説明

太陽電池用電極ペースト組成物

【課題】 オーミックコンタクトやライン抵抗の悪化を伴うことなく受光面電極の細線化が可能な太陽電池電極用ペースト組成物を提供する。
【解決手段】 ガラスフリットがLi2O 0.6〜18(mol%)、PbO 20〜65(mol%)、B2O3 1〜18(mol%)、SiO2 20〜65(mol%)の範囲内の割合で含むガラスから成ることから、反射防止膜上に塗布して受光面電極を形成するに際して優れたファイヤースルー性が得られるため、線幅を細くしても良好なオーミックコンタクトが得られる。この結果、良好なオーミックコンタクトを保ったままガラス量を減じることができるので、受光面電極のライン抵抗を一層低くできる。したがって、オーミックコンタクトやライン抵抗の悪化を伴うことなく受光面電極の細線化が可能になるため、細線化して受光面積を大きくしても十分に接触抵抗が低いことからFF値が低下しないので、光電変換効率の高い太陽電池が得られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ファイヤースルー法で形成する太陽電池電極用に好適なペースト組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、一般的なシリコン系太陽電池は、p型多結晶半導体であるシリコン基板の上面にn+層を介して反射防止膜および受光面電極が備えられると共に、下面にp+層を介して裏面電極(以下、これらを区別しないときは単に「電極」という。)が備えられた構造を有しており、受光により半導体のp−n接合に生じた電力を電極を通して取り出すようになっている。上記反射防止膜は、十分な可視光透過率を保ちつつ表面反射率を低減して受光効率を高めるためのもので、窒化珪素、二酸化チタン、二酸化珪素等の薄膜から成る。
【0003】
上記の反射防止膜は電気抵抗値が高いことから、半導体のp−n接合に生じた電力を効率よく取り出すことの妨げとなる。そこで、太陽電池の受光面電極は、例えば、ファイヤースルーと称される方法で形成される。この電極形成方法では、例えば、前記反射防止膜をn+層上の全面に設けた後、例えばスクリーン印刷法を用いてその反射防止膜上に導電性ペーストを適宜の形状で塗布し、焼成処理を施す。上記導電性ペーストは、例えば、銀粉末と、ガラスフリット(ガラス原料を溶融し急冷した後に必要に応じて粉砕したフレーク状または粉末状のガラスのかけら)と、有機質ベヒクルと、有機溶媒とを主成分とするもので、焼成過程において、この導電性ペースト中のガラス成分が反射防止膜を破るので、導電性ペースト中の導体成分とn+層とによってオーミックコンタクトが形成される(例えば、特許文献1を参照。)。上記電極形成方法によれば、反射防止膜を部分的に除去してその除去部分に電極を形成する場合に比較して工程が簡単になり、除去部分と電極形成位置との位置ずれの問題も生じない。
【0004】
このような太陽電池の受光面電極形成において、ファイヤースルー性を向上させてオーミックコンタクトを改善し、延いては曲線因子(FF)やエネルギー変換効率を高める等の目的で、従来から種々の提案が為されている。例えば、導電性ペーストに燐・バナジウム・ビスマスなどの5族元素を添加することによって、ガラスおよび銀の反射防止膜に対する酸化還元作用を促進し、ファイヤースルー性を向上させたものがある(例えば、前記特許文献1を参照。)。また、導電性ペーストに塩化物、臭化物、或いはフッ化物を添加することで、ガラスおよび銀が反射防止膜を破る作用をこれら添加物が補助してオーミックコンタクトを改善するものがある(例えば、特許文献2を参照。)。上記ガラスは例えば硼珪酸ガラスである。
【0005】
また、85〜99(wt%)の銀および1〜15(wt%)のガラスを含む銀含有ペーストにおいて、そのガラスを15〜75(mol%)のPbOおよび5〜50(mol%)のSiO2を含み、B2O3を含まない組成とすることが提案されている(例えば、特許文献3を参照。)。この銀含有ペーストは、太陽電池の電極形成に用いるものであって、上記組成のガラスを用いることによって、オーミックコンタクトが改善されるものとされている。
【0006】
また、銀粉末と、亜鉛含有添加剤と、軟化点が300〜600(℃)の範囲内のガラスフリットとを有機溶媒中に分散した厚膜導電性組成物が提案されている(例えば、特許文献4を参照。)。この厚膜導電性組成物は太陽電池の受光面電極を形成するためのもので、亜鉛を添加することで導電性とはんだ接着性とが改善される。また、同様な目的で、上記亜鉛含有添加剤に代えてマンガン含有添加剤を用いることも提案されている(例えば、特許文献5を参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特公平03−046985号公報
【特許文献2】特許第3707715号公報
【特許文献3】特表2008−520094号公報
【特許文献4】特開2006−302890号公報
【特許文献5】特開2006−302891号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、上述した太陽電池において、受光面電極は入射する太陽光を遮るので、太陽電池セルに入るエネルギー量はその受光面電極の占める面積に応じて減少する。これに対して、受光面電極の線幅を細くして受光面積を増大することが考えられるが、線幅を細くするほど良好なオーミックコンタクトが得られ難くなって接触抵抗が高くなり、延いては電流密度の低下が起こるため、変換効率は却って低下する。
【0009】
また、受光面電極の線幅を細くすると電極断面積が小さくなることからライン抵抗が増大する。ガラス量を少なくして導体成分割合を大きくすることで抵抗の増大を抑制することが考えられるが、ガラス量が少なくなるほど反射防止膜との反応性が低下し、延いてはファイヤースルー性が低下するから、オーミックコンタクトが一層悪くなる。
【0010】
本発明は、以上の事情を背景として為されたもので、その目的は、オーミックコンタクトやライン抵抗の悪化を伴うことなく受光面電極の細線化が可能な太陽電池電極用ペースト組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
斯かる目的を達成するため、本発明の要旨とするところは、導電性粉末と、ガラスフリットと、ベヒクルとを含む太陽電池電極用ペースト組成物であって、前記ガラスフリットが酸化物換算でLi2O 0.6〜18(mol%)、PbO 20〜65(mol%)、B2O3 1〜18(mol%)、SiO2 20〜65(mol%)の範囲内の割合で含むガラスから成ることにある。
【発明の効果】
【0012】
このようにすれば、太陽電池電極用ペースト組成物は、これを構成するガラスフリットがLi2O 0.6〜18(mol%)、PbO 20〜65(mol%)、B2O3 1〜18(mol%)、SiO2 20〜65(mol%)の範囲内の割合で含むガラスから成ることから、反射防止膜上に塗布して受光面電極を形成するに際して優れたファイヤースルー性が得られるため、線幅を細くしても良好なオーミックコンタクトが得られる。しかも、本発明のペースト組成物は、優れたファイヤースルー性を有することから、良好なオーミックコンタクトを保ったままガラス量を減じることができるので、受光面電極のライン抵抗を一層低くできる利点がある。したがって、本発明の太陽電池電極用ペースト組成物によれば、オーミックコンタクトやライン抵抗の悪化を伴うことなく受光面電極の細線化が可能になる。この結果、細線化して受光面積を大きくしても十分に接触抵抗が低いことから曲線因子が低下しないので、光電変換効率の高い太陽電池セルが得られる。
【0013】
また、上述したように細線化が可能であることから、高シート抵抗のシャローエミッタにも好適に用い得る利点がある。因みに、シャローエミッタは受光面側のn層厚みが70〜100(nm)と、従来のシリコン太陽電池セルの100〜200(nm)に比較して更に薄くされたもので、受光により発生した電気のうちpn接合に達する前に熱に変わって有効に利用できなかった部分が減じられるので、短絡電流が増大し、延いては発電効率が高められる利点がある。しかしながら、一般にドナー元素濃度が低下するため、Ag-Si間のバリア障壁が増加し、接触抵抗が高くなる。前記組成ガラスはドナー元素を十分に含有することができ、接触抵抗を低くすることができる。その反面で、n層が薄いことからファイヤースルーによる電極形成を一層厳しく制御する必要があるが、本発明の電極用ペースト組成物は前記組成のガラスを含むことから浸食性の制御が容易である。
【0014】
なお、前記ガラスフリット組成において、PbOは、ガラスの軟化点を低下させる成分で、低温焼成を可能とするための成分で、良好なファイヤースルー性を得るためにはPbOが20(mol%)以上且つ65(mol%)以下であることが必要である。PbO量が20(mol%)未満では軟化点が高くなり過ぎるので反射防止膜へ浸食し難くなり、延いては良好なオーミックコンタクトが得られなくなる。一方、65(mol%)を越えると軟化点が低くなり過ぎるので浸食性が強くなり過ぎてpn接合が破壊される等の問題が生ずる。PbO量は、22.4(mol%)以上が一層好ましく、50.8(mol%)以下が一層好ましい。すなわち、22.4〜50.8(mol%)の範囲が更に好ましい。また、30〜40(mol%)程度が特に好ましい。
【0015】
また、B2O3は、ガラス形成酸化物(すなわちガラスの骨格を作る成分)であり、ガラスの軟化点を低くするための成分で、良好なファイヤースルー性を得るためにはB2O3が1(mol%)以上且つ18(mol%)以下であることが必要である。B2O3量が1(mol%)未満では軟化点が高くなり過ぎるので反射防止膜へ浸食し難くなり、延いては良好なオーミックコンタクトが得られなくなると共に、耐湿性も低下する。特に、本願発明においてはガラス中にLiが含まれることから、B2O3が1(mol%)以上含まれていないと著しく熔け難くなる。一方、18(mol%)を越えると軟化点が低くなり過ぎるので浸食性が強くなり過ぎてpn接合が破壊される等の問題が生ずる。B2O3量は、2.8(mol%)以上が一層好ましく、12(mol%)以下が一層好ましい。すなわち、2.8〜12(mol%)の範囲が更に好ましい。また、6〜12(mol%)程度が特に好ましい。
【0016】
また、SiO2は、ガラス形成酸化物であり、ガラスの耐化学性を高くするための成分で、良好なファイヤースルー性を得るためにはSiO2が20(mol%)以上且つ65(mol%)以下であることが必要である。SiO2量が20(mol%)未満では耐化学性が不足すると共にガラス形成が困難になり、一方、65(mol%)を越えると軟化点が高くなり過ぎて反射防止膜へ浸食し難くなり、延いては良好なオーミックコンタクトが得られなくなる。SiO2量は、27.0(mol%)以上が一層好ましく、48.5(mol%)以下が一層好ましい。すなわち、27.0〜48.5(mol%)の範囲が更に好ましい。また、30〜35(mol%)程度が特に好ましい。
【0017】
また、Li2Oは、ガラスの軟化点を低下させる成分で、良好なファイヤースルー性を得るためには、Li2Oが0.6(mol%)以上且つ18(mol%)以下であることが必要である。Li2Oが0.6(mol%)未満では軟化点が高くなり過ぎ延いては反射防止膜への浸食性が不十分になる。一方、18(mol%)を越えると浸食性が強くなり過ぎるので却って電気的特性が低下する。因みに、Liは、拡散を促進することから一般に半導体に対しては不純物であって、特性を低下させる傾向があることから半導体用途では避けることが望まれるものである。特に、通常はPb量が多い場合にLiを含むと浸食性が強くなり過ぎて制御が困難になる傾向がある。しかしながら、上記のような太陽電池用途においては、Liを含むガラスを用いて特性低下が認められず、却って適量が含まれていることでファイヤースルー性が改善され、特性向上が認められた。Liはドナー元素であり、接触抵抗を低くすることもできる。しかも、Liを含む組成とすることにより、良好なファイヤースルー性を得ることのできるガラスの組成範囲が広くなることが認められた。尤も、太陽電池用途においても、過剰に含まれると浸食性が強くなり過ぎ、電気的特性が低下する傾向にある。Li2O量は、6(mol%)以上が一層好ましく、12(mol%)以下が一層好ましい。すなわち、6〜12(mol%)の範囲が更に好ましい。また、6(mol%)程度が特に好ましい。
【0018】
因みに、前記特許文献4,5には、0.1(wt%)以下(=0.58(mol%)以下)の微量のLiを含む鉛ガラスが記載されている。すなわち、電極用ペースト組成物にLiを含むガラスを用い得ることはこれらにも記載されている。しかしながら、これらではLiを含むことの利点は何ら記載されておらず、また、含有量を0.1(wt%)以下とする理由も示されていない。これに対して、本発明者等は、前述したように従来では到底許容できないと考えられていた程度まで多量のLiを含むガラスを用いることで、意外にもファイヤースルー性が改善され、電極パターンを細線化しても良好なオーミックコンタクトが得られることを見出し、本発明は斯かる知見に基づいて為されたものである。
【0019】
なお、上記各成分は、ガラス中に如何なる形態で含まれているか必ずしも特定が困難であるが、これらの割合は何れも酸化物換算した値とした。
【0020】
また、本発明の電極用ペーストを構成する前記ガラスは、その特性を損なわない範囲で他の種々のガラス構成成分や添加物を含み得る。例えば、Al、Zr、Na、Ca、Zn、Mg、K、Ti、Ba、Sr等が含まれていても差し支えない。Alはガラスの安定性を得るために有効な成分であるから、特性には殆ど影響しないが、含まれていることが好ましい。これらは例えば合計30(mol%)以下の範囲で含まれ得る。例えば、AlおよびTiはそれぞれ6(mol%)以下が好ましく、3(mol%)以下が一層好ましい。また、Znは30(mol%)以下が好ましく、15(mol%)以下が一層好ましい。これらAl,Ti,Znを適量含む組成とすることで、並列抵抗Rshが向上し、延いては開放電圧Vocおよび短絡電流Iscが向上するので一層高い電気的特性が得られる。
【0021】
ここで、好適には、前記ガラスフリットは平均粒径(D50)が0.3〜3.0(μm)の範囲内であり、ペースト全体に対して1〜20(vol%)の範囲内の割合で含まれるものである。ガラスフリットの平均粒径が小さすぎると電極の焼成時に融解が早すぎるため電気的特性が低下するが、0.3(μm)以上であれば適度な融解性が得られるので電気的特性が一層高められる。しかも、凝集が生じ難いのでペースト調製時に一層良好な分散性が得られる。また、ガラスフリットの平均粒径が導電性粉末の平均粒径よりも著しく大きい場合にも粉末全体の分散性が低下するが、3.0(μm)以下であれば一層良好な分散性が得られる。しかも、ガラスの一層の溶融性が得られる。また、ガラス量が1(vol%)以上であれば反射防止膜の融解性が一層高められるので一層良好なオーミックコンタクトが得られる。また、ガラス量が20(vol%)以下であれば絶縁層が一層形成され難いので一層高い導電性が得られる。したがって、一層良好なオーミックコンタクトを得るためには上記平均粒径およびペースト中における割合を共に満たすことが好ましい。ペースト中における割合は、2〜10(vol%)が特に好ましい。
【0022】
なお、上記ガラスフリットの平均粒径は空気透過法による値である。空気透過法は、粉体層に対する流体(例えば空気)の透過性から粉体の比表面積を測定する方法をいう。この測定方法の基礎となるのは、粉体層を構成する全粒子の濡れ表面積とそこを通過する流体の流速および圧力降下の関係を示すコゼニー・カーマン(Kozeny-Carmann)の式であり、装置によって定められた条件で充填された粉体層に対する流速と圧力降下を測定して試料の比表面積を求める。この方法は充填された粉体粒子の間隙を細孔と見立てて、空気の流れに抵抗となる粒子群の濡れ表面積を求めるもので、通常はガス吸着法で求めた比表面積よりも小さな値を示す。求められた上記比表面積および粒子密度から粉体粒子を仮定した平均粒径を算出できる。
【0023】
また、好適には、前記導電性粉末は平均粒径(D50)が0.3〜3.0(μm)の範囲内の銀粉末である。導電性粉末としては銅粉末やニッケル粉末等も用い得るが、銀粉末が高い導電性を得るために最も好ましい。また、銀粉末の平均粒径が3.0(μm)以下であれば一層良好な分散性が得られるので一層高い導電性が得られる。また、0.3(μm)以上であれば凝集が抑制されて一層良好な分散性が得られる。なお、0.3(μm)未満の銀粉末は著しく高価であるため、製造コストの面からも0.3(μm)以上が好ましい。また、導電性粉末、ガラスフリット共に平均粒径が3.0(μm)以下であれば、細線パターンで電極を印刷形成する場合にも目詰まりが生じ難い利点がある。
【0024】
なお、前記銀粉末は特に限定されず、球状や鱗片状等、どのような形状の粉末が用いられる場合にも導電性を保ったまま細線化が可能であるという本発明の基本的効果を享受し得る。但し、球状粉を用いた場合が印刷性に優れると共に、塗布膜における銀粉末の充填率が高くなるため、導電性の高い銀が用いられることと相俟って、鱗片状等の他の形状の銀粉末が用いられる場合に比較して、その塗布膜から生成される電極の導電率が高くなる。そのため、必要な導電性を確保したまま線幅を一層細くすることが可能となることから、特に好ましい。
【0025】
また、好適には、前記太陽電池電極用ペースト組成物は、25(℃)−20(rpm)における粘度が150〜250(Pa・s)の範囲内、粘度比(すなわち、10(rpm)における粘度/100(rpm)における粘度)が3〜8である。このような粘度特性を有するペーストを用いることにより、スキージングの際に好適に低粘度化してスクリーンメッシュを透過し、その透過後には高粘度に戻って印刷幅の広がりが抑制されるので、スクリーンを容易に透過して目詰まりを生じないなど印刷性を保ったまま細線パターンが容易に得られる。ペースト組成物の粘度は、160〜200(Pa・s)の範囲が一層好ましく、粘度比は3.2〜6.0の範囲が一層好ましい。また、設計線幅が100(μm)以下の細線化には粘度比4〜6が望ましい。
【0026】
なお、線幅を細くしても断面積が保たれるように膜厚を厚くすることは、例えば、印刷製版の乳剤厚みを厚くすること、テンションを高くすること、線径を細くして開口径を広げること等でも可能である。しかしながら、乳剤厚みを厚くすると版離れが悪くなるので印刷パターン形状の安定性が得られなくなる。また、テンションを高くし或いは線径を細くすると、スクリーンメッシュが伸び易くなるので寸法・形状精度を保つことが困難になると共に印刷製版の耐久性が低下する問題がある。しかも、太幅で設けられることから膜厚を厚くすることが無用なバスバーも厚くなるため、材料の無駄が多くなる問題もある。
【0027】
また、好適には、前記太陽電池電極用ペースト組成物は、前記導電性粉末を64〜90重量部、前記ベヒクルを3〜20重量部の範囲内の割合で含むものである。このようにすれば、印刷性が良好で線幅の細く導電性の高い電極を容易に形成できるペースト組成物が得られる。
【0028】
また、本願発明の導電性組成物は、前述したようにファイヤースルーによる電極形成時の銀の拡散を好適に制御し得るものであるから、受光面電極に好適に用い得る。
【0029】
また、前記ガラスフリットは、前記組成範囲でガラス化可能な種々の原料から合成することができ、例えば、酸化物、炭酸塩、硝酸塩等が挙げられるが、例えば、Si源としては二酸化珪素SiO2を、B源としては硼酸B2O3を、Pb源としては鉛丹Pb3O4を用い得る。
【0030】
また、主要成分Si、B、Pbの他に、Al、Zr等の他の成分を含む組成とする場合には、例えばそれらの酸化物、水酸化物、炭酸塩、硝酸塩等を用いればよい。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の一実施例の電極用ペースト組成物が受光面電極の形成に適用された太陽電池の断面構造を示す模式図である。
【図2】図1の太陽電池の受光面電極パターンの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本発明の一実施例を図面を参照して詳細に説明する。なお、以下の実施例において図は適宜簡略化或いは変形されており、各部の寸法比および形状等は必ずしも正確に描かれていない。
【0033】
図1は、本発明の一実施例の導電性組成物が適用されたシリコン系太陽電池10の断面構造を模式的に示す図である。図1において、太陽電池10は、例えばp型多結晶半導体であるシリコン基板12と、その上下面にそれぞれ形成されたn層14およびp+層16と、そのn層14上に形成された反射防止膜18および受光面電極20と、そのp+層16上に形成された裏面電極22とを備えている。上記シリコン基板12の厚さ寸法は例えば100〜200(μm)程度である。
【0034】
上記のn層14およびp+層16は、シリコン基板12の上下面に不純物濃度の高い層を形成することで設けられたもので、その高濃度層の厚さ寸法はn層14が例えば70〜100(nm)程度、p+層16が例えば500(nm)程度である。n層14は、一般的なシリコン系太陽電池では100〜200(nm)程度であるが、本実施例ではそれよりも薄くなっており、シャローエミッタと称される構造を成している。なお、n層14に含まれる不純物は、n型のドーパント、例えば燐(P)で、p+層16に含まれる不純物は、p型のドーパント、例えばアルミニウム(Al)や硼素(B)である。
【0035】
また、前記の反射防止膜18は、例えば、窒化珪素 Si3N4等から成る薄膜で、例えば可視光波長の1/4程度の光学的厚さ、例えば80(nm)程度で設けられることによって10(%)以下、例えば2(%)程度の極めて低い反射率に構成されている。
【0036】
また、前記の受光面電極20は、例えば一様な厚さ寸法の厚膜導体から成るもので、図2に示されるように、受光面24の略全面に、多数本の細線部を有する櫛状を成す平面形状で設けられている。上記の厚膜導体は、Agを67〜98(wt%)の範囲内、例えば94.3(wt%)程度、およびガラスを2〜33(wt%)の範囲内、例えば5.7(wt%)程度を含む厚膜銀から成るもので、そのガラスは酸化物換算した値で、PbOを20〜65(mol%)の範囲内、例えば39(mol%)程度、B2O3を1〜18(mol%)の範囲内、例えば12.0(mol%)程度、SiO2を20〜65(mol%)の範囲内、例えば31.0(mol%)程度、Li2Oを0.6〜18(mol%)の範囲内、例えば6.0(mol%)程度、Al2O3を0〜6(mol%)の範囲内、例えば3(mol%)程度、TiO2を0〜6(mol%)の範囲内、例えば3(mol%)程度、ZnOを0〜30(mol%)の範囲内、例えば6(mol%)程度の割合でそれぞれ含む鉛ガラスである。また、上記の導体層の厚さ寸法は例えば20〜30(μm)の範囲内、例えば25(μm)程度で、細線部の各々の幅寸法は例えば80〜130(μm)の範囲内、例えば100(μm)程度で、十分に高い導電性を備えている。
【0037】
また、前記の裏面電極22は、p+層16上にアルミニウムを導体成分とする厚膜材料を略全面に塗布して形成された全面電極26と、その全面電極26上に帯状に塗布して形成された厚膜銀から成る帯状電極28とから構成されている。この帯状電極28は、裏面電極22に導線等を半田付け可能にするために設けられたものである。
【0038】
本実施例の太陽電池10は、受光面電極20が前述したようにPbOを20〜65(mol%)の範囲内、B2O3を1〜18(mol%)の範囲内、SiO2を20〜65(mol%)の範囲内、Li2Oを0.6〜18(mol%)の範囲内、Al2O3を0〜6(mol%)の範囲内、TiO2を0〜6(mol%)の範囲内、ZnOを0〜30(mol%)の範囲内の割合でそれぞれ含む鉛ガラス組成の鉛ガラスを2〜33(wt%)の範囲で含む厚膜銀で構成されていることから、線幅が100(μm)程度に細くされているにも拘わらず、n層14との間で良好なオーミックコンタクトが得られ、接触抵抗が低くなっている。
【0039】
しかも、本実施例の受光面電極20は、前述したようにガラス量が5.7(wt%)程度と少量にされていることから高い導電性を有しているため、膜厚および線幅が何れも小さくされているにも拘わらずライン抵抗が低いので、接触抵抗が低いことと相俟って太陽電池10の光電変換効率が高められている。
【0040】
上記のような受光面電極20は、例えば、導体粉末と、ガラスフリットと、ベヒクルと、溶剤とから成る電極用ペーストを用いて良く知られたファイヤースルー法によって形成されたものである。その受光面電極形成を含む太陽電池10の製造方法の一例を以下に説明する。
【0041】
まず、上記ガラスフリットを作製する。Li源として炭酸リチウム Li2CO3を、Si源として二酸化珪素 SiO2を、B源として硼酸 B2O3を、Pb源として鉛丹 Pb3O4を、Al源として酸化アルミニウム Al2O3を、Ti源として酸化チタン TiO2を、Zn源として酸化亜鉛 ZnOをそれぞれ用意し、前述した範囲内の適宜の組成となるように秤量して調合する。これを坩堝に投入して組成に応じた900〜1200(℃)の範囲内の温度で、30分〜1時間程度溶融し、急冷することでガラス化させる。このガラスを遊星ミルやボールミル等の適宜の粉砕装置を用いて粉砕する。粉砕後の平均粒径(D50)は例えば0.3〜3.0(μm)程度である。
【0042】
一方、導体粉末として、例えば、平均粒径(D50)が0.3〜3.0(μm)の範囲内の市販の球状の銀粉末を用意する。このような平均粒径が十分に小さい銀粉末を用いることにより、塗布膜における銀粉末の充填率を高め延いては導体の導電率を高めることができる。また、前記ベヒクルは、有機溶剤に有機結合剤を溶解させて調製したもので、有機溶剤としては、例えばブチルカルビトールアセテートが、有機結合剤としては、例えばエチルセルロースが用いられる。ベヒクル中のエチルセルロースの割合は例えば15(wt%)程度である。また、ベヒクルとは別に添加する溶剤は、例えばブチルカルビトールアセテートである。すなわち、これに限定されるものではないが、ベヒクルに用いたものと同じ溶剤でよい。この溶剤は、ペーストの粘度調整の目的で添加される。
【0043】
以上のペースト原料をそれぞれ用意して、例えば導体粉末を77〜88(wt%)、ガラスフリットを1〜10(wt%)、ベヒクルを7〜14(wt%)、溶剤を3〜5(wt%)の割合で秤量し、攪拌機等を用いて混合した後、例えば三本ロールミルで分散処理を行う。これにより、前記電極用ペーストが得られる。
【0044】
上記のようにして電極用ペーストを調製する一方、適宜のシリコン基板に例えば、熱拡散法やイオンプランテーション等の良く知られた方法で不純物を拡散し或いは注入して前記n層14およびp+層16を形成することにより、前記シリコン基板12を作製する。次いで、これに例えばPE−CVD(プラズマCVD)等の適宜の方法で窒化珪素薄膜を形成し、前記反射防止膜18を設ける。
【0045】
次いで、上記の反射防止膜18上に前記図2に示すパターンで前記電極用ペーストをスクリーン印刷する。これを例えば150(℃)で乾燥し、更に、近赤外炉において740〜900(℃)の範囲内の温度で焼成処理を施す。これにより、その焼成過程で電極用ペースト中のガラス成分が反射防止膜18を溶かし、その電極用ペーストが反射防止膜18を破るので、電極用ペースト中の導体成分すなわち銀とn層14との電気的接続が得られ、前記図1に示されるようにシリコン基板12と受光面電極20とのオーミックコンタクトが得られる。受光面電極20は、このようにして形成される。
【0046】
なお、前記裏面電極22は、上記工程の後に形成してもよいが、受光面電極20と同時に焼成して形成することもできる。裏面電極22を形成するに際しては、上記シリコン基板12の裏面全面に、例えばアルミニウムペーストをスクリーン印刷法等で塗布し、焼成処理を施すことによってアルミニウム厚膜から成る前記全面電極26を形成する。更に、その全面電極26の表面に前記電極用ペーストをスクリーン印刷法等を用いて帯状に塗布して焼成処理を施すことによって、前記帯状電極28を形成する。これにより、裏面全面を覆う全面電極26と、その表面の一部に帯状に設けられた帯状電極28とから成る裏面電極22が形成され、前記の太陽電池10が得られる。上記工程において、同時焼成で製造する場合には、受光面電極20の焼成前に印刷処理を施すことになる。
【0047】
ガラス組成を種々変更して、上記の製造工程に従って太陽電池10を製造し、市販のソーラーシミュレータを用いてその出力を測定して曲線因子FF値を評価した結果を、ガラス組成と併せて表1に示す。表1において、No.1〜4、6〜24、26〜29、32〜38、41、42、44、45、47〜50、53〜56、58〜63、65〜72、74〜91、93〜97、99、100が実施例で、その他が比較例である。一般に、太陽電池はFF値が70以上であれば使用可能とされているが、高いほど好ましいのはもちろんであり、本実施例においては、FF値が75より大きいものを合格とした。
【0048】
【表1】

【0049】
なお、各試料は平均粒径1.6(μm)の球状のAg粉と平均粒径1.5(μm)のガラスフリットとを用いて作製した。調合割合はAg粉 83(wt%)、ガラスフリット 5(wt%)、ベヒクル 8(wt%)、溶剤 5(wt%)を基本とし、印刷性を同等とするために、20(℃)−20(rpm)における粘度が160〜180(Pa・s)になるようにベヒクル量および溶剤量を調整した。また、受光面電極20を形成する際の印刷製版は、線径23(μm)のSUS325製スクリーンメッシュに20(μm)の乳剤を設けたものとした。また、グリッドラインの幅寸法が100(μm)となるように印刷条件を設定した。
【0050】
上記表1には、実施例として、PbO-B2O3-SiO2-Li2Oの4成分系、PbO-B2O3-SiO2-Li2O-ZnOの5成分系、PbO-B2O3-SiO2-Li2O-Al2O3の5成分系、PbO-B2O3-SiO2-Li2O-TiO2の5成分系、PbO-B2O3-SiO2-Li2O-TiO2-ZnOの6成分系、PbO-B2O3-SiO2-Al2O3-Li2O-TiO2-ZnOの7成分系が示されている。実施例のNo.1〜4、20〜24、26〜29、38、41、42、44、45、47〜50、53〜56は4成分系であるが、PbOが20.0〜65.0(mol%)、B2O3が1.0〜18.0(mol%)、SiO2が20.0〜65.0(mol%)、Li2Oが0.6〜18.0(mol%)の範囲において、75を越えるFF値が得られた。この4成分系において、比較例を見ると、Li2Oが24.0(mol%)と多いNo.5、39ではそれぞれFF値が63、70に留まった。Li2Oが過剰になると、電極形成のための焼成時に浸食性が強くなり過ぎるためと考えられる。また、Li2Oが0.4(mol%)と少ないNo.25もFF値が73に留まった。また、B2O3が19.0(mol%)以上のNo.30、31、51、57でもFF値が73以下に留まった。これら実施例と比較例とを比較すれば、4成分系において、Li2Oが0.4(mol%)以下或いは24.0(mol%)以上になるか、B2O3が19.0(mol%)以上になると、特性が得られなくなることが判る。
【0051】
また、実施例のNo.12、13、32、33はAl2O3を含む5成分系で、この系では、PbOが30.0〜45.6(mol%)、B2O3が3.0〜5.0(mol%)、SiO2が35.0〜49.0(mol%)、Al2O3が3.0〜6.0(mol%)、Li2Oが12.0(mol%)の範囲で、何れも75を越えるFF値が得られた。
【0052】
また、実施例のNo.14、15、34、35はTiO2を含む5成分系で、この系では、PbOが30.0〜45.6(mol%)、B2O3が3.0〜5.0(mol%)、SiO2が35.0〜49.0(mol%)、Li2Oが12.0(mol%)、TiO2が3.0〜6.0(mol%)の範囲で、何れも75を越えるFF値が得られた。
【0053】
また、実施例のNo.6〜11、16〜19、36、37、58〜63はZnOを含む5成分系で、この系では、PbOが30.0〜49.0(mol%)、B2O3が3.0〜12.0(mol%)、SiO2が24.4〜49.0(mol%)、Li2Oが6.0〜12.0(mol%)、ZnOが3.0〜30.0(mol%)の範囲で、何れも75を越えるFF値が得られた。
【0054】
また、実施例のNo.79〜82、93〜96、100はLi2O、TiO2、ZnOを含む6成分系、すなわちAl2O3を含まない系であるが、この系では、PbOが25.9〜42.3(mol%)、B2O3が6.0〜12.0(mol%)、SiO2が24.4〜41.1(mol%)、Li2Oが6.0〜12.0(mol%)、TiO2が6.0(mol%)、ZnOが6.0〜15.0(mol%)の範囲で、何れも75を越えるFF値が得られた。
【0055】
また、実施例のNo.65〜72、74〜78、83〜91はAl2O3、Li2O、TiO2、ZnOを何れも含む7成分系であるが、PbOが22.4〜45(mol%)、B2O3が3.0〜18.0(mol%)、SiO2が21.7〜41.1(mol%)、Al2O3が3.0(mol%)、Li2Oが0.6〜18.0(mol%)、TiO2が3.0(mol%)、ZnOが6.0〜15.0(mol%)の範囲で、何れも75を越えるFF値が得られた。この7成分系において比較例を見ると、B2O3が19(mol%)以上と多いNo.73、92と、Li2Oが0.4(mol%)と少ないNo.64では、FF値が73以下に留まった。
【0056】
また、比較例のNo.40、43のようにLi2Oを欠く3成分系ではFF値が小さく、特に、Si量が68(mol%)と多いNo.40はFF値が38と極めて低い結果であった。また、比較例のNo.46、52のようにB2O3を欠く3成分系もFF値が75未満に留まった。
【0057】
上記表1に示される本実施例の評価結果によれば、前述した範囲内の組成を有するガラスフリットを用いることにより、受光面電極20の線幅を100(μm)程度と細くしても、75を越えるFF値が得られる。前述したようにペースト全体に対して5(wt%)程度の少ないガラス量でも優れたファイヤースルー性が得られて良好なオーミックコンタクトが得られるので、ライン抵抗を低く保ったまま受光面電極20の細線化が可能となって、受光面積が大きくなる効果が好適に享受できるためと考えられる。すなわち、本実施例のペースト組成物は、ガラスフリットがLi2O 0.6〜18(mol%)、PbO 20〜65(mol%)、B2O3 1〜18(mol%)、SiO2 20〜65(mol%)の範囲内の割合で含むガラスから成ることから、反射防止膜18上に塗布して受光面電極20を形成するに際して優れたファイヤースルー性が得られるため、線幅を細くしても良好なオーミックコンタクトが得られる。この結果、良好なオーミックコンタクトを保ったままガラス量を減じることができるので、受光面電極20のライン抵抗を一層低くできる。したがって、オーミックコンタクトやライン抵抗の悪化を伴うことなく受光面電極20の細線化が可能になるため、細線化して受光面積を大きくしても十分に接触抵抗が低いことからFF値が低下しないので、光電変換効率の高い太陽電池10が得られる。
【0058】
また、上記表1に示す結果によれば、例えば3(mol%)以上の多量のLi2Oを含む組成とすれば、幅広いガラス組成で優れたファイヤースルー性が得られ、延いては光電変換効率の高い太陽電池10を製造できる電極用ペースト組成物が得られることが判る。
【0059】
下記の表2は、0.3〜3.0(μm)の範囲で平均粒径の異なるAg粉を用意すると共に、前記ガラスフリットの平均粒径も0.3〜4.0(μm)の範囲で変化させて、電極用ペーストを調製し、受光面電極20を形成して太陽電池10の特性を評価した結果をまとめたものである。Ag粉欄のA〜Fは銀粉末の種類を表しており、平均粒径はそれぞれAが3.0(μm)、Bが2.2(μm)、Cが1.6(μm)、Dが0.8(μm)、Eが0.5(μm)、Fが0.3(μm)である。また、ガラス欄のフリットNo.は前記表1に示した試料No.に対応している。左端欄のNo.は、Ag粉種類とフリットNo.との組合せで表した。同一の組合せでガラスの平均粒径が異なるものには枝番号を付して区別した。特に示さない条件は表1に示す評価と同一である。
【0060】
【表2】

【0061】
上記評価結果に示されるように、No.69のフリットを用いたA69〜F69の試料において、Ag粉末粒径が0.3〜3.0(μm)の全範囲で、調合仕様を特に変更することなく75を越えるFF値が得られた。少なくとも評価した範囲ではAg粉の粒径は特に限定されず、0.3〜3.0(μm)の何れでも用い得る。
【0062】
また、Ag粉Cを用いたC69-1〜C68の試料は、ガラスフリットの種類と粒径を種々変更したものであるが、ガラスフリットNo.68、69、78、98の何れを用いた場合にも、75を越えるFF値が得られた。C69-1、C69-2は、同一のガラス組成で粒径を0.8(μm)および3.0(μm)としたものであるが、ガラス量を若干変更した他は略同様な仕様で何れも良好な結果が得られた。また、C98-1、C68は粘度を調整する目的でベヒクル量を多くしたが、他の試料と同様に100(μm)の線幅で受光面電極20を形成でき、75を越えるFF値を得ることができた。また、C78-1では、ガラス量が1(wt%)でも良好な結果が得られている。多量の、例えば6.0(mol%)のLi2Oを含むガラス組成とすることにより、浸食性が高められるため、ガラス量が少なくても良好なオーミックコンタクトが得られ、ライン抵抗も低くなるものと考えられる。
【0063】
また、F98の試料は、F69の試料に対してガラスフリットのみを変更したものであるが、その他は同一の仕様として、何れも良好な結果を得ることができた。すなわち、ガラス種類の相違による影響は特に認められなかった。
【0064】
また、C69-3、C69-4は、ガラス粒径の上下限値を確かめたものであるが、フリットNo.69を平均粒径0.3(μm)に粉砕して用いた場合には、1(wt%)の調合量で75を越えるFF値が得られた。一方、4.0(μm)に粉砕した場合には、5(wt%)の調合量としても70程度のFF値に留まった。
【0065】
以上の結果によれば、Ag粉の粒径は特に限定されず、ガラス種類も前記表1に示す実施例の範囲内であれば特に限定されないが、平均粒径は3.0(μm)以下が好ましいと言える。
【0066】
以上、本発明を図面を参照して詳細に説明したが、本発明は更に別の態様でも実施でき、その主旨を逸脱しない範囲で種々変更を加え得るものである。
【0067】
例えば、前記実施例においては、反射防止膜18が窒化珪素膜から成るものであったが、その構成材料は特に限定されず、一般に太陽電池に用いられる二酸化チタンTiO2等の他の種々の材料から成るものを同様に用い得る。
【0068】
また、実施例においては、本発明がシリコン系太陽電池10に適用された場合について説明したが、本発明は、ファイヤースルー法で受光面電極を形成することのできる太陽電池であれば適用対象の基板材料は特に限定されない。
【符号の説明】
【0069】
10:太陽電池、12:シリコン基板、14:n層、16:p+層、18:反射防止膜、20:受光面電極、22:裏面電極、24:受光面、26:全面電極、28:帯状電極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性粉末と、ガラスフリットと、ベヒクルとを含む太陽電池電極用ペースト組成物であって、
前記ガラスフリットが酸化物換算でLi2O 0.6〜18(mol%)、PbO 20〜65(mol%)、B2O3 1〜18(mol%)、SiO2 20〜65(mol%)の範囲内の割合で含むガラスから成ることを特徴とする太陽電池電極用ペースト組成物。
【請求項2】
前記ガラスフリットは平均粒径(D50)が0.3〜3.0(μm)の範囲内であり、ペースト全体に対して1〜20(vol%)の範囲内の割合で含まれるものである請求項1の太陽電池電極用ペースト組成物。
【請求項3】
前記導電性粉末は平均粒径(D50)が0.3〜3.0(μm)の範囲内の銀粉末である請求項1または請求項2の太陽電池電極用ペースト組成物。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2011−66354(P2011−66354A)
【公開日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−217945(P2009−217945)
【出願日】平成21年9月18日(2009.9.18)
【出願人】(000004293)株式会社ノリタケカンパニーリミテド (449)
【Fターム(参考)】