説明

外面クランプ式溶接管開先合わせ装置

【課題】重量物である2本の配管を現地で溶接接合するとき、両者の芯出しおよび軸方向のすきまの調整、すなわち開先合わせ作業において十分な精度を確保することが困難で、開先合わせ作業に多大な時間を要するので、現地作業のガンとなっていた。
【解決手段】ハの字形に開閉自在の2組のフレームを、溶接すべき2本の配管に対し、メカニカルにクランプ装置によりクランプしフレームの外周に設けられた芯出し装置により、2本の配管の半径方向の相対位置を調整できるようにし、またフレームに設けた軸方向位置調整ねじにより、開先部配管の軸方向すきまおよび接触力を全周一様になるように調整することにより、精度のよい開先合わせを行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、中大径の比較的厚肉管で、現地配管溶接を行う現場において、配管の開先合わせを行う際に、溶接管にクランプし、芯出し調整と軸方向の位置調整を行い、もって開先合わせを行うための装置に関する。
【背景技術】
【0002】
2本の配管を溶接するとき、開先合わせをする必要があるが、配管が比較的大きく、重量が大きいときは、図1、図2に示すような一般にはウマと呼ばれるコの字型の部材を、まず管101に溶接し、次に配管の芯出しをしながら管102に溶接仮付けする。その後、溶接接合部に、一層だけ手溶接を行い、その後ウマ103を取り外し、自動溶接機を取り付けて、自動溶接機で溶接部に盛金していく。このような方法では、精度のよい芯出し作業が困難で、手間がかかること、自動溶接機による盛金の前には、ウマを取り除くとともに、表面検査などが要求されることがあり、表面を滑らかにする補修作業が必要となり、手間がかかることと同時に品質の劣化を生ずることが懸念された。
【発明の詳細な説明】

【発明が解決しようとする課題】
【0003】
品質の劣化や補修作業をなくし、表面検査などの複雑的な手間を少なくする。
【0004】
次に、芯出しや軸方向の位置調整を行う開先合わせは、後の溶接作業に大きな影響があり、調整精度が悪いと溶接作業者の技量によって、これをカバーする必要があり、高度の熟練技術によらねばならない。そこで、本発明では、現地で、容易に芯出しや、軸方向位置調整などの開先合わせ装置が精度良く簡単にできるようにした。
【課題を解決する手段】
【0005】
現地において、接合すべき一対の配管に対し、外面基準で、クランプする装置を簡便に取付するため、2ツ割れ1組、すなわち半円状のフレームとし、接合部の一方を、ピンジョイント式のヒンジとし、他方とボルト1本で、締付できるような簡単な締結によりリング状のフレームを構成する。
【0006】
このフレームを、配管の外面に強い力で押し付け、フレームをクランプするための装置クランプ装置を設ける。クランプ装置は、位置決め用と、締付用の二種の機能をもった、パッドと締付部材より構成される。最もポピュラーな4パッド方式を例に説明すると、上方の2パッドは、位置決め用で、パッドには、ねじ式の締付材が設けられ、これによって、予めフレームの中心を配管の中心がほぼ一致するように調整しておく。その上で、下方の2個のパッドには、油圧シリンダを用いた締付材を設け、フレームを配管の所定の位置に設置した後、油圧シリンダに高圧油圧を供給し、締結する。油圧シリンダの力は、クランプ装置のクランプ力となり20〜30KN、径の大きな配管に対しては50〜100KNにもなり、配管に対してフレームを強い力でクランプする。他方のフレームも同様の要領で、他方の配管にクランプする。
【0007】
次に、一方のフレームと他方のフレームの外周側に、複数個の芯出し装置を設け、この芯出し装置は、フレームの一方に一体的に取り付けられたはりと他方のフレームに取り付けられた芯出し用受け金、それに両者間の相対距離を調整する調整ねじによって構成される。一般には、芯出し装置は4セット1組とするが、3組以上なら、その目的を達成することが可能である。調整ねじを締めたり緩めたりして、他方の配管のフレーム開先部の外径と、一方の配管の開先部の外径が同心となるように調整する。
【0008】
2本の配管の軸方向の相対位置を調整するための、軸方向調整ボルトを他のフレームに取付け、ボルトの先端を一方のフレームに回転自在に嵌合し、ボルトの締め付けにより、軸方向位置が調整できる。2本の配管の芯出し調整が終わったら、軸方向位置調整ボルトを用いて、配管の開先部が全周に亘り、均一に接触し、押付力が与えられるように調整する。
【0009】
以上のように、2ツ割れ1組のフレーム2式を、溶接すべき配管に取り付け、メカニカルにクランプする。そして芯出し調整装置にて、配管の溶接開先部の外径が全周に亘り、均一となるように調整する。そして、軸方向位置調整装置の調整ボルトを用いて、開先部の軸方向位置あるいは接触力を開先部の熱ひずみにも負けないように強力に締付ける。これによって溶接すべき配管の開合わせができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明の溶接管開先合わせ装置では、従来の方法のウマのような仮付けを行わず、クランプ装置はメカニカルな締結を行っているので、ウマを撤去し、その跡を補修するなどの作業が不要となる。特に重要な配管では、熱履歴を特に受けたところでは、配管の品質劣化などの懸念があり、表面検査などの複雑な検査作業が要求されることがある。本願の装置を用いることによりこのような作業は不必要となり、工数低減と共に、品質向上、信頼性向上に寄与することができる。
【0011】
比較的大きな力でクランプし、芯出し装置で配管開先部の同心度を出すことと、軸位置調整装置を用いて、開先部の押付力を均一にするような精度の良い開先合わせができるため、引き続き実施する溶接作業が、簡単で、確実に良い溶接が可能となった。このため、一層目の溶接は、従来は、熟練度の高い溶接技能者が行っていたが、特別な機能者でなくても信頼性のある溶接が可能となった。
【0012】
またこの開先合わせ装置は、大きな消耗部品はなく、一連の作業に、何度でも利用可能である。そして、クランプ装置の締結ねじの長さ、パッドの当たり面の曲率など、相手となる配管の外径に合わせて、製作することにより、外径の異なる配管にも、応用することが可能であり、1台の開先合わせ装置を効率よく勝つよう活用することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、外面クランプ式溶接管開先合わせ装置に係る具体的実施の形態を、図面を参照して詳細に説明する。
【0014】
図3は、実施の形態に係る外面クランプ式溶接管開先合わせ装置の構造図を示す。図5、図6は図3のB・B断面およびC・C断面を示す。なお図3は、図6のA・A断面を示す。図3で、01が溶接管で、これに対し、フレーム03、フレーム04が嵌装されている。フレーム03,04は、図3において上部がヒンジで結合されている。ヒンジは、図4に詳しく描かれているが、フレーム03オスヒンジ部材16、フレーム04にはメスヒンジ部材17が設けられており、両者の回転部にはヒンジピン18が設けられ、フレーム03,フレーム04は、このヒンジピン18を中心に、開閉する構造となっている。そして図3のフレーム03,フレーム04の下方には、フランジ11が設けられ、これはボルト12によって締結される。このボルト12をはずすと、フレーム03,フレーム04は、ヒンジピン18を中心にハの字状に開くことができる。フレーム03,フレーム04および図3では陰になっているが、フレーム05,フレーム06に対し、図3で左右方向の重心の作用線上近くに、ワイヤー15の吊り下げ支点となるピン穴を設け、図7に示すような取り付けボルト13とこれに吊り下げピース14を取り付ける。フレーム03、フレーム04に設けられたねじを有するボスを設け、ここに先端に回転自在にパッド07を嵌合したパッド位置調整ボルト08をねじ込む。この位置調整ボルト08の頭部を回すことによりパッド07の半径分位置が、限られた範囲で変えることができる。
【0015】
フレーム03とフレーム05には、フレーム03、フレーム04、フレーム05、フレーム06を開き、配管01、配管02に嵌め込むときのストッパー25が設けられている。
【0016】
図3において、フレーム03、フレーム04(図示されていないがフレーム05、フレーム06も同様)の下方には、パッド07が設けられ、これらは油圧シリンダ09に嵌合されている。油圧シリンダ09の外周には、ねじが切ってあり、フレーム03、フレーム04に溶接接合されためねじを有するボスにねじ込まれ、ナットで固定されている。油圧シリンダの外周部のねじは、外径の異なる配管01、02を取り扱うとき、フレーム03、フレーム04に対し、半径方向の位置を変化させるときに用いられる。これらの油圧シリンダ09には、図示されていないが、油圧ポンプに連結されており、高圧の油圧が、ホース10を介して供給される。
【0017】
フレーム03、フレーム04 図10に示すような芯出し装置のはり19が、一体的に設けられている。図3に示す実施例では、全周に4ヶ所としているが、3個あるいは5個以上にすることも可能である。またフレーム05、フレーム06には、はり19の相対する位置に受け金20を設ける。芯出し装置のはりに設けられためねじに調整ねじ21をねじ込み、その後、先端を受け金20に対し、回転自在で、半径方向位置を拘束するように取り付ける。このように調整ねじ21を回転し調整することにより、フレーム03とフレーム04に対し,フレーム05とフレーム06の相対的な半径方向の位置を変えることができる。
【0018】
図3において水平方向の中心線上に2個の軸方向位置調整ボルト24が設けられている。図11にその断面図G・Gを示している。図示のとおり、フレーム03とフレーム04に対しフレーム05とフレーム06の軸方向に締め付けるもので、結果として溶接開先部に、軸方向の位置を調整するとともに、一定の接触力を付与するものである。
【作用】
【0019】
前準備として、配管01、配管02の外径を計測し、配管01や配管02の中心を溶接管開先合わせ装置の中心が、できるだけ精度良く合致するように、調整ねじ08を調整しておく。油圧シリンダ09の油圧を抜いて、シリンダを引っ込めた状態にしておく。また芯出し装置の調整ねじや軸方向位置調整ねじは、充分緩めて、自由度をもたせた状態にしておく。
【0020】
溶接すべき2本の配管を、台上にあるいはクレーンで吊り下げ状にして、両者を接合状態に接近させる。この配管01,配管02に対し、溶接管開先合わせ装置を、ハの字に開いた状態でクレーンで吊り下げ、移動し、フレーム03、フレーム04、フレーム05、フレーム06を嵌合させる。ストッパー25が当たったところで、ワイヤー15を緩めていき、フランジ11が、当たるまで下げていく。下げていく途中で、配管01,配管02に対し上部のパッド07が当たり、ストッパー24は、浮き上がり、すきまが生ずる。この状態でフランジ11のボルト12を締め付ける。このボルト12は、油圧シリンダ09に作用する力の反力を受けるので、充分強力に締結する。
【0021】
次にフレーム03、フレーム04の油圧シリンダ09に油圧を供給し、配管01に、確実に拘束する。そして、配管02を配管01に、できるだけ接近させた状態で、フレーム05、フレーム06側の油圧シリンダ19にも油圧を供給し、フレーム05,フレーム06を配管02に拘束する。
【0022】
この状態で、芯出し装置の調整ねじ21を締め付けていき、溶接開先部の外径部が、配管01と配管02が、同心になるように締め付け、調整する。
【0023】
次に、軸方向位置調整ボルト24を締めていき、溶接開先部の軸方向の接触が、全周一様となるように締め付ける。充分なトルクで締め付けたところで、溶接準備作業が完了する。
【0024】
この状態で、溶接接合部に対し、手溶接にて、溶接をする。通常は、全周に亘り一層溶接したところで、開先合わせの全く逆の手順で溶接管開先合わせ装置を取り外し、その上で、自動溶接装置を取り付け、必要な量の盛金を行う。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】従来の方法の説明図
【図2】図1におけるZ・Z断面図
【図3】本願の溶接管開先合わせ装置の断面図
【図4】図5の視先“X”の図
【図5】図3のB・B断面図
【図6】図3のC・C断面図
【図7】図3のD・D断面図
【図8】図3のE・E断面図
【図9】図3の視“Y”の図
【図10】図3のF・F断面図
【図11】図3のG・G断面図
【符号の説明】
【0026】
図1,図2において、
101 溶接すべき一方の配管
102 溶接すべき他方の配管
103 ウマ
図3・図11において
01 溶接すべき一方の配管
02 溶接すべき他方の配管
03,04 フレーム(配管01に取り付け)
05,06 フレーム(配管02に取り付け)
07 パッド
08 パッド位置の調整ねじ
09 油圧シリンダ
10 油圧ホース
11 フランジ
12 フランジ締結用のボルト
14 吊り下げビース14取り付けボルト
15 吊り下げワイヤ(中心線のみ記載)
16,17 ヒンジ
18 ヒンジピン
19 芯出し装置のはり
20 芯出し装置の受け金
21 芯出し装置の調整ねじ
22 軸方向位置調整ボルト23の受け金
23 軸方向位置調整用めねじ
24 軸方向位置調整ボルト
25 ストッパー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
2式1組とするリング状フレームを有し、それぞれのフレームは、円周方向に少なくとも2個に分割され、そのうちのひとつの接合部は、ピン式のヒンジを有し、これを支点に開閉できるとともに、もうひとつの接合部は締結してリング状となるような構造とし、かつこのフレームに複数個のパッドとパッドの位置を調整するねじおよびパッドに対し締付力で溶接すべき配管とフレームをクランプするようなアクチュエータ装置を設け、かつフレームの外周部に少なくとも3組の芯出し装置を設け、芯出し装置の一方のはりを一方のフレームに取り付け、そして、芯出し装置の受け金を他方のフレームの外周部に設け、はりには相対位置調整ねじを設け、このねじによりと受け金の間の相対位置を調整可能にし、かつ一方のフレームと他方のフレームの軸方向相対装置を調整することができる少なくとも2個の調整ボルトを設けたることを特徴とする外面クランプ式溶接配管用開先合わせ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−291836(P2009−291836A)
【公開日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−175049(P2008−175049)
【出願日】平成20年6月5日(2008.6.5)
【出願人】(592150608)小椋鉄工株式会社 (11)