説明

媒体の引き寄せ機構

【目的】 剛度の差がある通帳から伝票までを基準端まで引き寄せ可能な媒体の引き寄せ機構を提供する。
【構成】 単一のソレノイド23で媒体24の表面側より引き寄せローラ22を降下させると共に、同時に裏面側よりプレスローラ28を上昇させて、搬送路上の媒体24を挟持する。モータ21を回転駆動し、引き寄せローラ22を回転させることにより基準面11まで媒体24を引き寄せる。引き寄せローラ22には凸部を有し、対向しているプレスローラ28には凹部が設けられており、剛度の低い媒体24は挟持部が波形に変形させられる。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、印字装置等における印字媒体等を基準部に引き寄せる媒体の引き寄せ機構に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来より金融機関等で使用される通帳や磁気カード等の媒体に磁気記録用ヘッドによる磁気情報の書込みや印字ヘッドによる印字を行ったり、又は、これらの媒体に磁気記録されている情報を読み取ったりする場合には、まず媒体を基準部に引き寄せることが必要とされている。このような媒体の引き寄せ機構としては、例えば実開昭62−86354号公報に開示されるものがある。前記公報によれば、引き寄せローラの回転軸線は媒体の搬送方向に対して、平行に構築されているので、所定の引き寄せ位置まで搬送ローラにより搬送後、引き寄せローラを圧接し、続けて前記搬送ローラの圧接を解除してから引き寄せローラを回転させると、媒体は搬送方向と直角方向、すなわち媒体突当て基準部に引き寄せられるようになっている。この時の引き寄せローラの回転量は種々の媒体が基準部まで引き寄せられるまでに十分な量で一般的には3〜7mm程度に設定される。なお、基準部までの離れ量が前記引き寄せ量より少ない場合(一般的)には、媒体側面が基準部に衝突後、引き寄せローラが紙面上をスリップ(空転)するような圧接力に設定される。媒体の引き寄せが完了したことをセンサ等で確認後、搬送ローラで媒体を挟持圧接した後、引き寄せローラの圧接を解除する。次に搬送ローラを回転させて印字部等の次処理部に媒体が搬送される。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、前記圧接力の関係から引き寄せできる媒体種は限定されてしまうことになる。つまり、この構成では通帳に代表されるような冊子状のものから伝票類のような単紙(連量40〜55Kg程度)までを確実に引き寄せる場合において、綴じ部より開いて搬送された通帳の側面が媒体突当て基準部に密着するような圧接力、すなわち通帳において基準部に衝突するまではスリップが発生しない圧接力を設定すると、伝票のように剛度の低い媒体では引き寄せ時にスリップの発生より先に、媒体自身にめくれや折れが生じてしまい、次処理部への搬送時にジャムとなったり、印字ずれ等の問題が発生してしまうため、伝票等は引き寄せできないというものであった。また、伝票等を安全に引き寄せるような圧接力に設定すると通帳では引き寄せ不完全となり、印字位置ずれ及び磁気情報の読み取り不良や磁気記録位置ずれなどの問題が発生するものであった。本発明はこのような問題を解決するためになされたもので、伝票等の剛度の低い媒体においては、部分的に剛度を増加して引き寄せることができる媒体の引き寄せ機構を提供することを目的とする。
【0004】
【問題を解決するための手段】本発明は前記の問題点を解決するために、媒体突当て基準部を側面に有する媒体搬送路と、媒体の搬送方向と平行な回転軸を有する引き寄せローラを媒体に対して接離自在に設けると共に、その引き寄せローラを媒体に圧接後、回転することにより媒体の側端部を前述媒体突当て基準部まで引き寄せる媒体の引き寄せ機構において、前記引き寄せローラの外周部に摩擦部材を有する凸部を形成し、外周部には引き寄せローラの凸部よりやや幅広の凹部を1ヶ所以上有するプレスローラを前述ローラと対向して設けたものである。上述した構成を有する本発明は、図2に示すように伝票等の剛度の低い媒体を基準部まで引き寄せる際に引き寄せローラとプレスローラの挟持により挟持部を波形に変形させることが可能になり、引き寄せ動作を実行しても部分的に剛度が強化されるので折れやカールが発生しないため、搬送ジャムや印字ずれ等を防止できる。
【0005】
【実施例】以下図面に従って本発明の実施例について説明する。図1は本発明の実施例の引き寄せ機構の動作状態を示す正面図であり、図2は本発明の実施例の引き寄せ機構の概念を示す説明図である。また、図3は本発明の実施例の引き寄せ機構を示す平面図で、図4は図3の正面図であり静止状態を示している、図5は本発明の実施例の引き寄せ機構の動作状態を示す側面図である。なお、各図面に共通する要素には同一の符号を付す。
【0006】図において、22は引き寄せローラで外周部に摩擦部材を有し、本実施例では3ヶ所の凸部と該凸部の間に2ヶ所凹部で形成されていて、その外周面には回転軸と平行な方向に複数の溝22aを有している。該引き寄せローラ22は回転軸20に回転可能に支持されると共に、ギャ部22bを有し、ローラ支持金具19の一端に軸支され、ローラ支持金具19の他端にはモータ21のモータ軸が遊嵌されており、該他端は下方まで延在している延在部19aを有している。更にモータ軸にはモータギャ21aが固着され、このモータギャ21aにはアイドルギャ25a、及びアイドルギャ25bが順に噛み合い、前記ギャ部22aと噛み合うことにより、モータ21の回転が引き寄せローラ22に伝達されるように構成される。
【0007】アイドルギャ25aおよびアイドルギャ25bはローラ支持金具19に固着されたスタッド19bおよびスタッド19cにより回転可能に支持されており、スタッド19bの先端にはプレススプリング26が図示せぬフレーム等との間に架設されており、前記モータ軸を回転中心としてローラ支持金具19を右回転(時計方向)するように常時作用している。27はモータブラケットでありモータ21を支持するもので、図示しないフレームに固定されると共に、後述するソレノイド23やローラアーム30をも支持している。
【0008】28はプレスローラであり、回転軸29によりローラアーム30の先端部に取り付けられ、図5に示すように引き寄せローラ22の凸部に対向して、この凸部よりやや幅広の凹部を有している。該ローラアーム30は図5に示すようにU字形を形成し前記モータフレーム27に固着されたポスト27aにより回転可能に支持されている。ローラアーム30の他端はローラ支持金具19の延在部19aと接触可能なシャフト31が貫通しており、その中央部にはリンク32が遊嵌されている。該リンク32はソレノイド23と係合している。33はソレノイド23の動作量を規制するストッパであり、34はローラアーム30の一部より図示しない固定フレーム間に設けられたリセットスプリングであり、ソレノイド23の消磁状態ではローラアーム30を右回転(時計方向)するよう常時作用している。
【0009】リセットスプリング34の張力はプレススプリング26によるローラ支持金具19の右回転力を阻止できるように設定してあることはいうまでもない。よってソレノイド23の消磁状態では延在部19aとシャフト31が接触することによりローラ支持金具19が制止されている。10は媒体セット台であり、11は媒体突当て基準部でアッパガイド10aと媒体セット台10とで媒体24の搬送時の上下位置を規制しているものである。10bは媒体セット台10に設けられた角穴であり、前記プレスローラ28をソレノイド23の励磁により媒体搬送路に突出させる際の逃げ穴であり、10cも同様にアッパガイド10aに設けられた角穴であり引き寄せローラ22用の逃げ穴である。図4に示すようにソレノイド23の消磁状態では、引き寄せローラ22とプレスローラ28は角穴10b及び角穴10cより退避した位置に静止している。
【0010】以上の構成における作用について説明する。図示しない搬送手段にて媒体24をあらかじめ定められた引き寄せ位置で停止させ、搬送手段による媒体保持を一時開放してからソレノイド23を励磁すると、リンク32を介してローラアーム30がリセットスプリング34の張力に抗して左回転しプレスローラ28が角穴10bより媒体セット台10上に外周面の一部が突出する。一方、シャフト31も左方向に回動すると、ローラ支持金具19の延在部19aも追随してモータ軸を中心にプレススプリング26の張力により降下してアッパガイド10aの角穴10cより媒体搬送路に突出して媒体24をプレスローラ28とで挟持する。この挟持により伝票等の剛度の低い媒体では図2に示すように波状の変形が発生する。なお、通帳等の冊子類では剛度が高いため変形は発生しない。
【0011】次にモータ21を図1に示す矢印A方向に回転駆動すると、引き寄せローラ22が矢印B方向に回転され、プレスローラ28とで挟持した媒体24が矢印C方向に搬送開始され、媒体突当て基準部11に接触したことを図示しない検出器により検出するまで動作する。媒体24が媒体突当て基準部11に接触したことが確認されたら、モータ21の回転を停止すると共に媒体搬送時の保持手段を動作させてからソレノイド23を消磁するとリセットスプリング34の張力によりプレスローラ28は媒体セット台10より降下し退避する。一方、シャフト31が延在部19aと接触し、更にプレススプリング26の張力に打ち勝ってローラ支持金具19を左回転させて、先端の引き寄せローラ22をアッパガイド10aより上方に退避させる。これにより媒体24は開放され次処理部に搬送可能になる。
【0012】
【発明の効果】以上説明したように本発明は、媒体突当て基準部を側面に有する媒体搬送路と、媒体の搬送方向と平行な回転軸を有する引き寄せローラを媒体に対して接離自在に設けると共に、その引き寄せローラを媒体に圧接後、回転することにより媒体の側端部を前述媒体突当て基準部まで引き寄せる媒体の引き寄せ機構において、前記引き寄せローラの外周部に摩擦部材を有する凸部を形成し、外周部には引き寄せローラの凸部よりやや幅広の凹部を1ヶ所以上有するプレスローラを、該引き寄せローラと対向して設けて、媒体を挟持するため剛度の低い媒体に対しては部分的に剛度を強化させて確実に引き寄せることが可能となる。また前記引き寄せローラと前記プレスローラは同一の駆動源で媒体搬送路に突出し、および該媒体搬送路より退避可能に構成したことから、簡単な構造で複雑な制御が不要となると言う効果もある。
【0013】また、引き寄せローラの外周面には回転軸と平行な方向に複数の溝を設けることにより、媒体紙面に対しての喰い付きをより確実にすることができると言う効果もある。更に、通帳のような媒体では波形に変形はしないが、通帳自身での剛度が高いため引き寄せに対して何らの問題もなく、使用される媒体の種類によって凹凸幅や深さを設定し、更にプレスローラの圧力を決定すればよい。また本発明の実施例ではプレスローラには回転動力を与えていないが、動力を与えてもよいことは言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例の引き寄せ機構の動作状態を示す正面図である。
【図2】本発明の実施例の引き寄せ機構の概念を示す説明図である。
【図3】本発明の実施例の引き寄せ機構を示す平面図である。
【図4】本発明の実施例の引き寄せ機構を示す正面図である。
【図5】本発明の実施例の引き寄せ機構の動作状態を示す側面図である。
【図6】従来の引き寄せ機構の動作状態を示す正面図である。
【符号の説明】
10 媒体セット台
10a アッパガイド
10b 角穴
10c 角穴
11 媒体突当て基準部
19 ローラ支持金具
19a 延在部
21 モータ
21a モータギャ
22 引き寄せローラ
22b 溝
23 ソレノイド
24 媒体
26 プレススプリング
27 モータブラケット
28 プレスローラ
30 ローラアーム
31 シャフト
34 リセットスプリング

【特許請求の範囲】
【請求項1】 媒体突当て基準部を側面に有する媒体搬送路と、媒体の搬送方向と平行な回転軸を有するローラを媒体に対して接離自在に設けると共に、該ローラを媒体に圧接後、回転することにより該媒体の側端部を前記媒体突当て基準部まで引き寄せる媒体の引き寄せ機構において、前記ローラの外周部には摩擦部材を有する凸部を形成し、外周部には前記凸部よりやや幅広の凹部を1ヶ所以上有するプレスローラとを前記ローラと対向して設けると共に、前記ローラと前記プレスローラは同一駆動源で媒体搬送路に突出され、前記媒体を挟持および該媒体搬送路より退避可能な構成にしたことを特徴とする媒体の引き寄せ機構。
【請求項2】 前記ローラの外周面には回転軸と平行な方向に複数の溝を有することを特徴とする請求項1記載の媒体の引き寄せ機構。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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