説明

多数の穴部を有する白板とそれに用いるホーロー面材の製造方法

【課題】水性ペンやチョーク等による文字等の記入や磁石による掲示物の固定、更には係止ピンによる掲示物の固定も可能な多数の穴部を有する白板とそれに用いるホーロー面材の製造方法を提供する。
【解決手段】多数の穴部3を形成したホーロー用鋼板1の表面をホーロー層2で被覆したホーロー面材10の裏面側にクッション層11を積層した多数の穴部を有する白板。また、多数の穴部を形成した帯状のホーロー用鋼板を巻き取ってコイル21を成形しておき、このコイルからホーロー用鋼板を連続的に引き出して施釉ブースに導き、表面に釉薬を塗布した後、ホーロー用鋼板に引張力を作用させた状態で焼成炉で焼成処理を施し、ホーロー用鋼板の表面にホーロー層を被覆形成するホーロー面材の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水性ペンによる文字等の記入や磁石による掲示物の固定、更には係止ピンによる掲示物の固定も可能な多数の穴部を有する白板とそれに用いるホーロー面材の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
金属の表面にガラス成分を薄く焼き付けたホーロー素材は、金属の堅牢性とガラスの耐食性および外観上の美しさを兼ね備えているため、従来から台所器具や建材等に広く利用されている(例えば、特許文献1を参照)。また最近では、水性ペンやチョーク等による文字等の記入および磁石による掲示物の固定もできる白板、黒板、掲示板等(以下、白板という)としても利用されるようになってきた(例えば、特許文献2を参照)。
【0003】
一方、最近の学校や病院等では多数の穴部を有する白板を使用する傾向がある。このような白板では、水性ペンやチョーク等で文字等の記入ができるのは勿論のこと、掲示物を磁石で固定することもでき、更には係止ピンを穴部に差し込んで掲示物を固定することもでき便利である。
【0004】
このような多数の穴部を有する白板としては、孔あけ加工した鋼板の表面に樹脂塗装膜を形成した面材が使用されていた。しかしながら、係止ピンを刺す時に係止ピンの先で樹脂塗装膜を破ったり剥がしたりすることがあり、この結果、鋼板に錆が発生して長期間使用することができないという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平7−268653号公報
【特許文献2】特開2004−276405号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上記のような問題点を解決して、水性ペンやチョーク等による文字等の記入や磁石による掲示物の固定、更には係止ピンによる掲示物の固定も可能であり、係止ピンの先端で傷が付くこともない多数の穴部を有する白板とそれに用いるホーロー面材の製造方法を提供することを目的として完成されたものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するためになされた本発明は、多数の穴部を形成したホーロー用鋼板の表面をホーロー層で被覆したホーロー面材の裏面側にクッション層を積層したことを特徴とする多数の穴部を有する白板である。
【0008】
前記ホーロー用鋼板としてほうろう鋼板またはアルミメッキ鋼板を用いるのが好ましく、これを請求項2に係る発明とし、更に、穴部の内周面もホーロー層で覆われていることが好ましく、これを請求項3に係る発明とする。
【0009】
また、前記白板に用いるホーロー面材の製造方法であって、穴あけ加工により多数の穴部を形成した帯状のホーロー用鋼板を巻き取ってコイルを成形しておき、このコイルからホーロー用鋼板を連続的に引き出して施釉ブースに導き、表面に釉薬を塗布した後、ホーロー用鋼板に引張力を作用させた状態で焼成炉で焼成処理を施し、ホーロー用鋼板の表面にホーロー層を被覆形成することを特徴とするホーロー面材の製造方法を請求項4に係る発明とする。
【発明の効果】
【0010】
請求項1に係る本発明では、多数の穴部を形成したホーロー用鋼板の表面をホーロー層で被覆したホーロー面材の裏面側にクッション層を積層したので、水性ペンやチョーク等による文字等の記入や磁石による掲示物の固定、更には係止ピンによる掲示物の固定も行うことができ、また係止ピンの先端で傷付くこともない。
【0011】
また、請求項2に係る発明では、ホーロー用鋼板としてほうろう鋼板またはアルミメッキ鋼板を用い、特にアルミメッキ鋼板の場合は錆の発生をさらに確実に防止することができ、また磁石の吸着も確保することができる。
【0012】
また、請求項3に係る発明では、穴部の内周面もホーロー層で覆われているので、穴部から錆が発生するのを確実に防止することができる。
【0013】
また、請求項4に係る発明では、前記白板に用いるホーロー面材の製造方法であって、穴あけ加工により多数の穴部を形成した帯状のホーロー用鋼板を巻き取ってコイルを成形しておき、このコイルからホーロー用鋼板を連続的に引き出して施釉ブースに導き、表面に釉薬を塗布した後、ホーロー用鋼板に引張力を作用させた状態で焼成炉で焼成処理を施し、ホーロー用鋼板の表面にホーロー層を被覆形成するので、歪が生じることなく寸法精度の高い製品を生産可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施の形態を示す要部の拡大断面図である。
【図2】本発明の実施の形態を示す平面図である。
【図3】本発明の実施の形態を示す斜視図である。
【図4】ホーロー面材の製造工程の概略を示す説明図である。
【図5】ホーロー面材の要部の拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に、図面を参照しつつ本発明の好ましい実施の形態を示す。
図1は、本発明の白板の要部の拡大断面図、図2は平面図、図3は斜視図である。
図において、1はホーロー用鋼板である。このホーロー用鋼板1は、鉄製のほうろう鋼板やアルミメッキ鋼板を用いることができる。前記ほうろう鋼板は、ホーローのために特別に工夫された鋼板であり、機械的性質(成形性や伸び)を優れたものにするため炭素や窒素などの固溶元素の含有量を極力少なくしたものである。また、アルミメッキ鋼板は表面にアルミメッキを施したものであり、錆の発生をより確実に防止することができる。このホーロー用鋼板1の厚みは0.3〜1.0mmである。
【0016】
ホーロー用鋼板1の表面には、厚みが30〜100μmのホーロー層2が被覆されてホーロー面材10を形成している。また、ホーロー用鋼板1には穴あけ加工により多数の穴部3が形成されている。穴部3の大きさは5〜30mm、穴部3のピッチは20〜100mm程度であり、図示のように縦横整列させて規則正しく形成されている。なお、穴部3の内周面もホーロー層2で覆ったものとすれば、穴部3から錆が発生するのを防止することができ好ましい。
なお、前記ホーロー層2は、ホーロー層形成用のフリット組成物に白色顔料である酸化チタンと水等を混合した釉薬をスプレー塗布後、焼成処理して形成することができる。その他、用途に応じてグレー系やベージュ系の顔料を加えて任意の色をつけることもできる。
【0017】
更に、ホーロー面材10の裏面側にはコルクボードや木質ボード等からなるクッション層11が積層されている。このクッション層11は、前記ホーロー面材10の穴部3を貫通した係止ピン(図示せず)の先端部を突き刺して係止させるためのものである。そして、ホーロー面材10とクッション層11は外周縁を図示しない枠部材によって固定・一体化されたり、その他、接着剤によって接着されて白板を構成している。
【0018】
以上のように構成した白板は、表面にホーロー層2が被覆されているので、光沢があって美しく耐久性にも優れている。また、水性ペンやチョーク等による文字等の記入ができるのは勿論のこと、磁石による掲示物の固定も行うことができる。更には、多数の穴部3が形成されているので、この穴部3に係止ピンを突き刺すことで係止ピンによる掲示物の固定も可能である。また、ホーロー層2は固いため従来の樹脂皮膜のように係止ピンで剥がされることもなく、長期間の使用が保証できる。
【0019】
次に、前記したような白板に用いるホーロー面材の製造方法について説明する。
図4はホーロー面材の製造工程の概略を示す説明図である。本発明ではパンチング等の穴あけ加工により多数の穴部を形成した帯状のホーロー用鋼板を巻き取ってコイル21を成形しておく。このコイル21からホーロー用鋼板を連続的に引き出して、油分を飛散除去する空焼装置22、異物を除去する水洗装置23を通過させて施釉ブース24へ導き、スプレー装置により表面に釉薬を塗布する。次いで、鋼板に引張力を作用させた状態で焼成炉25で焼成処理(ほうろう鋼板の焼成温度:750〜850℃、アルミメッキ鋼板の焼成温度:500〜600℃)を施し、ホーロー用鋼板の表面にホーロー層を被覆形成する。その後、所定の長さに切断加工して、図5に示すようなホーロー面材10を得る。
以上の製造方法では鋼板に引張力を作用させた状態で焼成処理を施すので、歪を発生させることがなく高品質のホーロー面材が得られることとなる。また、ホーロー面に後加工を施して穴あけをするのと異なり、ホーロー層にクラックが入るという問題や、切断面が鋭利で危険であるという問題もない。しかも、穴部の内周面もホーロー層で覆われているので、錆の発生を確実に防止することもできる。一方、これらの問題点を解消するため、先に穴あけ加工した所定寸法のホーロー用鋼板を準備しておき、これにホーロー加工を施す場合は、ホーローを焼成処理する際に鋼板に歪が生じて寸法精度の管理が難しいという問題があるが、本発明の製造方法によれば歪が生じるという問題はない。
【実施例】
【0020】
帯状のホーロー用鋼板に穴部3の大きさが10mm、穴部3のピッチが100mmの穴あけ加工を行い多数の穴部を形成し、このホーロー用鋼板を巻き取ってコイルを成形した。図4に示す装置を用いて、ホーロー面材を生産した。
ホーロー層形成用のフリット組成物は下記のとおりである。
[フリット組成] (質量%)
53
ZnO 8
TiO
Al

BaO 4
アルカリ金属 20
上記のフリット100部に対し、白色顔料である酸化チタン30部、珪酸ジルコン25部、水90部の割合で混合した釉薬を、施釉ブースにおいてホーロー用鋼板の表面にスプレー装置により塗布した。次いで、鋼板に引張力を作用させた状態で焼成炉へ導き、560℃で焼成処理した。
被覆形成されたホーロー層の厚みは50μmであった。また、ホーロー面材に歪は生じていないことが確認できた。
【符号の説明】
【0021】
1 ホーロー用鋼板
2 ホーロー層
3 穴部
10 ホーロー面材
11 クッション層
21 コイル
22 空焼装置
23 水洗装置
24 施釉ブース
25 焼成炉

【特許請求の範囲】
【請求項1】
多数の穴部を形成したホーロー用鋼板の表面をホーロー層で被覆したホーロー面材の裏面側にクッション層を積層したことを特徴とする多数の穴部を有する白板。
【請求項2】
ホーロー用鋼板としてほうろう鋼板またはアルミメッキ鋼板を用いる請求項1に記載の多数の穴部を有する白板。
【請求項3】
穴部の内周面もホーロー層で覆われている請求項1に記載の多数の穴部を有する白板。
【請求項4】
請求項1に記載の白板に用いるホーロー面材の製造方法であって、穴あけ加工により多数の穴部を形成した帯状のホーロー用鋼板を巻き取ってコイルを成形しておき、このコイルからホーロー用鋼板を連続的に引き出して施釉ブースに導き、表面に釉薬を塗布した後、ホーロー用鋼板に引張力を作用させた状態で焼成炉で焼成処理を施し、ホーロー用鋼板の表面にホーロー層を被覆形成することを特徴とするホーロー面材の製造方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−20468(P2012−20468A)
【公開日】平成24年2月2日(2012.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−159717(P2010−159717)
【出願日】平成22年7月14日(2010.7.14)
【出願人】(000108661)タカラスタンダード株式会社 (51)
【出願人】(593068649)株式会社サカワ (31)
【Fターム(参考)】