説明

多孔質炭素材料と製造方法

【課題】多孔質炭素材料と製造方法を提供する。
【解決手段】本発明の具体例は、多孔質炭素材料の製造方法を提供し、界面活性剤と炭素原材料を溶剤中に溶解し、有機テンプレート前駆体溶液を形成するステップと、ケイ酸塩水溶液を準備するステップと、有機テンプレート前駆体溶液を前記ケイ酸塩水溶液に注入して、界面活性剤、前記炭素原材料と酸化ケイ素テンプレートを含む中間体を凝結するステップと、中間体を加熱して、中間体を炭化するステップと、酸化ケイ素テンプレートを除去して、多孔質炭素材料を形成するステップと、からなる。本発明の別の具体例は、多孔質炭素材料を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多孔質材に関するものであって、特に、多孔質炭素材料と製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
超コンデンサは、エネルギー貯蔵の分野の革命的な発展であり、将来、ある分野で、公知のストレージバッテリーを代替する。超コンデンサは、材料科学の進歩に伴って出現する新しい電力エネルギー貯蔵装置で、超コンデンサは新しい電気化学的装置で、電解質を分極することにより、電気エネルギーを保存する。商業市場での供給開始後、超コンデンサの世界的需要量は急速に増加し、電気化学電力の分野ですでに主役となっている。超コンデンサは、電動の乗り物、混合燃料車両、特殊な荷重の車両、電力、鉄道、通信、国防、及び、消費家電製品分野等で、巨大な応用価値と市場潜在力を有する。
【0003】
超コンデンサは、充電放電速度が速い、環境汚染がない、寿命が長い等の長所を有するので、超コンデンサは、今世紀の環境に優しい新しいタイプのエネルギー貯蔵システムとして定義される。電力の使用品質の観点で、超コンデンサは、電池より優れた多くの長所、例えば、高出力電力(>10kW/kg)、高い充電−放電効率、及び、長い使用寿命(>200,000回)を有する。省エネの観点で、超コンデンサは、不可欠な補助エネルギー源である。また、超コンデンサの高放電速度の特徴は連続電力供給に用いられ、超コンデンサは、停電の瞬時に、電気エネルギーを即時に提供することができ、電池の本質的な応答時間の落差を償う。
【0004】
一般に、超コンデンサの電極は、主に、多孔質構造で、それは大面積のマクロ−ナノメートル構造で、静電ストレージデバイスの電気二重層の生成に用いられる。特に、超コンデンサは、キャパシタの電極板上で、直接、静電を形成することにより、電気エネルギーを保存し、この種の電荷貯蔵は非誘導電流(non-Faradic)と称され、電極のインターフェースで、電子移動の発生がないことを意味する。
【0005】
現在の市販の超コンデンサは、炭素電極材料の比表面積(500−1000m/g)が小さいことにより制限されるので、エネルギー密度が低く(<5Wh/kg)、電気容量は5−35F/g程度である。大表面積で、よい小孔特徴の炭素電極材料は、効果的に、超コンデンサの全効率を改善するが、この種の炭素電極材料の現在の製造方法(特許文献1参照)は、長い工程所要時間(約3−7日)と高エネルギー(処理温度は2000℃)を必要とする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】中華民国特許第I274453号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、多孔質炭素材料と製造方法を提供し、上述の問題を解決することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の具体例は、多孔質炭素材料の製造方法を提供し、界面活性剤と炭素原材料を溶剤中に溶解して、有機テンプレート前駆体溶液を形成するステップと、ケイ酸塩水溶液を準備するステップと、有機テンプレート前駆体溶液を、ケイ酸塩水溶液に注入して、界面活性剤、炭素原材料と酸化ケイ素テンプレートを含む中間体を凝結するステップと、中間体を加熱して、中間体を炭化するステップと、酸化ケイ素テンプレートを除去して、多孔質炭素材料を形成するステップと、からなる。
【0009】
本発明の具体例は、多孔質炭素材料を提供し、複数のマクロ孔、複数のメソ細孔と複数の微小孔を有する多孔質炭素構造を含み、各マクロ孔は50ナノメートルより大きい直径を有し、各メソ細孔は、2ナノメートル〜50ナノメートルの直径を有し、各微小孔は、2ナノメートルより小さい直径を有し、多孔質炭素構造の比表面積は、グラム当たり、約700平方メートル〜3000平方メートルで、多孔質炭素構造の総比表面積に基づいて、マクロ孔の比表面積の分布比例は10−35%、メソ細孔の比表面積の分布比例は25−40%、微小孔の比表面積の分布比例は30−60%である。
【発明の効果】
【0010】
本発明の製造方法は、低製造コスト、短い工程所要時間、及び、低い必要エネルギーの長所を有し、大量生産が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の具体例による多孔質炭素材料の製造フローチャートである。
【図2】例1の多孔質炭素材料の透過型電子顕微鏡(TEM)イメージである。
【図3】例2の多孔質炭素材料のTEMイメージである。
【図4】例3の多孔質炭素材料のTEMイメージである。
【図5】例4の多孔質炭素材料のTEMイメージである。
【図6】例5の多孔質炭素材料のTEMイメージである。
【図7】例6の多孔質炭素材料のTEMイメージである。
【図8】例3、例4と例5の多孔質炭素材料の窒素吸着/脱着曲線を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明において、有機テンプレート前駆体溶液とケイ酸塩水溶液を混合することにより、界面活性剤、炭素原材料、及び、酸化ケイ素を有する有機無機複合材料が形成され、その後、有機無機複合材料は炭化され、酸化ケイ素は有機無機複合材料から除去されて、複数のマクロ孔、複数のメソ細孔と複数の微小孔を有する多孔質炭素材料を形成する。
【0013】
図1は、本発明の具体例による多孔質炭素材料の製造フローチャートである。図1を参照すると、ステップ102で、界面活性剤は溶剤中に溶解される。特に、溶剤は、例えば、水、アルコール、それらの組み合わせ、又は、別の適当な溶剤材料で、アルコールは、例えば、エタノールである。一例中、溶剤は水とエタノールを含み、且つ、水とエタノールの体積比は1:2である。別の具体例中、水とエタノールの体積比は、1:1、5:1、又は、10:1である。界面活性剤は、例えば、ゼラチン、EO−POトリブロック共重合体(例えば、EO106PO70EO106,Pluronic F127)、ポリエチレングリコール(PEG10000)、それらの組み合わせ、又は、別の適当な界面活性剤材料である。
【0014】
特に、ステップ102で、界面活性剤が溶剤中に溶解され、数分間攪拌し、界面活性剤が溶剤に溶解するのを補助する。この時、界面活性剤で溶解される溶剤は澄んでいる。
【0015】
ステップ104で、炭素原材料が溶剤中に溶解されて、有機テンプレート前駆体溶液を形成する。特に、炭素原材料は、例えば、フェノール樹脂、架橋と非架橋ポリアクリロニトリル共重合体、スルホン酸化した架橋ポリスチレン共重合体、改良型架橋ポリスチレン共重合体、架橋スクロース、ポリ(フルフリルアルコール)、ポリ塩化ビニル、それらの組み合わせ、又は、別の適当な炭素原材料で、フェノール樹脂は、例えば、フェノールホルムアルデヒド共重合体、又は、レゾルシンホルムアルデヒド凝縮共重合体である。
【0016】
特に、ステップ104で、炭素原材料を、界面活性剤が溶解した溶剤に加える。例えば、0.5−10重量分の炭素原材料を、1−5重量分の界面活性剤が溶解した溶剤中に加える。この時、溶剤は定温バス中に配置されて、炭素原材料と溶剤が平衡になり、設定温度(例えば、30℃、40℃、50℃等)に達する。その後、溶剤は、数時間(例えば、4時間)、設定温度下で攪拌されて、高分子ミセルを有する有機テンプレート前駆体溶液を形成する。
【0017】
ステップ106で、ケイ酸塩水溶液が準備される。特に、ステップ106で、ケイ酸塩(例えば、ケイ酸塩ナトリウム)が水中に配置されて、攪拌されて、ケイ酸塩を溶解し、ケイ酸塩水溶液を形成する。例えば、16重量分の前記ケイ酸塩が水中で溶解され、その後、ケイ酸塩水溶液のpH値が所定pH値に調整され、ケイ酸塩水溶液が定温バス中に配置されて、設定温度(例えば、1℃−99℃、又は、30℃)に到達し、熟成時間(例えば、7−8分)が維持される。一具体例中、ケイ酸塩水溶液の所定pH値は2〜7、例えば、約4である。別の具体例で、ケイ酸塩水溶液の所定pH値は約2より小さい。更に別の具体例で、ケイ酸塩水溶液の所定pH値は約7より大きい。
【0018】
その後、ステップ108で、有機テンプレート前駆体溶液がケイ酸塩水溶液に注入されて、中間体を凝結し、中間体は、界面活性剤、炭素原材料、及び、酸化ケイ素テンプレートを含む。
【0019】
特に、ステップ108で、有機テンプレート前駆体溶液が、速やかにケイ酸塩水溶液中に注入される。この時、有機テンプレート前駆体溶液とケイ酸塩水溶液の混合溶液は、すぐさま、白色中間体を凝結し、これは、酸化ケイ素凝縮反応を利用して、有機テンプレート前駆体溶液の形状を固定することにより形成される。その後、白色中間体は、水により洗浄、ろ過され、ベイクされて、界面活性剤、炭素原材料、酸化ケイ素テンプレートを含む中間体を形成する。
【0020】
その後、ステップ110で、加熱プロセスが中間体に実施されて、中間体を炭化する。特に、ステップ110で、中間体が石英管中に設置され、高温炉に入れられ、窒素雰囲気中、炭化温度下で、中間体を数時間加熱し、中間体を炭化する。一例中、加熱プロセスは、例えば、750℃−850℃(例えば、800℃)の温度下で、1時間〜3時間(例えば、2時間)、中間体に実行される。
【0021】
その後、ステップ112で、酸化ケイ素テンプレートが除去されて、多孔質炭素材料を形成する。特に、ステップ112で、炭化後の中間体が、強酸溶液、又は、強い塩基液(例えば、フッ化水素酸溶液)に配置されて、フッ化水素酸溶液を用いて、酸化ケイ素テンプレートを除去する。特に、フッ化水素酸溶液の濃度は、例えば、4.8wt%で、且つ、酸化ケイ素テンプレートとフッ化水素酸溶液の重量比は1:50である。
【0022】
本発明は、ポリマーブレンドの特性を用いて、界面活性剤と炭素原材料を混合して、高分子ミセルを含む有機テンプレート前駆体溶液を形成する。その後、酸化ケイ素凝縮反応を利用して、有機テンプレート前駆体溶液の形状を固定することにより、メソスケール材料を形成する。その後、窒素雰囲気下で、メソスケール材料を炭化する。その後、酸化ケイ素は、フッ化水素酸溶液により、炭化メソスケール材料から除去され、多孔質炭素材料を形成する。更に、多孔質炭素材料の処理パラメータは、特定の要求により調整されて、規則排列構造と大表面を有する多孔質炭素材料を形成し、多孔質炭素材料の製造コストは低く、大量生産が可能である。
【0023】
この他、炭素電極材料の公知の製造方法と比較して、長い工程所要時間(約3−7日)と更に高いエネルギー(処理温度は2000℃)を必要とし、本発明の製造方法は、多孔質炭素材料の工程所要時間(例えば、一日以内)を効果的に短縮し、必要なエネルギーを低下する(処理温度は750℃〜850℃)。
【0024】
上述の製造方法により形成される多孔質炭素材料の構造は、以下で説明される。
【0025】
本発明の多孔質炭素材料は、複数のマクロ孔、複数のメソ細孔と複数の微小孔を有する多孔質炭素構造を含み、各マクロ孔は50ナノメートル以上の直径を有し、各メソ細孔は2〜50ナノメートルの直径を有し、各微小孔は2ナノメートル以下の直径を有する。多孔質炭素構造の比表面積は、グラム当たり、約700〜3000平方メートルである。多孔質炭素構造の総比表面積に基づいて、マクロ孔の比表面積の分布比例は10−35%、メソ細孔の比表面積の分布比例は25−40%、微小孔の比表面積の分布比例は30−60%である。
【0026】
一例中、多孔質炭素構造の比表面積は、グラム当たり、約1200〜2500平方メートルである。多孔質炭素構造の総比表面積に基づいて、前記マクロ孔の比表面積の分布比例は、例えば、15−29%、メソ細孔の比表面積の分布比例は、例えば、30−36%、及び、微小孔の比表面積の分布比例は、例えば、37−54%である。
【0027】
一般に、多孔質炭素材料が、超コンデンサの炭素電極として用いられる時、多孔質炭素材料の孔の大きさが、超コンデンサの電荷貯蔵の特定容量に影響する。特に、微小孔数量の増加は、効果的に、炭素電極の比表面積を増加し、これにより、特定容量を効果的に増加する。更に、メソ細孔とマクロ孔は、超コンデンサに用いられる電解質の電荷の即時伝送を助ける。
【0028】
公知技術により形成される多孔質炭素材料は、大まかに、二種に分類される。一種の多孔質炭素材料は、大量の微小孔を有する微小孔炭素材である(微小孔炭素材の総比表面積に基づくと、微小孔の比表面積の分布比例は85%より大きい)。もう一種の多孔質炭素材料は、大量のマクロ孔を有するマクロ孔炭素材である。しかし、多孔質炭素材料の微小孔の比表面積の分布比例が高過ぎる場合、多孔質炭素材料はメソ細孔とマクロ孔が欠乏して、電解質は、ほとんど多孔質炭素材料の内部に送られないので、多孔質炭素材料の表面だけが電荷の保存に適し、超コンデンサの特定容量を減少させる。一方、多孔質炭素材料のマクロ孔の比表面積の分布比例が高過ぎる場合、多孔質炭素材料の総比表面積は小さく、超コンデンサの特定容量を減少させる。
【0029】
上述から分かるように、本発明は、微小孔、メソ細孔とマクロ孔を有する多孔質炭素材料を形成するので、これにより、多孔質炭素材料が超コンデンサの炭素電極として用いられる場合、微小孔は、効果的に、炭素電極の表面積(700〜3000m/g)を増加し、メソ細孔とマクロ孔は電荷送信チャネルとなり(マクロ孔の比表面積の分布比例は10−35%、メソ細孔の比表面積の分布比例は25−40%)、電解質の電荷は、メソ細孔とマクロ孔により、円滑に、炭素電極の外部と内部に位置する微小孔の表面に伝送される。これにより、炭素電極の有効な厚さが増加し、炭素電極の微小孔の表面積が十分に利用され、電荷保存量を増加し、快速に、電解質の電荷を伝送する。
【0030】
本発明の具体例による多孔質炭素材料の製造方法は以下で説明される。以下の例で、界面活性剤はEO−POトリブロック共重合体(Pluronic F127)で、炭素原材料はフェノール樹脂で、ケイ酸塩水溶液はケイ酸塩ナトリウム水溶液である。以下の具体例は、おおむね同様の実験的プロセスで、実験パラメータの部分だけが異なり、例1は詳細を示し、例2〜6は、例1と異なる実験パラメータだけを示す。
【0031】
例1
まず、2グラムのEO−POトリブロック共重合体(界面活性剤)が、水とエタノール(水とエタノールの体積比は0.5、総重量は50グラム)により形成される溶剤中に溶解され、その後、数分間攪拌する。この時、界面活性剤が溶解した溶剤は澄んでいる。
【0032】
その後、0.5−4グラムのフェノール樹脂(炭素原材料)が溶剤中に溶解されて、有機テンプレート前駆体溶液を形成する。この時、溶剤が定温バス中に配置されて、炭素原材料と溶剤は平衡で、設定温度(30℃)に到達し、その後、溶剤は、4時間、設定温度下で攪拌されて、有機テンプレート前駆体溶液を形成する。
【0033】
更に、8グラムのケイ酸塩ナトリウム(ケイ酸塩)が、150グラムの水中に配置されて、水は攪拌されて、ケイ酸塩ナトリウムを溶解し、ケイ酸塩水溶液を形成する。その後、ケイ酸塩水溶液のpH値を、所定pH値(pH値=4)に調整し、ケイ酸塩水溶液が定温バス中に配置されて、設定温度(40℃)に到達し、熟成時間(7−8分)が維持される。
【0034】
その後、有機テンプレート前駆体溶液が速やかに、ケイ酸塩水溶液に注入される。次に、白色中間体が、直ぐに、有機テンプレート前駆体溶液とケイ酸塩水溶液の混合溶液から凝結する。その後、白色中間体は、水により洗浄、ろ過、ベイクされて、界面活性剤、炭素原材料と酸化ケイ素テンプレートを含む中間体を形成する。
【0035】
その後、中間体が石英管中に設置され、高温炉に入れられて、窒素雰囲気中で、炭化温度(800℃)下で、2時間、中間体を加熱して、中間体を炭化する。
【0036】
その後、炭化された中間体をフッ化水素酸溶液(濃度が4.8wt%)に配置して、フッ化水素酸溶液を用いて、酸化ケイ素テンプレートを除去する。酸化ケイ素テンプレートとフッ化水素酸溶液の重量比は1:50である。
【0037】
図2は、例1の多孔質炭素材料の透過型電子顕微鏡(TEM)イメージである。
【0038】
例2
実験パラメータが以下のように調整される以外は、例1と同じ工程が繰り返される:
1.ケイ酸塩水溶液の所定pH値は約4;
2.炭素原材料、溶剤とケイ酸塩水溶液の設定温度は40℃;
3.溶剤は水とエタノールを含み、水とエタノールの体積比は1.
【0039】
図3は、例2の多孔質炭素材料のTEMイメージを示す。
【0040】
例3
実験パラメータが以下のように調整される以外は、例1と同じ工程が繰り返される:
1.ケイ酸塩水溶液の所定pH値は約4;
2.炭素原材料、溶剤とケイ酸塩水溶液の設定温度は40℃;
3.溶剤は水とエタノールを含み、水とエタノールの体積比は5.
【0041】
図4は、例3の多孔質炭素材料のTEMイメージを示す。
【0042】
図2−4を参照すると、図2−4から分かるように、溶剤中のエタノールの比例が増加するにつれて、得られた多孔質炭素材料は更に規則排列する球体構造(図2−3で示される)を有する。溶剤中の水の比例が、例3のように高過ぎる時、得られた多孔質炭素材料の形態が変化する。エタノールの濃度が減少する場合、得られた多孔質炭素材料は、短い棒状構造を有する(図4で示される)。短い棒状構造は、互いに接続された複数の球体構造により形成されることが観察される。
【0043】
例4
実験パラメータが以下のように調整される以外は、例1と同じ工程が繰り返される:
1.ケイ酸塩水溶液の所定pH値は約4;
2.炭素原材料、溶剤とケイ酸塩水溶液の設定温度は30℃;
3.溶剤は水とエタノールを含み、水とエタノールの体積比は1.
【0044】
図5は、例4の多孔質炭素材料のTEMイメージを示す。
【0045】
例5
実験パラメータが以下のように調整される以外は、例1と同じ工程が繰り返される:
1.ケイ酸塩水溶液の所定pH値は約4;
2.炭素原材料、溶剤とケイ酸塩水溶液の設定温度は30℃;
3.溶剤は水とエタノールを含み、水とエタノールの体積比は2.
【0046】
図6は、例5の多孔質炭素材料のTEMイメージを示す。
【0047】
例6
実験パラメータが以下のように調整される以外は、例1と同じ工程が繰り返される:
1.ケイ酸塩水溶液の所定pH値は約10;
2.炭素原材料、溶剤とケイ酸塩水溶液の設定温度は30℃;
3.溶剤は水.
【0048】
特に、例6で、溶剤は水で、有機テンプレート前駆体溶液は酸性(そのpH値は約3−6、最良の態様は4)で、炭素原材料を分散させる。ケイ酸塩水溶液は塩基性(pH値は10)である。酸性の有機テンプレート前駆体溶液が塩基性のケイ酸塩水溶液に注入されて、混合溶液を形成する。その場合、酸性の有機テンプレート前駆体溶液と塩基性のケイ酸塩水溶液を混合する時、pH値は変化し、混合溶液のpH値は約10(例えば、9.5〜10.5)に調整される。
【0049】
図7は、例6の多孔質炭素材料のTEMイメージである。図7から分かるように、例6の多孔質炭素材料の構造は球形で、整列された孔を有する。例6の製造方法は、エタノールの使用を必要としない。
【0050】
また、図2−7と比較した後、分かるように、炭素原材料、溶剤とケイ酸塩水溶液の設定温度が上昇する時(第1具体例、例2と例3にそれぞれ対応する図2−4で示される)、孔壁構造が整列する。これにより、孔壁構造は、設定温度を調整することにより変化する。
【0051】
図8は、例3、例4と例5の多孔質炭素材料の窒素吸着/脱着曲線を示す。図8から分かるように、低相対応力(P/P=0.3)下で、多孔質炭素材料は吸着量を有し、これは、多孔質炭素材料の微小孔の孔壁上での窒素の単分子層吸着からの吸着量である。P/Pが増加するにつれて、窒素吸着量が増加する。P/P=0.40の時、毛細凝集現象が発生し、窒素吸着量が急増する。この時、窒素は、微小孔をほぼ充填する。
【0052】
毛細凝集現象の険しさの程度により、サンプルの細孔径の均一性が判断される。毛細凝集現象が激しいほど、細孔径は均一である。図8から分かるように、例3、例4と例5の多孔質炭素材料がP/P=0.40の時、窒素吸着量が急に増加し、例3、例4と例5の多孔質炭素材料は均一の細孔径を有する。相対応力(P/P)が0.4〜0.95の時、窒素が徐々にメソ細孔に充填される。相対応力(P/P)が0.95の時、窒素吸着量が明らかに増加し、これは、得られた多孔質炭素材料の孔が大きくなることを示す。
【0053】
表1は、例3、例4と例5と市販の多孔質炭素材料の窒素吸着/脱着測定結果を示し、市販の多孔質炭素材料は、台湾の永隆科技株式会社(Yeong Long Technologies CO., LTD)から購入する。窒素吸着/脱着測定結果は、多孔質炭素材料の総比表面積に基づいて、多孔質炭素材料のマクロ孔、メソ細孔と微小孔の比表面積の分布比例を含む。
【0054】
【表1】

【0055】
表1から分かるように、市販の多孔質炭素材料と比較すると、例3、例4と例5の多孔質炭素材料は、大比表面積と、マクロ孔、メソ細孔と微小孔の均一の比率を有する。よって、微小孔は、効果的に、炭素電極の表面積を増加し、メソ細孔とマクロ孔は電荷送信チャネルとなり、蓄積電荷の量を増加し、快速に、電解質の電荷を伝送するのを助ける。
【0056】
総合すると、本発明の製造方法は、ポリマーブレンドの特性を用いて、界面活性剤と炭素原材料を混合し、有機テンプレート前駆体溶液を形成する。その後、酸化ケイ素凝縮反応により、有機テンプレート前駆体溶液を固定して、メソスケール材料を形成する。その後、メソスケール材料は炭化し、酸化ケイ素は、炭化メソスケール材料から除去されて、多孔質炭素材料を形成する。本発明の製造方法は、低製造コスト、短い工程所要時間、及び、低い必要エネルギーの長所を有し、大量生産が可能である。この他、本発明の多孔質炭素材料は、微小孔、メソ細孔とマクロ孔を有する。よって、多孔質炭素材料が超コンデンサの炭素電極に応用される時、微小孔は、効果的に、炭素電極の表面積を増加し、メソ細孔とマクロ孔は電荷送信チャネルとなり、蓄積電荷量を増加し、電解質の電荷を快速に伝送する。
【0057】
本発明では好ましい実施例を前述の通り開示したが、これらは決して本発明に限定するものではなく、当該技術を熟知する者なら誰でも、本発明の精神と領域を脱しない範囲内で各種の変動や潤色を加えることができ、従って本発明の保護範囲は、特許請求の範囲で指定した内容を基準とする。
【符号の説明】
【0058】
102、104、106、108、110、112…ステップ


【特許請求の範囲】
【請求項1】
多孔質炭素材料の製造方法であって、
界面活性剤と炭素原材料を溶剤中に溶解して、有機テンプレート前駆体溶液を形成するステップと、
ケイ酸塩水溶液を準備するステップと、
前記有機テンプレート前駆体溶液を、前記ケイ酸塩水溶液に注入して、前記界面活性剤、前記炭素原材料と酸化ケイ素テンプレートを含む中間体を凝結するステップと、
前記中間体を加熱して、前記中間体を炭化するステップと、
前記酸化ケイ素テンプレートを除去して、多孔質炭素材料を形成するステップと、
を含むことを特徴とする多孔質炭素材料の製造方法。
【請求項2】
前記溶剤は、水、アルコール、又は、それらの組み合わせからなることを特徴とする請求項1に記載の多孔質炭素材料の製造方法。
【請求項3】
前記溶剤は、エタノール、又は、水とエタノールの組み合わせであることを特徴とする請求項2に記載の多孔質炭素材料の製造方法。
【請求項4】
前記ケイ酸塩水溶液は、2〜7のpHを有することを特徴とする請求項1に記載の多孔質炭素材料の製造方法。
【請求項5】
前記ケイ酸塩水溶液は、約2より低いpHを有することを特徴とする請求項1に記載の多孔質炭素材料の製造方法。
【請求項6】
前記ケイ酸塩水溶液は、約7より大きいpHを有することを特徴とする請求項1に記載の多孔質炭素材料の製造方法。
【請求項7】
前記溶剤は水で、前記有機テンプレート前駆体溶液は酸性で、前記ケイ酸塩水溶液は塩基性で、前記有機テンプレート前駆体溶液を、前記ケイ酸塩水溶液に注入して、前記中間体を凝結する前記ステップは、
前記酸性有機テンプレート前駆体溶液を、前記塩基性ケイ酸塩水溶液に注入して、混合溶液を形成するステップと、
前記混合溶液の前記pHを、約10に調整するステップと、
を含むことを特徴とする請求項1に記載の多孔質炭素材料の製造方法。
【請求項8】
前記ケイ酸塩水溶液を準備する前記ステップは、
ケイ酸塩を水に溶解して、前記ケイ酸塩水溶液を形成するステップと、
前記ケイ酸塩水溶液のpHを所定pHに調整するステップと、
前記ケイ酸塩水溶液の温度を、1℃〜99℃の設定温度に調整するステップと、
を含むことを特徴とする請求項1に記載の多孔質炭素材料の製造方法。
【請求項9】
前記界面活性剤は、ゼラチン、EO−POトリブロック共重合体、ポリエチレングリコール、又は、それらの組み合わせからなることを特徴とする請求項1に記載の多孔質炭素材料の製造方法。
【請求項10】
前記炭素原材料は、フェノール樹脂、架橋と非架橋ポリアクリロニトリル共重合体、スルホン酸化した架橋ポリスチレン共重合体、改良型架橋ポリスチレン共重合体、架橋スクロース、ポリ(フルフリルアルコール)、ポリ塩化ビニル、又は、それらの組み合わせからなることを特徴とする請求項1に記載の多孔質炭素材料の製造方法。
【請求項11】
前記加熱は、前記中間体を、750℃−850℃の温度下で、1時間−3時間加熱するステップを含むことを特徴とする請求項1に記載の多孔質炭素材料の製造方法。
【請求項12】
前記酸化ケイ素テンプレートを除去する前記ステップは、
強酸溶液、又は、強い塩基液により、前記酸化ケイ素テンプレートを除去するステップを含むことを特徴とする請求項1に記載の多孔質炭素材料の製造方法。
【請求項13】
多孔質炭素材料であって、
複数のマクロ孔、複数のメソ細孔と複数の微小孔を有する多孔質炭素構造からなり、前記の各マクロ孔は50ナノメートルより大きい直径を有し、前記の各メソ細孔は2ナノメートル〜50ナノメートルの直径を有し、前記の各微小孔は2ナノメートルより小さい直径を有し、前記多孔質炭素構造の比表面積は、グラム当たり、約700〜3000平方メートルで、
前記多孔質炭素構造の前記総比表面積に基づいて、前記マクロ孔の比表面積の分布比例は10−35%、前記メソ細孔の前記比表面積の分布比例は25−40%、前記微小孔の前記比表面積の分布比例は30−60%であることを特徴とする多孔質炭素材料。
【請求項14】
前記多孔質炭素構造の前記比表面積は、グラム当たり、約1200〜2500平方メートルであることを特徴とする請求項13に記載の多孔質炭素材料。
【請求項15】
前記多孔質炭素構造の前記総比表面積に基づいて、前記マクロ孔の比表面積の分布比例は15−29%、前記メソ細孔の前記比表面積の分布比例は30−36%、前記微小孔の前記比表面積の分布比例は37−54%であることを特徴とする請求項14に記載の多孔質炭素材料。

【図1】
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【図8】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−193100(P2012−193100A)
【公開日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−200612(P2011−200612)
【出願日】平成23年9月14日(2011.9.14)
【出願人】(390023582)財団法人工業技術研究院 (524)
【氏名又は名称原語表記】INDUSTRIAL TECHNOLOGY RESEARCH INSTITUTE
【住所又は居所原語表記】195 Chung Hsing Rd.,Sec.4,Chutung,Hsin−Chu,Taiwan R.O.C
【Fターム(参考)】