説明

外転型永久磁石式回転電機

【課題】本発明は、永久磁石とフライホィール間に空隙を形成することなく渦電流の発生を抑制できる外転型永久磁石式回転電機を提供することにある。
【解決手段】本発明は、フライホィール6の内周面の少なくとも固定子鉄心4に対向する範囲の全周に、圧粉磁心9,9A,11,11Aを介在させたのである。
圧粉磁心9,9A,11,11Aは、磁性粉が個々に電気的に絶縁されたものであり、個々の磁性粉を介して電流が流れることを十分に抑止することができる。したがって、永久磁石7とフライホィール6間に空隙を形成することなく、渦電流の流れを遮断できるのである。さらに、永久磁石7とフライホィール6間の磁路は、圧粉磁心によって保持されるので磁気抵抗の増加も抑制することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は発電機や電動機等を構成する外転型永久磁石式回転電機に係り、特に、回転子の内径側に固定子が位置し、前記回転子が円筒状のフライホィールとその内周面に設置された複数の永久磁石とで構成された外転型永久磁石式回転電機に関する。
【背景技術】
【0002】
固定子の外周側に回転子が位置し、その回転子が円筒状のフライホィールとその内周面に設置された複数の永久磁石とで構成された外転型永久磁石式回転電機は、例えば特許文献1に開示されているように、既に提案されている。
【0003】
そして、この種、外転型永久磁石式回転電機は、固定子と回転子間を鎖交する磁束が回転子の回転に伴って変化するので、フライホィールの内周面に渦電流が流れ、渦電流損を発生させる。
【0004】
このような渦電流を抑制する手段として、例えば特許文献2に示すように、渦電流が流れる表面に複数の溝を設けて渦電流の流れを抑制することが行われている。
【0005】
【特許文献1】特開2006−34056号公報
【特許文献2】特開2004−260951号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献2に示す渦電流抑制構成を利用して、フライホィールの内周面に複数の溝を設けて渦電流の流れを抑制しようとすると、永久磁石とフライホィールの内周面との間に複数の溝による空隙が形成されることになる。しかし、永久磁石とフライホィール間の空隙は、永久磁石とフライホィール間に形成される磁路の磁気抵抗を増加させることになって回転電機の磁気特性を低下させる問題がある。
【0007】
本発明の目的は、永久磁石とフライホィール間に空隙を形成することなく渦電流の発生を抑制できる外転型永久磁石式回転電機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は上記目的を達成するために、フライホィールの内周面の少なくとも固定子鉄心に対向する範囲の全周に、圧粉磁心を介在させたのである。
【0009】
圧粉磁心は、磁性粉が個々に電気的に絶縁されたものであり、個々の磁性粉を介して電流が流れることを十分に抑止することができる。したがって、この磁性粉を集合させた圧粉磁心をフライホィールの内周面の少なくとも永久磁石が設置される範囲の全周に介在させることで、永久磁石とフライホィール間に空隙を形成することなく、渦電流の流れを遮断することができると共に、永久磁石とフライホィール間の磁路は、圧粉磁心によって保持されるので磁気抵抗の増加も抑制することができ、回転電機の磁気特性の低下を抑制することができるのである。
【発明の効果】
【0010】
以上説明したように本発明によれば、永久磁石とフライホィール間に空隙を形成することなく渦電流の発生を抑制できる外転型永久磁石式回転電機を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下本発明による外転型永久磁石式回転電機の第1の実施の形態を図1及び図2に基づいて説明する。
【0012】
外転型永久磁石式回転電機は、内側に位置する固定子1と、この固定子1の外周側に径方向の微小空隙を介して対向配置される外転型の回転子2とで構成されている。
【0013】
そして、前記固定子1は、複数の珪素鋼板を積層し放射状に突出し例えば18極の磁極3を形成した固定子鉄心4と、この固定子鉄心4を積層方向両側から挟圧する端板5A,5Bと、固定子鉄心4の磁極3に対して夫々集中巻に巻装された図示しない固定子巻線とを備えている。前記固定子巻線は、電気角の位相により、三相結線されている。このように構成された固定子1は、その中心部を図示しない固定軸に支持されている。
【0014】
一方、前記回転子2は、固定子1を支持した図示しない固定軸に回転自在に軸支された円筒状のフライホィール6と、このフライホィール6の内周面の前記固定子鉄心4に対向する位置に周方向に沿って複数、例えば、20個取り付けた永久磁石7とで構成され、前記複数の永久磁石7はN極とS極とが交互に位置するように配置されている。
【0015】
さらに、詳細は図2に示すように、前記フライホィール6の永久磁石の設置位置を含めた内周面には、複数の環状の溝8が軸方向に等間隔で並設されており、その溝8内には圧粉磁心9が充填されて満たされている。
【0016】
ところで、例えば磁極3の数が18で、5000rpmで回転する回転電機において、スロットリップル周波数は1500Hzとなるために、比透磁率を1000、導電率を6670000s/mと仮定すると、磁場浸透深さは約0.16mmになる。したがって、圧粉磁心9の厚み、云い代えれば、溝8の深さは0.2mm程度で十分であるが、溝8の加工性と圧粉磁心9の強度保持を考慮すると、溝8の深さは0.5mm程度とすることが望ましい。
【0017】
上記のように構成することで、固定子1と回転子2間を鎖交する磁束によってフライホィール6の内周面に渦電流が発生しようとするが、その内周面には複数の溝8が切られているので渦電流は遮断され、その結果、渦電流損の発生はなくなる。又、複数の溝8を切ることで、永久磁石7とフライホィール6の内周面との間に空隙が生じるが、前記溝8内には圧粉磁心9が充填されて磁路の機能を有しているので、永久磁石7とフライホィール6間に形成される磁路の磁気抵抗の増加は解消され、回転電機の磁気特性の低下を防止することができる。
【0018】
上記実施の形態において、前記溝8は、環状の溝を軸方向に間隔を置いて複数設けるので、円筒状のフライホィール6の内周面へは1本1本ごとの溝加工となるので、溝加工作業が厄介になることが懸念される。したがって、加工作業の軽減を考慮すると、1本或いは複数本の溝を螺旋状に切り、最終的に、図2に示す断面から見て複数の溝8が存在するようにすることが望ましい。
【0019】
図3及び図4は、本発明による外転型永久磁石式回転電機の第2の実施の形態を示すものである。尚、図1及び図2と同一符号は同一部品を示すので、再度の詳細な説明は省略する。
【0020】
図3及び図4の実施の形態において、第1の実施の形態と異なる構成は、永久磁石7が位置するフライホィール6の内周面では、永久磁石7との接着面を確保して接着剤による接着を確実にするために、隣接する溝8間の凸部8Pの数を増やし、永久磁石7が位置していない内周面では永久磁石7を接着する必要がないので、隣接する溝8A間の凸部8Pの数を少なくしている点である。そして、永久磁石7の接着をより強固にするために、永久磁石7が接着される内周面の溝8間の凸部8Pの内径側(表面側)の幅W6を外形側(内側)の幅W5よりも広くしている。
【0021】
さらに、第2の実施の形態においては、各溝8,8A内に充填した圧粉磁心9,9Aが、フライホィール6の回転及び回転時の各種振動によって外れないように、溝8,8Aの開口側の幅W2,W4に対して内側の幅W1,W3を広くしている。
【0022】
上記実施の形態によれば、永久磁石7の保持を安定にし充填した圧粉磁心9,9Aの溝8,8Aからの外れを防止できると共に、第1の実施の形態と同等の効果を有するものである。
【0023】
図5は、本発明による外転型永久磁石式回転電機の第3の実施の形態を示すものである。尚、図1及び図2と同一符号は同一部品を示すので、再度の詳細な説明は省略する。
【0024】
図5に示す実施の形態において、図1〜図4に示す実施の形態と異なる構成は、フライホィール6の内周面に軸方向に沿った溝10,10Aを周方向に間隔をおいて複数形成し、これら溝10,10A内に圧粉磁心11,11Aを充填させて点である。
【0025】
このように構成することでも、固定子1と回転子2間を鎖交する磁束によってフライホィール6の内周面に渦電流が発生しようとするが、その内周面には複数の溝10,10Aが切られているので渦電流は遮断され、その結果、渦電流損の発生はなくなる。又、複数の溝10,10Aを切ることで、永久磁石7とフライホィール6の内周面との間に空隙が生じるが、前記溝10,10A内には圧粉磁心11,11Aが充填されて磁路の機能を有しているので、永久磁石7とフライホィール6間に形成される磁路の磁気抵抗の増加は解消され、回転電機の磁気特性の低下を防止することができる。
【0026】
さらに、溝10,10Aが軸方向に沿っているので、溝内への圧粉磁心11,11Aの充填が容易になる。その他の溝間隔や凸部10Pの幅などの構成は、第2の実施の形態と同じである。
【0027】
上記第3の実施の形態によっても、上述の各実施の形態と同じ効果を奏することができる。
【0028】
ところで、上記第1〜第3の実施の形態においては、永久磁石7が設置されないフライホィール6の内周面にも溝8,8A,10Aを設けたが、これら永久磁石7が設置されていない位置の溝は省略しても、溝の間隔を永久磁石7が設置されている場所に較べて広くしても差し支えない。さらに、漏洩磁束による渦電流を考慮して永久磁石の設置位置とその近傍に溝8,8A,10,10Aと圧粉磁心9,9A,11,11Aを設けるようにしてもよい。
【0029】
また、上記各実施の形態は、フライホィール6の内周面で、特に、固定子鉄心に対向する範囲の全周、云い代えれば、永久磁石7が設置される範囲の全周に溝8,8A,10Aを形成することを前提としている。しかしながら、必ずしもフライホィール6の内周面に溝8,8A,10Aを形成する必要はなく、例えば、上述の磁場浸透深さを考慮した圧粉磁心の薄膜層を、フライホィール6の内周面の少なくとも永久磁石7が設置される範囲の全周に、接着剤等によって貼り付けたり塗料のように塗布したりしても、さらには圧粉磁心をシート状に形成し、それを貼り付けるようにしても、圧粉磁心の機能を活かして渦電流の発生を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明による外転型永久磁石式回転電機の第1の実施の形態を示す要部斜視図。
【図2】図1の断面拡大図。
【図3】本発明による外転型永久磁石式回転電機の第2の実施の形態を示す図2相当図。
【図4】図3のA部の拡大図。
【図5】本発明による外転型永久磁石式回転電機の第3の実施の形態を示す図2相当図。
【符号の説明】
【0031】
1…固定子、2…回転子、3…磁極、4…固定子鉄心、5A,5B…端板、6…フライホィール、7…永久磁石、8,8A,10,10A…溝、9,9A,11,11A…圧粉磁心、8P,10P…凸部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転子の内径側に固定子が位置し、前記回転子が円筒状のフライホィールとその内周面に設置された複数の永久磁石とで構成され、前記固定子が前記永久磁石に対して径方向の微小隙間を介して対向する磁極を有する固定子鉄心とそれに巻装された固定子巻線とで構成されている外転型永久磁石式回転電機において、前記フライホィールの内周面の少なくとも前記固定子鉄心に対向する範囲の全周に、圧粉磁心を介在させたことを特徴とする外転型永久磁石式回転電機。
【請求項2】
回転子の内径側に固定子が位置し、前記回転子が円筒状のフライホィールとその内周面に設置された複数の永久磁石とで構成され、前記固定子が前記永久磁石に対して径方向の微小隙間を介して対向する磁極を有する固定子鉄心とそれに巻装された固定子巻線とで構成されている外転型永久磁石式回転電機において、前記フライホィールの内周面の少なくとも前記永久磁石が設置される範囲の全周に、圧粉磁心を介在させたことを特徴とする外転型永久磁石式回転電機。
【請求項3】
前記圧粉磁心は、圧粉磁心製のシート状に形成されていることを特徴とする請求項1または2記載の外転型永久磁石式回転電機。
【請求項4】
回転子の内径側に固定子が位置し、前記回転子が円筒状のフライホィールとその内周面に設置された複数の永久磁石とで構成され、前記固定子が前記永久磁石に対して径方向の微小隙間を介して対向する磁極を有する固定子鉄心とそれに巻装された固定子巻線とで構成されている外転型永久磁石式回転電機において、前記フライホィールの内周面の少なくとも前記永久磁石が設置される範囲の全周に、複数の溝を形成し、この溝内に圧粉磁心を介在させたことを特徴とする外転型永久磁石式回転電機。
【請求項5】
前記溝は、前記フライホィールの内周面に螺旋状に形成された溝であることを特徴とする請求項4記載の外転型永久磁石式回転電機。
【請求項6】
前記溝は、前記フライホィールの内周面に形成された環状の溝であることを特徴とする請求項4記載の外転型永久磁石式回転電機。
【請求項7】
前記溝は、前記フライホィールの内周面に形成された軸方向に沿う溝であることを特徴とする請求項4記載の外転型永久磁石式回転電機。
【請求項8】
前記溝は、開口側の幅が狭く内側の幅が広く形成されていることを特徴とする請求項4記載の外転型永久磁石式回転電機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−336771(P2007−336771A)
【公開日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−168660(P2006−168660)
【出願日】平成18年6月19日(2006.6.19)
【出願人】(000001340)国産電機株式会社 (191)
【Fターム(参考)】