説明

姿勢補助用具

【課題】仰臥姿勢にならないように身体を効果的かつ確実に支持することができる姿勢補助用具を提案することを目的とする。
【解決手段】身体装着時に背中に位置される仰臥姿勢抑制部2と、前記仰臥姿勢抑制部2を身体に装着するためのベルト3・3とを具備し、身体に装着した状態で床面に横になった際に、床面と身体との間に仰臥姿勢抑制部2が位置されて、仰臥姿勢にならないように身体を支持する姿勢補助用具1において、前記仰臥姿勢抑制部2は、内部を中空とし空気が充填される中央層部20及び一対の側層部21・21が左右方向に連結され、隣接する層部20・21間の連結部23・23に、各層部20・21の内部空間を連通する連通孔部24が設けられ、横臥姿勢から仰臥姿勢に移動する際に、身体と床面との間で押圧された前記層部20・21の空気が前記連通孔部24を介して他の層部20・21に移動されて変形する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、姿勢補助用具に関し、より詳細には、身体に装着した状態で床面に横になった際に、仰臥姿勢にならないように身体を支持するための姿勢補助用具に関する。
【背景技術】
【0002】
床面に横になった状態では、個人差があるものの、仰臥姿勢・横臥姿勢・うつ伏せ姿勢などの体位がとられる。しかし、寝たきり状態のように長時間同じ姿勢で横になっていると、栄養不良や不潔などのために身体の一部分への血液の流れが不十分となって床ずれが生じやすい。これまでは、このような床ずれを予防するため、頻繁に体位を変えることができ横臥姿勢を維持することができるように、寝たきり状態の人に対して枕やクッション等があてがわれていた。
【0003】
また、近年、睡眠時無呼吸症候群と呼ばれる症状が注目されている。この睡眠時無呼吸症候群とは、睡眠中に何度も息が止まってはまた息を吹き返す症状(無呼吸)の総称であり、夜間睡眠中に目が覚め、充分な睡眠ができないため昼間に眠気が強くなる等の症状をきたす。睡眠中の無呼吸は、気道を確保する筋肉が睡眠により弛緩して、舌や軟口蓋が重力の影響で落ち込んで気道を塞いでしまうために起こる。息が止まらないまでも、狭くなった気道に無理やり空気を出入りさせることで気道の周りの粘膜が振動され、これが大きないびきの原因となる。そして、このような睡眠中の無呼吸やいびきを防止するためには、横臥姿勢で睡眠するとよいとされている。これは、横向きに寝ることで、舌や軟口蓋が重力の影響を受けなくなり、気道が塞がれなくなるからである。
【0004】
しかし、横臥姿勢は身体に負担が掛かるため、自力では長時間維持することが困難である。そのため、仰臥姿勢にならないように身体を支持して、横臥姿勢を容易に維持できる姿勢補助用具の開発が待望されているところであり、これまでにも関連する発明が多数提案されている。
【0005】
例えば、特許文献1及び特許文献2では、クッションや塩化ビニールシート等の仰臥姿勢抑制部を、肩掛け部材やウエストベルト等によって身体に装着するように構成された姿勢補助用具が提案されている(特許文献1又は特許文献2参照)。これらに類似する構成として、特許文献3には、仰臥姿勢抑制部としてボール等の仰臥邪魔体を保持・固定するようにした姿勢補助用具が開示されている(特許文献3参照)。
【0006】
さらに、特許文献4には、横臥姿勢を保持するために充分な大きさを有した隆起物と、隆起物の底部に関係付けられ隆起物より延出した部分に身体の荷重が掛かるベース部とで構成された姿勢補助用具が提案されている(特許文献4参照)。
【特許文献1】特開2001−61875号公報
【特許文献2】登録実用新案第3107745号公報
【特許文献3】特開2003−325564号公報
【特許文献4】特開2001−292867号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、上記特許文献に開示されるような従来の姿勢補助用具では、実際に使用すると、例えば、入眠時は横臥姿勢であったものの、仰臥姿勢抑制部の形状や大きさが不十分であったり、仰臥姿勢抑制部が背中の中心からずれてしまったりして、必ずしも仰臥姿勢にならないように横臥姿勢を確実に維持することができなかった。また、装着感が悪く、寝返りを打つことができないため睡眠自体が妨げられるといった問題もあった。
【0008】
そこで、本発明においては、前記従来の課題を解決するもので、仰臥姿勢にならないように身体を効果的かつ確実に支持することができる姿勢補助用具を提案することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0010】
すなわち、請求項1においては、身体装着時に背中に位置される仰臥姿勢抑制部と、前記仰臥姿勢抑制部を身体に装着するための装着部とを具備し、身体に装着した状態で床面に横になった際に、床面と身体との間に仰臥姿勢抑制部が位置されて、仰臥姿勢にならないように身体を支持する姿勢補助用具において、前記仰臥姿勢抑制部は、内部を中空とし空気が充填される層部が左右方向に複数連結され、隣接する層部間の連結部分に、各層部の内部空間を連通する連通孔部が設けられ、横臥姿勢から仰臥姿勢に移動する際に、身体と床面との間で押圧された前記層部の空気が前記連通孔部を介して他の層部に移動されて変形するものである。
【0011】
請求項2においては、前記仰臥姿勢抑制部は、身体装着時に背中の中央に位置される中央層部と、前記中央層部の両側に連結される少なくとも一対の側層部とを具備してなり、前記中央層部は、前記側層部よりも容積が大きいものである。
【0012】
請求項3においては、身体装着時に背中に位置される仰臥姿勢抑制部と、前記仰臥姿勢抑制部を身体に装着するための装着部とを具備し、身体に装着した状態で床面に横になった際に、床面と身体との間に仰臥姿勢抑制部が位置されて、仰臥姿勢にならないように身体を支持する姿勢補助用具において、前記仰臥姿勢抑制部は、内部を中空とし空気が充填された中央層部と、中央層部から左右方向へと徐々に容積が低減するように延出された側層部とが、内部空間が連続されるように一体形成され、横臥姿勢から仰臥姿勢に移動する際に、身体と床面との間で前記側層部が押圧され、中央層部が膨張変形することを特徴とする姿勢補助用具。
【0013】
請求項4においては、前記側層部の上部に切欠き部を設けたものである。
【0014】
請求項5においては、前記装着部は、身体の胴回りに装着するベルト型に形成され、一端が最外側の前記層部に固定されるものである。
【0015】
請求項6においては、前記仰臥姿勢抑制部は、内部空間の空気を給排気するための給排気手段が設けられるものである。
【発明の効果】
【0016】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
【0017】
請求項1に示す構成としたので、仰臥姿勢抑制部において仰臥姿勢に移ろうとする際の初動を抑えて横臥姿勢を保とうとする作用が働き、仰臥姿勢にならないように身体を効果的にかつ確実に支持することができる。
【0018】
請求項2に示す構成としたので、容積の大きい中央層部が障害物の役目を果たし、より効果的に横臥姿勢を維持することができる。
【0019】
請求項3に示す構成としたので、各層間を仕切る部材などが不要となって組立が容易となるとともに、各層部間の空気の移動がスムーズであるため、姿勢の切り換えに応じて仰臥姿勢を保持するような形状に変形させ易い。
【0020】
請求項4に示す構成としたので、切欠き部に肩甲骨部分が位置して、腕や形の動きを阻害することがなくなり、寝心地を悪くすることがない。
【0021】
請求項5に示す構成としたので、睡眠前の装着が容易であるとともに、装着時の肩こりや不快感がない。
【0022】
請求項6に示す構成としたので、給排気手段によって各層部内の空気を給排気でき、層部内を排気することで、携帯性が向上するとともに保管する際にも場所を取らず取り扱いが容易である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
次に、発明を実施するための最良の形態を説明する。
図1は本発明の姿勢補助用具の全体的な構成を示した斜視図、図2は同じく図1の姿勢補助用具の正面斜視図、図3は同じく図1の姿勢補助用具の下方斜視図、図4は姿勢補助用具の正面図、図5は同じく図4の姿勢補助用具の背面図、図6は姿勢補助用具の装着状態を表す斜視図、図7は同じく図6の姿勢補助用具の装着状態を表す図、図8は仰臥姿勢抑制部の働きを表す図、図9は別実施例の姿勢補助用具の正面図、図10は別実施例の姿勢補助用具の装着状態を表す図である。
以下、図2において紙面上下方向を姿勢補助用具1の上下方向とする。また、姿勢補助用具1を身体に装着した際に外側に向く面を姿勢補助用具1の表面とし、身体と対向する側の面を裏面とする。
【0024】
図1乃至図5に示すように、本実施例の姿勢補助用具1は、身体に着脱可能に構成されるとともに、身体に装着した状態で床面に横になると、床面と身体との間に位置されて、仰臥姿勢にならない身体を支持するように構成されている。具体的には、身体装着時に背中に位置される仰臥姿勢抑制部2と、この仰臥姿勢抑制部2を身体に装着するための一対のベルト3・3等とで構成されている。
【0025】
仰臥姿勢抑制部2は、全体として平面視略矩形に形成され、上下両端部に上水平部2a及び下水平部2bが形成され、左右両側部下方から上方に向けて幅方向に狭まるようにテーパ状の切欠き部2c・2cが形成されて、上水平部2aより下水平部2bの方が幅方向に長くなるように形成されている。このような形状とすることで、身体に装着しても、丁度切欠き部2c・2cが腋や上腕の下方に位置されて、腕の可動を妨げることがなく、装着時の不快感を低減することができる。また、下水平部2bの幅方向長さを確保することができるため、身体にしっかりと装着することができ、装着時のずれを防止することができる。但し、後述するように、この仰臥姿勢抑制部2の形状は、特に限定されない。
【0026】
また、仰臥姿勢抑制部2は、左右方向に複数の層部(本実施例では3つ)が連なるように連結されており、左右方向中央部に中央層部20が形成され、この中央層部20の左右両側に側層部21・21がそれぞれ連結されている。側層部21・21は、中央層部20側とは反対の側に取付部22・22が形成され、この取付部22・22にベルト3・3の一端がそれぞれ取り付けられている。
【0027】
中央層部20及び側層部21・21は、素材としてゴム等の伸縮性を有する非通気性の薄膜材料が用いられ、かつ、それぞれの内部が中空の袋体となるように成形されている。そして、中央層部20及び側層部21・21は、空気が充填されると膨張されるように形成されており、内部空間に空気が充填されて自由状態つまり内部が大気圧の状態で膨張される(図1乃至図3参照)。また、中央層部20と隣接する側層部21・21との境界部分には、上下方向に沿って連結部23・23が形成され、この連結部23・23を介して中央層部20の両側に側層部21・21が接続されている。
【0028】
連結部23・23の上下中途部には、隣接する中央層部20及び側層部21・21の内部空間を連通させる連通孔部24・24が設けられている(図4及び図5参照)。つまり、中央層部20及び側層部21・21に充填された空気は、連結部23・23を介して各層間を自在に移動可能とされている。本実施例では、中央層部20及び側層部21・21は、上述したように伸縮性を有する素材により形成されるため、予め充分な空気が充填されて中央層部20及び側層部21・21が膨張されていても、空気圧を受けて伸縮して容積が増減されるように構成されている。つまり、本実施例では、隣接する層部20・21から連通孔部24・24を介して内部空気が移動されることにより、各層部20・21の容積が空気圧によって増減されるように構成されている。
【0029】
中央層部20の表面下部であって左右方向略中央に、内部空間へ空気を給排給するための給排気手段としての給排気筒4が一体に取り付けられている。給排気筒4は、中央層部20の内部を外部空間と連通する通気孔が穿設され、一端側に鍔が設けられるとともに、栓が挿脱可能に取り付けられている。この給排気筒4を介して中央層部20内に空気が送られると、中央層部20から連通孔部24・24を介して側層部21・21内に空気が供給される。中央層部20及び側層部21・21内に空気が供給された状態で通気孔に栓を装着したときに、中央層部20及び側層部21・21は、それぞれが膨張した状態で維持される。
【0030】
中央層部20に空気が充填された状態では、中央層部20は断面略楕円形の棒状に膨張される。側層部21・21に空気が充填された状態では、上方の先細りした部分にまで空気が充填されて膨張される。そして、中央層部20は、側層部21・21よりも容積が大きくなるように構成されている。
【0031】
給排気筒4を介して中央層部20及び側層部21・21内の空気を排気するときは、上述した空気供給とは逆プロセスによって強制的に排気すなわち脱気される。そして、中央層部20及び側層部21・21内から空気が脱気された状態で通気孔に栓を装着したときに、中央層部20及び側層部21・21が脱気した状態(表面が平坦になる状態)で維持される。この状態の姿勢補助用具1は、コンパクトに自在に折りたたむことができる。このように、本実施例の姿勢補助用具1は、給排気筒4によって中央層部20及び側層部21・21内の空気を給排気可能に構成されているため、携帯性が向上するとともに保管する際にも場所を取らず取り扱いが容易である。
【0032】
さらに、仰臥姿勢抑制部2は、側層部21・21が連結部23・23から前後に可動されて中央層部20に対する相対位置を変位させることができるように構成されている(図3参照)。仰臥姿勢抑制部2は、中央層部20に対する側層部21・21の相対位置を変位させることで、全体として背中の断面形状に沿って表面が凸状となるように緩やかに湾曲させ、さらには側層部21・21の取付部22・22を近づけたり遠ざけたりして個人差に応じてその曲率を変更できるため、姿勢補助用具1を身体に装着した際のフィット感を向上させ、ずれを効果的に防止できる。
【0033】
ベルト3・3は、帯状に形成されており、一端が上述した取付部22・22に固定され、他端が取付部22・22から中央層部20の上下方向の中心軸に対して直交する方向に略水平に延設される。そして、各ベルト3・3は、貼付・剥離を繰り返し行うことができるシート状の連結部材30・30が他端側に取り付けられ(図4及び図5参照)、この連結部材30・30同士が貼付されることで、平面視環状に連結される(図7参照)。なお、連結部材30としては、例えばバックルや面状ファスナー等、ベルト3・3の遊端側を連結可能なものであれば特に限定されず、連結位置を調節可能としたものがより好ましい。本実施例では、連結部材30・30にシール面を設けて、ベルト3・3の任意の位置に取り付けることができるように構成されている。このような構成とすることで、姿勢補助用具1を装着する個人の身体的特徴に応じたベルト3・3の長さとすることができる。
【0034】
仰臥姿勢抑制部2の裏面であって、中央層部20、側層部21・21及びベルト3・3の固定側端部のそれぞれに滑り止め部材26・26・・・が取り付けられている(図5参照)。この滑り止め部材26は、スポンジ素材や、表面の摩擦係数が大きいゴム素材などから形成される。滑り止め部材26の形状や取付位置は、特に限定されないが、姿勢補助用具1を身体に装着した際に、身体表面と密接可能な形状や位置に取り付けられる。
【0035】
次に、姿勢補助用具1の使用状態について、以下に説明する。
図6及び図7に示すように、姿勢補助用具1は、各層部20・21に空気を充填した状態で、各層部20・21の空気圧がほぼ同じくなるように膨張され、仰臥姿勢抑制部2の上水平面2aを上にして、裏面が身体の背中に当接される。その際、中央層部20が背中の左右中央部に位置される。つまり、上水平部2aが左右の肩甲骨の間に位置する。ベルト3・3は、身体の腰上方に位置され、身体前方に延出して連結部材30・30にて連結され、仰臥姿勢抑制部2の裏面に取り付けられた滑り止め部材26・26・・・が身体(背中)に密着される。このようにして、姿勢補助用具1が身体に装着される。
【0036】
仰臥姿勢抑制部2の大きさは、成人男性が装着した時に下水平部2bが腰若しくは臀部上方に位置し、切欠き部2c・2cが腋下方に位置となる大きに形成されている。ただし、この仰臥姿勢抑制部2の大きさは、個人(例えば、男女の差、大人子供の差など)に応じて、数種類の型を用いることができる。
【0037】
図8(a)に示すように、姿勢補助用具1を装着した状態で横になった(横臥姿勢になった)際には、仰臥姿勢抑制部2が床面に対して略垂直となるように位置される。その際、床面に近い側の側層部21が、床面に押し付けられて容積が低減して変形される。
【0038】
図8(b)に示すように、横臥姿勢から仰臥姿勢へと姿勢が移ろうとする際には、床面と身体との間に側層部21が位置され、すなわち、身体が側層部21に乗る形となる。その際、側層部21が床面と身体との間で押圧されて内部の空気が側層部21に隣接する中央層部20若しくは他方の側層部21へと移動され、この側層部21の容積が低減するとともに、中央層部20及び他方の側層部21の容積が増大するように変形される。
【0039】
図8(c)に示すように、図8(b)に示す状態からさらに仰臥姿勢へと姿勢が移ろうとする際には、身体が側層部21に乗った状態から中央層部20の上に背中の中央部が乗りかかる。この状態において、中央層部20は、側層部21からの空気が充填されて容積が増大されていることから、この中央層部20が仰臥姿勢に移ろうとする際の妨げ(障害)となって、身体は自然と横臥姿勢(図8(a)又は図8(b))へと戻ろうとする。
【0040】
以上のように、本実施例の姿勢補助用具1は、装着した状態で横になり、横臥姿勢から仰臥姿勢へと移ろうとする際に、身体と床面との間で押圧された層部20・21の空気が連通孔部24を介して他の層部20・21に移動されて変形するため、仰臥姿勢抑制部2において仰臥姿勢に移ろうとする際の初動を抑えて横臥姿勢を保とうとする作用が働き、仰臥姿勢にならないように横臥姿勢で身体を確実に支持することができる。また、仰臥姿勢抑制部2が、空気が充填された層部20・21より形成されるため、横臥姿勢を無理に維持するのではなく寝返りを打つことも可能となり、装着することによる不快感や睡眠自体が妨げられるといった弊害を防止できる。さらに、姿勢変更に応じて身体が側層部21に乗る形となるため、横臥姿勢を安定できる。
【0041】
特に、本実施例では、身体と床面との間で仰臥姿勢抑制部2が押圧されると、床面に近い側の側層部21の容積が低減し、床面から遠い側の中央層部20及び側層部21の容積が増大されるため、姿勢変更に応じて仰臥姿勢抑制部2が自然に変形されて、容積が増大した中央層部20及び側層部21が横臥姿勢を維持するための障害物となる。つまり、身体の寝返り(姿勢変更)に応じて仰臥姿勢抑制部2が変形して、層部20・21間で内部空気が移動され、容積が増大した中央層部20が障害物の役目を果たして身体が元の姿勢(横臥姿勢)へと自然に戻るように作用して、横臥姿勢を確実に維持することができる。特に、本実施例では、中央層部20の容積が側層部21の容積よりも大きいため、より効果的に横臥姿勢を維持することができるのである。
【0042】
また、姿勢補助用具1は、ベルト3・3によって身体の胴回りに装着するように構成しているため、肩掛けベルト等のリュック型とは異なり、仰臥姿勢抑制部2のずれを防止しつつ、睡眠前の装着が容易であるとともに、装着時の肩こりや不快感がない。但し、姿勢補助用具1の装着部としては、ベルト3・3の他に肩ひもを設けてリュック型に構成したものでもよい。
【0043】
なお、本実施例の姿勢補助用具1は、仰臥姿勢抑制部2が中央層部20とその両側方に連結された一対の側層部21・21の三層に区画されて構成されているが、この構成に限定されず、より多くの層部に区画してもよい。但し、背中の左右中央に位置される中央層部20は必ず設けるのが好ましく、本実施例に示したように、少なくとも中央層部20に対して左右一対の側層部21・21が設けられるのが好ましい。
仰臥姿勢抑制部2は、複数の袋体からなる層部20・21が左右方向に連結されて構成されてもよく、一の袋体を連結部23・23・・・で区画するようにして層部20・21を設けて構成されてもよい。
姿勢補助用具1の装着位置は、上述したように、装着した時に下水平部2bが腰若しくは臀部上方に位置するだけでなく、この装着位置を逆にして上水平部2aが腰若しくは臀部上方に位置するようにして装着してもよい。つまり、装着方法は、個人の装着感に合わせて適宜調節変更することができる。また、身体の大きさや体重等に応じて姿勢補助用具1に入れる空気の量を調節することで、最も安定した横臥姿勢に調節することもできる。
【0044】
また、図9に示すように、連結部23・23に連通孔部24・24を設ける代わりに、連結部23・23に沿って、ゴム等の伸縮性を有する非通気性を有する素材より形成された仕切り部材31・31を仰臥姿勢抑制部2の内部空間に配置してもよい。この仕切り部材31・31は、中央層部20と側層部21・21との内部空間を仕切るように配設され、仕切り部材31・31を左右方向に貫通する連通孔部124・124・・・が長手方向に沿って複数穿設されている。上述した実施例と同様に、この仕切り部材31・31の連通孔部124・124・・・を介して隣接する層部20・21から内部空気が移動されることにより、各層部20・21の容積が空気圧によって増減されるように構成される。仕切り部材31・31としては、仰臥姿勢抑制部2の各層部20・21と同じ素材により形成することができる。
【0045】
このように仕切り部材31・31を設けることで、連通孔部124・124にかかる負荷による破損を低減できる。すなわち、連通孔部24・124には各層部20・21間を移動する空気圧によって大きな負荷がかかるが、この連通孔部124を単一部材である仕切り部材31に穿設することで、かかる負荷に耐えうる構造とすることができる。
【0046】
さらに、図10に示すように、仰臥姿勢抑制部102において、中央層部120から左右方向へと徐々に容積が低減して断面視略三日月形状となるように側層部121が延出されて、全体として中央層部120と側層部121とが一体形成されるように構成されてもよい。すなわち、上述した実施例と異なり、中央層部20と側層部21との内部空間が連続されるように、つまり連結部23や連通孔部24・124等が設けられることなく一体に連結して形成されている。この仰臥姿勢抑制部102は、表面と裏面との断面の曲率が異なるように(表面の曲率が大きくなるように)円弧状に湾曲形成され、左右方向略中央の容積が一番大きくなるように形成され、身体へのフィット感が高められるとともに仰臥姿勢への抑制力が向上されている。ベルト3は、延出された中央層部120の左右端部と接続されている。
【0047】
このように、仰臥姿勢抑制部102は、中央層部120を左右方向に延出して単一部材からなるように形成することで、上述した連結部23や仕切り部材31等が不要となって組立が容易となる。また各層部間の空気の移動がスムーズとなって、姿勢の切り換えに応じて仰臥姿勢を保持するような形状に弾性変形させ易い。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明の姿勢補助用具の全体的な構成を示した斜視図。
【図2】同じく図1の姿勢補助用具の正面斜視図。
【図3】同じく図1の姿勢補助用具の下方斜視図。
【図4】姿勢補助用具の正面図。
【図5】同じく図4の姿勢補助用具の背面図。
【図6】姿勢補助用具の装着状態を表す斜視図。
【図7】同じく図6の姿勢補助用具の装着状態を表す図。
【図8】仰臥姿勢抑制部の働きを表す図。
【図9】別実施例の姿勢補助用具の正面図。
【図10】別実施例の姿勢補助用具の装着状態を表す図。
【符号の説明】
【0049】
1 姿勢補助用具
2 仰臥姿勢抑制部
3 ベルト(装着部)
4 給排気筒(給排気手段)
20 中央層部
21 側層部
23 連結部
24 連通孔部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
身体装着時に背中に位置される仰臥姿勢抑制部と、前記仰臥姿勢抑制部を身体に装着するための装着部とを具備し、身体に装着した状態で床面に横になった際に、床面と身体との間に仰臥姿勢抑制部が位置されて、仰臥姿勢にならないように身体を支持する姿勢補助用具において、
前記仰臥姿勢抑制部は、内部を中空とし空気が充填される層部が左右方向に複数連結され、隣接する層部間の連結部分に、各層部の内部空間を連通する連通孔部が設けられ、横臥姿勢から仰臥姿勢に移動する際に、身体と床面との間で押圧された前記層部の空気が前記連通孔部を介して他の層部に移動されて変形することを特徴とする姿勢補助用具。
【請求項2】
前記仰臥姿勢抑制部は、身体装着時に背中の中央に位置される中央層部と、前記中央層部の両側に連結される少なくとも一対の側層部とを具備してなり、前記中央層部は、前記側層部よりも容積が大きいことを特徴とする請求項1に記載の姿勢補助用具。
【請求項3】
身体装着時に背中に位置される仰臥姿勢抑制部と、前記仰臥姿勢抑制部を身体に装着するための装着部とを具備し、身体に装着した状態で床面に横になった際に、床面と身体との間に仰臥姿勢抑制部が位置されて、仰臥姿勢にならないように身体を支持する姿勢補助用具において、
前記仰臥姿勢抑制部は、内部を中空とし空気が充填された中央層部と、中央層部から左右方向へと徐々に容積が低減するように延出された側層部とが、内部空間が連続されるように一体形成され、横臥姿勢から仰臥姿勢に移動する際に、身体と床面との間で前記側層部が押圧され、中央層部が膨張変形することを特徴とする姿勢補助用具。
【請求項4】
前記側層部の上部に切欠き部を設けたことを特徴とする請求項2又は請求項3に記載の姿勢補助用具。
【請求項5】
前記装着部は、身体の胴回りに装着するベルト型に形成され、一端が最外側の前記層部に固定されることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の姿勢補助用具。
【請求項6】
前記仰臥姿勢抑制部は、内部空間の空気を給排気するための給排気手段が設けられることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれかに記載の姿勢補助用具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2007−97885(P2007−97885A)
【公開日】平成19年4月19日(2007.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−292639(P2005−292639)
【出願日】平成17年10月5日(2005.10.5)
【出願人】(505374691)
【出願人】(505374705)
【Fターム(参考)】