説明

媒体搬送装置

【課題】媒体の搬送異常を発生させることなく、媒体に腰を付けて放出する。
【解決手段】駆動手段により回転する放出ローラ3およびその放出ローラ3の周面に接触するように配置されたテンションローラ4を媒体搬送路の中央部を挟んで配置し、テンションローラ4との接触面より媒体搬送路中央部側の放出ローラ3の端部の径を、該接触面より媒体搬送路の側面側の端部の径より大きくなるように形成し、その放出ローラ3とテンションローラ4で媒体を挟持して搬送するとともに該媒体を湾曲させて放出するようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紙幣、帳票等の媒体を搬送する媒体搬送装置に関し、特に搬送した媒体を放出して集積庫に集積させる媒体搬送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の媒体搬送装置は、媒体を搬送して集積庫に放出する場合、媒体の先端部が垂れ下がらないように媒体を放出する放出ローラにフランジを設けて放出する媒体を湾曲させて剛性を持たせることにより媒体に腰を付けるようにしているものがある(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
このように放出する媒体に腰を付ける従来の構成例を図4の従来例における媒体搬送装置の概略側面図および図5の従来例における媒体搬送装置の概略CC矢視図に基づいて説明する。
【0004】
図4および図5において、媒体搬送装置101は、媒体122を集積して収納する媒体集積庫102、その媒体集積庫102の入口に配置され、媒体120に腰を付けて媒体集積庫102へ放出する放出ローラ103、放出ローラ103の周面に接触するように配置され、放出ローラ103との間で媒体120を挟持するためのテンションローラ104、媒体120を案内する搬送ガイド105、および媒体集積庫102へ放出した媒体120の後端部を叩き落す羽根車107から構成されている。
【0005】
この放出ローラ103は、図5に示すように回転可能なシャフト106に2個取り付けられており、それぞれの放出ローラ103は中央部付近でテンションローラ104の周面に接触するように配置されている。また、それぞれの放出ローラ103の両側部の径は中央部の径より大きくなるように形成され、その放出ローラ103のテーパ状に形成された部位においてテンションローラ104との間で挟持した媒体120をW字状に撓ませて腰を付けるようにしている。
【0006】
このように放出する媒体120に腰を付けて図5の破線で示すように媒体121の先端部が垂れ下がらないようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平9−110260号公報(段落「0078」、図13)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上述した従来の技術においては、放出ローラ103およびテンションローラ104が剛性の強い媒体120を放出する場合、図5の符号130a、130bに示すように媒体120の端部が搬送ガイド105に当接してしまうことがあり、媒体の搬送異常が発生してしまうという問題がある。
【0009】
また、放出ローラ103およびテンションローラ104が重なった媒体120を放出する場合、図6に示すように放出ローラ103およびテンションローラ104で媒体120を挟持することができず搬送力が低下し、さらに搬送力がなくなった場合には媒体の搬送異常が発生してしまうという問題がある。
【0010】
本発明は、このような問題を解決することを課題とし、媒体の搬送異常を発生させることなく、媒体に腰を付けて放出することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
そのため、本発明は、2つのローラが対向配置されたローラ対が媒体の搬送方向と直交する方向に複数配置され、該ローラ対で媒体を挟持して搬送するとともに該媒体の搬送方向と直交する方向に湾曲させて放出する媒体搬送装置において、前記ローラ対は、駆動手段により回転する放出ローラと、前記放出ローラの周面に接触するように配置された押圧ローラとからなり、それぞれの前記ローラ対は、媒体搬送路の中央部を挟んで配置され、前記媒体搬送路の両側面側に配置された少なくとも2つの前記放出ローラは、前記押圧ローラとの接触面より媒体搬送路の中央部側の端部の径が該接触面より媒体搬送路の側面側の端部の径より大きくなるように形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
このようにした本発明は、媒体の搬送異常を発生させることなく、媒体に腰を付けて放出することができるという効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】第1の実施例における媒体搬送装置の概略BB矢視図
【図2】第1の実施例における媒体搬送装置の概略側面図
【図3】第2の実施例における媒体搬送装置の概略BB矢視図
【図4】従来例における媒体搬送装置の概略側面図
【図5】従来例における媒体搬送装置の概略CC矢視図
【図6】従来例における媒体搬送の説明図
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照して本発明による媒体搬送装置の実施例を説明する。
【実施例1】
【0015】
図2は第1の実施例における媒体搬送装置の概略側面図、図1は1の実施例における媒体搬送装置の概略BB矢視図あり、図1は図2における矢印BBが示す方向に見た図である。
【0016】
図2において、1は媒体搬送装置であり、紙幣等の媒体を1枚ずつ搬送して放出するものである。本実施例では、媒体搬送装置1は、搬送する媒体に腰を付けて放出し、放出した媒体を収納庫に集積するものとして説明する。
【0017】
2は媒体集積庫であり、搬送され放出された媒体を積層して収納する収納庫である。
【0018】
3は放出ローラであり、媒体集積庫2の上部の入口に配置され、図中矢印Aが示す方向へ回転することにより媒体を搬送するとともに搬送された媒体に腰を付けて媒体集積庫2へ放出するものである。
【0019】
4は押圧ローラとしてのテンションローラであり、放出ローラ3の周面に接触するように対向して配置され、放出ローラ3の回転に従動して回転し、搬送される媒体を放出ローラ3へ押圧して放出ローラ3との間で媒体を挟持して搬送するためのものである。この放出ローラ3およびテンションローラ4でひとつのローラ対を形成し、そのローラ対で媒体の一部を挟持して搬送するようになっている。
【0020】
5は搬送ガイドであり、搬送される媒体を案内するためのものであり、媒体が搬送される媒体搬送路(以下、「搬送路」という。)の上下面を形成するものである。
【0021】
6はシャフトであり、搬送路の下面を形成する搬送ガイド5の下側に設けられた放出ローラ3の回転軸であり、図示しないモータ等の回転駆動手段により回転可能に構成されている。このシャフト6に放出ローラ3が取り付けられ、放出ローラ3は搬送される媒体の下面に接触し、テンションローラ4は搬送される媒体の上面に接触して媒体を挟持するように構成されている。
【0022】
7は羽根車であり、ゴム等の弾性部材で構成され、シャフト6に取り付けられ、放出ローラ3とともに図中矢印Aが示す方向へ回転することにより媒体集積庫2へ放出した媒体の後端部を叩き落すためのものである。
【0023】
図1において、8は軸受けベアリングであり、シャフト6の軸受けである。9は搬送路フレームであり、搬送路の両側面を形成するとともに軸受けベアリング8を支持するものである。
【0024】
10はテンションローラ4により押圧された媒体と接触する放出ローラ3の中央部の接触面であり、媒体の搬送力を高めるためにゴム等の高摩擦部材で構成されている。
【0025】
放出ローラ3(3a,3b)およびテンションローラ4(4a,4b)はシャフト6の中央部近傍、すなわち搬送路の中央部を挟むように媒体が搬送される方向と直交する方向(図1における水平方向)に2個ずつ配置され、また羽根車7は放出ローラ3aおよびテンションローラ4aの両側に2個、放出ローラ3bおよびテンションローラ4bの両側に2個の合計4個(7a,7b,7c,7d)が配置されている。
【0026】
それぞれの放出ローラ3(3a,3b)は、テンションローラ4(4a,4b)との接触面10(10a,10b)より搬送路の中央部側の径32(32a,32b)が、その接触面10(10a,10b)より搬送路の側面側(搬送路フレーム9側)の径33(33a,33b)より大きくなるように形成され、その搬送路の中央部側の径は、放出ローラ3のテンションローラ4との接触面10の近傍からの距離が大きくなるに連れて徐々に大きくなるテーパ状に形成されている。また、それぞれの放出ローラ3(3a,3b)の接触面10の近傍の中央部および搬送路の側面側(搬送路フレーム9側)の径は略同じになっている。
【0027】
このように放出ローラ3(3a,3b)のテーパ状に形成された搬送路の中央部側の端部31(31a,31b)において、テンションローラ4との間で挟持した媒体20を搬送方向と直交する方向に湾曲、撓ませて腰を付けるようにしている。
【0028】
なお、本実施例では、放出ローラ3とその放出ローラ3に接触するテンションローラ4を搬送路の中央部を挟んで2つ配置するようにしたが、3つ以上配置するように構成してもよい。このとき、複数配置された放出ローラ3のうち、搬送路の側面に最も近い両側面側の少なくとも2つの放出ローラ3の接触面10より搬送路の中央部側の径32が、その接触面10より搬送路の側面側(搬送路フレーム9側)の径33より大きくなるように形成されていればよい。また、前記2つの放出ローラ3の接触面10の近傍の中央部および搬送路の側面側(搬送路フレーム9側)の径は略同じになるように形成する。
【0029】
上述した構成の作用について図1および図2に基づいて説明する。
【0030】
図示しない駆動手段によりシャフト6が図2における矢印Aが示す方向へ回転すると放出ローラ3および羽根車7は矢印Aが示す方向へ回転するとともにテンションローラ4は矢印Aが示す方向と反対の方向へ回転する。
【0031】
媒体が搬送路の上流(図2の左側)から搬送され、放出ローラ3およびテンションローラ4まで搬送されるとその媒体は放出ローラ3およびテンションローラ4で挟持される。
【0032】
図1は搬送された媒体20を放出ローラ3およびテンションローラ4で挟持している状態を示している。
【0033】
図1に示すように媒体20は、搬送路の下側に配置された放出ローラ3a,3bの搬送路中央部側の端部31a,31bにより突き上げられて搬送路の上側に撓み腰が付けられる。一方、放出ローラ3a,3bの接触面10近傍の中央部および搬送路の側面側(搬送路フレーム9側)の径は略同じになっているため、搬送路の側面側(搬送路フレーム9側)の媒体20の端部を搬送路の上方に突き上げることはない。
【0034】
したがって、搬送される媒体20の中央部を撓ませ腰を付けるとともに搬送路の側面側(搬送路フレーム9側)の端部は搬送路の上方に突き上げられない。
【0035】
このように放出ローラ3およびテンションローラ4で挟持された媒体20は、その側端部が搬送路の上方に突き上げられないため、搬送ガイド5に当接することなく円滑に媒体集積庫2へ放出されるとともに腰が付けられて円滑に媒体集積庫2に集積される。また、媒体20が搬送ガイド5に当接しないので搬送ガイド5を削ったり、傷つけたりすることもなくなる。
【0036】
さらに、搬送する媒体20がテンションローラ4により確実に放出ローラ3の接触面10に押し付けられるため、適切な搬送力で搬送されて円滑に媒体集積庫へ放出される。
【0037】
以上説明したように、第1の実施例では、それぞれの放出ローラの、テンションローラとの接触面より搬送路中央部側の径を、その接触面より搬送路側面側の径より大きくなるように形成したことにより、放出ローラおよびテンションローラで挟持された媒体の側端部を搬送ガイドに当接させることなく媒体の搬送異常を防止して円滑に媒体集積庫へ放出することができるとともにその媒体に腰を付けて円滑に媒体集積庫に集積することができるという効果が得られる。
【0038】
また、搬送する媒体をテンションローラにより確実に放出ローラの接触面に押し付けることができ、適切な搬送力で搬送して円滑に媒体集積庫へ放出することができるという効果が得られる。
【実施例2】
【0039】
図3は第2の実施例における媒体搬送装置の概略BB矢視図である。
【0040】
第2の実施例の構成は、第1の実施例の構成に上面ローラ11を加えた構成としている。なお、上述した第1の実施例と同様の部分は、同一の符号を付してその説明を省略する。
【0041】
図3において、11(11a,11b)は上面ローラであり、テンションローラ4(4a,4b)の回転軸と略同一軸となる回転軸に独立して自由に回転することができるように取り付けられたローラである。この上面ローラ11(11a,11b)は、テンションローラ4(4a,4b)と搬送路の側面(搬送路フレーム9)との間に配置され、搬送される媒体20の上面に当接し、その媒体20を放出ローラ3(3a,3b)側に案内誘導するためのものである。本実施例では、上面ローラ11a,11bはテンションローラ4a,4bと羽根車7a,7dとの間に配置されるものとする。
【0042】
上述した構成の作用について図3に基づいて説明する。なお、図示しない駆動手段によりシャフト6が図2における矢印Aが示す方向へ回転すると放出ローラ3および羽根車7は矢印Aが示す方向へ回転するとともにテンションローラ4は矢印Aが示す方向と反対の方向へ回転し、搬送路の上流から放出ローラ3およびテンションローラ4まで搬送された媒体が放出ローラ3およびテンションローラ4で挟持されるのは第1の実施例と同様である。
【0043】
図3は搬送された媒体20を放出ローラ3およびテンションローラ4で挟持し、また媒体20の上面を上面ローラ11で案内誘導している状態を示している。
【0044】
図3に示すように媒体20は、搬送路の下側に配置された放出ローラ3a,3bの搬送路中央部側の端部31a,31bにより突き上げられて搬送路の上側に撓み腰が付けられる。一方、放出ローラ3a,3bの接触面10近傍の中央部および搬送路の側面側(搬送路フレーム9側)の径は略同じになっているため、搬送路の側面側(搬送路フレーム9側)の媒体20の端部を搬送路の上方に突き上げることがなく、またその媒体20の端部は上面ローラ11a,11bに当接することにより放出ローラ3a,3bの方向へ案内誘導されて搬送路の上方に突き上げることがさらに抑制される。
【0045】
したがって、搬送される媒体20の中央部を撓ませ腰を付けるとともに搬送路の側面側(搬送路フレーム9側)の端部は搬送路の上方に突き上げられない。
【0046】
このように放出ローラ3およびテンションローラ4で挟持された媒体20は、その側端部が搬送ガイド5に当接することなく円滑に媒体集積庫2へ放出されるとともに腰が付けられて円滑に媒体集積庫2に集積される。
【0047】
以上説明したように、第2の実施例では、第1の実施例の効果に加え、搬送される媒体の端部を放出ローラ側へ案内誘導する上面ローラを、テンションローラより搬送路の側面側(搬送路フレーム側)に配置したことにより、腰の強い媒体やカール癖のある媒体であっても媒体の側端部を搬送ガイドに当接させることなく媒体の搬送異常を確実に防止して円滑に媒体集積庫へ放出することができるという効果が得られる。
【0048】
なお、第1の実施例および第2の実施例では、媒体を紙幣として説明したが、それに限られることなく、小切手や伝票等の帳票、入場券や乗車券等のチケット、印刷用紙等の紙葉状の媒体であってもよい。
【0049】
また、第1の実施例および第2の実施例では、放出ローラが搬送路の下側に配置されたものとして説明したが、それに限られることなく、放出ローラを搬送路の上側に配置するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0050】
1 媒体搬送装置
2 媒体集積庫
3 放出ローラ
4 テンションローラ
5 搬送ガイド
6 シャフト
7 羽根車
8 軸受けベアリング
9 搬送路フレーム
11 上面ローラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
2つのローラが対向配置されたローラ対が媒体の搬送方向と直交する方向に複数配置され、該ローラ対で媒体を挟持して搬送するとともに該媒体の搬送方向と直交する方向に湾曲させて放出する媒体搬送装置において、
前記ローラ対は、駆動手段により回転する放出ローラと、前記放出ローラの周面に接触するように配置された押圧ローラとからなり、それぞれの前記ローラ対は、媒体搬送路の中央部を挟んで配置され、
前記媒体搬送路の両側面側に配置された少なくとも2つの前記放出ローラは、前記押圧ローラとの接触面より媒体搬送路の中央部側の端部の径が該接触面より媒体搬送路の側面側の端部の径より大きくなるように形成されていることを特徴とする媒体搬送装置。
【請求項2】
請求項1の媒体搬送装置において、
少なくとも媒体搬送路の両側面側の2つの前記放出ローラは、前記押圧ローラとの接触面から媒体搬送路の側面側の端部に至るまでの径が前記接触面における前記放出ローラの径と略同径になるように形成されていることを特徴とする媒体搬送装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2の媒体搬送装置において、
前記押圧ローラと媒体搬送路の側面との間に、搬送される媒体の端部を前記放出ローラ側に誘導するローラを設けたことを特徴とする媒体搬送装置。
【請求項4】
請求項1、請求項2または請求項3の媒体搬送装置において、
前記放出ローラの前記押圧ローラとの接触面より媒体搬送路の中央部側の径は、前記接触面からの距離が大きくなるに連れて大きくなるように形成されていることを特徴とする媒体搬送装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−11855(P2011−11855A)
【公開日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−156558(P2009−156558)
【出願日】平成21年7月1日(2009.7.1)
【出願人】(000000295)沖電気工業株式会社 (6,645)
【Fターム(参考)】