説明

多層ゴルフボール

【課題】アイアンを使用した目一杯の打撃でのより大きなスピン、および、ボール性能特性の1または複数について優れた性能を実現できる多層構造のゴルフボールを提供する。
【解決手段】単一層コアおよび二層カバーからなるゴルフボールが開示される。コアはゴム組成物から製造され、内側カバーは熱可塑性組成物から製造され、また、外側カバーはポリウレタンまたはポリ尿素の組成物から製造される。コア層の表面硬度が内側カバー層の材料硬度より大きく、好ましくは80ショアC以上である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、全般的にはゴルフボールに関し、より具体的には、単一層コアを二層カバーで包囲しコアの表面硬度が内側カバー層の材料硬度より大きなゴルフボールに関する。
この出願は、2007年6月22日の出願に係る米国特許出願第11/767,070号の部分継続出願であり、これは2004年2月6日の出願に係る米国特許出願第10/773,906号で現在では米国特許第7,255,656号になっているものの部分継続出願であり、これは2003年1月13日の出願に係る米国特許出願第10/341,574号で現在では米国特許第6,850,044号になっているものの部分継続出願であり、これは、2001年11月28日の出願に係る米国特許出願第10/002,641号で現在では米国特許第6,547,677号になっているものの部分継続出願であり、これらの内容は参照してここに組み入れる。
【背景技術】
【0002】
コアの硬度およびカバーの硬度を種々に改善した多層構造を具備するゴルフボールが、従来技術として多数開示されている。例えば、Iwamiの米国特許第6,987,159号(特許文献1)は、ソリッドコアおよびポリウレタンカバーを具備し、ソリッドコアの中央部分および表面部分の間のショアD硬度の差分が少なくとも15であり、ポリウレタンカバーが1.0mm以下の厚さ(t)を有し、35から60のショアD硬度(D)を有し、tおよびDの積が10から45である硬化されたウレタン組成物から製造される、ソリッドゴルフボールを開示している。
【0003】
Watanabe等の米国特許第7,175,542号(特許文献2)は、内側コア層および外側コア層を少なくとも具備するコア、コアを包囲する1または複数のカバー層、カバーの表面に形成された多数のディンプルからなるマルチピースソリッドゴルフボールを開示している。このゴルフボールは、(1)(JカバーのIS−C硬度)−(コアの中央のJIS−C硬度)≧27、(2)23≦(コアの表面のJIS−C硬度)−(コアの中央のJIS−C硬度)≦40、かつ(3)0.50≦[(コアの全体の撓み量)/内側コア層の撓み量)]≦0.75という条件を満たす点に特徴がある。
【0004】
Watanabeの米国特許第6,679,791号(特許文献3)は、ゴム系の弾性コア、表面に複数のディンプルを具備するカバー、ならびに、コアおよびカバーの間の、少なくとも1つの中間層を含むマルチピースゴルフボールを開示している。中間層はカバーより硬い樹脂材料から構成される。弾性コアの硬度は中央から表面に向かって径方向外側に徐々に大きくなる。弾性コアの中央および表面の硬度の差分は少なくとも18JIS−C単位である。
【0005】
Yamagishi等の米国特許第5、782,707号(特許文献4)は、ソリッドコア、中間層、およびカバーからなり、硬度がJIS−Cスケールの硬度計で測定され、コアの中央の硬度が75度までであり、コアの表面の硬度が85度までであり、コアの表面の硬度がコアの中央の硬度より8から20度大きく、中間層の硬度がコアの表面の硬度より少なくとも5度大きく、カバーの硬度が中間層の硬度より少なくとも5度小さい、スリーピースソリッドゴルフボールを開示している。
【0006】
他の例は、Iwamiの米国特許第6,686,436号、Higuchi等の米国特許第6,786,836号、およびHiguchi等の米国特許第7,226,367号等に見いだすことができる。
【0007】
この発明は、つぎの利点、すなわち、アイアンの目一杯のショットでのより大きなスピン、および、優れた全体的なボール性能特性の1または複数を実現できる新しい多層ゴルフボール構造を実現する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国特許第6,987,159号明細書
【特許文献2】米国特許第7,175,542号明細書
【特許文献3】米国特許第6,679,791号明細書
【特許文献4】米国特許第5、782,707号明細書
【発明の概要】
【0009】
1実施例において、この発明は、ソリッド単一層コア、内側カバー層、および外側カバー層からなるゴルフボールに向けられている。コアは、ゴム組成物から製造され、その直径が3.84cm(1.51インチ)から4.04cm(1.59インチ)でその表面硬度が80ショアC以上である。内側カバー層は熱可塑性組成物から製造され、その材料硬度がコアの表面硬度より小さい。外側カバー層は、ポリウレタンまたはポリ尿素の組成物から製造される。
【0010】
他の実施例において、この発明は、ソリッド単一層コア、内側カバー層、および外側カバー層からなるゴルフボールに向けられている。コアは、ゴム組成物から製造され、その直径が3.84cm(1.51インチ)から4.04cm(1.59インチ)で、その圧縮が60から80で、その中央硬度が70ショアC以下で、その表面硬度が80ショアC以上である。内側カバー層は、熱可塑性アイオノマー系組成物から製造され、その材料硬度がコアの表面硬度より小さい。外側カバー層は、ポリウレタンまたはポリ尿素の組成物から製造される。
【発明を実施するための形態】
【0011】
ソリッド単一層コア、および、コアを包囲する二層カバーを具備するゴルフボールが開示される。コアの直径は全般的には下限が1.40または1.45または1.50または1.51または1.53インチで上限が1.55または1.59または1.60または1.62または1.66インチの範囲であり、好ましくは、下限が1.51または1.53インチで上限が1.55または1.59インチの範囲である。とくに好ましい実施例においては、コアの直径は約1.53インチである。
【0012】
コアの中央硬度は好ましくは70ショアC以下、または65ショアC以下、あるいは、下限が30または40または45ショアCで上限が70または75または80ショアCの範囲内、あるいは、約60ショアCである。コアの表面硬度は好ましくは70ショアCより大きく、または75ショアC以上、または80ショアC以上、または80ショアCより大きく、または85ショアC以上、または85ショアCより大きく、または87ショアCi以上、または90ショアC以上である。具体的な実施例では、コアの表面硬度はコアの中央硬度と等しいか、それより大きい。他の具体的な実施例において、コアは、コアの表面硬度がコアの中央硬度より少なくとも10ショアC単位だけ大きい、正の硬度勾配を有する。さらに他の具体的な実施例において、コアは、コアの表面硬度がコアの中央硬度より少なくとも20ショアC単位だけ大きい、正の硬度勾配を有する。
【0013】
コアの表面硬度は、コアの対向する半球から取った多数の測定の平均から取得され、コアの分離線または表面欠陥、例えば穴または突起の上の測定を行わないように配慮する。硬度の測定はASTM D−2240「デュロメータによるゴムおよびプラスチックの凹み硬度」に従ってなされる。コアは曲面なので、表面硬度が読み取られる前にコアをデュロメータインデンタの真下に中心づけられるようにコアを扱う必要がある。0.1単位まで読みとることが可能な較正済みの1つのデジタルデュロメータをすべての硬度測定に用い、最大の読みが得られた後1秒後に硬度の読みを取得するように設定した。デジタルデュロメータはその脚部を平行にし自動スタンドの基部に取り付け、デュロメータ上の重量およびアタック速度がASTM D−2240に適合するようにしなければならない。
【0014】
コアの中央硬度はつぎの手順により得られる。内部直径がコアの直径より若干小さい半球状のホルダ中にコアをやさしく押し込み、コアがホルダの半球部分に静止して保持され、同時にコアの幾何中心面が露出されるようになす。コアは摩擦によりホルダ中に固定され、切断および研磨ステップ中に動かないようにする。ただし、摩擦が過剰でなくコアの自然な形状が変形しないようになす。コアの分離線がホルダの頂部とおよそ平行になるようにコアを固定する。コアを固定する前にコアの直径をこの配位に対して90°で測定する。また、ホルダの底からコアの頂部までの距離を測定して将来の較正のための基準点を得る。コアの露出された幾何中心の若干上で、コアがこのステップ中にホルダ内で動かないようにしながら、帯ノコまたは他の適切な切断ツールを用いて、大まかに切断する。ホルダ内に依然として保持されているコアの残りの部分が表面研磨機のベース板に固定される。露出されている「粗い」コア表面が平滑で平坦な表面に研磨され、コアの幾何中心が現れるようにし、この幾何中心はホルダの底からコアの露出表面までの高さを測定して検証できる。これによりコアのオリジナルの高さのちょうど半分が、+−0.004インチの範囲内で除去されたことを確実にする。コアをホルダ内に保持して、コアの中心を芯出し定規で見いだし、注意して印付けし、この中心印で硬度を測定する。
【0015】
コアは好ましくはゴム組成物、または高弾力性の熱可塑性プラスチック、例えば高度に中和されたポリマー(「HNP」)組成物から製造される。とくに適切な熱可塑性ポリマーは、E.I.DuPont de Nemours and Companyから商業的に入手可能な、Surlyn(商標)アイオノマー、Hytel(商標)熱可塑性ポリエステルエラストマー、およびDuPont(商標)HPF1000およびHPF2000の商標で販売されているアイオノマー材料;ExxonMobile Chemical Companyから商業的に入手可能なIotek(商標)アイオノマー;およびArkema Incから商業的に入手可能なPebax(商標)熱可塑性ポリエーテルブロックアミドを含む。
【0016】
コアを形成するのに使用して好適なHNP組成物は、HNP、オプションの添加物、フィラー、および/またはメルトフロー修正剤を有する。適切なHNPは、α,β−エチレン系不飽和モノ−またはジカルボン酸のホモポリマーまたはコポリマーの塩、およびこれらの組み合わせであり、これはオプションとして軟化用モノマーを含む。酸ポリマーは適切なカチオン源によって70%以上、100%を含むまで、中和される。適切な添加剤およびフィラーは、例えば、化学膨張および発泡剤、光学的明色化剤、着色剤、蛍光剤、白色剤、UV吸収剤、光安定剤、消泡剤、処理助剤、雲母、タルク、ナノフィラー、酸化防止剤、安定化剤、軟化剤、香料成分、可塑剤、衝撃修正剤、酸コポリマーワックス、界面活性剤;無機フィラー、例えば、酸化亜鉛、二酸化チタン、酸化錫、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、硫酸バリウム、硫酸亜鉛、炭酸カルシウム、炭酸亜鉛、炭酸バリウム、雲母、タルク、クレイ、シリカ、鉛シリケート、その他;高比重金属粉末フィラー、例えば、タングステン粉末、モリブデン粉末、その他;リグランド、すなわち、粉砕してリサイクルしたコア材料;およびナノフィラーを含む。適切なメルトフロー修正剤は、例えば、脂肪酸およびその塩、ポリアミド、ポリエステル、ポリアクリレート、ポリウレタン、ポリエーテル、ポリ尿素、多価アルコール、およびそれらの組み合わせを含む。適切なHNP組成物は、例えば、その内容を参照してここに組み入れる、米国特許出願公開第2006/0128904号に開示されているような部分的に中和されたアイオノマーをHNPにブレンドしたものや、HNPの付加的な熱可塑性または熱硬化性材料とのブレンドも含み、これはそれに限定されないがアイオノマー、酸コポリマー、エンジニアリング熱可塑性材料、脂肪酸/塩ベースの高度に中和されたポリマー、ポリブタジエン、ポリウレタン、ポリエステル、熱可塑性エラストマー、および他の慣用的なポリマー材料を含む。コア層材料としてとくに適切なものは、E.I.DuPont de Nemours and Companyから商業的に入手可能なDuPont(商標)HPF1000である。適切なHNP組成物は、例えば米国特許第6,653,382号、同第6,756,436号、同第6,777,472号、同第6,894,098号、同第6,919,393号、および同第6,953,820号にさらに開示されており、その内容は参照してここに組み入れる。
【0017】
コアを製造するために使用して好適なゴム組成物は、ベースゴム、架橋剤、フィラー、および共架橋剤または開始剤を有する。典型的なベースゴム材料は天然ゴム、合成ゴムおよびこれらの組み合わせを含む。ベースゴムは好ましくはポリブタジエンまたはポリブタジエンと他のエラストマーとの混合物である。cis−構造が少なくとも40%の1,4−ポリブタジエンがとくに好ましい。より好ましくは、ベースゴムは高ムーニー粘度ゴムである。より少ない量の他の熱可塑性材料をベースゴムに組み入れても良い。そのような材料は、例えば、cis−ポリイソプレン、trans−ポリイソプレン、バラタ、ポリクロロプレン、ポリノルボルネン、ポリオクテナマー、ポリペンテナマー、ブチルゴム、EPR、EPDM、スチレン−ブタジエン、および類似の熱硬化性材料を含む。架橋剤は、典型的には、不飽和脂肪酸またはモノカルボン酸の金属塩、例えば、亜鉛、アルミニウム、ナトリウム、リチウム、ニッケル、カルシウム、またはマグネシウムの塩、例えば、(メタ)アクリレート塩を含む。好ましい架橋剤は、亜鉛アクリレート、亜鉛ジアクリレート(ZDA)、亜鉛メタクリレート、および亜鉛ジメタクリレート(ZDMA)およびこれらの混合物を含む。架橋剤は、弾性ポリマー要素中のポリマーチェーンの一部を架橋するに足る量だけ含まれていなければならない。架橋剤は一般にはゴム組成物中に15から30phr、または19から25phr、または20から24phrの量だけ存在する。例えば、架橋剤の種類および量を変化させて架橋の量を調整して、所望の圧縮を実現してよい。開始剤は、硬化サイクルで分解される任意の重合開始剤であってよく、これに限定されないが、ジクミルペルオキシド、1,1−ジ−(t−ブチルペルオキシ)、3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、a−aビス(t−ブチルペルオキシ)ジイソプロピルベンゼン、2,5−ジ−(t−ブチルペルオキシ)−2,5−ジメチルヘキサン、ジ−t−ブチルペルオキシド、n−ブチル−4,4−ビス(t−ブチルペルオキシ)バレレート、ラウリルペルオキシド、ベンゾイルペルオキシド、t−ブチルヒドロペルオキシド等およびこれらの混合物を含む。
【0018】
ゴム組成物はオプションとして1または複数の酸化防止剤を含む。酸化防止剤は、ゴムの酸化による劣化を排除ないし防止する化合物である。適切な酸化防止剤は、例えば、無水キノリン酸化防止剤、アミン型酸化防止剤、およびフェノール型の酸化防止剤である。いくつかの酸化防止剤はフリーラジカル捕捉剤としても働き、そのため、酸化防止剤がゴム組成物中に含まれるときに、使用される開始剤の量は、ここで開示される量と同じくらい多いか、それより多い。適切な酸化防止剤は、例えば、ジヒドロキノリン酸化防止剤、アミン型酸化防止剤、およびフェノール型の酸化防止剤である。
【0019】
ゴム組成物は、また、コアまたはカバーの密度および/または比重を調整するために1または複数のフィラーを含んでも良い。フィラーは典型的にはポリマーまたは無機物の粒子である。フィラーの例は、沈降水和シリカ、クレー、タルク、アスベスト、ガラス繊維、アラミド繊維、マイカ、メタ珪酸カルシウム、硫酸バリウム、硫化亜鉛、リトポン、ケイ酸塩、炭化珪素、珪藻土、ポリ塩化ビニル、炭酸塩(例えば炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム)、金属(例えば、チタン、タングステン、アルミニウム、ビスマス、ニッケル、モリブデン、鉄、鉛、銅、ホウ素、コバルト、ベリリウム、亜鉛、錫)、金属合金(例えば、スチール、黄銅、青銅、炭化ホウ素ホイスカー、炭化タングステンウィスカー)、酸化物(例えば、酸化亜鉛、酸化鉄、酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム)、粒子炭素質材料(例えば、グラファイト、カーボンブラック、コットンフロック、天然ビチューメン、セルロースフロック、レザー繊維)、マイクロバルーン(例えば、ガラス、セラミック)、フライアッシュ、リグリンド(すなわち粉砕されて再利用されるコア材料)、ナノフィラーおよびこれらの組み合わせを含む。ゴム組成物中に存在する粒状材料の量は、典型的には、重量基準でベースゴム100部に対して5部または10部の下限および重量基準でベースゴム100部に対して30部または50部または100部の上限の範囲である。フィラー材料は二重の機能を持つフィラー、例えば、酸化亜鉛(フィラー/酸捕捉剤として使用されてよい)および二酸化チタン(フィラー/光沢剤として使用されてよい)であってよい。さらに適切なフィラーおよび添加剤の例は、これに限定されないが、米国特許出願公開2003/0225197に開示されているものを含み、その内容は参照してここに組み入れる。
【0020】
ゴム組成物は、また、処理助剤、処理油、可塑剤、着色剤、蛍光剤、化学吹き出し剤および発泡剤、脱泡剤、安定剤、軟化剤、衝撃修正剤、フリーラジカル捕捉剤、促進剤、スコーチ遅延剤、その他から選択された1または複数の添加剤を含んでも良い。ゴム組成物中に存在する添加物(1または複数種類)の量は、典型的には、重量基準でベースゴム100部に対して0部の下限および重量基準でベースゴム100部に対して20部または50部または100部または150部の上限の範囲である。
【0021】
ゴム組成物はオプションの柔軟化・高速化剤を含んでもよい。ここで使用されるように「柔軟化・高速化剤」(soft and fast agent)は、柔軟化・高速化剤なしに準備した場合に較べて、コアを1)一定のCORの下でより柔らかく(より小さな圧縮)し、または2)等しい圧縮でより大きなCORを伴うようにする、任意の化合物またはそれらのブレンドを意味する。好ましくは、ゴム組成物は約0.05phrから約10.0phrの柔軟化・高速化剤を含有する。1実施例において、柔軟化・高速化剤は約0.05phrから約3.0pr、または約0.05phrから約2.0phr、または約0.05phrから約1.0phrの範囲で存在する。他の実施例では、柔軟化・高速化剤は約2.0phrから約5.0pr、または約2.35phrから約4.0phr、または約2.35phrから約3.0phrの範囲で存在する。代替的な高濃度の実施例では、柔軟化・高速化剤は約5.0phrから約10.0pr、または約6.0phrから約9.0phr、または約7.0phrから約8.0phrの範囲で存在する。他の実施例では、柔軟化・高速化剤は約2.6phrの量だけ存在する。
【0022】
適切な柔軟化・高速化剤は、これに限定されないが、有機硫黄または金属含有有機硫黄化合物、無機硫黄化合物、第VIA族の化合物、硫黄または金属を含有しない置換または非置換芳香族有機化合物、芳香族有機金属化合物、またはこれらの混合物を含み、有機硫黄化合物は、モノ、ジ、およびポリスルフィド、チオール、またはメルカプト化合物を含む。柔軟化・高速化剤化合物は、有機硫黄化合物および無機硫化物化合物のブレンドであってもよい。
【0023】
この発明の適切な柔軟化・高速化剤は、これに限定されないが以下の一般式を有するものを含む。
【化1】

式中、R〜Rはいずれの順番であってもよく、C〜Cアルキル基;ハロゲン基;チオール基(−SH)、カルボキシレート基;スルホネート基;、及び水素であってよく、また、ペンタフルオロチオフェノール;2−フルオロチオフェノール;3−フルオロチオフェノール;4−フルオロチオフェノール;2,3−フルオロチオフェノール;2,4−フルオロチオフェノール;3,4−フルオロチオフェノール;3,5−フルオロチオフェノール;2,3,4−フルオロチオフェノール;3,4,5−フルオロチオフェノール;2,3,4,5−テトラフルオロチオフェノール;2,3,5,6−テトラフルオロチオフェノール;4−クロロテトラフルオロチオフェノール;ペンタクロロチオフェノール;2−クロロチオフェノール;3−クロロチオフェノール;4−クロロチオフェノール;2,3−クロロチオフェノール;2,4−クロロチオフェノール;3,4−クロロチオフェノール;3,5−クロロチオフェノール;2,3,4−クロロチオフェノール;3,4,5−クロロチオフェノール;2,3,4,5−テトラクロロチオフェノール;2,3,5,6−テトラクロロチオフェノール;ペンタブロモチオフェノール;2−ブロモチオフェノール;3−ブロモチオフェノール;4−ブロモチオフェノール;2,3−ブロモチオフェノール;2,4−ブロモチオフェノール;3,4−ブロモチオフェノール;3,5−ブロモチオフェノール;2,3,4−ブロモチオフェノール;3,4,5−ブロモチオフェノール;2,3,4,5−テトラブロモチオフェノール;2,3,5,6−テトラブロモチオフェノール;ペンタヨードチオフェノール;2−ヨードチオフェノール;3−ヨードチオフェノール;4−ヨードチオフェノール;2,3−ヨードチオフェノール;2,4−ヨードチオフェノール;3,4−ヨードチオフェノール;3,5−ヨードチオフェノール;2,3,4−ヨードチオフェノール;3,4,5−ヨードチオフェノール;2,3,4,5−テトラヨードチオフェノール;2,3,5,6−テトラヨードチオフェノール;及びこれらの亜鉛塩;これらの非金属塩、例えばペンタクロロチオフェノールのアンモニア塩;マグネシウムペンタクロロチオフェノール;コバルトペンタクロロチオフェノール;およびこれらの混合物であってよい。好ましくはハロゲン化した有機硫黄化合物はペンタクロロチオフェノールであり、これは純粋な形態で市場から入手可能であり、又はペンタクロロチオフェノールを45パーセント(2.4部のPCTPに相当する)付加した硫黄化合物を含むクレイをベースとするキャリヤであるSTRUKTOL(登録商標)の商標名で入手可能である。STRUKTOL(商標)はオハイオ州ストウのStruktolCompanyofAmericaから商業的に入手可能である。PCTPは商業的にカリフォルニア州サンフランシスコのeChinachemから純粋な形態で入手可能であり、サンフランシスコのeChinachemから塩の形態で入手可能である。最も好ましくは、ハロゲン化した有機硫黄化合物はペンタクロロチオフェノールの亜鉛塩であり、これはサンフランシスコのeChinachemから商業的に入手可能である。付加的な例は米国特許第7,148,279号に開示されており、その内容は参照してここに組み入れる。
【0024】
この発明を参照する際にはここで使用されるように、用語「有機硫黄化合物」は、炭素、水素およびイオウを含有する任意の化合物を称し、ここで、硫黄は少なくとも1個の炭素に直接に結合する。ここで使用されるように、用語「イオウ化合物」は、元素状イオウ、高分子イオウ、またはこれらの組合せである化合物を意味する。さらに、「元素状イオウ」はSの環構造体を称し、「高分子イオウ」は元素状イオウに対して少なくとも1個の追加のイオウを含む構造体であることを理解すべきである。
【0025】
柔軟化・高速化剤の付加的に適切な例は、これに限定されないが、4,4’−ジフェニルジスルフィド;4,4’−ジトリルジスルフィド;2,2’−ベンズアミドジフェニルジスルフィド;ビス(2−アミノフェニル)ジスルフィド;ビス(4−アミノフェニル)ジスルフィド;ビス(3−アミノフェニル)ジスルフィド;2,2’−ビス(4−アミノナフチル)ジスルフィド;2,2’−ビス(3−アミノナフチル)ジスルフィド;2,2’−ビス(4−アミノナフチル)ジスルフィド;2,2’−ビス(5−アミノナフチル)ジスルフィド;2,2’−ビス(6−アミノナフチル)ジスルフィド;2,2’−ビス(7−アミノナフチル)ジスルフィド;2,2’−ビス(8−アミノナフチル)ジスルフィド;1,1’−ビス(2−アミノナフチル)ジスルフィド;1,1’−ビス(3−アミノナフチル)ジスルフィド;1,1’−ビス(3−アミノナフチル)ジスルフィド;1,1’−ビス(4−アミノナフチル)ジスルフィド;1,1’−ビス(5−アミノナフチル)ジスルフィド;1,1’−ビス(6−アミノナフチル)ジスルフィド;1,1’−ビス(7−アミノナフチル)ジスルフィド;1,1’−ビス(8−アミノナフチル)ジスルフィド;1,2’−ジアミノ−1,2’−ジチオジナフタレン;2,3’−ジアミノ−1,2’−ジチオジナフタレン;ビス(4−クロロフェニル)ジスルフィド;ビス(2−クロロフェニル)ジスルフィド;ビス(3−クロロフェニル)ジスルフィド;ビス(4−ブロモフェニル)ジスルフィド;ビス(2−ブロモフェニル)ジスルフィド;ビス(3−ブロモフェニル)ジスルフィド;ビス(4−フルオロフェニル)ジスルフィド;ビス(4−イオドフェニル)ジスルフィド;ビス(2,5−ジクロロフェニル)ジスルフィド;ビス(3,5−ジクロロフェニル)ジスルフィド;ビス(2,4−ジクロロフェニル)ジスルフィド;ビス(2,6−ジクロロフェニル)ジスルフィド;ビス(2,5−ジブロモフェニル)ジスルフィド;ビス(3,5−ジブロモフェニル)ジスルフィド;ビス(2−クロロ−5−ブロモフェニル)ジスルフィド;ビス(2,4,6−トリクロロフェニル)ジスルフィド;ビス(2,3,4,5,6−ペンタクロロフェニル)ジスルフィド;ビス(4−シアノフェニル)ジスルフィド;ビス(2−シアノフェニル)ジスルフィド;ビス(4−ニトロフェニル)ジスルフィド;ビス(2−ニトロフェニル)ジスルフィド;2,2’−ジチオベンゾイックエチル;2,2’−ジチオベンゾイックメチル;2,2’−ジチオ安息香酸;4,4’−ジチオベンゾイックエチル;ビス(4−アセチルフェニル)ジスルフィド;ビス(2−アセチルフェニル)ジスルフィド;ビス(4−ホルミルフェニル)ジスルフィド;ビス(4−カルバモイルフェニル)ジスルフィド;1,1’−ジナフチルジスルフィド;2,2’−ジナフチルジスルフィド;1,2’−ジナフチルジスルフィド;2,2’−ビス(1−クロロジナフチル)ジスルフィド;2,2’−ビス(1−ブロモナフチル)ジスルフィド;1,1’−ビス(2−クロロナフチル)ジスルフィド;2,2’−ビス(1−シアノナフチル)ジスルフィド;2,2’−ビス(1−アセチルナフチル)ジスルフィド等の;またはこれらの混合物がある。好ましい有機イオウ化合物は、ジフェニルジスルフィド、4,4’−ジトリルジスルフィド、または2,2’−ベンズアミドジフェニルジスルフィド、またはこれらの混合物である。より好ましい有機硫黄化合物は、4,4’−ジトリルジスルフィドである。
【0026】
他の実施例において、金属含有有機硫黄化合物をこの発明に従って使用してよい。適切な金属含有有機硫黄化合物は、これに限定されないが、ジエチルジチオカルバメート、ジアミルジチオカルバメート、およびジメチルジチオカルバメートのカドミウム、銅、鉛、およびテルリウム類似体、またはこの混合物である。付加的な例は米国特許第7,005,479号に開示されており、その内容は参照してここに組み入れる。
【0027】
硫黄または金属を含まない、適当な置換または無置換の芳香族有機成分は、4,4’−ジフェニルアセチレン、アゾベンゼン、またはこれらの混合物を含むが、これらに制限されない。該芳香族有機基は、好ましくはそのサイズにおいて、C〜C20なる範囲にあり、またより好ましくはC〜C10なる範囲にある。適当な無機硫化物成分は、硫化チタン、硫化マンガン、および鉄、カルシウム、コバルト、モリブデン、タングステン、銅、セレン、イットリウム、亜鉛、錫、およびビスマスの類似の硫化物を包含するが、これらに限定されない。
【0028】
また、置換または非置換芳香族有機化合物も柔軟化・高速化剤である。適切な置換または非置換芳香族有機成分としては、限定するものではないが、式(R−R−M−R−(Rを有する成分があり、式中、RおよびRは、各々、水素、または置換または非置換のC〜C20線状、枝分れまたは環状のアルキル、アルコキシまたはアルキルチオ基、または単環、多環または縮合環のC〜C24芳香族基であり;xおよびyは、各々、0〜5の整数であり;RおよびRは、各々、単環、多環または縮合環のC〜C24芳香族基から選ばれ;Mは、アゾ基または金属成分である。RおよびRは、各々、好ましくはC〜C10芳香族基から選ばれ、より好ましくはフェニル、ベンジル、ナフチル、ベンズアミドおよびベンゾチアジルから選ばれる。RおよびRは、各々、好ましくは、置換または非置換のC〜C10線状、枝分れまたは環状のアルキル、アルコキシまたはアルキルチオ基、またはC〜C10芳香族基から選ばれる。R、R、RまたはRが置換されている場合、その置換基としては、1種以上の以下の置換基があり得る:ヒドロキシおよびその金属塩;メルカプトおよびその金属塩;ハロゲン;アミノ、ニトロ、シアノおよびアミド;エステル類、酸類およびその金属塩を含むカルボキシル;シリル;アクリレート類およびその金属塩;スルホニルまたはスルホンアミド;およびホスフェート類およびホスファイト類。Mが金属成分である場合、Mは、当業者に入手し得る任意の適切な元素状金属であり得る。典型的には、金属は、遷移金属であるが、好ましくは、テルルまたはセレニウムである。1実施例において、芳香族有機化合物は、金属を実質的に含まず、他方、他の実施例において、芳香族有機化合物は、金属を完全に含まない。
【0029】
柔軟化・高速化剤は、また第VIA族成分を含むこともできる。元素硫黄および重合体硫黄は、例えばオハイオ州、シャルドンのElastochem社から、市販品として入手できる。硫黄触媒化合物の例は、PB(RM−S)−80元素硫黄およびPB(CRST)−65重合体硫黄を含み、これら各々は、Elastochem社から入手できる。「TELLOY」という商品名のテルル触媒の例および「VANDEX」という商品名のセレン触媒の例は、各々RT Vanderbilt社から市販品として入手できる。
【0030】
他の適切な柔軟化・高速化剤は、これに限定されないが、ヒドロキノン、ベンゾキノン、キンヒドロン、カテコール、およびレソルシノールを含む。適切なヒドロキノンは、さらに、例えば、米国特許出願公開第2007/0213440号に開示されている。適切なベンゾキノンは、さらに、例えば、米国特許出願公開第2007/0213442号に開示されている。適切なキンヒドロンは、さらに、例えば、米国特許出願公開第2007/0213441号に開示されている。適切なカテコールは、さらに、例えば、米国特許出願公開第2007/0213444号に開示されている。これら文献の内容は参照してここに組み入れる。
【0031】
具体的な実施例において、柔軟化・高速化剤はつぎの化学式で表される1または複数の化合物およびその水和物から選択されたカテコールである。
【化2】

ここで、R、R、RおよびRは、水素、ハロゲン基(F,Cl、Br、I)、アルキル基、カルボキシル基(−COOH)およびカルボキシル基の金属塩(例えば−COO)およびそのエステル(−COOR)、アセテート基(−CHCOOH)およびそのエステル(−CHCOOR)、ホルミル基(−CHO)、アシル基(−COR)、アセチル基(−COCH)、ハロゲン化カルボニル基(−COX)、スルホ基(−SOH)およびそのエステル(−SOR)、ハロゲン化スルホニル基(−SOX)、スルフィノ基(−SOH)、アルキルスルフィニル基(−SOR)、カルバモイル基(−CONH)、ハロゲン化アルキル基、シアノ基(−CN)、アルコキシ基(−OR)、ヒドロキシ基(−OH)およびその金属塩(例えば−O)、アミノ基(−NH)、ニトロ基(−NO)、アリール基(例えばフェニル、トリル等)、アリールオキシ基(例えばフェノキシ等)、アリールアルキル[例えばクミル(−C(CHフェニル)、ベンジル(−CHフェニル)]、ニトロソ基(−NO)、アセトアミド基(−NHCOCH)、およびビニル基(−CH=CH)からなるグループから相互に独立に選択される。
【0032】
他の具体的な実施例において、柔軟化・高速化剤はつぎの化学式で表される1または複数の化合物およびその水和物から選択されたレソルシノールである。
【化3】

ここで、R、R、RおよびRは、水素、ハロゲン基(F,Cl、Br、I)、アルキル基、カルボキシル基(−COOH)およびカルボキシル基の金属塩(例えば−COO)およびそのエステル(−COOR)、アセテート基(−CHCOOH)およびそのエステル(−CHCOOR)、ホルミル基(−CHO)、アシル基(−COR)、アセチル基(−COCH)、ハロゲン化カルボニル基(−COX)、スルホ基(−SOH)およびそのエステル(−SOR)、ハロゲン化スルホニル基(−SOX)、スルフィノ基(−SOH)、アルキルスルフィニル基(−SOR)、カルバモイル基(−CONH)、ハロゲン化アルキル基、シアノ基(−CN)、アルコキシ基(−OR)、ヒドロキシ基(−OH)およびその金属塩(例えば−O)、アミノ基(−NH)、ニトロ基(−NO)、アリール基(例えばフェニル、トリル等)、アリールオキシ基(例えばフェノキシ等)、アリールアルキル[例えばクミル(−C(CHフェニル)、ベンジル(−CHフェニル)]、ニトロソ基(−NO)、アセトアミド基(−NHCOCH)、およびビニル基(−CH=CH)からなるグループから相互に独立に選択される。
【0033】
柔軟化・高速化剤は、1または複数のカテコールの組み合わせであって、その各々は、その各々は上述の化学式で表される化合物から独立に選択されるもの;少なくとも1つのカテコールと1または複数の非カテコール性柔軟化・高速化剤との組み合わせであって、当該非カテコール性柔軟化・高速化剤はこれに限定されないがヒドロキノン、ベンゾキノン、キンヒドロンおよびレソルシノールであるもの;または、少なくとも1つのレソルシノールと1または複数の非レソルシノール性柔軟化・高速化剤との組み合わせであって、この当該非レソルシノール性柔軟化・高速化剤はこれに限定されないがヒドロキノン、ベンゾキノン、キンヒドロンおよびカテコールであるものであってよい。
【0034】
柔軟化・高速化剤は、1または複数のカテコールの組み合わせであって、その各々は、その各々は上述の化学式で表される化合物から独立に選択されるもの;少なくとも1つのカテコールと1または複数の非カテコール性柔軟化・高速化剤との組み合わせであって、当該非カテコール性柔軟化・高速化剤はこれに限定されないがヒドロキノン、ベンゾキノン、キンヒドロンおよびレソルシノールであるもの;または、少なくとも1つのレソルシノールと1または複数の非レソルシノール性柔軟化・高速化剤との組み合わせであって、この当該非レソルシノール性柔軟化・高速化剤はこれに限定されないがヒドロキノン、ベンゾキノン、キンヒドロンおよびカテコールであるものであってよい。
【0035】
柔軟化・高速化剤がカテコール(1または複数)およびレソルシノールを含む場合、カテコールおよびレソルシノールは、ゴム組成物中に重量基準でベースゴム100部に対して少なくとも0.1部または少なくとも0.15部または少なくとも0.2部の量だけ、あるいは、重量基準でベースゴム100部に対して0.1部または0.15部または0.25部または0.3部または0.375部の下限、および重量基準でベースゴム100部に対して0.5部または1部または1.5部または2部または3部の上限の範囲の量だけ存在する。
【0036】
具体的な実施例では、柔軟化・高速化剤はカテコールを有し、ベースゴム100部に対して重量基準で測定されたゴム組成物中のカテコールの量(PCATECHOL)の、ベースゴム100部に対して重量基準で測定されたゴム組成物中の開始剤の量(PINITIATOR)に対する比(PCATECHOL/PINITIATOR)は0.05から2である。他の実施例では、PCATECHOL/PINITIATORは少なくとも0.05であり、かつ0.5未満である。他の実施例では、PCATECHOL/PINITIATORは少なくとも0.2であり、かつ0.5未満である。他の実施例では、PCATECHOL/PINITIATORは少なくとも0.25であり、かつ0.5未満である。さらに他の実施例では、PCATECHOL/PINITIATORは、0.05または0.2または0.25の下限および0.4または0.45または0.5または2の上限の範囲内である。
【0037】
他の具体的な実施例では、柔軟化・高速化剤はカテコールを有し、ベースゴム100部に対して重量基準で測定されたゴム組成物中のカテコールの量(PRESORCINOL)の、ベースゴム100部に対して重量基準で測定されたゴム組成物中の開始剤の量(PINITIATOR)に対する比(PRESORCINOL/PINITIATOR)は0.05から2である。他の実施例では、PRESORCINOL/PINITIATORは少なくとも0.05であり、かつ0.5未満である。他の実施例では、PRESORCINOL/PINITIATORは少なくとも0.2であり、かつ0.5未満である。他の実施例では、PRESORCINOL/PINITIATORは少なくとも0.25であり、かつ0.5未満である。さらに他の実施例では、PRESORCINOL/PINITIATORは、0.05または0.2または0.25の下限および0.4または0.45または0.5または2の上限の範囲内である。
【0038】
コアを形成するのに使用して好適な商業的に入手可能なポリブタジエンの例は、これに限定されないが、LANXESS社から商業的に入手可能なBUNA CB23;Dow Chemical社から商業的に入手可能なSE BR−1220;Polimeri Europa社から商業的に入手可能なEuroprene(商標)NEOCIS(商標)BR40およびBR60;UBE Industry社から商業的に入手可能なUBEPOL(商標)BR;およびJapan Synthetic Rubber社から商業的に入手可能なBR 01を含む。
【0039】
ベースゴム、架橋剤、フィラー、共架橋剤、開始剤、および添加剤の適切な種類および量については、例えば、米国特許出願公開第2004/0214661号、同第2003/0144087号、および同第2003/0225197号、ならびに、米国特許第6,566,483号、同第6,695,718号、および同第6,939,907号にさらに十分に説明されており、その内容については参照してここに組み入れる。
【0040】
コアは、金属、堅固なプラスチック、高強度有機または無機フィラーまたは繊維で強化されたポリマー、およびこれらのブレンドならびに複合材から選択された低変形材料から製造して良い。適切な低変形材料は米国特許出願公開第2005/0250600号に開示されたものも含み、その内容は参照してここに組み入れる。
【0041】
コアは熱硬化性または熱可塑性材料、例えば、ポリウレタン、ポリ尿素、部分的にまたは十分に中和されたアイオノマー、熱硬化性ポリジエンゴム、例えば、ポリブタジエン、ポリイソプレン、エチレンプロピレンジエンモノマーゴム、エチレンプロピレンゴム、天然ゴム、バラタ、ブチルゴム、ハロブチルゴム、スチレンブタジエンゴム、または任意のスチレンブロックコポリマー、例えば、スチレンエチレンブタジエンスチレンゴム等、メタローセンまたは他のシングルサイト触媒ポリオレフィン、ポリウレタンコポリマー、例えば、シリコーンを伴うものを含み、ただし、この材料は所望の反発係数(「COR」)を満たす必要がある。
【0042】
コアを形成するのに適切な付加的な材料は、米国特許第7,300,364号に開示されたコア組成物を含み、その内容は参照してここに組み入れる。例えば、センタおよびコアの適切な材料は有機脂肪酸およびその塩、金属カチオン、または双方の組み合わせで中和されたHNPを含む。有機脂肪酸およびその塩により中和したHNPに加えて、コア組成物は、少なくとも約40の弾力性インデックス(resillience index)を有する少なくとも1つのゴム材料を含んでよい。好ましくは、弾力性インデックスは少なくとも約50である。したがって、弾力性ゴルフボールを製造するポリマーはこの発明に好適であり、これに限定されないが、テキサス州オレンジのBayer社から商業的に入手できるCB23、CB22や、イタリアのEnichem社から商業的に入手できるBR60やオハイオ州アクロンのGoodyear社から商業的に入手できる1207Gを含む。さらに、非加硫ゴム、例えば、ポリブタジエンは、この発明にしたがって準備されたゴルフボールにおいて、約40および約80の間のムーニー粘度を有し、より好ましくは約45から約65、最も好ましくは約45から約55の間のムーニー粘度を有する。ムーニー粘度は典型的にはASTM−D1646に従って測定される。
【0043】
コアは、内側カバー層および外側カバー層を有するカバーにより包まれる。この発明によれば、外側コア層の表面硬度が内側カバー層の材料硬度より大きい。具体的な実施例においては、外側コア層の表面硬度は、内側カバー層および外側カバー層の双方より大きい。
【0044】
「材料硬度」と「ゴルフボールの表面で直接に測定した硬度」とは、基本的に異なることを理解されたい。この説明の範囲では、材料硬度は、ASTM−D2240によって測定され、一般に、硬度を測定すべき材料から形成させた平坦な「スラブ」または「ボタン」の硬度を測定するものである。ゴルフボール(または、他の球体表面)上で直接測定するときの硬度は、典型的には異なる硬度値を生ずる。硬度値におけるこの相違は、限定するものではないが、ボール構造(即ち、コアのタイプ、コアおよび/またはカバー層の数等)、ボール(または球体)直径、および隣接各層の素材組成のようないくつかの要因に由来する。また、2つの測定方法は直線的には相関せず、従って、一方の硬度値が他方の硬度値と容易に相関し得ないことも理解すべきである。内側カバー層材料および外側カバー層材料を含むカバー材料についてここで与えられる硬度値はASTM D2240で測定される材料硬度値であり、すべての値は、50%の相対湿度、および23°Cで10日のエージングで報告される。
【0045】
内側カバー層の材料硬度は好ましくは90ショアC以下、または85ショアC以下、あるいは80ショアCから90ショアCであり、あるいは、その材料硬度は、下限が70または75または80または82ショアCで上限が85または86または90ショアCの範囲内である。内側カバー層の厚さは好ましくは下限が0.010または0.015または0.020または0.030インチで上限が0.035または0.045または0.080または0.120インチの範囲内である。
【0046】
外側カバー層の材料硬度は好ましくは85ショアC以下である。外側カバー層の厚さは下限が0.010または0.015または0.025インチで上限が0.035または0.040または0.055または0.080インチの範囲内である。
【0047】
また、アイオノマーの熱可塑性エラストマーとのブレンドもカバー層を製造するのに適切である。適切なアイオノマーのカバー材料は例えば米国特許第6,653,382号、同第6,756,436号、同第6,894,098号、同第6,919,393号、および同第6,953,820号にさらに開示されており、その内容は参照してここに組み入れる。適切なポリエチレンカバー材料はさらに米国特許第5,334,673号、同第6,506,851号、および同第6,756,436号に開示されており、その内容は参照してここに組み入れる。適切なポリ尿素カバー材料はさらに米国特許第5,484,870号および同第6,835,794号に開示されており、その内容は参照してここに組み入れる。適切なポリウレタン−尿素ハイブリッドはウレタンまたは尿素セグメントを有するブレンドまたはコポリマーであり、それは米国特許出願公開第2007/0117923号に開示される通りであり、その内容は参照してここに組み入れる。他の適切なカバー材料は、例えば、米国特許出願公開第2005/0164810号、米国特許第5,919,100号ならびにPCT刊行物WO00/23519および同WO00/29129に開示されており、これらの内容は参照してここに組み入れる。
【0048】
内側カバー層は、1のアイオノマーまたは2以上のアイオノマーのブレンドから好ましくは製造される。具体的な実施例において、内側カバー層は高酸のアイオノマーを有する組成物から製造される。この説明の範囲では、「高酸アイオノマー」は16wt%を超える酸含量を具備するアイオノマーを含む。とくに適切な高酸アイオノマーはE.I.DuPont de Nemours and Companyから商業的に入手可能な、Surlyn8150(商標)である。Surlyn8150はエチレンとメタクリル酸のコポリマーで酸含量が19wt%でナトリウムで45%中和されている。他の具体的な実施例において、内側カバー層は、高酸アイオノマーと無水マレイン酸グラフト化非アイオノマーポリマーとを有する組成物から製造される。とくに適切な無水マレイン酸グラフト化ポリマーは、E.I.DuPont de Nemours and Companyから商業的に入手可能な、Fusabond572D(商標)である。Fusabond572D(商標)は、無水マレイン酸グラフト化、メタローセン触媒エチレンブテンコポリマーであり、約0.9wt%の無水マレイン酸がコポリマーにグラフト化している。高酸アイオノマーおよび無水マレイン酸グラフト化ポリマーのとくに好ましいブレンドはSurlyn8150(商標)およびFusabond572D(商標)の84wt%/16wt%のブレンドである。高酸アイオノマーおよび無水マレイン酸グラフト化ポリマーのブレンドはさらに例えば米国特許第6,992,135号および同第6,677,401号に開示されており、その内容は参照してここに組み入れる。
【0049】
他の具体的な実施例において、内側カバー層は、好ましくは、Surlyn(商標)8940/Surlyn(商標)9650/Nuclel(商標)960の50/45/5のブレンドを有する組成物から製造され、とくに好ましい実施例では、80から85ショアCの材料硬度を有する。他の具体的な実施例において、内側カバー層は、好ましくは、Surlyn(商標)8940/Surlyn(商標)9650/Surlyn(商標)9910の50/25/25のブレンドを有する組成物から製造され、とくに好ましい実施例では、約90ショアCの材料硬度を有する。さらに他の具体的な実施例において、内側カバー層は、好ましくは、Surlyn(商標)8940/Surlyn(商標)9650の50/50のブレンドを有する組成物から製造され、とくに好ましい実施例では、約86ショアCの材料硬度を有する。Surlyn(商標)8940はMAA酸基がナトリウムイオンにより部分的に中和されているE/MAAコポリマーである。Surlyn(商標)9650およびSurlyn(商標)9910はMAA酸基が亜鉛イオンにより部分的に中和されているE/MAAコポリマーの異なる2つのグレードである。Nucrel(商標)960は名目上15wt%のメタクリル酸で製造されたE/MAAコポリマー樹脂である。Surlyn(商標)8940、Surlyn(商標)9650、Surlyn(商標)9910、およびNuclel(商標)960はE.I.DuPont de Nemours and Companyから商業的に入手可能である。
【0050】
内側カバー層材料の非制限的な例は以下の「例」に示される。
【0051】
この発明のアイオノマー組成物は、とくに製品特性を操作するために、非アイオノマー性の熱可塑性樹脂とブレンドして良い。適切な非アイオノマー性の熱可塑性樹脂の例は、これに限定されないが、ポリウレタン、ポリ−エーテル−エステル、ポリ−アミド−エーテル、ポリエーテル−尿素、Arkema Incから商業的に入手可能なPebax(商標)熱可塑性ポリエーテルブロックアミド、スチレン−ブタジエン−スチレンブロックコポリマー、スチレン(エチレン−ブチレン)−スチレンブロックコポリマー、ポリアミド、ポリエステル、ポリオレフィン(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレンープロピレンコポリマー、エチレン−(メタ)アクリレート、エチレン−(メタ)アクリル酸、無水マレイン酸グラフティングで官能化されたポリマー、E.I.DuPont de Nemours and Companyから商業的に入手可能な、Fusabond(商標)官能化オレフィン、エポキシ化により官能化されたポリマー、エラストマー(例えば、EPDM、メタローセン触媒ポリエチレン)、および、熱硬化性エラストマーの粉砕粉末を含む。
【0052】
内側カバー層はフロー修正剤、これに限定されないが、例えば、Nucrel(商標)酸コポリマー樹脂、および具体的にはNucrel(商標)960を含んで良い。Nucrel(商標)酸コポリマー樹脂はE.I.DuPont de Nemours and Companyから商業的に入手可能である。
【0053】
とくに好ましい実施例において、この発明は、単一層コア、内側カバー層、および外側カバー層からなるゴルフボールを実現する。コアは、好ましくはゴム組成物から製造され、とくに好ましい実施例においては、以下の特徴のうちの1つまたは複数を伴う。すなわち、直径が約1.53インチ、圧縮が約70、中央硬度が約60ショアC、および表面硬度が約85ショアCであることである。ゴム組成物は好ましくは以下の調合を伴う。すなわち、100部の高cis−ブタジエンゴム、30phrの亜鉛ジアクリレート、5phrの酸化亜鉛、所望の比重を実現するのに必要な量のBaSO、0.5phrの亜鉛ペンタクロロチオフェノール、1.2phrのPerkadox BC、および10から20phrのリグリンド材料である。内側カバー層は好ましくはSurlyn8150(商標)およびFusabond572D(商標)の84wt%/16wt%のブレンドを有する組成物から製造される。外側カバー層は好ましくはポリウレタンまたはポリ尿素組成物から製造される。
【0054】
水蒸気バリア層をオプションとしてコアおよびカバーの間に採用して良い。水蒸気バリア層は米国特許第6,632,147号、同第6,932,720号、同第7,004,854号、および同第7,182,702号にされに開示されており、その内容は参照してここに組み入れる。
【0055】
上述の材料に加えて、コアまたはカバーの層のいずれも次の材料の1つまたは複数を有して良い。すなわち、熱可塑性エラストマー、熱硬化性エラストマー、合成ゴム、熱可塑性加硫物、コポリマー性アイオノマー、ターポリマー性アイオノマー、ポリカーボネート、ポリオレフィン、ポリアミド、コポリマー性ポリアミド、ポリエステル、ポリエステル−アミド、ポリエーテル−アミド、ポリビニルアルコール、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレンコポリマー、ポリアリーレート、ポリアクリレート、ポリフェニレンエーテル、衝突改質ポリフェニレンエーテル、高衝突ポリスチレン、フタル酸ジアリルポリマー、メタローセン触媒ポリマースチレン−アクリロニトリル(SAN)、オレフィン改質SAN、アクリロニトリル−スチレン−アクリロニトリル、スチレン−マレイン酸無水物(S/MA)ポリマー、スチレンコポリマー、官能性スチレンコポリマー、官能性スチレンターポリマー、スチレンターポリマー、セルロースポリマー、液晶ポリマー(LCP)、エチレン−プロプレン−ジエンターポリマー(EPDM)、エチレン−ビニルアセテートコポリマー(EVA)、エチレン−プロピレンコポリマー、エチレンビニルアセテート、ポリ尿素、およびポリシロキサンである。ここに開示される組成物の付加的な材料として用いて好適なポリアミドは、つぎのようにして取得された樹脂を含む。(1)として、(a)ジカルボン酸例えば蓚酸、アジピン酸、セバシン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、または1,4−シクロヘキサンジカルボン酸を(b)ジアミン例えばエチレンジアミン、テトラエチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、またはデカメチレンジアミン、1,4−シクロヘキシルアミンまたはm−キシリレンジアミンで宿重合する。(2)として、環状ラクタム例えばイプシロンカプロカクタム、またはオメガラウロラクタムを開環重合する。(3)として、アミノカルボン酸例えば6−アミノカプロン酸、9−アミノカプロン酸、11−アミノカプロン酸または12−アミノカプロン酸を宿重合する。または、(4)として、環状ラクタムをジカルボン酸およびジアミンで共重合する。適切なポリアミドの具体的な例は、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン610、ナイロン11、ナイロン12、コポリマーナイロン、ナイロンMXD6およびナイロン46である。
【0056】
ここで開示されるゴルフボール組成物における付加的な材料として用いて好適な他の好ましい材料は、韓国のSK Chemicals社から商業的に入手可能なSkypel(商標)ポリエステルエラストマー、または日本のKuraray社から商業的に入手可能なSepton(商標)ジブロックまたはトリブロックコポリマー、またテキサス州、ヒューストンのKraton Polymers LLCから商業的に入手可能なKraton(商標)ジブロックまたはトリブロックコポリマーを含む。
【0057】
アイオノマーも、ここで開示される組成物にブレンするのに良好に適したものである。適切なアイオノマーポリマーはα−オレフィン/不飽和−カルボン酸コポリマー型のアイオノマー樹脂またはターポリマー樹脂を含む。コポリマーアイオノマーは、α−オレフィンおよび3〜8個の炭素原子を有するα,β−不飽和カルボン酸のコポリマー中のカルボキシル基の少なくとも一部を金属イオンで中和して取得する。ターポリマーアイオノマーは、α−オレフィン、3〜8個の炭素原子を有するα,β−不飽和カルボン酸および2〜22個の炭素原子を有するα,β−不飽和カルボン酸塩のコポリマー中のカルボキシル基の少なくとも一部を金属イオンで中和して取得する。コポリマー性およびターポリマー性アイオノマーに適切なα−オレフィンの例は、エチレン、プロピレン、1−ブテン、および1−ヘキセンを含む。コポリマー性およびターポリマー性アイオノマーに適切な不飽和カルボン酸の例は、アクリル、メタクリル、エタクリル、α−クロロアクリル、クロトン、マレイン、フマル、およびイタコン酸を含む。コポリマー性およびターポリマー正のアイオノマーは、酸含量や中和の程度が種々なアイオノマーを含み、中和は一価または二価のカチオンにより行われ、これは先に検討した。ここに開示した組成物にブレンドして好適な商業的に入手可能なアイオノマーの例は、E.I.DuPont de Nemours & Companyから商業的に入手可能なSurlyn(商標)アイオノマー樹脂、およびExxonMobile Chemical Companyから商業的に入手可能なIotek(商標)アイオノマーを含む。
【0058】
シリコーン材料も、この発明の範囲の組成物中にブレンドして好適なものである。これらは、モノマー、オリゴマー、プレポリマー、またはポリマーであり、付加的な強化フィラーを伴っても伴わなくても良い。適切な1のタイプのシリコーン材料は、それら分子中に少なくとも2個の炭素原子を含むアルケン基を組みこむことができる。アルケン基の例はこれに限定されないがビニル、アリル、ブテニル、ペンテニル、ヘキセニルおよびデセニルを含む。アルケン基は、シリコーン構造のどの位置に配置されても良く、これには、構造の1または双方の末端が含まれる。このコンポーネントの残りの(すなわち非アルケンの)シリコーン結合有機基は、炭化水素またはハロゲン化炭化水素基から独立して選択され、これは脂肪族の不飽和を含まない。これらの非制限的な例は:アルキル基、例えばメチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチルおよびヘキシル;シクロアルキル基、例えば、シクロヘキシルおよびシクロヘプチル;アリール基例えばフェニル、トリル、およびキシリル;アラルキル基例えばベンジルおよびフェネチル;およびハロゲン化アルキル基例えば3,3,3−トリフルオロプロピルおよびクロロメチルである。この発明に用いて好適な他のタイプのシリコーン材料は、脂肪族の不飽和を伴わない炭化水素基を具備するものである。この発明の組成物を製造するのに使用して好適な具体的な例は、つぎのものである。トリメチルシロキシ−末端ブロック化ジメチルシロキサン−メチルヘキセニルシロキサンコポリマー;ジメチルヘキセニルシロキシ−末端ブロック化ジメチルシロキサン−メチルヘキセニルシロキサンコポリマー;トリメチルシロキシ−末端ブロック化ジメチルシロキサン−メチルビニルシロキサンコポリマー;トリメチルシロキシ−末端ブロック化メチルフェニルシロキサン−ジメチルシロキサン−メチルビニルシロキサンコポリマー;ジメチルビニルシロキシ−末端ブロック化ジメチルポリシロキサン;ジメチルビニルシロキシ−末端ブロック化ジメチルシロキサン−メチルビニルシロキサンコポリマー;ジメチルビニルシロキシ−末端ブロック化メチルフェニルポリシロキサン;ジメチルビニルシロキシ−末端ブロック化メチルフェニルシロキサン−ジメチルシロキサン−メチルビニルシロキサンコポリマー;および上述のコポリマーである。ただし、少なくとも1つの末端基がジメチルヒドロキシシロキシである。ここに開示される組成物にブレンドして好適な商業上入手可能なシリコーンは、ミシガン州ミッドランドのDow Corning社のSilastic(商標)シリコーンゴム、ニューヨーク州ウォーターフォードのGeneral Electric社のBlensil(商標)シリコーンゴム、およびドイツ国のWacker Chemie社のElastosil(商標)シリコーンがある。
【0059】
他のタイプのコポリマーもここに開示されたゴルフボール組成物に付加することができる。エポキシモノマーを含んで好適な例は、ポリブタジエンブロックがエポキシ基を含む、スチレン−ブタジエン−スチレンブロックコポリマー、ポリイソプレンブロックがエポキシを含む、スチレン−イソプレン−スチレンブロックコポリマーである。これらエポキシ官能性コポリマーの商業的に入手可能な例は、日本国のDaicel Chemical Industries社から販売されているESBS A1005、ESBS A1010、ESBS A1020、ESBS AT018、およびESBS AT019のエポキシ化スチレン−ブタジエン−スチレンブロックコポリマーである。
【0060】
米国特許出願公開第2003/0130434号および米国特許第6,653,382号に開示された、ソリッド球に形成されたときに大きなCORを伴う組成物もコアを製造するのに適切であり、その内容は参照してここに組み入れる。
【0061】
この発明はゴルフボール層を製造するいずれの具体的なプロセスにも限定されない。層は任意の適切な手法で製造でき、この手法には射出成型、圧縮成型、注径、および反応性射出成型が含まれる。
【0062】
この発明のゴルフボールの反発係数は典型的には0.70以上、好ましくは0.75以上、より好ましくは0.78以上である。この発明のゴルフボールの圧縮は、典型的には、40以上、または、下限が50または60で上限が100または120の範囲である。この発明のゴルフボールに使用されて好適な、硬化されたポリブタジエンベースの組成物の硬度は典型的には15ショアA以上、好ましくは30ショアAから80ショアD、より好ましくは50ショアAから60ショアDである。
【0063】
この発明のゴルフボールのディンプル被覆率は典型的には60%以上、好ましくは65%以上、より好ましくは75%以上である。
【0064】
合衆国ゴルフ協会仕様は競技用ゴルフボールの最小サイズを1.680インチに制限している。最大径に関する仕様はなく、また、任意のサイズのゴルフボールをリクリエーションプレイに使用できる。この発明のゴルフボールの全体的な直径は任意のサイズであって良い。この発明のゴルフボールの好ましい径は1.68インチから1.800インチである。より好ましくは、この発明のゴルフボールの全体の径は1.680インチから1.760インチであり、さらに好ましくは約1.680インチから1.740インチである。
【0065】
この発明のゴルフボールの慣性モーメント(「MOI」)は70−95g・cmであり、好ましくは75−93g・cmであり、さらに好ましくは76−90g・cmである。MOIが小さな実施例では、ゴルフボールのMOIは好ましくは85g・cm以下、または、83g・cm以下である。MOIが大きな実施例では、ゴルフボールのMOIは好ましくは86g・cm以上、または、87g・cm以上である。MOIはコネチカット州コリンスビルのInertia Dynamics社により製造されるモデル番号MOI−005−104の慣性モーメント測定器により測定される。測定器はPCとの通信のためにCOMMポートに接続され、MOI測定ソフトウェアバージョン#1.2により駆動される。
【0066】
この発明のゴルフボールコアの全体的な圧縮は好ましくは50から90、または60から85、または65から80であり、あるいは、全体の圧縮は約70である。
【0067】
圧縮は、ゴルフボールの設計で重要なファクターをなす。例えば、コアの圧縮は、ボールのドライバオフ時のスピンレートおよびフィーリングを左右する。Jeff Dalton、Compression by Any Other Name、Science and Golf IV、Proceedings of the World Scientific Congress of Golf(Eric Thain ed. Routedge、2002)(以下、「J. Dalton」)に開示されるように、いくつかの手法が圧縮を測定するのに用いられ、その中に、Atti圧縮、Riehle圧縮、種々の固定荷重およびオフセットでの荷重/偏向の測定、および実効弾性係数が含まれる。例えば、この発明の範囲では、「圧縮」はAtti圧縮を指し、既知の手順に従って、Atti圧縮試験装置を用いて測定される。ここではピストンを用いてボールをスプリングに押しつける。ピストンの移動量は固定されスプリングの偏位が測定される。スプリングの偏位の測定はボールの接触時点で開始しない。むしろ、ほぼ第1の1.25mm(0.25インチ)のスプリングの偏位のオフセットがある。非常に剛性が小さなコアはスプリングを1.25mmより多く撓まさず、ゼロのAtti圧縮が測定される。Atti圧縮テスタは42.7mm(1.68インチ)の径の物体を測定するように設計されている。したがって、ゴルフボールコアのようなより小さな物体は隙間を埋めて42.7mmの高さとなるようにして正確な測定値を得るようにしなければならない。Atti圧縮を、Riehle(コア)、Riehle(ボール)、100kg偏向、130−10kg偏向または実効弾性係数に変換するには「J.Dalton」に示された式を用いて行うことができる。
【0068】
この発明のゴルフボールコアはゼロ、または正の硬度勾配を伴う。硬度勾配は、内側コア(または外側コア層)の表面での硬度測定値、および内側コアの中心へ径方向に、典型的には2mmの増分で行われる硬度測定値により定義される。このj発明の範囲では、用語「正」は、ゴルフボール部品の最も内側の部分の硬度値を、当該部品の外側表面の硬度値から引いた結果を指す。例えば、ソリッドコアの外側表面の硬度値が中心より大きい(すなわち、表面が中心より硬い)ならば、硬度勾配は「正」の勾配と見なされる。硬度勾配は、コアの中心硬度を測定するために規定された先の手順に従ってコアを準備することにより測定される。コアの中心から任意の距離での硬度測定を、中心から径方向外側に伸びる線を引き、中心からの距離を典型的には2mmの増分で測定し、印付けすることにより行う。幾何中心を通る面の上ですべての硬度測定が実行されても、コアは依然としてホルダの中にあり、その配位が乱されないようにし、測定面がホルダの底に常に平行になるようにする。コア上の任意の予め定められた点からの硬度差は、平均表面硬度から適切な基準点、例えば単一ソリッドコアについてはコアの中心の硬度を差し引いて計算し、中心より柔らかいコア表面が負の硬度勾配を有し、中心より硬いコア表面が正の硬度勾配を有するようになす。硬度勾配は、例えば、2007年8月1日出願の米国特許出願第11/832,163号に十分に開示されており、その内容は参照してここに組み入れる。
【0069】
[例]
以下の例は説明の目的のみのためのものであることに留意されたい。この発明はここに具体的に開示される内容にどのような態様でも限定されない。
【0070】
この発明に従う12個のアイオノマーの内側カバー層組成物が、ツインスクリュー押出機中で、少なくとも450°F(230°C)の温度で、Surlyn(商標)8150およびFusabond(商標)572Dを溶融ブレンドすることにより準備される。使用される角成分の相対量は表1に示される。
【0071】
各ブレンド組成物のフレックスバーは、製造され、ASTM D2240に従って後続の10日のエージングで、50%の相対湿度、23°Cで評価された。結果は表1に報告される。
【表1】

【0072】
ここで数値上の下限および数値上の上限が示される場合、これら値の任意の組み合わせが使用できると理解される。
【0073】
ここで引用した、先行文献を含む、すべての特許、公報、テスト手順、および他の文献は、その開示内容がこの発明と矛盾しない範囲で、またそのような組み入れが法律上認められる範囲で、参照してここに組み入れる。
【0074】
この発明の事例的な実施例が具体的に説明されたが、この発明の趣旨および範囲を逸脱することなく、種々の他の変形例が当業者に明らかであり、また当業者が容易になすことができることが理解される。したがって、添付の特許請求の範囲のスコープが上述した例や記載に限定されず、むしろ、特許請求の範囲は、この発明中に内在する特許性のある新規な特徴のすべてを包括するように構成されていることが意図されており、これは当業者が均等として扱うすべての特徴を含む。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゴム組成物から製造され、その直径が3.84cm(1.51インチ)から4.04cm(1.59インチ)でその表面硬度が80ショアC以上であるソリッド単一層コアと、
熱可塑性組成物から製造されその材料硬度が上記コアの表面硬度より小さい内側カバー層と、
ポリウレタンまたはポリ尿素の組成物から製造される外側カバー層とからなるゴルフボール。
【請求項2】
上記外側カバー層の材料硬度が上記コアの表面硬度より小さい請求項1記載のゴルフボール。
【請求項3】
上記コアの直径が3.89cm(1.53インチ)から3.94cm(1.55インチ)である請求項1記載のゴルフボール。
【請求項4】
上記コアの表面硬度が80ショアCより大きい請求項1記載のゴルフボール。
【請求項5】
上記コアの表面硬度が85ショアCより大きい請求項1記載のゴルフボール。
【請求項6】
上記コアの表面硬度が87ショアCより大きい請求項1記載のゴルフボール。
【請求項7】
上記コアの表面硬度が90ショアCより大きい請求項1記載のゴルフボール。
【請求項8】
上記コアの圧縮が50から90である請求項1記載のゴルフボール。
【請求項9】
上記コアの圧縮が60から80である請求項1記載のゴルフボール。
【請求項10】
上記コアの中央硬度が80ショアC以下である請求項1記載のゴルフボール。
【請求項11】
上記コアの中央硬度が70ショアC以下である請求項1記載のゴルフボール。
【請求項12】
上記コアの中央硬度が60ショアC以下である請求項1記載のゴルフボール。
【請求項13】
上記内側カバー層の材料硬度が80ショアCから90ショアCである請求項1記載のゴルフボール。
【請求項14】
上記内側カバー層の材料硬度が82ショアCから86ショアCである請求項1記載のゴルフボール。
【請求項15】
上記内側カバー層の組成物はアイオノマーブレンドである請求項1記載のゴルフボール。
【請求項16】
上記内側カバー層の組成物はアイオノマーおよび無水マレイン酸グラフト化ポリマーを有する請求項1記載のゴルフボール。
【請求項17】
上記外側カバー層の組成物は熱硬化性のポリウレタンまたはポリ尿素である請求項1記載のゴルフボール。
【請求項18】
上記外側カバー層の組成物は熱可塑性のポリウレタンまたはポリ尿素である請求項1記載のゴルフボール。
【請求項19】
上記ゴム組成物は、当該組成物において存在するゴムの総合重量を基準にして少なくとも85wt%の量だけ存在するベースゴムを有する請求項1記載のゴルフボール。
【請求項20】
上記ゴム組成物は、当該組成物において存在するゴムの総合重量を基準にして少なくとも95wt%の量だけ存在するベースゴムを有する請求項1記載のゴルフボール。
【請求項21】
上記ゴム組成物は、当該組成物において存在するゴムの総合重量を基準にして少なくとも99.9wt%の量だけ存在するベースゴムを有する請求項1記載のゴルフボール。
【請求項22】
ゴム組成物から製造され、その直径が3.84cm(1.51インチ)から4.04cm(1.59インチ)で、その圧縮が60から80で、その中央硬度が70ショアC以下で、その表面硬度が80ショアC以上であるソリッド単一層コアと、
熱可塑性アイオノマー系組成物から製造されその材料硬度が上記コアの表面硬度より小さい内側カバー層と、
ポリウレタンまたはポリ尿素の組成物から製造される外側カバー層とからなるゴルフボール。
【請求項23】
上記外側カバー層の材料硬度が上記コアの表面硬度より小さい請求項22記載のゴルフボール。
【請求項24】
上記コアの直径が3.89cm(1.53インチ)から3.94cm(1.55インチ)である請求項22記載のゴルフボール。
【請求項25】
上記コアの表面硬度が85ショアCより大きい請求項22記載のゴルフボール。
【請求項26】
上記内側カバー層の材料硬度が80ショアCから90ショアCである請求項22記載のゴルフボール。
【請求項27】
上記アイオノマー系組成物は高酸アイオノマーである請求項22記載のゴルフボール。
【請求項28】
ゴム組成物から製造され、その直径が3.89cm(1.53インチ)から3.94cm(1.55インチ)で、その圧縮が60から80で、その中央硬度が65ショアC以下で、その表面硬度が80ショアC以上であるソリッド単一層コアと、
熱可塑性アイオノマー系組成物から製造されその材料硬度が上記コアの表面硬度より小さい内側カバー層と、
ポリウレタンまたはポリ尿素の組成物から製造される外側カバー層とからなるゴルフボール。
【請求項29】
上記外側カバー層の材料硬度が上記コアの表面硬度より小さい請求項28記載のゴルフボール。

【公開番号】特開2009−219870(P2009−219870A)
【公開日】平成21年10月1日(2009.10.1)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2009−58216(P2009−58216)
【出願日】平成21年3月11日(2009.3.11)
【出願人】(390023593)アクシュネット カンパニー (155)
【氏名又は名称原語表記】ACUSHNET COMPANY