説明

変速操作装置

【課題】 シフトレバーのセレクト位置が多く長い作動ストロークが必要な場合でも、所定の推力を得ることができる電磁ソレノイドを用いたセレクトアクチュエータを備えた変速操作装置を提供する。
【解決手段】 シフトレバーをセレクト方向に作動するセレクトアクチュエータと、シフトレバーをシフト方向に作動するシフトアクチュエータとを有する変速操作装置であって、セレクトアクチュエータは筒状のケーシングと、該ケーシング内に回動可能に支持されシフトレバーを軸方向に摺動可能に装着したコントロールシャフトと、ケーシング内においてシフトレバーの両側方に配設された一対の電磁ソレノイドと、該一対の電磁ソレノイドの可動鉄心にそれぞれ装着されコントロールシャフトに摺動可能に配設した一対の筒状の作動ロッドを具備し、該一対の筒状の作動ロッドの先端がシフトレバーの両側面にそれぞれ当接せしめられており、シフトアクチュエータはコントロールシャフトを回動せしめる。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、車両に搭載された変速機の変速操作を行うための変速操作装置に関する。
【0002】
【従来の技術】変速機の変速操作を行う変速操作装置は、変速機構のシフトレバーをセレクト方向に作動するセレクトアクチュエータと、該シフトレバーをシフト方向に作動するシフトアクチュエータとからなっている。このようなセレクトアクチュエータおよびシフトアクチュエータとしては、一般に空気圧や油圧等の流体圧を作動源とした流体圧シリンダが用いられている。この流体圧シリンダを用いたセレクトアクチュエータおよびシフトアクチュエータは、流体圧源と各アクチュエータとを接続する配管が必要であるとともに、作動流体の流路を切り換えるための電磁切り換え弁を配設する必要があり、これらを配置するためのスペースを要するとともに、装置全体の重量が重くなるという問題がある。また近年、圧縮空気源や油圧源を具備していない車両に搭載する変速機の変速操作装置として、電動モータによって構成したセレクトアクチュエータおよびシフトアクチュエータが提案されている。電動モータによって構成したセレクトアクチュエータおよびシフトアクチュエータは、流体圧シリンダを用いたアクチュエータのように流体圧源と接続する配管や電磁切り換え弁を用いる必要がないので、装置全体をコンパクトで且つ軽量に構成することができる。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】電動モータを用いたアクチュエータにおいては、所定の作動力を得るために減速機構が必要となる。この減速機構としては、ボールネジ機構を用いたものと、歯車機構を用いたものが提案されている。これらボールネジ機構および歯車機構を用いたアクチュエータは、ボールネジ機構および歯車機構の耐久性および電動モータの耐久性、作動速度において必ずしも満足し得るものではない。
【0004】本出願人は、減速機構等を用いずにシフトレバーをシフト方向およびセレクト方向に作動することができるセレクトアクチュエータおよびシフトアクチュエータの駆動源として、電磁ソレノイドを用いた変速操作装置を特願2001−183470として提案した。而して、セレクトアクチュエータはシフトレバーを複数のセレクト位置に確実に位置付ける必要があり、かなり長い作動ストロークが必要となる。一方、電磁ソレノイドの推力は、固定鉄心と可動鉄心との距離に反比例し、この距離が短くなるに従って2次曲線的に増加するが、固定鉄心と可動鉄心との距離が長いと大きな推力は得られない。即ち、かなり長い作動ストロークが必要なセレクトアクチュエータの駆動源として電磁ソレノイドを用いた場合、固定鉄心と可動鉄心との距離が長い位置では発生する推力が小さい。従って、固定鉄心と可動鉄心との距離が長い位置で所定の推力を得るためには、電磁ソレノイドに供給する電力を増大するは、大容量の電磁ソレノイドを用いる必要がある。
【0005】本発明は上記事実に鑑みてなされたもので、その主たる技術的課題は、シフトレバーのセレクト位置が多く長い作動ストロークが必要な場合でも、所定の推力を得ることができる電磁ソレノイドを用いたセレクトアクチュエータを備えた変速操作装置を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明によれば、上記技術的課題を解決するために、シフトレバーをセレクト方向に作動するセレクトアクチュエータと、該シフトレバーをシフト方向に作動するシフトアクチュエータとを有する変速操作装置において、該セレクトアクチュエータは、筒状のケーシングと、該ケーシング内に回動可能に支持され該シフトレバーを軸方向に摺動可能に装着したコントロールシャフトと、該ケーシング内において該シフトレバーの両側方において該コントロールシャフトを包囲して配設された一対の電磁ソレノイドと、該一対の電磁ソレノイドの可動鉄心にそれぞれ装着され該コントロールシャフトに摺動可能に配設した一対の筒状の作動ロッドを具備し、該一対の筒状の作動ロッドの先端が該シフトレバーの両側面にそれぞれ当接せしめられており、該シフトアクチュエータは、該コントロールシャフトをシフト方向に回動せしめる、ことを特徴とする変速操作装置が提供される。
【0007】上記セレクトアクチュエータは、上記一対の電磁ソレノイドの電磁コイルに供給する電力量に対応して発生する推力に応じて上記シフトレバーの複数の作動位置を規制するセレクト位置規制機構を具備していることが望ましい。
【0008】上記シフトアクチュエータは、上記コントロールシャフトに装着された作動レバーと、該作動レバーに対向して配設され該作動レバーを介してコントロールシャフトをそれぞれのシフト方向に回動せしめる一対の電磁ソレノイドとを具備している。
【0009】
【発明の実施の形態】以下、本発明に従って構成された変速操作装置の好適実施形態を図示している添付図面を参照して、更に詳細に説明する。
【0010】図1は本発明に従って構成された変速操作装置の一実施形態を示す断面図、図2は図1におけるA−A線断面図、図3は図2におけるB−B線断面図である。図示の実施形態における変速操作装置2は、セレクトアクチュエータ3とシフトアクチュエータ7とから構成されている。図示の実施形態におけるセレクトアクチュエータ3は、円筒状に形成され互いに連結された4個のケーシング31a、31b、31c、31dを具備している。左側のケーシング31aは、図1および図2において右端が開放されており、図1および図2において左端には端壁311aが設けられている。中央左側のケーシング31bは、両端が開放されており、中央部の下部には開口311bが形成されている。中央右側のケーシング31cは、両端が開放されており、下部に開口311cが形成されている。なお、中央のケーシング31cは下方に突出して形成されたシフトアクチュエータ取付部312cを備えており、このシフトアクチュエータ取付部312cには上記開口311cと連通しケーシングの軸方向に対して直角方向に開口313cが形成されている。右側ケーシング31dは、図1および図2において左端が開放されており、図1および図2において右端には端壁311dが設けられている。
【0011】上記のように構成された4個のケーシング31a、31b、31c、31d内にはコントロールシャフト32が配設されている。このコントロールシャフト32は、両端部が左側のケーシング31aおよび右側ケーシング31dに軸受331および332を介して回動可能に支持されている。コントロールシャフト32には、その外周面には外歯スプライン321が形成されている。このように構成されたコントロールシャフト32には、シフトレバー34が装着されている。このシフトレバー34は、筒状の装着部341と該装着部341から径方向に突出して形成されたレバー部342とからなっており、装着部341がコントロールシャフト32に軸方向に摺動可能にスプライン嵌合されている。なお、シフトレバー34のレバー部342は、図2に示すように中央左側のケーシング31bの下部に形成された開口311bを挿通して配設されている。シフトレバー34を構成するレバー部342の先端部は、第1のセレクト位置SP1、第2のセレクト位置SP2、第3のセレクト位置SP3、第4のセレクト位置SP4に配設された図示しない変速機のシフト機構を構成するシフトブロック301、302、303、304と適宜係合するようになっている。なお、図示の実施形態においては、第1のセレクト位置SP1は後進−1速段セレクト位置、第2のセレクト位置SP2は2速−3速段セレクト位置、第3のセレクト位置SP3は4速−5速段セレクト位置、第4のセレクト位置SP4は6速段セレクト位置に設定されている。
【0012】上記コントロールシャフト32には、その図1および図2において右端部に後述するシフトアクチュエータ7を構成する作動レバー70が装着されている。作動レバー70は、その基部にコントロールシャフト32と嵌合する穴701を備えており、該穴701の内周面に形成されたキー溝702とコントロールシャフト32の外周面に形成されたキー溝322にキー703を嵌合することによりコントロールシャフト32と一体的に回動するように構成されている。また、作動レバー70は、中央右側のケーシング31cの下部に形成された開口311cを挿通して配設され、その先端(下端)は上記シフトアクチュエータ取付部312cに形成された開口313cの中心部に達している。
【0013】図示の実施形態におけるセレクトアクチュエータ3は、上記中央左側のケーシング31b内においてシフトレバー34の両側方にコントロールシャフト32を包囲して配設された一対の電磁ソレノイド4、5を具備している。シフトレバー34の図1および図2において右側に配設された第1の電磁ソレノイド4は、コントロールシャフト32を包囲して配設された電磁コイル41と、該電磁コイル41内に配設された固定鉄心42と、該固定鉄心42の一端面(図1および図2において右端面)と対向して配設された可動鉄心43と、該可動鉄心43に装着された作動ロッド44と、上記電磁コイル41を包囲しケーシング31bの内周に沿って配設された筒状部材45を具備している。電磁コイル41は、合成樹脂等の非磁性材からなる環状のボビン46に捲回されている。上記固定鉄心42は、磁性材によって形成され、他端(図1および図2において左端)にはフランジ部421が設けられており、このフランジ部421が中央左側のケーシング31bの内周面に形成された段部311bと係合して位置決めされる。上記可動鉄心43は、磁性材によって形成され、固定鉄心42に対して軸方向に接離可能に構成されている。上記作動ロッド44は、ステンレス鋼等の非磁性材によって筒状に形成され、一端部(図1および図2において右端部)に小径部441が設けられている。このように構成された作動ロッド44は、小径部441を上記可動鉄心43の中央部に形成された穴431に挿通して装着される。このようにして可動鉄心43に装着された作動ロッド44は、コントロールシャフト32に軸方向に摺動可能に嵌挿されるとともに、その他端部が上記固定鉄心42の中央部に形成された穴422を貫通して軸方向に摺動可能に配置される。そして、作動ロッド44の他端面(図1および図2において左端面)が上記シフトレバー34の装着部341に当接するようになっている。上記筒状部材45は、磁性材によって形成され、一端(図1および図2において右端)に内側に向けて形成された環状のフランジ部451を備えており、該フランジ部451が上記電磁コイル41が捲回されたボビン46の図において右端を覆うように配置される。この筒状部材45は、フランジ部451の右端面(図1および図2において右端面)が中央右側のケーシング31cの図において左端面と係合して位置決めされる。
【0014】上記シフトレバー34の図1および図2において左側に配設された第2の電磁ソレノイド5は、上記第1の電磁ソレノイド4と実質的に同一の構成であり、コントロールシャフト32を包囲して配設され合成樹脂等の非磁性材からなる環状のボビン56に捲回された電磁コイル51と、該電磁コイル51内に配設され磁性材によって形成された固定鉄心52と、該固定鉄心52の他端面(図1および図2において左端面)と対向して配設され磁性材によって形成された可動鉄心53と、該可動鉄心53に装着され非磁性材によって形成された筒状の作動ロッド54と、上記電磁コイル51を包囲しケーシング31bの内周に沿って配設され磁性材によって形成された筒状部材55とからなっている。なお、固定鉄心52は、一端(図1および図2において右端)に設けられたフランジ部521が中央左側のケーシング31bの内周面に形成された段部312bと係合して位置決めされる。また、筒状部材55は、他端(図1および図2において左端)に設けられたフランジ部551が左側のケーシング31aの図において右端面と係合して位置決めされる。なお、可動鉄心53の中央部に形成された小径部541に嵌合して装着した筒状の作動ロッド54は、コントロールシャフト32に軸方向に摺動可能に嵌挿されるとともに、その一端部が上記固定鉄心52の中央部に形成された穴522を貫通して軸方向に摺動可能に配置され、その一端面(図1および図2において右端面)が上記シフトレバー34の装着部341に当接するようになっている。
【0015】セレクトアクチュエータ3を構成する第1の電磁ソレノイド4および第2の電磁ソレノイド5は以上のように構成されており、第1の電磁ソレノイド4の電磁コイル41に通電すると固定鉄心42が磁化され、可動鉄心43は固定鉄心42に吸引されて可動鉄心43即ち作動ロッド44には図1および図2において左方への推力が発生する。この結果、作動ロッド44と当接しているシフトレバー34は、コントロールシャフト32上を図1および図2において左方へ移動せしめられる。一方、第2の電磁ソレノイド5の電磁コイル51に通電すると固定鉄心52が磁化され、可動鉄心53は固定鉄心52に吸引されて可動鉄心53即ち作動ロッド54には図1および図2において右方への推力が発生する。この結果、作動ロッド55と当接しているシフトレバー34は、コントロールシャフト32上を図1および図2において右方へ移動せしめられる。この第1の電磁ソレノイド4および第2の電磁ソレノイド5の可動鉄心43および53即ち作動ロッド44および54に発生する推力の大きさは、電磁コイル41および51に供給する電力量によって決まる。
【0016】図示の実施形態におけるセレクトアクチュエータ3は、上記第1の電磁ソレノイド4の電磁コイル41および第2の電磁ソレノイド5の電磁コイル51に供給する電力量に対応して可動鉄心43および53即ち作動ロッド44および54に発生する推力の大きさと協働してシフトレバー34を上記第1のセレクト位置SP1、第2のセレクト位置SP2、第3のセレクト位置SP3、第4のセレクト位置SP4に位置規制するための第1のセレクト位置規制機構61および第2のセレクト位置規制機構62を具備している。第1のセレクト位置規制機構61は、第1の電磁ソレノイド4の作動ロッド44と中央右側のケーシング31c間に配設されており、コントロールシャフト32に沿って摺動可能に配設された環状の移動リング611と、該移動リング611の右方に配設され中央右側のケーシング31cの端面に当接され図1および図2において右方への移動が規制された環状のストッパー612と、移動リング611と作動ロッド44との間に配設された第1の圧縮コイルばね613と、移動リング611とストッパー612との間に配設された第2の圧縮コイルばね614とによって構成されている。なお、第2の圧縮コイルばね614のばね力は第1の圧縮コイルばね613のばね力より大きく設定されている。
【0017】第2のセレクト位置規制機構62は、第2の電磁ソレノイド5の作動ロッド54と左側のケーシング31a間に配設されており、コントロールシャフト32に沿って摺動可能に配設された環状の移動リング621と、該移動リング621の左方に配設され左側のケーシング31aの端面に当接され図1および図2において左方への移動が規制された環状のストッパー622と、移動リング621と作動ロッド54との間に配設された第1の圧縮コイルばね623と、移動リング621とストッパー622との間に配設された第2の圧縮コイルばね624とによって構成されている。なお、第2の圧縮コイルばね624のばね力は第1の圧縮コイルばね623のばね力より大きく設定されている。
【0018】図示の実施形態におけるセレクトアクチュエータ3は以上のように構成されており、以下その作用について図4をも参照して説明する。セレクトアクチュエータ3を構成する第1の電磁ソレノイド4の電磁コイル42および第2の電磁ソレノイド5の電磁コイル52に電力が供給されていないとき(非通電時)には、第1のセレクト位置規制手段61を構成する第1の圧縮コイルばね613と第2の圧縮コイルばね614および第2のセレクト位置規制手段62を構成する第1の圧縮コイルばね623と第2の圧縮コイルばね624のばね力が釣り合った図1および図2に示す状態に位置付けられている。
【0019】図1および図2に示す状態から第1の電磁ソレノイド4を構成する電磁コイル41に例えば2.4Vの電圧を印加すると、固定鉄心42が励磁され可動鉄心43は固定鉄心42に吸引されて、図において左方への推力が発生する。この結果、図4の(a)に示すように可動鉄心43に装着された作動ロッド44によってシフトレバー34が第2のセレクト位置規制手段62を構成する第1の圧縮コイルばね623および第2の圧縮コイルばね624のばね力に抗してコントロールシャフト32上を図において左方に移動する。このとき、第2の圧縮コイルばね624のばね力は第1の圧縮コイルばね623のばね力より大きく設定されているので、移動リング621は変位しない。そして、シフトレバー34は、その装着部341の図において左端が第2のセレクト位置規制機構62を構成する移動リング621に当接した位置で停止する。この結果、シフトレバー34は、図4の(a)に示すように第2の作動位置(P2)に位置付けられる。
【0020】次に、第1の電磁ソレノイド4を構成する電磁コイル41に例えば4.8Vの電圧を印加すると、可動鉄心42即ち作動ロッド43に発生する左方への推力が増大する。この結果、図4の(b)に示すように作動ロッド44に当接されたシフトレバー34は、その装着部341が移動リング621に当接した状態で第2の圧縮コイルばね624のばね力に抗して図において左方に移動する。そして、移動リング621がストッパー622に当接した位置で停止する。この結果、シフトレバー34は、図4の(b)に示すように第1の作動位置(P1)に位置付けられる。
【0021】次に、図1および図2に示す状態から第2の電磁ソレノイド5を構成する電磁コイル51に例えば2.4Vの電圧を印加すると、固定鉄心52が励磁され可動鉄心53は固定鉄心52に吸引されて、図において右方への推力が発生する。この結果、図4の(c)に示すように可動鉄心53に装着された作動ロッド54によってシフトレバー34が第1のセレクト位置規制手段61を構成する第1の圧縮コイルばね613および第2の圧縮コイルばね614のばね力に抗してコントロールシャフト32上を図において右方に移動する。このとき、第2の圧縮コイルばね614のばね力は第1の圧縮コイルばね613のばね力より大きく設定されているので、移動リング611は変位しない。そして、シフトレバー34は、その装着部341の図において右端が第1のセレクト位置規制機構61を構成する移動リング611に当接した位置で停止する。この結果、シフトレバー34は、図4の(c)に示すように第3の作動位置(P3)に位置付けられる。
【0022】次に、第2の電磁ソレノイド5を構成する電磁コイル51に例えば4.8Vの電圧を印加すると、可動鉄心53即ち作動ロッド54に発生する左方への推力が増大する。この結果、図4の(d)に示すように作動ロッド54に当接されシフトレバー34は、その装着部341が移動リング611に当接した状態で第2の圧縮コイルばね614のばね力に抗して図において右方に移動する。そして、移動リング611がストッパー612に当接した位置で停止する。この結果、シフトレバー34は、図4の(d)に示すように第4の作動位置(P4)に位置付けられる。
【0023】以上のように、変速操作装置2を構成するセレクトアクチュエータ3は、駆動源として一対の電磁ソレノイド即ち第1の電磁ソレノイド4および第2の電磁ソレノイド5を具備しているので、それぞれの電磁ソレノイドの作動ストロークを短くすることができるため、多数のセレクト位置を有する場合でも供給電力を増大することなく必要な推力を得ることができる。また、図示の実施形態においては第1の電磁ソレノイド4および第2の電磁ソレノイド5はケーシング内に配設されているので、特に軸方向長さをコンパクトに構成することができる。
【0024】次に、シフトアクチュエータ7について、主に図3を参照して説明する。図示のシフトアクチュエータ7は、上記コントロールシャフト32に装着された作動レバー70と、該作動レバー70を作動せしめる第1の電磁ソレノイド8と第2の電磁ソレノイド9を具備している。この第1の電磁ソレノイド8と第2の電磁ソレノイド9は、上記シフトアクチュエータ取付部312cの両側面に互いに対向して配設されている。
【0025】次に、第1の電磁ソレノイド8について説明する。第1の電磁ソレノイド8は、上記セレクトアクチュエータ3を構成する第1の電磁ソレノイド4および第2の電磁ソレノイド5と実質的に同様の構成であり、筒状のケース81と、該ケース81内に配設され合成樹脂等の非磁性材からなる環状のボビン87に捲回された電磁コイル82と、該電磁コイル82内に配設され磁性材によって形成された固定鉄心83と、該固定鉄心83の一端面と対向して同一軸上に配設され磁性材によって形成された可動鉄心84と、ステンレス鋼等の非磁性材からなり一端部が該可動鉄心74に装着され他端部が固定鉄心83の中央部に形成された穴831を貫通して軸方向に摺動可能に配置され作動ロッド85と、上記筒状のケース81の一端にビス88によって取り付けられたカバー86とからなっている。このように構成された第1の電磁ソレノイド8は、上記中央右側のケーシング31cに設けられたシフトアクチュエータ取付部312bの一側面にケース81が取付けボルト89によって装着され、作動ロッド85の先端が上記作動レバー70の先端部(下端部)に係合するようになっている。このようにしてシフトアクチュエータ取付部312bの一側面に装着された第1の電磁ソレノイド8は、電磁コイル82に通電されると、可動鉄心84が固定鉄心83に吸引される。この結果、可動鉄心84に装着された作動ロッド85が図3において左方に移動し、その先端が上記作動レバー70に作用してコントロールシャフト32を中心として図3において時計方向に回動する。これにより、作動レバー70を装着したコントロールシャフト32が回動するので、該コントロールシャフト32に装着されたシフトレバー34が第1の方向にシフト作動せしめられる。
【0026】次に、第2の電磁ソレノイド9について説明する。第2の電磁ソレノイド9は、上記第1の電磁ソレノイド8と対向して配設され、上記シフトアクチュエータ取付部312bの他側面に装着される。第2の電磁ソレノイド9も第1の電磁ソレノイド8と同様に、筒状のケース91と、該ケース91内に配設され合成樹脂等の非磁性材からなる環状のボビン97に捲回された電磁コイル92と、該電磁コイル92内に配設され磁性材によって形成された固定鉄心93と、該固定鉄心93の一端面と対向して同一軸上に配設され磁性材によって形成された可動鉄心94と、ステンレス鋼等の非磁性材からなり一端部が該可動鉄心94に装着され他端部が固定鉄心93の中央部に形成された穴931を貫通して軸方向に摺動可能に配置され作動ロッド95と、上記筒状のケース91の一端にビス98によって取り付けられたカバー96とからなっている。このように構成された第2の電磁ソレノイド9は、上記シフトアクチュエータ取付部312bの他側面にケース91が取付けボルト99によって装着され、作動ロッド95の先端が上記作動レバー70の先端部(下端部)に係合するようになっている。このようにしてシフトアクチュエータ取付部312bの他側面に装着された第2の電磁ソレノイド9は、電磁コイル92に通電されると、可動鉄心94が固定鉄心93に吸引される。この結果、可動鉄心94に装着された作動ロッド995が図3において右方に移動し、その先端が上記作動レバー70に作用して、コントロールシャフト32を中心として図3において反時計方向に回動する。これにより、作動レバー70を装着したコントロールシャフト32が回動するので、該コントロールシャフト32に装着されたシフトレバー34が第2の方向にシフト作動せしめられる。
【0027】
【発明の効果】本発明による変速操作装置は以上のように構成されているので、以下に述べる作用効果を奏する。
【0028】即ち、本発明によれば、変速操作装置を構成するセレクトアクチュエータは、駆動源として一対の電磁ソレノイドを具備しているので、それぞれの電磁ソレノイドの作動ストローク短くすることができるため、多数のセレクト位置を有する場合でも供給電力を増大することなく必要な推力を得ることができる。また、本発明による変速操作装置は、一対の電磁ソレノイドがケーシング内に配設されているので、特に軸方向長さをコンパクトに構成することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に従って構成された変速操作装置の第1の実施形態を示す断面図。
【図2】図1におけるA−A線断面図。
【図3】図1におけるB−B線断面図。
【図4】図1に示す変速操作装置を構成するセレクトアクチュエータの作動説明図。
【符号の説明】
2:変速操作装置
3:セレクトアクチュエータ
31a、31b、31c、31d:ケーシング
32:コントロールシャフト
331、332:軸受
34:シフトレバー
4:セレクトアクチュエータの第1の電磁ソレノイド
41:電磁コイル
42:固定鉄心
43:可動鉄心
44:作動ロッド
45:筒状部材
46:ボビン
5:セレクトアクチュエータの第2の電磁ソレノイド
51:電磁コイル
52:固定鉄心
53:可動鉄心
54:作動ロッド
55:筒状部材
56:ボビン
61:第1のセレクト位置規制機構
611:移動リング
612:ストッパー
613:第1の圧縮コイルばね
614:第2の圧縮コイルばね
62:第2のセレクト位置規制機構
621:移動リング
622:ストッパー
623:第1の圧縮コイルばね
624:第2の圧縮コイルばね
7:シフトアクチュエータ
70:作動レバー
8:第1の電磁ソレノイド
81:ケース
82:電磁コイル
83:固定鉄心
84:可動鉄心
85:作動ロッド
86:カバー
9:第2の電磁ソレノイド
91:ケース
92:電磁コイル
93:固定鉄心
94:可動鉄心
95:作動ロッド
96:カバー

【特許請求の範囲】
【請求項1】 シフトレバーをセレクト方向に作動するセレクトアクチュエータと、該シフトレバーをシフト方向に作動するシフトアクチュエータとを有する変速操作装置において、該セレクトアクチュエータは、筒状のケーシングと、該ケーシング内に回動可能に支持され該シフトレバーを軸方向に摺動可能に装着したコントロールシャフトと、該ケーシング内において該シフトレバーの両側方において該コントロールシャフトを包囲して配設された一対の電磁ソレノイドと、該一対の電磁ソレノイドの可動鉄心にそれぞれ装着され該コントロールシャフトに摺動可能に配設した一対の筒状の作動ロッドを具備し、該一対の筒状の作動ロッドの先端が該シフトレバーの両側面にそれぞれ当接せしめられており、該シフトアクチュエータは、該コントロールシャフトをシフト方向に回動せしめる、ことを特徴とする変速操作装置。
【請求項2】 該セレクトアクチュエータは、該一対の電磁ソレノイドの電磁コイルに供給する電力量に対応して発生する推力に応じて該シフトレバーの複数の作動位置を規制するセレクト位置規制機構を具備している、請求項1記載の変速操作装置。
【請求項3】 該シフトアクチュエータは、該コントロールシャフトに装着された作動レバーと、該作動レバーに対向して配設され該作動レバーを介して該コントロールシャフトをそれぞれのシフト方向に回動せしめる一対の電磁ソレノイドとを具備している、請求項1記載の変速操作装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2003−42289(P2003−42289A)
【公開日】平成15年2月13日(2003.2.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2001−224971(P2001−224971)
【出願日】平成13年7月25日(2001.7.25)
【出願人】(000000170)いすゞ自動車株式会社 (1,721)
【Fターム(参考)】