太陽電池モジュール、太陽電池モジュール組立体、およびその製造方法
【課題】 太陽電池モジュールを支持体から取り外し可能にする。
【解決手段】 本発明のある態様においては、太陽電池モジュール1と、太陽電池モジュール1の受光面14とは逆の背面12に固着された面ファスナー3の第1係合素子31と、支持体2と、支持体2の支持面22に固着された面ファスナー3の第2係合素子と32を備える太陽電池モジュール組立体100が提供され、太陽電池モジュール1が可撓性を備えるものとされる。第1係合素子31と前記第2係合素子32とは互いに剥離可能に係合されている。
【解決手段】 本発明のある態様においては、太陽電池モジュール1と、太陽電池モジュール1の受光面14とは逆の背面12に固着された面ファスナー3の第1係合素子31と、支持体2と、支持体2の支持面22に固着された面ファスナー3の第2係合素子と32を備える太陽電池モジュール組立体100が提供され、太陽電池モジュール1が可撓性を備えるものとされる。第1係合素子31と前記第2係合素子32とは互いに剥離可能に係合されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は太陽電池モジュール組立体、太陽電池モジュールおよび太陽電池モジュール組立体の製造方法に関する。さらに詳細には、本発明は、支持体に対して着脱可能な太陽電池モジュールを含む太陽電池モジュール組立体、太陽電池モジュールおよび当該太陽電池モジュール組立体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
太陽電池は、日光等の光エネルギーのみを外部エネルギー源として利用し、それ以外の燃料補給が不要な可般型電源である。このため、太陽電池は広範な用途の電源として利用されている。その用途には、災害等により電力供給が停止した際の応急電源用途、遊牧生活者の自給用電源用途、および山岳・孤島・砂漠その他の無電源地域の移動中の電源用途が含まれている。また、自給用電源として固定して動作させる太陽電池モジュールであっても、太陽電池の可搬性のために設置場所を変更する移設の際の障害が少ない。
【0003】
実際の太陽電池によって太陽光のエネルギーから電力を得ようとすると、受光面によって太陽光を適切に受光するために、太陽電池を何らかの支持体に取り付ける必要がある。その支持体の典型例は、建築物・車両などの構造物や、携帯電話・カバンなどの携行品などである。太陽電池パネルまたは太陽電池モジュールを支持体へ取り付ける具体的な手法の一つに、接着を利用する手法がある。例えば特許文献1(特開平9−119202号公報)には、単数または複数枚の太陽電池パネルと、その背面側に設けられた少なくとも断熱材と平板状の板材が、接着層を介して一体化されたものが開示されている。また、支持体への取り付け手法の別のものとして面ファスナーを用いるものも提案されている。例えば特許文献2(特開2003−229946号公報)には、携帯電話の裏面側に沿って取り付け可能な基板の外面側に太陽電池を備えた発電装置と、基板の一側縁部に設けられていて太陽電池に接続された一対の出力端子とで構成され、基板には携帯電話の裏面側に着脱自在に取り付け可能な取付手段を備え、出力端子は、基板を取付手段で携帯電話の裏面側に取り付けた状態で携帯電話に内蔵されたバッテリへの充電端子のうち接触式充電端子に接触可能な状態に設けられていることを特徴とする携帯電話用充電装置が開示されている。特許文献2には、その取付手段を面ファスナーの雄体および雌体で構成する手法が開示されている。そして、特許文献3には、屋根構体の上に置かれる少なくとも1つのペイバと、ペイバに取り付けられた少なくとも1つのペイバファスナと、光を受ける上面と、少なくとも1つのデバイスファスナが取り付けられた底面とを有する光起電力デバイスとを備えるエネルギー発生システムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9−119202号公報(要約)
【特許文献2】特開2003−229946号公報(請求項3)
【特許文献3】国際公開第2008/063660号パンフレット(特表2010−510419号、請求項1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記従来の手法において、断熱材または板材や携帯電話本体といった支持体から太陽電池モジュールを一旦取り外し、その後に必要に応じて同一または別の支持体に取り付ける、といった着脱作業を実際に行なおうとすると多大な困難を伴う。また、そのような着脱作業が可能な太陽電池モジュールには、大幅な制約が生じてしまう。
【0006】
まず、特許文献1の接着による手法においては、断熱材や板材などの支持体に太陽電池パネルを一体化させて得られる組立体から、太陽電池パネルを分離して取り外すことは困難である。支持体に接着された太陽電池パネルを支持体から取り外すためには、接着層を破壊させるだけの非常に強い力を太陽電池パネルと支持体との間に加える必要があるためである。支持体から取り外せなければ、単数または複数の太陽電池パネルが可搬性を有していてもその利点は生かせない。
【0007】
また、特許文献2の面ファスナーによる手法では、太陽電池を含む発電装置や支持体の面積が携帯電話ほどの大きさであれば、取付けた太陽電池モジュールを携帯電話などの支持体から引き剥がすことは不可能ではない。しかし、面ファスナーを用いる場合には、太陽電池の面積が大きくなるにつれて、面ファスナーを剥離することによって発電装置を取り外すことが実際には難しくなる。太陽電池を含む発電装置の面積が小さいままでは発電量が限定されるため、電源としての用途が大幅に限定されてしまう。
【0008】
そして、特許文献3に開示される光起電力デバイス(太陽電池パネル)は、例えば太陽電池セルとして半導体ウェハを複数含む構成である。ここで、特許文献3には、太陽電池パネルがペイバ(屋根材)に対して機械的に結合されることが開示される(例えば特許文献3の国際公開パンフレットにて段落0032;公表公報にて段落0021)。ここでの機械的な結合はデバイスファスナとペイバファスナとによって実現されており、その結合は取り外し可能な程度のものとされている。しかし、半導体ウェハを含むような太陽電池パネルの大きさが大きくなると、機械的に結合しているペイパ(屋根材)から太陽電池パネルを取り外すことは、特許文献2について上述したように実際には困難である。また、太陽電池パネルの大きさが小さいと、所定の面積を確保するために必要な太陽電池パネルの枚数を増やす必要がある。太陽電池パネルの枚数が増すと、太陽電池パネルの設置時や取り外し時の作業負担が増えるのに加えて、電気的な接続部の数も増加する。したがって、特許文献3が開示する構成において太陽電池パネルを取り外し可能な大きさのものとする場合には、太陽電池パネルの設置時や取り外し時の作業負担が増加し、太陽電池パネルの動作時における信頼性が低下する。
【0009】
本発明はこのような問題を解決するためになされたものであり、太陽電池モジュールを支持体に取付ける太陽電池モジュール組立体において、支持体と太陽電池モジュールを着脱可能な(detachable)ものとすることにより、可搬性を有する太陽電池モジュールの用途の拡大に貢献するものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本願の発明者らは、特に、面ファスナーを用いて支持体と太陽電池モジュールが一体化された太陽電池モジュール組立体に注目した。具体的には、面ファスナーを採用して着脱可能な太陽電池モジュールをより大きな面積に拡大する手法を検討した。上述したように、面ファスナーを用いる場合、支持体と太陽電池モジュールの間の面ファスナーの面積が大きくなるにつれて、その面ファスナーを剥離することが難しくなる。確かに、支持体や太陽電池モジュールが例えば携帯電話の筐体程度の大きさである場合には、太陽電池モジュールと支持体との間の面ファスナーを剥離することは可能である。しかし、面ファスナーをなす一対の素子が互いに係合している領域の面積がある程度以上の大きさとなると、面ファスナーを剥離すること自体が困難となる。特に、太陽電池モジュールの全面が支持体に対して面ファスナーによって取り付けられている場合には、面ファスナーが係合している範囲の面積によって太陽電池の面積自体が限定されてしまう。
【0011】
そこで、本発明のある態様においては、可撓性を備える太陽電池モジュールと、該太陽電池モジュールの受光面とは逆の背面に固着されており、該背面の少なくとも一部を覆っている面ファスナーの第1係合素子(a first engagement element)と、剛体である支持体と、該支持体の支持面に固着されており、該支持面の少なくとも一部を覆っている前記面ファスナーの第2係合素子とを備え、前記第1係合素子と前記第2係合素子とが互いに剥離可能に係合されている(engaged with each other in a removable manner)太陽電池モジュール組立体が提供される。
【0012】
また、本発明のある態様においては、受光面と、該受光面とは逆の背面と、該背面に固着されており、該背面の少なくとも一部を覆っている面ファスナーの第1係合素子とを備え、支持体の支持面に固着され該支持面の少なくとも一部を覆っている前記面ファスナーの第2係合素子に対して、前記第1係合素子が剥離可能(in a removable manner)に係合されるようになっている(adapted to be engaged with the first engagement element)可撓性の太陽電池モジュールが提供される。
【0013】
加えて、本発明のある態様においては、可撓性を備える太陽電池モジュールの受光面とは逆の背面に面ファスナーの第1係合素子を固着して、該背面の少なくとも一部を該第1係合素子により覆うステップと、剛体である支持体の支持面に前記面ファスナーの第2係合素子を固着して、該支持面の少なくとも一部を該第2係合素子により覆うステップと、前記第1係合素子を前記第2係合素子に対して剥離可能に係合させて、前記太陽電池モジュールを前記支持体の前記支持面に取り付けるステップとを含む太陽電池モジュール組立体の製造方法が提供される。
【0014】
面ファスナー(touch and close fastener)は、任意のタイプの面ファスナーを含み、特定のタイプのものに限定されない。面ファスナーは、別の呼び方として、フック・アンド・ループ・ファスナー(hook and loop fastener)と呼ばれることもある。一般に、面ファスナーは、一方の面にパイルが多数設けられたテープ状の素子の対を含んでいる。この一対の素子は、互いのパイル面を接するようにして閉止(close)されることによって互いに係合(engage)する。また、係合している一対の素子は、互いに引き離すように剥離する力を作用させることにより係合が解放(disengage)される。このため、この一対の素子のそれぞれは互いに剥離可能である。また、この一対の素子が、互いに分離されている二つの物体のそれぞれに固着されていると、その二つの物体は、互いに取り付けることや取り外すことが可能となって、着脱可能なものとなる。
【0015】
本出願における太陽電池モジュールとは、少なくとも太陽電池として動作する電気光学部品を含む任意の要素をいう。この太陽電池モジュールには、任意の種類の太陽電池、より一般には光電変換装置(photovoltaic device)の単体または集積したものが少なくとも一部として含まれている。このように作製されている限り、任意の部品要素(component)、部材(member)、または組立体(assembly)などの任意の形態として太陽電池モジュールが実施される。このため、本出願における太陽電池モジュールは、太陽電池素子、太陽電池セル、太陽電池パネルなどと呼ばれる任意の光電変換装置を含んでいる。
【0016】
さらに、本出願において特に可撓性の(flexible)太陽電池モジュールとは、典型的には、薄膜半導体や有機物を利用し、例えば可撓性基板に形成されて全体としても可撓性を示している任意の太陽電池モジュールを意味する。この薄膜半導体を利用する太陽電池は特に限定されるものではなく、単一のnip接合、pn接合を有する太陽電池、複数の接合を用いるタンデム型等の任意の太陽電池を含み、その半導体の材質も、シリコン、ゲルマニウムに代表される任意の材質を含むことができる。また、半導体層の結晶性は、アモルファス、微結晶等の任意のものから選択される。有機物を利用する太陽電池においても、その発電層の材質は特段限定されない。さらに、上記可撓性基板には、樹脂フィルム基板、金属薄板基板等、可撓性を示す任意の基板を採用することが可能である。なお、本出願における可撓性は、面ファスナーの剥離挙動と関連して、また、本出願において規定される剛性の値に対応づけることによって詳細に定義される。この定義については実施形態の説明において詳述する。
【0017】
また、本出願における太陽電池モジュールが指し示すものの中には、任意の目的によって付加される付加的部品要素(additional component)が組み合わされた組立体となっているものも含まれている。そのような付加的部品要素は、例えば耐候性を高めるための封止樹脂や可撓性を保ちつつ強度を確保するための補強部材を含む。太陽電池モジュールとして組立体を呼称する場合には、面ファスナーの剥離の際に分離が予定されていない限り、当該組立体全体を太陽電池モジュールとして扱う。
【0018】
加えて、本出願における支持体(support member)とは、太陽電池モジュールを概ね一方の面から支持する機能を提供する任意の物体をいう。支持体の太陽電池モジュール側に対向する面を特に支持面(support surface)と呼ぶ。
【0019】
そして、本出願における太陽電池モジュール組立体(solar cell module assembly)とは、太陽電池モジュールと支持体とを組み合わせた構造の組立体をいう。
【発明の効果】
【0020】
本発明のいくつかの態様によれば、太陽電池モジュールを支持体から取り外し、必要に応じて同一のまたは他の支持体に取り付けることが容易に行える太陽電池モジュール組立体や太陽電池モジュールを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】従来の太陽電池モジュール組立体の構造を示す模式断面図である。
【図2】本発明のある実施形態の太陽電池モジュール組立体の構造を示す模式断面図である。
【図3】本発明のある実施形態の太陽電池モジュール組立体において、支持体から取り外した可撓性太陽電池モジュールを面ファスナーの第1係合素子側から見た斜視図である。
【図4】本発明のある実施形態の太陽電池モジュール組立体において、可撓性太陽電池モジュールを取り外した支持体を面ファスナーの第2係合素子側から見た斜視図である。
【図5】太陽電池モジュール組立体の構成を示す模式断面図であり、可撓性太陽電池モジュールの一方の端部を引き起こして面ファスナーの剥離させ始めた時点(図5(a))と、その剥離を進行させた時点(図5(b))とにおける太陽電池モジュール組立体の構成を示す。
【図6】本発明のある実施形態において導入される剛性の値を決定する測定配置を示す模式図である。
【図7】板材を用いた剛性検討サンプルの構成(図7(a))と、剥離の様子(図7(b)および(c))とを示す模式断面図である。
【図8】本発明のある実施形態において、支持体の支持面を曲面とする変形例である太陽電池モジュール組立体の模式断面図である。
【図9】本発明のある実施形態において、面ファスナーの第1係合素子を一部のみに配置する可撓性太陽電池モジュールの例を示す斜視図である。
【図10】本発明のある実施形態において、面ファスナーの第2係合素子を一部のみに配置する支持体の例を示す斜視図である。
【図11】本発明のある実施形態において、太陽電池モジュール組立体の可撓性太陽電池モジュールが取付けられる別の支持体の構成を示す斜視図である。
【図12】本発明のある実施形態において、接着剤によって可撓性太陽電池モジュールと支持体とを直接固着して得られる太陽電池モジュール組立体の模式断面図である。
【図13】本発明のある実施形態において、可撓性を備えた支持体を用いる太陽電池モジュール組立体の構成を示す模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態について説明する。以下の説明に際し特に言及がない限り、全図にわたり共通する部分または要素には共通する参照符号が付されている。また、図中、各実施形態の要素のそれぞれは、必ずしも互いの縮尺比を保って示されてはいない。
【0023】
<第1実施形態>
本出願において提案される一つの実施形態は、可撓性を備える太陽電池モジュール(flexible solar cell module)を、面ファスナーを用いて支持体に組み合わせるものである。本実施形態の意義の適切な理解のために、まず、従来の太陽電池モジュール組立体において面ファスナーの剥離が困難となる原因として本願発明者らが突止めたメカニズムから説明する。それは端的には、従来の太陽電池モジュール組立体において面ファスナーを剥離しようとする際には、面ファスナーが係合している範囲の全域においてほぼ同時に剥離が生じる必要が生じ、このために取り外しのために必要な力が過大になっている、というものである。より詳細なメカニズムは、従来の太陽電池モジュール組立体における面ファスナーの剥離挙動(peeling action)の説明によって明らかにされる。
【0024】
[面ファスナーの剥離挙動:太陽電池モジュールと支持体がともに剛体の場合(従来例)]
図1は、従来の太陽電池モジュール組立体800の構造を示す断面図である。従来の太陽電池モジュール組立体800は大略、太陽電池モジュール81と面ファスナー3と支持体2とを備えている。ここで、面ファスナー3は、第1係合素子31と第2係合素子32とを有している。第1係合素子31と第2係合素子32は、向かい合ったある面的な範囲において互いに係合している。以下、第1係合素子31と第2係合素子32が互いに係合する面的な範囲を「係合域」と記す。
【0025】
太陽電池モジュール81は、単結晶型太陽電池素子84とガラス板86とを備えている。ガラス板86は、単結晶型太陽電池素子84の不測の破損を防ぐことなどの目的で用いられている。太陽電池モジュール81の一方の面はガラス板86が露出しているため、当該一方の面は、太陽電池モジュール81全体から見ると、単結晶型太陽電池84への照射光を受光する受光面94となっている。したがって、単結晶型太陽電池84はガラス板86を通じて外光を受けて発電を行なう。また、太陽電池モジュール81の他方の面には単結晶型太陽電池84が配置され、その単結晶型太陽電池84は耐候性を高めるための封止樹脂96によって封入または封止されている。
【0026】
太陽電池モジュール81の背面92つまり受光面94の逆の面には、面ファスナー3の第1係合素子31が十分な強度で固着されている。この固着は、第1係合素子31を封止樹脂96に接着して実現されている。その一方、支持体2の支持面22には面ファスナーの第2係合素子32が例えば接着により十分な強度で固着されている。第1係合素子31および第2係合素子32は、互いに係合している状態で互いを引き離す引張力や互いをずらす剪断力が作用すると、これらの力に対する反力すなわち反作用によって面ファスナー3としての保持作用を発揮する。このように、従来の太陽電池モジュール組立体800においては、太陽電池モジュール81が第1係合素子31および第2係合素子32を有する面ファスナー3によって支持体2に取り付けられている。
【0027】
ここで、従来の太陽電池モジュール組立体800に用いる太陽電池モジュール81は剛体である。というのも、太陽電池モジュール81に埋め込まれている単結晶型太陽電池素子84には可撓性がなくガラス板86にも可撓性がないためである。以下、太陽電池モジュール81を「剛体太陽電池モジュール81」という。なお、本出願全体において用いる「可撓性」および「剛体」の用語の定義については後述する。
【0028】
剛体太陽電池モジュール81を採用する従来の太陽電池モジュール組立体800における面ファスナー3は、剛体太陽電池モジュール81を支持体2から取り外す際に特有の剥離挙動を示す。具体的には、剛体太陽電池モジュール81と支持体2とが共に剛体である場合には、剛体太陽電池モジュール81を支持体2から取り外す際に、面ファスナー3の係合がごく短い時間に解放される。第1係合素子31および第2係合素子32の係合域の全体において、ごく短い時間に剥離が完了するのである。この剥離の挙動を、本出願において「全面同時剥離」(cleavage removal)と呼ぶ。ここで、第1係合素子31および第2係合素子32の間の係合域の面積が拡大された場合であっても、支持体2と剛体太陽電池モジュール81とがともに十分に剛性が高い剛体であるときには全面同時剥離となる。この面ファスナー3の係合域の剥離が全面同時剥離となると、係合域の全体において剥離を同時に生じさせるだけの力を必要とする。そのため、面ファスナー3の剥離挙動が全面同時剥離である限り、第1係合素子31および第2係合素子32の間の係合域の面積が拡大されると、その面積に比例して剥離に必要な力も増大してしまう。
【0029】
実際に剛体太陽電池モジュール81を支持体2から取り外す作業を行なう際には、さらに別の問題も生じる。第1係合素子31および第2係合素子32の係合域の面積が大きい場合には、第1係合素子31および第2係合素子32の係合域の全体に均一に力を加えることが困難となることである。このため、取り外すために加えられる力は、剛体太陽電池モジュール81や支持体2に対して局部的なものとなる。
【0030】
このように、太陽電池モジュール組立体800における剛体太陽電池モジュール81の取り外しの際には、強い力を剛体太陽電池モジュール81に作用させる必要が生じる。しかもその力は剛体太陽電池モジュール81や支持体2に対して局部的なものとなる。必然的に、取り外そうとする力によって剛体太陽電池モジュール81または支持体2には曲げ荷重が作用する。ここで、ある値以上の曲げ荷重を作用させると、可撓性を有しない剛体太陽電池モジュール81や支持体2は、脆性破壊により破損してしまう。その破損は、典型的には、剛体太陽電池モジュール81が複数の破片へと破断(break)する結果をもたらすか、または外見上の破断に至らない場合でも、剛体太陽電池モジュール81に内部に微小破壊を生じさせて例えば電気的な動作を不安定にする場合もある。結局、面ファスナー3を広い面積で係合させて剛体太陽電池モジュール81を支持体2に取付けると、剛体太陽電池モジュール81を破損せずに支持体2から取り外すことは困難となる。
【0031】
以上が、面ファスナー3における第1係合素子31および第2係合素子32の係合域の面積を広げた場合に、破損を伴うことなく従来の剛体太陽電池モジュール81を支持体2から取り外すことが困難となるメカニズムである。そしてその原因は、剛体太陽電池モジュール81および支持体2が剛体である場合に特有の、面ファスナー3の全面同時剥離という剥離挙動のためである。
【0032】
[面ファスナーの剥離挙動:太陽電池モジュールが可撓性を備える場合]
従来の剛体の太陽電池モジュールを採用するものとは異なり、本実施形態においては、可撓性を備える太陽電池モジュールを採用する。その結果、本実施形態においては太陽電池モジュールを支持体から取り外すことが容易になる。その理由も、太陽電池モジュールが支持体から取り外する際の挙動を説明することにより明らかとなる。
【0033】
図2は本実施形態の太陽電池モジュール組立体100の構造を示す断面図である。太陽電池モジュール組立体100は大略、太陽電池モジュール1と面ファスナー3と支持体2とを備えている。ここで、本実施形態の太陽電池モジュール1は可撓性を備えている。以下、太陽電池モジュール1を「可撓性太陽電池モジュール1」という。面ファスナー3は、第1係合素子31および第2係合素子32を備えており、上述した従来の太陽電池モジュール組立体800の場合と同様に構成され同様の作用を発揮する。
【0034】
太陽電池モジュール組立体100に用いる可撓性太陽電池モジュール1に可撓性を付与することは、可撓性太陽電池モジュール1に埋め込まれている太陽電池素子4を、例えば可撓性樹脂基板に形成された薄膜半導体太陽電池とすることによって達成される。従来の太陽電池モジュール組立体800の場合におけるガラス板86のような破損を防ぐための剛体基板は、可撓性太陽電池モジュール1においては用いられない。また、封止樹脂16は、可撓性太陽電池モジュール1の可撓性を妨げないようにその材質が適切に選択されている。
【0035】
図3は、本実施形態の太陽電池モジュール組立体100において、支持体2から取り外した可撓性太陽電池モジュール1を第1係合素子31側から見た斜視図である。また、図4は、本実施形態の太陽電池モジュール組立体100において、可撓性太陽電池モジュール1を取り外した支持体2を第2係合素子32側から見た斜視図である。図3および図4に示すように、面ファスナー3の第1係合素子31は可撓性太陽電池モジュール1の受光面14とは逆の背面12の全面に対して、また、面ファスナー3の第2係合素子32は支持体2の支持面22の全面に対して、それぞれ接着されて固着されている。図2のように、面ファスナー3の第1係合素子31および第2係合素子32によって、可撓性太陽電池モジュール1は支持体2に取付けられている。
【0036】
図2に示した太陽電池モジュール組立体100において可撓性太陽電池モジュール1の端部を支持体2の支持面22に垂直な方向に向かって引き起こすように力を印加すると、面ファスナー3の第1係合素子31は第2係合素子32との係合が解放される。図5は、太陽電池モジュール組立体100の構成を示す模式断面図である。ここで、図5(a)および(b)はそれぞれ、可撓性太陽電池モジュール1の一方の端部を引き起こして面ファスナー3を剥離させ始めた時点(図5(a))およびその剥離を進行させた時点(図5(b))での構成を示している。このような面ファスナー3の剥離過程を進行させることによって可撓性太陽電池モジュール1が支持体2から取り外される。
【0037】
図5(b)においては、図の紙面左端の可撓性太陽電池モジュール1の端部が紙面上方に引かれていて、第1係合素子31のうち剥離している領域が広がってゆく様子が模式的に示されている。この太陽電池モジュール組立体100における可撓性太陽電池モジュール1の取り外しの場合には、面ファスナー3の剥離している部分と係合している部分の境界の近傍において可撓性太陽電池モジュール1が曲がっている(図5(b))。図5(b)に示すように、可撓性太陽電池モジュール1の各部のうち、剥離している部分と係合している部分との境界の近傍の部分は可撓性太陽電池モジュール1全体が大きくたわんで曲がる。これに対して、その時点で剥離されてしまった部分は外力の作用する端部と面ファスナー3の係合している部分とにより引っ張られてむしろ延びている。そして引き続き可撓性太陽電池モジュール1の端部にその端部を引き起こす力を及ぼすと、剥離している領域が第1係合素子31および第2係合素子32の係合域の範囲において拡大してゆくこととなる。この剥離の様子は、全面同時剥離とは対照をなすものであり、本出願においては、このような面ファスナーの剥離挙動を「漸次剥離」(progressive peeling)と呼ぶ。
【0038】
特筆すべきは、可撓性太陽電池モジュール1を支持体2から取り外す場合に漸次剥離が実現すると、その取り外しのために必要な力が面ファスナー3の剥離を進行させる力そのものとなることである。太陽電池モジュール組立体100においては、第1係合素子31および第2の係合素子32が互いに係合している係合域の剥離を進行させるだけの力があれば剥離を行なうことができるのである。しかも、可撓性太陽電池モジュール1を採用する太陽電池モジュール組立体100においては、剥離に必要な力は係合域の面積に関係しなくなる。これが漸次剥離の特質である。可撓性太陽電池モジュール1を採用する太陽電池モジュール組立体100において、係合域の面積にかかわらず、支持体2からの取り外しが可能となる理由は、面ファスナーの剥離挙動が漸次剥離となっているためである。
【0039】
加えて、可撓性太陽電池モジュール1は、支持体2から取り外す際に、第1係合素子31および第2係合素子32が剥離している部分と係合している部分の境界の近傍で曲がったりたわんだりしても、破断してしまったり電気的な動作不良を生じたりしない。このため、一旦取り付けた可撓性太陽電池モジュール1を支持体2から取り外して同一または他の支持体に再度取り付けても、可撓性太陽電池モジュール1を再び動作させる際に特段支障は生じない。
【0040】
[剛性の定義]
次に、可撓性太陽電池モジュール1のような可撓性を備える太陽電池モジュールと、剛体太陽電池モジュール81のような剛体である太陽電池モジュールとを区別するための指標となるパラメータについて説明する。
【0041】
本出願にて着目するのは、太陽電池モジュールの構造上の特性が、面ファスナーの剥離による取り外しに支障が生じる程度のものであるか支障が生じない程度のものであるかという点である。この点から太陽電池モジュールを区別するための指標として、本出願においては次のようにして定義される「剛性」を導入する。図6は、ここで導入される剛性の値を決定する測定配置を示す模式図である。
【0042】
まず、剛性が測定される被試験物(例えば太陽電池モジュール)から幅0.5〜2cm、全長5〜15cmの短冊状の部分を切り出して測定対象の試験片とする。この試験片を対象にして測定される量は、試験片の長手方向の一方の端部を固定して他方の端部に対して荷重Pを印加した際に生じる当該他方の端部のたわみ量(deflection)すなわち変位(displacement)δである。荷重Pを加える向きは試験片の平面つまり元々の被試験物の平面に垂直な方向とする。そして、本出願において導入される剛性kは、その変位δと試験片の幅wとの積によってその荷重Pを除算した値に、試験片の全長から一端の固定された部分を除いた長さL(以下「有効長L」という)を乗じた値として定義される。すなわち、本出願において導入する剛性kは、
k=(P/δ)×(L/w)
と表される。なお、全長5〜15cmの短冊状の部分に対して、有効長Lは4〜14cmとされる。
【0043】
剛性kをこのように定義する意義は、定義される剛性kに求められる以下の三つの要件を満たすためである。すなわち、試験片の材料と厚さが変わらないという条件下において定義される剛性kは、(1)幅wと有効長Lが一定の場合には、変位δが荷重Pに比例すること、(2)荷重Pと幅wが一定の場合には、変位δが有効長Lに比例すること、(3)荷重Pと有効長Lが一定の場合には、変位δが幅wに反比例すること、という要件を満たすように定義されるべきである。これらの要件を満たすように剛性kを定めるためには、剛性kの値が同一となる部材の試験片において、変位δを、荷重Pと有効長Lに比例し幅wに反比例するようにする。また、剛性kは変位δに反比例するべきであるため、結局、荷重Pと有効長Lを分子、幅wと変位δを分母に有する分数をもって上式のように剛性kが定義される。
【0044】
次に、上述した定義に則って算出される剛性kの値と、本出願において可撓性太陽電池モジュール1や支持体2を特徴付けるために用いられる「剛体」や「可撓性(flexible)」という表現との間の関係について説明する。本出願においては、可撓性太陽電池モジュール1について「可撓性を備える(flexible)」との表現は「剛体の(rigid)」と対照させて用いる。このため、任意の太陽電池モジュールは、可撓性を備えるものか剛体のものかのいずれかに分類される。本出願において「剛体」とは、概して、面ファスナー3の剥離挙動において、可撓性太陽電池モジュール1や支持体2が曲ったりたわんだりしている図5(b)の状態を経ないで剥離が完了することに関連づけられる。剛性kの値がある値より大きい場合には、弾性体であっても本出願の意味における「剛体」の範囲に含まれることには注意が必要である。これに対して、本出願において「可撓性を備える」とは、概して、面ファスナー3の剥離挙動において、剥離が完了するまでの間に可撓性太陽電池モジュール1や支持体2が曲ったりたわんだりしている図5(b)の状態を経由することに関連づけられる。
【0045】
本出願においては、より具体的な定義を用いることによっても剛体であることまたは可撓性を備えることが規定される。まず、太陽電池モジュールが剛体であることを具体的に規定するために、本出願において剛体であることは、典型的には、上述した定義に則って算出される剛性kの値が1MN/mを超える範囲に含まれることに対応付けされる。これとは対照的に、本出願において太陽電池モジュールが可撓性を備えることは、典型的には、剛性kの値が0MN/m以上1MN/m以下の範囲にあることに対応付けされる。この可撓性に対応付けされる範囲のうち、特に剛性kの値が0.5MN/m以下の範囲は、とりわけ可撓性のであることに起因する特質および効果が明瞭に発現するため、太陽電池モジュールの剛性kとして好ましい範囲である。
【0046】
可撓性であることを規定する典型的な数値範囲をこのようにして決定する理由は、太陽電池モジュールが可撓性を備える場合に利用される性質が、主として、取り外す際に太陽電池モジュールが図5(b)のように曲がったりたわむことだからである。例えば可撓性太陽電池モジュールが厚さ0.85mmのフレキシブルタイプのものからなるとき、その剛性kの値は、0.0099MN/mであり、厚さ2mmのフレキシブルタイプの別の可撓性太陽電池モジュールにおける剛性kの値は、0.12MN/mである。
【0047】
加えて、可撓性を備える太陽電池モジュールは、任意選択として追加の性質も発現する。その性質とは、例えば支持体に取付けられている状態において可撓性太陽電池モジュールが支持面の形状に沿う形状に変形して、その形状のまま面ファスナーによる係合が維持されることである。実際の可撓性太陽電池モジュールが示す剛性kは、典型的には上述したように例えば0.0099MN/mあるいは0.12MN/mである。この程度の剛性kは、面ファスナーをそれ自体の弾性によって剥離してしまうほど大きい値ではない。このため、太陽電池モジュールが可撓性を備える場合には、時間の経過とともに次第に面ファスナー3が剥離してしまい可撓性太陽電池モジュールが部分的にでも外れてしまうといった不具合も未然に防止することができる。
【0048】
支持体2は、例えば、十分な厚みの金属板、木板、樹脂板、タイルなどの任意の材質から構成される剛体である。支持体2が剛体であるかとうかについても剛性kの値によって決定することが可能である。剛性kの値によって支持体2が剛体であるかとうかを決定する場合にも、太陽電池モジュールと同一の定義に則った剛性kの値に基づく判断を採用することができる。ここで、本出願において剛体である支持体2は、高い剛性kを示す一様な材質のものには限定されない。例えば、主たる素材が剛体であり、剛性kの高くない材質によってその主たる素材が被覆されているような支持体2も、上述したように定義される剛性kの値が全体として1MN/mを超えれば本出願においては剛体とされる。また、従来の剛体太陽電池モジュール81も、約500μm程度の厚さのシリコン層を有する単結晶型太陽電池素子84や、例えば3〜4mm程度の厚さのガラス板86を互いに積層した構成を有しているため剛性kの値が10MN/mを超える程度となり、剛体である。なお、剛性kの測定においては、例えば3mm程度の厚さのガラス板から作製した試験片や、全体として4mm程度の厚さとなるガラスを用いた太陽電池モジュールから作製した試験片では、測定装置の数値の上限が10MN/mであったため、10MN/mを超えることのみを確認している。
【0049】
[剛性の値による脱離力の違い]
本出願におけるより具体的な提案は、上述した定義に則って算出される剛性kの値を指標とすることにより、面ファスナーとの組み合わせに適する太陽電池モジュールの構造上の性質を規定することができる、という点である。この提案を説明するために、面ファスナーによって支持体に取付けられている太陽電池モジュールを支持体から取り外すために必要な力が、太陽電池モジュールの剛性kの値によって変化する様子の調査結果について詳述する。この変化を調査する実験は、板材を面ファスナーによって支持体に対して取付けておき、その板材を支持体から力によって取り外す際に要する閾値となる力(本出願において「脱離力」という)を測定して行なう。つまり、剛性kの値が異なる板材を太陽電池モジュールと見立てて支持体との間での剥離実験を行なうのである。図7は、板材を用いた剛性の検討用のサンプル(以下、「剛性検討サンプル」という)の構造(図7(a))と、剥離の様子(図7(b)および(c))とを示す模式断面図である。
【0050】
まず、面ファスナー3の第1係合素子31および第2係合素子32のうち、第1係合素子31が板材71〜76の背面に、また、第2係合素子32が支持体2の支持面22にそれぞれ固着される。そして、図7(a)に示すような配置に板材71〜76、面ファスナー3および支持体2をセットして剛性検討サンプルとする。板材71〜76は、互いに剛性kの値が異なる複数の板材であり、剛性検討サンプルは板材71〜76のうちのいずれか一枚が面ファスナー3によって支持体2に取り付けられる。板材以外の構造が同一であるため、剛性検討サンプルそれぞれは板材71〜76によって特定(identify)される。表1に剛性検討サンプルそれぞれに用いる各板材の材質および板厚を示している。なお、表1には、各板材に対して、試験片のサイズを、幅wを0.7cm、有効長Lを8cmとした場合に変位δから求められた剛性kの値も記載されている。
【表1】
【0051】
各剛性検討サンプルにおける板材71〜76の材質は、各板材を取り外すための脱離力と面ファスナーの剥離挙動との間の関連を調査するために、剛性kの違いによる効果のみが評価できるようなものが選択されている。実際の太陽電池モジュールの場合のように脆性破壊したり塑性変形してしまうと面ファスナーの剥離に対する剛性kのみの影響が確認できないためである。ここでは、板材71〜76の材質としてすべてSUS304ステンレス鋼(表1において、SUSと略記)を採用している。準備された板材の寸法は、厚み以外は共通して幅10cm、長さ10cmの矩形形状とされており、各板材の厚みは表1に示した通りである。
【0052】
面ファスナー3は剥離強さ(peel strength)が異なる二種類の面ファスナーそれぞれを、すべての剛性検討サンプルの板材および支持体に固着する。面ファスナーの剥離強さは、0.1N/cmのものおよび4N/cmのものを採用する。この面ファスナー3の配置は、各板材の一方の面の全面と支持体の支持面の全面である。なお、面ファスナーの剥離強さは、例えばJIS L 3416に記載の試験方法により測定される。
【0053】
図7(a)のような剛性検討サンプルを準備する際には、各板材に固着した第1係合素子31と支持体2に固着した第2係合素子32とを互いに対向させて閉止し、次いで外力によって押圧することによって係合させる。この押圧の条件は、各剛性検討サンプルに共通となるように決定されている。具体的には、まず第2係合素子32の固着された支持面22を鉛直上向きに向けて支持体2を静止させ、その上に、第1係合素子31を固着した面に下に向けた板材71〜76を置く。次に、板材71〜76のさらに上方から加圧用の平板(図示しない)を置く。そして、加圧用平板の上側の面に重り(図示しない)を静かに置く。この重りは、加圧用平板と各板材との合計の質量によって係合域に印加される圧力(面圧)が2N/cm2となるように、板材71〜76それぞれに合わせて調整される。その後、重りと加圧用平板を板材から静かに下ろす。こうして、面ファスナー3の係合の条件が各板材に対して一定にされる。
【0054】
次に、支持体2を固定して、各板材を支持面22から遠ざける向きの力を図7(a)の板材の左端の位置に印加する。この力を一定の割合で増大させながら、第1係合素子31と第2係合素子32の間の剥離が進行するかどうかを観察する。その際、各剛性検討サンプルについて、板材71〜76を支持体2から完全に取り外すまでに要する力の最大値を記録しながら取り外す操作を10回行い、各操作において記録された力の最大値を平均して板材71〜76それぞれの脱離力とする。その結果をまとめると、面ファスナーの剥離強さが0.1N/cmのときには表2の結果が得られる。
【表2】
ここで、剥離挙動の欄は、漸次剥離であるか全面同時剥離であるかを示している。また、表2における脱離性は、脱離力を階層化して表現したものであり、表3のような基準に基づくものである。
【表3】
【0055】
すなわち、板材71および72(剛性kは、それぞれ0.2NM/mおよび0.5NM/m)においては、それぞれ、10N(1.0kgf)および20N(2.0kgf)の大きさの力によって板材71および72を支持体2から取り外すことが可能である。図7(b)は、板材71および72について観察される板材の剥離の様子を示している断面模式図である。このように、板材71および72については、図5(b)の可撓性太陽電池モジュール1と同様に、支持面22から曲がるようにたわんだ状態を保って板材71および72の剥離を徐々に進行させることができる。つまり、図7(b)は漸次剥離の様子を示している。したがって、面ファスナー3の剥離を継続的に進行させれば、板材71および72を支持体2から取り外すことは容易である。最終的には、図7(c)に示すように、板材71および72は支持体2から外れる。
【0056】
板材73および74についても、表2に示すように、それぞれ40Nおよび200Nの力(4.1kgfおよび20.4kgf)によって取り外すことが可能であり、そのときには、図7(b)に模式的に示されるような漸次剥離の様子が明瞭に観察される。
【0057】
これに対して板材75では、600N(61.2kgf)まで力を増大させて初めて剥離が可能となる。この板材75では、面ファスナー3の剥離挙動が板材71〜74とは異なっている。具体的には、600Nまで力を増大させて第1係合素子31と第2係合素子32との間の係合が端部で解放されはじめると、係合域の全体の剥離がごく短い時間に完了する。図7(b)の状態にならずに瞬く間に剥離が完了し、図7(c)のように取り外された状態になる。つまり、面ファスナー3の剥離挙動は全面同時剥離である。この際の600Nという力はごく短時間のみに必要な力である。この力は500Nを上回る強い力であるため、作業者が例えば手の引く力のみで板材75を支持体から外すことには困難を伴う。特に、短い時間だけ強い力を発揮することは人力では難しいことから、板材75では板材71〜74に比べて作業性が劣る。板材75よりもさらに剛性kの大きい板材76では、800N(81.6kgf)という強い力を作用させても図7(a)の配置のままであり、板材76は支持体2から外れない。そこで、どの程度の力が必要であるかを調査するために800Nを超えて力を増大させると、板材76は1000N(100.2kgf)になって初めて支持体2から外れる。この板材76の場合にも、板材75の場合と同様に、図7(a)の状態から図7(c)の状態となるため、面ファスナー3の第1係合素子31と第2係合素子32との係合域の全体が一気に剥離して全面同時剥離となっている。この1000Nもの力は、基準として採用している800Nの力よりも大きいため、作業者が人力によって板材76を支持体から取り外すことは不可能と判断される。
【0058】
なお、表2の調査のための実験条件について補足する。支持体2は、例えば厚いガラス板を用いており、その変形は考える必要がない。すなわち、表2の調査結果は支持体2が剛体である条件のものである。また、板材の大きさ(幅10cm、長さ10cm)に合わせて面ファスナー3を選択している。
【0059】
表2に示した結果から、剥離強さが0.1N/cmと弱い面ファスナーを用いる場合には、剛性kが0MN/m以上1MN/m以下の板材71〜74を用いると、面ファスナーの剥離が徐々に進行する漸次剥離が可能となって、作業者が取り外す作業を安定して行なうことができることがわかる。さらに剛性kが0.5MN/m以下の板材71および72を用いると、剥離に要する力が作業に適した範囲の値に限定されるため、作業性を大幅に高めることが可能となる。
【0060】
さらに、板材71〜76を4N/cmと大きい剥離強さの面ファスナーによって支持体2に取り付けて剥離実験を行なった結果を表4に示す。
【表4】
なお、表4中の板材76の脱離力は、測定装置の測定上限値(1000N)の範囲内にて板材76の取り外しができないことを示している。また、階層化に用いた脱離性の基準は表3と同じである。
【0061】
剥離強さが4N/cmの面ファスナーを用いる場合の剥離挙動も、板材76を除き表2の各板材と同様である。つまり、板材71〜74においては、図7(b)に模式的に示されるような漸次剥離の様子が明瞭に観察される。これに対して、板材75では、図7(b)の様子は観察されず、全面同時剥離となって図7(a)から図7(c)の状態に直接遷移する。板材76については、測定装置の測定限界から1000Nを超える力による測定が不可能なため、剛性検討サンプルにおいては面ファスナー3が剥離せず、板材を取り外すこともできない。
【0062】
また、剥離強さが4N/cmの面ファスナーを用いる場合における脱離性については、0.1N/cmの面ファスナーの場合からみていくつか異なる結果となる。つまり、剥離強さが4N/cmの面ファスナーの場合にも、剛性kが0MN/m以上1MN/m以下の板材71〜74を用いる場合に面ファスナーの剥離を徐々に進行させる漸次剥離が実現され、作業者が取り外す作業を安定して行なうことができる。ただし、4N/cmの面ファスナーを用いる場合、剛性kが0.5MN/m以下の板材であっても、作業が容易となるほどに剥離に要する力が低減される訳ではない。
【0063】
以上の板材を用いた剥離実験からは、太陽電池モジュールが「可撓性」であることを、測定された剛性kが0MN/m以上1MN/m以下の場合、より好ましくは、0.5MN/m以下の場合に対して関連づけることが合理的である。そして、可撓性の範囲のうち特に剛性kの値が0.5MN/m以下の場合は、剥離強さが弱い面ファスナーとの組み合わせにおいて作業が容易になる利点がある。その逆に、支持体や太陽電池モジュールを「剛体」として扱うべき範囲は、剛性kが1MN/mを超える場合とすることが合理的である。なお、これらの数値範囲は、特定の実験条件に基づいて決定されたものである。したがって、これらの数値範囲は例示として示したものである。
【0064】
[実際の太陽電池および部材における剛性の値と脱離力]
次に、板材を用いて行なったのと同様の剥離実験を実際の太陽電池モジュールおよび部材を用いて行なう実験について説明する。この実験において作製されるサンプル(以下、「実物サンプル」という)は、太陽電池の種類または部材によって特定される。具体的には、各実物サンプルは板材に代えて表5に示すような太陽電池や部材を用いる。それぞれの剛性kの値も表5に示す。各実物サンプルのサイズは、幅10cm、長さ10cmとしている。
【表5】
なお、表5に示す剛性kの値を計測する試験片のサイズは、太陽電池モジュールAおよびBが幅2.5cm、有効長8cm、太陽電池モジュールCおよびガラス板Fが幅0.5cm、有効長15cm、そして、金属板DおよびE(ガルバリウム鋼板(登録商標))が幅0.7cm、有効長8cmとしている。表5に示すように、「太陽電池モジュールC」および「ガラス板F」を用いる実物サンプルに対する剛性kの値は、測定可能な範囲の上限である10MN/mを上回り測定不能である。
【0065】
表5の太陽電池や部材それぞれを用いる実物サンプルにおける剥離実験の結果を表6および表7に示す。表6は剥離強さ0.1N/cmの面ファスナーを採用した結果であり、表7は剥離強さ4N/cmの面ファスナーを採用した結果である。
【表6】
【表7】
なお、表6および表7の脱離性の階層化の基準は表3のとおりである。
【0066】
表6および7に示すように、太陽電池モジュールA(剛性:0.0099MN/m)と、太陽電池モジュールB(剛性:0.12MN/m)とは、いずれも、実物サンプルにおける取り外しには問題が生じない。この場合には、図7(b)のような漸次剥離が実現している。表6と表7との結果を対比させても、面ファスナーの剥離強さが0.1N/cmの場合(表6)と4N/cmの場合(表7)との間では、脱離力に違いが生じているものの、その違いは、取り外しが容易といえるか、容易とは言えないものの可能であるか、という範囲の違いにとどまる。これに対して、金属板D(剛性:2.7MN/m)および金属板E(剛性:5.4MN/m)では、面ファスナーの剥離強さが0.1N/cmの場合(表6)であっても、実物サンプルの取り外しのための脱離力が1000Nを超え、脱離は不可能である。さらに、太陽電池モジュールC(剛性:10MN/m超)やガラス板F(いずれも、剛性:10MN/m超))を用いる実物サンプルでは、測定中に面ファスナー3が剥離するよりも先に太陽電池モジュールCやガラス板Fが破損してしまう。このため、太陽電池モジュールCやガラス板Fを用いる実物サンプルも、取り外しは不可能である。
【0067】
しかも、実際の太陽電池や部材を用いた実物サンプルに基づく剥離実験の結果は、板材71〜76の剛性検討サンプルを用いた剥離実験によって得られた剛性kの値に基づく「可撓性」または「剛体」の関連づけにも整合するものとなる。つまり、実際の太陽電池モジュールにおいて、可撓性を備えるとされるべき太陽電池モジュールAおよびBを用いる実物サンプルは取り外しが容易または可能である。これに対して、実際の太陽電池モジュールにおいて、剛体とされるべき太陽電池モジュールCの実物サンプルは、取り外しが不可能である。また、ガラスを利用せず破損しにくい金属板DおよびEを用いた実物サンプルであっても、いずれも、1MN/m超と剛性kの値が大きいことから取り外しが不可能である。このように、実物サンプルに基づく剥離実験の結果は、剛性kの値に基づく「可撓性」または「剛体」の関連づけにも整合している。
【0068】
[係合域の面積の好ましい範囲]
従来の剛体太陽電池モジュール81を用いる場合、面ファスナーの係合域の面積が小さいときには剛体太陽電池モジュール81の取り外しが可能であったとしても、その面積を増大させると取り外すことが困難になる。具体的には、面ファスナーの係合域がある面積より大きい面積であるときには剛体太陽電池モジュール81を支持体2から取り外すことが難しくなる。本実施形態において、この面積の限界値は100cm2である。この点について説明する。
【0069】
上述した面積の限界値が100cm2であることは、弱い剥離強さの面ファスナーを採用した表2および4の結果からも以下のように説明される。面ファスナー3の第1係合素子31および第2係合素子32の間の係合域の面積は、表2および4の結果を得た調査の際には100cm2としている。ここで、面ファスナー3の剥離挙動が、表2において板材71〜74の場合と板材75および76の場合との間で大きく異なっていることに注目する。つまり、板材71〜74では漸次剥離となっているのに対して、板材75および76では全面同時剥離となっている(表2および4)。面ファスナー3の剥離挙動において、図7(b)の板材71〜74のように漸次剥離となると、脱離力は係合域の面積とはほとんど関係しない。これに対して、板材75および76のように全面同時剥離となると、係合域の面積に比例して脱離力も増大する。したがって、係合域の面積100cm2をさらに超えるように係合域の面積を拡大したときの脱離力の変化は、表2および4の結果から容易に類推することができる。つまり、板材71〜74では係合域の面積が100cm2を越えても、板材を支持部材から取り外すことが可能なはずである。係合域の面積が大きくなっても、例えば幅の狭い辺から剥離させるなどの手法を採用すれば、面ファスナーの剥離を行なうことに支障は生じないからである。これに対して、板材75および76において係合域の面積が100cm2を越えて拡大されると、それに比例して脱離力が増大し、取り外しは一層困難になるばかりとなるはずである。
【0070】
もちろん、板材75および76の代わりに現実の剛体太陽電池モジュール81を用いると、支持体から取り外すために必要な力が増大することはさらなる困難をもたらす。すでに述べたように、その強い力が剛体太陽電池モジュール81に対する曲げ荷重を生じさせ、剛体太陽電池モジュール81の破損の可能性が高まるためである。この点からも、剛体太陽電池モジュール81に100cm2を超える面ファスナーの係合域を適用すると破損の点からも剛体太陽電池モジュール81を支持体2から取り外すことは困難となる。
【0071】
このように、表2および4の結果に示される板材71〜74の場合と板材75および76の場合との対比から、面積が100cm2を超える面ファスナーの係合域を適用する場合は可撓性太陽電池モジュール1を採用することがとりわけ有利となることがわかる。つまり、剛体太陽電池モジュール81で100cm2を超える係合域の面積の面ファスナーで剛体の支持体に取り付けると太陽電池モジュールの取り外しが困難または不可能になるのに対し、面ファスナーを適用する太陽電池モジュールを可撓性太陽電池モジュール1とすれば、太陽電池モジュールの面積を100cm2以上としてもそのような困難は生じない。このため、可撓性太陽電池モジュール1それ自体の可搬性とも相まって、可撓性太陽電池モジュール1を採用する太陽電池モジュール組立体100の用途が大幅に拡大される。
【0072】
[面ファスナーの選択]
面ファスナー3は、任意の種類の面ファスナーを用いることができる。面ファスナー3の第1係合素子31および第2係合素子32は、それぞれが同形状であるタイプや異形状であるタイプのいずれのタイプのものも使用することができる。ここで、第1係合素子31および第2係合素子32が互いに異形状であるタイプの場合は、第1係合素子31および第2係合素子32それぞれを雄体および雌体としてもよいし、逆にそれぞれを雌体および雄体としてもよい。この面ファスナー3の第1係合素子31および第2係合素子32は、典型的にはテープ状に形成されていて対にして用いられる。テープ状の各係合素子の一方の面には係合のための多数のパイルが植えるようにして設けられている。各係合素子は任意のタイプのものが選択される。例えば、対にして用いられる第1係合素子31および第2係合素子32においては、いずれか一方と他方との組み合わせとして、それぞれ、フックテープとループテープとされるもの、フックテープとナッピングテープとされるもの、マッシュルームテープとループテープとされるもの、マッシュルームテープとナッピングテープとされるものなどが採用される。なお、これらの例において、フックテープおよびマッシュルームテープを雄体とよび、ループテープおよびナッピングテープを雌体と呼ぶこともある。なお、本出願の各図面においては、面ファスナー2の第1係合素子31および第2係合素子32の個々のパイルは、直方体の規則的な配列によって模式的にのみ示している。
【0073】
可撓性太陽電池モジュール1が取付けられる可能性のある支持体を複数用いる場合には、各支持体に固着される第2係合素子32は、可撓性太陽電池モジュール1に固着されている第1係合素子31と対をなすものに統一される。可撓性太陽電池モジュール1を各支持体に対して着脱可能とするためである。
【0074】
面ファスナー3の第1係合素子31および第2係合素子32は、可撓性太陽電池モジュール1の背面と支持体2の支持面との各面の少なくとも一部を覆っている。第1係合素子31および第2係合素子32の素材は特には限定されないが、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアミド、ポリエステルなどの高分子材料、または金属が採用される。また、可撓性太陽電池モジュール1および第1係合素子31の間と、支持体2および第2係合素子32の間とのいずれにおける固着手法も、特段限定されない。例えば、接着、溶着、融着、縫製を使用する固着手法を、単独でまたは組み合わせて採用することができる。
【0075】
本実施形態の面ファスナー3の剥離強さには好ましい範囲が存在する。具体的には、面ファスナー3には、剥離強さの下限値が好ましくは0.1N/cm以上、さらに好ましくは、0.2N/cm以上のものが用いられる。また、面ファスナー3の剥離強さの上限値は好ましくは4N/cm以下、さらに好ましくは2N/cm以下とする。面ファスナー3の剥離強さが弱いと、例えば可撓性太陽電池モジュール1に風力が作用するだけで可撓性太陽電池モジュール1が支持体2から脱落しかねない。剥離強さが0.1N/cm以上では、そのような脱落は起こりにくくなり、さらに0.2N/cm以上である場合には、脱落は生じなくなる。また、剥離強さが2N/cmを超えると、可撓性太陽電池モジュール1を取り外す作業時に面ファスナー3を剥がしにくくなって作業性が低下する。さらに剥離強さが4N/cmを超えた場合には、例えば過大な曲げ荷重によって可撓性太陽電池モジュール1が破損する確率が高まる。
【0076】
<第1実施形態:変形例1>
[曲面への適用]
本実施形態において採用される可撓性太陽電池モジュール1は、それ自体の可撓性により支持体の支持面に沿って変形することが可能である。このため、可撓性太陽電池モジュール1を取り付け可能な支持面は平面状のものには限定されない。すなわち、支持面を曲面状とした太陽電池モジュール組立体であっても、本実施形態に含まれている。
【0077】
図8は、本実施形態において支持体の支持面を曲面とする変形例の太陽電池モジュール組立体200の断面図である。太陽電池モジュール組立体200は、支持体2Cの支持面22Cが曲面状である以外は、図2に示した太陽電池モジュール組立体100と同様の構造を備えている。
【0078】
ここで、第1係合素子31および第2係合素子32がテープ状である場合には、第1係合素子31および第2係合素子32自体も可撓性を備えている。このため、第1係合素子31および第2係合素子32は、支持体の支持面のみならず、可撓性太陽電池モジュール1の背面においてもその形状に沿って曲がったりたわんだりする。面ファスナー3は、支持面2Cに対しても、図2に示した平面の支持面2を用いる太陽電池モジュール組立体100の場合と同様に十分な係合力を発揮する。
【0079】
また、支持体2Cの支持面22Cは、可撓性太陽電池モジュール1がたわむ際の幾何学的な特徴に応じた曲面形状にされている。具体的には、平面に沿って広げることができて、例えばロール状に巻取ることができるようにたわむことを許容するような可撓性太陽電池モジュール1であれば、支持面22Cは例えば可展面(developable surface)とされる。なお、可展面とは、各部に伸び縮みを伴うことなく展開するのみの操作によって平面に重ねることができる曲面を一般に指している。例えば、円筒および円錐の側面はいずれも可展面であるが、球面は可展面ではない。
【0080】
このように、本実施形態は、支持面が曲面である場合にも適用される。もし、太陽電池モジュールがある程度以上の面積を有している従来の剛体のものである場合には、支持体の支持面は、剛体太陽電池モジュールの形状に適合(conform)させておく必要がある。つまり、従来の剛体太陽電池モジュールを用いると、支持体の支持面の形状に大きな制約を生じてしまう。これに対して、可撓性太陽電池モジュール1を面ファスナー3と組み合わせる本実施形態においては、支持体の支持面の形状に特段の制約はない。
【0081】
加えて注目すべきは、太陽電池モジュール組立体200の可撓性太陽電池モジュール1を太陽電池モジュール組立体100のものと同一としうる点である。例えば、同一の可撓性太陽電池モジュール1を、あるときには平面の支持面に取付けて太陽電池モジュール組立体100の一部として電源として正常に動作させ、またあるときには、曲面の支持面に取付けて太陽電池モジュール組立体200の一部として電源として正常に動作させることも可能である。
【0082】
<第1実施形態:変形例2>
[可撓性太陽電池モジュールを用いる実施形態:部分的に配置される面ファスナー]
これまでの説明において、面ファスナー3は、第1係合素子31の全域が第2係合素子32の全域に係合して、両者のすべての領域が係合域となるものとして説明してきた。しかし、本実施形態においては、可撓性太陽電池モジュールの背面全面や支持体の支持面全面に面ファスナーが配置されていることは必須ではない。つまり、例えば太陽電池モジュールの背面の一部のみや支持面の一部のみを覆うように面ファスナー3の第1係合素子31および第2係合素子32を固着させる変形例も本実施形態の一部として実施することができる。
【0083】
図9は、面ファスナー3の第1係合素子31を一部のみに配置する可撓性太陽電池モジュールの例を示す斜視図である。また図10は、面ファスナー3の第2係合素子32を一部のみに配置する支持体の例を示す斜視図である。図9および図10に示したように、本実施形態の面ファスナー3の第1係合素子31または第2係合素子32は、固着される面の一部だけに配置される構造を取りうる。なお、本実施形態として実施することができるような一部だけに配置される第1係合素子31または第2係合素子32の組み合わせは、典型的には、次の三つの場合である。第一に、第1係合素子31が可撓性太陽電池モジュール1の一部のみに配置され、第2係合素子32が支持体2の全面に配置されている場合である。第二に、第1係合素子31が可撓性太陽電池モジュール1の背面12全面に配置され、第2係合素子32が支持体2の支持面22の一部のみに配置されている場合である。第三に、第1係合素子31および第2係合素子32の両者が、それぞれ、可撓性太陽電池モジュール1の背面12の一部のみ、および、支持体2の支持面22の一部のみに配置されている場合である。
【0084】
面ファスナー3の第1係合素子31または第2係合素子32を可撓性太陽電池モジュール1または支持体2の一部のみに配置する場合、その配置のパターンは、格子模様状、市松模様状、水玉模様状、縞状などから任意に選択される。このうち縞状とは、例えば可撓性太陽電池モジュール1が矩形形状である場合に、可撓性太陽電池モジュール1の周縁のいずれかの辺に沿う方向に延びる多数のラインが並ぶストライプパターンである。このストライプパターンは、第1係合素子31または第2係合素子32に含まれる単数または複数のライン状の単位係合素子31aまたは単位係合素子32aによって形成されている(図9または図10)。ここで、縞状のパターンに配置した場合には、単位係合素子31aまたは単位係合素子32aの延びる方向を、可撓性太陽電池モジュール1を支持体2から取り外す際に剥離が進行する方向に向けることが可能となる。縞状のうち、剥離が進行する向きに平行に各単位係合素子が延びるストライプパターンを特に縦縞状といい、それに垂直な向きに各単位係合素子が延びるストライプパターンを横縞状という。したがって、縦縞状となるか横縞状となるかは、可撓性太陽電池モジュール1を取り外す際の面ファスナー3の剥離の進行する向きとの関連によって定まる。例えば図9に示した可撓性太陽電池モジュール1が紙面の左右を軸に向きに反転されて図10に示した支持体2に取付けられている場合、紙面の左右のいずれか一方の端部から他方の端部にむかって剥離が進行するように可撓性太陽電池モジュール1が取り外されれば、図9および図10のストライプパターンは縦縞状である。
【0085】
第1係合素子31および第2係合素子32のうちのいずれかまたは両方を固着される面の一部のみに配置することには、一般的に、面ファスナー3にかかるコストを節約できる利点がある。これには別の利点もある。その利点は、縞状、とりわけ縦縞状のパターンを採用する場合に特有のものである。具体的には、第1係合素子31および第2係合素子32のいずれかまたは両方が縦縞状のパターンとなるように、単位係合素子31aまたは単位係合素子32aが配置されるとする。この縦縞状の配置においては、面ファスナー3の剥離が進行してゆく間に、面ファスナー3の剥離している領域と係合している領域との境界は連続する同一の単位係合素子を切れ目なく進行してゆく。したがって、その剥離の進行する間、係合が解放される単位係合素子の幅は一定であり、剥離の進行の間にわたって剥離に必要な力が一定している。もし、剥離している領域が、単位係合素子の切れ目において係合のある部分から無い部分にまたはその逆に移動するような配置パターンとなっていると、剥離している領域と係合している領域との境界の進行速度が急加速したり急減速し、可撓性太陽電池モジュール1や支持体2には部分的に強い応力が発生しかねない。縦縞状のパターンではこのような現象は生じず、面ファスナーの剥離がスムーズに進行する。つまり、漸次剥離の進行中に起きる不意な加速や減速に由来する可撓性太陽電池モジュール1または支持体2の破損が防止される点で、縦縞状のパターンが一層有利である。
【0086】
以上に述べたように、本実施形態に沿って作製される太陽電池モジュール組立体100および200は、可撓性太陽電池モジュール1を支持体2(または支持体2C)から取り外し、必要に応じて同一または別の支持体に再度取り付けることが容易に行えるものである。
【0087】
<実施例および比較例>
次に、本実施形態に基づいて作製される可撓性太陽電池モジュールと面ファスナーとを採用する太陽電池モジュール組立体の実施例1および実施例2を説明する。併せて、可撓性太陽電池モジュールを接着して作成する太陽電池モジュール組立体の比較例1と、従来の剛体太陽電池モジュールと面ファスナーとを採用する太陽電池モジュール組立体の比較例2を説明する。
【0088】
[実施例1]
図2に示す太陽電池モジュール組立体100と同様の構造の太陽電池モジュール組立体の実施例1サンプルを作製した。この実施例1サンプルにおいて、可撓性太陽電池モジュール1には幅50cm、長さ100cm、厚さ0.85mmのフレキシブルタイプのものを使用した。この可撓性太陽電池モジュール1の剛性kの値は、0.0099MN/mである。この剛性kの値を測定した試験片は、幅wが2.5cm、有効長Lが8cmであった。封止樹脂16のうち背面12側に位置する素材はエチレン−四フッ化エチレン共重合体とした。後の接着のために封止樹脂16の背面12はプラズマ処理された。
【0089】
また、実施例1サンプルにおける面ファスナー3は、第1係合素子31および第2係合素子32の組み合わせのときの剥離強さが4N/cmの面ファスナーを用いた。第1係合素子31はポリアミド樹脂製のフックテープすなわち雄体とした。第1係合素子31は、可撓性太陽電池モジュール1の背面12の全面にブチルゴム粘着剤によって接着した。このように、面ファスナー3の第1係合素子31は、可撓性太陽電池モジュール1の受光面14とは逆の背面12に固着され、背面12の少なくとも一部を覆うように配置した。
【0090】
支持体2には幅50cm、長さ100cm、厚さ1.0mmのガルバリウム鋼板を使用した。第2係合素子32はポリアミド樹脂製のループテープすなわち雌体とした。第2係合素子32は、支持体2の支持面22の全面にブチルゴム粘着剤により接着された。このように、面ファスナー3の第2係合素子32は、支持体2の支持面22に固着され、支持面22背面12の少なくとも一部を覆うように配置した。
【0091】
図11は、別の支持体2Bの構造を示す斜視図である。支持体2Bは、幅50cm、長さ100cm、厚さ3.0mmのガラス板である。支持体2Bの支持面22Bの全面には、第2係合素子32Bがブチルゴム粘着剤によって接着されている。この第2係合素子32Bを第1係合素子31と組み合わせた場合の剥離強さは4N/cmであった。第2係合素子32Bはポリアミド樹脂製のループテープすなわち雌体とした。このように、剛体の支持体2Bには、支持面22Bの少なくとも一部を覆うようにして面ファスナー3の第2係合素子32Bを配置した。
【0092】
太陽電池モジュール組立体100(図2)の構成の実施例1サンプルにおいて、平面状に広がる可撓性太陽電池モジュール1の周縁の一部分を把持して、その一部分に可撓性太陽電池モジュール1の受光面14に向かって引く向きの力を加えた。その結果、図5(a)に示したように、その端部から面ファスナー3が剥離し始めた。引き続き可撓性太陽電池モジュール1の当該一部分をその力の向きに引いたところ、図5(b)に模式的に示したように徐々に漸次剥離によって可撓性太陽電池モジュール1が支持体2から部分的に取り外された。すなわち、可撓性太陽電池モジュール1がフレキシブルタイプであることから、剥離の進行の際に平面状の広がりのある可撓性太陽電池モジュール1の少なくとも一部がたわみ、面ファスナー3の剥離が進行するにつれて、第1係合素子31と第2係合素子32との間の係合が解放されている範囲が広がっていった。この際、可撓性太陽電池モジュール1を支持体2から取り外すための脱離力は、概ね60Nであった。そして最終的には、可撓性太陽電池モジュール1はその全体が支持体2から取り外された。取り外された可撓性太陽電池モジュール1の背面12の全面には、第1係合素子31が固着された状態が維持されていた。
【0093】
次に、支持体2から取り外された可撓性太陽電池モジュール1の第1係合素子31を別の支持体2Bの第2係合素子32Bに接するように閉止し、外力によって押圧した。こうして第1係合素子31を第2係合素子32Bに剥離可能に係合させ、可撓性太陽電池モジュール1を当該別の支持体2Bの支持面に取付けた。このように、支持体2から取り外した可撓性太陽電池モジュール1は、支持体2Bに再び取り付けることができた。
【0094】
次いで、可撓性太陽電池モジュール1の端部を支持体2Bの面に垂直な方向に引き上げたところ、可撓性太陽電池モジュール1はフレキシブルタイプであることから、漸次剥離によって徐々に支持体2Bから剥離し始めた。この場合の剥離も、面ファスナー3の第1係合素子31と第2係合素子32Bとの係合面が境界面とする剥離、つまり面ファスナー3の剥離によるものであった。また、この際、可撓性太陽電池モジュール1を支持体2Bから取り外すための脱離力は、概ね60Nであった。そして、最終的には、可撓性太陽電池モジュール1が支持体2Bから外れた。外れた可撓性太陽電池モジュール1の背面全面には、第1係合素子31が固着された状態が維持されていた。可撓性太陽電池モジュール1を支持体2Bから取り外す過程は、上述した可撓性太陽電池モジュール1の端部を支持体2から取り外す過程と同様であった。
【0095】
そして、実施例1サンプルと同一の断面構造を備え、サイズを変化させた3つのサイズ検討サンプルを用いて剥離試験を行ない、可撓性太陽電池モジュールの場合のサイズと、脱離力、剥離挙動、および脱離性の関係を調査した。表8にその結果を示す。なお、面ファスナーは、剥離強さが4N/cmのものを採用した。また、取り外すための力は、10cm×10cm以外のサイズ検討サンプルでは長手方向に剥離が進行するような向きとした。すなわち、サイズ検討サンプルそれぞれの長手方向の両端に位置する辺(短辺)の一方のみを引き起こす力によって、外れるときに他方の短辺に向かって面ファスナーの剥離が進行するようにした。
【表8】
【0096】
表8の脱離力は、表4の脱離力と同様にして測定され、脱離性はその脱離力から表3に基づいて階層化された。このように、面積が1000倍以上に異なるサイズ検討サンプルの間において、脱離力の相違は緩やかであり、いずれのサイズ検討サンプルにおいても太陽電池モジュール1の取り外しは容易または可能であった。
【0097】
[比較例1]
図12は、接着剤によって可撓性太陽電池モジュール1と支持体2とを直接固着して得られる太陽電池モジュール組立体900の断面図である。接着剤により固着されたのは、可撓性太陽電池モジュール1と支持体2の全面であり、そのサイズは幅10cm、長さ10cmとした。この図12に示した太陽電池モジュール組立体900と同様の構造の太陽電池モジュール組立体の比較例1サンプルを作製した。比較例1サンプルにおいて、可撓性太陽電池モジュール1と支持体2は実施例1サンプルにおいて使用したものと同一種類のものを使用した。可撓性太陽電池モジュール1は、支持体2に対して湿気硬化型アクリル変成シリコーン接着剤5により接着した。
【0098】
比較例1サンプルにおいて可撓性太陽電池モジュール1の端部を支持体2の面に垂直な方向に引き上げようとしたところ、500Nまでの力によって可撓性太陽電池モジュール1を支持体2から取り外すことはできなかった。そこでさらに力を増していったところ、力が750N付近に達したところで比較例1サンプルの太陽電池モジュールが破損した。
【0099】
[比較例2]
図1に示した従来の太陽電池モジュール組立体800と同様の構造の太陽電池モジュール組立体の比較例2サンプルを作製した。比較例2サンプルにおいて、剛体太陽電池モジュール81には単結晶型太陽電池素子84が封入されている。単結晶型太陽電池素子84には可撓性がないため、その破損を防ぐ等の目的で剛体太陽電池モジュール81の構造にはガラス板86が使用されていた。このため、剛体太陽電池モジュール81は全体として剛体であった。剛体太陽電池モジュール81は幅50cm、長さ100cm、厚さ4.0mmとした。封止樹脂96の背面側の素材はエチレン‐四フッ化エチレン共重合体で、その表面がプラズマ処理されていた。面ファスナー3の第1係合素子31、支持体2、および第2係合素子32は実施例1サンプルと同じものとした。また、実施例1サンプルと同様に、第2係合素子32は支持体2の支持面22に対してブチルゴム粘着剤により接着されていた。
【0100】
比較例2サンプルの剛体太陽電池モジュール81の端部を支持体2の面に垂直な方向に引き上げようとしたところ、600Nの力によって剛体太陽電池モジュール81が破損した。
【0101】
そして、比較例2サンプルと同一の断面構造を備え、サイズを変化させた4つのサイズ検討サンプルを用いて剥離試験を行ない、剛体太陽電池モジュールの場合のサイズと脱離力、剥離挙動、および脱離性の関係を調査した。表9にその結果を示す。面ファスナーは、剥離強さが0.1N/cmのものを採用した。取り外すための力は、10cm×10cm以外のサイズ検討サンプルでは長手方向に剥離が進行するような向きとした。
【表9】
【0102】
表9の脱離力は、表4の脱離力と同様にして測定されたものであり、脱離性はその脱離力から表3に基づいて階層化された。剛体太陽電池モジュールの場合の面積と脱離性の関係は、上記表8に示した実施例1サンプルと同一の断面構造の場合における面積と脱離性の関係とは大きく異なっている。剛体太陽電池モジュールの場合には、3cm×5cmすなわち15cm2の面積の段階では、剥離が可能であるものの、すでに脱離力は150Nとなっていた。しかも、剥離挙動は全面同時剥離であった。これは、太陽電池モジュールが剛体であることが反映された結果である。そして、サイズを5cm×10cmつまり50cm2の面積にしたサイズ検討サンプルと、10cm×10cmつまり100cm2の面積にしたサイズ検討サンプルとは、いずれも、取り外すための力を400Nとした時点で剛体太陽電池自体モジュールが破損してしまった。
【0103】
<第1実施形態:他の変形例>
上述した実施例のように、本実施形態は可撓性太陽電池モジュールの設置方法としても実施することができる。つまり、本実施形態は、太陽電池モジュールの受光面とは逆の背面に固着され、その背面の少なくとも一部を覆う面ファスナーの第1係合素子を、剛体である支持体の支持面に固着され支持面の少なくとも一部を覆う面ファスナーの第2係合素子に対して剥離可能に係合させることにより、太陽電池モジュールを支持体の支持面に取付けるステップを含む可撓性太陽電池モジュールの設置方法としても実施される。
【0104】
さらに、本実施形態は、可撓性太陽電池モジュールの取り外し方法としても実施することができる。すなわち、本実施形態は、太陽電池モジュールの受光面とは逆の背面に固着され背面の少なくとも一部を覆っている面ファスナーの第1係合素子を、剛体である支持体の支持面に固着され支持面の少なくとも一部を覆っている面ファスナーの第2係合素子から剥離させるステップを含む可撓性太陽電池モジュールの取り外し方法としても実施される。
【0105】
この可撓性太陽電池モジュールの取り外し方法は、さらに有利な取り外し方法としても実施することができる。すなわち、上述の可撓性太陽電池モジュールの取り外し方法において、平面状に広がる可撓性太陽電池モジュールの周縁の一部分を把持するステップと、太陽電池モジュールの一部分に、太陽電池モジュールの受光面に向かって引く向きの力を加えるステップと、太陽電池モジュールの平面状の広がりの少なくとも一部をたわませながら、引き起こした太陽電池モジュールの一部分を力の向きに引くステップと、第1係合素子と第2係合素子との間の係合が解放されている太陽電池モジュールの範囲を広げてゆき、第1係合素子と第2係合素子とを互いに剥離させるステップとを含むことが有利である。このようなステップを組み合わせることによって、面ファスナーの漸次剥離が実現される。
【0106】
<第2実施形態>
本発明は、上述した第1実施形態とは別の実施形態として実施することもできる。第2実施形態においては、剛体ではない支持体、つまり可撓性を備える支持体が採用される。
【0107】
図13は、柔軟性または可撓性を備えた支持体2Fを用いる太陽電池モジュール組立体300の構造を示す断面図である。太陽電池モジュール組立体300は、第1実施形態において説明した可撓性太陽電池モジュール1を、可撓性を備えた支持体2Fの支持面2Fに面ファスナー3によって取り付けて作製されている。
【0108】
本実施形態の太陽電池モジュール組立体300においても、面ファスナー3の剥離挙動は、第1実施形態において図5に関連して説明したような漸次剥離となる。すなわち、可撓性太陽電池モジュール1の背面12に固着されている面ファスナー3の第1係合素子31は、支持体2Fの支持面22Fに固着されている第2係合素子32から徐々に剥離することが可能である。したがって、剛体太陽電池モジュール81を採用する場合のような面ファスナーの係合域の面積が増大した場合の取り外しの困難性の問題は生じない。
【0109】
本実施形態において可撓性太陽電池モジュール1が可撓性を備えることにより、太陽電池モジュールの取り外しの容易化に加えて別の積極的な技術的意義ももたらされる。まず、支持体2Fが可撓性を備えていて変形が許容される場合には、面ファスナー3によって支持体2Fに取り付けられている可撓性太陽電池モジュール1はその取り付けられた状態を維持する。ここで、支持体2Fが可撓性を有するときの可撓性太陽電池モジュール1の状況は、第1実施形態の変形例1の説明において平面および曲面の支持体をそれぞれ採用する図2および図8の両方の状況を組み合わせたものといえる。したがって、可撓性太陽電池モジュール1は、面形状の支持体2(図2)と曲面形状の支持体2C(図8)との両者に対して適合し得たように、可撓性を備える支持体2Fの変形に対してもそれ自体の形状を適合させるように変形する。つまり、本実施形態においては、太陽電池モジュール組立体300は全体としても可撓性を備えている。
【0110】
太陽電池モジュール組立体300が全体として可撓性を示すことは、一つには、可撓性太陽電池モジュール1を面ファスナー3によって取り付ける対象となる支持体として、第1実施形態にて説明した支持体2、支持体2C、そして支持体2Fのすべてが含まれることを意味している。このため、支持体が剛体に限定されない第2実施形態は、可撓性太陽電池モジュール1を面ファスナー3によって取り付ける支持体の選択範囲への制約を取り除く実施形態といえ、太陽電池モジュールの可搬性を活かした用途のさらなる拡大に寄与するものである。もう一つ、太陽電池モジュール組立体300が全体として可撓性を示すことは別の利点にも結びつく。すなわち、可撓性を備える支持体2Fがそれ単体で可撓性を前提にした取り扱いがなされている場合に、そこに可撓性太陽電池モジュール1を組み合わせた太陽電池モジュール組立体300においても同様の取り扱いを行うことが可能となる。例えば、可撓性を備える支持体2Fが収納時にロール状に巻かれるようなものである場合に、その支持体2Fに可撓性太陽電池モジュール1を取り付けた太陽電池モジュール組立体300もロール状に巻くことが可能となる。なお、可撓性を備える支持体2Fの例としては、例えば野外にて活用されるテントの膜や建物の屋根に採用される各種の膜構造体などの柔軟性のある任意の素材を挙げることができる。
【0111】
以上、本発明の実施形態を具体的に説明した。上述の各実施形態および実施例は、発明を説明するために記載されたものであり、本出願の発明の範囲は、特許請求の範囲の記載に基づいて定められるべきものである。また、各実施形態の他の組合せを含む本発明の範囲内に存在する変形例もまた、特許請求の範囲に含まれるものである。
【産業上の利用可能性】
【0112】
本発明は、太陽電池モジュールや太陽電池モジュール組立体の用途を拡大することを通じて、そのような太陽電池を一部に含むような任意の電力機器または電気機器の普及に貢献する。
【符号の説明】
【0113】
100、200、800、900 太陽電池モジュール組立体
1 可撓性太陽電池モジュール
81 剛体太陽電池モジュール
12、92 背面
14、94 受光面
16、96 封止樹脂
2、2B、2C、2F 支持体
22、22B、22C、22F 支持面
3 面ファスナー
31 第1係合素子
32、32B 第2係合素子
31a、32a 単位係合素子
4、84 太陽電池素子
5 湿気硬化型アクリル変成シリコーン接着剤
71〜76 板材
86 ガラス板
【技術分野】
【0001】
本発明は太陽電池モジュール組立体、太陽電池モジュールおよび太陽電池モジュール組立体の製造方法に関する。さらに詳細には、本発明は、支持体に対して着脱可能な太陽電池モジュールを含む太陽電池モジュール組立体、太陽電池モジュールおよび当該太陽電池モジュール組立体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
太陽電池は、日光等の光エネルギーのみを外部エネルギー源として利用し、それ以外の燃料補給が不要な可般型電源である。このため、太陽電池は広範な用途の電源として利用されている。その用途には、災害等により電力供給が停止した際の応急電源用途、遊牧生活者の自給用電源用途、および山岳・孤島・砂漠その他の無電源地域の移動中の電源用途が含まれている。また、自給用電源として固定して動作させる太陽電池モジュールであっても、太陽電池の可搬性のために設置場所を変更する移設の際の障害が少ない。
【0003】
実際の太陽電池によって太陽光のエネルギーから電力を得ようとすると、受光面によって太陽光を適切に受光するために、太陽電池を何らかの支持体に取り付ける必要がある。その支持体の典型例は、建築物・車両などの構造物や、携帯電話・カバンなどの携行品などである。太陽電池パネルまたは太陽電池モジュールを支持体へ取り付ける具体的な手法の一つに、接着を利用する手法がある。例えば特許文献1(特開平9−119202号公報)には、単数または複数枚の太陽電池パネルと、その背面側に設けられた少なくとも断熱材と平板状の板材が、接着層を介して一体化されたものが開示されている。また、支持体への取り付け手法の別のものとして面ファスナーを用いるものも提案されている。例えば特許文献2(特開2003−229946号公報)には、携帯電話の裏面側に沿って取り付け可能な基板の外面側に太陽電池を備えた発電装置と、基板の一側縁部に設けられていて太陽電池に接続された一対の出力端子とで構成され、基板には携帯電話の裏面側に着脱自在に取り付け可能な取付手段を備え、出力端子は、基板を取付手段で携帯電話の裏面側に取り付けた状態で携帯電話に内蔵されたバッテリへの充電端子のうち接触式充電端子に接触可能な状態に設けられていることを特徴とする携帯電話用充電装置が開示されている。特許文献2には、その取付手段を面ファスナーの雄体および雌体で構成する手法が開示されている。そして、特許文献3には、屋根構体の上に置かれる少なくとも1つのペイバと、ペイバに取り付けられた少なくとも1つのペイバファスナと、光を受ける上面と、少なくとも1つのデバイスファスナが取り付けられた底面とを有する光起電力デバイスとを備えるエネルギー発生システムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9−119202号公報(要約)
【特許文献2】特開2003−229946号公報(請求項3)
【特許文献3】国際公開第2008/063660号パンフレット(特表2010−510419号、請求項1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記従来の手法において、断熱材または板材や携帯電話本体といった支持体から太陽電池モジュールを一旦取り外し、その後に必要に応じて同一または別の支持体に取り付ける、といった着脱作業を実際に行なおうとすると多大な困難を伴う。また、そのような着脱作業が可能な太陽電池モジュールには、大幅な制約が生じてしまう。
【0006】
まず、特許文献1の接着による手法においては、断熱材や板材などの支持体に太陽電池パネルを一体化させて得られる組立体から、太陽電池パネルを分離して取り外すことは困難である。支持体に接着された太陽電池パネルを支持体から取り外すためには、接着層を破壊させるだけの非常に強い力を太陽電池パネルと支持体との間に加える必要があるためである。支持体から取り外せなければ、単数または複数の太陽電池パネルが可搬性を有していてもその利点は生かせない。
【0007】
また、特許文献2の面ファスナーによる手法では、太陽電池を含む発電装置や支持体の面積が携帯電話ほどの大きさであれば、取付けた太陽電池モジュールを携帯電話などの支持体から引き剥がすことは不可能ではない。しかし、面ファスナーを用いる場合には、太陽電池の面積が大きくなるにつれて、面ファスナーを剥離することによって発電装置を取り外すことが実際には難しくなる。太陽電池を含む発電装置の面積が小さいままでは発電量が限定されるため、電源としての用途が大幅に限定されてしまう。
【0008】
そして、特許文献3に開示される光起電力デバイス(太陽電池パネル)は、例えば太陽電池セルとして半導体ウェハを複数含む構成である。ここで、特許文献3には、太陽電池パネルがペイバ(屋根材)に対して機械的に結合されることが開示される(例えば特許文献3の国際公開パンフレットにて段落0032;公表公報にて段落0021)。ここでの機械的な結合はデバイスファスナとペイバファスナとによって実現されており、その結合は取り外し可能な程度のものとされている。しかし、半導体ウェハを含むような太陽電池パネルの大きさが大きくなると、機械的に結合しているペイパ(屋根材)から太陽電池パネルを取り外すことは、特許文献2について上述したように実際には困難である。また、太陽電池パネルの大きさが小さいと、所定の面積を確保するために必要な太陽電池パネルの枚数を増やす必要がある。太陽電池パネルの枚数が増すと、太陽電池パネルの設置時や取り外し時の作業負担が増えるのに加えて、電気的な接続部の数も増加する。したがって、特許文献3が開示する構成において太陽電池パネルを取り外し可能な大きさのものとする場合には、太陽電池パネルの設置時や取り外し時の作業負担が増加し、太陽電池パネルの動作時における信頼性が低下する。
【0009】
本発明はこのような問題を解決するためになされたものであり、太陽電池モジュールを支持体に取付ける太陽電池モジュール組立体において、支持体と太陽電池モジュールを着脱可能な(detachable)ものとすることにより、可搬性を有する太陽電池モジュールの用途の拡大に貢献するものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本願の発明者らは、特に、面ファスナーを用いて支持体と太陽電池モジュールが一体化された太陽電池モジュール組立体に注目した。具体的には、面ファスナーを採用して着脱可能な太陽電池モジュールをより大きな面積に拡大する手法を検討した。上述したように、面ファスナーを用いる場合、支持体と太陽電池モジュールの間の面ファスナーの面積が大きくなるにつれて、その面ファスナーを剥離することが難しくなる。確かに、支持体や太陽電池モジュールが例えば携帯電話の筐体程度の大きさである場合には、太陽電池モジュールと支持体との間の面ファスナーを剥離することは可能である。しかし、面ファスナーをなす一対の素子が互いに係合している領域の面積がある程度以上の大きさとなると、面ファスナーを剥離すること自体が困難となる。特に、太陽電池モジュールの全面が支持体に対して面ファスナーによって取り付けられている場合には、面ファスナーが係合している範囲の面積によって太陽電池の面積自体が限定されてしまう。
【0011】
そこで、本発明のある態様においては、可撓性を備える太陽電池モジュールと、該太陽電池モジュールの受光面とは逆の背面に固着されており、該背面の少なくとも一部を覆っている面ファスナーの第1係合素子(a first engagement element)と、剛体である支持体と、該支持体の支持面に固着されており、該支持面の少なくとも一部を覆っている前記面ファスナーの第2係合素子とを備え、前記第1係合素子と前記第2係合素子とが互いに剥離可能に係合されている(engaged with each other in a removable manner)太陽電池モジュール組立体が提供される。
【0012】
また、本発明のある態様においては、受光面と、該受光面とは逆の背面と、該背面に固着されており、該背面の少なくとも一部を覆っている面ファスナーの第1係合素子とを備え、支持体の支持面に固着され該支持面の少なくとも一部を覆っている前記面ファスナーの第2係合素子に対して、前記第1係合素子が剥離可能(in a removable manner)に係合されるようになっている(adapted to be engaged with the first engagement element)可撓性の太陽電池モジュールが提供される。
【0013】
加えて、本発明のある態様においては、可撓性を備える太陽電池モジュールの受光面とは逆の背面に面ファスナーの第1係合素子を固着して、該背面の少なくとも一部を該第1係合素子により覆うステップと、剛体である支持体の支持面に前記面ファスナーの第2係合素子を固着して、該支持面の少なくとも一部を該第2係合素子により覆うステップと、前記第1係合素子を前記第2係合素子に対して剥離可能に係合させて、前記太陽電池モジュールを前記支持体の前記支持面に取り付けるステップとを含む太陽電池モジュール組立体の製造方法が提供される。
【0014】
面ファスナー(touch and close fastener)は、任意のタイプの面ファスナーを含み、特定のタイプのものに限定されない。面ファスナーは、別の呼び方として、フック・アンド・ループ・ファスナー(hook and loop fastener)と呼ばれることもある。一般に、面ファスナーは、一方の面にパイルが多数設けられたテープ状の素子の対を含んでいる。この一対の素子は、互いのパイル面を接するようにして閉止(close)されることによって互いに係合(engage)する。また、係合している一対の素子は、互いに引き離すように剥離する力を作用させることにより係合が解放(disengage)される。このため、この一対の素子のそれぞれは互いに剥離可能である。また、この一対の素子が、互いに分離されている二つの物体のそれぞれに固着されていると、その二つの物体は、互いに取り付けることや取り外すことが可能となって、着脱可能なものとなる。
【0015】
本出願における太陽電池モジュールとは、少なくとも太陽電池として動作する電気光学部品を含む任意の要素をいう。この太陽電池モジュールには、任意の種類の太陽電池、より一般には光電変換装置(photovoltaic device)の単体または集積したものが少なくとも一部として含まれている。このように作製されている限り、任意の部品要素(component)、部材(member)、または組立体(assembly)などの任意の形態として太陽電池モジュールが実施される。このため、本出願における太陽電池モジュールは、太陽電池素子、太陽電池セル、太陽電池パネルなどと呼ばれる任意の光電変換装置を含んでいる。
【0016】
さらに、本出願において特に可撓性の(flexible)太陽電池モジュールとは、典型的には、薄膜半導体や有機物を利用し、例えば可撓性基板に形成されて全体としても可撓性を示している任意の太陽電池モジュールを意味する。この薄膜半導体を利用する太陽電池は特に限定されるものではなく、単一のnip接合、pn接合を有する太陽電池、複数の接合を用いるタンデム型等の任意の太陽電池を含み、その半導体の材質も、シリコン、ゲルマニウムに代表される任意の材質を含むことができる。また、半導体層の結晶性は、アモルファス、微結晶等の任意のものから選択される。有機物を利用する太陽電池においても、その発電層の材質は特段限定されない。さらに、上記可撓性基板には、樹脂フィルム基板、金属薄板基板等、可撓性を示す任意の基板を採用することが可能である。なお、本出願における可撓性は、面ファスナーの剥離挙動と関連して、また、本出願において規定される剛性の値に対応づけることによって詳細に定義される。この定義については実施形態の説明において詳述する。
【0017】
また、本出願における太陽電池モジュールが指し示すものの中には、任意の目的によって付加される付加的部品要素(additional component)が組み合わされた組立体となっているものも含まれている。そのような付加的部品要素は、例えば耐候性を高めるための封止樹脂や可撓性を保ちつつ強度を確保するための補強部材を含む。太陽電池モジュールとして組立体を呼称する場合には、面ファスナーの剥離の際に分離が予定されていない限り、当該組立体全体を太陽電池モジュールとして扱う。
【0018】
加えて、本出願における支持体(support member)とは、太陽電池モジュールを概ね一方の面から支持する機能を提供する任意の物体をいう。支持体の太陽電池モジュール側に対向する面を特に支持面(support surface)と呼ぶ。
【0019】
そして、本出願における太陽電池モジュール組立体(solar cell module assembly)とは、太陽電池モジュールと支持体とを組み合わせた構造の組立体をいう。
【発明の効果】
【0020】
本発明のいくつかの態様によれば、太陽電池モジュールを支持体から取り外し、必要に応じて同一のまたは他の支持体に取り付けることが容易に行える太陽電池モジュール組立体や太陽電池モジュールを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】従来の太陽電池モジュール組立体の構造を示す模式断面図である。
【図2】本発明のある実施形態の太陽電池モジュール組立体の構造を示す模式断面図である。
【図3】本発明のある実施形態の太陽電池モジュール組立体において、支持体から取り外した可撓性太陽電池モジュールを面ファスナーの第1係合素子側から見た斜視図である。
【図4】本発明のある実施形態の太陽電池モジュール組立体において、可撓性太陽電池モジュールを取り外した支持体を面ファスナーの第2係合素子側から見た斜視図である。
【図5】太陽電池モジュール組立体の構成を示す模式断面図であり、可撓性太陽電池モジュールの一方の端部を引き起こして面ファスナーの剥離させ始めた時点(図5(a))と、その剥離を進行させた時点(図5(b))とにおける太陽電池モジュール組立体の構成を示す。
【図6】本発明のある実施形態において導入される剛性の値を決定する測定配置を示す模式図である。
【図7】板材を用いた剛性検討サンプルの構成(図7(a))と、剥離の様子(図7(b)および(c))とを示す模式断面図である。
【図8】本発明のある実施形態において、支持体の支持面を曲面とする変形例である太陽電池モジュール組立体の模式断面図である。
【図9】本発明のある実施形態において、面ファスナーの第1係合素子を一部のみに配置する可撓性太陽電池モジュールの例を示す斜視図である。
【図10】本発明のある実施形態において、面ファスナーの第2係合素子を一部のみに配置する支持体の例を示す斜視図である。
【図11】本発明のある実施形態において、太陽電池モジュール組立体の可撓性太陽電池モジュールが取付けられる別の支持体の構成を示す斜視図である。
【図12】本発明のある実施形態において、接着剤によって可撓性太陽電池モジュールと支持体とを直接固着して得られる太陽電池モジュール組立体の模式断面図である。
【図13】本発明のある実施形態において、可撓性を備えた支持体を用いる太陽電池モジュール組立体の構成を示す模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態について説明する。以下の説明に際し特に言及がない限り、全図にわたり共通する部分または要素には共通する参照符号が付されている。また、図中、各実施形態の要素のそれぞれは、必ずしも互いの縮尺比を保って示されてはいない。
【0023】
<第1実施形態>
本出願において提案される一つの実施形態は、可撓性を備える太陽電池モジュール(flexible solar cell module)を、面ファスナーを用いて支持体に組み合わせるものである。本実施形態の意義の適切な理解のために、まず、従来の太陽電池モジュール組立体において面ファスナーの剥離が困難となる原因として本願発明者らが突止めたメカニズムから説明する。それは端的には、従来の太陽電池モジュール組立体において面ファスナーを剥離しようとする際には、面ファスナーが係合している範囲の全域においてほぼ同時に剥離が生じる必要が生じ、このために取り外しのために必要な力が過大になっている、というものである。より詳細なメカニズムは、従来の太陽電池モジュール組立体における面ファスナーの剥離挙動(peeling action)の説明によって明らかにされる。
【0024】
[面ファスナーの剥離挙動:太陽電池モジュールと支持体がともに剛体の場合(従来例)]
図1は、従来の太陽電池モジュール組立体800の構造を示す断面図である。従来の太陽電池モジュール組立体800は大略、太陽電池モジュール81と面ファスナー3と支持体2とを備えている。ここで、面ファスナー3は、第1係合素子31と第2係合素子32とを有している。第1係合素子31と第2係合素子32は、向かい合ったある面的な範囲において互いに係合している。以下、第1係合素子31と第2係合素子32が互いに係合する面的な範囲を「係合域」と記す。
【0025】
太陽電池モジュール81は、単結晶型太陽電池素子84とガラス板86とを備えている。ガラス板86は、単結晶型太陽電池素子84の不測の破損を防ぐことなどの目的で用いられている。太陽電池モジュール81の一方の面はガラス板86が露出しているため、当該一方の面は、太陽電池モジュール81全体から見ると、単結晶型太陽電池84への照射光を受光する受光面94となっている。したがって、単結晶型太陽電池84はガラス板86を通じて外光を受けて発電を行なう。また、太陽電池モジュール81の他方の面には単結晶型太陽電池84が配置され、その単結晶型太陽電池84は耐候性を高めるための封止樹脂96によって封入または封止されている。
【0026】
太陽電池モジュール81の背面92つまり受光面94の逆の面には、面ファスナー3の第1係合素子31が十分な強度で固着されている。この固着は、第1係合素子31を封止樹脂96に接着して実現されている。その一方、支持体2の支持面22には面ファスナーの第2係合素子32が例えば接着により十分な強度で固着されている。第1係合素子31および第2係合素子32は、互いに係合している状態で互いを引き離す引張力や互いをずらす剪断力が作用すると、これらの力に対する反力すなわち反作用によって面ファスナー3としての保持作用を発揮する。このように、従来の太陽電池モジュール組立体800においては、太陽電池モジュール81が第1係合素子31および第2係合素子32を有する面ファスナー3によって支持体2に取り付けられている。
【0027】
ここで、従来の太陽電池モジュール組立体800に用いる太陽電池モジュール81は剛体である。というのも、太陽電池モジュール81に埋め込まれている単結晶型太陽電池素子84には可撓性がなくガラス板86にも可撓性がないためである。以下、太陽電池モジュール81を「剛体太陽電池モジュール81」という。なお、本出願全体において用いる「可撓性」および「剛体」の用語の定義については後述する。
【0028】
剛体太陽電池モジュール81を採用する従来の太陽電池モジュール組立体800における面ファスナー3は、剛体太陽電池モジュール81を支持体2から取り外す際に特有の剥離挙動を示す。具体的には、剛体太陽電池モジュール81と支持体2とが共に剛体である場合には、剛体太陽電池モジュール81を支持体2から取り外す際に、面ファスナー3の係合がごく短い時間に解放される。第1係合素子31および第2係合素子32の係合域の全体において、ごく短い時間に剥離が完了するのである。この剥離の挙動を、本出願において「全面同時剥離」(cleavage removal)と呼ぶ。ここで、第1係合素子31および第2係合素子32の間の係合域の面積が拡大された場合であっても、支持体2と剛体太陽電池モジュール81とがともに十分に剛性が高い剛体であるときには全面同時剥離となる。この面ファスナー3の係合域の剥離が全面同時剥離となると、係合域の全体において剥離を同時に生じさせるだけの力を必要とする。そのため、面ファスナー3の剥離挙動が全面同時剥離である限り、第1係合素子31および第2係合素子32の間の係合域の面積が拡大されると、その面積に比例して剥離に必要な力も増大してしまう。
【0029】
実際に剛体太陽電池モジュール81を支持体2から取り外す作業を行なう際には、さらに別の問題も生じる。第1係合素子31および第2係合素子32の係合域の面積が大きい場合には、第1係合素子31および第2係合素子32の係合域の全体に均一に力を加えることが困難となることである。このため、取り外すために加えられる力は、剛体太陽電池モジュール81や支持体2に対して局部的なものとなる。
【0030】
このように、太陽電池モジュール組立体800における剛体太陽電池モジュール81の取り外しの際には、強い力を剛体太陽電池モジュール81に作用させる必要が生じる。しかもその力は剛体太陽電池モジュール81や支持体2に対して局部的なものとなる。必然的に、取り外そうとする力によって剛体太陽電池モジュール81または支持体2には曲げ荷重が作用する。ここで、ある値以上の曲げ荷重を作用させると、可撓性を有しない剛体太陽電池モジュール81や支持体2は、脆性破壊により破損してしまう。その破損は、典型的には、剛体太陽電池モジュール81が複数の破片へと破断(break)する結果をもたらすか、または外見上の破断に至らない場合でも、剛体太陽電池モジュール81に内部に微小破壊を生じさせて例えば電気的な動作を不安定にする場合もある。結局、面ファスナー3を広い面積で係合させて剛体太陽電池モジュール81を支持体2に取付けると、剛体太陽電池モジュール81を破損せずに支持体2から取り外すことは困難となる。
【0031】
以上が、面ファスナー3における第1係合素子31および第2係合素子32の係合域の面積を広げた場合に、破損を伴うことなく従来の剛体太陽電池モジュール81を支持体2から取り外すことが困難となるメカニズムである。そしてその原因は、剛体太陽電池モジュール81および支持体2が剛体である場合に特有の、面ファスナー3の全面同時剥離という剥離挙動のためである。
【0032】
[面ファスナーの剥離挙動:太陽電池モジュールが可撓性を備える場合]
従来の剛体の太陽電池モジュールを採用するものとは異なり、本実施形態においては、可撓性を備える太陽電池モジュールを採用する。その結果、本実施形態においては太陽電池モジュールを支持体から取り外すことが容易になる。その理由も、太陽電池モジュールが支持体から取り外する際の挙動を説明することにより明らかとなる。
【0033】
図2は本実施形態の太陽電池モジュール組立体100の構造を示す断面図である。太陽電池モジュール組立体100は大略、太陽電池モジュール1と面ファスナー3と支持体2とを備えている。ここで、本実施形態の太陽電池モジュール1は可撓性を備えている。以下、太陽電池モジュール1を「可撓性太陽電池モジュール1」という。面ファスナー3は、第1係合素子31および第2係合素子32を備えており、上述した従来の太陽電池モジュール組立体800の場合と同様に構成され同様の作用を発揮する。
【0034】
太陽電池モジュール組立体100に用いる可撓性太陽電池モジュール1に可撓性を付与することは、可撓性太陽電池モジュール1に埋め込まれている太陽電池素子4を、例えば可撓性樹脂基板に形成された薄膜半導体太陽電池とすることによって達成される。従来の太陽電池モジュール組立体800の場合におけるガラス板86のような破損を防ぐための剛体基板は、可撓性太陽電池モジュール1においては用いられない。また、封止樹脂16は、可撓性太陽電池モジュール1の可撓性を妨げないようにその材質が適切に選択されている。
【0035】
図3は、本実施形態の太陽電池モジュール組立体100において、支持体2から取り外した可撓性太陽電池モジュール1を第1係合素子31側から見た斜視図である。また、図4は、本実施形態の太陽電池モジュール組立体100において、可撓性太陽電池モジュール1を取り外した支持体2を第2係合素子32側から見た斜視図である。図3および図4に示すように、面ファスナー3の第1係合素子31は可撓性太陽電池モジュール1の受光面14とは逆の背面12の全面に対して、また、面ファスナー3の第2係合素子32は支持体2の支持面22の全面に対して、それぞれ接着されて固着されている。図2のように、面ファスナー3の第1係合素子31および第2係合素子32によって、可撓性太陽電池モジュール1は支持体2に取付けられている。
【0036】
図2に示した太陽電池モジュール組立体100において可撓性太陽電池モジュール1の端部を支持体2の支持面22に垂直な方向に向かって引き起こすように力を印加すると、面ファスナー3の第1係合素子31は第2係合素子32との係合が解放される。図5は、太陽電池モジュール組立体100の構成を示す模式断面図である。ここで、図5(a)および(b)はそれぞれ、可撓性太陽電池モジュール1の一方の端部を引き起こして面ファスナー3を剥離させ始めた時点(図5(a))およびその剥離を進行させた時点(図5(b))での構成を示している。このような面ファスナー3の剥離過程を進行させることによって可撓性太陽電池モジュール1が支持体2から取り外される。
【0037】
図5(b)においては、図の紙面左端の可撓性太陽電池モジュール1の端部が紙面上方に引かれていて、第1係合素子31のうち剥離している領域が広がってゆく様子が模式的に示されている。この太陽電池モジュール組立体100における可撓性太陽電池モジュール1の取り外しの場合には、面ファスナー3の剥離している部分と係合している部分の境界の近傍において可撓性太陽電池モジュール1が曲がっている(図5(b))。図5(b)に示すように、可撓性太陽電池モジュール1の各部のうち、剥離している部分と係合している部分との境界の近傍の部分は可撓性太陽電池モジュール1全体が大きくたわんで曲がる。これに対して、その時点で剥離されてしまった部分は外力の作用する端部と面ファスナー3の係合している部分とにより引っ張られてむしろ延びている。そして引き続き可撓性太陽電池モジュール1の端部にその端部を引き起こす力を及ぼすと、剥離している領域が第1係合素子31および第2係合素子32の係合域の範囲において拡大してゆくこととなる。この剥離の様子は、全面同時剥離とは対照をなすものであり、本出願においては、このような面ファスナーの剥離挙動を「漸次剥離」(progressive peeling)と呼ぶ。
【0038】
特筆すべきは、可撓性太陽電池モジュール1を支持体2から取り外す場合に漸次剥離が実現すると、その取り外しのために必要な力が面ファスナー3の剥離を進行させる力そのものとなることである。太陽電池モジュール組立体100においては、第1係合素子31および第2の係合素子32が互いに係合している係合域の剥離を進行させるだけの力があれば剥離を行なうことができるのである。しかも、可撓性太陽電池モジュール1を採用する太陽電池モジュール組立体100においては、剥離に必要な力は係合域の面積に関係しなくなる。これが漸次剥離の特質である。可撓性太陽電池モジュール1を採用する太陽電池モジュール組立体100において、係合域の面積にかかわらず、支持体2からの取り外しが可能となる理由は、面ファスナーの剥離挙動が漸次剥離となっているためである。
【0039】
加えて、可撓性太陽電池モジュール1は、支持体2から取り外す際に、第1係合素子31および第2係合素子32が剥離している部分と係合している部分の境界の近傍で曲がったりたわんだりしても、破断してしまったり電気的な動作不良を生じたりしない。このため、一旦取り付けた可撓性太陽電池モジュール1を支持体2から取り外して同一または他の支持体に再度取り付けても、可撓性太陽電池モジュール1を再び動作させる際に特段支障は生じない。
【0040】
[剛性の定義]
次に、可撓性太陽電池モジュール1のような可撓性を備える太陽電池モジュールと、剛体太陽電池モジュール81のような剛体である太陽電池モジュールとを区別するための指標となるパラメータについて説明する。
【0041】
本出願にて着目するのは、太陽電池モジュールの構造上の特性が、面ファスナーの剥離による取り外しに支障が生じる程度のものであるか支障が生じない程度のものであるかという点である。この点から太陽電池モジュールを区別するための指標として、本出願においては次のようにして定義される「剛性」を導入する。図6は、ここで導入される剛性の値を決定する測定配置を示す模式図である。
【0042】
まず、剛性が測定される被試験物(例えば太陽電池モジュール)から幅0.5〜2cm、全長5〜15cmの短冊状の部分を切り出して測定対象の試験片とする。この試験片を対象にして測定される量は、試験片の長手方向の一方の端部を固定して他方の端部に対して荷重Pを印加した際に生じる当該他方の端部のたわみ量(deflection)すなわち変位(displacement)δである。荷重Pを加える向きは試験片の平面つまり元々の被試験物の平面に垂直な方向とする。そして、本出願において導入される剛性kは、その変位δと試験片の幅wとの積によってその荷重Pを除算した値に、試験片の全長から一端の固定された部分を除いた長さL(以下「有効長L」という)を乗じた値として定義される。すなわち、本出願において導入する剛性kは、
k=(P/δ)×(L/w)
と表される。なお、全長5〜15cmの短冊状の部分に対して、有効長Lは4〜14cmとされる。
【0043】
剛性kをこのように定義する意義は、定義される剛性kに求められる以下の三つの要件を満たすためである。すなわち、試験片の材料と厚さが変わらないという条件下において定義される剛性kは、(1)幅wと有効長Lが一定の場合には、変位δが荷重Pに比例すること、(2)荷重Pと幅wが一定の場合には、変位δが有効長Lに比例すること、(3)荷重Pと有効長Lが一定の場合には、変位δが幅wに反比例すること、という要件を満たすように定義されるべきである。これらの要件を満たすように剛性kを定めるためには、剛性kの値が同一となる部材の試験片において、変位δを、荷重Pと有効長Lに比例し幅wに反比例するようにする。また、剛性kは変位δに反比例するべきであるため、結局、荷重Pと有効長Lを分子、幅wと変位δを分母に有する分数をもって上式のように剛性kが定義される。
【0044】
次に、上述した定義に則って算出される剛性kの値と、本出願において可撓性太陽電池モジュール1や支持体2を特徴付けるために用いられる「剛体」や「可撓性(flexible)」という表現との間の関係について説明する。本出願においては、可撓性太陽電池モジュール1について「可撓性を備える(flexible)」との表現は「剛体の(rigid)」と対照させて用いる。このため、任意の太陽電池モジュールは、可撓性を備えるものか剛体のものかのいずれかに分類される。本出願において「剛体」とは、概して、面ファスナー3の剥離挙動において、可撓性太陽電池モジュール1や支持体2が曲ったりたわんだりしている図5(b)の状態を経ないで剥離が完了することに関連づけられる。剛性kの値がある値より大きい場合には、弾性体であっても本出願の意味における「剛体」の範囲に含まれることには注意が必要である。これに対して、本出願において「可撓性を備える」とは、概して、面ファスナー3の剥離挙動において、剥離が完了するまでの間に可撓性太陽電池モジュール1や支持体2が曲ったりたわんだりしている図5(b)の状態を経由することに関連づけられる。
【0045】
本出願においては、より具体的な定義を用いることによっても剛体であることまたは可撓性を備えることが規定される。まず、太陽電池モジュールが剛体であることを具体的に規定するために、本出願において剛体であることは、典型的には、上述した定義に則って算出される剛性kの値が1MN/mを超える範囲に含まれることに対応付けされる。これとは対照的に、本出願において太陽電池モジュールが可撓性を備えることは、典型的には、剛性kの値が0MN/m以上1MN/m以下の範囲にあることに対応付けされる。この可撓性に対応付けされる範囲のうち、特に剛性kの値が0.5MN/m以下の範囲は、とりわけ可撓性のであることに起因する特質および効果が明瞭に発現するため、太陽電池モジュールの剛性kとして好ましい範囲である。
【0046】
可撓性であることを規定する典型的な数値範囲をこのようにして決定する理由は、太陽電池モジュールが可撓性を備える場合に利用される性質が、主として、取り外す際に太陽電池モジュールが図5(b)のように曲がったりたわむことだからである。例えば可撓性太陽電池モジュールが厚さ0.85mmのフレキシブルタイプのものからなるとき、その剛性kの値は、0.0099MN/mであり、厚さ2mmのフレキシブルタイプの別の可撓性太陽電池モジュールにおける剛性kの値は、0.12MN/mである。
【0047】
加えて、可撓性を備える太陽電池モジュールは、任意選択として追加の性質も発現する。その性質とは、例えば支持体に取付けられている状態において可撓性太陽電池モジュールが支持面の形状に沿う形状に変形して、その形状のまま面ファスナーによる係合が維持されることである。実際の可撓性太陽電池モジュールが示す剛性kは、典型的には上述したように例えば0.0099MN/mあるいは0.12MN/mである。この程度の剛性kは、面ファスナーをそれ自体の弾性によって剥離してしまうほど大きい値ではない。このため、太陽電池モジュールが可撓性を備える場合には、時間の経過とともに次第に面ファスナー3が剥離してしまい可撓性太陽電池モジュールが部分的にでも外れてしまうといった不具合も未然に防止することができる。
【0048】
支持体2は、例えば、十分な厚みの金属板、木板、樹脂板、タイルなどの任意の材質から構成される剛体である。支持体2が剛体であるかとうかについても剛性kの値によって決定することが可能である。剛性kの値によって支持体2が剛体であるかとうかを決定する場合にも、太陽電池モジュールと同一の定義に則った剛性kの値に基づく判断を採用することができる。ここで、本出願において剛体である支持体2は、高い剛性kを示す一様な材質のものには限定されない。例えば、主たる素材が剛体であり、剛性kの高くない材質によってその主たる素材が被覆されているような支持体2も、上述したように定義される剛性kの値が全体として1MN/mを超えれば本出願においては剛体とされる。また、従来の剛体太陽電池モジュール81も、約500μm程度の厚さのシリコン層を有する単結晶型太陽電池素子84や、例えば3〜4mm程度の厚さのガラス板86を互いに積層した構成を有しているため剛性kの値が10MN/mを超える程度となり、剛体である。なお、剛性kの測定においては、例えば3mm程度の厚さのガラス板から作製した試験片や、全体として4mm程度の厚さとなるガラスを用いた太陽電池モジュールから作製した試験片では、測定装置の数値の上限が10MN/mであったため、10MN/mを超えることのみを確認している。
【0049】
[剛性の値による脱離力の違い]
本出願におけるより具体的な提案は、上述した定義に則って算出される剛性kの値を指標とすることにより、面ファスナーとの組み合わせに適する太陽電池モジュールの構造上の性質を規定することができる、という点である。この提案を説明するために、面ファスナーによって支持体に取付けられている太陽電池モジュールを支持体から取り外すために必要な力が、太陽電池モジュールの剛性kの値によって変化する様子の調査結果について詳述する。この変化を調査する実験は、板材を面ファスナーによって支持体に対して取付けておき、その板材を支持体から力によって取り外す際に要する閾値となる力(本出願において「脱離力」という)を測定して行なう。つまり、剛性kの値が異なる板材を太陽電池モジュールと見立てて支持体との間での剥離実験を行なうのである。図7は、板材を用いた剛性の検討用のサンプル(以下、「剛性検討サンプル」という)の構造(図7(a))と、剥離の様子(図7(b)および(c))とを示す模式断面図である。
【0050】
まず、面ファスナー3の第1係合素子31および第2係合素子32のうち、第1係合素子31が板材71〜76の背面に、また、第2係合素子32が支持体2の支持面22にそれぞれ固着される。そして、図7(a)に示すような配置に板材71〜76、面ファスナー3および支持体2をセットして剛性検討サンプルとする。板材71〜76は、互いに剛性kの値が異なる複数の板材であり、剛性検討サンプルは板材71〜76のうちのいずれか一枚が面ファスナー3によって支持体2に取り付けられる。板材以外の構造が同一であるため、剛性検討サンプルそれぞれは板材71〜76によって特定(identify)される。表1に剛性検討サンプルそれぞれに用いる各板材の材質および板厚を示している。なお、表1には、各板材に対して、試験片のサイズを、幅wを0.7cm、有効長Lを8cmとした場合に変位δから求められた剛性kの値も記載されている。
【表1】
【0051】
各剛性検討サンプルにおける板材71〜76の材質は、各板材を取り外すための脱離力と面ファスナーの剥離挙動との間の関連を調査するために、剛性kの違いによる効果のみが評価できるようなものが選択されている。実際の太陽電池モジュールの場合のように脆性破壊したり塑性変形してしまうと面ファスナーの剥離に対する剛性kのみの影響が確認できないためである。ここでは、板材71〜76の材質としてすべてSUS304ステンレス鋼(表1において、SUSと略記)を採用している。準備された板材の寸法は、厚み以外は共通して幅10cm、長さ10cmの矩形形状とされており、各板材の厚みは表1に示した通りである。
【0052】
面ファスナー3は剥離強さ(peel strength)が異なる二種類の面ファスナーそれぞれを、すべての剛性検討サンプルの板材および支持体に固着する。面ファスナーの剥離強さは、0.1N/cmのものおよび4N/cmのものを採用する。この面ファスナー3の配置は、各板材の一方の面の全面と支持体の支持面の全面である。なお、面ファスナーの剥離強さは、例えばJIS L 3416に記載の試験方法により測定される。
【0053】
図7(a)のような剛性検討サンプルを準備する際には、各板材に固着した第1係合素子31と支持体2に固着した第2係合素子32とを互いに対向させて閉止し、次いで外力によって押圧することによって係合させる。この押圧の条件は、各剛性検討サンプルに共通となるように決定されている。具体的には、まず第2係合素子32の固着された支持面22を鉛直上向きに向けて支持体2を静止させ、その上に、第1係合素子31を固着した面に下に向けた板材71〜76を置く。次に、板材71〜76のさらに上方から加圧用の平板(図示しない)を置く。そして、加圧用平板の上側の面に重り(図示しない)を静かに置く。この重りは、加圧用平板と各板材との合計の質量によって係合域に印加される圧力(面圧)が2N/cm2となるように、板材71〜76それぞれに合わせて調整される。その後、重りと加圧用平板を板材から静かに下ろす。こうして、面ファスナー3の係合の条件が各板材に対して一定にされる。
【0054】
次に、支持体2を固定して、各板材を支持面22から遠ざける向きの力を図7(a)の板材の左端の位置に印加する。この力を一定の割合で増大させながら、第1係合素子31と第2係合素子32の間の剥離が進行するかどうかを観察する。その際、各剛性検討サンプルについて、板材71〜76を支持体2から完全に取り外すまでに要する力の最大値を記録しながら取り外す操作を10回行い、各操作において記録された力の最大値を平均して板材71〜76それぞれの脱離力とする。その結果をまとめると、面ファスナーの剥離強さが0.1N/cmのときには表2の結果が得られる。
【表2】
ここで、剥離挙動の欄は、漸次剥離であるか全面同時剥離であるかを示している。また、表2における脱離性は、脱離力を階層化して表現したものであり、表3のような基準に基づくものである。
【表3】
【0055】
すなわち、板材71および72(剛性kは、それぞれ0.2NM/mおよび0.5NM/m)においては、それぞれ、10N(1.0kgf)および20N(2.0kgf)の大きさの力によって板材71および72を支持体2から取り外すことが可能である。図7(b)は、板材71および72について観察される板材の剥離の様子を示している断面模式図である。このように、板材71および72については、図5(b)の可撓性太陽電池モジュール1と同様に、支持面22から曲がるようにたわんだ状態を保って板材71および72の剥離を徐々に進行させることができる。つまり、図7(b)は漸次剥離の様子を示している。したがって、面ファスナー3の剥離を継続的に進行させれば、板材71および72を支持体2から取り外すことは容易である。最終的には、図7(c)に示すように、板材71および72は支持体2から外れる。
【0056】
板材73および74についても、表2に示すように、それぞれ40Nおよび200Nの力(4.1kgfおよび20.4kgf)によって取り外すことが可能であり、そのときには、図7(b)に模式的に示されるような漸次剥離の様子が明瞭に観察される。
【0057】
これに対して板材75では、600N(61.2kgf)まで力を増大させて初めて剥離が可能となる。この板材75では、面ファスナー3の剥離挙動が板材71〜74とは異なっている。具体的には、600Nまで力を増大させて第1係合素子31と第2係合素子32との間の係合が端部で解放されはじめると、係合域の全体の剥離がごく短い時間に完了する。図7(b)の状態にならずに瞬く間に剥離が完了し、図7(c)のように取り外された状態になる。つまり、面ファスナー3の剥離挙動は全面同時剥離である。この際の600Nという力はごく短時間のみに必要な力である。この力は500Nを上回る強い力であるため、作業者が例えば手の引く力のみで板材75を支持体から外すことには困難を伴う。特に、短い時間だけ強い力を発揮することは人力では難しいことから、板材75では板材71〜74に比べて作業性が劣る。板材75よりもさらに剛性kの大きい板材76では、800N(81.6kgf)という強い力を作用させても図7(a)の配置のままであり、板材76は支持体2から外れない。そこで、どの程度の力が必要であるかを調査するために800Nを超えて力を増大させると、板材76は1000N(100.2kgf)になって初めて支持体2から外れる。この板材76の場合にも、板材75の場合と同様に、図7(a)の状態から図7(c)の状態となるため、面ファスナー3の第1係合素子31と第2係合素子32との係合域の全体が一気に剥離して全面同時剥離となっている。この1000Nもの力は、基準として採用している800Nの力よりも大きいため、作業者が人力によって板材76を支持体から取り外すことは不可能と判断される。
【0058】
なお、表2の調査のための実験条件について補足する。支持体2は、例えば厚いガラス板を用いており、その変形は考える必要がない。すなわち、表2の調査結果は支持体2が剛体である条件のものである。また、板材の大きさ(幅10cm、長さ10cm)に合わせて面ファスナー3を選択している。
【0059】
表2に示した結果から、剥離強さが0.1N/cmと弱い面ファスナーを用いる場合には、剛性kが0MN/m以上1MN/m以下の板材71〜74を用いると、面ファスナーの剥離が徐々に進行する漸次剥離が可能となって、作業者が取り外す作業を安定して行なうことができることがわかる。さらに剛性kが0.5MN/m以下の板材71および72を用いると、剥離に要する力が作業に適した範囲の値に限定されるため、作業性を大幅に高めることが可能となる。
【0060】
さらに、板材71〜76を4N/cmと大きい剥離強さの面ファスナーによって支持体2に取り付けて剥離実験を行なった結果を表4に示す。
【表4】
なお、表4中の板材76の脱離力は、測定装置の測定上限値(1000N)の範囲内にて板材76の取り外しができないことを示している。また、階層化に用いた脱離性の基準は表3と同じである。
【0061】
剥離強さが4N/cmの面ファスナーを用いる場合の剥離挙動も、板材76を除き表2の各板材と同様である。つまり、板材71〜74においては、図7(b)に模式的に示されるような漸次剥離の様子が明瞭に観察される。これに対して、板材75では、図7(b)の様子は観察されず、全面同時剥離となって図7(a)から図7(c)の状態に直接遷移する。板材76については、測定装置の測定限界から1000Nを超える力による測定が不可能なため、剛性検討サンプルにおいては面ファスナー3が剥離せず、板材を取り外すこともできない。
【0062】
また、剥離強さが4N/cmの面ファスナーを用いる場合における脱離性については、0.1N/cmの面ファスナーの場合からみていくつか異なる結果となる。つまり、剥離強さが4N/cmの面ファスナーの場合にも、剛性kが0MN/m以上1MN/m以下の板材71〜74を用いる場合に面ファスナーの剥離を徐々に進行させる漸次剥離が実現され、作業者が取り外す作業を安定して行なうことができる。ただし、4N/cmの面ファスナーを用いる場合、剛性kが0.5MN/m以下の板材であっても、作業が容易となるほどに剥離に要する力が低減される訳ではない。
【0063】
以上の板材を用いた剥離実験からは、太陽電池モジュールが「可撓性」であることを、測定された剛性kが0MN/m以上1MN/m以下の場合、より好ましくは、0.5MN/m以下の場合に対して関連づけることが合理的である。そして、可撓性の範囲のうち特に剛性kの値が0.5MN/m以下の場合は、剥離強さが弱い面ファスナーとの組み合わせにおいて作業が容易になる利点がある。その逆に、支持体や太陽電池モジュールを「剛体」として扱うべき範囲は、剛性kが1MN/mを超える場合とすることが合理的である。なお、これらの数値範囲は、特定の実験条件に基づいて決定されたものである。したがって、これらの数値範囲は例示として示したものである。
【0064】
[実際の太陽電池および部材における剛性の値と脱離力]
次に、板材を用いて行なったのと同様の剥離実験を実際の太陽電池モジュールおよび部材を用いて行なう実験について説明する。この実験において作製されるサンプル(以下、「実物サンプル」という)は、太陽電池の種類または部材によって特定される。具体的には、各実物サンプルは板材に代えて表5に示すような太陽電池や部材を用いる。それぞれの剛性kの値も表5に示す。各実物サンプルのサイズは、幅10cm、長さ10cmとしている。
【表5】
なお、表5に示す剛性kの値を計測する試験片のサイズは、太陽電池モジュールAおよびBが幅2.5cm、有効長8cm、太陽電池モジュールCおよびガラス板Fが幅0.5cm、有効長15cm、そして、金属板DおよびE(ガルバリウム鋼板(登録商標))が幅0.7cm、有効長8cmとしている。表5に示すように、「太陽電池モジュールC」および「ガラス板F」を用いる実物サンプルに対する剛性kの値は、測定可能な範囲の上限である10MN/mを上回り測定不能である。
【0065】
表5の太陽電池や部材それぞれを用いる実物サンプルにおける剥離実験の結果を表6および表7に示す。表6は剥離強さ0.1N/cmの面ファスナーを採用した結果であり、表7は剥離強さ4N/cmの面ファスナーを採用した結果である。
【表6】
【表7】
なお、表6および表7の脱離性の階層化の基準は表3のとおりである。
【0066】
表6および7に示すように、太陽電池モジュールA(剛性:0.0099MN/m)と、太陽電池モジュールB(剛性:0.12MN/m)とは、いずれも、実物サンプルにおける取り外しには問題が生じない。この場合には、図7(b)のような漸次剥離が実現している。表6と表7との結果を対比させても、面ファスナーの剥離強さが0.1N/cmの場合(表6)と4N/cmの場合(表7)との間では、脱離力に違いが生じているものの、その違いは、取り外しが容易といえるか、容易とは言えないものの可能であるか、という範囲の違いにとどまる。これに対して、金属板D(剛性:2.7MN/m)および金属板E(剛性:5.4MN/m)では、面ファスナーの剥離強さが0.1N/cmの場合(表6)であっても、実物サンプルの取り外しのための脱離力が1000Nを超え、脱離は不可能である。さらに、太陽電池モジュールC(剛性:10MN/m超)やガラス板F(いずれも、剛性:10MN/m超))を用いる実物サンプルでは、測定中に面ファスナー3が剥離するよりも先に太陽電池モジュールCやガラス板Fが破損してしまう。このため、太陽電池モジュールCやガラス板Fを用いる実物サンプルも、取り外しは不可能である。
【0067】
しかも、実際の太陽電池や部材を用いた実物サンプルに基づく剥離実験の結果は、板材71〜76の剛性検討サンプルを用いた剥離実験によって得られた剛性kの値に基づく「可撓性」または「剛体」の関連づけにも整合するものとなる。つまり、実際の太陽電池モジュールにおいて、可撓性を備えるとされるべき太陽電池モジュールAおよびBを用いる実物サンプルは取り外しが容易または可能である。これに対して、実際の太陽電池モジュールにおいて、剛体とされるべき太陽電池モジュールCの実物サンプルは、取り外しが不可能である。また、ガラスを利用せず破損しにくい金属板DおよびEを用いた実物サンプルであっても、いずれも、1MN/m超と剛性kの値が大きいことから取り外しが不可能である。このように、実物サンプルに基づく剥離実験の結果は、剛性kの値に基づく「可撓性」または「剛体」の関連づけにも整合している。
【0068】
[係合域の面積の好ましい範囲]
従来の剛体太陽電池モジュール81を用いる場合、面ファスナーの係合域の面積が小さいときには剛体太陽電池モジュール81の取り外しが可能であったとしても、その面積を増大させると取り外すことが困難になる。具体的には、面ファスナーの係合域がある面積より大きい面積であるときには剛体太陽電池モジュール81を支持体2から取り外すことが難しくなる。本実施形態において、この面積の限界値は100cm2である。この点について説明する。
【0069】
上述した面積の限界値が100cm2であることは、弱い剥離強さの面ファスナーを採用した表2および4の結果からも以下のように説明される。面ファスナー3の第1係合素子31および第2係合素子32の間の係合域の面積は、表2および4の結果を得た調査の際には100cm2としている。ここで、面ファスナー3の剥離挙動が、表2において板材71〜74の場合と板材75および76の場合との間で大きく異なっていることに注目する。つまり、板材71〜74では漸次剥離となっているのに対して、板材75および76では全面同時剥離となっている(表2および4)。面ファスナー3の剥離挙動において、図7(b)の板材71〜74のように漸次剥離となると、脱離力は係合域の面積とはほとんど関係しない。これに対して、板材75および76のように全面同時剥離となると、係合域の面積に比例して脱離力も増大する。したがって、係合域の面積100cm2をさらに超えるように係合域の面積を拡大したときの脱離力の変化は、表2および4の結果から容易に類推することができる。つまり、板材71〜74では係合域の面積が100cm2を越えても、板材を支持部材から取り外すことが可能なはずである。係合域の面積が大きくなっても、例えば幅の狭い辺から剥離させるなどの手法を採用すれば、面ファスナーの剥離を行なうことに支障は生じないからである。これに対して、板材75および76において係合域の面積が100cm2を越えて拡大されると、それに比例して脱離力が増大し、取り外しは一層困難になるばかりとなるはずである。
【0070】
もちろん、板材75および76の代わりに現実の剛体太陽電池モジュール81を用いると、支持体から取り外すために必要な力が増大することはさらなる困難をもたらす。すでに述べたように、その強い力が剛体太陽電池モジュール81に対する曲げ荷重を生じさせ、剛体太陽電池モジュール81の破損の可能性が高まるためである。この点からも、剛体太陽電池モジュール81に100cm2を超える面ファスナーの係合域を適用すると破損の点からも剛体太陽電池モジュール81を支持体2から取り外すことは困難となる。
【0071】
このように、表2および4の結果に示される板材71〜74の場合と板材75および76の場合との対比から、面積が100cm2を超える面ファスナーの係合域を適用する場合は可撓性太陽電池モジュール1を採用することがとりわけ有利となることがわかる。つまり、剛体太陽電池モジュール81で100cm2を超える係合域の面積の面ファスナーで剛体の支持体に取り付けると太陽電池モジュールの取り外しが困難または不可能になるのに対し、面ファスナーを適用する太陽電池モジュールを可撓性太陽電池モジュール1とすれば、太陽電池モジュールの面積を100cm2以上としてもそのような困難は生じない。このため、可撓性太陽電池モジュール1それ自体の可搬性とも相まって、可撓性太陽電池モジュール1を採用する太陽電池モジュール組立体100の用途が大幅に拡大される。
【0072】
[面ファスナーの選択]
面ファスナー3は、任意の種類の面ファスナーを用いることができる。面ファスナー3の第1係合素子31および第2係合素子32は、それぞれが同形状であるタイプや異形状であるタイプのいずれのタイプのものも使用することができる。ここで、第1係合素子31および第2係合素子32が互いに異形状であるタイプの場合は、第1係合素子31および第2係合素子32それぞれを雄体および雌体としてもよいし、逆にそれぞれを雌体および雄体としてもよい。この面ファスナー3の第1係合素子31および第2係合素子32は、典型的にはテープ状に形成されていて対にして用いられる。テープ状の各係合素子の一方の面には係合のための多数のパイルが植えるようにして設けられている。各係合素子は任意のタイプのものが選択される。例えば、対にして用いられる第1係合素子31および第2係合素子32においては、いずれか一方と他方との組み合わせとして、それぞれ、フックテープとループテープとされるもの、フックテープとナッピングテープとされるもの、マッシュルームテープとループテープとされるもの、マッシュルームテープとナッピングテープとされるものなどが採用される。なお、これらの例において、フックテープおよびマッシュルームテープを雄体とよび、ループテープおよびナッピングテープを雌体と呼ぶこともある。なお、本出願の各図面においては、面ファスナー2の第1係合素子31および第2係合素子32の個々のパイルは、直方体の規則的な配列によって模式的にのみ示している。
【0073】
可撓性太陽電池モジュール1が取付けられる可能性のある支持体を複数用いる場合には、各支持体に固着される第2係合素子32は、可撓性太陽電池モジュール1に固着されている第1係合素子31と対をなすものに統一される。可撓性太陽電池モジュール1を各支持体に対して着脱可能とするためである。
【0074】
面ファスナー3の第1係合素子31および第2係合素子32は、可撓性太陽電池モジュール1の背面と支持体2の支持面との各面の少なくとも一部を覆っている。第1係合素子31および第2係合素子32の素材は特には限定されないが、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアミド、ポリエステルなどの高分子材料、または金属が採用される。また、可撓性太陽電池モジュール1および第1係合素子31の間と、支持体2および第2係合素子32の間とのいずれにおける固着手法も、特段限定されない。例えば、接着、溶着、融着、縫製を使用する固着手法を、単独でまたは組み合わせて採用することができる。
【0075】
本実施形態の面ファスナー3の剥離強さには好ましい範囲が存在する。具体的には、面ファスナー3には、剥離強さの下限値が好ましくは0.1N/cm以上、さらに好ましくは、0.2N/cm以上のものが用いられる。また、面ファスナー3の剥離強さの上限値は好ましくは4N/cm以下、さらに好ましくは2N/cm以下とする。面ファスナー3の剥離強さが弱いと、例えば可撓性太陽電池モジュール1に風力が作用するだけで可撓性太陽電池モジュール1が支持体2から脱落しかねない。剥離強さが0.1N/cm以上では、そのような脱落は起こりにくくなり、さらに0.2N/cm以上である場合には、脱落は生じなくなる。また、剥離強さが2N/cmを超えると、可撓性太陽電池モジュール1を取り外す作業時に面ファスナー3を剥がしにくくなって作業性が低下する。さらに剥離強さが4N/cmを超えた場合には、例えば過大な曲げ荷重によって可撓性太陽電池モジュール1が破損する確率が高まる。
【0076】
<第1実施形態:変形例1>
[曲面への適用]
本実施形態において採用される可撓性太陽電池モジュール1は、それ自体の可撓性により支持体の支持面に沿って変形することが可能である。このため、可撓性太陽電池モジュール1を取り付け可能な支持面は平面状のものには限定されない。すなわち、支持面を曲面状とした太陽電池モジュール組立体であっても、本実施形態に含まれている。
【0077】
図8は、本実施形態において支持体の支持面を曲面とする変形例の太陽電池モジュール組立体200の断面図である。太陽電池モジュール組立体200は、支持体2Cの支持面22Cが曲面状である以外は、図2に示した太陽電池モジュール組立体100と同様の構造を備えている。
【0078】
ここで、第1係合素子31および第2係合素子32がテープ状である場合には、第1係合素子31および第2係合素子32自体も可撓性を備えている。このため、第1係合素子31および第2係合素子32は、支持体の支持面のみならず、可撓性太陽電池モジュール1の背面においてもその形状に沿って曲がったりたわんだりする。面ファスナー3は、支持面2Cに対しても、図2に示した平面の支持面2を用いる太陽電池モジュール組立体100の場合と同様に十分な係合力を発揮する。
【0079】
また、支持体2Cの支持面22Cは、可撓性太陽電池モジュール1がたわむ際の幾何学的な特徴に応じた曲面形状にされている。具体的には、平面に沿って広げることができて、例えばロール状に巻取ることができるようにたわむことを許容するような可撓性太陽電池モジュール1であれば、支持面22Cは例えば可展面(developable surface)とされる。なお、可展面とは、各部に伸び縮みを伴うことなく展開するのみの操作によって平面に重ねることができる曲面を一般に指している。例えば、円筒および円錐の側面はいずれも可展面であるが、球面は可展面ではない。
【0080】
このように、本実施形態は、支持面が曲面である場合にも適用される。もし、太陽電池モジュールがある程度以上の面積を有している従来の剛体のものである場合には、支持体の支持面は、剛体太陽電池モジュールの形状に適合(conform)させておく必要がある。つまり、従来の剛体太陽電池モジュールを用いると、支持体の支持面の形状に大きな制約を生じてしまう。これに対して、可撓性太陽電池モジュール1を面ファスナー3と組み合わせる本実施形態においては、支持体の支持面の形状に特段の制約はない。
【0081】
加えて注目すべきは、太陽電池モジュール組立体200の可撓性太陽電池モジュール1を太陽電池モジュール組立体100のものと同一としうる点である。例えば、同一の可撓性太陽電池モジュール1を、あるときには平面の支持面に取付けて太陽電池モジュール組立体100の一部として電源として正常に動作させ、またあるときには、曲面の支持面に取付けて太陽電池モジュール組立体200の一部として電源として正常に動作させることも可能である。
【0082】
<第1実施形態:変形例2>
[可撓性太陽電池モジュールを用いる実施形態:部分的に配置される面ファスナー]
これまでの説明において、面ファスナー3は、第1係合素子31の全域が第2係合素子32の全域に係合して、両者のすべての領域が係合域となるものとして説明してきた。しかし、本実施形態においては、可撓性太陽電池モジュールの背面全面や支持体の支持面全面に面ファスナーが配置されていることは必須ではない。つまり、例えば太陽電池モジュールの背面の一部のみや支持面の一部のみを覆うように面ファスナー3の第1係合素子31および第2係合素子32を固着させる変形例も本実施形態の一部として実施することができる。
【0083】
図9は、面ファスナー3の第1係合素子31を一部のみに配置する可撓性太陽電池モジュールの例を示す斜視図である。また図10は、面ファスナー3の第2係合素子32を一部のみに配置する支持体の例を示す斜視図である。図9および図10に示したように、本実施形態の面ファスナー3の第1係合素子31または第2係合素子32は、固着される面の一部だけに配置される構造を取りうる。なお、本実施形態として実施することができるような一部だけに配置される第1係合素子31または第2係合素子32の組み合わせは、典型的には、次の三つの場合である。第一に、第1係合素子31が可撓性太陽電池モジュール1の一部のみに配置され、第2係合素子32が支持体2の全面に配置されている場合である。第二に、第1係合素子31が可撓性太陽電池モジュール1の背面12全面に配置され、第2係合素子32が支持体2の支持面22の一部のみに配置されている場合である。第三に、第1係合素子31および第2係合素子32の両者が、それぞれ、可撓性太陽電池モジュール1の背面12の一部のみ、および、支持体2の支持面22の一部のみに配置されている場合である。
【0084】
面ファスナー3の第1係合素子31または第2係合素子32を可撓性太陽電池モジュール1または支持体2の一部のみに配置する場合、その配置のパターンは、格子模様状、市松模様状、水玉模様状、縞状などから任意に選択される。このうち縞状とは、例えば可撓性太陽電池モジュール1が矩形形状である場合に、可撓性太陽電池モジュール1の周縁のいずれかの辺に沿う方向に延びる多数のラインが並ぶストライプパターンである。このストライプパターンは、第1係合素子31または第2係合素子32に含まれる単数または複数のライン状の単位係合素子31aまたは単位係合素子32aによって形成されている(図9または図10)。ここで、縞状のパターンに配置した場合には、単位係合素子31aまたは単位係合素子32aの延びる方向を、可撓性太陽電池モジュール1を支持体2から取り外す際に剥離が進行する方向に向けることが可能となる。縞状のうち、剥離が進行する向きに平行に各単位係合素子が延びるストライプパターンを特に縦縞状といい、それに垂直な向きに各単位係合素子が延びるストライプパターンを横縞状という。したがって、縦縞状となるか横縞状となるかは、可撓性太陽電池モジュール1を取り外す際の面ファスナー3の剥離の進行する向きとの関連によって定まる。例えば図9に示した可撓性太陽電池モジュール1が紙面の左右を軸に向きに反転されて図10に示した支持体2に取付けられている場合、紙面の左右のいずれか一方の端部から他方の端部にむかって剥離が進行するように可撓性太陽電池モジュール1が取り外されれば、図9および図10のストライプパターンは縦縞状である。
【0085】
第1係合素子31および第2係合素子32のうちのいずれかまたは両方を固着される面の一部のみに配置することには、一般的に、面ファスナー3にかかるコストを節約できる利点がある。これには別の利点もある。その利点は、縞状、とりわけ縦縞状のパターンを採用する場合に特有のものである。具体的には、第1係合素子31および第2係合素子32のいずれかまたは両方が縦縞状のパターンとなるように、単位係合素子31aまたは単位係合素子32aが配置されるとする。この縦縞状の配置においては、面ファスナー3の剥離が進行してゆく間に、面ファスナー3の剥離している領域と係合している領域との境界は連続する同一の単位係合素子を切れ目なく進行してゆく。したがって、その剥離の進行する間、係合が解放される単位係合素子の幅は一定であり、剥離の進行の間にわたって剥離に必要な力が一定している。もし、剥離している領域が、単位係合素子の切れ目において係合のある部分から無い部分にまたはその逆に移動するような配置パターンとなっていると、剥離している領域と係合している領域との境界の進行速度が急加速したり急減速し、可撓性太陽電池モジュール1や支持体2には部分的に強い応力が発生しかねない。縦縞状のパターンではこのような現象は生じず、面ファスナーの剥離がスムーズに進行する。つまり、漸次剥離の進行中に起きる不意な加速や減速に由来する可撓性太陽電池モジュール1または支持体2の破損が防止される点で、縦縞状のパターンが一層有利である。
【0086】
以上に述べたように、本実施形態に沿って作製される太陽電池モジュール組立体100および200は、可撓性太陽電池モジュール1を支持体2(または支持体2C)から取り外し、必要に応じて同一または別の支持体に再度取り付けることが容易に行えるものである。
【0087】
<実施例および比較例>
次に、本実施形態に基づいて作製される可撓性太陽電池モジュールと面ファスナーとを採用する太陽電池モジュール組立体の実施例1および実施例2を説明する。併せて、可撓性太陽電池モジュールを接着して作成する太陽電池モジュール組立体の比較例1と、従来の剛体太陽電池モジュールと面ファスナーとを採用する太陽電池モジュール組立体の比較例2を説明する。
【0088】
[実施例1]
図2に示す太陽電池モジュール組立体100と同様の構造の太陽電池モジュール組立体の実施例1サンプルを作製した。この実施例1サンプルにおいて、可撓性太陽電池モジュール1には幅50cm、長さ100cm、厚さ0.85mmのフレキシブルタイプのものを使用した。この可撓性太陽電池モジュール1の剛性kの値は、0.0099MN/mである。この剛性kの値を測定した試験片は、幅wが2.5cm、有効長Lが8cmであった。封止樹脂16のうち背面12側に位置する素材はエチレン−四フッ化エチレン共重合体とした。後の接着のために封止樹脂16の背面12はプラズマ処理された。
【0089】
また、実施例1サンプルにおける面ファスナー3は、第1係合素子31および第2係合素子32の組み合わせのときの剥離強さが4N/cmの面ファスナーを用いた。第1係合素子31はポリアミド樹脂製のフックテープすなわち雄体とした。第1係合素子31は、可撓性太陽電池モジュール1の背面12の全面にブチルゴム粘着剤によって接着した。このように、面ファスナー3の第1係合素子31は、可撓性太陽電池モジュール1の受光面14とは逆の背面12に固着され、背面12の少なくとも一部を覆うように配置した。
【0090】
支持体2には幅50cm、長さ100cm、厚さ1.0mmのガルバリウム鋼板を使用した。第2係合素子32はポリアミド樹脂製のループテープすなわち雌体とした。第2係合素子32は、支持体2の支持面22の全面にブチルゴム粘着剤により接着された。このように、面ファスナー3の第2係合素子32は、支持体2の支持面22に固着され、支持面22背面12の少なくとも一部を覆うように配置した。
【0091】
図11は、別の支持体2Bの構造を示す斜視図である。支持体2Bは、幅50cm、長さ100cm、厚さ3.0mmのガラス板である。支持体2Bの支持面22Bの全面には、第2係合素子32Bがブチルゴム粘着剤によって接着されている。この第2係合素子32Bを第1係合素子31と組み合わせた場合の剥離強さは4N/cmであった。第2係合素子32Bはポリアミド樹脂製のループテープすなわち雌体とした。このように、剛体の支持体2Bには、支持面22Bの少なくとも一部を覆うようにして面ファスナー3の第2係合素子32Bを配置した。
【0092】
太陽電池モジュール組立体100(図2)の構成の実施例1サンプルにおいて、平面状に広がる可撓性太陽電池モジュール1の周縁の一部分を把持して、その一部分に可撓性太陽電池モジュール1の受光面14に向かって引く向きの力を加えた。その結果、図5(a)に示したように、その端部から面ファスナー3が剥離し始めた。引き続き可撓性太陽電池モジュール1の当該一部分をその力の向きに引いたところ、図5(b)に模式的に示したように徐々に漸次剥離によって可撓性太陽電池モジュール1が支持体2から部分的に取り外された。すなわち、可撓性太陽電池モジュール1がフレキシブルタイプであることから、剥離の進行の際に平面状の広がりのある可撓性太陽電池モジュール1の少なくとも一部がたわみ、面ファスナー3の剥離が進行するにつれて、第1係合素子31と第2係合素子32との間の係合が解放されている範囲が広がっていった。この際、可撓性太陽電池モジュール1を支持体2から取り外すための脱離力は、概ね60Nであった。そして最終的には、可撓性太陽電池モジュール1はその全体が支持体2から取り外された。取り外された可撓性太陽電池モジュール1の背面12の全面には、第1係合素子31が固着された状態が維持されていた。
【0093】
次に、支持体2から取り外された可撓性太陽電池モジュール1の第1係合素子31を別の支持体2Bの第2係合素子32Bに接するように閉止し、外力によって押圧した。こうして第1係合素子31を第2係合素子32Bに剥離可能に係合させ、可撓性太陽電池モジュール1を当該別の支持体2Bの支持面に取付けた。このように、支持体2から取り外した可撓性太陽電池モジュール1は、支持体2Bに再び取り付けることができた。
【0094】
次いで、可撓性太陽電池モジュール1の端部を支持体2Bの面に垂直な方向に引き上げたところ、可撓性太陽電池モジュール1はフレキシブルタイプであることから、漸次剥離によって徐々に支持体2Bから剥離し始めた。この場合の剥離も、面ファスナー3の第1係合素子31と第2係合素子32Bとの係合面が境界面とする剥離、つまり面ファスナー3の剥離によるものであった。また、この際、可撓性太陽電池モジュール1を支持体2Bから取り外すための脱離力は、概ね60Nであった。そして、最終的には、可撓性太陽電池モジュール1が支持体2Bから外れた。外れた可撓性太陽電池モジュール1の背面全面には、第1係合素子31が固着された状態が維持されていた。可撓性太陽電池モジュール1を支持体2Bから取り外す過程は、上述した可撓性太陽電池モジュール1の端部を支持体2から取り外す過程と同様であった。
【0095】
そして、実施例1サンプルと同一の断面構造を備え、サイズを変化させた3つのサイズ検討サンプルを用いて剥離試験を行ない、可撓性太陽電池モジュールの場合のサイズと、脱離力、剥離挙動、および脱離性の関係を調査した。表8にその結果を示す。なお、面ファスナーは、剥離強さが4N/cmのものを採用した。また、取り外すための力は、10cm×10cm以外のサイズ検討サンプルでは長手方向に剥離が進行するような向きとした。すなわち、サイズ検討サンプルそれぞれの長手方向の両端に位置する辺(短辺)の一方のみを引き起こす力によって、外れるときに他方の短辺に向かって面ファスナーの剥離が進行するようにした。
【表8】
【0096】
表8の脱離力は、表4の脱離力と同様にして測定され、脱離性はその脱離力から表3に基づいて階層化された。このように、面積が1000倍以上に異なるサイズ検討サンプルの間において、脱離力の相違は緩やかであり、いずれのサイズ検討サンプルにおいても太陽電池モジュール1の取り外しは容易または可能であった。
【0097】
[比較例1]
図12は、接着剤によって可撓性太陽電池モジュール1と支持体2とを直接固着して得られる太陽電池モジュール組立体900の断面図である。接着剤により固着されたのは、可撓性太陽電池モジュール1と支持体2の全面であり、そのサイズは幅10cm、長さ10cmとした。この図12に示した太陽電池モジュール組立体900と同様の構造の太陽電池モジュール組立体の比較例1サンプルを作製した。比較例1サンプルにおいて、可撓性太陽電池モジュール1と支持体2は実施例1サンプルにおいて使用したものと同一種類のものを使用した。可撓性太陽電池モジュール1は、支持体2に対して湿気硬化型アクリル変成シリコーン接着剤5により接着した。
【0098】
比較例1サンプルにおいて可撓性太陽電池モジュール1の端部を支持体2の面に垂直な方向に引き上げようとしたところ、500Nまでの力によって可撓性太陽電池モジュール1を支持体2から取り外すことはできなかった。そこでさらに力を増していったところ、力が750N付近に達したところで比較例1サンプルの太陽電池モジュールが破損した。
【0099】
[比較例2]
図1に示した従来の太陽電池モジュール組立体800と同様の構造の太陽電池モジュール組立体の比較例2サンプルを作製した。比較例2サンプルにおいて、剛体太陽電池モジュール81には単結晶型太陽電池素子84が封入されている。単結晶型太陽電池素子84には可撓性がないため、その破損を防ぐ等の目的で剛体太陽電池モジュール81の構造にはガラス板86が使用されていた。このため、剛体太陽電池モジュール81は全体として剛体であった。剛体太陽電池モジュール81は幅50cm、長さ100cm、厚さ4.0mmとした。封止樹脂96の背面側の素材はエチレン‐四フッ化エチレン共重合体で、その表面がプラズマ処理されていた。面ファスナー3の第1係合素子31、支持体2、および第2係合素子32は実施例1サンプルと同じものとした。また、実施例1サンプルと同様に、第2係合素子32は支持体2の支持面22に対してブチルゴム粘着剤により接着されていた。
【0100】
比較例2サンプルの剛体太陽電池モジュール81の端部を支持体2の面に垂直な方向に引き上げようとしたところ、600Nの力によって剛体太陽電池モジュール81が破損した。
【0101】
そして、比較例2サンプルと同一の断面構造を備え、サイズを変化させた4つのサイズ検討サンプルを用いて剥離試験を行ない、剛体太陽電池モジュールの場合のサイズと脱離力、剥離挙動、および脱離性の関係を調査した。表9にその結果を示す。面ファスナーは、剥離強さが0.1N/cmのものを採用した。取り外すための力は、10cm×10cm以外のサイズ検討サンプルでは長手方向に剥離が進行するような向きとした。
【表9】
【0102】
表9の脱離力は、表4の脱離力と同様にして測定されたものであり、脱離性はその脱離力から表3に基づいて階層化された。剛体太陽電池モジュールの場合の面積と脱離性の関係は、上記表8に示した実施例1サンプルと同一の断面構造の場合における面積と脱離性の関係とは大きく異なっている。剛体太陽電池モジュールの場合には、3cm×5cmすなわち15cm2の面積の段階では、剥離が可能であるものの、すでに脱離力は150Nとなっていた。しかも、剥離挙動は全面同時剥離であった。これは、太陽電池モジュールが剛体であることが反映された結果である。そして、サイズを5cm×10cmつまり50cm2の面積にしたサイズ検討サンプルと、10cm×10cmつまり100cm2の面積にしたサイズ検討サンプルとは、いずれも、取り外すための力を400Nとした時点で剛体太陽電池自体モジュールが破損してしまった。
【0103】
<第1実施形態:他の変形例>
上述した実施例のように、本実施形態は可撓性太陽電池モジュールの設置方法としても実施することができる。つまり、本実施形態は、太陽電池モジュールの受光面とは逆の背面に固着され、その背面の少なくとも一部を覆う面ファスナーの第1係合素子を、剛体である支持体の支持面に固着され支持面の少なくとも一部を覆う面ファスナーの第2係合素子に対して剥離可能に係合させることにより、太陽電池モジュールを支持体の支持面に取付けるステップを含む可撓性太陽電池モジュールの設置方法としても実施される。
【0104】
さらに、本実施形態は、可撓性太陽電池モジュールの取り外し方法としても実施することができる。すなわち、本実施形態は、太陽電池モジュールの受光面とは逆の背面に固着され背面の少なくとも一部を覆っている面ファスナーの第1係合素子を、剛体である支持体の支持面に固着され支持面の少なくとも一部を覆っている面ファスナーの第2係合素子から剥離させるステップを含む可撓性太陽電池モジュールの取り外し方法としても実施される。
【0105】
この可撓性太陽電池モジュールの取り外し方法は、さらに有利な取り外し方法としても実施することができる。すなわち、上述の可撓性太陽電池モジュールの取り外し方法において、平面状に広がる可撓性太陽電池モジュールの周縁の一部分を把持するステップと、太陽電池モジュールの一部分に、太陽電池モジュールの受光面に向かって引く向きの力を加えるステップと、太陽電池モジュールの平面状の広がりの少なくとも一部をたわませながら、引き起こした太陽電池モジュールの一部分を力の向きに引くステップと、第1係合素子と第2係合素子との間の係合が解放されている太陽電池モジュールの範囲を広げてゆき、第1係合素子と第2係合素子とを互いに剥離させるステップとを含むことが有利である。このようなステップを組み合わせることによって、面ファスナーの漸次剥離が実現される。
【0106】
<第2実施形態>
本発明は、上述した第1実施形態とは別の実施形態として実施することもできる。第2実施形態においては、剛体ではない支持体、つまり可撓性を備える支持体が採用される。
【0107】
図13は、柔軟性または可撓性を備えた支持体2Fを用いる太陽電池モジュール組立体300の構造を示す断面図である。太陽電池モジュール組立体300は、第1実施形態において説明した可撓性太陽電池モジュール1を、可撓性を備えた支持体2Fの支持面2Fに面ファスナー3によって取り付けて作製されている。
【0108】
本実施形態の太陽電池モジュール組立体300においても、面ファスナー3の剥離挙動は、第1実施形態において図5に関連して説明したような漸次剥離となる。すなわち、可撓性太陽電池モジュール1の背面12に固着されている面ファスナー3の第1係合素子31は、支持体2Fの支持面22Fに固着されている第2係合素子32から徐々に剥離することが可能である。したがって、剛体太陽電池モジュール81を採用する場合のような面ファスナーの係合域の面積が増大した場合の取り外しの困難性の問題は生じない。
【0109】
本実施形態において可撓性太陽電池モジュール1が可撓性を備えることにより、太陽電池モジュールの取り外しの容易化に加えて別の積極的な技術的意義ももたらされる。まず、支持体2Fが可撓性を備えていて変形が許容される場合には、面ファスナー3によって支持体2Fに取り付けられている可撓性太陽電池モジュール1はその取り付けられた状態を維持する。ここで、支持体2Fが可撓性を有するときの可撓性太陽電池モジュール1の状況は、第1実施形態の変形例1の説明において平面および曲面の支持体をそれぞれ採用する図2および図8の両方の状況を組み合わせたものといえる。したがって、可撓性太陽電池モジュール1は、面形状の支持体2(図2)と曲面形状の支持体2C(図8)との両者に対して適合し得たように、可撓性を備える支持体2Fの変形に対してもそれ自体の形状を適合させるように変形する。つまり、本実施形態においては、太陽電池モジュール組立体300は全体としても可撓性を備えている。
【0110】
太陽電池モジュール組立体300が全体として可撓性を示すことは、一つには、可撓性太陽電池モジュール1を面ファスナー3によって取り付ける対象となる支持体として、第1実施形態にて説明した支持体2、支持体2C、そして支持体2Fのすべてが含まれることを意味している。このため、支持体が剛体に限定されない第2実施形態は、可撓性太陽電池モジュール1を面ファスナー3によって取り付ける支持体の選択範囲への制約を取り除く実施形態といえ、太陽電池モジュールの可搬性を活かした用途のさらなる拡大に寄与するものである。もう一つ、太陽電池モジュール組立体300が全体として可撓性を示すことは別の利点にも結びつく。すなわち、可撓性を備える支持体2Fがそれ単体で可撓性を前提にした取り扱いがなされている場合に、そこに可撓性太陽電池モジュール1を組み合わせた太陽電池モジュール組立体300においても同様の取り扱いを行うことが可能となる。例えば、可撓性を備える支持体2Fが収納時にロール状に巻かれるようなものである場合に、その支持体2Fに可撓性太陽電池モジュール1を取り付けた太陽電池モジュール組立体300もロール状に巻くことが可能となる。なお、可撓性を備える支持体2Fの例としては、例えば野外にて活用されるテントの膜や建物の屋根に採用される各種の膜構造体などの柔軟性のある任意の素材を挙げることができる。
【0111】
以上、本発明の実施形態を具体的に説明した。上述の各実施形態および実施例は、発明を説明するために記載されたものであり、本出願の発明の範囲は、特許請求の範囲の記載に基づいて定められるべきものである。また、各実施形態の他の組合せを含む本発明の範囲内に存在する変形例もまた、特許請求の範囲に含まれるものである。
【産業上の利用可能性】
【0112】
本発明は、太陽電池モジュールや太陽電池モジュール組立体の用途を拡大することを通じて、そのような太陽電池を一部に含むような任意の電力機器または電気機器の普及に貢献する。
【符号の説明】
【0113】
100、200、800、900 太陽電池モジュール組立体
1 可撓性太陽電池モジュール
81 剛体太陽電池モジュール
12、92 背面
14、94 受光面
16、96 封止樹脂
2、2B、2C、2F 支持体
22、22B、22C、22F 支持面
3 面ファスナー
31 第1係合素子
32、32B 第2係合素子
31a、32a 単位係合素子
4、84 太陽電池素子
5 湿気硬化型アクリル変成シリコーン接着剤
71〜76 板材
86 ガラス板
【特許請求の範囲】
【請求項1】
可撓性を備える太陽電池モジュールと、
該太陽電池モジュールの受光面とは逆の背面に固着されており、該背面の少なくとも一部を覆っている面ファスナーの第1係合素子と、
剛体である支持体と、
該支持体の支持面に固着されており、該支持面の少なくとも一部を覆っている前記面ファスナーの第2係合素子と
を備え、
前記第1係合素子と前記第2係合素子とが互いに剥離可能に係合されている
太陽電池モジュール組立体。
【請求項2】
前記太陽電池モジュールの剛性kの値が0MN/m以上1MN/m以下である
請求項1に記載の太陽電池モジュール組立体。
【請求項3】
前記太陽電池モジュールの剛性kの値が0.5MN/m以下である
請求項2に記載の太陽電池モジュール組立体。
【請求項4】
前記太陽電池モジュールの前記可撓性が、該太陽電池モジュールが前記支持体から取り外される際に、前記面ファスナーの漸次剥離を生じさせるような可撓性である
請求項1に記載の太陽電池モジュール組立体。
【請求項5】
前記面ファスナーの剥離強さが0.1N/cm以上4N/cm以下である
請求項1に記載の太陽電池モジュール組立体。
【請求項6】
前記面ファスナーの剥離強さが0.2N/cm以上2N/cm以下である
請求項5に記載の太陽電池モジュール組立体。
【請求項7】
前記支持体の前記支持面が曲面である
請求項1乃至請求項6のいずれか1項に記載の太陽電池モジュール組立体。
【請求項8】
前記第1係合素子と前記第2係合素子とが互いに係合している係合域の面積が100cm2以上である
請求項1乃至請求項6のいずれか1項に記載の太陽電池モジュール組立体。
【請求項9】
前記第1係合素子または前記第2係合素子のいずれかが一以上のライン状の単位係合素子を含んでおり、
該単位係合素子は、前記太陽電池モジュールの周縁のいずれかの辺に沿って延びるストライプパターンをなしている
請求項1乃至請求項6のいずれか1項に記載の太陽電池モジュール組立体。
【請求項10】
受光面と、
該受光面とは逆の背面と、
該背面に固着されており、該背面の少なくとも一部を覆っている面ファスナーの第1係合素子と
を備え、
支持体の支持面に固着され該支持面の少なくとも一部を覆っている前記面ファスナーの第2係合素子に対して、前記第1係合素子が剥離可能に係合されるようになっている
可撓性の太陽電池モジュール。
【請求項11】
前記太陽電池モジュールの剛性kの値が0MN/m以上1MN/m以下である
請求項10に記載の太陽電池モジュール。
【請求項12】
前記太陽電池モジュールの剛性kの値が0.5MN/m以下である
請求項11に記載の太陽電池モジュール。
【請求項13】
前記太陽電池モジュールの前記可撓性が、該太陽電池モジュールが前記支持体から取り外される際に、前記面ファスナーの漸次剥離を生じさせるような可撓性である
請求項10に記載の太陽電池モジュール。
【請求項14】
前記面ファスナーの剥離強さが0.1N/cm以上4N/cm以下である
請求項10に記載の太陽電池モジュール。
【請求項15】
前記面ファスナーの剥離強さが0.2N/cm以上2N/cm以下である
請求項14に記載の太陽電池モジュール。
【請求項16】
前記支持体が剛体である
請求項10に記載の太陽電池モジュール。
【請求項17】
前記第1係合素子が前記第2係合素子に対して係合する係合域の面積が100cm2以上である
請求項10乃至請求項16のいずれか1項に記載の太陽電池モジュール。
【請求項18】
前記第1係合素子が一以上のライン状の単位係合素子を含んでおり、
該単位係合素子は、前記太陽電池モジュールの周縁のいずれかの辺に沿って延びるストライプパターンをなしている
請求項10に記載の太陽電池モジュール。
【請求項19】
可撓性を備える太陽電池モジュールの受光面とは逆の背面に面ファスナーの第1係合素子を固着して、該背面の少なくとも一部を該第1係合素子により覆うステップと、
剛体である支持体の支持面に前記面ファスナーの第2係合素子を固着して、該支持面の少なくとも一部を該第2係合素子により覆うステップと、
前記第1係合素子を前記第2係合素子に対して剥離可能に係合させて、前記太陽電池モジュールを前記支持体の前記支持面に取り付けるステップと
を含む
太陽電池モジュール組立体の製造方法。
【請求項1】
可撓性を備える太陽電池モジュールと、
該太陽電池モジュールの受光面とは逆の背面に固着されており、該背面の少なくとも一部を覆っている面ファスナーの第1係合素子と、
剛体である支持体と、
該支持体の支持面に固着されており、該支持面の少なくとも一部を覆っている前記面ファスナーの第2係合素子と
を備え、
前記第1係合素子と前記第2係合素子とが互いに剥離可能に係合されている
太陽電池モジュール組立体。
【請求項2】
前記太陽電池モジュールの剛性kの値が0MN/m以上1MN/m以下である
請求項1に記載の太陽電池モジュール組立体。
【請求項3】
前記太陽電池モジュールの剛性kの値が0.5MN/m以下である
請求項2に記載の太陽電池モジュール組立体。
【請求項4】
前記太陽電池モジュールの前記可撓性が、該太陽電池モジュールが前記支持体から取り外される際に、前記面ファスナーの漸次剥離を生じさせるような可撓性である
請求項1に記載の太陽電池モジュール組立体。
【請求項5】
前記面ファスナーの剥離強さが0.1N/cm以上4N/cm以下である
請求項1に記載の太陽電池モジュール組立体。
【請求項6】
前記面ファスナーの剥離強さが0.2N/cm以上2N/cm以下である
請求項5に記載の太陽電池モジュール組立体。
【請求項7】
前記支持体の前記支持面が曲面である
請求項1乃至請求項6のいずれか1項に記載の太陽電池モジュール組立体。
【請求項8】
前記第1係合素子と前記第2係合素子とが互いに係合している係合域の面積が100cm2以上である
請求項1乃至請求項6のいずれか1項に記載の太陽電池モジュール組立体。
【請求項9】
前記第1係合素子または前記第2係合素子のいずれかが一以上のライン状の単位係合素子を含んでおり、
該単位係合素子は、前記太陽電池モジュールの周縁のいずれかの辺に沿って延びるストライプパターンをなしている
請求項1乃至請求項6のいずれか1項に記載の太陽電池モジュール組立体。
【請求項10】
受光面と、
該受光面とは逆の背面と、
該背面に固着されており、該背面の少なくとも一部を覆っている面ファスナーの第1係合素子と
を備え、
支持体の支持面に固着され該支持面の少なくとも一部を覆っている前記面ファスナーの第2係合素子に対して、前記第1係合素子が剥離可能に係合されるようになっている
可撓性の太陽電池モジュール。
【請求項11】
前記太陽電池モジュールの剛性kの値が0MN/m以上1MN/m以下である
請求項10に記載の太陽電池モジュール。
【請求項12】
前記太陽電池モジュールの剛性kの値が0.5MN/m以下である
請求項11に記載の太陽電池モジュール。
【請求項13】
前記太陽電池モジュールの前記可撓性が、該太陽電池モジュールが前記支持体から取り外される際に、前記面ファスナーの漸次剥離を生じさせるような可撓性である
請求項10に記載の太陽電池モジュール。
【請求項14】
前記面ファスナーの剥離強さが0.1N/cm以上4N/cm以下である
請求項10に記載の太陽電池モジュール。
【請求項15】
前記面ファスナーの剥離強さが0.2N/cm以上2N/cm以下である
請求項14に記載の太陽電池モジュール。
【請求項16】
前記支持体が剛体である
請求項10に記載の太陽電池モジュール。
【請求項17】
前記第1係合素子が前記第2係合素子に対して係合する係合域の面積が100cm2以上である
請求項10乃至請求項16のいずれか1項に記載の太陽電池モジュール。
【請求項18】
前記第1係合素子が一以上のライン状の単位係合素子を含んでおり、
該単位係合素子は、前記太陽電池モジュールの周縁のいずれかの辺に沿って延びるストライプパターンをなしている
請求項10に記載の太陽電池モジュール。
【請求項19】
可撓性を備える太陽電池モジュールの受光面とは逆の背面に面ファスナーの第1係合素子を固着して、該背面の少なくとも一部を該第1係合素子により覆うステップと、
剛体である支持体の支持面に前記面ファスナーの第2係合素子を固着して、該支持面の少なくとも一部を該第2係合素子により覆うステップと、
前記第1係合素子を前記第2係合素子に対して剥離可能に係合させて、前記太陽電池モジュールを前記支持体の前記支持面に取り付けるステップと
を含む
太陽電池モジュール組立体の製造方法。
【図5】
【図7】
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図6】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図7】
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図6】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2012−23293(P2012−23293A)
【公開日】平成24年2月2日(2012.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−161787(P2010−161787)
【出願日】平成22年7月16日(2010.7.16)
【出願人】(000005234)富士電機株式会社 (3,146)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年2月2日(2012.2.2)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年7月16日(2010.7.16)
【出願人】(000005234)富士電機株式会社 (3,146)
【Fターム(参考)】
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