説明

学習具

【課題】透明着色シートを被せていない状態で透明の色の塗膜を転写した文字が判読しにくい状態であり、透明着色シートを被せている状態で透明な色の塗膜を転写した文字が判読しやすい状態となる学習具を提供することである。
【解決手段】塗膜転写具と透明着色シートとの組からなる学習具であって、塗膜転写具に装填される感圧転写テープは、基材テープ上に塗膜を形成したものであり、感圧転写テープの塗膜は、塗膜転写具を用いて転写されるものであり、塗膜には、透明着色のベタでない模様からなる印刷層を有しており、印刷層の色と透明着色シートの色が、マンセル表色系の色相環において、同色を含み、20分割での隣2色以内である類似色であることを特徴とする学習具。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感圧転写テープの塗膜を転写する塗膜転写具と透明着色シートとの組からなる学習具であり、文字上に転写した塗膜に透明着色シートを被せる方法による暗記学習に用いるものである。
【背景技術】
【0002】
英単語や歴史的出来事の年号などを記憶する学習、いわゆる暗記学習において、一般的にはマーカーペンが使用されることが多い。例えば、覚えたい英単語を緑色のマーカーペンでマーキングし、その上に緑色と補色関係にある赤色の透明着色シートを被せる方法が用いられる。この場合、緑色のマーカーペンでマーキングされた英単語は、赤色の透明着色シートを被せる前は判読できる状態であるが、赤色の透明着色シートを被せるとマーキングした部分が暗転し判読しにくい状態となる。したがって、赤色の透明着色シートを被せた状態で暗転している部分に隠れた英単語を思い出し、透明着色シートを取ることによって思い出した英単語が正解であるかどうかを確認することにより暗記学習するというものである。
【0003】
マーカーペンの場合、マーキングした部分のインキが紙に浸透し、紙の裏側でも色が見えてしまう不具合が起こることがあった。また、マーキングする印刷物の種類によっては、マーキングした文字が滲んでしまう不具合が起こることもある。
【0004】
これらの不具合を解消するために、特開平09−175719号公報、特開平09−179483号公報、特開平11−048689号公報のように、マーカーペンではなく、感圧転写テープに形成した補色関係にある透明な色の塗膜を塗膜転写具を用いて転写するものがある。この転写した透明な色の塗膜であれば、インキの紙への浸透や、紙の裏側で色が見えることや、文字が滲んでしまうことなどの不具合は起こらない。
【0005】
また、特開2009−059027号公報のように、転写する塗膜全面が補色関係にある透明な色に着色されているのではなく、転写する塗膜が塗膜全面でない模様部分だけであり、その模様が補色関係にある透明な色に着色されている学習具も開発されている。この模様に透明着色シートを被せると、補色関係から模様が暗転して、目視不能な隠蔽模様となるものである。
【0006】
この目視不能な隠蔽模様に関連して、透明でない塗膜である感圧修正テープにおいて、このような目視不能な隠蔽層を形成しているものとして、特開2010−012671号公報や特開2010−012734号公報がある。これらは透明でない隠蔽層や印刷層として、転写された下の文字が目視不能になる模様となっているものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平09−175719号公報
【特許文献2】特開平09−179483号公報
【特許文献3】特開平11−048689号公報
【特許文献4】特開2009−059027号公報
【特許文献5】特開2010−012671号公報
【特許文献6】特開2010−012734号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、これらの学習具であると、暗記したい文字が判読しにくい状態は、透明着色シートを被せた状態であり、暗記したい文字以外の他の文字も読みにくい状態であった。これとは逆に、透明着色シートを被せた状態において、暗記したい文字が読みやすい状態となり、シートがない状態において、暗記したい文字が判読しにくい状態にすることが求められていた。本発明はこれを実現したものである。
【0009】
本発明が解決しようとする課題は、透明着色シートを被せていない状態で透明の色の塗膜を転写した文字が判読しにくい状態であり、透明着色シートを被せている状態で透明な色の塗膜を転写した文字が判読しやすい状態となる学習具を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の学習具は、塗膜転写具と透明着色シートとの組からなる学習具であって、塗膜転写具に装填される感圧転写テープは、基材テープ上に塗膜を形成したものであり、感圧転写テープの塗膜は、塗膜転写具を用いて転写されるものであり、塗膜には、透明着色のベタでない模様からなる印刷層を有しており、印刷層の色と透明着色シートの色が、マンセル表色系の色相環において、同色を含み、20分割での隣2色以内である類似色であることを特徴とするものである。
【0011】
印刷層は、透明着色でベタでない模様がある。これによって、文字上にこの印刷層を有する塗膜を転写すると、塗膜が被された文字が判読しにくくなるものである。これは、ベタでない模様であり、それに色があるから、判読しにくくなるものと思われる。色は、白灰黒のような濃淡ではない色のことである。透明着色とは色はついているが透明なことである。透明着色シートは文字などに被せても、文字が目視でき判読することができるものである。
【0012】
なお、判読しにくいとは、文字を目視することはできても、読めない状態、明確に読むことが難しい状態、または、辛うじて読むことができる状態であり、もしくは、文字を目視することすらできない状態である。文字を目視できない状態は、文字なのかそうでないのかがわからない状態であり、目視不能と同じである。
【0013】
透明着色のベタでない模様からなる印刷層を有している塗膜が被された文字が判読しにくくなるのは、明確にはわかっていないが、次のようなコントラストが原因ではないかと推測している。
【0014】
白い紙に黒い文字があると、白と黒の明度のコントラスト(輝度のコントラスト)によって、黒文字として認識される。そこに、透明着色が被さると、白と黒のコントラストが弱められ、黒文字の認識が弱められる。そして、ベタでない模様があると、白地と透明着色との間でのコントラスト(色のコントラスト)が生じて、そちらでの認識が強められる。これらコントラストの強弱が生じることによって、文字が判読しにくくなっているのではないかと推測している。
【0015】
また、透明着色シートは模様でなくベタであるので、白地と色との境界はシート端だけであり、実際に文字を目視するのはシート内であるので、上記のようなコントラストの強弱が生じていないと考えられる。それゆえ、透明着色シートを被せることによってコントラストが弱められることはあっても、判読しにくくなるまでにはいたっていない。
【0016】
さらに、透明着色シートの色が、塗膜の印刷層の透明着色に近い類似色であると、透明着色シートを文字に被せることによって、文字上に転写したことによって強められた白地と透明着色との間でのコントラストが弱められ、文字が判読しにくい状態が弱められ、判読できるようになるのではないかと考えている。
【発明の効果】
【0017】
本発明により、透明着色シートを被せていない状態で透明の色の塗膜を転写した文字が判読しにくい状態であり、透明着色シートを被せている状態で透明な色の塗膜を転写した文字が判読しやすい状態となる学習具を提供することができるようになった。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】各状態における説明図である。
【図2】本発明の使用例である。
【図3】マンセル表色系の20分割色相環の説明図である。
【図4】感圧転写テープの断面図である。
【図5】点で印刷した印刷部分を拡大した説明図である。
【図6】塗膜転写具の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
塗膜転写具は、感圧転写テープの塗膜を転写することができるものである。基本的な構成として、感圧転写テープを繰り出す繰出しリールと巻き取る巻取りリール、それらを連動させる連動機構、感圧転写テープに圧力をかけて塗膜を転写する転写ヘッドからなり、これらが筐体に収納されていて把持でき、片手で転写できるものである。これが基本構成であるが、これに限定されるものではない。塗膜を転写できるものであればよい。
【0020】
感圧転写テープは、基材テープ上に転写する塗膜を形成しているものである。塗膜がひとつの層からなるものや複数の層からなるものがある。文字を隠蔽するためのいわゆる修正テープや模様転写テープ(マーク転写テープ)などの場合は、複数の層からなるものが多い。
【0021】
本発明においては、透明着色のベタでない模様からなる印刷層を有していればよく、ひとつの層でも複数の層であっても構わない。製造工程としては、層が少ない方が工程が少なくなり好ましいが、実際の使用を考えると、転写した塗膜表面が擦れて削れてしまわないよう保護層や粘着層を印刷層と別々に形成している方が好ましい。これら製造工程の観点と実際の使用の観点から複数の層にしていて、保護層、印刷層、粘着層の3層だけであるのが好ましい。以下では、基材テープ上に順に、塗膜として保護層、印刷層、粘着層の3層からなるものを形成した感圧転写テープを使用している。
【0022】
図1は、各状態における説明図である。(a)は、暗記したい文字として「あいうえお」という文字を表したものである。この上に塗膜1を転写する。(b)は、塗膜1の印刷層のベタでない模様がハート柄からなる模様2の場合である。(c)は、塗膜転写具を用いて(b)の印刷層を有する塗膜1を(a)の文字上に転写したものである。(d)は、(b)の模様の透明着色に近い類似色の透明着色シートを被せたものである。
【0023】
なお、図は白黒であるが、実際は色が着いているものである。暗記したい文字も「あいうえお」という文字で説明しているが、実際は文章中の語句などである。
【0024】
図1において、塗膜1を文字上に転写すると、(a)〜(c)のように模様2によって文字が判読しにくくなり、透明着色シートを被せると、(d)のようにまた判読できるようになる。ここでは説明のために、(c)では文字が読めない図にしている。実際には、(c)で文字が判読しにくい状態であればよい。
【0025】
図2は、本発明の使用例である。「あいうえおかきくけこ」という文字列において、「うえおかきく」という文字に、塗膜転写具を用いて図1のようなハート柄の模様2のある塗膜1を転写しており、「かきくけこ」という文字にハート柄の透明着色に近い類似色に着色された透明着色シート11を被せたものである。
【0026】
透明着色シート11を被せると、塗膜1によって判読しにくくなっていた「かきく」という文字が、判読できるようになっている。また、塗膜1がなく透明着色シート11だけが重なっている「けこ」という文字は判読できる。このように使用できるものである。
【0027】
透明着色シートは、着色されて透明なシートであって、文字などに被せて文字が目視でき判読することができるものであればよい。例えば、プラスチック原料に着色剤を混合してシート状に作製したものや、無色透明なプラスチックシートの表面に印刷受容層を形成して、印刷によって作製したものなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0028】
図3は、マンセル表色系の20分割色相環の説明図である。この色相を用いて、透明着色に近い類似色を定義している。20分割の色相は、5R、10R、5YR、10YR、5Y、10Y、5GY、10GY、5G、10G、5BG、10BG、5B、10B、5PB、10PB、5P、10P、5RP、10RPである。これらを図において、円の頂点(円の12時方向)から時計回りに配置させており、10RPの次が5Rであるので、環となっている。
【0029】
本発明の類似色は、マンセル表色系の色相環における20分割の色相での隣2色以内である。隣2色以内とは、例えば、5Rであれば5RP〜5YRであり、10PBであれば10B〜10Pである。塗膜の透明着色が5Rであれば、透明着色シートの色を5RP〜5YRのどれかにすればよいということである。逆も同じで、透明着色シートの色が5Rであれば、塗膜の透明着色を5RP〜5YRのどれかにすればよい。
【0030】
なお、これは補色ではない。補色は反対色のことであり、マンセル表色系の色相環における20分割の色相において、5Rであれば5BGであり、10PBであれば10Yである。
【0031】
すべての色がマンセル表色系の色相環の20分割で表されるわけでないが、この20分割の近い色に当てはめればよい。例えば、100分割で7Rの色であれば、20分割の5Rを当てはめればよい。
【0032】
図4は、感圧転写テープ3の断面図である。基材テープ4上に順に、塗膜1として保護層5、印刷層6、粘着層7の3層からなる。実際の製造においては、幅広長尺の基材を用いて順に保護層5、印刷層6、粘着層7を形成して、一定幅に裁断することで、図4のような基材テープ4から順に保護層5、印刷層6、粘着層7からなる感圧転写テープ3にするものである。
【0033】
基材(基材テープ4)としては、ポリエチレンテレフタレ−ト(PET)、ポリプロピレンなどのプラスチックフィルムや、グラシン紙などを用いることができる。基材(基材テープ4)の厚さは、3μm以上100μm以下が良い。基材テープ4の厚さが大きいと、転写させる圧力が充分に伝わらず感圧転写がうまくできないなどの不具合が生じることがある。逆に基材テープ4の厚さが小さいと、テープの強度が弱くなり、テープ自身が断裂してしまうなどの不具合が生じることがある。
【0034】
また、基材(基材テープ4)は、両面剥離加工されていることが好ましい。剥離加工は、シリコン樹脂、フッ素樹脂、その他剥離性を有する樹脂やオイルなどを主成分として、必要に応じて、剥離性を有しない合成樹脂や微粒子、添加剤などを混合したものでグラビアコーティングやダイコーティングなどの方法により施される。
【0035】
本発明では、転写した塗膜1を保護することとプラスチック字消しにて除去できることの性能を持たせるために、保護層5にはアクリル樹脂と熱可塑性エラストマーを混合したものを用いている。これは、保護するための適度な強度を持たせて塗膜1を保護することと、粘着層7とのバランスによってプラスチック字消しにて除去できることとの性能を、アクリル樹脂と熱可塑性エラストマーを混合することで見出したものである。ここで熱可塑性エラストマーとしては、例えばスチレン系熱可塑性エラストマー(スチレンブロックコポリマー)が挙げられ、スチレン−ブタジエン−スチレン構造、スチレン−イソプレン−スチレン構造、スチレン−エチレン/ブチレン−スチレン構造などがある。
【0036】
アクリル樹脂と熱可塑性エラストマーの混合比は、固形分比でアクリル樹脂が30重量%以上70重量%以下、熱可塑性エラストマーが30重量%以上70重量%以下であればよく、アクリル樹脂が40重量%以上60重量%以下、熱可塑性エラストマーが40重量%以上60重量%以下がより好ましいものである。熱可塑性エラストマーとしては、塗膜の保護と除去という上記の性能を満たすためにスチレン系熱可塑性エラストマーが好ましく、その中でもスチレン−エチレン/ブチレン−スチレン構造のスチレン系熱可塑性エラストマーがさらに好ましいものである。これらの固形分比を外れると、プラスチック字消しにて除去しにくくなる。
【0037】
塗膜1の劣化を防ぐために、フェノール系やリン系などの酸化防止剤、およびパラアミノ安息香酸系、ベンゾフェノン系メトキシ桂皮酸誘導体、サリチル酸誘導体などの紫外線吸収剤を含むことが好ましい。また、塗工液として基材(基材テープ4)上への塗布性をよくするため、アニオン性、カチオン性、両性、非イオン性などの界面活性剤を含んでもよい。
【0038】
保護層5は、これらを配合した保護層5塗工液をいわゆるコーターによって塗布して加熱乾燥で形成することができる。保護層5としての性能を出すために、保護層5の厚さは1μm以上20μm以下が好ましく、3μm以上15μm以下がより好ましいものである。保護層5の厚さが小さいと感圧転写する時の力に耐えることができず、転写した塗膜1がひび割れたり模様が崩れたりするなどの不具合が生じることがあり、保護層5としての性能を出すことができない。保護層5の厚さが大きいと塗膜転写具の転写ヘッドでうまく切断することができないなどの不具合が生じることがあり、感圧転写させることができない。
【0039】
印刷層6、は透明着色の模様を形成できる方法であればどのような方法でも良いが、模様にするには印刷が好ましい。
【0040】
印刷のない部分8が少なくなる、つまり、保護層5と粘着層7が直接接する面積が小さくなると、粘着層7と印刷層6との密着力の差によっては、印刷層7と保護層5と間で剥がれてしまうという不具合が生じることがある。
【0041】
そのような不具合が生じないように、印刷は点を印刷する方法で行ない、粘着層7は液体である粘着層塗工液による形成が好ましい。例えば、印刷はグラビア印刷、スクリーン印刷、インクジェット印刷が好ましく、粘着層7はいわゆるコーターによって粘着層塗工液を塗布して加熱乾燥で形成する方法が好ましい。
【0042】
点を印刷する方法であれば、点と点の間に空隙が設けられる。塗布する粘着層塗工液が液体であるために、その空隙に入り込んで、粘着層7を形成することができる。これにより、印刷のない部分8がない場合でも、保護層5と粘着層7が印刷層6において直接接する部分を有することになる。
【0043】
図5は、点で印刷した印刷層6の印刷面を拡大した説明図である。点9と点9の間に空隙10があり、その空隙10に粘着層7が入り込んでいることを表している。図5では点9を円形で表わしているが、印刷方法や条件などにより円形以外の形状(菱形やその他の多角形)にもなる。なお、図では空隙10を強調して拡大させて表しているが、実際の塗膜1においてはこのような点9を見ることはできず、透明着色となる。
【0044】
粘着層7は、液体である粘着層塗工液をいわゆるコーターによって塗布して加熱乾燥で形成する方法であれば、印刷層6の点9と点9の間の空隙10に粘着層塗工液が入り込み、その空隙10でも粘着層7が形成され、保護層5と粘着層7が印刷層6を介して直接接する部分を有することになる。剥離紙などに形成した粘着層7を保護層5上に形成した印刷層6に貼り合わせる形成方法ではこのように入り込むことができず、印刷層6と保護層5と間で剥がれてしまうという不具合が生じることがある。
【0045】
粘着層塗工液は、一般に粘着剤として扱われているアクリル系、ビニルエーテル系などの合成樹脂やゴム系の粘着性を有する材料を用いることができる。必要であれば、充填剤、接着性調整剤、老化防止剤等を配合してもよい。
【0046】
充分な粘着性能を出すために、粘着層7の厚さは1μm以上20μm以下が好ましい。厚さが小さいと、充分な粘着性能が出せず、被転写物に引っ付かないという不具合が生じることがある。厚さが大きいと、感圧転写させるときに塗膜1の切れが悪くなり、塗膜1が伸びてしまうなどの不具合が生じることがある。
【0047】
このように幅広長尺の基材を用いて順に保護層5、印刷層6、粘着層7を形成したものを、一定幅に裁断して繰出しリールに巻き回してテープ状にした感圧転写テープ3を塗膜転写具に装填して使用するものである。感圧転写テープ3の一定幅としては、2.5mm〜12mmの間であるのが一般的であるが、これ以外の幅である場合もある。
【0048】
類似色の範囲を決めるのに、次のようなテストを行った。まず、次のようなシートを作製した。インクジェット受容層を有する透明シートに、マンセル表色系の色相環の20分割した1色に相当する透明着色で、インクジェットプリンタにて1辺5cmの正方形のベタを印刷したシートと図1(b)のハート柄の模様を印刷したシートの1セット(1色×2シート)を作製した。これを、20分割した20色分すべての色について20セット(20色×2シート)用意した。
【0049】
普通紙(白色)の文字(黒色)上に、ハート柄の模様を印刷したシートを被せて、そこに、ベタ印刷したシートを、20色分の1色ずつ取り替えながら被せていき、どの色の組合せが判読しやすいか判読しにくいかを確認した。
【0050】
これより、印刷層の色と透明着色シートの色が、マンセル表色系の色相環において、補色(反対色)でなく、同色を含み、20分割での隣2色以内である類似色であることを見出したものである。
【0051】
以下、実施例にて詳細に説明するが、これらに限定されるものではない。
【実施例】
【0052】
基材として両面剥離加工した厚さ12μmの透明PETフィルムを用いて、次の配合比率で作製した保護層塗工液をリバースロールコーターで塗布して加熱乾燥して、厚さが10μmになるように、保護層を形成した。
【0053】
保護層塗工液の配合比率は、固形分比で、アクリル樹脂として三菱レイヨン株式会社製ダイヤナールBR−87を40重量%、熱可塑性エラストマーとしてスチレン−エチレン/ブチレン−スチレン構造のスチレン系熱可塑性エラストマーであるクレイトンポリマー社製クレイトンG1701を59重量%、酸化防止剤としてチバ・スペシャルティ・ケミカルズ株式会社製イルガノックス1010を0.7重量%、紫外線吸収剤としてチバ・スペシャルティ・ケミカルズ株式会社製チヌビンPを0.3重量%である。これらを溶剤としてトルエン中で攪拌混合したものを使用した。
【0054】
この保護層上に、点を印刷する方法であるグラビア印刷で、グラビア印刷用インキとして大阪印刷インキ製造株式会社製VS−SANSを用いてマンセル表色系の色相環の5Rに相当する透明着色にして、厚さが1μmになるように図1(b)のハート柄の模様となる印刷層を形成した。
【0055】
その後に、液状の粘着層塗工液としてアクリル系粘着剤である日本カーバイド工業株式会社製ニカゾールTS−1523を、リバースロールコーターで塗布して加熱乾燥して、厚さが3μmになるように、粘着層を形成した。
【0056】
これを幅5mm、長さ10mに裁断して繰出しリールに巻き回してテープ状にした感圧転写テープを、塗膜転写具(ユニオンケミカー株式会社製消シマウスHG)に装填して図1(c)のように文字上に塗膜を転写した。塗膜が転写された文字は判読しにくかった。
【0057】
図6は、塗膜転写具の説明図である。使用した塗膜転写具を斜視図で表している。感圧転写テープ3を繰り出す繰出しリール12と巻き取る巻取りリール13、それらを連動させる連動機構としてのギア14、感圧転写テープ3に圧力をかけて塗膜1を転写する転写ヘッド15からなり、これらが筐体に収納されていて把持でき、片手で転写できるものである。また、この塗膜転写具は、筐体本体貫通部16を有するものである。感圧転写テープ3において、ハート柄の模様は省略して、網点で表している。
【0058】
透明着色シートに穴を設け、その穴をシート連結部として、また、筐体本体貫通部16を塗膜転写具連結部として、これら連結部同士をひもなどの連結具を用いて連結して、1組の連結した学習具とすることができる。連結することで、持ち運びなどで、一方を忘れたりすることを防ぐことができる。
【0059】
透明着色シートとして、1辺10cmの正方形のものを次のように作製した。インクジェット受容層を有する透明シートに、マンセル表色系の色相環の20分割した1色に相当する透明着色で、インクジェットプリンタにて1辺10cm超の正方形のベタを印刷したものを作成し、1辺10cmの正方形の透明着色シートに切り出して作製した。これを、20分割した20色分すべての色について20色用意した。
【0060】
この透明着色シートと転写塗膜が重なるように1色ずつ取り替えながら被せていき、どの色の組合せが判読しやすいか判読しにくいかを確認した。その結果、転写塗膜のハート柄と同色であるマンセル表色系の色相環の5Rの透明シートを被せた時が最も判読しやすくなった。次に、マンセル表色系の色相環の5RP、10RP、10R、5YRの透明シートを被せた時も判読しやすくなった。しかし、これら以外の透明シートを被せたときは判読しにくいままであった。つまり、補色(反対色)でなく、同色を含み、20分割での隣2色以内である類似色の組合せが、判読しやすくなった。
【0061】
さらに、インクジェット受容層を有する透明シートに、マンセル表色系の色相環の20分割した1色に相当する透明着色で、図1(b)のハート柄の模様を印刷したシートを利用して、同色の組合せを確認した。5RP、10RP、5R、10R、5YR、つまり、5RP〜5YRまでの同色の組合せであれば、最も判読しやすくなった。
【0062】
また、プラスチック字消し(株式会社シード製Rader)にて、転写した塗膜を除去することができた。
【0063】
これより、透明着色シートを被せていない状態で透明の色の塗膜を転写した文字が判読しにくい状態であり、透明着色シートを被せている状態で透明な色の塗膜を転写した文字が判読しやすい状態となる学習具を提供することができるようになった。
【符号の説明】
【0064】
1 塗膜
2 模様
3 感圧転写テープ
4 基材テープ
5 保護層
6 印刷層
7 粘着層
8 印刷のない部分
9 点
10 空隙
11 透明着色シート
12 繰出しリール
13 巻取りリール
14 ギア
15 転写ヘッド
16 筐体本体貫通部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
塗膜転写具と透明着色シートとの組からなる学習具であって、塗膜転写具に装填される感圧転写テープは、基材テープ上に塗膜を形成したものであり、感圧転写テープの塗膜は、塗膜転写具を用いて転写されるものであり、
塗膜には、透明着色のベタでない模様からなる印刷層を有しており、印刷層の色と透明着色シートの色が、マンセル表色系の色相環において、同色を含み、20分割での隣2色以内である類似色であることを特徴とする学習具。

【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−197045(P2011−197045A)
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−60517(P2010−60517)
【出願日】平成22年3月17日(2010.3.17)
【出願人】(000115119)ユニオンケミカー株式会社 (67)