説明

多芯筆記具

【課題】本発明の課題は、ボールペンレフィルを軸筒内に2本以上配設する多芯筆記具において、各インキ収容筒に異なるボールペン用インキを収容する黒色ボールペンレフィルを2本以上収容する多芯筆記具を提供するものである。
【解決手段】インキ収容筒の先端部に、ボールを回転自在に抱持したボールペンチップを直接あるいはチップホルダーを介して装着したボールペンレフィルを軸筒内に2本以上配設し、前記ボールペンチップを、前記軸筒の先端開口部より選択的に出没可能とする出没機構を具備してなる多芯筆記具において、前記ボールペンレフィルの少なくとも2本以上に異なる黒色ボールペン用インキを充填するとともに、該黒色ボールペン用インキが色差を有することを特徴とする多芯筆記具。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軸筒内に2本以上のボールペンレフィルを配設してなる多芯筆記具に関し、さらに詳細には、各ボールペンレフィルに異なるボールペン用インキを含有した、色差を有する黒色のボールペンレフィルを2本以上、配設する多芯筆記具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、軸筒内にボールペンレフィルを含む複数の筆記体を配設し、筆記先端部を口先部の先端開口部より選択的に出没可能な、スライド式、回転式、ノック式等の多芯筆記具は、よく知られている。また、こうした筆記具のボールペンレフィルのインキ収容筒に充填するインキ色は、黒、赤、青、緑色などの異なるインキ色を充填した多芯筆記具が良く知られている。
【0003】
このような多芯筆記具としては、特開2001−113882号公報「ボールペン体を含む多芯筆記具」、特開2004−58549号公報「多芯筆記具」、特開2005−66963号公報「多芯筆記具」に、各ボールペンレフィルのインキ収容筒に、異なる2〜4色のインキ色を充填した多芯筆記具が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】「特開2001−113882号公報」
【特許文献2】「特開2004−58549号公報」
【特許文献3】「特開2005−66963号公報」
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1〜3のような多芯筆記具は、ボールペンレフィルのインキ収容筒に、黒、赤、青、緑色などの異なるインキ色を充填したボールペンレフィルを2本以上配設して、多色筆記具として、使用目的等によって使いわけを行っているが、黒色は、公式文書などに使用するため、他の色に比べて、使用頻度が多い。
【0006】
こうした問題を鑑みて、黒色ボールペンレフィルを複数本収容することが考えられるが、同一のボールペン用インキを用いた全くの同色であるため、色の違いによる使用区別などを行うことはできなかった。
【0007】
ところで、同一の色相であっても、彩度や明度によって受ける色感は、異なってくる。例えば、赤色、橙色、黄色は暖色系であるため、黒色であっても、こうした色を帯びた黒は、暖かみを有する。一方、青緑、青、青紫は、寒色系であるため、こうした色を帯びた黒は、冷たく落ち着いた感じを有する。また、暖色系の色は、実際よりも近く感じる進出色であるため、こうした色を帯びた黒は、実際よりも遠く感じる後退色である寒色系を帯びた黒と距離感も異なる。
【0008】
そこで、従来の黒色とは違った色調、例えば、青味を帯びた黒色ボールペン用インキや赤味を帯びた黒色ボールペン用インキ等の黒色以外の色味を帯びたものを用いた黒色ボールペンレフィル等を2本以上収容する多芯筆記具が待ち望まれる。
【0009】
本発明はこうした事実に鑑みてなされたもので、各インキ収容筒に異なるボールペン用インキを収容し、色差を有する黒色ボールペンレフィルを2本以上収容する多芯筆記具を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、上記課題を解決するために、
「1.インキ収容筒の先端部に、ボールを回転自在に抱持したボールペンチップを直接あるいはチップホルダーを介して装着したボールペンレフィルを軸筒内に2本以上配設し、前記ボールペンチップを、前記軸筒の先端開口部より選択的に出没可能とする出没機構を具備してなる多芯筆記具において、前記各ボールペンレフィルの少なくとも2本以上に異なる黒色ボールペン用インキを充填するとともに、該黒色ボールペン用インキが色差を有することを特徴とする多芯筆記具。
2.前記黒色ボールペン用インキが、少なくとも、着色剤を含有し、該着色剤が、黒色着色剤と、該黒色着色剤を除く有色着色剤とからなるとともに、前記黒色着色剤の含有量をA質量%、前記該黒色着色剤を除く有色着色剤の含有量をB質量%とした時、1.0≦A/B≦10.0の関係を満足する黒色ボールペン用インキを含有するボールペンレフィルを少なくとも含むことを特徴とする第1項に記載の多芯筆記具。
3.前記黒色ボールペン用インキが、黒色着色剤の色と、有色着色剤の色からなる色相において、彩度が、10%以上、50%未満であることを特徴とする第2項に記載の多芯筆記具。
4.前記ボールペンレフィルが、前記黒色着色剤を除く有色着色剤と略同色部を少なくとも有することを特徴とする第2項または第3項に記載の多芯筆記具。
5.前記多芯筆記具が、ボールペンレフィルの後部に連接した摺動体を、コイルスプリングにより軸筒後端方向に付勢して摺動溝に摺動自在に収納し、前記摺動体を軸筒先端方向にスライドすることにより、前記ボールペンレフィルの前記ボールペンチップを、前記軸筒の先端開口部より選択的に出没可能とする出没機構を具備してなるスライド式の多芯筆記具であって、前記摺動体に、前記黒色着色剤を除く有色着色剤と略同色部を少なくとも有することを特徴とする第2項または第3項に記載の多芯筆記具。」とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明は、各インキ収容筒に異なるボールペン用インキを収容し、色差を有する黒色ボールペンレフィルを2本以上収容する多芯筆記具を提供することができた。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の多芯筆記具を示す、縦断面図である。
【図2】図1におけるボールペンレフィルの突出状態を示す図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明の特徴は、ボールペンレフィルを軸筒内に2本以上配設する多芯筆記具において、前記各ボールペンレフィルの少なくとも2本以上に異なる黒色ボールペン用インキを充填するとともに、該黒色ボールペン用インキが色差を有することである。
【0014】
黒色で、色差を有するには、明度を変えることによっても実現可能であるが、黒色着色剤からなる、一種のボールペン用インキと、黒色着色剤と、該黒色着色剤を除く有色着色剤を含有することで、他の色味を帯びた黒色が実現できるので最も好ましい。尚、黒色着色剤の色及び黒色着色剤を除く有色着色剤の色とは、ボールペン用インキ中において、溶解又は分散後に呈する色のことである。
【0015】
尚、色差については、色差計(東京電色(株)製、TC−3600)にて、例えば、一種のボールペン用インキを基準とし、他種のボールペン用インキを測定することによって色差を求めることができる。
【0016】
本発明に用いる黒色着色剤としては、染料、及び/または、顔料が用いることができる。染料については、直接染料、酸性染料、塩基性染料などが採用可能である。顔料については、無機、有機、加工顔料などが挙げられる。これらの黒色着色剤の含有量は、インキ組成物全量に対し、1質量%〜50質量%が好ましく、さらに、インキ経時安定性を考慮すれば、1質量%〜30質量%が最も好ましい。
【0017】
また、本発明に用いる黒色着色剤を除く有色着色剤は、青、赤、黄、緑等の黒色を除く有色着色剤が利用可能であり、染料及び/または顔料を用いることができる。染料については、直接染料、酸性染料、塩基性染料、含金染料などや、それらの各種造塩タイプの染料等が採用可能である。顔料については、無機、有機、加工顔料などが挙げられる。これらの染料および顔料は、2種以上組み合わせて使用することができ、含有量は、前述した黒色着色剤よりも少なくする方が好ましい。
【0018】
尚、黒色着色剤と、該黒色着色剤を除く有色着色剤には、染料を用いることが最も好適である。これは、染料は、インキ中での溶解安定性が良く、また、染料を2種以上入れても、溶解安定するため、色調も長期間良好であるためである。
【0019】
具体的には、黒色着色剤に用いられる水溶性染料として、ダイレクトブラック17、同19、同22、同32、同38、同51、同71、同154、同168、同195、アシッドブラック1、同2、同24、同26、同31、同52、同107、C.I.ベ−シックブラック2等、油溶性染料としてバリファーストブラック1802、同1805、同1807等が例示できる。
【0020】
また有色着色剤に用いられる水溶性染料の具体例として、直接染料は、ダイレクトエロー4、同26、同44、同50、ダイレクトレッド1、同2、同4、同23、同31、同37、同39、同75、同80、同81、同83、同225、同226、同227、ダイレクトブルー1、同3、同15、同41、同71、同86、同106、同119、ダイレクトオレンジ6等、酸性染料は、アシッドブラック1、同2、同24、同26、同31、同52、同107、アシッドオレンジ56、アシッドエロー3、同17、同19、同23、同42、同49、同61、アシッドレッド8、同9、同14、同18、同51、同52、同73、同87、同92、同94、アシッドブルー1、同7、同9、同22、同62、同90、同103、アシッドグリーン3、同9、同16、同25、同27、アシッドバイオレット15、同17等が挙げられ、これらを1種又は2種以上用いることができる。更にまた、塩基性染料としては、C.I.ベ−シックエロ−1、同2、同21、C.I.ベ−シックオレンジ2、同14、同32、C.I.ベ−シックレッド1、同2、同9、同14、C.I.ベ−シックバイオレット1、同3、同7、同10、C.I.ベ−シックブル−3、同7、同26、ベ−シックグリ−ン4、C.I.ベ−シックブラウン12、C.I.ベ−シックブラック2、メチルバイオレット、ビクトリアブルーFB、マラカイトグリーン、ローダミンのシリーズ等が挙げられ、また、油溶性染料の具体例としてバリファーストバイオレット1701、バリファーストブルー1601、同1605、同1621、バリファーストレッド1320、同1355、同1360、バリファーストイエロー1101、同1151、ニグロシンベースEXBP、同EX、BASE OF BASIC DYES ROB−B、同RO6G−B、同VPB−B、同VB−B、同MVB−3、アイゼンスピロンブラック GMH−スペシャル、アイゼンスピロンバイオレット C−RH、アイゼンスピロンブルー GNH、同2BNH、同C−RH、アイゼンスピロンレッド C−GH、同C−BH、アイゼンスピロンイエロー C−GNH、同C−2GH、S.P.T.ブルー111、同ブルーGLSH−スペシヤル、S.P.T.レッド533、S.P.T.オレンジ6、S.B.N.バイオレット510、S.B.N.イエロー510、同530、S.R.C−BH等が挙げられ、これらを1種又は2種以上用いることができる。
【0021】
黒色着色剤と、該黒色着色剤を除く有色着色剤とからなる他種の黒色ボールペン用インキは、黒色着色剤の色と、黒色着色剤を除く有色着色剤の色からなる色相において、黒色着色剤単独の彩度を0%、該黒色着色剤を除く有色着色剤単独の彩度を100%としたとき、彩度が、10%より小さいと、黒色着色剤の発色が強く、黒色着色剤を除く有色着色剤の色味が判断し難く、50%以上であると、該黒色着色剤を除く有色着色剤の色味が強く、黒色に視認しにくいため、10%以上、50%未満が好ましく、25%以下が最も好ましい。
【0022】
また、黒色着色剤をA質量%、該黒色着色剤を除く有色着色剤をB質量%とした時、A/B<1.0であると、該黒色着色剤を除く有色着色剤の色味が強く、黒色に視認しにくい。A/B>10.0であると、黒色着色剤の発色が強く、黒色着色剤を除く有色着色剤の色味が判断し難い。そのため、A、Bの関係は、1.0≦A/B≦10.0が好ましく、2.0≦A/B≦5.0が最も好ましい。
【0023】
また、黒色着色剤と、黒色着色剤を除く有色着色剤とからなる他種の黒色ボールペン用インキは、黒色着色剤の色と、有色着色剤の色からなる色相において、黒色着色剤単独の色の明度を0%、白色の明度を100%としたとき、明度が、25%より大きいと、白っぽく霞んだ色となるため、各ボールペン用インキの明度は、25%以下とすることが好ましい。
【0024】
その他として、溶解安定性、蒸発乾燥防止等を考慮し、グリセリン、エチレングリコール、エチレングリコールモノフェニルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ベンジルアルコール、メタノール、1−プロパノール等の有機溶剤、潤滑性の向上を考慮し、リン酸エステル系、シリコン系等の界面活性剤や脂肪酸やその塩、有機アミン等のpH調整剤、尿素、ソルビット等の保湿剤、ベンゾトリアゾール等の防錆剤、1,2ベンゾイソチアゾリン−3−オン等の防菌剤を添加することができる。また、分散剤も適宜添加可能で、樹脂として、アクリル系樹脂、アルキッド樹脂、セルロース誘導体、ポリビニルピロリドン、ケトン樹脂、テルペン樹脂等や、樹脂エマルジョンとして、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、スチレン−ブタジエン系樹脂、ポリエステル系樹脂、酢酸ビニル系樹脂等を、また、着色剤安定剤、可塑剤、キレート剤などを適宜用いても良い。これらは単独又は2種以上組み合わせて使用することができる。
【0025】
また、インキ粘度調整剤を用いても良く、アクリル系樹脂、セルロース誘導体、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール等の樹脂や、キサンタンガム、架橋型アクリル酸重合体、サクシノグリカン、ガーガム、水添ヒマシ油、有機ベントナイト、シリカ、脂肪酸アマイドおよびその誘導体などの剪断減粘性付与剤等が挙げられる。これらは、単独又は2種以上混合して使用してもよい。
【0026】
次に図面を参照しながら、本発明の多芯筆記具の実施例を説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0027】
実施例1
図1、2に示すように、実施例1の多芯筆記具1は、前軸2の後端に後軸3を螺着し、軸筒本体を構成し、この軸筒本体内に異なるボールペン用インキを収容したボールペンレフィル8、10を収納してある。
【0028】
また、後軸3には軸心方向に沿って延びる、外方に開口した摺動溝3aを径方向に区画して形成してあり、この摺動溝3aに、摺動体4、6を摺動可能に配設する。摺動体4、6には操作部5、7が設けてあり、この操作部5、7を、摺動溝3aから後軸3の外周面より突出した状態で、弾発部材12、13により後方に付勢させて配設してある。
【0029】
一方のボールペンレフィル10を使用するには、選択した一方の摺動体6の操作部7を前軸2の先端開口部2a方向に前進せしめることで、摺動体6に形成した係止部6aが後軸3の内部に形成した止め部3bに係止して、ボールペンレフィル10を前進せしめ、ボールペンレフィル10の筆記先端部11を、前軸2の先端開口部2aから選択して突出することができる。
【0030】
また、ボールペンレフィル10の筆記先端部11を突出した状態で維持している場合に、他方の摺動体4の操作部5を軸筒先端方向に前進せしめることにより、他方の解除突起6bによって、止め部3bに係止している一方の係止部6aを解除して、摺動体に連接したボールペンレフィル10の筆記先端部11を軸筒内に没入することができる。
【0031】
ボールペンレフィル10は、インキ収容筒の先端部に、ステンレス綱材からなるチップ本体のボール抱持室に、ボール径がφ0.7mmの超硬合金ボールを回転自在に抱持したボールペンチップを具備し、インキ収容筒内に下記のインキ配合1によって得られたボールペン用インキ組成物14及びグリース状のインキ追従体15を直に充填してボールペンレフィルを得ている。
【0032】
インキ配合1
水 59.0質量部
水溶性有機溶剤(エチレングリコール) 20.0質量部
着色剤(ダイレクトブラック154) 5.5質量部
着色剤(Acid Blue 9) 0.5質量部
潤滑剤(リン酸エステル系界面活性剤) 0.5質量部
潤滑剤(脂肪酸) 0.5質量部
pH調整剤(トリエタノールアミン) 5.0質量部
保湿剤(尿素) 5.0質量部
保湿剤(ソルビット) 1.5質量部
防菌剤(1,2ベンゾイソチアゾリン−3−オン) 0.5質量部
防錆剤(ベンゾトリアゾール) 0.5質量部
剪断減粘性付与剤(サクシノグリカン) 0.1質量部
剪断減粘性付与剤(キサンタンガム) 0.2質量部
剪断減粘性付与剤(架橋型アクリル酸重合体) 0.2質量部
【0033】
インキ配合1は、先ず、着色剤、水、水溶性有機溶剤、潤滑剤、保湿剤、pH調整剤、防菌剤、防錆剤をマグネットホットスターラーで加温撹拌してベースインキを作成する。その後、上記作製したベースインキを加温しながら、剪断減粘性付与剤を投入してホモジナイザー攪拌機を用いて均一な状態となるまで充分に混合攪拌した後、濾紙を用い濾過を行って、黒色のボールペン用インキ14を得ている。
【0034】
ボールペンレフィル8は、ボールペンレフィル10と同様に、インキ収容筒の先端部に、ステンレス綱材からなるチップ本体のボール抱持室に、ボール径がφ0.7mmの超硬合金ボールを回転自在に抱持したボールペンチップからなる筆記先端部9を具備し、インキ収容筒内にインキ配合2の黒色のボールペン用インキ及びグリース状のインキ追従体(図示せず)を直に充填してボールペンレフィル10を得ている。尚、各インキ配合、インキ消費量、インキ粘度は、表1に示す通りである。
【0035】
表1

【0036】
黒色ボールペン用インキ14は、黒色着色剤に呈する黒色に、有色着色剤の青色味を帯びた色、黒色ボールペン用インキ16は、黒色着色剤に呈する黒色に、有色着色剤の黄色味を帯びた色となるため色差を有するボールペン用インキを収容したボールペンレフィルとしてある。
【0037】
尚、ボールペンレフィル10、8には、黒色着色剤を除く有色着色剤と同色又は近似した色の同色部品を備えてある方が好ましい。具体的には、ボールペンレフィル10は青色、ボールペンレフィル8は黄色の尾栓、チップホルダー、グリップ、インキ追従体等、黒色着色剤を除く有色着色剤と同色又は近似した色の同色部品を備えて、それぞれの黒色ボールペンレフィルの色の違いの区別がし易いようにすることが好ましく、生産上、混在を防ぐことが可能になる。
【0038】
また、ボールペンレフィルの摺動体4、6の外部に露出する部分である操作部5、7を、前記黒色着色剤を除く有色着色剤と略同色部を有することで、色識別し易くなるため、より好ましい。具体的には、前記摺動体4、6の操作部5は、青色を、操作部7は、黄色を少なくとも用いることで、黒色着色剤を除く有色着色剤と同色又は近似した色の同色部品とすることが好ましい。また、前記摺動体4、6や、前記操作部5、7を、それぞれ異なる形状や寸法などにすることで、それぞれの黒色ボールペンレフィルの色の識別化を行うことも可能である。
【0039】
また、100m当たりのインキ消費量が多いほど、筆跡が視認しやすい。具体的には、100m当たりのインキ消費量が、50mg以上とする。但し、インキ消費量が多すぎると、擦過性や浸透性等、新たな課題が発生する恐れがあるため、100m当たりのインキ消費量が、50mg〜300mg、好ましくは80mg〜250mgとする。
【0040】
本実施例では、便宜上、剪断減粘性を付与した水性ボールペン用インキを用いているが、油性インキや水性インキ等、特に限定されるものではない。また、実施例には記載していないが、黒色インキ組成物として、配合例3、4等のような黒色着色剤に呈する黒色に、有色着色剤を用いて、赤色や、緑色を帯びた黒色インキ組成物でも、配合例5のような黒色着色剤に呈する黒色だけを用いた黒色インキ組成物を用いても良い。
【0041】
また、インキ粘度も特に限定されるものではないが、20℃、剪断速度384sec−1(100rpm)における粘度が100mPa・sを超えると、100m当たりのインキ消費量を多くし難くなるため、100mPa・s以下、好ましくは70mPa・s以下とする。また、10mPa・s未満だと、チップ先端からの垂れ下がりが発生し易くなるため、10mPa・s以上、100mPa・s以下とすることが最も好ましい。
【0042】
インキ粘度は、ブルックフィールド社製DV−II粘度計(No27ローター)を用いて20℃の環境下で、剪断速度384sec−1(100rpm)の条件にてインキ粘度を測定することができる。また、図示はしていないが、チップ内にボールを押圧するコイルスプリングを内蔵し、チップ先端からのインキ漏れ出しを抑制することが最も好ましい。
【0043】
本発明の多芯筆記具は、スライド式、回転式、ノック式等でも良く、ボールペンレフィルを軸筒内に2本以上配設してなる多芯筆記具であれば特に限定されないが、実施例のように、スライド式の多芯筆記具とし、出没機構に連動し、外部に露出する摺動部材に、黒色着色剤を除く有色着色剤と略同色部にて色表示を行うことで、色の識別がし易くなるので最も好ましい。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明の多芯筆記具は、2本のボールペンレフィルを収容した多芯筆記具に限定されるものではなく、3本以上のボールペンレフィルを収納した多芯筆記具や、シャープペンシル体とボールペンレフィルを少なくとも収納した複合筆記具等、幅広く用いることができる。また、多芯筆記具は、少なくとも2本以上のボールペンレフィルに異なる黒色ボールペン用インキを充填するとともに、該黒色ボールペン用インキが色差を有するものであれば良く、その他のボールペンレフィルに充填するインキ色は、青、赤、緑色や蛍光色、メタリック色、パステル色などを用いても良い。
【符号の説明】
【0045】
1 多芯筆記具
2 前軸
2a 前軸の先端開口部
3 後軸
3a 摺動溝
3b 止め部
4、6 摺動体
4a、6a 係止部
4b、6b 解除突起
5、7 操作部
8、10 ボールペンレフィル
9、11 筆記先端部
12、13 弾発部材
14 ボールペン用インキ
15 インキ追従体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
インキ収容筒の先端部に、ボールを回転自在に抱持したボールペンチップを直接あるいはチップホルダーを介して装着したボールペンレフィルを軸筒内に2本以上配設し、前記ボールペンチップを、前記軸筒の先端開口部より選択的に出没可能とする出没機構を具備してなる多芯筆記具において、前記各ボールペンレフィルの少なくとも2本以上に異なる黒色ボールペン用インキを充填するとともに、該黒色ボールペン用インキが色差を有することを特徴とする多芯筆記具。
【請求項2】
前記黒色ボールペン用インキが、少なくとも、着色剤を含有し、該着色剤が、黒色着色剤と、該黒色着色剤を除く有色着色剤とからなるとともに、前記黒色着色剤の含有量をA質量%、前記該黒色着色剤を除く有色着色剤の含有量をB質量%とした時、1.0≦A/B≦10.0の関係を満足する黒色ボールペン用インキを含有するボールペンレフィルを少なくとも含むことを特徴とする請求項1に記載の多芯筆記具。
【請求項3】
前記黒色ボールペン用インキが、黒色着色剤の色と、有色着色剤の色からなる色相において、彩度が、10%以上、50%未満であることを特徴とする請求項2に記載の多芯筆記具。
【請求項4】
前記ボールペンレフィルが、前記黒色着色剤を除く有色着色剤と略同色部を少なくとも有することを特徴とする請求項2または3に記載の多芯筆記具。
【請求項5】
前記多芯筆記具が、ボールペンレフィルの後部に連接した摺動体を、コイルスプリングにより軸筒後端方向に付勢して摺動溝に摺動自在に収納し、前記摺動体を軸筒先端方向にスライドすることにより、前記ボールペンレフィルの前記ボールペンチップを、前記軸筒の先端開口部より選択的に出没可能とする出没機構を具備してなるスライド式の多芯筆記具であって、前記摺動体に、前記黒色着色剤を除く有色着色剤と略同色部を少なくとも有することを特徴とする請求項2または3に記載の多芯筆記具。

【図1】
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【図2】
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