説明

多孔質ポリイミドおよびその製造方法

【課題】三次元規則配列された連続微細孔を有するポリイミド膜を再現性良く製造できる方法を提供する。
【解決手段】シリカ粒子を充填後、焼結して、多孔質シリカ製鋳型を得る多孔質シリカ鋳型の製造工程、前記多孔質シリカ鋳型の製造工程で得られた多孔質シリカ製鋳型の空隙にポリイミドを充填するポリイミド充填工程、およびポリイミドが充填された多孔質シリカ製鋳型からシリカを除去して、多孔質ポリイミドを得るシリカ除去工程を有することを特徴とする多孔質ポリイミドの製造方法。得られる多孔質ポリイミド膜は、三次元状に規則的に配列した微細孔を有する、膜状の多孔質ポリイミドであって、前記膜の空隙率が70%以上であり、前記微細孔の平均直径が100〜2000nm、前記微細孔同士が接して、連通孔を形成し、該連通孔の直径が1000nm以下である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多孔質ポリイミド、特に三次元規則配列された連続微細孔を有する(three-dimensionally ordered macroporous, 以下3DOM)ポリイミド膜に関する。これらの多孔質膜は、セパレーターやイオン交換膜などの電池隔膜材料、ディスプレイや光導波路など光学材料、触媒の支持体に好適に利用することができる。
【背景技術】
【0002】
近年、燃料電池電解質膜や低誘電率材料としてポリイミド多孔質膜の研究がなされている。例えば、ポリイミドと易分解性成分のブロック共重合体若しくはグラフト共重合体を加熱イミド化して多孔質化する方法やポリイミド膜を光学処理して連通孔膜とする技術が公知である(特許文献1〜4参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−2865号公報
【特許文献2】特開2003−147118号公報
【特許文献3】特開2007−92078号公報
【特許文献4】特開2004−171994号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記膜は、必ずしも連通孔でない部分が生じたり、空孔率が変化したりして、応用分野や適用分野において物性値がバラツクなど、再現性等が問題である。
【0005】
従って、本発明の目的は、三次元規則配列された連続微細孔を有する3DOMポリイミド膜を再現性良く製造できる方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、シリカ粒子を充填後、焼結して、多孔質シリカ製鋳型を得る多孔質シリカ鋳型の製造工程、
前記多孔質シリカ鋳型の製造工程で得られた多孔質シリカ製鋳型の空隙にポリイミドを充填するポリイミド充填工程および
ポリイミドが充填された多孔質シリカ製鋳型からシリカを除去して、多孔質ポリイミドを得るシリカ除去工程を有することを特徴とする多孔質ポリイミドの製造方法に係るものである。
【0007】
本発明では、前記した多孔質シリカ鋳型の製造工程において、粒径が100〜2000nmのシリカ粒子を最密充填後、焼結して、多孔質シリカ製鋳型を得ることが好ましい。
前記ポリイミド充填工程においては、多孔質シリカ製鋳型の空隙にポリアミド酸を充填後、該ポリアミド酸を閉環反応することにより、ポリイミドを充填することができる。
前記ポリイミド充填工程においてはまた、多孔質シリカ製鋳型の空隙にポリイミド溶液を充填後、溶媒を除去することにより、ポリイミドを充填することができる。
前記ポリイミド充填工程においてはまた、多孔質シリカ製鋳型の空隙にポリイミド溶融物を充填することにより、ポリイミドを充填することができる。
前記シリカ除去工程において、ポリイミドが充填された多孔質シリカ製鋳型をフッ化水素水溶液に浸漬して、前記シリカを溶解させて、除去することが好ましい。
好適には、得られた多孔質ポリイミドは平均膜厚が10〜300μmの膜である。
【0008】
本発明は、三次元状に規則的に配列した微細孔を有する、膜状の多孔質ポリイミドであって、
前記膜の空隙率が70%以上、
前記微細孔の平均直径が100〜2000nm、
前記微細孔同士が接して、連通孔を形成し、該連通孔の直径が1000nm以下
であることを特徴とする多孔質ポリイミドに係るものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明は、規則正しく配列、充填されたシリカ粒子から形成された多孔質シリカ製鋳型を用いることで、三次元規則配列された連続微細孔を有する多孔質ポリイミドを得ることができるという利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】微細孔および連通孔の直径を示す図である。
【図2】実施例1で得た3DOMポリイミド多孔質膜の図面代用写真である。
【図3】比較例1で得たポリイミド膜の図面代用写真である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
多孔質シリカ製鋳型は、シリカ粒子を充填後、焼結して得られる。シリカ粒子は、好ましくは、コロイダルシリカ、単分散球状シリカ粒子である。シリカ粒子は100〜2000nmの粒径(平均直径)のものを用いることができる。
【0012】
鋳型となるシリカ粒子の規則配列体を作製し、焼結させることで、多孔質シリカ製鋳型が得られる。シリカ粒子は、濾過法などにより配列させ、好ましくは最密充填して、三次元規則配列多孔質シリカ製鋳型を作製することができる。
【0013】
鋳型用球状粒子は、シリカ粒子以外のアクリルビーズやポリスチレンビーズもシリカ粒子と併用することができる。なお、シリカ粒子以外のものはポリアミド酸(ポリアミック酸)充填時に壊れ易いことがあるので、好ましくはシリカ粒子のみを用いる。
【0014】
多孔質シリカ製鋳型の空隙にポリイミドを充填させ、シリカ−ポリイミドのコンポジット膜を得ることができる。コンポジット膜は、低濃度のフッ化水素水などにより、シリカ製鋳型のシリカを溶解させて、三次元規則配列された連続微細孔を有する3DOMポリイミド膜を再現性良く製造することができる。
【0015】
この方法において使用する鋳型はシリカの球状粒子から成るのがよく、球状粒子が三次元的に最密充填した構造体であるのが好ましい。規則的な配列の微細孔、連続孔が安定して得られる。
【0016】
シリカ単分散球状粒子としては日本触媒製の直径100〜2000nmの粒子が好適である。このような範囲の場合、適用分野などで、例えば、電解質膜において、良好な性能を得られ易い。シリカ粒子の直径に従い、微細孔径、連通孔径が影響を受け、同様の直径に基づく性能の向上が期待できる。
【0017】
これらの粒子は水に安定に分散された状態にすることができる。これはまた、ポリカーボネート製メンブランフィルターを用いて、その懸濁液を必要に応じて吸引し、濾過することにより、フィルター上に粒子を配列させ、堆積させるかなどして、充填し、乾燥後、焼結させて、鋳型となるシリカ膜を得ることができる。
【0018】
ポリイミド充填において、多孔質シリカ製鋳型の空隙に、ポリアミド酸を充填後、該ポリアミド酸を閉環反応することにより、ポリイミドを充填することができる。また、ポリイミド充填工程において、多孔質シリカ製鋳型の空隙にポリイミド溶液を充填後、溶媒を除去したり、ポリイミド溶融物を充填したりすることによって、ポリイミドを充填することができる。
【0019】
充填に使用するポリアミド酸(ポリアミック酸)若しくはポリイミド溶液は、任意のテトラカルボン酸二無水物とジアミンから得られる。
【0020】
酸二無水物としては、例えば、エチレンテトラカルボン酸二無水物、ブタンテトラカルボン酸二無水物、シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物、シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物、1,2,4,5-シクロへキサンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4-シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物、ピロメリット酸二無水物、1,1-ビス(2,3-ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、ビス(2,3-ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2,6,6-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、2,2-ビス(2,3-ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、2,2-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)-1,1,1,3,3,3-へキサフルオロプロパン二無水物、2,2-ビス(2,3-ジカルポキシフェニル)-1,1,1,3,3,3-へキサフルオロプロパン二無水物、ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)スルホン二無水物、ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)エーテル二無水物、ビス(2,3-ジカルボキシフェニル)エーテル二無水物、3,3’,4,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、4,4-(p-フェニレンジオキシ)ジフタル酸二無水物、4,4-(m-フェニレンジオキシ)ジフタル酸二無水物、1,2,5,6-ナフタレンテトラカルボン二無水物、1,4,5,8-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4-ベンゼンテトラカルボン酸二無水物、3,4,9,10-ペリレンテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7-アントラセンテトラカルボン酸二無水物、1,2,7,8-フェナントレンテトラカルボン酸二無水物、9,9-ビス無水フタル酸フルオレン等が挙げられる。これらのテトラカルボン酸二無水物は単独或いは二種以上混合して用いることができる。
【0021】
ジアミンとしては、脂肪酸ジアミン、芳香族ジアミン等を混合して使用できる。脂肪族ジアミンは、例えば、炭素数が2〜15程度のものがよく、具体的には、ペンタメチレンジアミン、へキサメチレンジアミン、へプタメチレンジアミン等が挙げられる。芳香族ジアミンとしては、フェニル基が一個或いは2〜10個程度が結合したジアミノ化合物を挙げることができる。
【0022】
具体的には、フェニレンジアミンおよびその誘導体、ジアミノジフェニル化合物およびその誘導体、ジアミノトリフェニル化合物およびその誘導体、ジアミノナフタレンおよびその誘導体、アミノフェニルアミノインダンおよびその誘導体、ジアミノテトラフェニル化合物およびその誘導体、ジアミノへキサフェニル化合物およびその誘導体、カルド型フルオレンジアミン誘導体である。
【0023】
フェニレンジアミンは、m-フェニレンジアミン、p-フェニレンジアミン等であり、フェニレンジアミン誘導体としては、メチル基、エチル基、等のアルキル基が結合したジアミン、例えば、2,4-トリフェニレンジアミン等である。
【0024】
ジアミノジフェニル化合物は、二つのアミノフェニル基が他の基を介してフェニル基同士の結合したものである。この結合は、エーテル結合、スルホニル結合、チオエーテル結合、アルキレンまたはその誘導体基による結合、イミノ結合、アゾ結合、ホスフィンオキシド結合、アミド結合、ウレイレン結合等である。アルキレン結合は、炭素数が1〜6程度のものであり、その誘導体基は、アルキレン基の水素原子の1以上がハロゲン原子等で置換されたものである。
【0025】
ジアミノジフェニル化合物の例としては、3,3’-ジアミノジフェニルエーテル、3,4’-ジアミノジフェニルエーテル、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、3,3’-ジアミノジエニルスルホン、3,4’-ジアミノジエニルスルホン、4,4’-ジアミノジエニルスルホン、3,3’-ジアミノジフェニルメタン、3,4’-ジアミノジフェニルメタン、4,4’-ジアミノジフェニルメタン、4,4’-ジアミノジフェニルスルフィド、3,3’-ジアミノジエニルケトン、3,4’-ジアミノジフェニルケトン、2,2-ビス(p-アミノフェニル)プロパン、2,2’-ビス(p-アミノフェニル)へキサフルオロプロパン、4-メチル-2,4-ビス(p-アミノフェニル)-1-ペンテン、4-メチル-2,4-ビス(p-アミノフェニル)-2-ペンテン、イミノジアニリン、4-メチル-2,4-ビス(p-アミノフェニル)ペンタン、ビス(p-アミノフェニル)ホスフィンオキシド、4,4’-ジアミノアゾベンゼン、4,4’-ジアミノジフェニル尿素、4,4’-ジアミノジフェニルアミド等を挙げることができる。
【0026】
ジアミノトリフェニル化合物は、二つのアミノフェニル基と一つのフェニレン基が何れも他の基を介して結合したものであり、他の基はジアミノジフェニル化合物と同様のものが選ばれる。
【0027】
ジアミノトリフェニル化合物の例としては、1,3-ビス(m-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3-ビス(p-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4-ビス(p-アミノフェノキシ)ベンゼン等を挙げることができる。
【0028】
ジアミノナフタレンの例としては、1,5-ジアミノナフタレンおよび2,6-ジアミノナフタレンを挙げることができる。
【0029】
アミノフェニルアミノインダンの例としては、5または6-アミノ-1-(p-アミノフェニル)-1,3,3-トリメチルインダンを挙げることができる。
【0030】
ジアミノテトラフェニル化合物の例としては、4,4’-ビス(p-アミノフェノキシ)ビフェニル、2,2’-ビス[p-(p’-アミノフェノキシ)フェニル]プロパンおよび2,2’-ビス[p-(p’-アミノフェノキシ)ビフェニル]プロパン、2,2’-ビス[p-(m-アミノフェノキシ)フェニル]ベンゾフェノン等を挙げることができる。
【0031】
カルド型フルオレン誘導体は9,9-ビスアニリンフルオレン等が挙げられる。なお、これらの芳香族ジアミンの水素原子がハロゲン原子、メチル基、メトキシ基、シアノ基、フェニル基などの群より選択される少なくとも1種の置換基により置換された化合物であってもよい。
【0032】
本発明にかかるポリアミック酸およびポリイミド溶液を製造する手段に特に制限はなく、例えば、(a.1)有機溶媒中で酸、ジアミン成分を反応させる方法、(a.2)ポリアミック酸を化学イミド化若しくは加熱イミド化させ有機溶媒に溶解させる方法などの公知手法を用いることができる。
【0033】
この際に用いられる溶媒としては、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチル-2-ピロリドン等の非プロトン系極性溶媒、クレゾール類等のフェノール系溶媒、ジグライム等のグリコール系溶媒が挙げられる。これらの溶媒は単独あるいは2種以上混合して用いることができる。溶媒使用量に特に制限はないが、生成するポリイミドの含有量が5〜50質量%とするのが望ましい。
【0034】
重合温度は一般的には−10〜120℃、好ましくは5〜30℃である。
重合時間は使用する原料組成により異なるが、通常は3〜24Hr(時間)である。
【0035】
このような条件下で得られるポリイミド前駆体およびポリイミドの有機溶媒溶液の固有粘度は0.1〜3.0dl/g、より一層好ましくは0.2〜1.5dl/gの範囲である。
【0036】
かくして得られたポリアミック酸若しくはポリイミド溶液を鋳型である三次元規則配列シリカ膜の隙間に含浸透し、任意の温度で含有する溶媒を除去し、必要に応じてイミド化処理を行ない硬化させた後、低濃度のフッ化水素水により鋳型を溶出させて三次元規則配列された連続微細孔を有するポリイミド多孔質膜を再現性良く製造する。
【0037】
好適例において、多孔質ポリイミドは以下のようにして製造することができる。
100〜2000nmの球状シリカ粒子を0〜20MPaで減圧濾過し、最密充填させ、500〜1200℃の焼成により得た多孔質シリカ製鋳型を用い、これの空隙に、ポリイミド前駆体やポリイミドの有機溶媒溶液、溶融物を充填し、フッ化水素水溶液に浸漬して、前記シリカを溶解させて、除去する。
【0038】
上述のようにして得られる膜状の多孔質ポリイミドは、三次元状に規則的に配列した微細孔を有し、膜の空隙率が70%以上、好ましくは85%以下であり、微細孔の平均直径が100〜2000nmであり、膜の内部などにおいてポリイミド相と空間相が微細な連通孔を形成しており、その連通孔の直径が1000nm以下、好ましくは10nm以上である。
【0039】
また、多孔質ポリイミドの好適例において、空隙に充填するポリイミドは、式(1)で示す繰返し単位で示すポリアミド酸を熱または化学的に閉環反応によって得たもの、若しくは式(2)で示す繰返し単位で示すポリイミドを溶媒に溶解したものか、熱融解させて、それを充填したものである。
【化1】

【化2】

【0040】
多孔質ポリイミドは平均膜厚が10〜300μmの膜に作製することができる。好ましくは多孔質ポリイミドは、耐熱性において少なくとも5%の質量減少が350℃以上である。
【実施例】
【0041】
ポリイミド多孔質膜の物性は次の測定法によって求めた。
1)空隙率
Porosity[%]=100−(W/(A×L×d))×100
(式中、Wは膜の質量、Aは膜の見かけの面積、Lは膜厚、dはポリイミドの密度である。)
2)微細孔直径
図1に示すような微細孔P1、P2の直径D1、D2等をいう。多孔質フィルム表面の走査型電子顕微鏡(SEM)写真により、複数点の開孔部について径を測定し、その平均値から算出した。
3)連通孔直径
図1に示すような微細孔P1およびP2の連通孔Qの直径D3等をいう。多孔質フィルム断面の走査型電子顕微鏡写真により、複数点の開孔部について径を測定し、その平均値から算出した。
4)Td5%(5%質量減少温度)
島津製TGA−60を用いて測定温度R.T.(室温)−800℃、昇温速度10℃/分、窒素雰囲気下で測定した。
【実施例1】
【0042】
日本触媒製の直径550nmシリカ単分散球状粒子を蒸留水に分散させ懸濁液とし、メンブランフィルターを用いて減圧濾過を行ない、フィルター上に100μmの厚みで最密充填堆積させた。その後シリカを乾燥させ、フィルターから取り外し、高強度化のために900℃で焼成した。一方、充填するポリイミドの前駆体として、ピロメリット酸(PMDA)0.5モルと4,4’-ジアミノジフェニルエーテル(ODA)0.5モルをジメチルアセトアミド中で反応させ、固形分濃度が10質量(mass)%のポリアミック酸を合成した。
【0043】
合成したポリアミック酸を鋳型である三次元粒子規則配列シリカ膜(多孔質シリカ製鋳型)に真空含浸法により充填し、加熱イミド化によりイミド硬化させた。ポリイミド−シリカコンポジット膜を10質量%のフッ化水素水溶液に浸し、シリカを溶解させ、連続微細孔を有する3DOMポリイミド膜を得た。得られたポリイミド膜の断面SEM像を図2に示す。物性を表1にまとめて示す。
【実施例2】
【0044】
実施例1のシリカ単分散球状粒子の粒径を1500nmとし、実施例1と同様の処理を施して、連続微細孔を有するポリイミド多孔質膜を得た。物性を表1にまとめて示す。
【実施例3】
【0045】
実施例1のシリカ単分散球状粒子の粒径を280nmとし、実施例1と同様の処理を施して、連続微細孔を有するポリイミド多孔質膜を得た。物性を表1にまとめて示す。
【実施例4】
【0046】
使用するポリイミド原料を3,3,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(S-BPDA)とパラフェニレンジアミン(PDA)に変更した。物性を表1にまとめて示す。
【実施例5】
【0047】
使用するポリイミド原料としてオキシジフタル酸二無水物(ODPA)と5(6)-アミノ-1-(p-アミノフェニル)-1,3,3-トリメチルインダン(DAIND)、溶媒としてN-メチルピロリドンを用い、180℃で脱水閉環反応させて、固形分濃度10質量%のポリイミド溶液を調製した。
【0048】
該ポリイミド溶液を実施例1で製造した多孔質シリカ製鋳型に真空含浸法を用いて充填し、減圧乾燥して、溶媒を除去し、ポリイミド−シリカコンポジット膜を得た。
【0049】
該ポリイミド−シリカコンポジット膜を実施例1と同様に、フッ化水素水溶液に浸漬し、シリカを溶解させ、3DOMポリイミド膜を得た。物性を表1に示す。
【比較例1】
【0050】
高温で易分解するアルコキシチタンをポリアミック酸へ分散し、高温で加熱イミド化し、ポリイミド多孔質膜を作製した。得られたポリイミド膜の断面SEM像を図3に、物性を表1にまとめて示す。
【0051】
【表1】

【0052】
図2、表1等に示すように、実施例は、規則的な連続微細孔を有する3DOM多孔質ポリイミドが得られ、電解質膜などにおいておおいに役立つ。比較例は連続微細孔が殆ど得られず、連続微細孔多孔質膜として不十分なものであった。
【産業上の利用可能性】
【0053】
3DOM多孔質ポリイミドは、三次元規則配列した連続微細孔を有し、且つその空隙率が70%以上である多孔質膜を提供し、安定した物性が要求される燃料電池電解質膜や低誘電率材料としての用途にも適用できる。
【符号の説明】
【0054】
P1,P2 微細孔
Q 連通孔
D1,D2,D3 直径

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリカ粒子を充填後、焼結して、多孔質シリカ製鋳型を得る多孔質シリカ鋳型の製造工程、
前記多孔質シリカ鋳型の製造工程で得られた多孔質シリカ製鋳型の空隙にポリイミドを充填するポリイミド充填工程および
ポリイミドが充填された多孔質シリカ製鋳型からシリカを除去して、多孔質ポリイミドを得るシリカ除去工程を有することを特徴とする多孔質ポリイミドの製造方法。
【請求項2】
前記した多孔質シリカ鋳型の製造工程において、粒径が100〜2000nmのシリカ粒子を最密充填後、焼結して、多孔質シリカ製鋳型を得ることを特徴とする請求項1に記載の多孔質ポリイミドの製造方法。
【請求項3】
前記ポリイミド充填工程において、多孔質シリカ製鋳型の空隙にポリアミド酸を充填後、該ポリアミド酸を閉環反応することにより、ポリイミドを充填することを特徴とする請求項1または2に記載の多孔質ポリイミドの製造方法。
【請求項4】
前記ポリイミド充填工程において、多孔質シリカ製鋳型の空隙にポリイミド溶液を充填後、溶媒を除去することにより、ポリイミドを充填することを特徴とする請求項1または2に記載の多孔質ポリイミドの製造方法。
【請求項5】
前記シリカ除去工程において、ポリイミドが充填された多孔質シリカ製鋳型をフッ化水素水溶液に浸漬して、前記シリカを溶解させて、除去することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の多孔質ポリイミドの製造方法。
【請求項6】
得られた多孔質ポリイミドが、平均膜厚が10〜300μmの膜であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の多孔質ポリイミドの製造方法。
【請求項7】
三次元状に規則的に配列した微細孔を有する、膜状の多孔質ポリイミドであって、
前記膜の空隙率が70%以上、
前記微細孔の平均直径が100〜2000nm、
前記微細孔同士が接して、連通孔を形成し、該連通孔の直径が1000nm以下
であることを特徴とする多孔質ポリイミド。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−111470(P2011−111470A)
【公開日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−266449(P2009−266449)
【出願日】平成21年11月24日(2009.11.24)
【出願人】(305027401)公立大学法人首都大学東京 (385)
【出願人】(591067794)JFEケミカル株式会社 (220)
【Fターム(参考)】