説明

多重型基準体積管

【課題】 精度の高い基準体積を得ることができる基準体積管を提供する。
【解決手段】 多重型基準体積管31は、内部に試験液が流れ運動子40が内部の所定区間を移動する主管部内管32a、及び他の内管33a、34a、35a、36a、43aと、これらの内管全体を覆う外管32b、33b、34b、35b、36b、43bと、外管の内部に流体を流して内管の外部全体を流体により晒す流体供給手段38とを備える。多重型基準体積管31は、流体を試験液の流れる方向に対して逆方向に流すような構成とするとともに、運動子40が移動する所定区間を直線となる直管式のものとして構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基準体積管に関し、詳しくは、試験液が流れる内管とこの内管を覆う外管とを有する少なくとも二重管構造の多重型基準体積管に関する。
【背景技術】
【0002】
基準体積管は、流体計測用流量計を検定する基準器として用いられており、運動子が移動する主管部を有している(例えば下記特許文献1参照)。基準体積管には、主管部の形状がループ管形状や直管形状に形成されたものが知られている。図7及び図8を参照しながら主管部の形状がループ管形状や直管形状に形成されたものについて説明する。
【0003】
図7において、基準体積管1は、予め所定の基準体積を有する主管部2を備えている。この主管部2は、U字状に形成されており、主管部2の内部には、運動子(図7中はスフェアを示している)3が挿入されている。基準体積管1は、主管部2の導入部4から流入する試験液によって、運動子3を主管部2の導出部5まで移動させるものであって、運動子3の移動を二つのデテクタースイッチ6で検出することにより、所望の試験液の体積量を得る構造になっている。
【0004】
図8において、直管式となる基準体積管11は、予め所定の基準体積を有する主管部12と、試験液の流れ方向を切り換える四方切換弁13とを備えている。主管部12は、直管形状に形成されており、この主管部12の内部には、三つの運動子14、14′、15が挿入されている。
【0005】
試験液が図中の左から右へ流れる場合、基準体積管11は次のように作用する(試験液が右から左へ流れる場合も同様)。配管16より主管部12へ流入した試験液は、この試験液の圧力によって駆動用の運動子14を左から右へ移動させる。移動した駆動用の運動子14は、隣接する計測用の運動子15に接触して駆動力を伝達する。駆動用の運動子14は、計測用の運動子15を図中右方向へ、すなわちトランス部17からトランス部17′の存在する方向へ移動させる。駆動用の運動子14は、計測用の運動子15を押し出すと、トランス部17に到達する(図9参照)。
【0006】
トランス部17において、駆動用の運動子14を移動させた試験液は、駆動用の運動子14の周囲を通過し、透孔18を経て副管19内へ流入する。そして再び、駆動用の運動子14の周囲を通過し、主管部12内へ流出する。駆動用の運動子14は、試験液の圧力で移動することがなく、トランス部17で静止する。
【0007】
計測用の運動子15は、主管部12内を移動する。二つのデテクタースイッチ20、20′は、計測用の運動子15の移動を検出し、所定の検出信号を外部へ送信する。これにより、試験液の基準体積を得る。計測用の運動子15は、上記の移動を続けると、トランス部17′において静止する駆動用の運動子14′に対して衝突する。この衝突による衝撃と試験液の圧力とにより、駆動用の運動子14′は図中右方向へ移動する。計測用の運動子15は駆動用の運動子14′と入れ替わり、トランス部17′において静止する。
【特許文献1】特公昭54−15426号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、上記従来の基準体積管1、11にあっては、それぞれ主管部2、12が外部温度の影響を受ける恐れがあり、結果、精度の高い基準体積を得ることができないという問題点を有している。また、外部圧力の影響を受ける恐れもあり、上記同様、精度の高い基準体積を得ることができないという問題点を有している。
【0009】
その他、上記従来の基準体積管1にあっては、主管部2がU字状に湾曲する形状であることから、湾曲部分においての運動子3とのシール性が直線部分よりも若干劣ってしまうという問題点を有している。すなわち、精度の高い基準体積を得ることができないという問題点を有している。
【0010】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたもので、精度の高い基準体積を得ることができる基準体積管を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するためになされた本発明の基準体積管は多重型基準体積管であり、請求項1記載の本発明の多重型基準体積管は、内部に試験液が流れ運動子が前記内部の所定区間を移動する内管と、該内管全体を覆う外管と、該外管の内部に流体を流して前記内管の外部全体を前記流体により晒す流体供給手段とを備えることを特徴としている。このような特徴を有する本発明によれば、外部温度や外部圧力が外管及びこの外管に流れる流体に作用するものの、内管及びこの内管に流れる試験液にまでは作用し難くなるような構造になる。内管の外部全体が流体により晒されることにより、試験液の温度及び圧力にムラがなくなり、試験液としての安定性が確保される。
【0012】
請求項2記載の本発明の多重型基準体積管は、請求項1に記載の多重型基準体積管において、前記流体を前記試験液の流れる方向に対して逆方向に流すことを特徴としている。このような特徴を有する本発明によれば、試験液が例えば右から左へと流れる場合、流体は左から右へと流れる。試験液と流体との流れが対向することにより、温度置換が行われ、結果、試験液の温度が安定する。
【0013】
請求項3記載の本発明の多重型基準体積管は、請求項1又は請求項2に記載の多重型基準体積管において、前記所定区間が直線となる直管式のものとして前記内管及び前記外管を構成することを特徴としている。このような特徴を有する本発明によれば、運動子が内管の所定区間を真っ直ぐに移動する。本発明によれば、運動子とのシール性が均一となる構造になる。
【0014】
請求項4記載の本発明の多重型基準体積管は、請求項1ないし請求項3いずれか記載の多重型基準体積管において、前記試験液と前記流体の温度管理を行う温度管理手段を備えることを特徴としている。このような特徴を有する本発明によれば、温度管理手段により試験液と流体の温度管理がなされ、結果、試験液の温度が安定する。
【0015】
請求項5記載の本発明の多重型基準体積管は、請求項1ないし請求項4いずれか記載の多重型基準体積管において、前記内管と前記外管の内圧管理を行う圧力管理手段を備えることを特徴としている。このような特徴を有する本発明によれば、圧力管理手段により内管と外管の内圧管理がなされ、結果、内管と外管の圧力が均衡する。
【発明の効果】
【0016】
請求項1に記載された本発明によれば、内管及び外管を有する少なくとも二重管構造の基準体積管、言い換えれば多重型の基準体積管であることから、外部温度の影響や外部圧力の影響を従来よりも格段に受け難くすることができる。従って、精度の高い基準体積を得ることができるという効果を奏する。
【0017】
請求項2に記載された本発明によれば、試験液と流体との流れを対向させることにより、試験液の温度をより一層安定させることができる。従って、精度の高い基準体積を得ることができるという効果を奏する。
【0018】
請求項3に記載された本発明によれば、直管式にすることにより、運動子とのシール性を均一にさせることができる。従って、精度の高い基準体積を得ることができるという効果を奏する。
【0019】
請求項4に記載された本発明によれば、温度管理手段を備えることにより、試験液の温度をより一層安定させることができる。従って、精度の高い基準体積を得ることができるという効果を奏する。
【0020】
請求項5に記載された本発明によれば、圧力管理手段を備えることにより、内管と外管の圧力を均衡させることができる。言い換えれば、内管の膨張を一定にさせることができる。従って、精度の高い基準体積を得ることができるという効果を奏する。本発明によれば、圧力管理手段を備えることで、管自体の設計及び製造性を容易にすることができる。また、管壁の薄肉化を図ってコスト低減に寄与することもできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、図面を参照しながら説明する。図1は本発明の多重型基準体積管の一実施の形態を示す図であり、検定開始前の状態を示す概略図である。また、図2は検定開始状態を示す概略図、図3は検定中の状態を示す概略図、図4は検定片道終了時の状態を示す概略図、図5は検定戻り開始時の状態を示す概略図、図6は検定戻り終了時の状態を示す概略図である。
【0022】
尚、本形態の説明においては、図面を正面から見た際の左及び右が以下説明の左及び右に相当するものと定義する。
【0023】
図1において、引用符号31は本発明の多重型基準体積管を示している。多重型基準体積管31は、主管部32と、左トランス部33及び右トランス部34と、左配管部35及び右配管部36と、流路切換手段37と、流体供給手段38と、体積計量手段39と、運動子40と、温度管理手段41と、圧力管理手段42とを備えて構成されている。多重型基準体積管31は、特に限定するものではないが、主管部32〜流路切換手段37までが二重管構造のものとして形成されている。また、多重型基準体積管31は、主管部32が真っ直ぐとなる直管式のものとして形成されている。以下、各構成部材について説明する。
【0024】
上記主管部32は、上記の如く真っ直ぐに形成されている。また、主管部32は、上記の如く二重管構造に形成されている。主管部32は、主管部内管32aと、主管部外管32bとを備えて構成されている。主管部内管32aは、この全体が主管部外管32bにより覆われている。主管部内管32aと主管部外管32bは、所定の間隔をあけて配置されている。
【0025】
上記左トランス部33及び上記右トランス部34は、主管部32よりも内径が大きくなるように形成されている。また、左トランス部33及び右トランス部34は、上記の如く二重管構造に形成されている。
【0026】
左トランス部33は、左トランス部内管33aと、左トランス部外管33bとを備えて構成されている。左トランス部内管33aは、左トランス部外管33bにより覆われている。左トランス部内管33aと左トランス部外管33bは、所定の間隔をあけて配置されている。左トランス部33は、主管部32の左端部に連成されている。具体的に、左トランス部内管33aは、主管部内管32aの左端部に連成されている。また、左トランス部外管33bは、主管部外管32bの左端部に連成されている。
【0027】
右トランス部34は、右トランス部内管34aと、右トランス部外管34bとを備えて構成されている。右トランス部内管34aは、右トランス部外管34bにより覆われている。右トランス部内管34aと右トランス部外管34bは、所定の間隔をあけて配置されている。右トランス部34は、主管部32の右端部に連成されている。具体的に、右トランス部内管34aは、主管部内管32aの右端部に連成されている。また、右トランス部外管34bは、主管部外管32bの右端部に連成されている。
【0028】
上記左配管部35及び上記右配管部36は、所定の内径を有するように形成されている。また、左配管部35及び右配管部36は、上記の如く二重管構造に形成されている。
【0029】
左配管部35は、左配管部内管35aと、左配管部外管35bとを備えて構成されている。左配管部内管35aは、左配管部外管35bにより覆われている。左配管部内管35aと左配管部外管35bは、所定の間隔をあけて配置されている。左配管部35は、この一端が左トランス部33の中間部に連成されている。具体的に、左配管部内管35aは、この一端が左トランス部内管33aの中間部に連成されている。また、左配管部外管35bは、この一端が左トランス部外管33bの中間部に連成されている。
【0030】
右配管部36は、右配管部内管36aと、右配管部外管36bとを備えて構成されている。右配管部内管36aは、右配管部外管36bにより覆われている。右配管部内管36aと右配管部外管36bは、所定の間隔をあけて配置されている。右配管部36は、この一端が右トランス部34の中間部に連成されている。具体的に、右配管部内管36aは、この一端が右トランス部内管34aの中間部に連成されている。また、右配管部外管36bは、この一端が右トランス部外管34bの中間部に連成されている。
【0031】
上記流路切換手段37は、後述する試験液及び流体の流路を切り換えるために備えられている。このような流路切換手段37は、左配管部35及び右配管部36の間に配置されている。具体的に、流路切換手段37は、左配管部35及び右配管部36の各他端に連成されている。流路切換手段37は、左配管部35及び右配管部36と同じ内径を有する切換配管部43と、四つのバルブ44とを備えて構成されている。
【0032】
切換配管部43は、図示のような経路を有しており、切換配管部内管43aと、切換配管部外管43bとを備えて構成されている。切換配管部内管43aは、切換配管部外管43bにより覆われている。切換配管部内管43aと切換配管部外管43bは、所定の間隔をあけて配置されている。切換配管部内管43aは、左配管部内管35a及び右配管部内管36aの各他端に連成されている。また、切換配管部外管43bは、左配管部外管35b及び右配管部外管36bの各他端に連成されている。四つのバルブ44は、図示のような位置で切換配管部内管43a及び切換配管部外管43bに跨るように配置されている。
【0033】
切換配管部43における引用符号45、46は、試験液導入口、試験液導出口を示している。試験液導入口45と、左配管部35及び右配管部36との間には、また、試験液導出口46と、左配管部35及び右配管部36との間には、それぞれバルブ44が二つずつ配置されている。バルブ44は、後述する制御・演算装置52によって開閉が制御されるようになっている。
【0034】
上記の二重管構造となる各部分の内管及び外管は、例えばステンレス系やカーボンスチール系の材料により形成されている。また、所望の肉厚で形成されている。本形態においては、二重管構造であることから、内管の肉厚が従来の主管部の肉厚よりも薄肉、すなわち耐圧構造を従来よりも緩和したものとなっている。
【0035】
上記流体供給手段38は、後述する流体を流路切換手段37に供給するとともに、流路切換手段37から排出される流体を流すために備えられている。このような流体供給手段38は、流体配管47と、四方流路切替弁48と、調整器49とを備えて構成されている。流体配管47の二つの接続部は、流路切換手段37の切換配管部外管43bにそれぞれ連成されている。本形態においては、上記二つの接続部が試験液導入口45、試験液導出口46の近傍の切換配管部外管43bにそれぞれ連成されている。調整器49は、四方流路切替弁48の上流側に配置されている。調整器49については後述する。
【0036】
上記体積計量手段39は、左デテクタースイッチ50と、右デテクタースイッチ51と、制御・演算装置52とを備えて構成されている。左デテクタースイッチ50と右デテクタースイッチ51は、既知の方法によって主管部32に配置されている。左デテクタースイッチ50と右デテクタースイッチ51は、運動子40を移動させるための所定区間の両端に配置されている。左デテクタースイッチ50及び右デテクタースイッチ51において生成される信号は、図示しない回線を通じて制御・演算装置52へ入力されるようになっている。
【0037】
制御・演算装置52は、所謂マイクロコンピュータの機能を有しており、左デテクタースイッチ50及び右デテクタースイッチ51からの信号に基づいて後述する試験液の体積量を演算することができるように構成されている。また、制御・演算装置52は、バルブ44の開閉を制御したり、調整器49を制御したり、以下で説明する温度管理手段41や圧力管理手段42の一構成として機能したりするようになっている。制御・演算装置52は、演算した体積量を外部出力することができるように構成されている。
【0038】
上記運動子40は、主管部32の所定区間を移動したり、左トランス部33又は右トランス部34に静止したりすることができるように形成されている。本形態においては、球状の液封弾性体(Sphere)が運動子40として用いられている。運動子40は、主管部内管32aの内径よりも例えば1〜2%大きく膨らんだ状態に形成されている。
【0039】
上記温度管理手段41は、一対の左温度計測器53と、一対の右温度計測器54と、制御・演算装置52と、調整器49とを備えて構成されている。一対の左温度計測器53の一方は、左トランス部33において後述する試験液の温度を、また、他方は、同じく左トランス部33において後述する流体の温度を計測して、この計測値を図示しない回線を通じて制御・演算装置52へ送信するようになっている。
【0040】
一対の右温度計測器54の一方は、右トランス部34において後述する試験液の温度を、また、他方は、同じく右トランス部34において後述する流体の温度を計測して、この計測値を図示しない回線を通じて制御・演算装置52へ送信するようになっている。
【0041】
制御・演算装置52は、温度の計測値データに基づいて調整器49を制御するようになっている。調整器49は、制御・演算装置52からの制御信号に基づいて、後述する流体の温度を調節したり、流速を調節したりするようになっている。
【0042】
上記圧力管理手段42は、一対の左圧力計測器55と、一対の右圧力計測器56と、制御・演算装置52と、調整器49とを備えて構成されている。一対の左圧力計測器55の一方は、左トランス部33において後述する試験液の圧力を、また、他方は、同じく左トランス部33において後述する流体の圧力を計測して、この計測値を図示しない回線を通じて制御・演算装置52へ送信するようになっている。
【0043】
一対の右圧力計測器56の一方は、右トランス部34において後述する試験液の圧力を、また、他方は、同じく右トランス部34において後述する流体の圧力を計測して、この計測値を図示しない回線を通じて制御・演算装置52へ送信するようになっている。
【0044】
制御・演算装置52は、圧力の計測値データに基づいて調整器49を制御するようになっている。調整器49は、制御・演算装置52からの制御信号に基づいて、後述する流体の圧力を調節したりするようになっている。
【0045】
次に、上記構成に基づいて本発明の多重型基準体積管31の作用を説明する。
【0046】
図1の検定開始前の状態では、試験液導入口45を通じて上記の各内管の内部に試験液が流れる。また、流体供給手段38を通じて上記の各外管の内部に流体が流れ、この流体によって各内管の外部全体が流体により晒される。検定開始前の状態では、試験液が主管部内管32aの左から右方向へ流れ、また、流体が主管部外管32bの右から左方向へ流れる。試験液と流体は、図中の矢印のように流れが対向する(この限りでないものとする。対向させれば温度置換が行われて温度が安定するという利点を有する)。運動子40は、試験液の流れ方向により、右トランス部34において静止する。以上の状態は、試験液が一定の温度になるまで行われる。圧力は一定に保たれ、流速は調整される。尚、本形態での試験液は石油や灯油であり、流体は温水であるものとする(試験液及び流体は一例であるものとする。流体は空気よりも比熱が高いものを用いることが好ましいものとする)。
【0047】
試験液が一定の温度になると、図2に示す如く、バルブ44の開閉を変更して試験液及び流体の流れ方向を変更し、検定を開始する。試験液は、主管部内管32aの右から左方向へ流れ、また、流体は主管部外管32bの左から右方向へ流れる。これにより、運動子40が右トランス部34から主管部32へと移動する。その後、運動子40は、図3に示す如く、右デテクタースイッチ51を通過するとともに、図4に示す如く、左デテクタースイッチ50を通過して左トランス部33まで移動する。左トランス部33まで移動した運動子40は、試験液から受ける圧力のバランスにより左トランス部33で静止する。以上により検定の片道が終了する。運動子40が右デテクタースイッチ51及び左デテクタースイッチ50を通過すると、信号が図示しない回線を通じて制御・演算装置52へ入力される。制御・演算装置52では、試験液の体積量が得られる。
【0048】
図5に示す如く、バルブ44の開閉を変更して試験液及び流体の流れ方向を変更し、検定戻りを開始する。試験液は、一定の温度に保たれたまま主管部内管32aの左から右方向へ流れ、また、流体は主管部外管32bの右から左方向へ流れる。これにより、運動子40が左トランス部33から主管部32へと移動する。その後、運動子40は、左デテクタースイッチ50を通過するとともに、右デテクタースイッチ51を通過して右トランス部34まで移動する。右トランス部34まで移動した運動子40は、図6に示す如く、試験液から受ける圧力のバランスにより右トランス部34で静止する。以上により検定戻りが終了する。運動子40が左デテクタースイッチ50及び右デテクタースイッチ51を通過すると、信号が図示しない回線を通じて制御・演算装置52へ入力される。制御・演算装置52では、試験液の体積量が得られる。図2〜図6の検定を繰り返し、得られた体積量の平均値を求めると、図示しない被試験流量計の一連の検定が完了する。
【0049】
以上、図1ないし図6までを参照しながら説明してきたように、本発明の多重型基準体積管31によれば、外部温度や外部圧力が外管及びこの外管に流れる流体に作用するものの、内管及びこの内管に流れる試験液にまでは作用し難くなるような構造になる。内管の外部全体が流体により晒されることにより、試験液の温度及び圧力にムラがなくなり、試験液としての安定性を確保することができる。本発明の多重型基準体積管31によれば、外部温度の影響や外部圧力の影響を従来よりも格段に受け難くすることができる。従って、精度の高い基準体積を得ることができる。
【0050】
その他、本発明は本発明の主旨を変えない範囲で種々変更実施可能なことは勿論である。
【0051】
尚、上述では二重管構造の基準体積管となるが、これに限らず多重型の基準体積管にしてもよいものとする。具体的な一例としては、各外管を二重や三重にしたりして多重型の基準体積管を実現することが挙げられるものとする。また、上述の二重管構造のままで各外管の外側に断熱材を設けることにより多重型の基準体積管を実現することも一例として挙げられるものとする。
【0052】
外部温度や外部圧力の影響を妨げることができるのであれば、主管部32、左トランス部33、及び右トランス部34のみを二重管構造等にしてもよいものとする。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本発明の多重型基準体積管の一実施の形態を示す図であり、検定開始前の状態を示す概略図である。
【図2】検定開始状態を示す概略図である。
【図3】検定中の状態を示す概略図である。
【図4】検定片道終了時の状態を示す概略図である。
【図5】検定戻り開始時の状態を示す概略図である。
【図6】検定戻り終了時の状態を示す概略図である。
【図7】主管部の形状がループ管形状の基準体積管の斜視図である。
【図8】主管部の形状が直管形状の基準体積管の概略図である。
【図9】図8の要部断面図である。
【符号の説明】
【0054】
31 多重型基準体積管
32 主管部
32a 主管部内管
32b 主管部外管
33 左トランス部
33a 左トランス部内管
33b 左トランス部外管
34 右トランス部
34a 右トランス部内管
34b 右トランス部外管
35 左配管部
35a 左配管部内管
35b 左配管部外管
36 右配管部
36a 右配管部内管
36b 右配管部外管
37 流路切換手段
38 流体供給手段
39 体積計量手段
40 運動子
41 温度管理手段
42 圧力管理手段
43 切換配管部
43a 切換配管部内管
43b 切換配管部外管
44 バルブ
45 試験液導入口
46 試験液導出口
47 流体配管
48 四方流路切替弁
49 調整器
50 左デテクタースイッチ
51 右デテクタースイッチ
52 制御・演算装置
53 左温度計測器
54 右温度計測器
55 左圧力計測器
56 右圧力計測器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に試験液が流れ運動子が前記内部の所定区間を移動する内管と、該内管全体を覆う外管と、該外管の内部に流体を流して前記内管の外部全体を前記流体により晒す流体供給手段とを備える
ことを特徴とする多重型基準体積管。
【請求項2】
請求項1に記載の多重型基準体積管において、
前記流体を前記試験液の流れる方向に対して逆方向に流す
ことを特徴とする多重型基準体積管。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の多重型基準体積管において、
前記所定区間が直線となる直管式のものとして前記内管及び前記外管を構成する
ことを特徴とする多重型基準体積管。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3いずれか記載の多重型基準体積管において、
前記試験液と前記流体の温度管理を行う温度管理手段を備える
ことを特徴とする多重型基準体積管。
【請求項5】
請求項1ないし請求項4いずれか記載の多重型基準体積管において、
前記内管と前記外管の内圧管理を行う圧力管理手段を備える
ことを特徴とする多重型基準体積管。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−78548(P2007−78548A)
【公開日】平成19年3月29日(2007.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−267950(P2005−267950)
【出願日】平成17年9月15日(2005.9.15)
【出願人】(000103574)株式会社オーバル (82)