説明

多点測距装置

【目的】 測距可能な条件が広い多点測距装置を提供すること。
【構成】 複数の測距エリア15a、15b、15c内に入る各被写体を測距する多点測距装置であって、隣り合う測距エリア15a、15b、15cを一部分重複させて配置したこと。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、複数のエリア内の物体、被写体などを測距できる多点測距装置に関する。
【0002】
【従来技術およびその問題点】複数の被写界エリアについて測距またはデフォーカス検出ができる従来の多点測距装置は、各測距エリアが互いに離れていた。その従来の多点測距装置における撮影画面と測距エリアとの関係を図9の(A)、(B)に示した。この図からも明らかなように従来の測距装置は、測距エリア63a、63b、63cが互いに離れている。そのため、測距エリア63a、63b、63cの間に入った被写体に対しては測距できなかった。例えば図9の(A)では、樹木71の幹が、左の測距エリア63bと中央の測距エリア63aとの間に入っているので、樹木71に対しては測距できなかった。
【0003】また、パッシブ方式の測距装置は、コントラストが低い被写体についての測距精度が非常に悪かった。例えば、図9の(B)に示すように、人物73が逆光状態にある場合において、人物73は中央の測距エリア63a内に位置し、かつ人物の輪郭が測距エリアの間に位置した場合には、中央の測距エリア63aはコントラストが非常に低いのでデフォーカス検出ができず、人物73に対する自動焦点調節ができなかった。
【0004】以上の場合には、いわゆるフォーカスロックによる撮影を行なうことも可能であるが、フォーカスロック処理は不便であった。
【0005】
【発明の目的】本発明は、上記従来の多点測距装置の問題に鑑みてなされたもので、測距可能な条件が広い多点測距装置を提供することを目的とする。
【0006】
【発明の概要】この目的を達成するために本発明は、複数の測距エリア内に入る各被写体を測距する多点測距装置であって、隣り合う測距エリアを一部分重複させて配置したこと、に特徴を有する。
【0007】
【実施例】以下図示実施例に基づいて本発明を説明する。図1から図3は、本発明をカメラに適用した場合における、ファインダ視野または撮影画面と測距エリアとの関係の一例を示す図である。図1は2個の測距エリア、図2は3個の測距エリア、図3は5個の測距エリアを有している。
【0008】図1に示した第1の実施例では、ファインダ視野11内のほぼ中心を通り、中心に対して横方向に対称に2個の測距エリア13a、13bを配設し、各測距エリア13a、13bをその幅の約1/3だけオーバラップさせてある。図2の第2の実施例、図3の第3の実施例も同様にファインダ視野11内のほぼ中心を通る横方向に対称に3個の測距エリア15a、15b、15c、5個の測距エリア17a、17b、17c、17d、17eを配置してある。そして、測距エリア15a、17aの中心をファインダ視野11の中心にほぼ一致させ、その左右に残りの測距エリアをそれぞれ幅の約1/3が互いに重なるように配置してある。これらの測距エリアの数、形状、配置、重複量はいずれも一例であって、これらに限定されるものではない。
【0009】次に、上記複数の測距エリア13、15、17内の被写体について測距する測距手段の具体的構成の実施例について、図4から図7を参照して説明する。図4は、本発明を適用したAFセンサユニットの該略図、図5は、同AFセンサユニットのラインセンサの一つの拡大図、図6は、同AFセンサユニットを有する多点測距装置の回路構成を示すブロック図、図7は、同測距装置を搭載したレンズシャッタ式カメラの斜視図である。
【0010】このAFセンサユニット20は、いわゆる位相差検出方式のAFセンサであって、光学系として結像レンズ21、およびイメージセンサとしてラインセンサ23を備えている。結像レンズ23は一対の結像レンズ21L、21Rからなり、、これらの結像レンズ21L、21Rによって形成される被写体像を受光するラインセンサ23も一対のラインセンサ23L、23Rからなる。結像レンズ21L、21Rとラインセンサ23L、23Rとは、予め規定された距離の被写体に対して合焦するように形成してある。一方の結像レンズ21Lおよびラインセンサ23Lと他方の結像レンズ21Rおよびラインセンサ23Rとは同一の態様であり、結像レンズ21Lおよび結像レンズ21Rの光軸は互いに平行になるようにユニット化されている。そしてAFセンサユニットは、結像レンズ21L、21Rの光軸が搭載されるカメラの撮影レンズの光軸と平行に配置される。なお、結像レンズ21L、21Rの光軸は、パララックス補正のために撮影レンズの光軸とある距離で交わるように配置してもよい。
【0011】このAFセンサユニット20は、図1〜3に示したいずれの測距エリア13〜17にも対応可能であるが、図3に示した5個の測距エリア17a〜17eに対応する場合を示している。図4において、符号a、b、c、d、eで示した範囲がそれぞれ測距エリア17a、17b、17c、17d、17eに対応する。
【0012】図5に示すように、本実施例のラインセンサ23は、多数の光電変換素子(本実施例では128個)が同一基板上に所定間隔で形成されたCCDラインセンサである。また、同図において、符号23a〜23eで示したセンサエリアがそれぞれ測距エリア17a〜17eに対応する。各センサエリア23a〜23eは、本実施例では36個の光電変換素子を含む。光電変換素子の数、各センサエリア23a〜23eに割り振る光電変換素子の数は任意である。さらにラインセンサ23は、CCDでなくてもよい。
【0013】各光電変換素子が積分した被写体像データ(光電変換し、蓄積した電荷)は、インターフェース33を介してラインセンサ23の一端部から順番に読み出され、所定のディジタル信号に変換されて、距離またはデフォーカス検出手段としてのCPU(マイコン)31に入力される。CPU31は、入力したディジタル信号をそれぞれ対応するメモリ35L、35Rに書き込む。なお、メモリ35L、35Rは、通常1個のRAM で構成される。
【0014】書込が終了すると、各メモリ35L、35Rから、後述の測距エリア17a〜17eに対応するセンサエリア23a〜23eのデータを1個のエリア単位で、対応する一対のエリアについて読み出す。そうして、各測距エリア単位で距離またはデフォーカスを検出する。つまり、一対のラインセンサ23L、23Rの対応するセンサエリア23a〜23eに形成された一対の像の位相差(間隔)を、相関法、プレディクタ演算などにより演算し、さらにその位相差に基づいて距離またはデフォーカスなど合焦に必要なデータを演算ないしは検出する。
【0015】すべての測距エリア17a〜17eについて距離またはデフォーカスを求めたら、撮影者により選択されたAFモードにより、あるいは予めCPU31に設定されているAFモードにより、例えば最も近距離に相当する距離またはデフォーカスを選択する。そうして、例えばその選択した距離またはデフォーカスに基づいてAF駆動装置37を駆動して焦点調節を実行する。
【0016】このAFセンサユニット20は、例えばカメラ、双眼鏡などに使用される。レンズシャッタ式カメラ41に搭載した実施例を、図7に示した。この単焦点レンズ式カメラ41は前面に、撮影レンズ43、撮影レンズ43の上方に測光用窓45、補助投光用窓47およびファインダ窓49が設けられ、さらに撮影レンズ43の近傍にAFセンサユニット20の結像レンズ21L、21Rが横方向に並設されている。
【0017】なお、同図において51はストロボ窓、53はシャッタボタンである。また、シャッタボタン53には測光スイッチSWおよびレリーズスイッチが連動していて、CPU31は、測光スイッチSWがオンされると上記距離またはデフォーカス検出動作を実行し、さらにレリーズスイッチがオンされると、検出した距離またはデフォーカスに基づいてAF駆動装置37を駆動して合焦処理、さらに図示しないがシャッタ・絞り機構を駆動して露光処理などを実行する。
【0018】図8には、本発明の多点測距装置を搭載したカメラのファインダ視野11における測距エリア15a〜15cと被写体71、73との関係を示してある。この実施例は、図2の3個の測距エリア15a〜15cに対応している。本実施例にでは、図8の(A)に示した通り、近距離の樹木71を含む風景を撮影する場合において、測距エリア15a〜15cが互いにオーバラップ(重複)して透き間なく並んでいるので、樹木71の幹は測距エリアの一つ(測距エリア15b)に含まれる。つまり、測距エリア15bにより樹木71に対する距離またはデフォーカスの検出ができる。
【0019】これに対して従来のAFカメラでは、既に述べた図9の(A)に示したように、樹木71の幹が中央の測距エリア63aと左の測距エリア63bの間に入ってしまうことがある。かかる場合には樹木71に対する測距はできない。この場合は、すべての測距エリア63a〜63cが遠景に対する距離またはデフォーカスを検出するので、遠景に対して合焦してしまい、樹木71はピンボケになってしまう。
【0020】さらに、逆光状態で暗く、影になった人物73の撮影をする場合、本実施例では人物73の輪郭が3個の測距エリア15a〜15bにかかる。つまり、人物73の輪郭がいずれかの測距エリア15a〜15b内に入る。したがって、この輪郭部における明暗の変化により、人物73に対する距離またはデフォーカス検出ができる。図示実施例では、左右の測距エリア15b、15cに輪郭部が入るので、左右の測距エリア15b、15cから人物73に対する距離またはデフォーカスが検出できる。
【0021】これに対して従来のAFカメラでは、人物73にかかるのは中央の測距エリア65aのみであり、しかも人物73は測距エリア63aを完全に覆っている。かかる場合には、中央の測距エリア63aではコントラストが低いので距離またはデフォーカスの検出ができず、左右の測距エリア63b、63cからは遠景に対する距離またはデフォーカスが検出されるので、人物73はピンボケになってしまう。
【0022】以上、図7では構成を簡単にして理解を用意にするために、3つの測距エリア15a〜15cを有する場合について説明したが、測距エリアの数は、図1〜図3に示したように、2個、5個でもよく、あるいはそれ以上でもよい。また、測距エリアは横方向に一直線上に並べなくてもよく、上下または左右の隣り合う測距エリアの一部分が重複していればよい。測距エリアのオーバーラップ量は、およそ1/3〜2/3が適当であるが、これに限定されない。
【0023】以上、本実施例ではラインセンサ23L、23Rの各受光素子が積分した像信号を、一旦ディジタル信号に変換してメモリに書き込んでいたが、各測距エリア毎に積分を改めて実行する構成でもよい。この場合、ラインセンサ23L、23Rにおける被写体輝度に応じた所定時間の積分が終了し、ラインセンサ23L、23Rから積分データを読み出して測距エリアに対応する積分データのみを利用して距離またはデフォーカス検出を行なう。この間に再びラインセンサ23L、23Rに積分を実行させて、所定時間が経過したらラインセンサ23L、23Rから積分データを読み出して、次の測距エリアに対応する積分データのみを利用して距離またはデフォーカス検出を行なう。以上の処理を繰り返して、各測距エリア毎に距離またはデフォーカスを求める。
【0024】以上の通り本発明をレンズシャッタ式カメラに適用した実施例について説明したが、本発明の多点測距装置は一眼レフカメラの測距ユニット、双眼鏡ほかの光学機器にも適用できることは容易に理解できよう。一眼レフカメラに適用した場合には周知の通り、撮影レンズ、メインミラーを透過し、サブミラーで反射した被写体光束を分割光学素子で二つの光束に分割し、各分割光束を、図4に示したのと同様の一対のラインセンサで受光する。
【0025】
【発明の効果】以上の説明から明らかな通り本発明は、撮影画面内に納まる複数の被写体エリアを測距できる多点測距装置において、少なくとも隣り合う測距エリアを部分的に重複させたので、被写体が測距エリアと測距エリアの間に入ることがなく、中抜けを等を生じる虞れがない。また、低コントラストの主要被写体に対しても、主要被写体の輪郭が、いずれかの測距エリアに入るので、測距が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の多点測距装置の測距エリアの第1の実施例を、光学系の視野との関係で示した図である。
【図2】本発明の多点測距装置の測距エリアの第2の実施例を、光学系の視野との関係で示した図である。
【図3】本発明の多点測距装置の測距エリアの第3の実施例を、光学系の視野との関係で示した図である。
【図4】本発明を適用したAFモジュールの実施例の概要を示す平面図である。
【図5】同AFモジュールのラインセンサとセンサエリアとの関係を示す図である。
【図6】同AFモジュールを有する多点測距装置の一例の回路構成をブロックで示す図である。
【図7】同多点測距装置を搭載したレンズシャッタ式カメラの斜視図である。
【図8】図2に示した測距エリアの第2の配置例におけるファインダ視野、測距エリアおよび被写体の関係を説明する図である。
【図9】従来のAFカメラにおける撮影画面、測距エリアおよび被写体の関係を示す図である。
【符号の説明】
11 ファインダ視野
13a 測距エリア
13b 測距エリア
15a 測距エリア
15b 測距エリア
15c 測距エリア
15d 測距エリア
15e 測距エリア
20 AFセンサユニット
21L 結像レンズ
21R 結像レンズ
23L ラインセンサ
23R ラインセンサ
31 CPU(デフォーカス検出手段)
35L メモリ(記憶手段)
35R メモリ(記憶手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】 複数の測距エリア内に入る各物体を測距する多点測距装置であって、隣り合う測距エリアを一部分重複させて配置したこと、を特徴とする多点測距装置。
【請求項2】 請求項1において、上記各測距エリアは、一列に直列に並んでいること、を特徴とする多点測距装置。
【請求項3】 請求項1または2に記載の多点測距装置は、一対のイメージセンサと、各イメージセンサ上に、少なくとも上記測距エリアに対応する被写体像を形成する一対の光学系と、さらに、上記測距エリアに対応するセンサエリア内に形成された被写体像を光電変換した像データに基づいて上記一対のイメージセンサ上での位相差を演算手段により演算して、上記測距エリア内の被写体に対する距離またはデフォーカスを検出する距離またはデフォーカス検出手段とを備えていること、を特徴とする多点測距装置。
【請求項4】 請求項3において、上記一対のイメージセンサは、所定間隔で連続的に配置された光電変換素子を備えたラインセンサであること、を特徴とする多点測距装置。
【請求項5】 請求項3または4において、上記検出手段は、上記一対のイメージセンサが出力する像データをそれぞれ記憶する記憶手段を有し、上記検出手段は、上記記憶手段から上記測距エリアに対応するセンサエリア内の像データを読み出して距離またはデフォーカスを検出すること、を特徴とする多点測距装置。
【請求項6】 請求項5において、上記検出手段は、上記すべての測距エリアに対する距離またはデフォーカスを、上記記憶手段に記憶した像データを読み出して検出すること、を特徴とする多点測距装置。
【請求項7】 請求項3または4において、上記検出手段は、上記一対のイメージセンサが出力した像データのうち、一つの測距エリアに対応するセンサエリア内の像データを使用して距離またはデフォーカスを検出すること、を特徴とする多点測距装置。
【請求項8】 請求項7において、上記検出手段は、上記一対のイメージセンサが出力した像データのうち、一つの測距エリアに対応するセンサエリア内の像データを使用して距離またはデフォーカスを検出する処理を、各測距エリアについて繰り返すこと、を特徴とする多点測距装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図7】
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【図8】
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【図5】
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【図6】
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【図9】
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