説明

太陽電池モジュールの製造方法

【課題】製品の不具合発生の割合の低減を図った、太陽電池モジュールの製造方法を提供する。
【解決手段】真空ラミネータを用いて充填材層を溶融固化させる工程を含む薄膜太陽電池を製造する工程の途中で、一時的に露出するカバーフィルムまたはカバーガラスに設けられた開口部周辺にシリコーン重合体を配置する工程を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薄膜太陽電池モジュール及びその製造方法に係り、特に、薄膜太陽電池モジュールの電極取り出し部の構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
薄膜太陽電池モジュールは絶縁基板上に、透明導電膜層、薄膜半導体層、裏面金属層が順次形成され、複数個のユニットセルが列状に並んで集積化され、かつ前記複数個のユニットセルが充填材層とカバーフィルム、またはカバーガラスとにより被覆された構造を有している。モジュールの正負の電極にリード線を接続し、前記充填材層とカバーフィルム、またはカバーガラスを被せると共に該リード線の他端を前記充填材層及び粘着性を有する熱可塑性防湿性シートに設けられたスリット、さらに前記カバーフィルム、またはカバーガラスに設けられた開口部に通し、その後、前記充填材層を溶融固化させることで太陽電池の電気的な出力を得ている。
【0003】
従来、薄膜太陽電池モジュールの電極取り出し部は、充填材層に設けられたスリットとカバーフィルム、またはカバーガラスや絶縁小片に設けられた開口部からリード線を通し、その後、真空ラミネーターを用いて前記充填材層を溶融固化させて得られる構造である。得られた薄膜太陽電池モジュールで、前記充填材層を溶融固化した部分とリード線はカバーフィルム、またはカバーガラスや絶縁小片で保護されるので充填材はあふれ出ることなく容易にリード線を取り出し、端子箱との接続等を実施することが可能である。これらの構造を示した先行技術文献には特許文献1や特許文献2などがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開昭64−018762号公報
【特許文献2】特開2001−77383号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、先行技術には、まだ、さらなる改善が求められていた。すなわち、カバーフィルム、またはカバーガラスに設けられた開口部より太陽電池の耐湿性が損なわれ、該開口部より水分が浸入することにより、太陽電池の出力低下が発生するとの問題が有る場合が有った。例えば、耐湿性試験(85℃湿度85%)を2000時間程度行うと、太陽電池特性が著しく低下する現象が見られる場合が有り、その部分を剥離して観察するとその部分の薄膜太陽電池の裏面電極が剥離していることが観察される場合が有った。この問題の解決手段として、例えばブチルゴムやブチルゴムに乾燥剤を配合した熱可塑性防湿性シートをカバーフィルム、またはカバーガラスの開口部の部分に設けて真空ラミネーターでの溶融固化するプロセスが考えられる。その結果、上記の耐湿試験を行って3000時間を経過しても電気的特性が低下しないことが観察された。
【0006】
これらの構造においては、真空ラミネーターを用いて前記充填材層を溶融固化させる工程、または薄膜太陽電池モジュールの保管時に、カバーフィルム、またはカバーガラスに設けられた開口部のリード線と、前記充填材層または前記粘着性を有する熱可塑性防湿性シートが融着または圧着され、リード線の電力取り出し部としての機能が損なわれる問題点があった。すなわち、リード線が融着または圧着するために、前記端子箱を取り付ける工程で半田付けが困難になるという課題を新たに見出した。
【0007】
その対策の為に、開口部の回りにリード線を保護する剥離シートを設けることが検討され、剥離シートとしては従来フッ素系樹脂をコーティングしたファブリックシートが使用されていた。
【0008】
しかしながら、このフッ素系樹脂をコーティングしたファブリックシートを設けた場合、真空ラミネーターを用いて前記充填材層を溶融固化させる工程を含む薄膜太陽電池を製造する工程、または薄膜太陽電池モジュールの保管時に、カバーフィルム、またはカバーガラスに設けられた開口部周辺に汚れが付着することを防止できず、一般にシリコーン接着剤で薄膜太陽電池モジュールの開口部に取り付けられる、端子ボックスの接着強度が低下する問題が生じていた。
【0009】
本発明は、上述した問題点を解決するためになされたものであり、製品の不具合発生の割合の低減を図った、太陽電池モジュールの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
発明者が鋭意検討した結果、上記課題は下記の構成で解決されることが判明した。
【0011】
真空ラミネーターを用いて前記充填材層を溶融固化させる工程を含む薄膜太陽電池を製造する工程、または薄膜太陽電池モジュールの保管時に、カバーフィルム、またはカバーガラスに設けられた開口部周辺に汚れ等を付着することを防止する方法として、真空ラミネーターを用いて前記充填材層を溶融固化させる工程において、少なくとも1つの面にシリコーン離型層を有する耐熱シートを、リード線とリード線を充填する充填材または粘着性を有する熱可塑性防湿シートの間に配置することを特徴とする。
【0012】
前記少なくとも1つの面がシリコーン離型層を有する耐熱樹脂シートにおいて、シートがPET樹脂シートであることが好ましい。シリコーン離型層を有する耐熱シートにおいて、シリコーン離型層が、分子量1500以下の低分子量のシリコーン重合体を4重量%以上含むことが好ましい。
【0013】
真空ラミネーターを用いて充填材層を溶融固化させる工程を含む薄膜太陽電池を製造する工程、または薄膜太陽電池モジュールの保管時に、カバーフィルム、またはカバーガラスに設けられた開口部周辺が一時的に露出するなどして汚れが付着するため、一般にシリコーン接着剤で薄膜太陽電池モジュールの開口部に取り付けられる、端子ボックスの接着強度が低下する問題が生じていた。このような課題を、本発明では、製造工程の途中で、前記一時的に露出する部分にシリコーン重合体を配置する工程を備える太陽電池モジュールの製造方法によって、課題を解決する。
【0014】
本発明の第1は、絶縁基板上に、透明導電膜層、薄膜半導体層、裏面金属層が順次形成されてなる複数個のユニットセルが列状に並んで直列接続されることによって集積化されてなり、かつ前記複数個のユニットセルが、充填材層と、開口部を有するカバーフィルムまたはカバーガラスと、により被覆された太陽電池モジュールの製造方法において、
前記複数個のユニットセルの直列方向の両端部であるモジュールの正負の電極はリード線の一端に接続されてなり、その上に、前記充填材層と、前記カバーフィルムまたはカバーガラスとが被せられてなり、
少なくとも前記開口部の周辺には、粘着性を有する熱可塑性防湿シートと、少なくとも一つの面にシリコーン離型剤層を配置した耐熱性樹脂シートからなる離型処理シートとが配置されてなり、
前記離型処理シートの離型剤層は少なくとも前記熱可塑性防湿シートと前記開口部を有するカバーフィルムまたはカバーガラスの表面とに対向するように配置されてなり、
前記リード線の他端は、
前記充填材層に設けられた第1のスリットに通されてなり、
前記熱可塑性防湿シートに設けられた第2のスリットに通されてなり、
前記カバーフィルムまたはカバーガラスに設けられた開口部に通されてなり、
さらに、前記離型処理シートに設けられた第3のスリットに通されてなり、
前記充填剤層を溶融固化する工程を備え、
前記離型処理シートの耐熱性樹脂シートを除去する工程を備え、
さらに前記開口部の周辺にシリコーン接着剤で端子ボックスを取り付ける工程を備え、
前記充填材層を溶融固化する工程において、前記充填材層を硬化させるための加熱処理によって、前記離型処理シートのシリコーン離型剤層に含まれるシリコーン重合体を、
前記熱可塑性防湿シート表面
及び/または
前記開口部を有するカバーフィルムまたはカバーガラスの表面の前記開口部周辺部
に付着させる離型処理工程が同時に行われることを特徴とする、太陽電池モジュールの製造方法、である。
【0015】
なお、前記第1のスリット、第2のスリット、第3のスリットは、それぞれスリット形状の限定は無く、リード線を通すことができさえすれば良く、線状の切り込み状であっても、四角状や三角状、リード線の断面形状と略同一の形状、リード線の断面形状と略相似形の形状、等、適宜選択されうる。なお、第1、第2、第3、それぞれのスリット形状は、それぞれ同一であっても、異なっていても良い。リード線が例えばアルミ箔の短冊状のような平板状の場合は、リード線とスリットとが略接するように配置できて余分な重なりが少なくなるなどの理由によって、スリットは平板状の切り込みや、平板状の相似形の切り込みが好ましい。
【0016】
本発明の第2は、前記少なくとも一つの面にシリコーン離型剤層を配置した耐熱性樹脂シートからなる離型処理シートの耐熱性樹脂シートは、その両面にシリコーン離型剤層を配置した耐熱性樹脂シートからなる離型処理シートである、前記の太陽電池モジュールの製造方法、である。
【0017】
本発明の第3は、前記耐熱性樹脂シートはPET樹脂シートである、前記の太陽電池モジュールの製造方法、である。
【0018】
本発明の第4は、前記シリコーン離型剤層が、分子量1500以下のシリコーン重合体を4重量%以上有することを特徴とする、前記の太陽電池の製造方法、である。
【0019】
本発明の第5は、前記絶縁基板がガラス基板である、前記の太陽電池モジュールの製造方法、である。
【発明の効果】
【0020】
シリコーン離型層を有する耐熱樹脂シートを用いることにより、真空ラミネーターを用いて前記充填材層を溶融固化させる工程を含む薄膜太陽電池の製造工程、または薄膜太陽電池モジュールの保管時に、カバーフィルム、またはカバーガラスに設けられた開口部周辺に汚れが付着することを防止できる。よって、シリコーン接着剤で取り付けられる端子ボックスの接着強度が低下することを防止できる。
【0021】
より具体的にこの効果を説明すると、真空ラミネーターを用いて前記充填材層を溶融固化させる工程において、シリコーン離型層を有する耐熱シートに含有される低分子量離型成分が、開口部周辺部に移行し、シリコーン離型処理された構造が得られる。その結果、真空ラミネーターを用いて前記充填材層を溶融固化させる工程を含む太陽電池の製造工程、または薄膜太陽電池モジュールの保管時に、カバーフィルム、またはカバーガラスに設けられた開口部周辺に汚れが付着することを防止できる。また、開口部周辺に移行した低分子量のシリコーン離型成分は、端子ボックスをシリコーン接着剤で取り付ける際に、シリコーン接着剤に移行し、シリコーン接着剤の取り付け強度を低下させない。
【0022】
通常の汚れ防止の第一の手法としては、開口部の回りに設けた1枚ものの剥離シートの形状を変更することである。ただし、形状変更によるコスト増加や離型シート配置の作業が煩雑となることが予想される。また、スプレー吹き付けや塗布により、開口部周りを離型処理する方法も考えられるが、工程数が増加すると共に、離型処理にてシリコーン接着剤の取り付け強度を低下させることも危惧される。シリコーン離型層を有する耐熱シートを用いる方法は、工程数を増加させることもなく、作業を煩雑化することもなく、汚れ防止を実現できる方法であり、さらに重要な点は、シリコーン接着剤の取り付け強度を低下させない効果を同時に実現している点である。
【0023】
これまで通常、離型層を有する耐熱シートは、その離型層から低分子量の離型成分が移行した場合に接着性等の低下のおそれを生じるため、低分子量成分の組成が小さいものが求められ、開発されてきた。上記のようなこれまでの場合、フッ素系の離型層を有する耐熱樹脂シートを用いた場合など、離型処理は可能であるが、フッ素系であるため、シリコーン接着剤との親和性・相性が若干劣るため、結果としてシリコーン接着剤の取り付け強度を低下させる可能性が大きいという課題が有った。
【0024】
一方、本発明では、シリコーン離型剤層を使用するため、シリコーン接着剤との親和性・相性が非常に良いため、引き続く、シリコーン接着剤による端子ボックスの取り付け強度が著しく向上するという、顕著な効果を発現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の太陽電池モジュールの組立図である。
【図2】本発明の太陽電池モジュールの組立の断面図である。
【図3】本発明のラミネート工程後の太陽電池モジュールの概略図である。
【図4】本発明の端子箱まで設けた太陽電池の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、具体的な実施の形態を図を用いて説明する。ここに述べられる内容は1つの形態を説明するものであり、これに限定されるものではなく、別の形態をとるものであってもその技術思想を反映するものであれば、適用できるものである。
【0027】
図1に、本発明で用いられる薄膜太陽電池モジュール1の一例の組立図を、図2にその断面図を示す。薄膜太陽電池セル2で用いられる透明絶縁基板としてはガラスや耐熱性のプラスチックが用いられる。この基板上に基板の不純物がその上の層に拡散しない様に例えばSiO2が形成される。この上に透明導電膜層が形成される。透明導電膜層としては、結晶粒の頂角によって凹凸が形成される形に成長したSnO2が好適に用いられる。その形成方法としては熱CVD法が一般的である。この透明導電膜層はレーザ加工法などを用いて溝が設けられ、ストリップ状の個別領域が形成される。その上には薄膜半導体層が形成される。薄膜半導体層としてはアモルファスシリコンや、薄膜多結晶シリコン、CIS、CdTeなどの光起電力接合が適宜形成される。また透明電極の材料もこれらの半導体に適したものが適宜選択される。
【0028】
これらの薄膜半導体層には隣の光起電力素子との接続の為の溝が設けられ、薄膜半導体層の上には裏面電極層が形成される。裏面電極層としては、ZnOなどの透明導電材料とAgなどの高光反射金属を組み合わせた電極が好適に用いられる。これらの裏面電極層は溝によって個別の電極に分割されたユニットセル3を形成され、この形態により、透明導電層と裏面電極層とが薄膜半導体層分離溝を介して互いに電気的に接続され、隣接するユニットセル3同士が直列に接続される。
【0029】
例えば、これらのユニットセル3が接続された両端には電力を集めるためのバス領域が設けられる。その部分に離散的にセラミック半田のバンプが形成される。このバンプに半田メッキ銅箔が接続され、バスバー4を形成する。半田メッキ銅箔は0.2mm前後の厚みの幅数mmの銅箔を通常の共晶半田あるいは鉛フリー半田でコートしたものである。
【0030】
バスバー4から外部へ電力を供給するための6mmリード線6と、直列に接続されたユニットセル3の間には、充填材7に埋設された絶縁シート部5が配置されている。薄膜太陽電池モジュール1の充填材7は、一般的にエチレン酢酸ビニル共重合体(EVA)が用いられる。また、カバーフィルム11の材料としては、フッ素系のフィルムが用いられ、特にデュポン社のTedlerが一般的であり、水分の透過を防止するためにTedler/Al箔/Tedlerの3層構造が好適に用いられる。また、PVDF/Al箔/PET、ETFE/Al箔/PETも使用される。
【0031】
絶縁シート部5としては、信頼性の面から既に信頼性の確認された材料を使用するのが好ましい。また、絶縁を確保する為には金属を含まない方が良く、Tedlerの単体シートなどが好適な選択となるが、他にはPETなどの安価な樹脂フィルム等も安全性を確保できるなら使用することが可能である。また、直列に接続されたユニットセル3及び6mmリード6と、前記単体シートの間に充填材7を設けるために、EVA/単体シート/EVAの3層構造が好適に用いられる。
【0032】
前記6mmリード線6を端子ボックス設置位置にて、その6mmリード線6の端が基板に対して垂直になるように折り曲げて、図1及び図2に示す様に6mmリード線6を通すための、スリット8を設けた充填材7を基板全面に被せる。
【0033】
カバーフィルム11も6mmリード線6を通すための、開口部12を設ける必要があるが、カバーフィルム11としてTedler/Al箔/Tedler三層シートの様に金属層を含むカバーを用いるときにおいては開口部12で6mmリード線6と金属層とが電気的に接触すると、太陽電池の出力の全てが金属層で短絡して出力が得られない、あるいは、一方の極の銅箔と金属層とが接触した場合でも、カバーフィルム11の一部が後で設置するフレームや取り付け具と接触すると、漏電して安全上問題となる。工業規格ではフレームや金具と端子間の絶縁耐圧を1.5kV以上維持することが決められており、これに適合する上でも前記接触を防ぐ対策が必要となってくる。また、別の形態としてカバーフィルム11の代わりにガラス板を用いる形態も考えられる。その場合には同様に開口部が設けられる。ただし、2つの小さな開口部を設けることはガラスにおいては難しいため、リード線を通す1つの開口を設ける場合が多い。
【0034】
また、太陽電池モジュール1の防湿性を向上させる目的で、充填材7とカバーフィルム11の間に、カバーフィルムの開口部12より少し大きめで切り込みのある熱可塑性防湿シート9を6mmリード線6の周りにセットしてから、カバーフィルム11をセットする。更にカバーフィルム11の開口部12から6mmのリード線6を出すとともに、図3に示したようにシリコーン離型層を有する耐熱樹脂シート13のスリット14に通し、6mmリード線6をカバーフィルム11の面に並行になるように折り曲げる。
【0035】
以上の工程にて組立てた太陽電池モジュール1は真空室がゴムのダイアフラムで上下に分離された二重真空槽式ラミネーター(略称真空ラミネーター)で加熱圧着される。太陽電池モジュール1はガラスを下にした状態で装置にセットされる。
【0036】
まず、100℃程度の温度で、上下の真空室を真空引きし、太陽電池モジュール1を脱気する。この時の到達真空度は装置のカタログでは0.5torr程度である。この間にEVAが溶融し内部の気泡等が除去される。次に上側の真空室に大気を導入することで、大気圧にて太陽電池モジュール1を圧着する。そのまま、150℃程度まで昇温しEVAを架橋させる。
【0037】
この工程で、前記シリコーン離型層を有する耐熱樹脂シート13から6mmリード線6、熱可塑性防湿シート9の表面、及び開口部12周辺のカバーフィルム11表面にシリコーン重合体が移行し、良好な離型処理が可能となる。
【0038】
この様にして組上がった薄膜太陽電池モジュール1は、基板周辺にはみ出した充填材7やカバーフィルム11を除去するとともに、6mmリード線6の回りに取り付けたシリコーン離型層を有する耐熱樹脂シート13を除いた後、周辺枠や、図4に示すように端子ボックス15を所定の場所に取り付けることで製品として完成する。
【0039】
端子ボックス15の接着は、シリコーン樹脂接着剤17を端子ボックス15の取り付け面に塗布し、太陽電池モジュール1に取り付ける。カバーフィルム11の開口部12より取り出された6mmリード線6を端子ボックス15の端子台16に接続する。端子台16には半田が盛られていることが好ましく、6mmリード線6を加熱溶融することで端子台16に接続する。接続後、端子ボックス15をシリコン樹脂18で充填する。
【0040】
ここで、前記熱可塑性防湿シート9は、ブチル樹脂とフィラーからなる混合物であり、ブチル樹脂としては、ポリ(1-ブチレン)、ポリイソブチレン、及びその架橋物であり、また、その混合部であっても良い。フィラーとしては、炭酸カルシウム、タルク、2酸化チタン、マイカ、シリカゲル、水酸化マグネシウム及び水酸化アルミニウム等の無機フィラー、アクリル樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリエチレン樹脂及びカーボンブラック等の有機フィラーがよい。
【0041】
前記シリコーン離型層を有する耐熱樹脂シート13は耐熱樹脂シートの表面に、シリコーン離型層を形成した構造であり、シリコーン離型層は少なくとも1つの面に形成されており、好ましくは両面に形成されている。また、充填材層を溶融固化させる工程において、前記シリコーン離型層を有する耐熱樹脂シート13のシリコーン離型層を形成した面を、前記カバーフィルム側の方向に向け、配置することが好ましい。
耐熱樹脂シートとしては、軟化点または融点が150℃以上である耐熱樹脂シート、好ましくは軟化点または融点が170℃以上の耐熱樹脂シート、さらに好ましくは軟化点または融点が200℃以上の耐熱樹脂シートである。軟化点または融点が150℃に近いと、薄膜太陽電池モジュールをラミネートする際に、耐熱樹脂シートの剛性が極端に低下し、シリコーン離型層を有する耐熱樹脂シート13にシワが発生する場合があり、好ましくない。耐熱樹脂シートとしては、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル樹脂系シート、ポリメチルペンテン樹脂等のポリオレフィン系樹脂シート、ポリカーボネート樹脂シート、ポリアリレート樹脂シート、ポリアミド樹脂シートを用いることができる。好ましくはポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル系樹脂シートであり、さらに好ましくはポリエチレンテレフタレート樹脂シートである。
【0042】
前記シリコーン離型層を有する耐熱樹脂シート13は、25μm〜300μmの厚みのものを使用することが可能であり、厚みが薄すぎると加熱時にシワが発生する場合があり、厚みが厚すぎると6mmリードを、シリコーン離型層を有する耐熱樹脂シートのスリット14に挿入する作業の作業性が悪くなる。好ましくは50μm〜200μm、さらに好ましくは75μm〜125μmである。
【0043】
前記シリコーン離型層を有する耐熱樹脂シート13の離型層は、シリコーン離型処理剤を耐熱樹脂シートに塗布し、必要に応じて、加熱硬化、紫外線硬化、または電子線効果等の硬化処理(焼付)することにより形成される。シリコーン離型処理剤としては、エマルジョン型、オイル型、焼付型のシリコーン離型処理剤を用いることができ、オイル型、焼付型の離型処理剤が好ましい。オイル型シリコーン離型剤としては、ポリアルキルシロキサン、ポリ変性アルキルシロキサン、及びポリアルキルシロキサンで変性した樹脂を用いることができる。焼付型シリコーン離型処理剤としては、ポリアルキルシロキサン、ポリ変性アルキルシロキサン、及びポリアルキルシロキサンで変性した樹脂に、パーオキサイドまたはパーオキサイド含有シリコーン化合物等の架橋剤を配合したものを使用することができる。また、ポリアルキルシロキサン、ポリ変性アルキルシロキサン、及びポリアルキルシロキサンで変性した樹脂上に、エポキシ基、イソシアネート基、及びアリール基、ビニル基、アクリル基、(メタ)アクリル基等の不飽和基から選ばれる少なくとも1つ以上の反応性の官能基を有する樹脂を耐熱樹脂シートに焼き付けて離型層を形成することができる。
【0044】
前記端子ボックス15を取り付けるシリコーン樹脂接着剤17としては、ポリジメチルシロキサン等のポリオルガノシロキサン構造を有し、アセトン縮合型、アルコール縮合型、オキシム縮合型の硬化方式で室温硬化させる。
【0045】
薄膜太陽電池モジュール1をラミネートする際に、シリコーン離型層を有する耐熱樹脂シート13から、記熱可塑性防湿シート9の表面及び/または開口部12周辺のカバーフィルム11表面に、シリコーン重合体が移行しやすいように、シリコーン離型処理シートの離型層が、分子量1500以下の低分子量のシリコーン重合体を4重量%以上含むことが好ましい。ただし、低分子量のシリコーン重合体組成が多すぎると、シリコーン離型層を有する耐熱樹脂シート13を作製することが困難であるので、離型層における分子量1500以下の低分子量シリコーン重合体の組成は20重量%以下が好ましく、さらに好ましくは、10重量%以下である。なお、シリコーン離型層を有する耐熱樹脂シート13から移行したシリコーン重合体は、その厚みが極めて薄いために6mmリード線6を取り付ける際の半田付けの障害にはならない。
【0046】
また、前記真空ラミネーターを用いて前記充填材層を溶融固化させる工程を含む太陽電池の製造工程、または薄膜太陽電池モジュールの保管時に、カバーフィルム、またはカバーガラスに設けられた開口部周辺に汚れが付着することを防止できる効果は、絶縁基板上に、透明導電膜層、薄膜半導体層、裏面金属層が順次形成され、複数個のユニットセルが列状に並んで集積化され、かつ前記複数個のユニットセルが充填材層とカバーフィルムまたはカバーガラスとにより被覆された太陽電池モジュールの製造方法において、モジュールの正負の電極に6mmリード線の一端を接続し、前記充填材層とカバーフィルムを被せると共に、該6mmリード線の他端を前記充填材層に設けられたスリット、さらに前記カバーフィルムに設けられた開口部に通し、その後、前記充填材層を溶融固化させる工程において、シリコーン離型剤層と耐熱性樹脂シートからなる離型処理シートを用い、前記充填材層を硬化せるための加熱処理によって前記離型処理シートからシリコーン重合体を拡散せしめることで前記カバーフィルムに設けられた開口部周辺部にシリコーン重合体を付着させる離型処理工程を同時に行い、前記カバーフィルムに設けられた開口部周辺部に汚れが付着することを防止する工程を含み、シリコーン接着剤で前記フィルムに設けられた開口部に端子ボックスを取り付けることを特徴とする太陽電池モジュールの製造方法においても、同様に得られる。
【実施例】
【0047】
次に、本発明の実施例をガラス上に構成された薄膜太陽電池モジュール1をEVAとTedler/Al箔/Tedlerの3層構造フィルムを用いる場合という特定の応用について詳細に述べる。
【0048】
透明絶縁基板として短辺950mm長辺980mm厚さ5mmのフロートガラスを用いた。このガラスはプロセス中の熱割れや機械的な破壊を防ぐため切断面の周辺を面取りしたものを用いている。
【0049】
このガラスに熱CVD法によりアルカリバリアとしてSiO2を1000Å形成し透明導電層としてフッ素ドープのSnO2を10000Å形成した。その表面は結晶粒の頂角によって凹凸が形成されている。この透明導電膜層にはYAGレーザの第2高調波を用いてレーザ加工法で溝を設けた。
【0050】
その上にプラズマCVD法を用いてp型アモルファスシリコンカーバイドを100Å、i型アモルファスシリコンを3000Å、n型アモルファスシリコンを300Å薄膜半導体層として形成した。YAGレーザの第2高調波を用いて隣の光起電力素子との接続の為の溝が設けられた。
【0051】
更に薄膜半導体層の上に、スパッタ法を用いてZnOを1000Å、Agを3000Å形成し裏面電極層とした。これらの裏面電極層はYAGレーザの第2高調波を用いて溝を形成し個別の電極を得た。この形態により透明電極と裏面電極の間に半導体が挟まれたユニットセル3が直列に接続される。このユニットセル3の幅は約10mmである。
【0052】
同様にレーザ加工を用いてこれらのユニットセル3の両端に電力を集めるためのバス領域を5mmの幅で設けた。正極のバス領域と負極のバス領域との間隔は960mmであった。この領域には透明導電膜層を露呈させるための溝を複数設け、その部分に20mm置きに超音波半田鏝を用いてセラソルザのバンプを設けた。このバンプに2mm幅、銅箔厚み0.2mm、半田厚み0.1mmの半田メッキ銅箔を接続し、バスバー4を形成した。
【0053】
また薄膜太陽電池セル2の周辺領域は、サンドブラスト法を用いて研磨し全ての上の層が存在しない領域を設けた。
【0054】
バスバー4の基板端から60mmの位置に長さ490mm幅6mmの半田メッキ銅箔を接続した。この銅箔の厚みと半田厚みは前述の半田メッキ銅箔と同じである。
【0055】
半田メッキ銅箔同士の接続は、接続する場所で両者を重ね合わせ、押さえながら半田鏝で銅箔上の半田を溶融させて半田付けした。この6mm幅の半田メッキ銅箔(6mmリード線6)とユニットセル3の表面とを絶縁するために長さ950mm幅25mmのサイズで0.4mm厚みのEVA、0.05mm厚みのTedler、及び0.4mm厚みのEVAを3層重ねた状態のものを当該の隙間に挿入した。
【0056】
(実施例1)
薄膜太陽電池セル2の短辺の中央部で20mmの間隔を開けて6mmリード線6をその端が基板に対して垂直になるように折り曲げた。その上に当該の場所に長さ40mmのスリット8を2つ設けた、幅980mm長さ950のEVAシートをセットした。スリット8からは両極からの6mmリード線6を引き出した。その引き出した部分を、30mm×60mm、厚さ0.7mmの熱可塑性防湿性シート9をそのスリット10を通す形でセットした。
【0057】
カバーフィルム11として、凡そ15mm×21mmの開口部12を設けたTedler/Al箔/Tedlerの3層構造からなるバックフィルムをその開口部12から半田メッキ銅箔を出すようにして取り出し、さらに、40mm×60mm、厚さ0.075mmの両面にシリコーン離型層を有するPET樹脂シートのスリット14に通し、6mmリード線6をカバーフィルム11の面に並行になるように折り曲げた。
【0058】
二重真空槽式ラミネーター(略称真空ラミネーター)でこれらをラミネートし本発明の薄膜太陽電池モジュール1を得た。
【0059】
シリコーン離型処理したPET樹脂シートを薄膜太陽電池モジュール1から取り外したのち、この薄膜太陽電池モジュール1の6mmリード線6及び熱可塑性粘着防湿シート9の表面に低分子のシリコーン重合体が移行し、表面が離型処理されており、これら6mmリード線6と熱可塑性防湿シート9とが、粘着しないことが判明した。65mm×60mmの大きさの端子ボックス15を、4gのシリコーン接着剤17で固定し、6mmリード線6を端子ボックス15の端子台16に半田接合した後、端子ボックス内部をシリコーン樹脂18でポッティングした。この端子ボックス15を太陽電池モジュール1から垂直方向に引張った場合、接着面全体で凝集破壊し、その最大引張り強度は650Nであった。
【0060】
(比較例1)
実施例1において、シリコーン離型処理したPET樹脂シートの代わりに、40mm×60mm、厚さ0.075mmのフッ素樹脂離型処理したPET樹脂シートのスリットに通し、6mmリード線6をカバーフィルム11の面に並行になるように折り曲げた。
【0061】
二重真空槽式ラミネーター(略称真空ラミネーター)でこれらをラミネートし本発明の薄膜太陽電池モジュール1を得た。
【0062】
フッ素樹脂離型処理したPET樹脂シートを薄膜太陽電池モジュール1から取り外したのち、この薄膜太陽電池モジュール1のリード線及び熱可塑性粘着防湿シート9の表面にフッ素樹脂が移行し、表面が離型処理されており、これら6mmリード線6と熱可塑性防湿シート9が粘着しないことが判明した。65mm×60mmの大きさの端子ボックス15を4gのシリコーン接着で固定し、6mmリード線6を端子ボックス15の端子台16に半田接合した後、端子ボックス内部をシリコーン樹脂18でポッティングした。この端子ボックス15を太陽電池モジュールから垂直方向に引張った場合、接着剤面の一部で剥離が発生し、その最大引張り強度は350Nであった。
【0063】
(比較例2)
実施例1において、シリコーン離型処理したPET樹脂シートの代わりに、40mm×60mm、厚さ0.2mmのフッ素樹脂を含浸したファブリックシート(チューコー化学製)を使用して、同様に薄膜太陽電池モジュール1を作製したところ、作業において6mmリード線6と熱可塑性防湿シート9が粘着し、端子ボックス取り付作業において困難が生じることが判明した。4gのシリコーン接着剤17で固定し、端子ボックス内部をシリコーン樹脂18でポッティングした。この端子ボックス15を太陽電池モジュールから垂直方向に引張った場合、その最大引張り強度は400Nであった。
【符号の説明】
【0064】
1.薄膜太陽電池モジュール
2.薄膜太陽電池セル
3.ユニットセル
4.バスバー
5.絶縁シート部
6.6mmリード線
7.充填材
8.充填材のスリット
9.熱可塑性防湿シート
10.熱可塑性防湿シートのスリット
11.カバーフィルム
12.カバーフィルムの開口部
13.シリコーン離型層を有する離型処理シート
14.シリコーン離型層を有する離型処理シートのスリット
15.端子ボックス
16.端子台
17.シリコーン接着剤
18.シリコーン樹脂

【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁基板上に、透明導電膜層、薄膜半導体層、裏面金属層が順次形成されてなる複数個のユニットセルが列状に並んで直列接続されることによって集積化されてなり、かつ前記複数個のユニットセルが、充填材層と、開口部を有するカバーフィルムまたはカバーガラスと、により被覆された太陽電池モジュールの製造方法において、
前記複数個のユニットセルの直列方向の両端部であるモジュールの正負の電極はリード線の一端に接続されてなり、その上に、前記充填材層と、前記カバーフィルムまたはカバーガラスとが被せられてなり、
少なくとも前記開口部の周辺には、粘着性を有する熱可塑性防湿シートと、少なくとも一つの面にシリコーン離型剤層を配置した耐熱性樹脂シートからなる離型処理シートとが配置されてなり、
前記離型処理シートの離型剤層は少なくとも前記熱可塑性防湿シートと前記開口部を有するカバーフィルムまたはカバーガラスの表面とに対向するように配置されてなり、
前記リード線の他端は、
前記充填材層に設けられた第1のスリットに通されてなり、
前記熱可塑性防湿シートに設けられた第2のスリットに通されてなり、
前記カバーフィルムまたはカバーガラスに設けられた開口部に通されてなり、
さらに、前記離型処理シートに設けられた第3のスリットに通されてなり、
前記充填剤層を溶融固化する工程を備え、
前記離型処理シートの耐熱性樹脂シートを除去する工程を備え、
さらに前記開口部の周辺にシリコーン接着剤で端子ボックスを取り付ける工程を備え、
前記充填材層を溶融固化する工程において、前記充填材層を硬化させるための加熱処理によって、前記離型処理シートのシリコーン離型剤層に含まれるシリコーン重合体を、
前記熱可塑性防湿シート表面
及び/または
前記開口部を有するカバーフィルムまたはカバーガラスの表面の前記開口部周辺部
に付着させる離型処理工程が同時に行われることを特徴とする、太陽電池モジュールの製造方法。
【請求項2】
前記少なくとも一つの面にシリコーン離型剤層を配置した耐熱性樹脂シートからなる離型処理シートの耐熱性樹脂シートは、その両面にシリコーン離型剤層を配置した耐熱性樹脂シートからなる離型処理シートである、請求項1に記載の太陽電池モジュールの製造方法。
【請求項3】
前記耐熱性樹脂シートはPET樹脂シートである、請求項1または2に記載の太陽電池モジュールの製造方法。
【請求項4】
前記シリコーン離型剤層が、分子量1500以下のシリコーン重合体を4重量%以上有することを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の太陽電池の製造方法。
【請求項5】
前記絶縁基板がガラス基板である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の太陽電池モジュールの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−8867(P2013−8867A)
【公開日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−141027(P2011−141027)
【出願日】平成23年6月24日(2011.6.24)
【出願人】(000000941)株式会社カネカ (3,932)
【Fターム(参考)】