説明

媒体集積装置

【課題】中央部が盛り上がるクセのついた紙幣を整列させて集積させるための手段を提供する。
【解決手段】紙幣収納部11と紙幣収納部の出入口側に対向配置されたフィードローラ13及びリバースローラ17と、回転軸4に固定され複数の羽根1aを設けた第1の羽根車1と、回転軸4に回転可能に嵌合されて複数の羽根2aを設けた第2の羽根車2とを備え、第1の羽根車1を紙幣の長手方向中央から所定の間隔をもって右側に配し、第2の羽根車2を紙幣の中央に対応する箇所から所定の間隔をもって左側に配し、長手方向の中央部が山形になるクセのついた紙幣を集積したときに、第1の羽根車1と第2の羽根車2によって紙幣の山形の頂点の左右を叩くことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紙葉状の媒体を集積する媒体集積装置に関し、特に集積した媒体のクセを押さえるための機構に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の媒体集積装置は、紙葉類収納部に放出する紙幣を舌片ローラに設けた舌片によって叩き落すと共に、その舌片で紙葉類収納部に集積した紙幣上面を押さえ付けることで集積している紙幣がクセで盛り上がってしまうのを押さえるようにしており、また分離ローラシャフトに設置される2つの分離ローラ間に中間舌片ローラを設け、その舌片で紙幣の中央部を叩くようにしている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−168895号公報(段落「0021」−段落「0023」、図5)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般に顧客は2つ折りの財布に紙幣を入れていることが多く、そのような紙幣は中央部がU字状に曲げられて財布に入っているために、財布から出したときは山形に湾曲したクセがついている。
【0005】
しかしながら、クセのついた紙幣の山形の頂点の位置は、財布に入っていた状態に関わり、紙幣の長手方向の真ん中から外れた位置が山形の頂点となることがある。そのため上述した従来の技術においては、中間舌片ローラの舌片で湾曲した紙幣の山形の頂点を叩くことができない場合があり、そのようなときは舌片でクセを押さえたときに紙幣が一方の端へとずれてしまい、そのまま後続の紙幣が集積すると乱雑な状態で集積していってしまう場合があるという問題がある。
【0006】
本発明は、上記の問題点を解決するための手段を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記課題を解決するために、媒体を収納する媒体収納部と、該媒体収納部の出入口側に対向配置されたフィードローラ及びリバースローラと、該リバースローラを取り付けた回転軸に固定され、複数の羽根を設けた第1の羽根車と、前記回転軸に回転可能に嵌合されて複数の羽根を設けた第2の羽根車と、前記第1の羽根車が停止状態から前記回転軸と共に一定量回転したとき前記第2の羽根車を前記回転軸と共に回転させる駆動手段を備え、前記第1の羽根車と第2の羽根車の一方を媒体の中央に対応する箇所から所定の間隔をもって右側に配し、他方を媒体の中央に対応する箇所から所定の間隔をもって左側に配し、長手方向の中央部が山形になるクセのついた媒体を集積したときに、前記第1の羽根車と前記第2の羽根車によって媒体の山形の頂点の左右を叩くことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
これにより、本発明は、中央部が山形となるクセのついた紙幣を集積し、羽根車の羽根で叩いたときに紙幣が一方の端へとずれてしまうことで紙幣が乱雑な状態で集積することを防止することができるという効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】第1の実施例を示す側面図
【図2】第1の実施例における羽根車機構の斜視図
【図3】第1の実施例における第2の羽根車の斜視図
【図4】第1の実施例における押さえ部材の斜視図
【図5】上述した構成による第2の羽根車2の動作を示す側面図
【図6】上述した構成による羽根車機構の動作を示す側面図
【図7】第1の実施例の正面図
【図8】紙幣の中央部を押し付ける第1の羽根車と第2の羽根車を示す説明図
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下に、図面を参照して本発明による媒体集積装置の実施例について説明する。
【実施例1】
【0011】
図1は実施例1の紙幣繰出し集積装置を示す側面図、図2は実施例1における羽根車機構の斜視図、図3は第1の実施例における第2の羽根車の斜視図、図4は第1の実施例における押さえ部材の斜視図である。
【0012】
まず、図2〜図4を用いて、媒体集積装置としての紙幣繰出し集積装置における後述のフィードローラ13の両外側に設けた第1の羽根車1と第2の羽根車2等からなる差動式の部分羽根車機構の構成について説明する。
【0013】
図2において1は第1の羽根車、2は第2の羽根車、3は押さえ部材、4は回転軸、25はピン(駆動部材)、26はスプリングである。
【0014】
第1の羽根車1は回転軸4の外周に嵌合されていて図示しないねじ等で回転軸4に固定され、回転軸4と一体に回転するものとなっている。
【0015】
第2の羽根車2は第1の羽根車1と所定の間隔をあけて離れるように回転軸4の外周に回転自在に嵌合させ、また押さえ部材3は第1の羽根車1と反対側の位置で第2の羽根車2と隣接するように回転軸4の外周に嵌合されていて図示しないねじ等で回転軸4に固定されており、更に第2の羽根車2を回転させるためのピン25は押さえ部材3との間に第2の羽根車2を挟むようにして回転軸4に固定されていて、第2の羽根車2は回転軸4に対して回転可能になっている。
【0016】
第1の羽根車1と第2の羽根車2には、それぞれ外周に約半分の範囲で複数枚の弾力性(可撓性)を有する羽根1a、2aが放射状を成すように一定の間隔で植設されており、そして第2の羽根車2には、図3に示したように第1の羽根車1との対向面にピン25に当接して係合する突起2b、突起2cが例えばほぼ180度の間隔で設けられている。
【0017】
この突起2bとピン25は第2の羽根車2を回転軸と共に回転させる駆動手段として働くものである。
【0018】
2dは第2の羽根車2の端面側の外周部で羽根2aと同位置に形成された半円形状のフランジ部であり、その直径が軸方向から見て後述する補助ローラ27の外周に対してオーバーラップする程度の長さとなるように形成される。
【0019】
尚、図では第1の羽根車1と第2の羽根車2の羽根1a、2aの数をそれぞれ4枚として示しているが、これに限られるものではない。
【0020】
押さえ部材3は、図4に示したように短筒状に形成され、第2の羽根車2に接する端面側の外周部に後述するリバースローラの外径とほぼ同径のほぼ半円形のフランジ部3aが形成されており、このフランジ部3aが回転軸4の外周において第1の羽根車1の羽根1aと同位置になるように押さえ部材3は回転軸4に固定されている。
【0021】
尚、フランジ部3aは回転軸4に形成してもよいので、その場合は押さえ部材3を省略することも可能である。
【0022】
スプリング26は第1の羽根車1と第2の羽根車2との間で回転軸の外周に嵌挿されており、その一端は第1の羽根車1に設けられた横穴に挿入固定され、他端は第2の羽根車2の突起2bに設けられた横穴に挿入固定されていて、第2の羽根車2に対する所定の付勢力を発生している。
【0023】
5は図示しないモータ(駆動源)の回転を回転軸4に伝える駆動ギアで、この駆動ギア5はワンウェイクラッチ6を介して回転軸4に取り付けられており、このワンウェイクラッチ6により時計回り方向の回転のみが回転軸4に伝達されるものとなっている。
【0024】
7は回転軸4に固定された位置出し部材で、外周部に部分的に突出形成された被検知部7aを有している。
【0025】
8は被検知部7aを光学的に検知する位置検知センサで、発光素子と受光素子を対向させ、この発光素子と受光素子間に被検知部7aが入ったとき、被検知部7aを検知するものとなっており、この位置検知センサ8の検知出力に基づいて、第1の羽根車1の停止位置の制御が行われるものとなっている。
【0026】
図5は上述した構成による第2の羽根車2の動作を示す側面図である。
【0027】
図5(a)は回転軸4を停止した状態を示し、この状態では第2の羽根車2はスプリング26による矢印A方向の付勢力により時計回り方向に回転し、第2の羽根車2の突起2cが回転軸4に固定されているピン25に当接した位置で停止している。
【0028】
この状態から図示しないモータにより駆動される駆動ギア5(図2参照)の回転力がワンウェイクラッチ6(図2参照)を介して回転軸4に伝わると、回転軸4が矢印Bで示したように時計回り方向に回転するが、このとき羽根2aが負荷を受けていなければ図5(b)に示したように突起2cがピン25に当接した状態を保ったまま第2の羽根車2は回転軸4の回転に追従して回転する。
【0029】
そして回転軸4と第2の羽根車2が回転を続けることで、回転方向の先端側の羽根2aが図示しない媒体(後述する紙幣等)と接触し、図5(c)に示したように負荷Fを受け、第2の羽根車2の回転は止まり回転軸4のみが回転するため、回転軸4と一体に回転するピン25は突起2cから離れて行く。
【0030】
但し、この場合、羽根2aが媒体と接触することによる負荷はスプリング26の付勢力より大きい。すなわち、羽根2aの弾性力(腰の強さ)はスプリング26の付勢力よりも強い必要がある。
【0031】
更に、回転軸4のみが回転すると、やがてピン25が第2の羽根車2の突起2bに突当り、これにより羽根2aにかかる負荷Fより大きな回転力が第2の羽根車2に加えられるので、第2の羽根車2は回転軸4と共に時計回り方向に回転する。
【0032】
図6は上述した構成による羽根車機構の動作を示す側面図である。
【0033】
図6(a)は回転軸4を停止した状態を示し、この状態では第1の羽根車1と第2の羽根車2の羽根1a、2aが回転軸4の外周のほぼ半分の範囲に位置しており、また前記図3で説明したようにスプリング26の付勢力により第2の羽根車2の突起2cがピン25に当接している。
【0034】
この状態から図示しないモータにより駆動される駆動ギア5(図2参照)の回転力がワンウェイクラッチ6(図2参照)を介して回転軸4に伝わると、回転軸4が時計回り方向に回転し、図6(b)に示したように回転軸4と一体に第1の羽根車1が回転する。
【0035】
このとき第2の羽根車2は、前記図3で説明したようにスプリング26の付勢力により、時計回り方向に回転して第1の羽根車1に追従する。
【0036】
この回転により第1の羽根車1と第2の羽根車2の羽根1a、2aが移動して行き、そして第1の羽根車1と第2の羽根車2が所定角度回転すると、図6(c)に示したように羽根1a、2aがその回転経路の途中に集積されている紙幣10に接触し、これにより羽根1a、2aは紙幣10から接触負荷を受ける。
【0037】
ここで、第2の羽根車2は、前記図5で説明したように羽根2aが負荷を受けると回転を停止し、回転軸4に固定されている第1の羽根車1のみが回転軸4と共に回転し、これにより第1の羽根車1の羽根1aが撓んで紙幣10との接触位置を通過する。
【0038】
また、このとき回転軸4に固定されているピン25も第2の羽根車2の突起2cから離れて行く。
【0039】
そして、回転軸4と共に第1の羽根車1が更に回転し、ピン25が第2の羽根車2の突起2bに突当る時点で第1の羽根車1と第2の羽根車2の羽根1a、2aが回転軸4の全周に亘って放射状に展開する状態となり、更に回転軸が回転することでピン25と突起2bにより第2の羽根車2に回転力が加わるため、第2の羽根車2は回転軸4及び第1の羽根車1と共に時計回り方向に回転する。
【0040】
この回転により紙幣10と接触している第2の羽根車2の羽根2aが撓んで紙幣10との接触位置を通過し、以後、回転軸4、第1の羽根車1、第2の羽根車2の回転に従って図6(d)に示したように羽根1aと2aが紙幣10を叩くように接触位置を通過する動作を繰返す。
【0041】
第1の羽根車1の回転は、回転軸4に固定された位置出し部材7の被検知部7aが位置検知センサ8で検知されたとき停止されることもできる。
【0042】
この回転停止はモータの回転を停止することにより行われ、このとき第1の羽根車1はすべての羽根1aが紙幣10と接触しない位置となるように制御される。
【0043】
第1の羽根車1の回転が停止した後、図6(e)に示したように紙幣10を第2の羽根車2は羽根2aと接触しないように下げると、第2の羽根車2は図4(e)の状態からスプリング26の付勢力により図6(f)に示したように時計回り方向に回転し、これにより突起2cがピン25に当接して停止することで図4(a)と同様の状態に戻る。
【0044】
このような羽根車機構の動作において、押さえ部材3は外周部半周に渡って設けたフランジ部3aが前記のように回転軸4の外周において第1の羽根車1の羽根1aと同位置になるように固定されているので、羽根1aと一体に回転する。
【0045】
次に図1に示した実施例1の紙幣繰出し集積装置の構成について説明する。
【0046】
図1(a)は繰出し時の状態、図1(b)は紙幣集積時の状態である。
【0047】
図1において10は媒体としての紙幣、11は紙幣収納部(媒体収納部)、12は紙幣収納部11内に上下動可能に設けられた紙幣集積用のステージである。
【0048】
13はフィードローラ、14はピッカローラで、このピッカローラ14はピッカアーム15の一端に回転可能に軸支され、ピッカアーム15の他端はフィードローラ13の回転軸にその回転を受けないように取り付けられている。
【0049】
16はフィードローラ13の回転軸に取り付けられた歯付きプーリとピッカローラ14の軸に取り付けられた歯付きプーリに掛け渡された無端状の駆動ベルトで、この駆動ベルト16によりフィードローラ13の回転がピッカローラ14に伝達されるものとなっている。
【0050】
17はリバースローラで、第1の羽根車1及び第2の羽根車2の回転軸4に取り付けられており、このリバースローラ17はフィードローラ13と共に紙幣収納部11の紙幣出入口側に対向設置されている。
【0051】
これら第1の羽根車1及び第2の羽根車2とリバースローラ17及びフィードローラ13の組み合わせについては後で図7により説明する。
【0052】
18はステージ12上に集積される紙幣10の集積方向と直交する方向を向くように紙幣収納部11の紙幣出入口側に設けられた搬送路で、第1の羽根車1及び第2の羽根車2とリバースローラ17は紙幣収納部11の出入口側でかつ搬送路18の下側に位置するように配置されており、紙幣収納部11の前部には第1の羽根車1及び第2の羽根車2の回転時に羽根1aと2a先端を紙幣収納部11内に入り込ませるための溝または穴等が設けられている。
【0053】
19は搬送路18を通過する紙幣10を光学的に検知する紙幣検知センサ、20は紙幣収納部11の紙幣出入口と対向するように紙幣収納部11の後部内面に設けたビルストッパ、21はステージ12上の最上位の紙幣10を光学的に検知する上面センサである。
【0054】
28はプレッシャローラで、リバースローラ17を挟んで紙幣収納部11と反対側の位置に配置され、フィードローラ13に当接している。
【0055】
尚、ビルストッパ20はフィードローラ13及びリバースローラ17により紙幣収納部11内に送り込まれる紙幣10を衝突させて止めるもので、図示しないスプリング等が設けられており、衝突した紙幣の運動エネルギーが吸収されるようになっている。
【0056】
図7は第1の実施例の正面図で、この図に示したようにフィードローラ13は回転軸22に2個設けられ、このフィードローラ13の下側に回転軸4に取り付けられたリバースローラ17が2個配置されている。
【0057】
フィードローラ13とリバースローラ17はそれぞれ外周全体に亘る溝を有しており、互いの溝により非接触状態で噛み合うようにしている。
【0058】
また、フィードローラ13の両外側には、図1では省略した補助ローラ27がフィードローラ13と所定の間隔をあけて回転軸22に固定されており、各々の補助ローラ27はフィードローラ13と同様の外径を有している。
【0059】
第1の羽根車1はリバースローラ17の両外側と、リバースローラ17間に位置するように1個ずつ設けられ、第2の羽根車2はリバースローラ17の両外側でかつ第1の羽根車の内側と、リバースローラ17間に位置するように1個ずつ設けられる。
【0060】
ここで、リバースローラ17の両外側に設ける第1の羽根車1及び第2の羽根車2は上述の図2〜図4による差動式の部分羽根車機構の一部である。またリバースローラ17間に配される第1の羽根車1及び第2の羽根車2についても、差動式の部分羽根車機構としているが、この場合には押さえ部材3を取り付けていないものとする。さらに、この場合には第2の羽根車2はフランジ部2dを有さないものとする。
【0061】
リバースローラ17の外側に設けられた各第2の羽根車2は補助ローラ27の外側近傍に位置し、更に第2の羽根車2の軸方向の移動を規制する2つの押さえ部材3はそれぞれ補助ローラ27の下側に位置して、そのフランジ部3が補助ローラ27の外側近傍において、補助ローラ27と非接触状態で噛み合うようにしている。
【0062】
ここで、第1、第2の羽根車1,2の羽根1a、2aの長さは、第1、第2の羽根車1,2の回転により羽根1a、2aの先端の軌跡が描く円の直径がリバースローラ17の外径より大きくなるように設定されている。
【0063】
これら第1の羽根車1、第2の羽根車2、及びリバースローラ17は、紙幣集積装置が利用される紙幣処理装置等において、取扱う紙幣10のうち、長手方向の長さが一番短い紙幣10の長手方向の長さの範囲内に配置することで、このような長手方向の長さが一番短い紙幣10に対しても第1の羽根車1と第2の羽根車2の羽根1aと2aにより叩いて引き寄せることができるようにする。
【0064】
リバースローラ17間に配される第1、第2の羽根車1,2は、搬送されてくる紙幣の長手方向中央に対応する箇所、つまりリバースローラ17間の中心から所定の間隔を持って第1の羽根車1を右側、また第2の羽根車2を左側に配置するようにし、これによって両羽根車1,2によって紙幣の中央部を叩くことができるようにする。
【0065】
尚、両羽根車1,2とリバースローラ17の配置及び個数は、これに限定されるものではない。
【0066】
上述した構成の作用について説明する。
【0067】
尚、以下に説明する各部の動作は、図示しない記憶部に格納されたプログラム(ソフトウェア)に基づいて図示しない制御部により制御されるものとする。
【0068】
まず、紙幣10の繰出し時には、回転軸4に固定されている位置出し部材7の被検知部7aが位置検知センサ8で検知された位置で第1の羽根車1が停止され、第1の羽根車1と第2の羽根車2の羽根1a、2a及び押さえ部材3のフランジ部3aが図1(a)に示したように回転軸4の外周のほぼ半分の範囲に位置して搬送路18中に入り込まないように退避している。
【0069】
この状態でステージ12を上昇させて、ステージ12上の最上位の紙幣10をピッカローラ14に当接させた後、フィードローラ13を図示しないモータにより時計回り方向に回転させると、フィードローラ13の回転が駆動ベルト16によりピッカローラ14に伝えられ、ピッカローラ14が時計回り方向に回転するため、紙幣10が紙幣収納部11から繰出されてフィードローラ13側に送られる。
【0070】
このとき、第1の羽根車1と第2の羽根車2およびリバースローラ17を取り付けた回転軸4にはワンウェイクラッチ6により前記モータの回転が伝わらないので、第1の羽根車1と第2の羽根車2及びリバースローラ17は回転せず、従って第1の羽根車1と第2の羽根車2の羽根1a、2a及び押さえ部材3のフランジ部3aは退避状態が保たれる。
【0071】
フィードローラ13側に送られた紙幣10は、フィードローラ13と停止しているリバースローラ17に挟持され、フィードローラ13の回転により搬送路18に送られた後、フィードローラ13とプレッシャローラ28間を通り、図示しない搬送手段により搬送されて行く。
【0072】
紙幣集積時には、ステージ12を最上位の紙幣10が上面検知センサ21に検知される位置に待機させ、図示しないモータにより回転軸22を反時計回り方向に回転させると、回転軸22に固定されているフィードローラ13及び補助ローラ27も反時計回り方向に回転させる。
【0073】
このとき、第1の羽根車1と第2の羽根車2及びリバースローラ17を取り付けた回転軸4に前記モータの回転が伝えられ、これにより第1の羽根車1とリバースローラ17は時計回り方向に回転し、また図5で説明したように第2の羽根車2も時計回り方向に回転する。
【0074】
そして、図6で説明したように第1の羽根車1と第2の羽根車2の羽根1a、2aが紙幣10に当接して、第2の羽根車2の回転が停止すると、第1の羽根車1のみが回転を続け、回転軸4に固定されているピン25が第2の羽根車2の突起2bに突当る時点で第1の羽根車1と第2の羽根車2の羽根1a、2aが回転軸4の全周に亘って放射状に展開し、更に図6(b)に示したように第1の羽根車1と共に第2の羽根車2も回転する。
【0075】
この状態で紙幣10が搬送路18を搬送されてくると、その搬送されてきた紙幣10はフィードローラ13とプレッシャローラ28間を通り、フィードローラ13とリバースローラ17に挟持され、フィードローラ13とリバースローラ17の回転により紙幣収納部11内に送り込まれる。
【0076】
このとき紙幣10のしわは図7(a)に示すようになる。すなわち第2の羽根車2の羽根2aおよびフランジ部2dが下向きのときは押さえ部材3のフランジ部3aが上向きとなって補助ローラ27とオーバーラップする。このフランジ部3aは補助ローラ27の外側にあるので、押さえ部材3のフランジ部3aが上向きのとき、紙幣10がフィードローラ13とリバースローラ17に挟持されると、紙幣10の長手方向両端部は押さえ部材3のフランジ部3aにより押上げられる。
【0077】
そして、回転軸4が回転を続けることで第1の羽根車1の羽根1aと押さえ部材3のフランジ部3aが下向きになってゆくが、その代わりに図7(b)に示すように第2の羽根車2が上向きとなり、第2の羽根車2と同位相に形成されたフランジ部2dも上向きとなって補助ローラ27とオーバーラップする。このフランジ部2dは補助ローラ27の外側にあるので、第2の羽根車2が上向きのとき、紙幣10の長手方向両端部はフランジ部2dにより押し上げられる。
【0078】
このように紙幣10の長手方向両端部は、紙幣10がフィードローラ13とリバースローラ17の回転により紙幣収納部11内に送り込まれる間、第2の羽根車2のフランジ部2dあるいは押さえ部材3のフランジ部3aにより常に押し上げられ、紙幣の短手方向にコシをつけた状態のまま紙幣収納部11内に放出される。
【0079】
紙幣収納部11内に送り込まれた紙幣10はビルストッパ20に衝突して止められ、落下するが、その際紙幣10の後端は図1(b)に示したように第1の羽根車1と第2の羽根車2の羽根1a、2aにより叩かれてステージ12上の紙幣10の上に押さえ付けられ、後続の紙幣10の集積の妨げにならないように整列させられる。
【0080】
ここで、図8は紙幣の中央部を押し付ける第1の羽根車と第2の羽根車を示す説明図であり、(a)は第1の羽根車の羽根が紙幣を押し付けたときの様子、(b)は第2の羽根車が紙幣を押付けたときの様子を示している。
【0081】
また、回転軸4の中央部に設けた第1の羽根車1と第2の羽根車2とによって集積する最上位の紙幣10の長手方向の中心の左右を交互に押さえ付け、つまり第1の羽根車1の羽根1aで紙幣10の長手方向中心の右側を押さえ付け、羽根1aが離れた後、第2の羽根車2の羽根2aで紙幣10の長手方向中心の左側を押さえ付けて羽根2aが離れると再び第1の羽根車1の羽根1aが紙幣を押さえ付ける。
【0082】
そのため、図8(a)の第1の羽根車1が回転することで、矢印a方向に示すように羽根1aが点線で示した紙幣の山形の頂点よりも左側を叩くと、紙幣10は矢印a´方向つまり紙幣長手方向の左向きにずれるが、その後図8(b)の第2の羽根車2が回転して、矢印b方向に示すように羽根2aが点線で示した紙幣の山形の頂点よりも右側を叩いて紙幣10を矢印b´方向つまり紙幣長手方向の右側に紙幣を左側にずらし、紙幣10の位置が一方に偏らないように矯正する。
【0083】
集積が終了すると、回転軸4に固定されている位置出し部材7の被検知部7aが位置検知センサ8で検知された位置で第1の羽根車1が停止するようモータが止められる。
【0084】
これにより図6で説明したように、スプリング26の付勢力により第2の羽根車2は時計回り方向に回転し、第1の羽根車1と第2の羽根車2の羽根1a、2a及び押さえ部材3のフランジ部3aが回転軸4の外周のほぼ半分の範囲に位置して紙幣収納部11内及び搬送路18中に入り込まないように退避する。
【0085】
以上説明したように、本実施例では、紙幣集積時にフィードローラとリバースローラにより挟持されて収納部に送り込まれて集積した紙幣の長手方向中心の左右側を第1の羽根車、第2の羽根車の羽根で交互に押し付けるので、2つ折りの財布に入っていたために中央部が山形になるクセのついた紙幣を叩いた際に、紙幣の山形の頂点から外れた一方側だけを羽根で押し付けてしまい紙幣の位置がずれてしまうことがなく、確実に紙幣を整列した状態で集積できるという効果が得られる。
【0086】
また、紙幣の中央部を第1の羽根車と第2の羽根車とで押し付けるので2つ折りの財布に入れられたU字にカールし、中央部が盛り上がっている紙幣を集積させた後、後続の紙幣を集積するときに、先行して集積した紙幣の盛り上がった中央部に衝突して紙幣集積に障害が発生するのを防止することができる。
【0087】
尚、本発明は上述した実施例に限られるものではない。
【0088】
例えば、上述した実施例による羽根車機構は、紙幣の繰出し及び集積を行う装置に限らず、債券、証書などの媒体を扱う装置にも適用可能であり、これらの媒体の集積のみを行う装置にも適用可能である。
【符号の説明】
【0089】
1 第1の羽根車
1a 羽根
2 第2の羽根車
2a 羽根
2b 突起
2c 突起
2d フランジ部
3 押さえ部材
3a フランジ部
4 回転軸
5 駆動ギア
6 ワンウェイクラッチ
7 位置出し部材
7a 被検知部
8 位置検知センサ
10 紙幣
11 紙幣収納部
12 ステージ
13 フィードローラ
14 ピッカローラ
17 リバースローラ
18 搬送路
21 上面センサ
22 回転軸
25 ピン
26 スプリング
27 補助ローラ




【特許請求の範囲】
【請求項1】
媒体を収納する媒体収納部と、該媒体収納部の出入口側に対向配置されたフィードローラ及びリバースローラと、
該リバースローラを取り付けた回転軸に固定され、複数の羽根を設けた第1の羽根車と、
前記回転軸に回転可能に嵌合されて複数の羽根を設けた第2の羽根車と、
前記第1の羽根車が停止状態から前記回転軸と共に一定量回転したとき前記第2の羽根車を前記回転軸と共に回転させる駆動手段を備え、
前記第1の羽根車と第2の羽根車の一方を媒体の中央に対応する箇所から所定の間隔をもって右側に配し、他方を媒体の中央に対応する箇所から所定の間隔をもって左側に配し、
長手方向の中央部が山形になるクセのついた媒体を集積したときに、前記第1の羽根車と前記第2の羽根車によって媒体の山形の頂点の左右を叩くことを特徴とする媒体集積装置。
【請求項2】
請求項1に記載の媒体集積装置において、
前記第1の羽根車と同様の第1の羽根車及び前記第2の羽根車と同様の第2の羽根車を、媒体の両端部に対応する箇所に配し、該第1の羽根車と該第2の羽根車とによって前記媒体収納部に収納した媒体の両端部を叩くことを特徴とする媒体集積装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2011−6250(P2011−6250A)
【公開日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−153893(P2009−153893)
【出願日】平成21年6月29日(2009.6.29)
【出願人】(000000295)沖電気工業株式会社 (6,645)
【Fターム(参考)】