説明

外装材用取付部材、その取付構造、その取付方法、及び外装構造の施工方法

【課題】部材構成が簡易で製作費用がかからず、且つ無溶接にて確実に梁材に取り付けることができる外装材用取付部材、その取付構造、その取付方法、及び外装構造の施工方法を提供する。
【解決手段】本発明の外装材用取付部材1は、施工状態において脚部3の下端に設けた着地部31を梁材7上に着地させる本体2と、前記着地部31上に重ねて端縁34を梁材6の外側へ延在させた上側固定具3と、梁材6又はその一部を下方から包持して端縁42を梁材6の外側へ延在させた下側固定具4とからなり、梁材6上に配設した状態で、前記上側固定具3と前記下側固定具4との各端縁34,42をボルト5にて締め付けることにより、前記着地部31を梁材6に押し当てて取り付けられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、部材構成が簡易で製作費用がかからず、且つ無溶接にて確実に梁材に取り付けることができる外装材用取付部材、その取付構造、その取付方法、及び外装構造の施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、H型鋼等の梁材に折板屋根を取り付けた構造としては、屋根板の取付けに先立って金属帯材よりなるタイトフレームと称される取付け金具を梁材に固定している。
前記取付け金具の固定には、溶接が採用されていたが、高所に溶接機を持上げる必要があるため、危険な作業でもあり、手間と労力を要する作業でもあった。また、現場での溶接は、安全面や労力の問題以外にも、溶接の力学的強度のばらつき、溶接後の補修等の種々の問題があり、さらには溶接部分に対する酸化防止用の塗装も必要であった。
【0003】
そのため、上述の問題を生ずる溶接を行わない取付工法,いわゆる無溶接工法が多数提案されている。
例えば特許文献1には、脚部を有する受金具本体と、略コ型の台座と、ロック部材とからなり、脚部の下端に設けた安定板と台座に設けた被挿入部との間に梁材の板状部を挿入させて固定する構造が記載されている。
また、特許文献2には、支持板の下端に、梁材の一側に係止する係止部を設けた第1係止部材と、前記梁材の他側に係止する係止部を設けた第2係止部材とからなり、前記第1係止部材と第2係止部材とをボルト固定することで一体的に固定するタイトフレームが記載されている。
【特許文献1】特許第3306256号公報
【特許文献2】実公平7−54425号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前記特許文献1の受金具では、受金具を構成する本体、台座、ロック部材の各部材の構造が極めて複雑であり、製作費用が高価なものとなるにもかかわらず、実際には取付強度は期待した以上のものにはならなかった。
また、前記特許文献2のタイトフレームでは、梁材と構成する一方側から他方側までの寸法、即ちH型鋼のフランジの幅サイズが異なる毎に、つかみ幅が異なるので、これらに対応するためには、予め複数種類のサイズの材料を準備しておき、これらを使い分ける必要があった。
【0005】
本出願人は、特願2008−90508にて、施工状態において脚部の下端(着地部)を梁材上に着地させる本体と、着地部に重ねて一方の端縁を折り下げた規制片と、着地部上に重ねた規制片の上方に臨ませる上側面部、梁材の下側に位置させる下側面部を備える固定具とからなり、梁材上に配設した状態で、上側面部に立設したボルトを締め付けて取り付ける外装材用取付部材、及びそれを用いた外装構造(以下、先願発明という)を提案した。
しかし、この先願発明では、脚部の高さ寸法が十分にあれば(縦長であれば)、締め付け治具を着地部上に臨ませてボルトの締め付け作業を容易に行うことができるが、脚部の高さ寸法が短い場合には、側方からの締め付け作業を行う必要があった。なお、脚部の高さ寸法とは、敷設する波形の外装材の山の高さにより決定されるものである。
【0006】
そこで、本発明は、部材構成が簡易で製作費用がかからず、且つ無溶接にて確実に梁材に取り付けることができ、しかも締め付け治具による上方からの締め付け作業も考慮した外装材用取付部材を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記に鑑み提案されたもので、施工状態において脚部の下端に設けた着地部を梁材上に着地させる本体と、前記着地部上に重ねて端縁を梁材の外側へ延在させた上側固定具と、梁材又はその一部を下方から包持して端縁を梁材の外側へ延在させた下側固定具とからなり、梁材上に配設した状態で、前記上側固定具と前記下側固定具との各端縁をボルトにて締め付けることにより、前記着地部を梁材に押し当てて取り付けられることを特徴とする外装材用取付部材に関するものである。
【0008】
また、本発明は、前記外装材用取付部材において、上側固定具は、梁材の被固定面部に係止する係止部を有することを特徴とする外装材用取付部材をも提案する。
【0009】
また、本発明は、前記外装材用取付部材において、梁材は、被固定面部に下向き片を備え、上側固定具は、前記梁材の下向き片に係合する係合部を有することを特徴とする外装材用取付部材をも提案する。
【0010】
さらに、本発明は、前記外装材用取付部材を本体に取り付ける取付方法であって、予め本体と上側固定具とを仮止めしておき、さらに上側固定具と下側固定具との各端縁にボルトを取り付けておき、梁材の被固定面部又は下向き片に対して側方から前記上側固定具の係止部又は係合部を係合させつつ回動する第1の工程と、下側固定具を梁材の下方から包持させる第2の工程と、ボルトを締め付ける第3の工程とからなることを特徴とする外装材用取付部材の取付方法をも提案するものである。
【0011】
また、本発明は、前記外装材用取付部材の取付構造であって、梁材上に本体の着地部を着地させ、この着地部上に上側固定具を重ねると共に梁材又はその一部を下方から下側固定具により包持した状態で、前記上側固定具と前記下側固定具との梁材の外側へ延在させた各端縁をボルトにて締め付けることにより、前記着地部を梁材に押し当てて取り付けたことを特徴とする外装材用取付部材の取付構造をも提案する。
【0012】
さらに、本発明は、梁材上に前記外装材用取付部材を取り付けた後、本体に外装材を取り付けることを特徴とする外装構造の施工方法をも提案する。
【発明の効果】
【0013】
本発明の外装材用取付部材は、梁材上に本体の着地部を着地させ、この着地部上に上側固定具を重ねると共に梁材又はその一部を下方から下側固定具により包持した状態で、上側固定具と下側固定具との各端縁をボルトにて上方から締め付けることにより、前記着地部を梁材に押し当てて一体的に取り付けることができる。特に各端縁は、梁材の外側へ延在させているので、本体の脚部の高さ、すなわち外装材の波山の高さにかかわらず、締め付け治具を上方から臨ませて容易に締め付け作業を行うことができる。
そして、上側固定具にしても、下側固定具にしても、例えば後述する図示実施例のように極めて形状構成が簡単であるため、製作費用がかからず、しかも確実に本体を梁材に取り付けることができる。
【0014】
また、上側固定具は、梁材の被固定面部に係止する係止部を有する場合、梁材に対する取付部位がズレることがない。
【0015】
また、梁材は、被固定面部に下向き片を備え、上側固定具は、前記梁材の下向き片に係合する係合部を有する場合、上側固定具の梁材への取り付けが極めて容易となり、ズレ等を生ずることもなく、安定に取り付け固定されるものとなる。
【0016】
また、予め本体と上側固定具とを仮止めしておき、さらに上側固定具と下側固定具との各端縁にボルトを取り付けておき、梁材の被固定面部又は下向き片に対して側方から前記上側固定具の係止部又は係合部を係合させつつ回動する第1の工程と、下側固定具を梁材の下方から包持させる第2の工程と、ボルトを締め付ける第3の工程とからなる取付方法では、各工程における作業が容易であるため、この外装材用取付部材を容易に取り付けることができる。
【0017】
さらに、外装材用取付部材の取付構造は、上方からボルトを強力に締め付けることにより、極めて強固に取り付けることができる。
【0018】
また、本発明の外装構造の施工方法は、使用する部材構成が少数でありまた簡単な形状構成であるため、部材の製造、施工、並びに管理が極めて容易である。さらに、得られる外装構造は、下地となる外装材用取付部材が強固に取り付けられているので、折板屋根板を含めた外装構造全体の取付強度も高いものとなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明の外装材用取付部材(の本体)は、後述する図示実施例に示すようにタイトフレーム等の支持材上に受金具等の保持部材を固定した構成でもよいし、保持部材を含まない支持材のみを指すものでもよい。
そして、本発明の外装材用取付部材の本体としては、下方に延在する脚部の下端に着地部が設けられ、該着地部が梁材上に着地するものであれば、それ以外の構成は特に限定するものではない。例えばアーチ型のタイトフレームでは脚部の外側に着地部を設けることもあるが、本発明における本体の着地部は、後述する図示実施例のように左右の脚片の内側に設けられる。
また、脚部の高さ寸法とは、敷設する波形の外装材の山の高さにより決定されるが、この脚部の高さ寸法が長くても短くても特に支障はない。
【0020】
本発明の外装材用取付部材を構成する上側固定具は、前記本体の着地部上に重ねるものであって、端縁を梁材の外側へ延在させた構成であり、この端縁とは左右方向のいずれか一方でもよいし両方でもよい。また、予めこの端縁にボルトを立設させておくようにしてもよい。
この上側固定具は、例えば単なる帯状材をそのまま用いてもよく、形状構成が簡単である。
また、上側固定具には、梁材の被固定面部に係止する係止部を設けてもよい。この係止部については、特に形状等を限定するものではなく、例えば帯状材の端縁を下方へ折り曲げて梁材の被固定面部である上フランジの先端に係止する係止部を設けてもよい。また例えば、帯状材の端縁を下方へ折り曲げ、更に内側へ折り曲げ、梁材の下フランジ(の下面側)に係止する係止部を設けるようにしてもよい。これらの係止部は、何れも位置規制となるので、梁材に安定に取り付けられ、また梁材に対する取付部位が施工途中でズレることがない。
さらに、上側固定具には、梁材の下向き片に係合する係合部を設けてもよい。この係合部については、特にその形状等を限定するものではなく、例えば後述する図示実施例のように、梁材の被固定面部である上フランジの先端に下向き片が設けられている場合に、該下向き片に係合する係合部を設けてもよい。この場合には、梁材への取り付けを側方から引っ掛けるように容易に行うことができ、安定に取り付け固定されるものとなる。
なお、この上側固定具は、施工に際し、本体と別々に梁材上に配してもよいし、予め本体と組み合わせておいたものを梁材上に配するようにしてもよい。
【0021】
本発明の外装材用取付部材を構成する下側固定具は、梁材又はその一部を下方から包持する構成であって、端縁を梁材の外側へ延在させた構成であり、この端縁とは左右方向のいずれか一方でも両方でもよい。
前記梁材を下方から包持する態様の下側固定具は、例えば後述する図示実施例(図1〜図4)のように帯状材を略柄杓状に折り曲げて形成することができ、形状構成が簡単である。また、前記梁材の一部を下方から包持する態様の下側固定具は、例えば後述する図示実施例(図5〜図6)のように梁材の下向き片を下方から包持するように帯状材を略逆ハット状に折り曲げて形成することができる。
【0022】
前記本発明の外装材用取付部材を取り付ける梁材は、特に限定するものではなく、C型鋼やI(H)型鋼などが用いられることが多く、後述する図示実施例において用いたC型鋼である梁材では、被固定面部とは上フランジを指し、被固定面部に設けられる下向き片とは、上フランジの先端に設けられる下向き片を指し、要するに梁材としてリップ溝付きC型鋼を用いている。
【0023】
前記の本体、上側固定具、下側固定具は、それぞれ別々に梁材に取り付けてもよいし、予め三部材を一体として梁材に取り付けた後に、固定してもよい。
【0024】
前記本体と前記上側固定具と前記梁材を下方から包持する態様の下側固定具とを予め一体として梁材に取り付ける態様としては、以下の手順にて容易に行うことができる。
第1の工程として、上側固定具に梁材の被固定面部に係止する係止部を設けた構成において、予め本体と上側固定具とを仮止めしておき、さらに上側固定具と下側固定具との各端縁にボルトを取り付けておき、梁材の被固定面部に対して側方から前記上側固定具の係止部を係止させつつ回動する。
第2の工程として、下側固定具を梁材の下方から包持させる。
第3の工程として、ボルトを締め付ける。
なお、梁材が、例えばC型鋼である場合には、係止部を係止する被固定面部とは、上フランジの先端を指す。
【0025】
さらに、例えば後述する図示実施例のように、梁材の被固定面部に下向き片が設けられている場合に、上側固定具に前記下向き片に係合する係合部を設けた構成においては、前記施工方法(特に前記第1の工程)をより安定に実施することができる。
【0026】
前記本体と前記上側固定具と前記梁材の一部(下向き片)を下方から包持する態様の下側固定具とを予め一体として梁材に取り付ける態様としては、以下の手順にて容易に行うことができる。
第1の工程として、予め本体と上側固定具とを仮止めしておき、さらに上側固定具と下側固定具との各端縁にボルトを取り付けておき、側方から梁材の下向き片の内側に下側固定具の一部が位置するように臨ませつつ回動する。
第2の工程として、下側固定具を梁材の下向き片の下方から包持させる。
第3の工程として、ボルトを締め付ける。
【0027】
前記外装材用取付部材を梁材に取り付けた後、その本体に取り付ける外装材は、特にその構成を限定するものではなく、例えば立上り部に流れ方向に沿って凹状部或いは凸状部が形成された縦葺き外装材、より詳しくは施工状態において山部と谷部が交互に形成される縦葺き外装材(折板屋根材)でもよいし、ハゼ締めタイプでもハゼ部の無い仕様(嵌合タイプ)でもよく、縦葺き外装材同士が接続される態様でも後述する図示実施例のように別途カバー材を介して接続する態様でもよく、新設でも既設でもよい。また、縦葺き外装材の立上り部は、傾斜状でも略鉛直状でもよい。
【実施例】
【0028】
図1に示す本発明の一実施例(以下、実施例1という)である外装材用取付部材1は、予め脚部21の頂部に受金具22を固定した本体2と、略逆つ字状の上側固定具3と、略柄杓状の下側固定具4とからなり、より具体的には梁材6上に本体2の着地部211を着地させ、この着地部211上に上側固定具3を重ねると共に梁材6を下方から下側固定具4により包持した状態で、上側固定具3と下側固定具4との各端縁34,42をボルト5にて上方から締め付けた構成である。
【0029】
前記脚部21は、図1(a)に示すように帯状鋼材を略台形状に成形加工した形状であって、左右の脚片の下端に内向きに着地部211,211が設けられる構成である。この脚部21は、左右の脚片の下端に亘って着地部211が形成されるものでもよい。なお、脚部21は単なる平帯状でなく断面が略台形状に加工された高強度の帯状鋼材である。そして、施工状態においては、前記着地部211.211が梁材6の上フランジである被固定面部61上に着地される。
前記受金具22は、図1(b)などに示すように金属板材を略逆ハット状に成形加工した形状であって、その詳細な構成については後述する縦葺き外装材7を保持する構成である。そして、施工状態においては、溶接によってその底部が前記脚部21の頂部212に固定されている。
【0030】
前記上側固定具3は、図1(b),(c)に示すように帯状鋼材を略つ字状に成形加工された簡単な形状構成を有するものであり、前記本体2の着地部211上に重ねられる重合部31と、その左側端縁を略垂直状に下方へ折り曲げて梁材6の被固定面部である上フランジ61の先端に係止する係止部32とを備え、さらにその下端を内側へ折り曲げて係合部33とした構成である。また、重合部31の右側端には、梁材6の外側へ延在する端縁(後述する下側固定具4の端縁と区別するために上側端縁という)34が設けられている。この上側固定具3は、高強度の帯状鋼材でもよいし、アルミ等の押出型材でもよい。
【0031】
前記下側固定具4は、図1(b),(c)に示すように、帯状鋼材を略柄杓状に成形加工された簡単な形状構成を有するものであり、梁材6を下方から包持する包持部41と、その右側端には、梁材6の外側へ延在する端縁(前記上側固定具3の端縁と区別するために下側端縁という)42とを備えている。また、包持部41の下端には、梁材6の下フランジ63の先端(上向き片64)に係止する係止部411が設けられている。この下側固定具4は、高強度の帯状鋼材でもよいし、アルミ等の押出型材でもよい。
【0032】
梁材6は、図示実施例では左右に亘る鉄骨躯体(リップ溝付きC型鋼)であり、このリップ溝付きC型鋼である梁材6の上フランジ61が被固定面部となり、この上フランジ61の先端には下向き片62が設けられ、それと対向するように下フランジ63の先端には上向き片64が設けられている。なお、図示実施例では、上側固定具3の係止部32の下方に係合部33が延設されているので、図示するようなリップ溝付きC型鋼を梁材6として用いている。
しかし、係合部33を設けない態様では、前記上側固定具3の係止部32が係止する箇所は、図示実施例のように上フランジ61の先端に限らず、上フランジ61の基端でもよい。すなわち梁材6としては、リップ溝付きC型鋼に限定されるものではなく、C型鋼(略コ字状型鋼)やI(H)型鋼でもよい。
【0033】
このような構成の外装材用取付部材1をリップ溝付きC型鋼である梁材6に取り付ける手順を図2の実施例により説明する。
なお、図2における外装材用取付部材1'は、本体2'については、ボルトナット20によってその受金具22の底部が脚部21の頂部212に固定され、上側固定具3'及び下側固定具4'については、長さ方向に補強用のリブを設けた帯状鋼材により成形した以外は前記図1の実施例と全く同様であり、部位には同一符号を付している。
また、施工に先立ち、前記のように脚部21と受金具22とをボルトナット20により一体化して本体2'を形成した後、図2(a)〜(d)に示すように本体2の脚部21の着地部211上に上側固定具3'(の重合部31)を溶接(又は仮接着)して重合状に組み合わせ、さらに上側固定具3'と下側固定具4'との各端縁34,42にボルト5を取り付けておいた。
【0034】
まず、第1の工程として、図2(a)〜(c)に示すように、梁材6の上フランジ61(被固定面部)の下向き片62に対して側方から前記上側固定具3'の係合部33を係合させつつ回動する。
なお、図示しないが、例えばC型鋼(略コ字状型鋼)やI(H)型鋼である梁材6に対して係合部33を備えない上側固定具3を用いる場合にも、同様の手順にて梁材6の上フランジ61の先端に対して側方から係止部32を係合させつつ回動させることができる。
【0035】
次に、第2の工程として、図2(c)に示すように、下側固定具4'の係止部411が梁材6の下フランジ63の先端に近づいたら、下側固定具4'の包持部41を梁材6の下フランジ63の下方から包持させる。
【0036】
その後、図2(d)に示すように、上側固定具3'の上側端縁34に立設したボルト5を上方から締め付けると、前記上側端縁34と下側固定具4'の下側端縁42が接合するように一体化し、図1(c)に拡大して示すように上側固定具3と下側固定具4にて上下から挟み込むように前記本体2'の着地部211を前記梁材6の上フランジ61(被固定面部)に押し当てるので、これらの上側固定具3'、下側固定具4'、本体2'、梁材6は一体的に取り付けられる。
【0037】
このように本発明の外装材用取付部材1,1'は、上側固定具3,3'にしても、下側固定具4,4'にしても、極めて形状構成が簡単であるため、製作費用がかからず、しかも確実に本体2,2'を梁材6に取り付けることができる。
また、上側固定具3,3'の上側端縁34及び下側固定具4,4'の下側端縁42は、何れも梁材6の外側へ延在させているので、脚部21の高さ、すなわち外装材7の波山の高さにかかわらず、締め付け治具を臨ませる十分な空間を備え、そのため、締め付け治具を上方から臨ませて容易に締め付け作業を行うことができる。
【0038】
なお、前記図1は、前記本体2の上部に取り付けられた受金具22に縦葺き外装材(折板屋根材)7及びキャップ材8を取り付けた外装構造を示す実施例である。
【0039】
前記外装構造に用いられた縦葺き外装材(以下、単に外装材という)7は、代表的には概ね0.4乃至1.6mm程度の表面化粧鋼板、ラミネート鋼板、メッキ鋼板、ステンレス鋼板、アルミ合金板、チタン合金板、銅板等の公知の金属素材をロール成形その他の手段で所定の形状に成形する。尚、硬質樹脂板や炭素繊維積層板等によっても同様の形状に成形することができ、全てをそれらで施工することもできるし、前記金属素材のものと組み合わせて施工することもできる。この外装材7は、平板状の平面部71の左右端を立ち上げて外側上方へ向かう側縁部72が左右に設けられ、各側縁部72の途中には外方へ略く字状に突出する嵌合部721が設けられる構成である。また、上記嵌合部721の上方には略ヘ字状の載置部分722が設けられ、該載置部分722の先端を略U字状に折曲した嵌入部分723が設けられている。さらに、外装材7の裏面には、断熱、防火等、目的や要求に応じて、グラスウールやロックウールのシート、或いはポリエチレンフォーム等の樹脂発泡シート73が裏張りされている。
【0040】
前記外装構造に用いられたキャップ材8は、前記外装材7と同様の素材から作製され、断面略傘状の被着部の左右側縁の下端を内側上方へ折り返し、その上端を内側へ折り返した構成である。内側上方へ折り返した部分81は、施工状態において前記外装材7の嵌合部721の裏面側に係合する係合部である。
【0041】
前記受金具22について改めて詳細に説明すると、金属板材を略逆ハット状に成形し、二枚の起立面部22A,22Aが底面部22Bの前後に略垂直状に立設され、この起立面部22A,22Aの上端縁221,221が前後に折曲された構成である。また、各起立面部22Aの上縁中央には、上方が開放する溝状の被嵌入部222が設けられ、左右側方に膨出した下顎部分が前記外装材7の嵌合部721を嵌合させる被嵌合部223である。
【0042】
そして、前記外装材7を敷設すると共に、前記受金具22に外装材7を取り付けるのであるが、その取り付けに際しては、受金具22の被嵌合部223に外装材7の嵌合部721を嵌合させ、それより上方に位置する載置部部分722を、起立面部22Aの上縁及び上端縁221に支持させる。さらに、載置部分722の先端に設けた略U字状の嵌入部分723については、左右の外装材7,7の各嵌入部分723が一つの溝状の被嵌入部222に嵌入されるように配設する。実際には、外装材7は、施工状態において、側縁部72が受金具22に向かって弾性力が作用するように成形されるので、外装材7の敷設は極めて容易であり、外装材7は受金具22に弾性嵌合している。
その後、前記キャップ材8を左右の外装材7,7に跨るように取り付けるのであるが、その取り付けに際しては、前記外装材7の嵌合部721の裏面側に係合部81が係合するように取り付ける。実際には、キャップ材8は、左右の外装材7,7に跨るように配した状態で上方から押圧すると、次第に左右が拡開し、係合部81が係合するので、キャップ材8の取り付けは極めて容易であり、キャップ材8は外装材7に弾性嵌合している。
【0043】
得られた外装構造は、前述のように外装材用取付部材1の取り付けを無溶接工法にて行い、外装材7及びキャップ材8の取り付けを完全嵌合方式にて行ったので、特殊な工具や装置を必要とすることなく、施工全体の安全性が極めて高く、また施工全体の工期が極めて短くでき、極めて容易に実施することができる。
【0044】
図3及び図4に示す外装材用取付部材1"の取付構造は、前記実施例1とほぼ同様であって、この実施例(以下、実施例2という)における本体2'は、脚部21"の高さ寸法が前記実施例1に比べて低く、上側固定具3"及び下側固定具4"は、長さ方向の寸法が前記実施例1に比べて短い以外は全く同様であり、部位には同一符号を付している。
【0045】
図3(a),(b)では、外装材7及びキャップ材8を欠載して示しているが、前記図1(a),(b)における正面図及び断面図とほぼ同様である。
また、図(a)〜(c)における施工手順は、前記図2における施工手順とほぼ同様である。
【0046】
図5及び図6に示す外装材用取付部材1Bの取付構造は、梁材6'は前記実施例1,2より細長い断面形状を有するものであり、本体2'は前記実施例2に用いたものと同じである。
【0047】
この実施例(以下、実施例3という)における上側固定具3Bは、帯状鋼材を略逆L字状に成形加工された簡単な形状構成を有するものであり、前記本体2'の着地部211上に重ねられる重合部31と、その右側端縁を略垂直状に下方へ折り曲げ、更に内側へ略水平状に折り曲げ、梁材6'の下フランジ63の下面側に係止する係止部32Bとを備える構成である。また、前記重合部31の左側端には、梁材6'の外側へ延在する上側端縁34が設けられている。
なお、補強用に、前記上側端縁34の前後端縁に起立片を設けた。
【0048】
また、この実施例3における下側固定具4Bは、帯状鋼材を略逆ハット状に成形加工された簡単な形状構成を有するものであり、梁材6'の下向き片62を下方から包持する包持部41Bと、その左側端(なお、取付完了状態において左側に位置するが、図6(a)〜(h)に示す施工途中においては右側に位置している)には、梁材6'の外側へ延在する下側端縁42とを備えている。
なお、補強用に、前記下側端縁42の前後端縁に起立片を設けた。
【0049】
このような構成の外装材用取付部材1Bを縦長のリップ溝付きC型鋼である梁材6'に取り付ける手順を図6に示す実施例により説明する。
施工に先立ち、脚部21と受金具22とを溶接により一体化して本体2'を形成し、本体2'の脚部21の着地部211上に上側固定具3B(の重合部31)を溶接(又は仮接着)して重合状に組み合わせ、さらに上側固定具3Bと下側固定具4Bとの各端縁34,42にボルト5を取り付けておいた。その際、上側固定具3Bと下側固定具4Bとが、間隔を隔ててボルト5に取り付けられておくことが望ましい。
【0050】
まず、第1の工程として、図6(a)〜(c)に示すように、梁材6'の上フランジ61(被固定面部)の下向き片62に対し、前述のように間隔を隔ててボルト5に取り付けた上側固定具3Bと下側固定具4Bとを側方から臨ませ、図6(d)〜(h)に示すように下向き片62の内側(図面では右側)に下側固定具4Bの一部(下側端縁42)が位置するように臨ませつつ回動する。
【0051】
次に、第2の工程として、図6(i)に示すように、上側固定具3Bの下端に設けた係止部32Bが梁材6'の下フランジ63の下面側に係止したら、下側固定具4Bを水平方向に回転させ、下向き片62の内側(図面では右側)に位置させていた下側端縁42が下向き片62の外側(図面では左側)に位置するように配置させ、包持部41Bを下向き片62の下方から包持させる。
【0052】
その後、ボルト5を上方から締め付けると、前記上側端縁34と下側端縁42が接合するように一体化し、上側固定具3Bと下側固定具4Bにて上下から挟み込むように前記本体2'の着地部211を前記梁材6'の上フランジ61(被固定面部)に押し当てるので、これらの上側固定具3B、下側固定具4B、本体2'からなる外装材用取付部材1Bは、梁材6'に一体的に取り付けられる。
【0053】
そして、前記実施例1,2における上側固定具3,3',3"のように、梁材6,6'の上フランジ(被固定面部)に係止するものに限定されるものではなく、この実施例3における上側固定具3Bのように、梁材6'の下フランジ63に係止する構成でもよい。
また、前記実施例1,2における下側固定具4,4',4"のように、梁材6,6'の全体を下方から包持する態様に限定されるものではなく、この実施例3における下側固定具4Bのように、梁材6'の一部(下向き片62)を下方から包持する構成でもよい。
すなわち、前記実施例1,2における係止部32、包持部41に限定されるものではなく、この実施例3における係止部32B、包持部41Bのように形成しても良い。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】(a)本発明の一実施例の外装構造を示す正面図、(b)その側断面図、(c)要部の拡大側断面図である。
【図2】(a)〜(d)他の外装材用取付部材を梁材に取り付ける手順を示す側断面図である。
【図3】(a)他の外装材用取付部材を梁材に取り付けた状態を示す側断面図、(b)その正面図である。
【図4】(a)〜(c)図3における外装材用取付部材を梁材に取り付ける手順を示す側断面図である。
【図5】(a)本発明の他の一実施例の外装構造を示す正面図、(b)その側断面図である。
【図6】(a)〜(i)他の外装材用取付部材を梁材に取り付ける手順を示す側断面図である。
【符号の説明】
【0055】
1,1',1" 外装材用取付部材
2,2',2" 本体
20 ボルトナット
21 脚部
211 着地部
22 受金具
22A 起立面部
22B 底面部
3,3',3",3B 上側固定具
31 重合部
32,32B 係止部
33 係合部
34 上側端縁
4,4',4",4B 下側固定具
41,41B 包持部
411 係止部
42 下側端縁
5 ボルト
6,6' 梁材
61 被固定面部(上フランジ)
62 下向き片
63 下フランジ
64 上向き片
7 外装材
8 キャップ材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
施工状態において脚部の下端に設けた着地部を梁材上に着地させる本体と、前記着地部上に重ねて端縁を梁材の外側へ延在させた上側固定具と、梁材又はその一部を下方から包持して端縁を梁材の外側へ延在させた下側固定具とからなり、
梁材上に配設した状態で、前記上側固定具と前記下側固定具との各端縁をボルトにて締め付けることにより、前記着地部を梁材に押し当てて取り付けられることを特徴とする外装材用取付部材。
【請求項2】
上側固定具は、梁材の被固定面部に係止する係止部を有することを特徴とする請求項1に記載の外装材用取付部材。
【請求項3】
梁材は、被固定面部に下向き片を備え、上側固定具は、前記梁材の下向き片に係合する係合部を有することを特徴とする請求項1又は2に記載の外装材用取付部材。
【請求項4】
請求項2又は3に記載の外装材用取付部材を本体に取り付ける取付方法であって、
予め本体と上側固定具とを仮止めしておき、さらに上側固定具と下側固定具との各端縁にボルトを取り付けておき、梁材の被固定面部又は下向き片に対して側方から前記上側固定具の係止部又は係合部を係合させつつ回動する第1の工程と、下側固定具を梁材の下方から包持させる第2の工程と、ボルトを締め付ける第3の工程とからなることを特徴とする外装材用取付部材の取付方法。
【請求項5】
請求項1〜3の何れかに記載の外装材用取付部材の取付構造であって、
梁材上に本体の着地部を着地させ、この着地部上に上側固定具を重ねると共に梁材又はその一部を下方から下側固定具により包持した状態で、前記上側固定具と前記下側固定具との梁材の外側へ延在させた各端縁をボルトにて締め付けることにより、前記着地部を梁材に押し当てて取り付けたことを特徴とする外装材用取付部材の取付構造。
【請求項6】
梁材上に請求項1〜3の何れかに記載の外装材用取付部材を取り付けた後、本体に外装材を取り付けることを特徴とする外装構造の施工方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−90672(P2010−90672A)
【公開日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−264326(P2008−264326)
【出願日】平成20年10月10日(2008.10.10)
【出願人】(000165505)元旦ビューティ工業株式会社 (159)
【Fターム(参考)】