説明

孔内透水係数計測装置及び孔内透水係数計測方法

【課題】本発明は、簡易な構成で、ボーリング孔内の所望の区間に透水係数を計測するための試験区間を設けることが可能な孔内透水係数計測装置及びその方法を提供する。
【解決手段】本発明に係る孔内透水係数計測装置10は、パッカーロッド20、延長ロッド30、接続ナット40、及び、これらロッド内に設置される各種ホースを延長する延長ホース50を構成部品として備え、ボーリング孔60の内部の所定区間を仕切るようにパッカー26を夫々配置するように、パッカーロッド20と延長ロッド30とを組み合わせて接続ナット40で接続し、かつ、ボーリング孔60の外からボーリング孔60の内部に設置される各種ホースに延長ホース50を夫々接続して、ボーリング孔60に設置される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、孔内透水係数計測装置及び孔内透水係数計測方法に係り、特に、ボーリング孔内における所望の区間に透水係数を計測するための試験区間を設けるための技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、地盤に削孔されたボーリング孔の孔内で地盤の透水係数を計測するにあたり、孔内長手方向の地下水の移動を遮断するパッカーを、孔内に複数設置して密閉区間を形成し、かかる密閉区間における水圧や地盤を流通する地下水の流量等を計測し、これら計測結果に基づいて透水係数を求める孔内透水試験に関する技術が提案されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、地下坑道の側壁に削孔されたボーリング孔内に挿入される3個以上の膨縮自在のパッカーと、坑道内の加圧流体から各パッカーに加圧流体を送給する加圧流体送給ホースと、坑道内の加圧源から各パッカーを通り各試験区間内にその注入口を向けて配設された複数本の注入ホースとを備えた孔内透水係数計測装置が開示されている。
【特許文献1】特許第2804995号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、ボーリング孔内で、例えば断層等による破砕帯が検出され、かかる破砕帯周辺の地盤の透水係数を計測したい場合がある。このような場合には、破砕帯周辺の地盤の間隙水圧や、地盤中を流れる水の流量を計測するために、破砕帯を挟むようにパッカーを設置し、密閉区間を形成する必要がある。
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載される孔内透水係数計測装置では、ボーリング孔内の指定する位置にパッカーを設置することは一切開示されていない。
【0006】
本発明は、上記の点に鑑みてなされたものであり、簡易な構成で、ボーリング孔内の所望の区間に透水係数を計測するための試験区間を設けることが可能な孔内透水係数計測装置及びその方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するため、ボーリング孔内の所定区間における地盤の透水係数を計測する孔内透水係数計測装置であって、
ロッド本体と、前記ロッド本体の周囲に設けられた膨縮自在なパッカーとを有する複数のパッカーロッドと、
前記パッカーに対して流体を導入又は導出するパッカー膨縮管と、
前記ロッド本体の前記パッカーの設けられた領域以外の外周部に一端側の管口が配置された透水係数を計測するための計測管と、
隣接する前記パッカーロッド間を接続する、一本又は互いに連結可能な複数本の第1の延長ロッドと、
前記ボーリング孔の孔口に最も近いパッカーロッドに接続されて、当該パッカーロッドを前記孔口に向けて延長する、一本又は互いに連結可能な複数本の第2の延長ロッドと、
前記パッカー膨縮管及び前記計測管の夫々に接続可能な延長管と、を備えることを特徴とする(第1の発明)。
【0008】
本発明の孔内透水係数計測装置によれば、これらの部品を組み合わせて接続し、ボーリング孔内に挿入することにより、指定位置にパッカーを設置できるので、ボーリング孔内に所望の透水係数を計測する試験区間を設けることができる。
【0009】
なお、パッカーを膨縮するためのパッカー膨縮管と、試験区間の透水係数を計測するための計測管とは、延長管が接続されてボーリング孔の外まで延長されることにより、ボーリング孔の外からパッカーの膨縮を制御し、又は透水係数を計測できることは勿論である。
【0010】
第2の発明は、第1の発明において、前記ボーリング孔内の所定区間を仕切る複数の位置に複数の前記パッカーが夫々配置されるように前記パッカーロッドと前記第1又は第2の延長ロッドとが組み合わされて接続されるとともに、前記パッカー膨縮管が、前記延長管が接続されることにより前記ボーリング孔の外まで延長され、前記所定区間内に前記計測管の前記一端側の管口が配置されるとともに、前記計測管が、前記延長管が接続されることにより前記ボーリング孔の外まで延長されて、前記ボーリング孔内に設置されることを特徴とする。
【0011】
第3の発明は、第1又は2の発明において、前記パッカーロッド、前記第1の延長ロッド、及び前記第2の延長ロッドの両端部は、その一端が右雄ネジ構造を有するとともに他端が左雄ネジ構造を有し、これらロッド間は、一端の内周が前記右雄ネジ構造と螺合する右雌ネジ構造を有するともに、他端の内周が前記左雄ネジ構造と螺合する左雌ネジ構造を有する接続ナットにより接続されることを特徴とする。
【0012】
本発明の孔内透水係数計測装置によれば、接続ナットを用いてロッド間を接続するときに、右雄ネジ構造のロッド端部を接続ナットの右雌ネジ構造側に配置し、左雄ネジ構造のロッド端部を接続ナットの左雌ネジ構造側に配置し、接続ナットの両端部に各ロッドの端部を螺合させながら、接続ナットを各ロッドと締結する方向に回転させることによって、接続ナットと両ロッドとを螺着することができる。すなわち、ロッドを回転することなく接続することができるので、ロッド間の接続の際にパッカー膨縮管、計測管或いは延長管がねじれたり、これら複数の管が絡んだりすることがないので、計測管を流通する水圧や流体流量等の計測が適正になされるとともに、ホースの破断等を防止することができる。
【0013】
第4の発明は、第1〜3の何れかの発明において、前記パッカーロッド、前記第1の延長ロッド、及び前記第2の延長ロッドのロッド本体は管形状を有し、前記パッカー膨縮管、前記計測管、及び前記延長管は、前記管形状を有するロッド本体の管内に設けられること特徴とする。
【0014】
本発明の孔内透水係数計測装置によれば、パッカー膨縮管、計測管及び延長管をロッドの管内に収納することができ、接続したロッドを孔内に挿入する際に生じる、パッカー膨縮管、計測管、又は延長管の孔壁との摩擦による破損や、これら管の孔壁との引っかかり等のトラブルを防止することができる。
【0015】
第5の発明は、第1〜4の何れかの発明において、前記パッカーロッド、前記第1の延長ロッド、及び前記第2の延長ロッドは接続されて前記ボーリング孔内に挿入されるにあたり、屈曲することがない程度の強度を有することを特徴とする。
【0016】
本発明の孔内透水係数計測装置によれば、例えば、水平方向に削孔されたボーリング孔の内部にパッカーロッド並びに、第1及び第2の延長ロッドを接続して挿入する場合に、これらロッドが屈曲することなく挿入することができるので、パッカーをボーリング孔内の所定の位置に確実に設置することができる。
【0017】
第6の発明は、ボーリング孔内の所定区間における地盤の透水係数を計測する孔内透水係数試験方法であって、ロッド本体と、前記ロッド本体の周囲に設けられた膨縮自在なパッカーとを有する複数のパッカーロッドと、前記パッカーに対して流体を導入又は導出するパッカー膨縮管と、前記ロッド本体の前記パッカーの設けられた領域以外の外周部に一端側の管口が配置された透水係数を計測するための計測管と、隣接する前記パッカーロッド間を接続する、一本又は互いに連結可能な複数本の第1の延長ロッドと、前記ボーリング孔の孔口に最も近いパッカーロッドに接続されて、当該パッカーロッドを前記孔口に向けて延長する、一本又は互いに連結可能な複数本の第2の延長ロッドと、前記パッカー膨縮管及び前記計測管の夫々に接続可能な延長管と、を用い、前記ボーリング孔内の所定区間を仕切る位置に複数の前記パッカーを配置するように前記パッカーロッドと前記第1又は第2の延長ロッドとを組み合わせて接続するとともに、前記パッカー膨縮管に、前記延長管を接続することにより前記ボーリング孔の外まで延長し、前記所定区間内に前記計測管の前記一端側の管口を配置するとともに、前記計測管に、前記延長管を接続することにより前記ボーリング孔の外まで延長して、前記ボーリング孔内に設置し、前記ボーリング孔内に配置された前記パッカーを、前記ボーリング孔の外から前記延長管及び前記パッカー膨縮管を介して流体を送給することにより膨張させて前記所定区間を密閉し、前記所定区間における水圧或いは地盤中を流通する流体の流量を、前記計測管及び延長管を介して前記ボーリング孔の外で計測し、これら水圧又は流体流量に基づいて前記所定区間内における地盤の透水係数を計測することを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、簡易な構成で、ボーリング孔内の所望の区間に透水係数を計測するための試験区間を設けることが可能な孔内透水係数計測装置及びその方法を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の好ましい一実施形態について図面に基づき詳細に説明する。
図1は、本実施形態に係る孔内透水係数計測装置10の構成部品を示す断面図である。
【0020】
図1に示すように、孔内透水係数計測装置10は、パッカーロッド20、延長ロッド30、これらロッド間を接続するための接続ナット40、及び、これらパッカーロッド20内に設置される各種ホースを延長する延長ホース50を構成部品として備える。
【0021】
パッカーロッド20は、円筒パイプ22の周囲にパッカー26を設けたものであり、パッカー26の外側部分の外周に2個の計測貫通孔24が設けられているとともに、パッカー26の内側部分にパッカー貫通孔25が設けられている。また、パッカーロッド20は、円筒パイプ22の一端部(図中上端部)からパイプ内を通り各計測貫通孔24に夫々接続された2本の計測ホース27と、同様に円筒パイプ22の端部からパイプ内を通りパッカー貫通孔25に接続されたパッカー膨縮ホース28とを有している。
【0022】
円筒パイプ22の両端部の外周は、その一端(図中上端)が左雄ネジ構造L1を有するとともに、他端(図中下端)が右雄ネジ構造R1を有しており、後述する接続ナット40を介することより、他のパッカーロッド20又は延長ロッド30と接続できるようになっている。
【0023】
パッカー26は、天然ゴム等の弾性材料からなる袋状を有するもので、パッカー膨縮ホース28を介してパッカー貫通孔25から空気又はガスを内部に供給し、又は内部から排出することにより、膨張及び収縮させることができるようになっている。
【0024】
計測ホース27及びパッカー膨縮ホース28としては、水圧や地下水流量を正確に計測するために一定の剛性を有する材質からなる管を用いる。なお、計測ホース27及びパッカー膨縮ホース28の接続側(図中上端)の端部も左雄ネジ構造L1を有する。
【0025】
延長ロッド30は、例えば、パッカーロッド20と同径の円筒パイプ32からなり、その両端部は、円筒パイプ22と同様にその一端(図中上端)が左雄ネジ構造L1を有するとともに、他端(図中下端)が右雄ネジ構造R1を有しており、接続ナット40によりパッカーロッド20又は他の延長ロッド30と接続できるようになっている。
【0026】
また、延長ロッド30には、予め多種類の長さのものが複数準備されており、それらとパッカーロッド20を多様に組み合わせて接続し、ボーリング孔の内部に挿入することにより、ボーリング孔の内部の所望の位置にパッカー26を配置できるようになる。
【0027】
また、上述のパッカーロッド20及び延長ロッド30の躯体部である円筒パイプ22及び32は、後述の接続ナット40により接続されてボーリング孔に挿入されるにあたり、屈曲することがない程度の強度を有することが好ましく、その材質として、例えば鋼又は塩化ビニル等が用いられる。
【0028】
接続ナット40は、その両端部のうち、一端(図中上端)の内周が上述のロッドの右雄ネジ構造R1と螺合する右雌ネジ構造R2を有するともに、他端(図中下側)の内周が上述のロッド左雄ネジ構造L1と螺合する左雌ネジ構造L2を有し、ロッド間を接続できるようになっている。
【0029】
この接続ナット40を用いてロッド間を接続するときには、右雄ネジ構造R1のロッド端部を接続ナット40の右雌ネジ構造R2側に配置し、左雄ネジ構造L1のロッド端部を接続ナット40の左雌ネジ構造L2側に配置して、接続ナット40の両端部に各ロッドの端部を螺合させながら、接続ナット40を各ロッドと締結する方向に回転させることによって、各ロッドを回転させることなく、接続ナット40と両ロッドとを螺着することができる。
【0030】
図2は、図1における接続ナット40と円筒パイプ22及び32との接続部を拡大した拡大断面図である。
【0031】
図2に示すように、円筒パイプ22及び32の先端部は、接続ナット40の内周に円滑に挿入できるようにガイドテーパー34が形成されている。
【0032】
また、接続ナット40の内周には、金属製又はゴム等の弾力性を有する素材からなり、その内径が円筒パイプ22及び32の外径よりもやや小さいOリング42が挿着されている。これにより、円筒パイプ22及び32の先端部が接続ナット40の内周に螺着されると、Oリング42が円筒パイプ22及び32の挿入により押し広げられ、円筒パイプ22及び32と接続ナット40とに密着して、円筒パイプ22及び32の内外の密閉性が保たれることから、円筒パイプ22及び32内への地下水の浸入を防ぐようになっている。
【0033】
延長ホース50(図1参照)は、ボーリング孔の内部に設置される各パッカーロッド20に備える計測ホース27及びパッカー膨縮ホース28と接続して、ボーリング孔の外まで延長するためのものである。その際、延長ホース50は、パッカーロッド20又は延長ロッド30のパイプの管内に設置される。
【0034】
また、延長ホース50は、その両端部が、例えば、延長ロッド30と同様に一端が右雄ネジ構造R1、他端が左雄ネジ構造L1を有し、図2で説明した接続ナット40と同様の構造を有するホース接続ナット52を用いることにより、延長ホース50と、計測ホース27若しくはパッカー膨縮ホース28間の接続、又は延長ホース50間の接続ができるようになっている。
【0035】
次に、このような構成部品からなる孔内透水係数計測装置10のボーリング孔への設置例について説明する。
【0036】
図3は、坑道内に削孔されたボーリング孔60への透水係数計測装置の設置状況を示す断面図である。
【0037】
図3に示すように、坑道から削孔されたボーリング孔60において、例えば、断層等による破砕帯62が検出され、かかる破砕帯62周辺の地盤の透水係数を計測したい場合がある。
【0038】
このような場合には、透水係数を求めるための物性である、破砕帯62周辺の地盤の間隙水圧や、かかる地盤中を流れる水の流量を計測するために、ボーリング孔60の内部に破砕帯62を挟むようにパッカー26を設置して密閉区間A(以下、試験区間Aという)を設ける必要がある。ここで、試験区間Aの位置及び長さは、破砕帯62の位置及び幅等に応じて適宜設定されるものである。
【0039】
本設置例では、上記説明した多種類の長さのパッカーロッド20と延長ロッド30とを複数準備し、これらのロッドを適宜組み合わせて接続し、ボーリング孔60の内部に挿入することにより、試験区間Aを仕切る位置にパッカー26を配置させる。
【0040】
具体的には、先ず、2本のパッカーロッド20を、2つのパッカー26間の間隔が、試験区間Aの長さとなるように、1本又は複数本の延長ロッド30を介して接続する。そして、これらパッカーロッド20の一方のパッカー26が破砕帯62より先端側に位置し、他方のパッカー26が破砕帯62より手前側に位置するように、当該接続したロッドに、1本又は複数本の延長ロッド30を接続してロッドを延長させながらボーリング孔60内に挿入していく。
【0041】
なお、上記ロッドの延長と同時に、パッカーロッド20内の各パッカー膨縮ホース28及び計測ホース27も同様に、延長ホース50を接続することにより、孔口から延長していく。
【0042】
このように孔内透水係数計測装置10は、ボーリング孔60の孔口から順次接続されながら孔内に延長されていくので、図3に示すような制限される坑道においても容易にその作業を実施することができる。
【0043】
なお、ロッド間の接続には接続ナット40を用いるが、接続ナット40の一方のネジは逆ネジとなるので、接続ナット40を一方向に回転させることによって、各ロッドを回転させることなく、接続ナット40と両ロッドとを螺着することができる。したがって、ロッド内部の各ホースが捩れたり絡まったりすることはない。
【0044】
図4は、図3の破砕帯周辺領域Xにおける孔内透水係数計測装置10の設置状況を示す拡大断面図である。
【0045】
図4に示すように、破砕帯周辺領域Xでは、破砕帯62を含む試験区間Aを仕切るようにパッカー26が夫々配置され、坑道から延長ホース50及びパッカー膨縮ホース28を通じて空気が各パッカー26内に封入されることにより試験区間Aを密閉する。また、試験区間A内には、パッカーロッド20の円筒パイプ22に設けられた2個の計測貫通孔24が配置される。
【0046】
なお、孔内透水係数計測装置10の先端にはロッド内に地下水等が浸入してこないように、例えば、専用キャップ54が設置される。専用キャップ54は、接続体の先端に配置されるロッドの円筒パイプ22の先端部における雄ネジ構造と螺合できるような雌ネジ構造を有しており、螺合後に地下水等がパイプ内部に浸入してこないような密閉機能を備えるものである。
【0047】
そして、このような状態において、坑道から計測ホース27及び延長ホース50を介して試験区間Aにおける地盤の間隙水圧又は地盤中を流通する流体の流量を計測し、これら間隙水圧又は流体流量に基づいて地盤の透水係数を求める。
【0048】
なお、透水係数を求めるための試験としては、一般的に孔内における透水係数試験として広く知られる、例えば、パルス試験、定流量試験、又は定圧試験等を実施することができる。
【0049】
パルス試験では、密閉された試験区間Aに繋がる計測ホース27を一時的に開放後ただちに閉塞するもので、定常状態である初期圧力へ回復する水圧の時間変化を計測する。定流量試験では、図3に示す坑道内に設置されたポンプにより一定流量で試験区間Aに注水したり、試験区間Aから揚水したりするときの試験区間Aの水圧を計測する。また、定圧試験では、図3に示す圧力制御装置により試験区間Aに一定の水圧を作用させたときの試験区間Aの流量を計測する。すなわち、これら試験により計測された水圧又は流量に基づいて透水係数が求められることになる。
【0050】
そして、試験終了後には、延長ホース50及びパッカー膨縮ホース28を通じてパッカー26内の空気を坑道に開放して収縮させ、挿入された孔内透水係数計測装置10を孔内から引き抜きながら順次解体していくことより撤去していく。
【0051】
以上説明した本実施形態の孔内透水係数計測装置10によれば、パッカーロッド20、延長ロッド30、これらロッド間を接続するための接続ナット40、及び、これらロッド内に設置される各種ホースを延長する延長ホース50を構成部品として備え、組み立ての際に延長ロッド30の接続数を変更したり、所定長の延長ロッド30を選択してパッカーロッド20と接続したりしてボーリング孔60の内部に挿入することにより、ボーリング孔60の内部の所望の位置にパッカー26を設置することができるので、ボーリング孔60の内部の所望の区間に透水係数を計測するための試験区間Aを簡単に設けることができる。
【0052】
また、本実施形態の孔内透水係数計測装置10によれば、パッカーロッド20及び延長ロッド30の両端部は、その一端が右雄ネジ構造R1を有するとともに他端が左雄ネジ構造L1を有し、これらロッド間は、一端の内周が右雄ネジ構造R1と螺合する右雌ネジ構造R2を有するともに、他端の内周が左雄ネジ構造L1と螺合する左雌ネジ構造L2を有する接続ナット40により接続されることにより、接続ナット40を用いてロッド間を接続するときに、右雄ネジ構造R1のロッド端部を接続ナット40の右雌ネジ構造R2側に配置し、左雄ネジ構造L1のロッド端部を接続ナット40の左雌ネジ構造L2側に配置し、接続ナット40の両端部に各ロッドの端部を螺合させながら、接続ナット40を各ロッドと締結する方向に回転させることによって、接続ナット40と両ロッドとを螺着することができる。すなわち、ロッドを回転することなく接続することができることから、ロッド間の接続に際にパッカー膨縮ホース28、計測ホース27或いは延長ホース50がねじれたり、又はこれら複数のホースが絡んだりすることがないので、計測ホース27を流通する水圧や流体流量等の計測が適正になされるとともに、ホースの破断等を防止することができる。
【0053】
また、本実施形態の孔内透水係数計測装置10によれば、パッカーロッド20及び延長ロッド30の躯体部は円筒パイプ22又は32であり、パッカー膨縮ホース28、計測ホース27、及び延長ホース50は、円筒パイプ22又は32の内部に設置されることにより、パッカー膨縮ホース28、計測ホース27及び延長ホース50を、接続したロッドを孔内に挿入する際に生じる、パッカー膨縮ホース28、計測ホース27、及び延長ホース50の孔壁との摩擦による破損や、これらホースの孔壁との引っかかり等のトラブルから防止することができる。
【0054】
また、本実施形態の孔内透水係数計測装置10によれば、パッカーロッド20及び延長ロッド30の円筒パイプ32は組み合わされて接続され、ボーリング孔60の内部に挿入されるにあたり、屈曲することがない程度の強度を有することにより、例えば、水平方向に削孔されたボーリング孔の内部にパッカーロッド20及び延長ロッド30を接続して挿入する場合に、これらロッドが屈曲することなく挿入することができるので、パッカー26をボーリング孔内の所定の位置に確実に設置することができる。
【0055】
なお、本実施形態に係る孔内透水係数計測装置10は、構成部品20〜54を組み合わせて接続しボーリング孔内に挿入することにより、ボーリング孔内に複数の試験区間を設けることもできる。
【0056】
また、透水係数を求めるための試験以外にも、複数に削孔されたボーリング孔60に夫々設置することにより、孔間の水圧の応答等を計測して孔間を結ぶ水みちを評価する孔間透水試験等に用いることもできる。
【0057】
また、本実施形態に係る孔内透水係数計測装置10では、パッカーロッド20、延長ロッド30の躯体部としてパイプを用いたが、これに限らず、筒状の形態を有しない、例えば棒状ものでもよい。この場合、計測ホース27、パッカー膨縮ホース28、及び延長ホース50は、ロッドの周面に沿うように設置されることになる。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】本実施形態に係る孔内透水係数計測装置10の構成部品を示す断面図である。
【図2】図1における接続ナット40と円筒パイプ22及び円筒パイプ32との接続部を拡大した拡大断面図である。
【図3】坑道内に削孔されたボーリング孔60への透水係数計測装置の設置状況を示す断面図である。
【図4】図3の破砕帯周辺領域Xにおける孔内透水係数計測装置の設置状況を示す拡大断面図である。
【符号の説明】
【0059】
10 孔内透水係数計測装置
20 パッカーロッド
22、32 円筒パイプ
24 計測貫通孔
25 パッカー貫通孔
26 パッカー
27 計測ホース
28 パッカー膨縮ホース
30 延長ロッド
34 ガイドテーパー
40 接続ナット
42 Oリング
50 延長ホース
52 ホース接続ナット
54 専用キャップ
60 ボーリング孔
62 破砕帯
A 試験区間
L1 左雄ネジ構造
L2 左雌ネジ構造
R1 右雄ネジ構造
R2 右雌ネジ構造
X 破砕帯周辺領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ボーリング孔内の所定区間における地盤の透水係数を計測する孔内透水係数計測装置であって、
ロッド本体と、前記ロッド本体の周囲に設けられた膨縮自在なパッカーとを有する複数のパッカーロッドと、
前記パッカーに対して流体を導入又は導出するパッカー膨縮管と、
前記ロッド本体の前記パッカーの設けられた領域以外の外周部に一端側の管口が配置された透水係数を計測するための計測管と、
隣接する前記パッカーロッド間を接続する、一本又は互いに連結可能な複数本の第1の延長ロッドと、
前記ボーリング孔の孔口に最も近いパッカーロッドに接続されて、当該パッカーロッドを前記孔口に向けて延長する、一本又は互いに連結可能な複数本の第2の延長ロッドと、
前記パッカー膨縮管及び前記計測管の夫々に接続可能な延長管と、を備えることを特徴とする孔内透水係数計測装置。
【請求項2】
前記ボーリング孔内の所定区間を仕切る複数の位置に複数の前記パッカーが夫々配置されるように前記パッカーロッドと前記第1又は第2の延長ロッドとが組み合わされて接続されるとともに、前記パッカー膨縮管が、前記延長管が接続されることにより前記ボーリング孔の外まで延長され、
前記所定区間内に前記計測管の前記一端側の管口が配置されるとともに、前記計測管が、前記延長管が接続されることにより前記ボーリング孔の外まで延長されて、前記ボーリング孔内に設置されることを特徴とする請求項1に記載の孔内透水係数計測装置。
【請求項3】
前記パッカーロッド、前記第1の延長ロッド、及び前記第2の延長ロッドの両端部は、その一端が右雄ネジ構造を有するとともに他端が左雄ネジ構造を有し、
これらロッド間は、一端の内周が前記右雄ネジ構造と螺合する右雌ネジ構造を有するともに、他端の内周が前記左雄ネジ構造と螺合する左雌ネジ構造を有する接続ナットにより接続されることを特徴とする請求項1又は2に記載の孔内透水係数計測装置。
【請求項4】
前記パッカーロッド、前記第1の延長ロッド、及び前記第2の延長ロッドのロッド本体は管形状を有し、前記パッカー膨縮管、前記計測管、及び前記延長管は、前記管形状を有するロッド本体の管内に設けられること特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の孔内透水係数計測装置。
【請求項5】
前記パッカーロッド、前記第1の延長ロッド、及び前記第2の延長ロッドは接続されて前記ボーリング孔内に挿入されるにあたり、屈曲することがない程度の強度を有することを特徴とする請求項1〜4の何れかに記載の孔内透水係数計測装置。
【請求項6】
ボーリング孔内の所定区間における地盤の透水係数を計測する孔内透水係数試験方法であって、
ロッド本体と、前記ロッド本体の周囲に設けられた膨縮自在なパッカーとを有する複数のパッカーロッドと、
前記パッカーに対して流体を導入又は導出するパッカー膨縮管と、
前記ロッド本体の前記パッカーの設けられた領域以外の外周部に一端側の管口が配置された透水係数を計測するための計測管と、
隣接する前記パッカーロッド間を接続する、一本又は互いに連結可能な複数本の第1の延長ロッドと、
前記ボーリング孔の孔口に最も近いパッカーロッドに接続されて、当該パッカーロッドを前記孔口に向けて延長する、一本又は互いに連結可能な複数本の第2の延長ロッドと、
前記パッカー膨縮管及び前記計測管の夫々に接続可能な延長管と、を用い、
前記ボーリング孔内の所定区間を仕切る位置に複数の前記パッカーを配置するように前記パッカーロッドと前記第1又は第2の延長ロッドとを組み合わせて接続するとともに、前記パッカー膨縮管に、前記延長管を接続することにより前記ボーリング孔の外まで延長し、
前記所定区間内に前記計測管の前記一端側の管口を配置するとともに、前記計測管に、前記延長管を接続することにより前記ボーリング孔の外まで延長して、前記ボーリング孔内に設置し、
前記ボーリング孔内に配置された前記パッカーを、前記ボーリング孔の外から前記延長管及び前記パッカー膨縮管を介して流体を送給することにより膨張させて前記所定区間を密閉し、
前記所定区間における水圧或いは地盤中を流通する流体の流量を、前記計測管及び延長管を介して前記ボーリング孔の外で計測し、これら水圧又は流体流量に基づいて前記所定区間内における地盤の透水係数を計測することを特徴とする孔内透水係数計測方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−52328(P2009−52328A)
【公開日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−221278(P2007−221278)
【出願日】平成19年8月28日(2007.8.28)
【出願人】(000000549)株式会社大林組 (1,758)
【Fターム(参考)】