説明

女性用吸収体物品

【課題】着用時、着用者に不快感を与えず、かつ、尿便分離処理が可能な女性用吸収体物品の提供。
【解決手段】着用者の小陰唇を内部に収容するための開口を形成し、かつ、着用者の大陰唇を前記開口の外側に位置させるための開口周辺部を有する、袋状の吸収体収容部材と、
前記吸収体収容部材の内部に、少なくとも1層配置された、高吸水性樹脂を含有し体液を吸収しうる吸収体と、前記吸収体収容部材の前部に形成された、着用者の陰核前方部に接触するための突起状の前方接触部と、前記吸収体収容部材の後部に形成された、着用者の会陰部に接触するための突起状の後方接触部とを具備する女性用吸収体物品。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規女性用吸収体物品に関する。
【背景技術】
【0002】
紙おむつ、生理用ナプキン、失禁用品等の吸収体物品は、高吸水性樹脂(Super Absorbent Polymer、以下「SAP」ともいう。)を用いた吸収体により、着用者から排出された尿等の体液を吸収する物品である。
従来の女性用吸収体物品は、着用者が使用する際、尿道口(外尿道口)、陰核、小陰唇、膣口周辺部等の極めて敏感な部位に接触するため、不快感が大きい。
また、従来の女性用吸収体物品は、尿道口および肛門を覆う構造であるため、尿と便(大便)とを分離して処理することが困難である。吸収体物品の使用中に尿と便とが混じり合うと、かぶれ、臭い等が生じるという問題がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
したがって、本発明の目的は、着用時、着用者に不快感を与えず、かつ、尿便分離処理が可能な女性用吸収体物品を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明者は、上記目的を達成すべく鋭意研究した結果、新規構造を有する女性用吸収体物品を完成させた。
【0005】
即ち、本発明は、以下の(1)〜(14)を提供する。
(1)着用者の小陰唇を内部に収容するための開口を形成し、かつ、着用者の大陰唇を前記開口の外側に位置させるための開口周辺部を有する、袋状の吸収体収容部材と、
前記吸収体収容部材の内部に、少なくとも1層配置された、高吸水性樹脂を含有し体液を吸収しうる吸収体と、
前記吸収体収容部材の前部に形成された、着用者の陰核前方部に接触するための突起状の前方接触部と、
前記吸収体収容部材の後部に形成された、着用者の会陰部に接触するための突起状の後方接触部と
を具備する女性用吸収体物品。
(2)更に、前記開口周辺部の外側において着用者の大陰唇を収容する空間を形成するための液不透過性材料により構成されている外部防漏体を具備する上記(1)に記載の女性用吸収体物品。
(3)前記外部防漏体が、前記吸収体収容部材と結合しており、
前記吸収体収容部材の前記外部防漏体との結合位置より下側が液不透過性材料により構成されており、
前記吸収体収容部材の内部空間と前記外部防漏体の着用者の大陰唇を収容する空間とが、全体として液不透過性材料により形成されている上記(1)または(2)に記載の女性用吸収体物品。
(4)前記吸収体収容部材の前記外部防漏体との結合位置より上側が液透過性材料により構成されている上記(3)に記載の女性用吸収体物品。
(5)更に、左右の前記外部防漏体の前端を閉鎖して前端部空間を形成する前方防漏体および/または左右の前記外部防漏体の後端を閉鎖して後端部空間を形成する後方防漏体を具備する上記(2)〜(4)のいずれかに記載の女性用吸収体物品。
(6)前記開口周辺部がクッション性材料により構成されている上記(1)〜(5)のいずれかに記載の女性用吸収体物品。
(7)更に、前記開口周辺部の下側に、クッション性部材が配置されている上記(1)〜(6)のいずれかに記載の女性用吸収体物品。
【0006】
(8)前記クッション性部材が、厚さ1〜20mm、密度20〜40kg/m3の発泡体シートである上記(7)に記載の女性用吸収体物品。
(9)前記外部防漏体の縁部が、クッション性部材により構成されている上記(1)〜(8)のいずれかに記載の女性用吸収体物品。
(10)前記前方接触部および/または前記後方接触部が、その一部または全部を、発泡体により形成されている上記(1)〜(9)のいずれかに記載の女性用吸収体物品。
(11)前記発泡体が、厚さ1〜5mmの軟質ポリウレタンシートである上記(10)に記載の女性用吸収体物品。
(12)前記軟質ポリウレタンシートが、2層以上積層されている上記(11)に記載の女性用吸収体物品。
(13)前記発泡体が、不織布で被覆されている上記(10)〜(12)のいずれかに記載の女性用吸収体物品。
(14)前記不織布が、表面親水性化不織布である上記(13)に記載の女性用吸収体物品。
【発明の効果】
【0007】
本発明の女性用吸収体物品は、着用時、着用者に不快感がなく、かつ、尿便分離処理が可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明の女性用吸収体物品(以下、単に「吸収体物品」ともいう。)を添付図面に示す好適実施形態に基づいて詳細に説明する。なお、本明細書においては、本発明の女性用吸収体物品を実際に着用した場合に、着用者の肌に近い側を「上」といい、遠い側を「下」という。また、本発明の女性用吸収体物品を実際に着用した場合に、着用者の体の前側に対応する側を「前」といい、後側に対応する側を「後」という。また、各図中、理解を容易にするために、実際には接触している部材を離間させて示すことがある。
【0009】
図1は、本発明の女性用吸収体物品の例を示す模式図である。図1(A)は斜視図であり、図1(B)は平面図であり、図1(C)は図1(B)中のIC−IC線に沿った横端面図である。図1(A)および図1(B)においては、吸収体は省略されている。
なお、添付した図面中の各平面図においては、図の上側に女性用吸収体物品等の前側が位置するように図示してある。
【0010】
本発明の女性用吸収体物品100は、基本的に、着用者の小陰唇を内部に収容するための開口12を形成し、かつ、着用者の大陰唇を開口12の外側に位置させるための開口周辺部14を有する、袋状の吸収体収容部材10と、吸収体収容部材10の内部に、少なくとも1層配置された、高吸水性樹脂を含有し体液を吸収しうる吸収体20と、吸収体収容部材10の前部に形成された、着用者の陰核前方部に接触するための突起状の前方接触部30と、吸収体収容部材10の後部に形成された、着用者の会陰部に接触するための突起状の後方接触部40とを具備する。
【0011】
吸収体収容部材10の材質は、一般に、バックシートとして用いられているものを用いることができる。具体的には、例えば、PE、PP、PET、EVA等の樹脂のフィルム;前記樹脂の発泡シート等の体液不透過性シートを用いることができる。体液不透過性シートは、通気性フィルム等の通気性を有するものも好適に用いられる。
また、前記樹脂のフィルムを用いる場合には、感触や外観を向上させるために、フィルムと不織布との複層シートとして用いることもできる。この場合、不織布としては、比較的低目付のSB、SMS、サーマルボンド不織布等が好適に用いられる。
また、前記樹脂のフィルムと後述するシート状吸収体との複層シートを用いることもできる。
また、高耐水性不織布を用いることもできる。この場合、単独で用いてもよく、フィルムと高耐水性不織布との複層シートとして用いることもできる。
【0012】
本発明の女性用吸収体物品は、吸収体収容部材10の材料として、上述したような液不透過性部材を用いることにより、排出された尿の外部への漏れを防止する。なお、本発明の女性用吸収体物品が、更に後述する外部防漏体を具備する場合は、尿の外部への漏れが防止される限度において、吸収体収容部材10の材料として液透過性部材を用いてもよい。例えば、外側に外部防漏体を有する部分(例えば、側部)を液透過性部材としてもよい。
【0013】
吸収体収容部材10は、複数の部材から構成されていてもよい。例えば、底部を液不透過性材料で構成し、底部以外をPP、PE、PU等のフォーム;軟らかい合成ゴム等で構成することができる。
【0014】
吸収体収容部材10は、開口12を形成する開口周辺部14を有する袋状となっている。着用時には、開口12の内部に着用者の小陰唇が収容される。その結果、着用者が尿を排出すると、尿は吸収体収容部材10の内部に排出されることになる。
また、着用時には、着用者の大陰唇が開口12の外側に位置する。即ち、開口周辺部14の内側に小陰唇が位置し、開口周辺部14の上から外側にかけて大陰唇が位置する。このように大陰唇を開口12の外側に位置させると、大陰唇を開口の内側に位置させる場合に比べて、開口の大きさが小さくなり、また、着用者の身体と開口周辺部との間の隙間が小さくなる。したがって、漏れにくい。
【0015】
開口周辺部14は、吸収体収容部材10と一体となっていてもよく、別部材で構成されていてもよい。
開口周辺部14は、クッション性材料により構成されているのが好ましい態様の一つである。クッション性材料としては、例えば、PP、PE、PU等のフォーム;軟らかい合成ゴムが好適に挙げられる。
開口周辺部14の形状は、特に限定されない。詳しくは、後述する。
【0016】
袋状の吸収体収容部材10の内部には、吸収体20が配置されている。
本発明に用いられる吸収体20は、高吸水性樹脂を含有し体液を吸収しうるものであれば特に限定されず、例えば、粉末状の木材パルプ、無加工のSAP等の粉体状吸収体を用いることもできるが、形態安定性、脱落の可能性等を考慮すると、シート状吸収体が好ましい。中でも、不織布上に前記高吸水性樹脂をコーティングしてなるシート状吸収体が好ましい。
【0017】
シート状吸収体の中でも、SAPを50質量%以上、好ましくは60〜95質量%含有する高吸水性シートであるのが好ましい態様の一つである。
高吸水性シートは、SAPを主成分とする極薄のシート状吸収体である。高吸水性シートは、SAPの含有量が極めて高いため、厚さが極めて薄い。高吸水性シートの厚さは、1.5mm以下であるのが好ましく、1mm以下であるのがより好ましい。
高吸水性シートは、SAPを主成分とする極薄のシート状吸収体であれば、構成や製造方法を特に限定されない。
例えば、Air Laid法で得られる高吸水性シートが挙げられる。Air Laid法は、粉砕した木材パルプとSAPとを混合し、結合剤を添加してシート状に成形して高吸水性シートを得る方法である。この方法で得られる高吸水性シートとしては、例えば、米国レオニヤ(Rayonier)社製のNOVATHIN(米国登録商標)、王子キノクロス社製のB−SAPが知られている。
また、SAPの分散スラリーを不織布等の体液透過性シートの上にコーティングする方法で得られる高吸水性シートも挙げられる。ここで、SAPの分散スラリーは、SAPとミクロフィブリル化セルロース(MFC)とを、水とエタノールとの混合溶媒に分散させたものであるのが好ましい。この方法で得られる高吸水性シートとしては、例えば、(株)日本吸収体技術研究所製のMegaThin(登録商標)が知られている。
そのほかに、例えば、起毛状不織布にSAPを大量に担持させ、ホットメルトバインダー、エマルションバインダー、水性繊維等で固定する方法で得られる高吸水性シート、繊維状SAPをPET(ポリエチレンテレフタレート)繊維と混合してウェブ状に成形する方法で得られる高吸水性シート、SAP層の上下をティッシュで挟んだSAPシートが挙げられる。
【0018】
吸収体は、少なくとも1層配置される。即ち、吸収体は、1層であってもよく、2層以上(複数層)であってもよい。
また、吸収体は、折りたたんだ状態で配置することもできる。
【0019】
吸収体収容部材10の前部には、突起状の前方接触部30が形成されており、吸収体収容部材10の後部には、突起状の後方接触部40が形成されている。着用時においては、前方接触部30は着用者の陰核前方部に接触し、後方接触部40は着用者の会陰部に接触する。なお、図1においては、前方接触部30の幅が後方接触部40の幅より大きくなっているが、本発明はこれに限定されず、前方接触部の幅が後方接触部の幅より小さくてもよく、両者が同じであってもよい。
女性の局部においては、概して、陰核前方部および会陰部が凹部となり、その間の小陰唇が凸部となっているため、吸収体物品を密着させようとすると、前後の端部と着用者の陰核前方部および会陰部との間で隙間ができてしまうか、それを防止しようとして前記隙間を閉じるように着用すると吸収体物品が前後方向の中間部で二つに折り曲げられ、吸収体物品の左右に隙間ができてしまうかのいずれかの状態となる。
これに対して、本発明の女性用吸収体物品100は、突起状の前方接触部30が着用者の陰核前方部に接触し、突起状の後方接触部40が着用者の会陰部に接触するから、着用者の性器にフィットし、上述した前後の隙間や左右の隙間が生じることがない。したがって、本発明の女性用吸収体物品は、尿が漏れにくい。
【0020】
本発明の女性用吸収体物品の機能について、図面を用いてより具体的に説明する。
図2は、本発明の女性用吸収体物品100を着用者が着用した状態を示す説明図である。図2は、着用者の中心面に沿った縦端面図である。
図2に示されるように、本発明の女性用吸収体物品100は、着用時に、前方接触部30が着用者Wの陰核Cの前方部に接触し、かつ、後方接触部40が着用者Wの会陰部Pに接触することにより、その間の陰核C、小陰唇Lm、尿道口m等が開口12の内部に収容されるようになり、しかも全体的に着用者Wの性器にフィットしている。したがって、陰核C、小陰唇Lm、尿道口m、膣口周辺部等の敏感な箇所が吸収体物品自体に接触せず、または接触してもその圧力は弱いため、着用時の不快感がない。
また、本発明の女性用吸収体物品は、肛門を被覆しない態様とすることができるので、尿便分離処理が可能である。
【0021】
また、この状態で着用者Wが尿を排出すると、尿道口mから排出された尿は、その下側にある吸収体収容部材10に収容された吸収体20に吸収される。その際、前方接触部30および後方接触部40により、着用者の性器を伝わってくる尿が、女性用吸収体物品100の前方または後方から外部へ漏れることが防止される。また、尿が吸収体収容部材10の内部に滞留したとしても、開口12は着用者Wの性器に密着しているから、尿が開口12から外へ漏れるおそれが少ない。
前方接触部30は、上述したように、陰核Cの前方部の凹みに接触して、着用者の身体との間に隙間を作らないことにより、着用者の身体を伝わってくる尿を女性用吸収体物品100の外に漏らさないという機能を奏する。
【0022】
更に、前方接触部30は、着用者が身体を動かすと生ずる大陰唇の開閉に追従することができるように、ある程度の厚さとクッション性とを有するのが好ましい。これにより、大陰唇の開閉の動作によって、尿が漏れる隙間が生じなくなる。
更に、前方接触部30が、着用者の身体を伝わってくる尿が外に漏れないうちに、開口または吸収体上へ誘導するガイド機能を有するのが好ましい態様の一つである。
【0023】
前方接触部30は、吸収体収容部材10の前部に形成されるが、その大きさ、形状、配置等は、上述したような各種の機能を考慮して決定することができる。
前方接触部30は、尿道口を塞いだり、尿道口または陰核に接触したりしないような位置および大きさとされる。具体的には、着用時に、陰核より前方(腹部側)の部分(陰核前方部)に接触する位置とされ、好ましくは大陰唇に挟まれうる位置および大きさとされる。
【0024】
前方接触部の高さは、漏れが生じにくい範囲であれば特に限定されない。
具体的には、材料、形状、変形性等を考慮して決定されるが、一般に、大陰唇の先端(最も下側になる部分)が吸収体収容部材に接する位置を含む基準面から、10〜25mmの高さであるのが好ましい。これは、基準面から陰核前方部までの距離(陰核前方部の凹部の深さ)が15mm程度であることに基づく。
10mm以上であると、前方接触部の上を乗り越えた漏れがより発生しにくい。また、25mm以下であると、大陰唇と吸収体収容部材との隙間が生じにくく、漏れがより発生しにくい。
【0025】
前方接触部の前後方向の長さは、下着からはみ出さない範囲であるのが好ましい。この点で、100mm以下であるのが好ましい。また、本発明の女性用吸収体物品が、後述する外部防漏体を有する場合には、外部防漏体の前端部より後側にあるのが好ましい。
また、着用者の身体に接触して安定する点で、5mm以上であるのが好ましく、10mm以上であるのがより好ましい。
また、下着が、本発明の女性用吸収体物品を着脱可能に取り付けるためのコネクターバンドを有する態様の場合、本発明の女性用吸収体物品の前方接触部の前端とベルト状のコネクターバンドとを結合させ、一体化させることができる。この際、例えば、面ファスナー、粘着剤を用いることにより、着脱可能に結合させることができる。
【0026】
前方接触部の左右方向の幅は、大陰唇に挟み込まれやすい範囲であるのが好ましい。
前方接触部の上面の幅は、着用者の身体の運動によって大陰唇の深い部分の間隔が大きく変化しないため、15mm以下であるのが好ましい。前方接触部の下面の幅は、大陰唇の浅い部分の間隔が着用者が脚を閉じた状態では狭いが、身体の運動によって大陰唇の間隔が広くなりうるため、30mm以下であるのが好ましい。また、前方接触部の幅を厚くしすぎると、挿入が難しいため前方接触部の上側に隙間が生じやすくなり、液漏れするおそれがあるが、上記範囲であると、液漏れのおそれが少ない。
一方、前方接触部の左右の側面からの液漏れを防止する点で、前方接触部の上面の幅および下面の幅は、いずれも3mm以上であるのが好ましい。
【0027】
前方接触部の形状は、特に限定されず、例えば、図3(A)〜図3(L)に示される各形状とすることができる。
図3は、種々の形状の前方接触部を示す模式的な斜視図である。図中、左側が着用者の前側であり、上側が着用者の身体側である。
図3(A)〜図3(G)に示される各形状は、陰核前方部に接触する部分が前後方向に一定の高さを有している。この場合、前方接触部の着用者に対する位置が、着用者の身体の動作、装着状態等によって、前後に多少ずれても、外れたり、シール性が大きく変化したりすることがない。
また、図3(H)〜図3(L)に示される各形状は、陰核前方部に接触する部分の前後方向の高さが変化している。この場合、前方接触部でストップされた尿が、前方または後方に円滑に移動する。
【0028】
前方接触部の構造は、特に限定されない。
例えば、(1)クッション性がある素材(クッション材)を単体で使用する構造、(2)クッション性のない素材(コア材)をシート状のクッション材で被覆した構造(2層構造)、(3)クッション材を不織布で被覆した構造、(4)コア材を不織布で被覆した構造が挙げられる。
クッション材としては、例えば、PP、PE、PU等の発泡体;軟らかい合成ゴムが挙げられる。発泡体の場合、厚さ1〜5mm、密度20〜40kg/m3の発泡体シートが、柔軟性およびクッション性に優れる点で好ましい。特に、軟質ポリウレタンシートが好ましく、厚さ1〜5mmの軟質ポリウレタンシートがより好ましい。
軟質ポリウレタンシート等の発泡体シートは、2層以上積層されているのが好ましい態様の一つである。これにより、適度な幅の前方接触部を形成させることができる。また、後述する開口周辺部と同時に形成させる方法を用いる際に、本来不要となる材料を前方接触部の形成に転用することができる。
コア材としては、例えば、プラスチック、硬いゴムチューブが挙げられる。
不織布としては、親水性不織布および疎水性不織布のいずれも用いることができる。疎水性不織布は、前方接触部で性器を伝わってきた尿の移動を分断する機能を奏する。また、親水性不織布は、尿をその内部に浸透させて吸収体に移動させる機能を持たせるときに用いられる。中でも、親水性不織布が好ましい。
親水性不織布は、特に限定されないが、セルロース系親水性不織布の場合、一度尿と接触すると、膨潤して、尿が通過するための不織布内部の空間が狭くなってしまい、尿の移動が円滑に行われないことがあるため、PP不織布、開口PEフィルム等の疎水性材料からなる不織布を表面親水性化処理して得られる表面親水性化不織布が好ましい。PP不織布、開口PEフィルム等は、例えば、ナプキン等の裏面材として用いられるものを用いることができる。
【0029】
前方接触部は、その一部または全部を、発泡体により形成されているのが好ましい。また、その場合、発泡体が不織布により被覆されているのが好ましい態様の一つである。
【0030】
図4は、種々の前方接触部の構造を示す模式的な横端面図である。
図4(A)に示される前方接触部30aは、コア材32の全体をシート状のクッション材34が被覆している。図4(B)に示される前方接触部30bは、基本的に図4(A)と同様であるが、シート状のクッション材34がコア材32′の下面よりも更に下側まで伸張している。図4(C)に示される前方接触部30cおよび図4(D)に示される前方接触部30dは、それぞれ図4(A)および図4(B)における比較的厚いシート状のクッション材34の代わりに、比較的薄い不織布36を用いている。不織布36を用いることにより、クッション性は小さくなるが、着用者の装着感が良好となる。
また、図4(A)および図4(B)において、図4(C)および図4(D)に示されるような不織布を、クッション材34の上に被覆させて用いることもできる。
【0031】
また、前方接触部は、尿移動機能を奏する構造とすることもできる。
図5は、液透過性部材を用いた種々の前方接触部の構造を示す模式図である。図5(A)〜図5(D)は横端面図であり、図5(E)は図5(A)に示される前方接触部の機能を説明する斜視図である。
図5(A)に示される前方接触部30eは、基本的に図4(A)と同様であるが、コア材の代わりに液透過性部材38を用いている。ここで、前方接触部30eは、図5(A)に示されるように、後述する液ガイドシート80に接触して設けられるのが好ましい。これにより、尿の吸収体への移動が円滑に行われるようになる。
図5(B)に示される前方接触部30fは、基本的に図5(A)と同様であるが、クッション材34を更に不織布36′が被覆している。
図5(C)に示される前方接触部30gは、基本的に図5(A)と同様であるが、下側に切り欠きを有する液透過性部材38′を用いている。これにより、尿の吸収体への移動がより円滑に行われるようになる。
図5(D)に示される前方接触部31は、基本的に図5(A)と同様であるが、クッション材34の内部の下方に液透過性部材38″が配置され、その上方は空隙となっている。これにより、前方接触部31は、その上部の変形性に優れている。
図5(E)において矢印で示されるように、前方接触部30eの後部から浸入した尿は、その内部を通過して下面を介して液ガイドシート80に導かれる。その後、尿は開口または吸収体に移動し吸収される。
液透過性部材としては、例えば、フィルター、チューブ等の尿が透過しうる部材;セルロース系不織布、ティッシュ等の親水性材料で形成された部材が挙げられる。
【0032】
後方接触部40は、上述したように、会陰部Pの凹みに接触して、着用者の身体との間に隙間を作らないことにより、着用者の身体を伝わってくる尿を女性用吸収体物品100の外に漏らさないという機能を奏する。
また、後方接触部40は、着用者が身体を動かすと生ずる左右の臀部の開閉に追従することができるように、ある程度の厚さとクッション性とを有するのが好ましい。これにより、左右の臀部の開閉の動作によって、尿が漏れる隙間が生じなくなる。
更に、後方接触部40が、着用者の身体を伝わってくる尿が外に漏れないうちに、開口または吸収体上へ誘導するガイド機能を有するのが好ましい態様の一つである。
【0033】
後方接触部40は、吸収体収容部材10の後部に形成されるが、その大きさ、形状、配置等は、上述したような各種の機能を考慮して決定することができる。
後方接触部40は、肛門を塞いだり、肛門に接触したりしないような位置および大きさとされる。具体的には、着用時に、会陰部に接触する位置とされ、好ましくは左右の臀部に挟まれうる位置および大きさとされる。
【0034】
後方接触部の高さは、漏れが生じにくい範囲であれば特に限定されない。
具体的には、材料、形状、変形性等を考慮して決定されるが、一般に、上述した基準面から、15〜35mmの高さであるのが好ましい。これは、基準面から会陰部までの距離(会陰部の凹部の深さ)が20mm程度であることに基づく。
15mm以上であると、後方接触部の上を乗り越えた漏れがより発生しにくい。また、35mm以下であると、左右の臀部と吸収体収容部材との隙間が生じにくく、漏れがより発生しにくい。
【0035】
後方接触部の前後方向の長さは、肛門に接触しない範囲であるのが好ましい。この点で、50mm以下であるのが好ましい。また、本発明の女性用吸収体物品が、後述する外部防漏体を有する場合には、外部防漏体の後端部より前側にあるのが好ましい。
また、着用者の身体に接触して安定する点で、10mm以上であるのが好ましく、15mm以上であるのがより好ましい。
また、下着が、本発明の女性用吸収体物品を着脱可能に取り付けるためのコネクターバンドを有する態様の場合、本発明の女性用吸収体物品の後方接触部の後端とベルト状のコネクターバンドとを結合させ、一体化させることができる。この際、例えば、面ファスナー、粘着剤を用いることにより、着脱可能に結合させることができる。
コネクターバンドとしては、肛門を避けるように分岐したヒップラップバンドが好ましい。この場合、ヒップラップバンドの分岐した端部のそれぞれと、本発明の女性用吸収体物品の後方接触部の後端とを結合させることができる。
【0036】
後方接触部の左右方向の幅は、左右の臀部に挟み込まれやすい範囲であるのが好ましい。
後方接触部の上面の幅は、着用者の身体の運動によって左右の臀部の深い部分の間隔が大きく変化しないため、15mm以下であるのが好ましい。前方接触部の下面の幅は、左右の臀部の浅い部分の間隔が着用者が脚を閉じた状態では狭いが、身体の運動によって左右の臀部の間隔が広くなりうるため、30mm以下であるのが好ましい。また、後方接触部の幅を厚くしすぎると、挿入が難しいため後方接触部の上側に隙間が生じやすくなり、液漏れするおそれがあるが、上記範囲であると、液漏れのおそれが少ない。
一方、後方接触部の左右の側面からの液漏れを防止する点で、後方接触部の上面の幅および下面の幅は、いずれも3mm以上であるのが好ましい。
【0037】
後方接触部の形状は、特に限定されず、例えば、図3(A)〜図3(L)に示される前方接触部の各形状と同様にすることができる。
【0038】
後方接触部の構造は、特に限定されず、例えば、図4(A)〜図4(D)および図5(A)〜図5(D)に示される前方接触部の各構造と同様にすることができる。
【0039】
前方接触部および後方接触部と、開口との位置関係は、特に限定されず、前方接触部および後方接触部はいずれも開口の外部にあってもよく、内部にあってもよい。
図6は、前方接触部および後方接触部と開口との位置関係を説明する模式的な平面図である。図6においては、前方接触部、後方接触部および開口のみを示している。
図6(A)においては、前方接触部30および後方接触部40は、いずれも開口12aの外部において、開口12aに隣接して設けられている。この場合、前方接触部30および後方接触部40は、いずれも吸収体収容部材の上面に設けられている。
図6(B)においては、前方接触部30および後方接触部40は、いずれも開口12bの内部に設けられている。この場合、前方接触部30および後方接触部40は、いずれも吸収体、後述する液ガイドシートおよび吸収体収容部材の底部の上面のいずれかに設けられている。
図6(C)においては、前方接触部30および後方接触部40は、いずれも開口12aの外部において、開口12cから離間して設けられている。この場合、前方接触部30および後方接触部40は、いずれも吸収体収容部材の上面に設けられている。
なお、図6(A)〜図6(C)においては、前方接触部30および後方接触部40が開口に対して同じ位置関係となっているが、異なる位置関係となっていてもよい。例えば、前方接触部が開口の外部に隣接して設けられ、後方接触部が開口の内部に設けられる位置関係が挙げられる。
【0040】
図1および図2に示される本発明の女性用吸収体物品100において、開口12は、着用時に、尿道口mおよびその周囲の小陰唇Lmを収容している。
開口の形状は、一時に大量に排出される尿を漏れを生じさせることなく受容する点で、尿道口付近一帯が開口となっているのが好ましい。
図7は、種々の開口の形状を示す平面図である。図7(A)に示される開口13aは、前後方向に長い長方形である。図7(B)に示される開口13bは、前後方向に長い長方形の前後の辺を半円に代えた形状である。図7(C)に示される開口13cは、前後方向に長い八角形である。図7(D)に示される開口13dは、前後方向に長い対角線を有する菱形である。
尿道口付近一帯の幅が局所的に広くなっている点で、図7(C)または図7(D)に示される形状や、これらに多少の変形を施した形状が好ましい。
【0041】
尿道口の位置は、個人差があり、また、屈伸等の動作によっても変化するため、開口の大きさは、尿道口の前後に10mmずつの余裕があるのが好ましく、陰核付近から膣口付近まで位置する大きさであるのがより好ましい。したがって、開口の前後方向の長さは、20mm以上であるのが好ましく、30mm以上であるのがより好ましい。
また、前後に長すぎても漏れの原因となるので、開口の前後方向の長さは、100mm以下であるのが好ましく、90mm以下であるのがより好ましい。
【0042】
開口の幅は、着用時には着用前よりも狭くなる。これは、本発明の女性用吸収体物品が、着用時には大陰唇や腿に挟まれた状態で左右両側から圧力を受けるためである。
そこで、着用時に尿が円滑に吸収体に移動するには3mm以上となるようにするのが好ましいことを考慮すると、15mm以上であるのが好ましい。また、着用時に大陰唇が開口の外に位置するようにするためには15mm以下であるのが好ましいことを考慮すると、40mm以下であるのが好ましい。
【0043】
図1に示される本発明の女性用吸収体物品100において、上述した開口12は、開口周辺部14により形成されている。
開口周辺部の形状は、特に限定されず、大陰唇との密着性を高くし、また、尿の移動を円滑にするために、種々の形状とすることができる。
図8は、種々の開口周辺部の形状を示す模式的な横端面図である。図8(A)に示される開口周辺部14aは、水平になっている。図8(B)に示される開口周辺部14bは、内側が下がっている。図8(C)に示される開口周辺部14cは、図1(C)に示される開口周辺部14と同様に、内側が立ち上がっている。この場合、尿の吸収体収容部材の外側への漏れがより生じにくくなるので好ましい。図8(D)に示される開口周辺部14dは、図8(A)の態様の厚さを厚くしたものである。図8(E)に示される開口周辺部14eは、図8(D)の態様の内側の端部の間隔を上側が広く下側が狭くなるようにしたものである。図8(F)に示される開口周辺部14fは、図8(D)の態様の内側の端部の間隔を上側が狭く下側が広くなるようにしたものである。
【0044】
図1に示される本発明の女性用吸収体物品100においては、開口周辺部14の下側に、クッション性部材16が配置されている。
上述したように、本発明においては、開口周辺部14がクッション性材料により構成されているのが好ましい態様の一つであるが、例えば、コスト上の要求から開口周辺部にクッション性材料を用いない場合等においては、開口周辺部の下側に、クッション性部材を配置するのが好ましい。これにより、開口の形状が安定する。また、開口周辺部の大陰唇との接触状態に関しては、体表面の凹凸に対応することができるフィット性とクッション性とが得られる。また、クッション性部材は、後述するようにある程度の厚さを有するのが好ましく、これにより、着用者の小陰唇、尿道口等が女性用吸収体物品に直接接触するのを防止する機能や、接触した場合であっても、その圧力を弱める機能を奏する。
クッション性部材としては、例えば、発泡体シート、発泡度の大きいフォーム、ネットフィルター状の材料が挙げられる。
【0045】
クッション性部材は、厚さが1〜20mmであるのが好ましい。1mm以上であると、クッション性の効果が大きくなり、20mm以下であると、嵩張ってしまうことがない。
クッション性部材は、図1に示されるように、開口周辺部の下側において、開口の左右に帯状に設けられるのが好ましい。クッション性部材の左右方向の幅は、クッション性の効果を得る点で、5〜40mmであるのが好ましく、10〜30mmであるのがより好ましい。クッション性部材の前後方向の長さは、開口の前後方向の長さと同程度であるのが好ましい。具体的には、20〜120mmであるのが好ましく、30〜90mmであるのがより好ましい。
クッション性部材は、密度20〜40kg/m3であるのが好ましい。
中でも、厚さ1〜20mm、密度20〜40kg/m3の発泡体シートが好ましい。
【0046】
クッション性部材の位置は、開口周辺部の下側であれば、特に限定されない。
図9は、種々のクッション性部材の位置を示す模式的な横端面図である。図9(A)に示されるクッション性部材16aは、図1に示されるクッション性部材16と同様に、開口周辺部14の開口端よりやや外側に位置している。図9(B)に示されるクッション性部材16bは、開口周辺部14の開口端よりやや内側に位置している。図9(C)に示されるクッション性部材16cは、開口周辺部14の開口端の真下に端部がくるように位置している。
【0047】
本発明の女性用吸収体物品においては、上述した前方接触部および後方接触部を、上述した開口周辺部と別個に構成した後に組み合わせて形成させてもよいし、前方接触部および後方接触部と開口周辺部とを同時に形成させてもよい。
開口周辺部は、その構成を特に限定されない。図10は、種々の開口周辺部の構成を示す模式的な平面図である。
図10(A)に示される開口周辺部14gは、前後左右の辺が一つの部材で構成されている。図10(B)に示される開口周辺部14hは、左右二つの部材で構成されている。図10(C)に示される開口周辺部14iは、前後二つの部材で構成されている。図10(D)に示される開口周辺部14jは、左右の辺を構成する二つの部材とその間にあって前後の辺を構成する二つの部材とで構成されている。図10(E)に示される開口周辺部14kは、前後の辺を構成する二つの部材とその間にあって左右の辺を構成する二つの部材とで構成されている。図10(F)に示される開口周辺部14lは、図10(E)に示される開口周辺部14kにおいて、前後の辺を構成する部材を、それぞれ左、中央および右の三つの部材に代えたものである。
【0048】
開口周辺部の厚さに比べて前方接触部および後方接触部の厚さは大きいため、開口周辺部の形成においては、例えば、厚さ4mmのポリウレタンシートを開口周辺部の材料として用いた場合、開口を作るために除去する部分を前方および後方に折り返して二重にし、更にそれを折りたたんで四重とすることにより、左右方向の幅が16mm程度の前方接触部および後方接触部を形成させることができる。
【0049】
以下、前方接触部および後方接触部と開口周辺部とを同時に形成させる種々の方法について説明する。
図11は、前方接触部および後方接触部と開口周辺部とを同時に形成させる方法の第1の例を示す説明図である。
図11(A)の平面図で示される開口を形成する開口周辺部を、中央の点線部分が隆起するように折り、図11(B)の平面図および正面図で示される状態とする。ついで、図11(C)の正面図で示されるように、隆起した部分の内側の面を左右で接着させて、前方接触部および後方接触部を形成させる。
【0050】
図12は、前方接触部および後方接触部と開口周辺部とを同時に形成させる方法の第2の例を示す説明図である。
図12(A)の平面図で示される開口周辺部を、中央の点線部分が隆起するように折り、平面図および正面図で示されるコア材CM(図4(A)に示されるコア材32と同じもの)を隆起した部分の内側の空間に挿入し、図12(B)の平面図および正面図で示される状態とする。ついで、図12(C)の正面図で示されるように、隆起した部分の内側の面とコア材CMとを接着させて、前方接触部および後方接触部を形成させる。
【0051】
図13は、前方接触部および後方接触部と開口周辺部とを同時に形成させる方法の第3の例を示す説明図である。
図13(A)の平面図で示される開口周辺部用の部材を、実線に沿って切った後、一点鎖線に沿って下側に折り曲げ、図13(B)の平面図で示される状態とする。ついで、中央の点線部分が隆起するように折り、図13(C)の平面図および正面図で示される状態とする。その後、各部を適宜接着させて、前方接触部および後方接触部を形成させる。
このように、前方接触部および後方接触部の形成に、折り曲げた部分を用いることにより、別個の材料を用意する必要がなくなるため、コストを低くすることができる。
【0052】
図14は、前方接触部および後方接触部と開口周辺部とを同時に形成させる方法の第4〜第6の例を示す説明図である。
図14(A)〜図14(C)に示される方法は、図13で示される方法の切り込みの位置を変えたものである。図14(B)で示されるように、前方に折り曲げられた部分はその端部が開口周辺部本体の前端部と一致しているが、後方に折り曲げられた部分はその端部が開口周辺部本体の後端部に達していない。したがって、図14(C)で示されるように、点線で折り曲げた場合、後方の隆起する部分の幅が前後方向で変わる。これにより、そのような後方接触部を形成することができる。この場合、肛門に近い方が幅が小さくなるので、着用時の異物感を抑制することができる。
【0053】
図14(D)〜図14(F)に示される方法も、図13で示される方法の切り込みの位置を変えたものである。図14(E)で示されるように、前方に折り曲げられた部分はその端部が開口周辺部本体の前端部に達しておらず、後方に折り曲げられた部分はその端部が開口周辺部本体の後端部を超えている。したがって、図14(F)で示されるように、点線で折り曲げた場合、前方の隆起する部分の厚さが前後方向で変わる。これにより、そのような前方接触部を形成することができる。また、後方接触部は、部材が一部はみ出している。このはみ出した部分は、着用者の身体の微妙な凹凸に応じることができるような設計を可能にし、隙間の発生を防止することが可能となる。
【0054】
図14(G)〜図14(I)に示される方法も、図13で示される方法の切り込みの位置を変えたものであり、図14(D)〜図14(F)に示される方法の前後を入れ替えたものである。
【0055】
図15は、前方接触部および後方接触部と開口周辺部とを同時に形成させる方法の第7〜第9の例を示す説明図である。なお、図15(A)および図15(B)において、斜線部は、切り込みで周囲を囲まれており、部材が存在しない部分である。また、図15(C)においては、その中央部後方が、切り欠きとなっている。
図15(A)〜図15(C)に示される方法は、図11に示される方法と図13に示される方法とを組み合わせたものである。即ち、前方接触部は図13と同様に形成され、後方接触部は図11と同様に形成される。
【0056】
図15(D)〜図15(F)に示される方法においては、図15(D)の平面図で示される開口周辺部用の部材を、実線に沿って切った後、一点鎖線に沿って下側に折り曲げ、図15(E)の平面図で示される状態とする。ついで、中央の点線部分が隆起するように折り、図15(F)の平面図および後方端面図で示される状態とする。その後、各部を適宜接着させて、前方接触部および後方接触部を形成させる。この方法では、後方に折り曲げられた部分が中央部を欠いているから、図13に示される方法による場合と比べて、後方接触部の形状が異なっている。
【0057】
図15(G)〜図15(I)に示される方法においては、図15(G)の平面図で示される開口周辺部用の部材を、実線に沿って切った後、一点鎖線に沿って下側に折り曲げ、図15(H)の平面図で示される状態とする。ついで、中央の点線部分が隆起するように折り、図15(I)の平面図および正面図で示される状態とする。その後、各部を適宜接着させて、前方接触部および後方接触部を形成させる。この方法では、後方の中央部を欠いているから、前方接触部の高さよりも後方接触部の高さが低くなっている。
【0058】
図16は、前方接触部および後方接触部と開口周辺部とを同時に形成させる方法の第10の例を示す説明図である。
図16(A)の平面図および正面図で示されるように、クッション性材料(例えば、厚さ3mmの軟質ウレタンフォーム)の上に表面親水性化不織布(例えば、表面親水性処理されたPPスパンボンド不織布、図16中、斜線の部材)を貼り合わせてなる開口周辺部用の部材を、実線に沿って切った後、一点鎖線に沿って下側に折り曲げ、図16(B)の平面図で示される状態とする。図16(B)においては、折り返し部分が二重となり、表面親水性化不織布/クッション性材料/クッション性材料/表面親水性化不織布の4層構造となっている。ついで、中央の点線部分が隆起するように折り、図16(C)の正面図で示される状態とする。図16(C)においては、4層構造が折り曲げられている。
この方法によれば、表面親水性化不織布が前方接触部および後方接触部から吸収体収容部材の内部に入るため、前方接触部および後方接触部でストップされた尿は、表面親水性化不織布を伝わって、円滑に吸収体収容部材の内部に移動する。
【0059】
図23は、上述した前方接触部および後方接触部と開口周辺部とを同時に形成させる方法の第10の例の種々の変形例を示す斜視図である。図23(A)〜図23(C)においては、4重構造のうちの外側の表面親水性化不織布およびクッション性材料は省略してある。なお、以下、前方接触部を例に挙げて説明するが、後方接触部も同様の構成とすることができる。
図23(A)に示される変形例においては、前方接触部30hの内側の表面親水性化不織布(図23中、斜線の部材)の頂上部が前方にいくに従って低くなっている。前方に排出された尿は、矢印に示されるように、内側の表面親水性化不織布を伝わって下方に移動する。後述する液ガイドシート80が設けられている場合には、尿は、表面親水性化不織布から液ガイドシート80へと伝わって、速やかに吸収体収容部材の内部に移動する。
図23(B)に示される変形例においては、前方接触部30iの内側の表面親水性化不織布の頂上部が切断されて2方向に分かれており、表面親水性化不織布の内面と液ガイドシート80との接触面積が大きくなっている。前方に排出された尿は、矢印に示されるように、内側の表面親水性化不織布を伝わって下方に移動し、表面親水性化不織布から液ガイドシート80へと伝わって、速やかに吸収体収容部材の内部に移動する。この変形例では、表面親水性化不織布の内面と液ガイドシート80との接触面積が大きいため、表面親水性化不織布から液ガイドシート80への尿の移動がより円滑になっている。
図23(C)に示される変形例においては、前方接触部30jの内側の表面親水性化不織布の前端部が切断されており、その切断面が液ガイドシート80と接触している。即ち、図23(A)および図23(B)に示される変形例が、いずれも表面親水性化不織布が前方接触部の内側に巻き込まれているのに対し、図23(C)に示される変形例は、表面親水性化不織布が前方接触部30jの内側に巻き込まれずに、外側に出て開口に向かっている形状となっている。前方に排出された尿は、矢印に示されるように、表面親水性化不織布に止められ、下方に移動する。後述する液ガイドシート80が設けられている場合には、尿は、表面親水性化不織布から液ガイドシート80へと伝わって、速やかに吸収体収容部材の内部に移動する。
【0060】
図17は、本発明の女性用吸収体物品の別の例を示す模式図である。図17(A)は斜視図であり、図17(B)は平面図であり、図17(C)は図17(B)中のXVIIC−XVIIC線に沿った横端面図である。図17(A)および図17(B)においては、吸収体は省略されている。
図17に示される本発明の女性用吸収体物品200は、図1に示される女性用吸収体物品100の構成部材を具備し、更に、外部防漏体50を具備する。女性用吸収体物品200の構成部材のうち、女性用吸収体物品100の構成部材と同じものは、同一の符号を用いて表し、説明を省略する。
図17に示されるように、外部防漏体50は、吸収体収容部材10の側面で、吸収体収容部材10と結合し、開口周辺部14の外側において着用者の大陰唇を収容する空間を形成している。
【0061】
図18は、本発明の女性用吸収体物品200を着用者が着用した状態を示す説明図である。図18は、横端面図である。
図18に示されるように、本発明の女性用吸収体物品200は、着用時に、上述した本発明の女性用吸収体物品100の機能を奏するうえ、大陰唇LMが外部防漏体50の内面と開口周辺部14の外面とにより形成される空間に収容される。
このような構成により、まず、外部防漏体50は、大陰唇LMを外部の刺激から保護する機能を奏する。
また、この際、大陰唇LMは、外部防漏体50の上から腿等により内側に押されているから、女性用吸収体物品200は、全体的に着用者Wの性器にフィットしている。
【0062】
本発明の女性用吸収体物品200は、上述した女性用吸収体物品100と同様に、開口12に尿道口m、小陰唇Lm等を収容することによって漏れを防止するものであるが、着用者の動作等によって仮に吸収体収容部材10の外に尿が漏れた場合であっても、外部防漏体50があるため、女性用吸収体物品200の外への漏れは生じない。
特に、尿が開口周辺部14を伝わって吸収体収容部材10の外に漏れた場合に、そのまま吸収体収容部材200の外に漏れることを防止することができる。
また、吸収体20による吸収速度を超えて尿が排出された場合に、外部防漏体50と吸収体収容部材10とで形成される空間に尿を一時的に貯留させることができる。特に、吸収体20として、高吸水性シートを用いる場合、初期の吸収速度が遅いため、この機能が重要になる。
また、外部防漏体50と吸収体収容部材10とで形成される空間に吸収体を配置することもできる。
【0063】
ここで、吸収体収容部材10の外部防漏体50との結合位置より下側は、液不透過性材料により構成される。その結果、吸収体収容部材10の内部空間と外部防漏体50の着用者の大陰唇を収容する空間とが、全体として液不透過性材料により形成されることになる(図18において、液不透過性材料で構成される部分を斜線で示す。)。
また、吸収体収容部材10の外部防漏体50との結合位置より上側の部分が液透過性材料により構成されているのが好ましい。これにより、外部防漏体50と吸収体収容部材10とで形成される空間に尿が入った場合であっても、尿は速やかに吸収体収容部材10を透過してその内部に移動し、吸収体20に吸収されうるようになる。
【0064】
図17に示される女性用吸収体物品200においては、外部防漏体50が、吸収体収容部材10の側面に結合しているが、本発明において、外部防漏体と吸収体収容部材との関係はこれに限定されない。
図19は、種々の別の外部防漏体と吸収体収容部材との関係を示す模式的な断面図である。
図19(A)においては、吸収体収容部材11は、二つの部分11aおよび11bからなり、底部および側部を形成する部分11aと外部防漏体50aとが、液不透過性材料からなる一つの部材で構成され、そこに好ましくは液透過性材料からなる部分11bが内側から結合している。この場合、外部防漏体50aと吸収体収容部材11とで形成される空間に尿が入った場合であっても、尿は速やかに吸収体収容部材11を透過してその内部に移動し、吸収体20に吸収されうる。
【0065】
図19(B)においては、外部防漏体50bが、吸収体収容部材10の全体を外側から被覆している。外部防漏体50bと吸収体収容部材10とで形成される空間には、吸収体22が配置されている。吸収体22は、吸収体20と同様のものを用いることができる。吸収体収容部材10は、液不透過性材料であってもよく、液透過性材料であってもよい。外部防漏体50bと吸収体収容部材10とは、適当な箇所で接着等により結合させておいてもよい。
この場合、外部防漏体50bと吸収体収容部材10とで形成される空間に尿が入った場合であっても、尿は速やかに吸収体22に吸収されうる。
【0066】
図17に示される本発明の女性用吸収体物品200においては、外部防漏体50が吸収体収容部材10との間に空隙を有するのが好ましい。例えば、図17に示されるように、外部防漏体50の縁部52がクッション性材料からなるのが好ましい態様の一つである。クッション性材料としては、例えば、PP、PE、PU等のフォーム;フィルムが挙げられる。また、縁部に糸ゴム等の弾性体を1本または複数本配置し、細かいひだを形成させるのも好ましい態様の一つである。
これにより、外部防漏体50と吸収体収容部材10とで形成される空間の大陰唇が存在しない部分(前端付近および後端付近)においてもある程度の空間の容積が確保され、尿の移動を容易にする。
また、外部防漏体の縁部の形状が安定し、更には、着用時にしわが生じにくくなるから、漏れがより生じにくくなる。
【0067】
外部防漏体の縁部の形状は、図17に示される形状に限定されない。
図20は、別の外部防漏体の縁部の形状を示す模式的な断面図である。図20に示される外部防漏体の縁部52aは、端部が外側になるように設けられいる。この場合、着用者との密着性がより高くなり、漏れが少なくなることがある。
【0068】
左右の外部防漏体の間隔は、最も近い部分で、30〜100mmであるのが好ましい。上記範囲であると、上述した外部防漏体の各機能が発揮されやすい。
【0069】
図17に示される本発明の女性用吸収体物品200においては、左右の外部防漏体50の前端を閉鎖して前端部空間を形成する前方防漏体60と、左右の外部防漏体50の後端を閉鎖して後端部空間を形成する後方防漏体70とを具備する。
図17に示される前方防漏体60は、吸収体収容部材10の前端部に結合しており、左右の外部防漏体50の前端を被覆する状態で閉鎖して袋状となって前端部空間を形成し、その端部は前方接触部30の前端に達している。本発明においては、前方防漏体60の構構造は、特に限定されず、袋状となって前端部空間を形成するものであればよい。
前方防漏体60は、外部防漏体50と協働して、開口周辺部14の外に漏れ出した尿が女性用吸収体物品200の外に漏れるのを防止する。特に、尿が開口周辺部14を伝わって吸収体収容部材10の外に漏れた場合に、そのまま吸収体収容部材200の外に漏れることを防止することができる。
また、吸収体20による吸収速度を超えて尿が排出された場合に、前端部空間に尿を一時的に貯留させることができる。
【0070】
図17に示される前方防漏体60は、前方防漏体30の前端と接しているが、前方接触部30を被覆していない。このように、前方接触部30を被覆しない場合は、前方防漏体60が左右方向においてフラットになるため、着用時にしわが生じにくいので、尿が前方防漏体60を乗り越えて前方に流れることを効率的に防止することができる。
一方、前方防漏体が前方接触部の一部または全部を被覆する場合(図示せず)は、その前方防漏体を伝わる伝い濡れや着用時のしわが生じやすくなるものの、前端部空間を相対的に大きくすることができるため、尿の貯留機能に優れる。
【0071】
後方防漏体70は、前方防漏体60とほぼ同様であるので説明を省略する。
【0072】
また、本発明の女性用吸収体物品においては吸収体が、左右に離間して配置されているのが好ましい態様の一つである。これにより、以下の効果が得られる。
第1に、左右方向の中央部での変形が容易となる。このため、着用者が適切な位置に女性用吸収体物品を着用することが容易となる。
第2に、上記変形により、中央部に排出された尿が左右および前後に移動しやすくなるため、吸収体に吸収されやすくなる。
第3に、着用者の股下部に吸収体がないため、着用時、特に尿を吸収した後に、着用者は股下部において不快感を感じない。
第4に、着用者の股下部に吸収体がないため、かぶれ、ムレ等の問題が生じにくい。
第5に、左右方向の中央部に吸収体がないため、尿排出直後においても、排出された尿が中央部に貯留されることなく、速やかに左右の吸収体に分配されて吸収されるので、多量の尿が短時間で排出されたときにも、尿を効率的に吸収することができる。
【0073】
更に、吸収体に接触して液ガイドシートが配置されているのが好ましい。
図21は、液ガイドシート80を有する種々の本発明の女性用吸収体物品の例を示す模式図である。図21(A)、図21(C)および図21(D)は図1(C)に相当する位置における横端面図であり、図21(B)は平面図である。図21(B)においては、吸収体および液ガイドシート以外を省略して示している。
図21(A)および(B)に示される女性用吸収体物品300は、基本的には、女性用吸収体物品100と同じであるが、吸収体24が左右に離間して配置されており、左右の吸収体24の間にわたって、液ガイドシート80が配置されている。
液ガイドシート80は、尿を移動させるための流路を有する。着用者の尿道口から吸収体収容部材10の左右方向の中央部に排出された尿は、液ガイドシート80の流路を通って、速やかに吸収体24に移動する。したがって、着用者は股下部において不快感を感じない。
また、液ガイドシート80は、左右に離間して配置されている吸収体24間での尿の移動を可能とするのが好ましい。
吸収体物品を使用する際、着用者の姿勢、着用位置等により、左右の吸収体に吸収される尿の量が大幅に偏ってしまうことがある。このような場合、本発明の女性用吸収体物品が液ガイドシートを有すると、尿を多く吸収した吸収体から少ない方へと、尿が移動し、その結果、偏りが緩和される。これにより、吸収体物品の実質的な尿吸収量および使用可能時間が長くなる。
【0074】
液ガイドシート80は、尿の移動を可能とする流路を有する構造であれば特に限定されないが、体液吸収性や体液保持性を有しないのが、尿の移動が速やかに行われる点で好ましい。具体的には、後述する凸部に開孔を有する凹凸シート部材(以下「開孔凹凸シート部材」という。)が好適に挙げられる。
【0075】
図22は、凸部の全部に開孔を有する開孔凹凸シート部材の例を示す模式的な斜視図である。図22に示される開孔凹凸シート部材である液ガイドシート80は、凸部を形成する多数の突起81を有しており、各突起81はその頂点に開孔82を有している。開孔凹凸シート部材においては、凸部の一部に開孔を有していてもよく、凸部の全部に開孔を有していてもよい。
開孔凹凸シート部材は、凹部と凸部を有する凹凸面を少なくとも一つの面として有する。開孔凹凸シート部材においては、多数の凹部が連なって体液の流路として機能する。開孔凹凸シート部材は、凸部が使用時に多少つぶれたとしても、体液の流通が阻害されないという利点を有する。
また、開孔凹凸シート部材においては、開孔も体液の流路として機能する。
本発明においては、開孔凹凸シート部材を、開孔の広い方の面(図22中、見えていない面)を着用者側にして用いるのが好ましい。
【0076】
開孔凹凸シート部材の材料としては、例えば、PE、PP、PVA、ウレタン等の樹脂からなる体液不透過性のフィルムが挙げられる。
開孔凹凸シート部材の具体例としては、本発明者が国際公開第02/065965号パンフレットにおいて提案したものが挙げられる。
【0077】
液ガイドシートとして開孔凹凸シート部材を用いる場合、開孔に体液が残存する、液残りが生じ、いわゆるリウェット値が悪くなることがある。この場合、開孔凹凸シート部材の下側に、親水性拡散シートを組み合わせて用いるのが好ましい。これにより、開孔に存在する体液が、親水性拡散シートに浸透して移動するので、リウェット値が大幅に低くなる。また、開孔凹凸シート部材が防漏体とずれることが防止され、形状安定性も向上する。
【0078】
親水性拡散シートとしては、比較的目付の低い親水性不織布状物が好適に用いられる。親水性不織布状物としては、例えば、レーヨン、コットン、木材パルプ等を含有させたティッシュまたは親水性不織布が挙げられる。具体的には、ティッシュペーパー、レーヨンスパンボンド(例えば、TCF、二村化学社製)、コットンスパンレース、レーヨン/PP混合スパンレース、レーヨン/PET混合スパンレースが挙げられる。
また、PP、PEまたはPETのスパンボンド不繊布、PPのサーマルポンド不繊布、PE/PETのスルーエア不織布等の合繊不織布を界面活性剤等で表面処理することにより親水化した不繊布も挙げられる。
開孔凹凸シート部材と親水性拡散シートとは、単に重ね合わせて積層してもよく、ホットメルト、熱ラミネート等により複合化してもよい。
【0079】
親水性拡散シートの下側には、体液不透過性シートを組み合わせて用いるのが好ましい。これにより、体液が親水性拡散シートと防漏体のシート部との間に一時的にも貯留されず、速やかに防漏体の袋部へと移動するようになる。体液不透過性シートの材料としては、例えば、PE、PP、PVA、ウレタン等の樹脂からなるフィルムが挙げられる。
親水性拡散シートと体液不透過性シートとは、単に重ね合わせて積層してもよく、ホットメルト、熱ラミネート等により複合化してもよい。
また、親水性拡散シートを用いずに、開孔凹凸シート部材と体液不透過性シートとを組み合わせて用いてもよい。
開孔凹凸シート部材と体液不透過性シートとは、単に重ね合わせて積層してもよく、ホットメルト、熱ラミネート等により複合化してもよい。
【0080】
図21(C)に示される女性用吸収体物品310は、基本的には、女性用吸収体物品300と同じであるが、吸収体24のほかに、液ガイドシート80の下に、吸収体26が左右に離間して配置されている。
【0081】
図21(D)に示される女性用吸収体物品320は、基本的には、女性用吸収体物品100と同じであるが、吸収体28の左右の端部が、立ち上がり、更に、内側に折れ曲がっている。また、吸収体28の中央部の上には、防漏フィルム90を介して、液ガイドシート80が配置されている。防漏フィルムとしては、例えば、PE、PP、PET、EVA等の樹脂のフィルムが挙げられる。
この態様においては、着用者の尿道口から吸収体収容部材10の左右方向の中央部に排出された尿は、液ガイドシート80の流路を通って、速やかに吸収体28に移動する。また、液ガイドシート80が開孔凹凸シート部材である場合には、尿の一部は開孔凹凸シート部材の凹凸を通過して、防漏フィルム90上に達し、前後左右に移動した後、吸収体28に吸収される。したがって、着用者は股下部において不快感を感じない。
【0082】
図24は、本発明の女性用吸収体物品の更に別の例を示す模式的な横端面図である。
図24に示される女性用吸収体物品330は、基本的には、女性用吸収体物品200と同じであるが、吸収体29の形状が異なり、それにより吸収体29とクッション性部材16との位置関係が異なっている。
吸収体29は、左右の端部がティッシュ95とともに2回折りたたまれて、3層構造となっている。また、吸収体29の中央部の上には、防漏フィルム90を介して、液ガイドシート80が配置されている。吸収体29の3層構造となっている部分の2層目の下面は、液ガイドシート80の上面とホットメルト接着剤85により結合されている。このような構造により、吸収体29の変形が抑制され、形態の安定化が達成されている。
吸収体収容部材10内部の中央部においては、上から液ガイドシート80、ティッシュ95、ストリップ状の防漏フィルム90および吸収体29が積層されている。
開口周辺部14の下側に配置されるクッション性部材16は、吸収体29の3層構造となっている部分の内側に収まるように配置されており、この点で、女性用吸収体物品320と異なる。このような構造を採ることによって、吸収体29による尿の吸収が進行しても、開口周辺部14およびクッション性部材16の位置が吸収体29の膨張の影響をあまり受けないため、開口周辺部14と着用者の大陰唇との接触状態や位置関係が変化せず、装着状態が安定的に保たれる。したがって、尿漏れの発生がより効果的に防止される。
【0083】
本発明の女性用吸収体物品は、性器と接触する部分(例えば、小陰唇が接しうる吸収体の上面、液ガイドシートの上面;大陰唇が接しうる吸収体収容部材の外面、外部防漏体の内面)等において、スキンコンタクトシートを設けることができる。スキンコンタクトシートを具備すると、着用時の表面感触が優れたものになる。
スキンコンタクトシートは、体液透過性であれば特に限定されず、従来トップシートとして用いられてきた公知のものを用いることができる。具体的には、例えば、PP不織布、PET不織布、PE不織布等の合成繊維の不織布を用いることができる。また、レーヨン、コットン等の親水性繊維と合成繊維とを混合してなる乾式不織布を用いることもできる。
【0084】
本発明の女性用吸収体物品は、便を受容するための便処理用シートと組み合わせて用いるのが好ましい態様の一つである。
便処理用シートとしては、例えば、パルプ等で作られた吸水性不織布、具体的には、王子キノクロス社製のキノクロスが好適に用いられる。特に、起毛状の不織布は、軟便を絡めて固定することができる点で好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0085】
【図1】本発明の女性用吸収体物品の例を示す模式図である。
【図2】本発明の女性用吸収体物品を着用者が着用した状態を示す説明図である。
【図3】種々の形状の前方接触部を示す模式的な斜視図である。
【図4】種々の前方接触部の構造を示す模式的な横端面図である。
【図5】液透過性部材を用いた種々の前方接触部の構造を示す模式図である。
【図6】前方接触部および後方接触部と開口との位置関係を説明する模式的な平面図である。
【図7】種々の開口の形状を示す平面図である。
【図8】種々の開口周辺部の形状を示す模式的な横端面図である。
【図9】種々のクッション性部材の位置を示す模式的な横端面図である。
【図10】種々の開口周辺部の構成を示す模式的な平面図である。
【図11】前方接触部および後方接触部と開口周辺部とを同時に形成させる方法の第1の例を示す説明図である。
【図12】前方接触部および後方接触部と開口周辺部とを同時に形成させる方法の第2の例を示す説明図である。
【図13】前方接触部および後方接触部と開口周辺部とを同時に形成させる方法の第3の例を示す説明図である。
【図14】前方接触部および後方接触部と開口周辺部とを同時に形成させる方法の第4〜第6の例を示す説明図である。
【図15】前方接触部および後方接触部と開口周辺部とを同時に形成させる方法の第7〜第9の例を示す説明図である。
【図16】前方接触部および後方接触部と開口周辺部とを同時に形成させる方法の第10の例を示す説明図である。
【図17】本発明の女性用吸収体物品の別の例を示す模式図である。
【図18】本発明の女性用吸収体物品を着用者が着用した状態を示す説明図である。
【図19】種々の別の外部防漏体と吸収体収容部材との関係を示す模式的な断面図である。
【図20】別の外部防漏体の縁部の形状を示す模式的な断面図である。
【図21】液ガイドシートを有する種々の本発明の女性用吸収体物品の例を示す模式図である。
【図22】凸部の全部に開孔を有する開孔凹凸シート部材の例を示す模式的な斜視図である。
【図23】前方接触部および後方接触部と開口周辺部とを同時に形成させる方法の第10の例の種々の変形例を示す斜視図である。
【図24】本発明の女性用吸収体物品の更に別の例を示す模式的な横端面図である。
【符号の説明】
【0086】
10、11 吸収体収容部材
11a、11b 吸収体収容部材の部分
12、12a〜12c、13a〜13d 開口
14、14a〜14l 開口周辺部
16、16a〜16c クッション性部材
20、22、24、26、28、29 吸収体
30、30a〜30j、31 前方接触部
32、32′、CM コア材
34 クッション材
36、36′ 不織布
38、38′、38″ 液透過性部材
40 後方接触部
50、50a、50b 外部防漏体
52、52a 外部防漏体の縁部
60 前方防漏体
70 後方防漏体
80 液ガイドシート
81 突起
82 開孔
85 ホットメルト接着剤
90 防漏フィルム
95 ティッシュ
100、200、300、310、320、330 女性用吸収体物品
C 陰核
LM 大陰唇
Lm 小陰唇
m 尿道口
P 会陰部
W 着用者

【特許請求の範囲】
【請求項1】
着用者の小陰唇を内部に収容するための開口を形成し、かつ、着用者の大陰唇を前記開口の外側に位置させるための開口周辺部を有する、袋状の吸収体収容部材と、
前記吸収体収容部材の内部に、少なくとも1層配置された、高吸水性樹脂を含有し体液を吸収しうる吸収体と、
前記吸収体収容部材の前部に形成された、着用者の陰核前方部に接触するための突起状の前方接触部と、
前記吸収体収容部材の後部に形成された、着用者の会陰部に接触するための突起状の後方接触部と
を具備する女性用吸収体物品。
【請求項2】
更に、前記開口周辺部の外側において着用者の大陰唇を収容する空間を形成するための液不透過性材料により構成されている外部防漏体を具備する請求項1に記載の女性用吸収体物品。
【請求項3】
前記外部防漏体が、前記吸収体収容部材と結合しており、
前記吸収体収容部材の前記外部防漏体との結合位置より下側が液不透過性材料により構成されており、
前記吸収体収容部材の内部空間と前記外部防漏体の着用者の大陰唇を収容する空間とが、全体として液不透過性材料により形成されている請求項1または2に記載の女性用吸収体物品。
【請求項4】
前記吸収体収容部材の前記外部防漏体との結合位置より上側が液透過性材料により構成されている請求項3に記載の女性用吸収体物品。
【請求項5】
更に、左右の前記外部防漏体の前端を閉鎖して前端部空間を形成する前方防漏体および/または左右の前記外部防漏体の後端を閉鎖して後端部空間を形成する後方防漏体を具備する請求項2〜4のいずれかに記載の女性用吸収体物品。
【請求項6】
前記開口周辺部がクッション性材料により構成されている請求項1〜5のいずれかに記載の女性用吸収体物品。
【請求項7】
更に、前記開口周辺部の下側に、クッション性部材が配置されている請求項1〜6のいずれかに記載の女性用吸収体物品。
【請求項8】
前記クッション性部材が、厚さ1〜20mm、密度20〜40kg/m3の発泡体シートである請求項7に記載の女性用吸収体物品。
【請求項9】
前記外部防漏体の縁部が、クッション性部材により構成されている請求項1〜8のいずれかに記載の女性用吸収体物品。
【請求項10】
前記前方接触部および/または前記後方接触部が、その一部または全部を、発泡体により形成されている請求項1〜9のいずれかに記載の女性用吸収体物品。
【請求項11】
前記発泡体が、厚さ1〜5mmの軟質ポリウレタンシートである請求項10に記載の女性用吸収体物品。
【請求項12】
前記軟質ポリウレタンシートが、2層以上積層されている請求項11に記載の女性用吸収体物品。
【請求項13】
前記発泡体が、不織布で被覆されている請求項10〜12のいずれかに記載の女性用吸収体物品。
【請求項14】
前記不織布が、表面親水性化不織布である請求項13に記載の女性用吸収体物品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【公開番号】特開2006−288550(P2006−288550A)
【公開日】平成18年10月26日(2006.10.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−111240(P2005−111240)
【出願日】平成17年4月7日(2005.4.7)
【出願人】(592034744)株式会社日本吸収体技術研究所 (28)
【出願人】(390036799)王子ネピア株式会社 (387)
【出願人】(000005979)三菱商事株式会社 (56)
【Fターム(参考)】