説明

媒体処理装置

【課題】搬送ジャムを発生させることなく、安定した信頼性を得ることができ、しかも、容易に高さ調整できるようにする。
【解決手段】搬送路6の先端部が上下方向に揺動するようにプリンタユニット1Aを揺動自在に支持する支軸23と、プリンタユニット1Aの揺動端側に設けられ、フロントパネル1a及びプリンタユニット1Aの何れか一方のスライド移動によりフロントパネル1aのブラケット25のスリット部25a内に挿入されてガイドされることにより、プリンタユニット1Aを支軸23を中心に揺動させて搬送路6の先端部をフロントパネル1aの媒体出入口1bに対向するように位置決めする高さ調整ピン24とを具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、銀行等に設置されるATM装置に適用される媒体処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の媒体処理装置は、図2に示すように、その装置本体31のフロントパネル32に媒体出入口33を有し、装置本体31内にはスライドテーブル34上に載置されるプリンタユニット35を備えている。
【0003】
フロントパネル32の媒体出入口33から通帳などの媒体が挿入されると、プリンタユニット35の搬送路36内に取り込まれて搬送され、印字部37で情報が印字される。印字された通帳は逆送されて搬送路36から送り出され、フロントパネル32の媒体出入口33から放出される。
【0004】
ところで、フロントパネル32の媒体出入口33とプリンタユニット35の搬送路36の先端部の高さ寸法にはバラツキがある。このため、プリンタユニット35の設置に際しては、フロントパネル32の媒体出入口33に対しプリンタユニット35の搬送路36の先端部が対向するように位置決めする必要がある。
【0005】
そこで、従来においては,搬送路36を前後に分割し、前部側の搬送路36aを支軸40を介して回動自在に設け、支軸40を中心にして矢印で示すように揺動可能としている。そして、前部側の搬送路36aの先端側両部にそれぞれ高さ調整用のピン体41を突設している。また、フロントパネル32の内面側には媒体出入口33の近傍に位置して高さ調整用の一対のブラケット43が配設されている。この一対のブラケット43は媒体出入口33の幅寸法だけ離間して対向する状態で配設され、このブラケット43には高さ調整用のピン体41をガイドするための略V字状のスリット部43aが形成されている。
【0006】
フロントパネル32の媒体出入口33に対してプリンタユニット35の搬送路36の先端部を位置決めする場合には、スライドテーブル34をフロントパネル32の方向に向かってスライド移動させる。この移動により、プリンタユニット35の前部側の搬送部39aの高さ調整用のピン体41がブラケット43のスリット部43a内に挿入されてガイドされる。このガイドにより、前部側の搬送部39aが矢印で示すように支軸40を中心として上方或いは下方に揺動されて搬送路36の先端部がフロントパネル32の媒体出入口33に対向するように位置決めされることになる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、従来においては、前部側の搬送路36aを揺動させることにより、その先端部をフロントパネル32の媒体出入口33に対し位置決めしていたため、図3に示すように後部側の搬送部39bの搬送ガイド44との間に切れ目45が生じ、搬送ジャムの要因になっていた。
【0008】
また、ATM装置毎にフロントパネル32の媒体出入口33とスライドテーブル34との間に高さ寸法のバラツキがあるため、プリンタユニット35の設置毎に前部側の搬送路36aと後部側の搬送路36bのなす屈曲角度46が異なり、プリンタユニット35として安定した信頼性を得ることが困難になっている。
【0009】
なお、プリンタユニット35の全体を上下方向に移動してその搬送路36の先端部をフロントパネル32の媒体出入口33に位置決めすることも考えられている。
【0010】
しかしながら、この場合には、重量物であるプリンタユニット35を上下方向に平行を維持して高さ調整しなければならず、作業負荷が大きくなるという不都合があった。
【0011】
本発明は上記事情に着目してなされたもので、その目的とするところは、搬送ジャムを発生させることなく、安定した信頼性を得ることができ、しかも、容易に高さを調整できるようにした媒体処理装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の課題を解決するために、請求項1記載の発明は、フロントパネルに媒体出入口を有するとともに、前記フロントパネルの内面側に前記媒体出入口の近傍に位置して設けられるガイド体とを有する装置本体と、この装置本体内に設けられ、搬送路に沿って搬送される媒体に情報を印字したのち、該媒体を前記搬送路の先端部から前記フロントパネルの媒体出入口に送り出すプリンタユニットと、前記搬送路の先端部が上下方向に揺動するように前記プリンタユニットを揺動自在に支持する支持手段と、前記プリンタユニットの揺動端側に設けられ、前記フロントパネル及び前記プリンタユニットの何れか一方のスライド移動により前記フロントパネルのガイド体によってガイドされることにより、前記プリンタユニットを前記支軸を中心に揺動させて前記搬送路の先端部を前記フロントパネルの媒体出入口に対向するように位置決めする高さ調整部材とを具備したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、搬送ジャムを発生させることなく、安定した信頼性を得ることができ、しかも、容易に高さを調整できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の一実施の形態である媒体処理装置の内部構成を示す側面図。
【図2】従来の媒体処理装置の内部構成を示す側面図。
【図3】図2中のA部を拡大して示す図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施の形態である媒体処理装置としてのATM装置を示すものである。
【0016】
ATM装置は通帳や明細書等の媒体取引を行なうもので、その装置本体1のフロントパネル1aには媒体を出入させる媒体出入口1bが設けられている。装置本体1の内部には、プリンタユニット1Aが設けられている。プリンタユニット1Aの先端部には通帳の出入口とステイトメント用紙の出口を兼用するフェイシア部2が設けられている。このフェイシア部2は、後述する搬送路6aの先端部を構成している。
【0017】
プリンタユニット1A内の後部側には用紙装填部3が設けられ、この用紙装填部3にはロール状のサーマル用紙4が装填されている。サーマル用紙4の先端部は用紙装填部3から引き出されてサーマル用搬送手段5によって搬送路6aに沿って搬送される。搬送路6a中にはサーマル用紙4の搬送方向に沿って順次、サーマル印字部7、切断部(図示しない)が配設されている。
【0018】
また、プリンタユニット1A内には、通帳を搬送路6bに沿って搬送する通帳用搬送手段10が設けられている。搬送路6bは上記したサーマル用紙4の搬送路6aに接続され、通帳用搬送手段10は搬送路6aから送り出されてくるサーマル用紙4を搬送路6bに沿って搬送する搬送手段としても兼用されるようになっている。
【0019】
通帳用搬送手段10は搬送路6bに所定間隔を存して配設される複数個の搬送ローラ対11a〜11e、出入用ローラ対12、フィードローラ対15によって構成されている。通帳の搬送路6bにはシリアルヘッドとしてのドットヘッド9aを有するドット印字部9が配置され、搬送路6bはフェイシア部2に連通されている。
【0020】
上記した構成において、通帳に印字する場合には、通帳をフロントパネル1aの媒体出入口1bから挿入させてプリンタユニット1Aのフェイシア部2内に挿入させる。この挿入により出入用ローラ対12、搬送ローラ対11a〜11e、及びフィードローラ対15が正方向に回転駆動される。この回転により、通帳が搬送されてドット印字位置に到達すると、ドットヘッド9aが動作されて印字が行なわれる。印字が終了すると、出入用ローラ対12、フィードローラ対15、及び搬送ローラ対11a〜11eが逆方向に回転される。この逆回転により、通帳が逆送りされてフェイシア部2を介してフロントパネル1aの媒体出入口1bから放出される。
【0021】
ステイトメント用紙に印字する場合には、サーマル用紙4をプラテンローラの回転により搬送してサーマルヘッドの発熱により情報を印字する。この印字後、サーマル用紙4は切断部を通過してサーマル側フィードローラ対14によって挟持搬送され、所定量搬送されるとサーマル用紙4が所定寸法に切断されてステイトメント用紙が形成される。このステイトメント用紙は、フィードローラ対15、搬送ローラ対11a〜11e、及び出入用ローラ対12の逆回転によって搬送路6bに沿って搬送されてフェイシア部2を介してフロントパネル1aの媒体出入口1bから放出される。
【0022】
ところで、上記したフロントパネル1aの媒体出入口1bとプリンタユニット1Aの搬送路6bの先端部の高さ寸法にはバラツキがあり、プリンタユニット1Aを設置する際には、プリンタユニット1Aの搬送路6bの先端部の高さを調整してフロントパネル1aの媒体出入口1bに対向するように位置決めする必要がある。
【0023】
次に、フロントパネル1aの媒体出入口1bに対してプリンタユニット1Aの搬送路6bの先端部を位置決めする位置決め機構について説明する。
【0024】
上記したプリンタユニット1Aは支持ベース21を介してスライドテーブル22上に載置され、プリンタユニット1Aの両側面の下部側、即ち略重心の左右方向には支軸23が配設されている。プリンタユニット1Aは支軸23を介して支持ベース21に回動自在に支持され、支軸23を中心にして矢印で示すように全体的に上下方向に揺動可能になっている。また、プリンタユニット1Aの先端側の両側面部には調整ピン24がそれぞれ突設されている。
【0025】
一方、フロントパネル1aの内面側には媒体出入口1bの近傍に位置してガイド体としての一対のブラケット25が媒体出入口1bの幅寸法だけ離間して対向配置されている。ブラケット25には略V字状をなすようにスリット部25aが形成され、このスリット部25a内にプリンタユニット1Aの先端両側面部の調整ピン24が挿入されるようになっている。
【0026】
次に、フロントパネル1aの媒体出入口1bに対してプリンタユニット1Aの搬送路6bの先端部を位置決めする場合について説明する。
【0027】
この場合には、スライドテーブル22を矢印で示すようにフロントパネル1a側に向かってスライド移動させる。これにより、プリンタユニット1Aの先端部の調整ピン24がフロントパネル1a側の調整ブラケット25のスリット部25a内に挿入されてガイドされる。このガイドにより、プリンタユニット1Aが支軸23を中心にして先端部側を上方或いは下方に揺動させて搬送路6bの先端部であるフェイシア部2をフロントパネル1aの媒体出入口1bに対向するように位置決めする。このように、位置決めしたのちは、固定ネジ27a、27bでプリンタユニット1Aを支持ベース21に固定して取り付けを終える。
【0028】
上記したように、この実施の形態によれば、プリンタユニット1Aを全体的に揺動させることによりフェイシア部2を上下動させてその位置を調整してフロントパネル1aの媒体出入口1bに対向するように位置決めするため、従来のように搬送路を分断する必要がなく、搬送ジャムの発生を防止することができる。
【0029】
また、プリンタユニット1AをATM装置に設置する毎に、プリンタユニット1Aの搬送路を屈曲することがないため、安定した信頼性を得ることができる。
【0030】
さらに、プリンタユニット1Aの揺動支点をプリンタユニット1Aの前後方向の略重心位置の左右に配設するため、プリンタユニット1Aの重量に関係なく、小さな力で容易に揺動(高さ調整)させることができる。
【0031】
なお、上記一実施の形態では、スライドテーブル22を移動させてプリンタユニット1Aのフェイシア部2をフロントパネル1aの媒体出入口1bに対向するように位置決めしたが、これに限られることなく、スライドテーブル22を固定してフロントパネル1a側を移動させてフェイシア部2を位置決めするようにしてもよい。
【0032】
また、この発明は、上述した実施の形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上述した実施の形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより種々の発明を形成できる。例えば、上述した実施の形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除しても良い。
【符号の説明】
【0033】
1…装置本体、1A…プリンタユニット、1a…フロントパネル、1b…媒体出入口
、6…搬送路、21…支持ベース、22…スライドテーブル、23…支軸(支持手段)、
24…高さ調整ピン(高さ調整部材)、25…ブラケット(ガイド体)、25a…スリット、27…固定ネジ(固定具)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フロントパネルに媒体出入口を有するとともに、前記フロントパネルの内面側に前記媒体出入口の近傍に位置して設けられるガイド体とを有する装置本体と、
この装置本体内に設けられ、搬送路に沿って搬送される媒体に情報を印字したのち、該媒体を前記搬送路の先端部から前記フロントパネルの媒体出入口に送り出すプリンタユニットと、
前記搬送路の先端部が上下方向に揺動するように前記プリンタユニットを揺動自在に支持する支持手段と、
前記プリンタユニットの揺動端側に設けられ、前記フロントパネル及び前記プリンタユニットの何れか一方のスライド移動により前記フロントパネルのガイド体によってガイドされることにより、前記プリンタユニットを前記支軸を中心に揺動させて前記搬送路の先端部を前記フロントパネルの媒体出入口に対向するように位置決めする高さ調整部材とを具備したことを特徴とする媒体処理装置。
【請求項2】
前記支持手段は、前記プリンタユニットの略重心の左右を回動自在に支持する一対の支軸を有することを特徴とする請求項1記載の媒体処理装置。
【請求項3】
前記プリンタユニットは、支持ベースを介してスライドテーブル上に載置され、前記支持ベースに前記支軸を介して支持されることを特徴とする請求項1または2記載の媒体処理装置。
【請求項4】
前記プリンタユニットは、その搬送路の先端部が前記フロントパネルの媒体出入口に対して位置決めされたのちは、固定具で前記支持ベースに固定されることを特徴する請求項1乃至3のいずれか一項記載の媒体処理装置。
【請求項5】
前記フロントパネルのガイド体は、略V字状をなすスリット部を有し、前記スリット部内に前記プリンタユニットの高さ調整部材を挿入させて位置決めすることを特徴とする請求項1乃至4のいぞれか一項記載の媒体処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−59362(P2011−59362A)
【公開日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−208794(P2009−208794)
【出願日】平成21年9月10日(2009.9.10)
【出願人】(000003562)東芝テック株式会社 (5,631)
【Fターム(参考)】