随性遮水材10は繰り返し載荷において、一般的な砂よりも弾性的挙動を保持することが確認された。また、変形追随性遮水材10は、自重圧密沈下量が少なく、かつ、繰り返し載荷されても弾性的挙動を保持することが確認された。
【0063】
===水中打設の確認試験===
次に、所定の模型装置を用いて、変形追随性遮水材10を水中打設し、各深度における諸物性(密度、含水比、透水係数)を測定した。その測定結果を図21に示す。
【0064】
図21に示すように、変形追随性遮水材10は、各深度において、密度が2.00〜2.05g/cm3の範囲でほぼ一定であり(図21(a)参照)、しかも含水比が25%付近でほぼ一定であった(図21(b)参照)。また、変形追随性遮水材10は、各深度において、透水係数が1.0×10−7〜1.0×10−6cm/secの範囲でほぼ一定であり、いずれも透水係数1.0×10−6cm/sec以下の基準を満たした。このことから、変形追随性遮水材10を水中打設した場合には、変形追随性遮水材10は各深度において均質になることがわかる。
【0065】
===製造後の性状変化===
次に、砂1、海水2、及び高膨潤性ベントナイト3を混練りして変形追随性遮水材10を製造し、製造後の変形追随性遮水材10について性状変化(フロー値、透水係数)を調べた。その結果を図22、23に示す。図22は経過日数とフロー値との関係を示すグラフ、図23は経過日数と透水係数との関係を示すグラフである。
【0066】
図22に示すように、変形追随性遮水材10は、製造後7日目まで、フロー値の基準値(10〜14cm)を常に満たした。また、図23に示すように、変形追随性遮水材10は、製造後7日目まで、透水係数の基準値(1.0×10−6cm/sec以下)を常に満たした。このことから、変形追随性遮水材10は、製造後打設時までの間に運搬等のために数日要する場合であっても、その間に性状変化が生じにくいことがわかる。但し、変形追随性遮水材10の乾燥を防止するために、その表面にキャッピングを施しておくことが好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】本発明の変形追随性遮水材(砂質系)及び従来の変形追随性遮水材(粘土系)を示す拡大模式図である。
【図2】砂の粒径加積曲線を示すグラフである。
【図3】海水量とフロー値との関係を示すグラフである。
【図4】海水量とブリーディング率との関係を示すグラフである。
【図5】海水量と透水係数との関係を示すグラフである。
【図6】ベントナイト粒子の分散・凝集状態を示す図である。
【図7】泥水(濃度3%)のファンネル粘度を示すグラフである。
【図8】海水濃度と減圧脱水量との関係との関係を示すグラフである。
【図9】ベントナイト量とブリーディング率との関係を示すグラフである。
【図10】ベントナイト量と透水係数との関係を示すグラフである。
【図11】X線回折法によるベントナイトの鉱物分析結果を示す図である。
【図12】ベントナイトの熱分析結果を示すグラフである。
【図13】耐塩高膨潤性ベントナイト(SW−101)の配合量とブリーディング率との関係を示すグラフである。
【図14】耐塩高膨潤性ベントナイト(SW−101)の配合量と透水係数との関係を示すグラフである。
【図15】高膨潤性ベントナイト(スーパークレイ)の配合量とブリーディング率との関係を示すグラフである。
【図16】高膨潤性ベントナイト(スーパークレイ)の配合量と透水係数との関係を示すグラフである。
【図17】経過時間と自重圧密沈下量との関係を示すグラフである。
【図18】透水性の確認試験結果を示すグラフである。
【図19】変形追随性の確認結果(変形追随性遮水材の場合)を示すグラフである。
【図20】変形追随性の確認結果(一般の砂の場合)を示すグラフである。
【図21】水中打設の確認試験結果を示すグラフである。
【図22】経過日数とフロー値との関係を示すグラフである。
【図23】経過日数と透水係数との関係を示すグラフである。
【符号の説明】
【0068】
1 砂
2 海水
3 高膨潤性ベントナイト
10 変形追随性遮水材(砂質系)
【技術分野】
【0001】
本発明は、鋼管矢板の継手部などに用いられる土質系の変形追随性遮水材に関し、特に、海水環境に適した変形追随性遮水材に関する。
【背景技術】
【0002】
管理型産業廃棄物最終処分場などの遮水工においては、例えば、鋼管矢板の継手部の充填材として、遮水性及び変形追随性を有する変形追随性遮水材が用いられている。このような変形追随性遮水材には、土質系、アスファルト系、セメント系に属するものがあるが、特に海面処分場の側面遮水工においては、従来、土質系に属するもののうち粘土系の変形追随性遮水材が用いられている(例えば、特許文献1など参照)。なお、土質系の変形追随性遮水材には、通常、ベントナイトが含まれている。
【特許文献1】特開2002−336811号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、従来の変形追随性遮水材(粘土系)にあっては、粘性の高い粘土を主材にしているので、所定のワーカビリティ(例えば、ポンプ圧送や水中打設などの作業性)を得るためには水分量を多く必要とし、比重が小さくなる(約1.3t/m3、水中では0.3t/m3程度)。その結果、従来の変形追随性遮水材(粘土系)では、自重沈下量や収縮量が大きくなり、充填性及び施工性に問題があった。すなわち、従来の変形追随性遮水材(粘土系)は比重が小さいので、例えば、鋼管矢板の継手部などに変形追随性遮水材を充填する際に密実に充填することができず、充填性に問題があった。また、従来の変形追随性遮水材(粘土系)は比重が小さいので、鋼管矢板の壁面との密着性が弱く、界面に間隙が生じやすくなり、施工性に問題があった。その結果、鋼管矢板の壁面と充填した変形追随性遮水材との間の遮水性能が特に低下しやすい。
【0004】
さらに、従来の変形追随性遮水材(粘土系)にあっては、膨潤土として一般のベントナイトが用いられているものの、一般のベントナイトは、塩濃度が高い海水中では膨潤性が失われやすく、時間経過とともに凝集して沈殿しやすい。そのため、一般のベントナイトを用いた従来型の変形追随性遮水材にあっては、海面処分場の側面遮水工などにおいて遮水性能を十分に発揮することができず、海水環境に適したものとはいえない。
【0005】
本発明は、上記の問題点を鑑みてなされたものであり、その目的は、充填性及び施工性に優れ、海水環境に適した変形追随性遮水材(砂質系)を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明の変形追随性遮水材は、最大粒径が5mm以下であり均等係数が5〜10である砂と、海水と、高膨潤性ベントナイトと、を混合してなることとする。
【0007】
また、本発明において、前記高膨潤性ベントナイトは、清水中での膨潤度が23〜30mL/2gであり、且つスメクタイト含有量が60〜70質量%であることを特徴とする。
【0008】
また、本発明において、前記高膨潤性ベントナイトは、水溶性ポリマーを含有することを特徴とする。
【0009】
また、本発明において、前記水溶性ポリマーは、前記高膨潤性ベントナイトに対する含有量が1質量%以下であることを特徴とする。
【0010】
また、本発明において、前記高膨潤性ベントナイトが60〜200kg/m3含まれていることを特徴とする。
【0011】
また、本発明において、前記高膨潤性ベントナイトは、水溶性ポリマーを含有せず、該高膨潤性ベントナイトが150〜200kg/m3含まれていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、充填性及び施工性に優れ、海水環境に適した変形追随性遮水材(砂質系)を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、添付図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。
【0014】
===変形追随性遮水材10の材料構成及びその性質===
図1は、本発明の変形追随性遮水材(砂質系:図1(a)参照)、及び従来の変形追随性遮水材(粘土系:図1(b)参照)を示す拡大模式図である。
【0015】
図1(a)に示すように、本発明の変形追随性遮水材10は、砂1と、海水2と、高膨潤性ベントナイト3と、を混合してなるものである。各材料の混合方法は、特に限定されるものではなく、砂1、海水2、高膨潤性ベントナイト3を同時若しくは順次に混合することとしてもよい。例えば、砂1及び海水2を混合してから、これらの混合物に高膨潤性ベントナイト3を添加し、これらの各材料を混合することとしてもよい。かかる変形追随性遮水材10は、以下の(1)〜(5)の性質を有する。
【0016】
(1)変形追随性遮水材10は、適度の粘性を有するとともに比重が大きいので、充填性にも優れており、良好な施工性を有する。例えば、変形追随性遮水材10を水中打設する際、変形追随性遮水材10は適度の粘性を有するので水質を汚濁しにくい。しかも、変形追随性遮水材10は比重が大きいので(1.8〜2.0t/m3)、鋼材との密着性が良く、充填性及び施工性に優れている。
(2)変形追随性遮水材10は、砂1及び高膨潤性ベントナイト3を海水練りしたものであり、塩濃度の高い海水環境下においても遮水性及び変形追随性が保持されるので、海水環境に適している。すなわち、変形追随性遮水材10は、粒径の小さい高膨潤性ベントナイト3が粒径の大きい砂1の粒子間に入り込んで密実な状態にあるので、遮水性を有する。また、変形追随性遮水材10は、粒径の大きい砂1を含んでいるので、圧密されても体積が小さくなりにくく、しかも膨潤した高膨潤性ベントナイト3の粒子を介して砂1の粒子同士が擦れ合うので、変形追随性を有する。
(3)変形追随性遮水材10は、高膨潤性ベントナイト3を含んでいるので、例えば、孔に変形追随性遮水材10を充填したときにはこの高膨潤性ベントナイト3が孔壁の崩壊を防止することとなる。
(4)変形追随性遮水材10においては、砂1が高膨潤性ベントナイト3を囲んだ状態にあるので、高膨潤性ベントナイト3が外部に流出しにくい。
(5)変形追随性遮水材10は、その材料(砂1、海水2、高膨潤性ベントナイト3)が腐食を受けにくい無機物質で構成されているので、耐久性に優れている。
【0017】
一方、図1(b)に示すように、従来の変形追随性遮水材20は、粘土21と、清水22と、一般のベントナイト23と、を混合してなるものである。この変形追随性遮水材20は、粒径の小さな粒子同士(粘土21、一般のベントナイト23)が密実な状態にあり、変形追随性を有する。しかし、海面処分場の側面遮水工などにおいて変形追随性遮水材20を用いた場合には、変形追随性遮水材20を構成する水(清水22)が海水と異なるので、時間の経過とともにその成分が変化して、耐久性が低下することが懸念される。そこで、従来の変形追随性遮水材20の材料構成において、清水22の代わりに海水2を用いることが考えられる。しかしながら、この場合には、一般のベントナイト23が海水2の影響を受けて膨潤性を失うので、遮水性及び変形追随性が低下してしまう。また、従来の変形追随性遮水材20は、前述した如く比重が小さいので(約1.3t/m3、水中では0.3t/m3程度)、変形追随性遮水材10と比べると、充填性及び施工性に劣る。
【0018】
なお、遮水性とは、透水係数が1.0×10−6cm/sec以下であることをいう。また、変形追随性とは、波浪、潮位差、及び地震などにより鋼管矢板にひずみが生じても、その変形に追随して遮水性を損なわない性質をいい、フロー値、ブリーディング率を指標にして評価し、例えば、フロー値(φ8cm×h8cm)が10〜14cmであり、且つブリーディング率が3%以下であることをいう。一方、耐久性とは、海水や処分場内保有水の水質、及び微生物等の影響を受けず、長期的に安定した遮水性能を維持することをいう。なお、施工性とは、狭隘で大深度の充填範囲に対して安定した品質の材料が充填できることをいう。
【0019】
次に、変形追随性遮水材10の材料構成(砂1、海水2、高膨潤性ベントナイト3)について詳細に説明する。
【0020】
<砂1>
砂は、一般的に粒子として非常に強固であり、不透水性を有し、化学的及び物理的に安定している。本発明の砂1は、そのうち最大粒径が5mm以下であり均等係数が5〜10のものである。かかる砂1を用いて変形追随性遮水材10を構成した場合には、材料密度(湿潤密度)が向上し、充填後の自重圧密沈下が低減する(ブリーディング率3%以下)。その際、遮水材1m3当たり、砂1を1000〜1500kg用いるので、変形追随性遮水材10は高密度1.8〜2.0g/cm3となり、粘土を主材にした変形追随性遮水材20(密度;約1.3g/cm3)と比べると、比重が大きくなる。また、変形追随性遮水材10は安価な砂1を主材にしており、しかも高価な高膨潤性ベントナイト3の量が少なくて済むので、粘土を主材にした変形追随性遮水材20と比べると、材料コストが低減することとなる。
【0021】
ところで、砂1を選定するために、砂の選定試験を実施した。その際、下記表1に示す3種の砂、すなわち皆野砂(以下「A砂」という。)、周南砂(以下「B砂」という。)、及び7号珪砂(以下「C砂」という。)を選定対象とした。その結果、前述した最大粒径が5mm以下であり、且つ均等係数が5以上10以下のもの(A砂、B砂)が砂1に適していることが判明した。かかる砂の選定試験の結果を表1,2及び図2〜5に示す。表1は各砂の粒度特性を示し、表2は砂の種類と選定結果を示す。表2は表1及び図2〜5の結果をまとめたものである。なお、図2は砂の粒径加積曲線(ふるい目の開きと通過百分率との関係)を示すグラフ、図3は海水量とフロー値との関係を示すグラフ、図4は海水量とブリーディング率との関係を示すグラフ、図5は海水量と透水係数との関係を示すグラフである。
【0022】
【0023】
表1及び図2に示すように、A砂、B砂、及びC砂は、いずれも最大粒径が5mm以下であるが、A砂とB砂の場合には粒度分布が0.001〜5mmの広い範囲に分散し、C砂の場合には粒径が0.05〜0.5mmの狭い範囲に集中している。すなわち、A砂とB砂は粒度分布の特性を示す均等係数UC(=U60/U10)が約8〜9と大きな値を示し、均等係数5以上10以下の範囲内に属するが、C砂は均等係数UCが1.67と小さな値を示し、均等係数5以上10以下の範囲外に属する。このことから、A砂とB砂は、C砂と比べて粒度分布が良く、密度が大きいことがわかる。そして、表2及び図3〜5に示すように、A砂とB砂を用いて変形追随性遮水材10を構成した場合には、C砂を用いて変形追随性遮水材10を構成した場合と異なり、フロー値(図3参照)、ブリーディング率(図4参照)、及び透水係数(図5参照)がすべて所定基準を満たした(表2参照)。従って、最大粒径が5mm以下であり、且つ均等係数が5以上10以下であるA砂又はB砂を用いて変形追随性遮水材10を構成した場合には、その範囲外に属するC砂を用いて変形追随性遮水材10を構成した場合と比べると、例えば、前述した鋼管矢板の継手部などに変形追随性遮水材10を充填する際に、充填時の空隙が小さくなり、より安定した充填構造が得られることとなる。
【0024】
<海水2>
海水2は、特に限定されるものではないが、海面処分場での遮水工においては、現地の海水と同じものが好ましい。海水2を用いて砂1及び高膨潤性ベントナイト3の海水練りを行うことにより、変形追随性遮水材10は、海水2で構成されることとなる。これにより、変形追随性遮水材10を海面処分場の側面遮水工などに用いた場合であっても、海水の影響を受けにくくなり、耐久性が向上する。
【0025】
<高膨潤性ベントナイト3>
高膨潤性ベントナイト3は、海水中で膨潤性が失われないものであれば限定されるものではないが、特に、清水中での膨潤度が23〜30mL/2gであり、且つスメクタイト含有量が60〜70質量%のものが好ましく(例えば、SW−101(商品名)やスーパークレイ(商品名)など)、より好ましくは、水溶性ポリマーを含有し耐塩性を有するものである(例えば、SW−101など)。
【0026】
水溶性ポリマーを含有する高膨潤性ベントナイトは、水溶性ポリマーを含有しないものと比べて、海水中での膨潤性が失われにくくなる。例えば、水溶性ポリマーを含有するSW−101(水溶性ポリマー0.96%)及び水溶性ポリマーをほとんど含有しないスーパークレイ(水溶性ポリマー0.01%)は、いずれも前述の如く高膨潤性を有するが、SW−101の方がスーパークレイよりも高膨潤性を示す(下記表4参照)。また、SW−101は耐塩性を有するが、スーパークレイは耐塩性を有しない。従って、SW−101の方がスーパークレイよりも海水中での膨潤性が失われにくくなる。なお、水溶性ポリマーとしては、(1)天然高分子、(2)半合成品、(3)合成品のものがある。
【0027】
(1)天然高分子の水溶性ポリマーとしては、デンプン質(例えば、かんしょデンプン、ばれいしょデンプン、タピオカデンプン、小麦デンプン、コーンスターチなど)、マンナン(例えば、こんにゃくなど)、海草類(例えば、ふのり、寒天(ガラクタン)、アルギン酸ナトリウム、カラギーナン、ファーセレランなど)、植物粘質物(例えば、トロロアオイ、トラガントゴム、アラビアゴム、カラヤガム、ガティガム、ガラギーナンなど)、植物種子粉末(例えば、グアーガム、ローストビーンガム、キンスシードガム、サイリュームシードガムなど)、植物抽出物(例えば、ペクチン、ラーチガムなど)、微生物による粘質物(例えば、デキストラン、レバン、プルラン、ニゲラン、セルロース、カードラン、ルティン酸、リンマンナン、サクノシグナルカン、キサンタンガム(ザンタンガム)、ローカスビーンガムなど)、タンパク質(例えば、にかわ、ゼラチン、カゼイン、コラーゲン、コンドロイチン硫酸ナトリウム、アルブミンなど)がある。
【0028】
(2)半合成品の水溶性ポリマーとしては、セルロース系(例えば、ビスコース、メチルセルロース(MC)、エチルセルロース(EC)、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ナトリウム、ニトロセルロース、ヒドロキシプロピルセルロースなど)、デンプン系(例えば、可溶性デンプン、カルボキシメチルデンプン、ジアルデヒドデンプン、コメデンプン、コムギデンプン、デンプングリコール酸ナトリウム、デンプンリン酸エステルナトリウムなど)、アルギン系(例えば、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸プロピレングリコール、アルギン酸プロピレングリコールエステルなど)、タンパク質系(例えば、カゼイン酸ナトリウム、カゼイン酸アンモニウムなど)がある。
【0029】
(3)合成品の水溶性ポリマーとしては、ビニル系(例えば、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリ酢酸ビニル、ポリビニル‐ベンジルエーテル共重合体、カルボキシビニルポリマーなど)、アクリル系(例えば、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリアクリル樹脂アルカノールアミン液、ポリアクリル酸‐(メタ)アクリル酸エステル共重合体、ポリメタクリル酸エチルなど)、ポリエーテル系(例えば、プルロニックポリエーテル、ポリエーテルジアルキルエステル、ポリエーテルジアルキルエーテル、ポリエーテルウレタン変性物、ポリエーテルエポキシ変性物など)、シリコーン系(例えば、メチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサンなど)、無水マレイン酸共重合体系(例えば、ビニルメチルエーテル‐無水マレイン酸共重合物の部分エステル、乾性油脂脂肪酸アリルアルコールエステル‐無水マレイン酸の反応物の半エステルなど)があり、その他のものとして、例えば、ポリエチレンオキシド、ポリエチレングリコール、ポリオキシエチレン‐ポリオキシプロピレン共重合体、繊維系グリコール酸ナトリウム、繊維系グリコール酸カルシウム、アセチレングリコール、アニオン型ポリアクリルアミド、ノニオン型ポリアクリルアミド、アニオン型アクリル系ポリマーなどがある。
【0030】
水溶性ポリマーは、(1)〜(3)に列挙したもののうち、特に、かんしょデンプン、タピオカデンプン、小麦デンプン、ふのり、カラギーナン、ファーセレラン、トロロアオイ、トラガントゴム、アラビアゴム、カラヤガム、ガティガム、ガラギーナン、ローストビーンガム、キンスシードガム、サイリュームシードガム、ラーチガム、レバン、プルラン、ニゲラン、セルロース、カードラン、ルティン酸、リンマンナン、サクノシグナルカン、ローカスビーンガム、にかわ、カゼイン、コラーゲン、コンドロイチン硫酸ナトリウム、アルブミン、ビスコース、エチルセルロース(EC)、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、ナトリウム、ニトロセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、可溶性デンプン、ジアルデヒドデンプン、コメデンプン、コムギデンプン、デンプングリコール酸ナトリウム、デンプンリン酸エステルナトリウム、アルギン酸プロピレングリコール、アルギン酸プロピレングリコールエステル、カゼイン酸ナトリウム、カゼイン酸アンモニウム、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリ酢酸ビニル、ポリビニル‐ベンジルエーテル共重合体、ポリアクリル樹脂アルカノールアミン液、ポリアクリル酸‐(メタ)アクリル酸エステル共重合体、ポリメタクリル酸エチル、プルロニックポリエーテル、ポリエーテルジアルキルエステル、ポリエーテルジアルキルエーテル、ポリエーテルウレタン変性物、ポリエーテルエポキシ変性物、チルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、ビニルメチルエーテル‐無水マレイン酸共重合物の部分エステル、乾性油脂脂肪酸アリルアルコールエステル‐無水マレイン酸の反応物の半エステル、ポリエチレンオキシド、ポリエチレングリコール、ポリオキシエチレン‐ポリオキシプロピレン共重合体、繊維系グリコール酸ナトリウム、繊維系グリコール酸カルシウム、アセチレングリコール、アニオン型ポリアクリルアミド、ノニオン型ポリアクリルアミドが好ましく、より好ましくは、ばれいしょデンプン、コーンスターチ、こんにゃく、寒天(ガラクタン)、グアーガム、ペクチン、デキストラン、キサンタンガム(ザンタンガム)、ゼラチン、メチルセルロース(MC)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、カルボキシメチルデンプン、カルボキシビニルポリマー、アニオン型アクリル系ポリマーである。
【0031】
高膨潤性ベントナイト3は、一般のベントナイト(例えば、株式会社クニミネ社製のクニゲルV1、クニゲルG2など)と異なり、塩濃度が高い海水中であっても膨潤性が失われにくく、時間経過後においても凝集沈殿しにくい。また、高膨潤性ベントナイト3は、一般のベントナイトと比べてブリーディング率が小さいという性質を有する。そして、砂質系の変形追随性遮水材10は、かかる高膨潤性ベントナイト3を用いているので、海水環境下でも優れた遮水機能を有することとなる。
【0032】
ところで、本実施形態においては、高膨潤性ベントナイト3を用いて海水練りベントナイト泥水を作製し、その特性能試験を実施した(図6〜12参照)。その際、砂1及び海水2を混合してから、これらの混合物に高膨潤性ベントナイト3を添加し、さらにこれらの各材料を混合して、海水練り土質系(砂質系)遮水材を作製した。なお、高膨潤性ベントナイト3としては、耐塩性を有するSW−101及び耐塩性を有しないスーパークレイを用い、一般のベントナイトとしては、クニゲルV1を用いた。以下、各特性能試験について説明する。
【0033】
まず、特性能試験として、海水濃度の異なる海水練りベントナイト泥水(3%濃度、500mLメスシリンダーで1日放置したもの)について、ベントナイト粒子の分散・凝集状態を調べた。その結果を図6に示す。
【0034】
図6に示すように、耐塩高膨潤性ベントナイト(SW−101)を用いた場合には、海水濃度が上昇してもベントナイト粒子は分散した状態にあり、膨潤性が失われなかった。一方、一般のベントナイト(クニゲルV1)を用いた場合には、海水濃度10%でも凝集し、40〜100%では完全に凝集状態となり、膨潤性が失われてしまった。
【0035】
次に、ベントナイト泥水のファンネル粘度を測定することによって、ベントナイト粒子の海水中での分散状況を調べた。その際、4種類のベントナイト、すなわち高膨潤性ベントナイト(SW−101、スーパークレイ)及び一般のベントナイト(クニゲルV1、クニゲルG2)について、泥水(濃度3%)のファンネル粘度を測定した。その測定結果を図7に示す。
【0036】
図7に示すように、ファンネル粘度は、4種のベントナイトいずれの場合でも、海水濃度(海水の割合)が増大するのに伴って低下した。その中で一般のベントナイト(クニゲルV1、クニゲルG2)及び高膨潤性ベントナイト(スーパークレイ)は、海水濃度0%(清水)でファンネル粘度が約22秒であったものが海水100%では20秒前後まで低下した。このように海水濃度の増大に伴って、ファンネル粘度が低下したのは、ベントナイト粒子が海水の塩類濃度(主にNaCL)の上昇によって、膨潤・分散が抑制されたためであると推測される。
【0037】
一方、耐塩高膨潤性ベントナイト(SW−101)のファンネル粘度は、海水0%では約37秒と高く、海水100%では22.5秒まで低下したが、他のベントナイトに比べて高い値を示した。このことは、耐塩高膨潤性ベントナイト(SW−101)が海水の塩分濃度の影響を受けにくく、ベントナイト粒子が分散したためであると推測される。なお、ベントナイト粒子が分散したのは、耐塩高膨潤性ベントナイト(SW−101)に含まれている極少量(約1%前後)の水溶性ポリマーの作用によるものである。
【0038】
また、ベントナイト泥水の作製に用いる海水濃度と減圧脱水量との関係について調べた。その結果を図8に示す。
【0039】
図8に示すように、各種のベントナイト泥水の減圧脱水量は、泥水作製時の海水濃度によって影響を受けた。具体的には、減圧脱水量が小さいほど泥水中のベントナイトはよく分散し、良好な泥膜(難透水性)を形成した。4種のベントナイトは、清水で練った場合には、いずれも減圧脱水量が0.5〜4mLと小さい値を示した。しかし、一般のベントナイト(クニゲルV1、クニゲルG2)及び高膨潤性ベントナイト(スーパークレイ)は、海水濃度の増大に伴って、脱水量が急激に増大した。一方、耐塩高膨潤性ベントナイト(SW−101)は、海水濃度が増大しても減圧脱水量がほとんど増大しなかった。このことから、一般のベントナイト(クニゲルV1、クニゲルG2)は、海水練りで使用すると凝集状態の不良泥膜を形成してしまうので、海水練り用の遮水材には適していないと推測される。なお、高膨潤性ベントナイト(スーパークレイ)は、一般のベントナイト(クニゲルV1、クニゲルG2)よりも海水に強いといえるが、海水によって止水性が低下してしまうことは免れない。一方、耐塩高膨潤性ベントナイト(SW−101)は、海水条件において分散して良好な泥膜を形成し、その結果、海水練りの材料としては高膨潤性ベントナイト(スーパークレイ)よりも優れた効果を示した。両者の大きな差異は、高膨潤性ベントナイトに含まれている水溶性ポリマーの作用によるものと推測される。
【0040】
さらに、砂を混合した遮水材としての特性をフロー値10〜14cmにして、ベントナイト量とブリーディング率及び透水係数との関係を調べた。その結果をそれぞれ図9及び図10に示す。
【0041】
図9及び図10に示すように、ベントナイト量が増加するにつれてブリーディング率及び透水係数はいずれも低下する傾向を示した。つまり、ベントナイト量が増加するにつれて、水量が増加するとともに砂の量が少なくなり、ブリーディング率及び透水係数がいずれも低下した。その際、耐塩高膨潤性ベントナイト(SW−101)を用いた場合には、ブリーディング率は数%の小さな値を示し、3%以下の基準を満たした。しかし、一般のベントナイト(クニゲルV1)を用いた場合には、ブリーディング率は大きな値を示し、3%以下の基準を満たさなかった(図9参照)。また、耐塩高膨潤性ベントナイト(SW−101)を用いた場合には、透水係数1.0×10−6cm/sec以下の基準を満たしたが、一般のベントナイト(クニゲルV1)を用いた場合には、この基準を満たさなかった(図10参照)。
【0042】
次に、X線回折法によって、耐塩高膨潤性ベントナイト(SW−101)と一般のベントナイト(クニゲルV1)の鉱物分析を行った。その結果を図11及び表3に示す。なお、表3は図11のグラフをまとめたものである。
【0043】
図11に示すように、いずれのベントナイトも主な粘土鉱物はスメクタイト(S)であり、さらに001反射の位置(それぞれ、12.7Å、12.5Å)からNa型ベントナイトであることがわかった。また、石英(G)と長石(F)は、両ベントナイトに含まれ、耐塩高膨潤性ベントナイト(SW−101)だけに見られた鉱物は、クリストバル石(Cr)と少量の沸石(Z)・雲母粘土(M)・ジプサム(G)であった。一方、一般のベントナイト(クニゲルV1)だけに見られた鉱物は、斜プチロ沸石(Cl)と少量のカルサイト(C)、パラサイト(Py)であった(表3参照)。これらベントナイト中の各種鉱物のうち、分散・膨潤などの活性の原動力になるのはスメクタイトであるが、X線回折では、両ベントナイト間でスメクタイトの質に大差は見られなかった。しかし、耐塩高膨潤性ベントナイト(SW−101)は、一般のベントナイト(クニゲルV1)と比べてスメクタイトのピークが大きかったことから、耐塩高膨潤性ベントナイト(SW−101)の方が一般のベントナイト(クニゲルV1)よりもスメクタイト含有量が多いことが判明した。
【0044】
【0045】
次に、耐塩高膨潤性ベントナイト(SW−101)について、air雰囲気下とN2ガス雰囲気下とで、それぞれ熱分析を実施した。その際、耐塩高膨潤性ベントナイト(SW−101)として、全有機炭素量(TOC)が9.6g/kgすなわち0.96%であり、約1質量%の水溶性ポリマーを含有するものを用いた。また、コントロール実験として、一般のベントナイト(クニゲルV1)についてもair雰囲気下で熱分析を実施した。その結果を図12に示す。
【0046】
図12に示すように、air雰囲気下で見られた311℃の発熱ピークがN2ガス雰囲気下ではほとんど見られなかった。このことから、このピークは有機物の燃焼によるものと推測される。なお、耐塩膨潤性ンベントナイト(SW−101)の310℃付近の質量減少は、air雰囲気下で0.92%、N2ガス雰囲気下で0.84%であった。N2ガス雰囲気下では有機物が燃焼(酸化)しないので、耐塩高膨潤性ベントナイト(SW−101)の有機物含有量は、0.92%−0.84%=0.08%と算出されることとなり、この値は、前述したTOCの値(=約1%)に比べて1桁小さい。その原因として、実験上、N2ガス雰囲気が完全ではなく、微量のair(酸素)が残り、有機物が燃焼したことが考えられる。一方、一般のベントナイト(クニゲルV1)の場合には、有機物による発熱ピークが見られなかった。なお、一般のベントナイト(クニゲルV1)に見られた470℃の発熱ピークは、黄鉄鉱(pyrite)によるものであり、有機物の燃焼によるものではない。
【0047】
以上説明したように、耐塩高膨潤性ベントナイト(SW−101)は、高品質のNa型ベントナイトをベースにして、質量比で約1%の水溶性ポリマー(有機物)を含有するものである。これら高品質のNa型ベントナイトと水溶性ポリマーとが一体となって海水中でもベントナイト粒子を十分に分散させることにより、変形追随性遮水材10は長期にわたって遮水性を維持するものと推測される。なお、水溶性ポリマーの作用によって変形追随性遮水材10の中で一旦分散したベントナイト粒子は、水溶性ポリマーが消失した後でも、砂粒子相互の空隙に分散して密実なクレイペーストを形成する。従って、変形追随性遮水材10は十分な遮水性能を維持するものと推測される。
【0048】
<各材料の配合>
次に、変形追随性遮水材10を構成する各材料の最適な配合量を設定するために、高膨潤性ベントナイト3の量を変えて配合試験を実施した。この配合試験では、遮水材のブリーディング率及び透水係数を測定した。その際、ベントナイトとして、高膨潤性ベントナイト(SW−101、スーパークレイ)及び一般のベントナイト(クニゲルV1、クニゲルG2)を用い、さらに他のベントナイトとして、浅間(国産;(株)ホージュン社製)、赤城(国産;(株)ホージュン社製)、榛名(国産;(株)ホージュン社製)を用いた。それぞれの成分を表4に示す。
【0049】
また、表4に示すベントナイトのうち、耐塩高膨潤性ベントナイト(SW−101)の配合量を変えた場合において、変形追随性遮水材10のブリーディング率及び透水係数の各変化をそれぞれ図13、14に示し、この場合の各材料の配合を表5に示す。一方、高膨潤性ベントナイト(スーパークレイ)の配合量を変えた場合における変形追随性遮水材10のブリーディング率及び透水係数の各変化をそれぞれ図15、16に示す。なお、この場合における各材料の配合とブリーディング率、湿潤密度、及び透水係数との関係を表6に示す。
【0050】
【0051】
図13、14及び表5に示すように、高膨潤性ベントナイトがSW−101の場合には、ベントナイト量が60〜100kg/m3であれば、遮水材のブリーディング率が3%以下の基準を満たすとともに(図13参照)、透水係数が1×10−6cm/sec以下の基準を満たした(図14参照)。なお、ベントナイト量が60kg/m3未満の場合には、ブリーディング率、湿潤密度、及び透水係数がいずれも増加し、基準値を満たさなくなってしまうことが懸念される。他方、ベントナイト量が100kg/m3を超える場合には、コスト増加を招き、しかも砂1の含有量が減少することから変形追随性遮水材10の密度が小さくなってしまう。特に、変形追随性遮水材10が水中打設用の場合には、その密度は1.8〜2.0g/cm3程度が好ましく、これよりも小さくなってしまうと、例えば、鋼管矢板の継手部に変形追随性遮水材10を打設して充填する際に、継手部壁面と変形追随性遮水材10との密着性が失われ、その結果、充填部付近の遮水性能が低下してしまうことが懸念される。このことから、高膨潤性ベントナイトがSW−101の場合には、ベントナイト量が60〜100kg/m3となるように配合しておくことが好ましい。
【0052】
一方、高膨潤性ベントナイトがスーパークレイの場合には、図15、16及び表6に示すように、ベントナイト量が150〜200kg/m3であれば、遮水材のブリーディング率が3%以下の基準を満たすとともに(図15参照)、透水係数が1×10−6cm/sec以下の基準を満たした(図16参照)。なお、ベントナイト量が150kg/m3未満の場合には、透水係数が1×10−6cm/secを超えてしまい、200kg/m3を超える場合には、コスト増を招くとともに、密度が小さくなってしまう。このことから、高膨潤性ベントナイトがスーパークレイの場合には、ベントナイト量が150〜200kg/m3となるように配合しておくことが好ましい。
【0053】
===長期品質保持の確認試験===
ところで、変形追随性遮水材10は、充填する際の圧密沈下量が少ないことが望ましく、さらに充填した後には変形追随性(例えば、変形自在なゲル状の状態)が長期間にわたって良好に保持されることが望ましい。そこで、変形追随性遮水材10の長期品質保持を確認すべく、(1)自重圧密沈下量、(2)透水性、及び(3)変形追随性の確認試験を実施した。以下、各別に説明する。なお、(1)〜(3)の確認試験では、変形追随性遮水材10としてすべて同じものを用いた(表5のNo3に示す配合を参照)。この変形追随性遮水材10の物理特性を表7に示す。
【0054】
【0055】
<(1)自重圧密沈下量の確認>
まず、変形追随性遮水材10の自重圧密沈下量について長期確認試験を実施した。本確認試験では、試験体として、変形追随性遮水材10を充填した初期高さ60cmの円筒形状のものを用意した。また、比較検討のために、粘土系遮水材を充填した試験体を用意した。そして、これらの試験体に遠心模型実験装置を用いて重力加速度の20倍の遠心加速度20Gを作用させて、1/20(換算層厚さ12m)の模型について実験を行い、経過時間と自重圧沈下量との関係を測定した。その測定結果を図17に示す。
【0056】
図17に示すように、変形追随性遮水材10は充填した後、直ちに沈下してほぼ一定の値に収束したが、粘土系遮水材は時間の経過とともに徐々に沈下量が増加した。変形追随性遮水材10、粘土系遮水材の推定最終換算沈下量は、それぞれ98cm、208cm程度となった。このことから、変形追随性遮水材10は、粘土系遮水材よりも自重圧密沈下量が少なく、かつ、沈下が短時間で収束することが確認された。なお、同図に示す推定最終換算沈下量は、いずれも双曲線法により算出したものである。
【0057】
<(2)透水性の確認>
次に、変形追随性遮水材10の透水性について長期透水試験を実施した。本試験では、変形追随性遮水材10を供試体とし、遮水材A、Bを比較対照とした。その試験結果を図18に示す。なお、同図に示す変形追随性遮水材10は耐塩高膨潤性ベントナイト(SW−101)を用いたものであり、遮水材A、Bは、それぞれ一般のベントナイト(クニゲルV1)、一般のベントナイト(クニゲルG2)用いたものである。
【0058】
図18に示すように、変形追随性遮水材10の場合には、時間が経過しても透水係数がほぼ一定に維持され、1.0×10−6cm/sec以下の基準を常に満たした。しかし、遮水材A、Bの場合には、時間経過とともに透水係数が増大し、基準値1.0×10−6cm/secを超えてしまった。このことから、変形追随性遮水材10は、遮水材A、Bと比べ、長期にわたって遮水性を維持することがわかる。
【0059】
<(3)変形追随性の確認>
次に、変形追随性遮水材10の変形追随性について確認試験を実施した。本確認試験では、三軸試験機を用いて連続繰返し載荷試験を行い、変形追随性遮水材10について繰り返し回数、軸差応力及び軸ひずみを測定した。比較検討のために、一般的な砂(最大粒径2mm、均等係数4.54)についても同様の測定を行った。その測定結果を図19、20に示す。
【0060】
なお、図19(a)〜図19(c)は、それぞれ変形追随性遮水材10に係る繰り返し回数と軸差応力との関係、繰り返し回数と軸ひずみとの関係、軸ひずみと軸差応力との関係を示す図である。また、図20(a)〜図20(c)は、それぞれ一般的な砂に係る繰り返し回数と軸差応力との関係、繰り返し回数と軸ひずみとの関係、軸ひずみと軸差応力との関係を示す図である。
【0061】
図19(a)〜図19(c)に示すように、変形追随性遮水材10に応力振幅20kPaの載荷を加えると、軸ひずみ量はほぼ一定の幅で増減を繰り返し、繰り返し回数が1000回まで軸差応力と軸ひずみとの関係はほとんど同じ軌跡を示した。従って、変形追随性遮水材10は繰り返し載荷において、ひずみ量に大きな変化が生じにくく、弾性的挙動を保持することが確認された。つまり、本実施形態において用いられる変形追随性遮水材10は、波浪、潮位差、地震等により外力が繰り返し遮水壁に作用して遮水壁が変形しても、この遮水壁の変形に応じて長期間にわたって変形可能で、継手部における変形追随性遮水材10の亀裂及び破断等を生じない。一方、図20(a)〜図20(c)に示すように、一般的な砂に応力振幅20kPaの載荷を加えると、軸ひずみ量は徐々に増加し、繰り返し回数が20回を越えると急激に増加して砂と水とが分離し、破壊が生じた。
【0062】
以上のことから、変形追随性遮水材10は繰り返し載荷において、一般的な砂よりも弾性的挙動を保持することが確認された。また、変形追随性遮水材10は、自重圧密沈下量が少なく、かつ、繰り返し載荷されても弾性的挙動を保持することが確認された。
【0063】
===水中打設の確認試験===
次に、所定の模型装置を用いて、変形追随性遮水材10を水中打設し、各深度における諸物性(密度、含水比、透水係数)を測定した。その測定結果を図21に示す。
【0064】
図21に示すように、変形追随性遮水材10は、各深度において、密度が2.00〜2.05g/cm3の範囲でほぼ一定であり(図21(a)参照)、しかも含水比が25%付近でほぼ一定であった(図21(b)参照)。また、変形追随性遮水材10は、各深度において、透水係数が1.0×10−7〜1.0×10−6cm/secの範囲でほぼ一定であり、いずれも透水係数1.0×10−6cm/sec以下の基準を満たした。このことから、変形追随性遮水材10を水中打設した場合には、変形追随性遮水材10は各深度において均質になることがわかる。
【0065】
===製造後の性状変化===
次に、砂1、海水2、及び高膨潤性ベントナイト3を混練りして変形追随性遮水材10を製造し、製造後の変形追随性遮水材10について性状変化(フロー値、透水係数)を調べた。その結果を図22、23に示す。図22は経過日数とフロー値との関係を示すグラフ、図23は経過日数と透水係数との関係を示すグラフである。
【0066】
図22に示すように、変形追随性遮水材10は、製造後7日目まで、フロー値の基準値(10〜14cm)を常に満たした。また、図23に示すように、変形追随性遮水材10は、製造後7日目まで、透水係数の基準値(1.0×10−6cm/sec以下)を常に満たした。このことから、変形追随性遮水材10は、製造後打設時までの間に運搬等のために数日要する場合であっても、その間に性状変化が生じにくいことがわかる。但し、変形追随性遮水材10の乾燥を防止するために、その表面にキャッピングを施しておくことが好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】本発明の変形追随性遮水材(砂質系)及び従来の変形追随性遮水材(粘土系)を示す拡大模式図である。
【図2】砂の粒径加積曲線を示すグラフである。
【図3】海水量とフロー値との関係を示すグラフである。
【図4】海水量とブリーディング率との関係を示すグラフである。
【図5】海水量と透水係数との関係を示すグラフである。
【図6】ベントナイト粒子の分散・凝集状態を示す図である。
【図7】泥水(濃度3%)のファンネル粘度を示すグラフである。
【図8】海水濃度と減圧脱水量との関係との関係を示すグラフである。
【図9】ベントナイト量とブリーディング率との関係を示すグラフである。
【図10】ベントナイト量と透水係数との関係を示すグラフである。
【図11】X線回折法によるベントナイトの鉱物分析結果を示す図である。
【図12】ベントナイトの熱分析結果を示すグラフである。
【図13】耐塩高膨潤性ベントナイト(SW−101)の配合量とブリーディング率との関係を示すグラフである。
【図14】耐塩高膨潤性ベントナイト(SW−101)の配合量と透水係数との関係を示すグラフである。
【図15】高膨潤性ベントナイト(スーパークレイ)の配合量とブリーディング率との関係を示すグラフである。
【図16】高膨潤性ベントナイト(スーパークレイ)の配合量と透水係数との関係を示すグラフである。
【図17】経過時間と自重圧密沈下量との関係を示すグラフである。
【図18】透水性の確認試験結果を示すグラフである。
【図19】変形追随性の確認結果(変形追随性遮水材の場合)を示すグラフである。
【図20】変形追随性の確認結果(一般の砂の場合)を示すグラフである。
【図21】水中打設の確認試験結果を示すグラフである。
【図22】経過日数とフロー値との関係を示すグラフである。
【図23】経過日数と透水係数との関係を示すグラフである。
【符号の説明】
【0068】
1 砂
2 海水
3 高膨潤性ベントナイト
10 変形追随性遮水材(砂質系)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
最大粒径が5mm以下であり均等係数が5〜10である砂と、海水と、高膨潤性ベントナイトと、を混合してなる変形追随性遮水材。
【請求項2】
請求項1において、
前記高膨潤性ベントナイトは、清水中での膨潤度が23〜30mL/2gであり、且つスメクタイト含有量が60〜70質量%であることを特徴とする変形追随性遮水材。
【請求項3】
請求項1又は2において、
前記高膨潤性ベントナイトは、水溶性ポリマーを含有することを特徴とする変形追随性遮水材。
【請求項4】
請求項3において、
前記水溶性ポリマーは、前記高膨潤性ベントナイトに対する含有量が1質量%以下であることを特徴とする変形追随性遮水材。
【請求項5】
請求項4において、
前記高膨潤性ベントナイトが60〜200kg/m3含まれていることを特徴とする変形追随性遮水材。
【請求項6】
請求項1又は2において、
前記高膨潤性ベントナイトは、水溶性ポリマーを含有せず、該高膨潤性ベントナイトが150〜200kg/m3含まれていることを特徴とする変形追随性遮水材。
【請求項1】
最大粒径が5mm以下であり均等係数が5〜10である砂と、海水と、高膨潤性ベントナイトと、を混合してなる変形追随性遮水材。
【請求項2】
請求項1において、
前記高膨潤性ベントナイトは、清水中での膨潤度が23〜30mL/2gであり、且つスメクタイト含有量が60〜70質量%であることを特徴とする変形追随性遮水材。
【請求項3】
請求項1又は2において、
前記高膨潤性ベントナイトは、水溶性ポリマーを含有することを特徴とする変形追随性遮水材。
【請求項4】
請求項3において、
前記水溶性ポリマーは、前記高膨潤性ベントナイトに対する含有量が1質量%以下であることを特徴とする変形追随性遮水材。
【請求項5】
請求項4において、
前記高膨潤性ベントナイトが60〜200kg/m3含まれていることを特徴とする変形追随性遮水材。
【請求項6】
請求項1又は2において、
前記高膨潤性ベントナイトは、水溶性ポリマーを含有せず、該高膨潤性ベントナイトが150〜200kg/m3含まれていることを特徴とする変形追随性遮水材。
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図1】
【図6】
【図3】
【図4】
【図5】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図1】
【図6】
【公開番号】特開2008−43845(P2008−43845A)
【公開日】平成20年2月28日(2008.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−219706(P2006−219706)
【出願日】平成18年8月11日(2006.8.11)
【出願人】(000000549)株式会社大林組 (1,758)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年2月28日(2008.2.28)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年8月11日(2006.8.11)
【出願人】(000000549)株式会社大林組 (1,758)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]