完全分解可能な人工皮革の製造方法
【課題】完全分解可能な人工皮革の製造方法を提供する。
【解決手段】熱可塑性ポリマー材料と、農作物、林業廃棄物などを粉砕して得られた繊維および粉末である媒質と、の混合物であるフィルム材料を準備するステップと、フィルム材料から製造された熱可塑性フィルムを冷却システムを有する金属案内ロール上に導入し、金属案内ロールの継続した回転ストロークにより、金属ロールとの接触ポイントまで搬送し、金属案内ロールの回転ストロークの設定により、フィルムの厚さを均一にすると共に、若干冷却し、それと同時に、金属案内ロールの冷却システムにより、フィルムが金属ロールに搬送されるときの温度を制御するフィルムの成形ステップと、金属ローラに分解可能なベース布をフィルムと同時に搬送し、設定された温度の下、フィルムの表面を非飽和状態でベース布上に貼設するフィルムをベース布に貼設するステップと、を含む。
【解決手段】熱可塑性ポリマー材料と、農作物、林業廃棄物などを粉砕して得られた繊維および粉末である媒質と、の混合物であるフィルム材料を準備するステップと、フィルム材料から製造された熱可塑性フィルムを冷却システムを有する金属案内ロール上に導入し、金属案内ロールの継続した回転ストロークにより、金属ロールとの接触ポイントまで搬送し、金属案内ロールの回転ストロークの設定により、フィルムの厚さを均一にすると共に、若干冷却し、それと同時に、金属案内ロールの冷却システムにより、フィルムが金属ロールに搬送されるときの温度を制御するフィルムの成形ステップと、金属ローラに分解可能なベース布をフィルムと同時に搬送し、設定された温度の下、フィルムの表面を非飽和状態でベース布上に貼設するフィルムをベース布に貼設するステップと、を含む。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【０００１】
本発明は、人工皮革の製造方法に関し、特に、完全分解可能な人工皮革の製造方法に関する。
【背景技術】
【０００２】
早期における人工皮革の製造方法には、離型紙上に有機溶剤である液体を塗布し、乾燥後に離型紙をはがすといった方法がある。この方法は、一般にドライ式と呼ばれる。また、織布や不織布の表面に熱可塑性高分子化合物である溶液を塗布し、さらに、湿式凝固法または乾式凝固法と呼ばれる方法により、多孔質の熱可塑性高分子化合層を形成し、この化合層上に着色剤を含む樹脂溶液をさらに塗布し、乾燥後に所望の凹凸表面をプレスするという方法がある。
【０００３】
上述の製造方法においては、有機溶剤を大量に使用するため、環境を破壊する。また、凝固法は、時間がかかる上、層状構造に剥離が起こりやすいという欠点がある。
【０００４】
そこで、特許文献１の「高強度熱可塑性ポリウレタン人工皮革製造法」、特許文献２などの熱可塑性ポリウレタン（ＴＰＵ）により人工皮革を製造する方法が開発された。これらの方法は、何れも熱可塑性ポリウレタン（ＴＰＵ）を原料とし、押出機および圧延機により、織布や不織布にフィルムを形成することで、環境保護に寄与することができる人工皮革製造方法を提供している。
【０００５】
しかし、本発明の発明者は、上述の従来技術には、改善が必要な欠点が若干存在することを発見した。その欠点を以下に示す。
【０００６】
（１）人工皮革は、分解されにくいため、廃棄された人工皮革が環境汚染を引き起こしてしまう。従来技術により、水分解、溶解または微生物分解が可能な熱可塑性ポリマー材料を使用し、人工皮革を製造することも可能であるが、この種の分解可能な人工皮革は、靭性および柔軟性が通常の人工皮革よりも劣る。
（２）熱可塑性ポリウレタン（ＴＰＵ）が押出機を経て、圧延機のロールとルーレットロール（または鏡面ロール）の接触ポイントに垂直に送り出されてフィルムとなり、織布または不織布と接着されて人工皮革が構成されるが、この方法では、熱可塑性ポリウレタン（ＴＰＵ）が垂直に送り出される速度が室温の影響を大いに受けるため、一定の速度に保つことが難しい。このため、成形されたフィルムの厚さが均等になりにくいといった状況が起こりやすい。また、ロールとルーレットロールとの接触ポイントに接した後のフィルムは、高温であるため、重力の影響を受けて波打った状態になりやすい。即ち、人工皮革の厚さおよび表面の品質を良好に保つことが極めて困難であり、市場の要求を満たすことができない。
（３）熱可塑性ポリウレタン（ＴＰＵ）は、高温で織布または不織布上にプレスされることによりフィルム状になる。即ち、熱可塑性ポリウレタン（ＴＰＵ）は、飽和状態で織布または不織布の繊維中に浸透する。これにより、熱可塑性ポリウレタン（ＴＰＵ）は、冷却され、硬化した後、織布または不織布の繊維構造も硬化する。即ち、人工皮革には、一定の硬さが生じてしまい、体にフィットさせることができるほど柔軟ではないため、人工皮革の使用範囲が限定される。
【０００７】
本発明の発明者は、従来の熱可塑性ポリウレタン（ＴＰＵ）により製造される人工皮革の製造方法に存在する欠点に鑑み、原料および成形の方面から研究を重ね、これらの欠点を解決できる本発明を案出した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【０００８】
【特許文献１】台湾公告第４４２３９２号
【特許文献２】特開２０００−６２１２５号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【０００９】
本発明の目的は、完全分解可能な人工皮革の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【００１０】
上述の課題を解決するために、本発明の完全分解可能な人工皮革の製造方法は、以下のステップを含む。
【００１１】
ａ．フィルム材料を準備するステップ：
フィルム材料は、熱可塑性ポリマー材料と媒質との混合物である。熱可塑性ポリマー材料および媒質は、何れも分解可能な物質である。媒質は、農作物、林業廃棄物またはそれらの混合物であり、それらを粉砕して得られた繊維および粉末である。植物媒質を添加することにより、成形されたフィルムの靭性および湾曲性が改善される。
【００１２】
ｂ．フィルムを成形するステップ：
前述のフィルム材料から熱可塑性フィルムを製造する。次に、熱可塑性フィルムを冷却システムを有する金属案内ロール上に導入し、金属案内ロールの１度〜８９度の回転ストロークの設定により、熱可塑性フィルムを均一に分布させ、冷却する。次に、熱可塑性フィルムを金属ローラとの接触ポイントまで搬送すると同時に、金属案内ローラの冷却システムにより、フィルムが金属ローラに搬送されるときの温度を制御する。
【００１３】
ｃ．フィルムをベース布に貼設するステップ：
前述の金属ローラに分解可能なベース布をフィルムと同時に搬送する。設定された温度の下、フィルムの表面を非飽和状態でベース布上に貼設する。フィルムおよびベース布は、必要な結合度を有し、人工皮革が構成される。また、媒質繊維および媒質粉末により、フィルム表面とベース布とが接触する比表面積が低減され、人工皮革は、極めて優れた柔軟性を有することができる。また、フィルムを非飽和状態でベース布中に滲入させる技術により、人工皮革が波打った状態になるのを最小限にし、厚さを均一にし、表面の質感を高めることができる。
【００１４】
また、上述の課題を解決するために、本発明の完全分解可能な人工皮革の製造方法は、以下のステップを含む。
【００１５】
ａ．フィルム材料を準備するステップ：
フィルム材料は、熱可塑性ポリマー材料と媒質との混合物である。熱可塑性ポリマー材料および媒質は、何れも分解可能な物質である。媒質は、農作物、林業廃棄物またはそれらの混合物であり、それらを粉砕して得られた繊維および粉末である。
【００１６】
ｂ．フィルムを成形するステップ：
前述のフィルム材料から熱可塑性フィルムを製造する。次に、熱可塑性フィルムを冷却システムを有する金属案内ロール上に導入し、金属案内ロールの継続した回転ストロークにより、金属ロールとの接触ポイントまで搬送する。金属案内ロールの回転ストロークの設定により、フィルムの厚さを均一にすると共に、若干冷却し、それと同時に、金属案内ロールの冷却システムにより、フィルムが金属ロールに搬送されるときの温度を制御する。設定温度の下、フィルムを金属案内ロールおよび金属ロールにより圧延し、人工皮革に成形する。
【００１７】
すなわち、本発明は下記の特徴を有する。
（１）以下のステップを含むことを特徴とする完全分解可能な人工皮革の製造方法。
ａ．フィルム材料を準備するステップ
フィルム材料として、何れも分解可能な物質である熱可塑性ポリマー材料と媒質との混合物を準備し、前記媒質は、農作物、林業廃棄物またはそれらの混合物であり、それらを粉砕して得られた繊維および粉末である；
ｂ．フィルムを成形するステップ
前記フィルム材料から熱可塑性フィルムを製造し、前記熱可塑性フィルムを冷却システムを有する金属案内ロール上に導入し、前記金属案内ロールの継続した回転ストロークにより、前記熱可塑性フィルムを金属ロールとの接触ポイントまで搬送し、前記金属案内ロールの回転ストロークの設定により、前記フィルムの厚さを均一にすると共に、若干冷却し、それと同時に、前記金属案内ロールの冷却システムにより、前記フィルムが前記金属ロールに搬送されるときの温度を制御する；
ｃ．フィルムをベース布に貼設するステップ
前記金属ローラに分解可能なベース布を前記 フィルムと同時に搬送し、設定された温度の下、前記フィルムの表面を非飽和状態でベース布上に貼設し、これにより、前記フィルムおよび前記ベース布は、必要な結合度を有し、人工皮革が構成される。
（２）前記ベース布は、編布、平織布、不織布またはウォータージェット加工された不織布であることを特徴とする（１）記載の完全分解可能な人工皮革の製造方法。
（３）前記ｃのステップの後、
ｄ．表面を処理するステップ
前記フィルムのベース布が貼設された面と反対の表面に模様を形成したり、着色したりする；
をさらに含むことを特徴とする（１）記載の完全分解可能な人工皮革の製造方法。
（４）以下のステップを含むことを特徴とする完全分解可能な人工皮革の製造方法。
ａ．フィルム材料を準備するステップ
フィルム材料として、何れも分解可能な物質である熱可塑性ポリマー材料と媒質との混合物を準備し、前記媒質は、農作物、林業廃棄物またはそれらの混合物であり、それらを粉砕して得られた繊維および粉末である；
ｂ．フィルムを成形するステップ
前記フィルム材料から熱可塑性フィルムを製造し、前記熱可塑性フィルムを冷却システムを有する金属案内ロール上に導入し、前記金属案内ロールの継続した回転ストロークにより、前記熱可塑性フィルムを金属ロールとの接触ポイントまで搬送し、前記金属案内ロールの回転ストロークの設定により、前記フィルムの厚さを均一にすると共に、若干冷却し、それと同時に、前記金属案内ロールの冷却システムにより、前記フィルムが前記金属ロールに搬送されるときの温度を制御し、設定温度の下、前記フィルムを前記金属案内ロールおよび前記金属ロールにより圧延し、人工皮革に成形する。
（５）前記熱可塑性ポリマー材料は、前記フィルム材料の２５％〜７５％含まれ、さらに、前記熱可塑性ポリマー材料には、酸化防止剤、分散剤、安定剤、有機溶剤を含まない接着剤またはそれらの混合物である補助剤が添加されることを特徴とする（１）または（４）記載の完全分解可能な人工皮革の製造方法。
（６）前記フィルム材料には、着色剤がさらに添加されることを特徴とする（１）または（４）記載の完全分解可能な人工皮革の製造方法。
（７）前記フィルム材料には、発泡剤がさらに添加されることを特徴とする（１）または（４）記載の完全分解可能な人工皮革の製造方法。
（８）前記フィルム材料には、耐燃剤がさらに添加されることを特徴とする（１）または（４）記載の完全分解可能な人工皮革の製造方法。
（９）前記フィルム材料には、防カビ抗菌剤がさらに添加されることを特徴とする（１）または（４）記載の完全分解可能な人工皮革の製造方法。
（１０）前記媒質粉末の大きさは、２０メッシュ（０．８３ｍｍ）〜１００００メッシュ（０．００１３ｍｍ）の間に画定され、前記媒質繊維の大きさは、２０メッシュ（０．８３ｍｍ）〜２メッシュ（８ｍｍ）の間に画定され、前記媒質は、フィルム材料の１％〜７５％含まれることを特徴とする（１）または（４）記載の完全分解可能な人工皮革の製造方法。
【発明の効果】
【００１８】
（１）本発明の人工皮革は、完全分解することができるため、環境保護に寄与することができる。さらに重要なこととして、植物媒質を添加することにより、分解可能な熱可塑性ポリマー材料をフィルムに成形した後の靭性および湾曲性が改善され、従来の通常の人工皮革と同様の靭性および湾曲性を有することができる。また、植物媒質により、フィルム表面がベース布に直接接触する比表面積を低減することができるため、ベース布の柔軟性を最大限に保持することができ、フィルムが非飽和状態でベース布中に滲入する技術の効果を増大させることができる。
（２）本発明の熱可塑性フィルムは、金属案内ロール上に導入されるが、金属案内ロールを介してフィルムが成形されるため、フィルムが垂直に流れることによる影響を最小限にすることができ、金属案内ロールの回転により、フィルムの厚さを均一にすることができる。また、冷却システムがフィルムの冷却後の温度を制御してから、貼設作業が行われるため、フィルムが波打った状態になるのを最小限にすることができる。即ち、人工皮革の厚さおよび表面を高品質にし、市場の要求を満たすことができる。
（３）本発明においては、フィルムが低温でベース布上に圧着されるため、フィルムが非飽和状態でベース布中に滲入し、両者の接着は、必要な結合度を有することができる。しかし、ベース布が冷却された後の柔軟性を従来の人工皮革より増大させることができる。また、フィルム表面は、低温でも扱いやすい。これにより、人工皮革の使用範囲を大幅に広げることができ、例えば、高級靴類、高級手袋、高級帽子などの製品に本発明の人工皮革を使用することができ、人工皮革の適用範囲を大幅に広げることができる。
【発明を実施するための形態】
【００１９】
本発明の目的、特徴および効果を示す実施形態を詳細に説明する。
【００２０】
本発明の人工皮革の製造方法は、以下のステップを含む。
【００２１】
ａ．フィルム材料を準備するステップ：フィルム材料は、熱可塑性ポリマー材料と媒質との混合物である。媒質は、分解可能な物質であり、例えば、木材、樹枝、葉、稲草、籾殻、麦草、麦殻、とうもろこしの茎、とうもろこしの葉、サトウキビの絞りかす、おからなど、植物繊維を含む農作物、林業廃棄物またはそれらの混合物から選択され、それらを粉砕して得られた繊維および粉末である。媒質粉末の大きさは、２０メッシュ（０．８３ｍｍ）〜１００００メッシュ（０．００１３ｍｍ）の間に画定され、媒質繊維の大きさは、２０メッシュ（０．８３ｍｍ）〜２メッシュ（８ｍｍ）の間に画定される。媒質は、フィルム材料の１％〜７５％含まれる。熱可塑性ポリマー材料は、水分解、溶解、自然分解または微生物分解が可能な熱可塑性ポリマー材料から選択され、さらに、酸化防止剤、分散剤、安定剤、有機溶剤を含まない接着剤またはそれらの混合物である補助剤が添加される。熱可塑性ポリマー材料は、フィルム材料の２５％〜７５％含まれる。熱可塑性ポリマー材料は、色原体または着色粉末であり、水分解、溶解、自然分解または生物分解可能な物質である。フィルム材料は、主に、植物媒質が添加されることにより、成形された後の靭性および湾曲性が改善される。また、フィルム材料には、発泡剤を添加することができ、これにより、成形された後の柔軟性がさらに高められる。さらに、必要に応じ、着色剤、防カビ抗菌剤または耐燃剤を添加することができ、着色、防カビ抗菌または耐燃効果が達成される。
【００２２】
ｂ．フィルムを成形するステップ：押出機または圧延機により、前述のフィルム材料から熱可塑性フィルムを製造する。次に、熱可塑性フィルムを冷却システムを有する金属案内ロール上に導入し、金属案内ロールの継続した回転ストロークにより、金属ロールとの接触ポイントまで搬送する。金属案内ロールの軸心と金属ロールの軸心とは、互いに平行であり、熱可塑性フィルムが金属案内ロールに導入される位置は、１度〜８９度の回転ストロークの範囲内に制御される。ここで、金属案内ロールの１度〜８９度の回転ストロークとは、金属ロールとの接触ポイントを０度とし、金属案内ロールの頂点を９０度とする。金属案内ロールの回転ストロークの設定により、熱可塑性フィルムを若干冷却し、重力の作用により、フィルムの厚さを均一にし、それと同時に、金属案内ロールの冷却システムにより、フィルムが金属ロールに搬送されるときの温度を制御する。
【００２３】
ｃ．フィルムをベース布に貼設するステップ：前述の金属ローラに分解可能なベース布をフィルムと同時に搬送する。設定された温度の下、フィルムの表面を非飽和状態でベース布上に貼設する。フィルムおよびベース布は、必要な結合度を有し、人工皮革が構成される。ベース布は、編布、平織布、不織布またはウォータージェット加工された不織布であり、水分解、溶解、自然分解または微生物分解が可能であればよい。貼設方式は、冷却されたフィルムをベース布に圧着する方式であり、両者の接着は、必要な結合度を有することができる。しかし、フィルムは、従来技術のような高温ではなく、低温の状態であることから、飽和状態でベース布中に滲入することがなく、非飽和状態でベース布の隙間に滲入する。また、媒質繊維および媒質粉末により、フィルム表面とベース布とが接触する比表面積が低減される。従って、本発明では、冷却後にベース布が良好な柔軟性を有し、フィルムを貼設しても柔軟なフィット感を提供できる。さらに、フィルム表面は、低温でも扱いやすい。また、上述のフィルムが非飽和状態でベース布中に滲入する技術により、フィルムとベース布とを結合するとき、波打った状態になるのを最小限にし、厚さを均一にし、表面の質感を高めることができる。
【００２４】
ｄ．表面を処理するステップ：金属案内ロールで鏡面処理を行うか、或いは、エンボス処理設備を設置し、フィルムのベース布が貼設された面と反対の表面に処理を行うことにより、所望の人工皮革表面が形成され、好適な触感を有することができる。同様に、印刷により着色を行うことができる。
【００２５】
以下の説明から、本発明が進歩性を有することが分かる。
【００２６】
（１）本発明の人工皮革は、完全分解することができるため、環境保護に寄与することができる。さらに重要なこととして、植物媒質を添加することにより、分解可能な熱可塑性ポリマー材料をフィルムに成形した後の靭性および湾曲性が改善され、従来の通常の人工皮革と同様の靭性および湾曲性を有することができる。また、植物媒質により、フィルム表面がベース布に直接接触する比表面積を低減することができるため、ベース布の柔軟性を最大限に保持することができ、フィルムが非飽和状態でベース布中に滲入する技術の効果を増大させることができる。
（２）本発明の熱可塑性フィルムは、金属案内ロール上に導入されるが、金属案内ロールを介してフィルムが成形されるため、フィルムが垂直に流れることによる影響を最小限にすることができ、金属案内ロールの回転により、フィルムの厚さを均一にすることができる。また、冷却システムがフィルムの冷却後の温度を制御してから、貼設作業が行われるため、フィルムが波打った状態になるのを最小限にすることができる。即ち、人工皮革の厚さおよび表面を高品質にし、市場の要求を満たすことができる。
（３）本発明においては、フィルムが低温でベース布上に圧着されるため、フィルムが非飽和状態でベース布中に滲入し、両者の接着は、必要な結合度を有することができる。しかし、ベース布が冷却された後の柔軟性を従来の人工皮革より増大させることができる。また、フィルム表面は、低温でも扱いやすい。これにより、人工皮革の使用範囲を大幅に広げることができ、例えば、高級靴類、高級手袋、高級帽子などの製品に本発明の人工皮革を使用することができ、人工皮革の適用範囲を大幅に広げることができる。
【００２７】
同様の原理に基づき、本発明は、下記の製造方法により、コストの安い人工皮革を製造することができる。
【００２８】
ａ．フィルム材料を準備するステップ：
フィルム材料は、熱可塑性ポリマー材料と媒質との混合物である。熱可塑性ポリマー材料および媒質は、何れも分解可能な物質である。媒質は、農作物、林業廃棄物またはそれらの混合物であり、それらを粉砕して得られた繊維および粉末である。
【００２９】
ｂ．フィルムを成形するステップ：
前述のフィルム材料から熱可塑性フィルムを製造する。熱可塑性フィルムを冷却システムを有する金属案内ロール上に導入し、金属案内ロールの継続した回転ストロークにより、金属ロールとの接触ポイントまで搬送する。金属案内ロールの回転ストロークの設定により、フィルムの厚さを均一にすると共に、若干冷却し、それと同時に、金属案内ロールの冷却システムにより、フィルムが金属ロールに搬送されるときの温度を制御する。設定温度の下、フィルムを金属案内ロールおよび金属ロールにより圧延し、人工皮革に成形する。
【００３０】
以上のように、本発明を人工皮革の製造方法に運用することにより、従来の人工皮革の欠点を改善することができる。本発明は、新規性および進歩性を有し、特許出願要件を満たすものであり、法律に基づき出願を行う。
【００３１】
以上の説明は、本発明の一実施例を示したものであり、本発明の実施範囲を限定するものではない。即ち、本発明の特許請求の範囲に記載の内容と同等効果である変更または修飾は、全て本発明に含まれる。
【技術分野】
【０００１】
本発明は、人工皮革の製造方法に関し、特に、完全分解可能な人工皮革の製造方法に関する。
【背景技術】
【０００２】
早期における人工皮革の製造方法には、離型紙上に有機溶剤である液体を塗布し、乾燥後に離型紙をはがすといった方法がある。この方法は、一般にドライ式と呼ばれる。また、織布や不織布の表面に熱可塑性高分子化合物である溶液を塗布し、さらに、湿式凝固法または乾式凝固法と呼ばれる方法により、多孔質の熱可塑性高分子化合層を形成し、この化合層上に着色剤を含む樹脂溶液をさらに塗布し、乾燥後に所望の凹凸表面をプレスするという方法がある。
【０００３】
上述の製造方法においては、有機溶剤を大量に使用するため、環境を破壊する。また、凝固法は、時間がかかる上、層状構造に剥離が起こりやすいという欠点がある。
【０００４】
そこで、特許文献１の「高強度熱可塑性ポリウレタン人工皮革製造法」、特許文献２などの熱可塑性ポリウレタン（ＴＰＵ）により人工皮革を製造する方法が開発された。これらの方法は、何れも熱可塑性ポリウレタン（ＴＰＵ）を原料とし、押出機および圧延機により、織布や不織布にフィルムを形成することで、環境保護に寄与することができる人工皮革製造方法を提供している。
【０００５】
しかし、本発明の発明者は、上述の従来技術には、改善が必要な欠点が若干存在することを発見した。その欠点を以下に示す。
【０００６】
（１）人工皮革は、分解されにくいため、廃棄された人工皮革が環境汚染を引き起こしてしまう。従来技術により、水分解、溶解または微生物分解が可能な熱可塑性ポリマー材料を使用し、人工皮革を製造することも可能であるが、この種の分解可能な人工皮革は、靭性および柔軟性が通常の人工皮革よりも劣る。
（２）熱可塑性ポリウレタン（ＴＰＵ）が押出機を経て、圧延機のロールとルーレットロール（または鏡面ロール）の接触ポイントに垂直に送り出されてフィルムとなり、織布または不織布と接着されて人工皮革が構成されるが、この方法では、熱可塑性ポリウレタン（ＴＰＵ）が垂直に送り出される速度が室温の影響を大いに受けるため、一定の速度に保つことが難しい。このため、成形されたフィルムの厚さが均等になりにくいといった状況が起こりやすい。また、ロールとルーレットロールとの接触ポイントに接した後のフィルムは、高温であるため、重力の影響を受けて波打った状態になりやすい。即ち、人工皮革の厚さおよび表面の品質を良好に保つことが極めて困難であり、市場の要求を満たすことができない。
（３）熱可塑性ポリウレタン（ＴＰＵ）は、高温で織布または不織布上にプレスされることによりフィルム状になる。即ち、熱可塑性ポリウレタン（ＴＰＵ）は、飽和状態で織布または不織布の繊維中に浸透する。これにより、熱可塑性ポリウレタン（ＴＰＵ）は、冷却され、硬化した後、織布または不織布の繊維構造も硬化する。即ち、人工皮革には、一定の硬さが生じてしまい、体にフィットさせることができるほど柔軟ではないため、人工皮革の使用範囲が限定される。
【０００７】
本発明の発明者は、従来の熱可塑性ポリウレタン（ＴＰＵ）により製造される人工皮革の製造方法に存在する欠点に鑑み、原料および成形の方面から研究を重ね、これらの欠点を解決できる本発明を案出した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【０００８】
【特許文献１】台湾公告第４４２３９２号
【特許文献２】特開２０００−６２１２５号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【０００９】
本発明の目的は、完全分解可能な人工皮革の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【００１０】
上述の課題を解決するために、本発明の完全分解可能な人工皮革の製造方法は、以下のステップを含む。
【００１１】
ａ．フィルム材料を準備するステップ：
フィルム材料は、熱可塑性ポリマー材料と媒質との混合物である。熱可塑性ポリマー材料および媒質は、何れも分解可能な物質である。媒質は、農作物、林業廃棄物またはそれらの混合物であり、それらを粉砕して得られた繊維および粉末である。植物媒質を添加することにより、成形されたフィルムの靭性および湾曲性が改善される。
【００１２】
ｂ．フィルムを成形するステップ：
前述のフィルム材料から熱可塑性フィルムを製造する。次に、熱可塑性フィルムを冷却システムを有する金属案内ロール上に導入し、金属案内ロールの１度〜８９度の回転ストロークの設定により、熱可塑性フィルムを均一に分布させ、冷却する。次に、熱可塑性フィルムを金属ローラとの接触ポイントまで搬送すると同時に、金属案内ローラの冷却システムにより、フィルムが金属ローラに搬送されるときの温度を制御する。
【００１３】
ｃ．フィルムをベース布に貼設するステップ：
前述の金属ローラに分解可能なベース布をフィルムと同時に搬送する。設定された温度の下、フィルムの表面を非飽和状態でベース布上に貼設する。フィルムおよびベース布は、必要な結合度を有し、人工皮革が構成される。また、媒質繊維および媒質粉末により、フィルム表面とベース布とが接触する比表面積が低減され、人工皮革は、極めて優れた柔軟性を有することができる。また、フィルムを非飽和状態でベース布中に滲入させる技術により、人工皮革が波打った状態になるのを最小限にし、厚さを均一にし、表面の質感を高めることができる。
【００１４】
また、上述の課題を解決するために、本発明の完全分解可能な人工皮革の製造方法は、以下のステップを含む。
【００１５】
ａ．フィルム材料を準備するステップ：
フィルム材料は、熱可塑性ポリマー材料と媒質との混合物である。熱可塑性ポリマー材料および媒質は、何れも分解可能な物質である。媒質は、農作物、林業廃棄物またはそれらの混合物であり、それらを粉砕して得られた繊維および粉末である。
【００１６】
ｂ．フィルムを成形するステップ：
前述のフィルム材料から熱可塑性フィルムを製造する。次に、熱可塑性フィルムを冷却システムを有する金属案内ロール上に導入し、金属案内ロールの継続した回転ストロークにより、金属ロールとの接触ポイントまで搬送する。金属案内ロールの回転ストロークの設定により、フィルムの厚さを均一にすると共に、若干冷却し、それと同時に、金属案内ロールの冷却システムにより、フィルムが金属ロールに搬送されるときの温度を制御する。設定温度の下、フィルムを金属案内ロールおよび金属ロールにより圧延し、人工皮革に成形する。
【００１７】
すなわち、本発明は下記の特徴を有する。
（１）以下のステップを含むことを特徴とする完全分解可能な人工皮革の製造方法。
ａ．フィルム材料を準備するステップ
フィルム材料として、何れも分解可能な物質である熱可塑性ポリマー材料と媒質との混合物を準備し、前記媒質は、農作物、林業廃棄物またはそれらの混合物であり、それらを粉砕して得られた繊維および粉末である；
ｂ．フィルムを成形するステップ
前記フィルム材料から熱可塑性フィルムを製造し、前記熱可塑性フィルムを冷却システムを有する金属案内ロール上に導入し、前記金属案内ロールの継続した回転ストロークにより、前記熱可塑性フィルムを金属ロールとの接触ポイントまで搬送し、前記金属案内ロールの回転ストロークの設定により、前記フィルムの厚さを均一にすると共に、若干冷却し、それと同時に、前記金属案内ロールの冷却システムにより、前記フィルムが前記金属ロールに搬送されるときの温度を制御する；
ｃ．フィルムをベース布に貼設するステップ
前記金属ローラに分解可能なベース布を前記 フィルムと同時に搬送し、設定された温度の下、前記フィルムの表面を非飽和状態でベース布上に貼設し、これにより、前記フィルムおよび前記ベース布は、必要な結合度を有し、人工皮革が構成される。
（２）前記ベース布は、編布、平織布、不織布またはウォータージェット加工された不織布であることを特徴とする（１）記載の完全分解可能な人工皮革の製造方法。
（３）前記ｃのステップの後、
ｄ．表面を処理するステップ
前記フィルムのベース布が貼設された面と反対の表面に模様を形成したり、着色したりする；
をさらに含むことを特徴とする（１）記載の完全分解可能な人工皮革の製造方法。
（４）以下のステップを含むことを特徴とする完全分解可能な人工皮革の製造方法。
ａ．フィルム材料を準備するステップ
フィルム材料として、何れも分解可能な物質である熱可塑性ポリマー材料と媒質との混合物を準備し、前記媒質は、農作物、林業廃棄物またはそれらの混合物であり、それらを粉砕して得られた繊維および粉末である；
ｂ．フィルムを成形するステップ
前記フィルム材料から熱可塑性フィルムを製造し、前記熱可塑性フィルムを冷却システムを有する金属案内ロール上に導入し、前記金属案内ロールの継続した回転ストロークにより、前記熱可塑性フィルムを金属ロールとの接触ポイントまで搬送し、前記金属案内ロールの回転ストロークの設定により、前記フィルムの厚さを均一にすると共に、若干冷却し、それと同時に、前記金属案内ロールの冷却システムにより、前記フィルムが前記金属ロールに搬送されるときの温度を制御し、設定温度の下、前記フィルムを前記金属案内ロールおよび前記金属ロールにより圧延し、人工皮革に成形する。
（５）前記熱可塑性ポリマー材料は、前記フィルム材料の２５％〜７５％含まれ、さらに、前記熱可塑性ポリマー材料には、酸化防止剤、分散剤、安定剤、有機溶剤を含まない接着剤またはそれらの混合物である補助剤が添加されることを特徴とする（１）または（４）記載の完全分解可能な人工皮革の製造方法。
（６）前記フィルム材料には、着色剤がさらに添加されることを特徴とする（１）または（４）記載の完全分解可能な人工皮革の製造方法。
（７）前記フィルム材料には、発泡剤がさらに添加されることを特徴とする（１）または（４）記載の完全分解可能な人工皮革の製造方法。
（８）前記フィルム材料には、耐燃剤がさらに添加されることを特徴とする（１）または（４）記載の完全分解可能な人工皮革の製造方法。
（９）前記フィルム材料には、防カビ抗菌剤がさらに添加されることを特徴とする（１）または（４）記載の完全分解可能な人工皮革の製造方法。
（１０）前記媒質粉末の大きさは、２０メッシュ（０．８３ｍｍ）〜１００００メッシュ（０．００１３ｍｍ）の間に画定され、前記媒質繊維の大きさは、２０メッシュ（０．８３ｍｍ）〜２メッシュ（８ｍｍ）の間に画定され、前記媒質は、フィルム材料の１％〜７５％含まれることを特徴とする（１）または（４）記載の完全分解可能な人工皮革の製造方法。
【発明の効果】
【００１８】
（１）本発明の人工皮革は、完全分解することができるため、環境保護に寄与することができる。さらに重要なこととして、植物媒質を添加することにより、分解可能な熱可塑性ポリマー材料をフィルムに成形した後の靭性および湾曲性が改善され、従来の通常の人工皮革と同様の靭性および湾曲性を有することができる。また、植物媒質により、フィルム表面がベース布に直接接触する比表面積を低減することができるため、ベース布の柔軟性を最大限に保持することができ、フィルムが非飽和状態でベース布中に滲入する技術の効果を増大させることができる。
（２）本発明の熱可塑性フィルムは、金属案内ロール上に導入されるが、金属案内ロールを介してフィルムが成形されるため、フィルムが垂直に流れることによる影響を最小限にすることができ、金属案内ロールの回転により、フィルムの厚さを均一にすることができる。また、冷却システムがフィルムの冷却後の温度を制御してから、貼設作業が行われるため、フィルムが波打った状態になるのを最小限にすることができる。即ち、人工皮革の厚さおよび表面を高品質にし、市場の要求を満たすことができる。
（３）本発明においては、フィルムが低温でベース布上に圧着されるため、フィルムが非飽和状態でベース布中に滲入し、両者の接着は、必要な結合度を有することができる。しかし、ベース布が冷却された後の柔軟性を従来の人工皮革より増大させることができる。また、フィルム表面は、低温でも扱いやすい。これにより、人工皮革の使用範囲を大幅に広げることができ、例えば、高級靴類、高級手袋、高級帽子などの製品に本発明の人工皮革を使用することができ、人工皮革の適用範囲を大幅に広げることができる。
【発明を実施するための形態】
【００１９】
本発明の目的、特徴および効果を示す実施形態を詳細に説明する。
【００２０】
本発明の人工皮革の製造方法は、以下のステップを含む。
【００２１】
ａ．フィルム材料を準備するステップ：フィルム材料は、熱可塑性ポリマー材料と媒質との混合物である。媒質は、分解可能な物質であり、例えば、木材、樹枝、葉、稲草、籾殻、麦草、麦殻、とうもろこしの茎、とうもろこしの葉、サトウキビの絞りかす、おからなど、植物繊維を含む農作物、林業廃棄物またはそれらの混合物から選択され、それらを粉砕して得られた繊維および粉末である。媒質粉末の大きさは、２０メッシュ（０．８３ｍｍ）〜１００００メッシュ（０．００１３ｍｍ）の間に画定され、媒質繊維の大きさは、２０メッシュ（０．８３ｍｍ）〜２メッシュ（８ｍｍ）の間に画定される。媒質は、フィルム材料の１％〜７５％含まれる。熱可塑性ポリマー材料は、水分解、溶解、自然分解または微生物分解が可能な熱可塑性ポリマー材料から選択され、さらに、酸化防止剤、分散剤、安定剤、有機溶剤を含まない接着剤またはそれらの混合物である補助剤が添加される。熱可塑性ポリマー材料は、フィルム材料の２５％〜７５％含まれる。熱可塑性ポリマー材料は、色原体または着色粉末であり、水分解、溶解、自然分解または生物分解可能な物質である。フィルム材料は、主に、植物媒質が添加されることにより、成形された後の靭性および湾曲性が改善される。また、フィルム材料には、発泡剤を添加することができ、これにより、成形された後の柔軟性がさらに高められる。さらに、必要に応じ、着色剤、防カビ抗菌剤または耐燃剤を添加することができ、着色、防カビ抗菌または耐燃効果が達成される。
【００２２】
ｂ．フィルムを成形するステップ：押出機または圧延機により、前述のフィルム材料から熱可塑性フィルムを製造する。次に、熱可塑性フィルムを冷却システムを有する金属案内ロール上に導入し、金属案内ロールの継続した回転ストロークにより、金属ロールとの接触ポイントまで搬送する。金属案内ロールの軸心と金属ロールの軸心とは、互いに平行であり、熱可塑性フィルムが金属案内ロールに導入される位置は、１度〜８９度の回転ストロークの範囲内に制御される。ここで、金属案内ロールの１度〜８９度の回転ストロークとは、金属ロールとの接触ポイントを０度とし、金属案内ロールの頂点を９０度とする。金属案内ロールの回転ストロークの設定により、熱可塑性フィルムを若干冷却し、重力の作用により、フィルムの厚さを均一にし、それと同時に、金属案内ロールの冷却システムにより、フィルムが金属ロールに搬送されるときの温度を制御する。
【００２３】
ｃ．フィルムをベース布に貼設するステップ：前述の金属ローラに分解可能なベース布をフィルムと同時に搬送する。設定された温度の下、フィルムの表面を非飽和状態でベース布上に貼設する。フィルムおよびベース布は、必要な結合度を有し、人工皮革が構成される。ベース布は、編布、平織布、不織布またはウォータージェット加工された不織布であり、水分解、溶解、自然分解または微生物分解が可能であればよい。貼設方式は、冷却されたフィルムをベース布に圧着する方式であり、両者の接着は、必要な結合度を有することができる。しかし、フィルムは、従来技術のような高温ではなく、低温の状態であることから、飽和状態でベース布中に滲入することがなく、非飽和状態でベース布の隙間に滲入する。また、媒質繊維および媒質粉末により、フィルム表面とベース布とが接触する比表面積が低減される。従って、本発明では、冷却後にベース布が良好な柔軟性を有し、フィルムを貼設しても柔軟なフィット感を提供できる。さらに、フィルム表面は、低温でも扱いやすい。また、上述のフィルムが非飽和状態でベース布中に滲入する技術により、フィルムとベース布とを結合するとき、波打った状態になるのを最小限にし、厚さを均一にし、表面の質感を高めることができる。
【００２４】
ｄ．表面を処理するステップ：金属案内ロールで鏡面処理を行うか、或いは、エンボス処理設備を設置し、フィルムのベース布が貼設された面と反対の表面に処理を行うことにより、所望の人工皮革表面が形成され、好適な触感を有することができる。同様に、印刷により着色を行うことができる。
【００２５】
以下の説明から、本発明が進歩性を有することが分かる。
【００２６】
（１）本発明の人工皮革は、完全分解することができるため、環境保護に寄与することができる。さらに重要なこととして、植物媒質を添加することにより、分解可能な熱可塑性ポリマー材料をフィルムに成形した後の靭性および湾曲性が改善され、従来の通常の人工皮革と同様の靭性および湾曲性を有することができる。また、植物媒質により、フィルム表面がベース布に直接接触する比表面積を低減することができるため、ベース布の柔軟性を最大限に保持することができ、フィルムが非飽和状態でベース布中に滲入する技術の効果を増大させることができる。
（２）本発明の熱可塑性フィルムは、金属案内ロール上に導入されるが、金属案内ロールを介してフィルムが成形されるため、フィルムが垂直に流れることによる影響を最小限にすることができ、金属案内ロールの回転により、フィルムの厚さを均一にすることができる。また、冷却システムがフィルムの冷却後の温度を制御してから、貼設作業が行われるため、フィルムが波打った状態になるのを最小限にすることができる。即ち、人工皮革の厚さおよび表面を高品質にし、市場の要求を満たすことができる。
（３）本発明においては、フィルムが低温でベース布上に圧着されるため、フィルムが非飽和状態でベース布中に滲入し、両者の接着は、必要な結合度を有することができる。しかし、ベース布が冷却された後の柔軟性を従来の人工皮革より増大させることができる。また、フィルム表面は、低温でも扱いやすい。これにより、人工皮革の使用範囲を大幅に広げることができ、例えば、高級靴類、高級手袋、高級帽子などの製品に本発明の人工皮革を使用することができ、人工皮革の適用範囲を大幅に広げることができる。
【００２７】
同様の原理に基づき、本発明は、下記の製造方法により、コストの安い人工皮革を製造することができる。
【００２８】
ａ．フィルム材料を準備するステップ：
フィルム材料は、熱可塑性ポリマー材料と媒質との混合物である。熱可塑性ポリマー材料および媒質は、何れも分解可能な物質である。媒質は、農作物、林業廃棄物またはそれらの混合物であり、それらを粉砕して得られた繊維および粉末である。
【００２９】
ｂ．フィルムを成形するステップ：
前述のフィルム材料から熱可塑性フィルムを製造する。熱可塑性フィルムを冷却システムを有する金属案内ロール上に導入し、金属案内ロールの継続した回転ストロークにより、金属ロールとの接触ポイントまで搬送する。金属案内ロールの回転ストロークの設定により、フィルムの厚さを均一にすると共に、若干冷却し、それと同時に、金属案内ロールの冷却システムにより、フィルムが金属ロールに搬送されるときの温度を制御する。設定温度の下、フィルムを金属案内ロールおよび金属ロールにより圧延し、人工皮革に成形する。
【００３０】
以上のように、本発明を人工皮革の製造方法に運用することにより、従来の人工皮革の欠点を改善することができる。本発明は、新規性および進歩性を有し、特許出願要件を満たすものであり、法律に基づき出願を行う。
【００３１】
以上の説明は、本発明の一実施例を示したものであり、本発明の実施範囲を限定するものではない。即ち、本発明の特許請求の範囲に記載の内容と同等効果である変更または修飾は、全て本発明に含まれる。
【特許請求の範囲】
【請求項１】
ａ．フィルム材料を準備するステップ
フィルム材料として、何れも分解可能な物質である熱可塑性ポリマー材料と媒質との混合物を準備し、前記媒質は、農作物、林業廃棄物またはそれらの混合物であり、それらを粉砕して得られた繊維および粉末である；
ｂ．フィルムを成形するステップ
前記フィルム材料から熱可塑性フィルムを製造し、前記熱可塑性フィルムを冷却システムを有する金属案内ロール上に導入し、前記金属案内ロールの継続した回転ストロークにより、前記熱可塑性フィルムを金属ロールとの接触ポイントまで搬送し、前記金属案内ロールの回転ストロークの設定により、前記フィルムの厚さを均一にすると共に、若干冷却し、それと同時に、前記金属案内ロールの冷却システムにより、前記フィルムが前記金属ロールに搬送されるときの温度を制御する；
ｃ．フィルムをベース布に貼設するステップ
前記金属ローラに分解可能なベース布を前記 フィルムと同時に搬送し、設定された温度の下、前記フィルムの表面を非飽和状態でベース布上に貼設し、これにより、前記フィルムおよび前記ベース布は、必要な結合度を有し、人工皮革が構成される；
を含むことを特徴とする完全分解可能な人工皮革の製造方法。
【請求項２】
前記ベース布は、編布、平織布、不織布またはウォータージェット加工された不織布であることを特徴とする請求項１記載の完全分解可能な人工皮革の製造方法。
【請求項３】
前記ｃのステップの後、
ｄ．表面を処理するステップ
前記フィルムのベース布が貼設された面と反対の表面に模様を形成したり、着色したりする；
をさらに含むことを特徴とする請求項１記載の完全分解可能な人工皮革の製造方法。
【請求項４】
ａ．フィルム材料を準備するステップ
フィルム材料として、何れも分解可能な物質である熱可塑性ポリマー材料と媒質との混合物を準備し、前記媒質は、農作物、林業廃棄物またはそれらの混合物であり、それらを粉砕して得られた繊維および粉末である；
ｂ．フィルムを成形するステップ
前記フィルム材料から熱可塑性フィルムを製造し、前記熱可塑性フィルムを冷却システムを有する金属案内ロール上に導入し、前記金属案内ロールの継続した回転ストロークにより、前記熱可塑性フィルムを金属ロールとの接触ポイントまで搬送し、前記金属案内ロールの回転ストロークの設定により、前記フィルムの厚さを均一にすると共に、若干冷却し、それと同時に、前記金属案内ロールの冷却システムにより、前記フィルムが前記金属ロールに搬送されるときの温度を制御し、設定温度の下、前記フィルムを前記金属案内ロールおよび前記金属ロールにより圧延し、人工皮革に成形する；
を含むことを特徴とする完全分解可能な人工皮革の製造方法。
【請求項５】
前記熱可塑性ポリマー材料は、前記フィルム材料の２５％〜７５％含まれ、さらに、前記熱可塑性ポリマー材料には、酸化防止剤、分散剤、安定剤、有機溶剤を含まない接着剤またはそれらの混合物である補助剤が添加されることを特徴とする請求項１または４記載の完全分解可能な人工皮革の製造方法。
【請求項６】
前記フィルム材料には、着色剤がさらに添加されることを特徴とする請求項１または４記載の完全分解可能な人工皮革の製造方法。
【請求項７】
前記フィルム材料には、発泡剤がさらに添加されることを特徴とする請求項１または４記載の完全分解可能な人工皮革の製造方法。
【請求項８】
前記フィルム材料には、耐燃剤がさらに添加されることを特徴とする請求項１または４記載の完全分解可能な人工皮革の製造方法。
【請求項９】
前記フィルム材料には、防カビ抗菌剤がさらに添加されることを特徴とする請求項１または４記載の完全分解可能な人工皮革の製造方法。
【請求項１０】
前記媒質粉末の大きさは、２０メッシュ（０．８３ｍｍ）〜１００００メッシュ（０．００１３ｍｍ）の間に画定され、前記媒質繊維の大きさは、２０メッシュ（０．８３ｍｍ）〜２メッシュ（８ｍｍ）の間に画定され、前記媒質は、フィルム材料の１％〜７５％含まれることを特徴とする請求項１または４記載の完全分解可能な人工皮革の製造方法。
【請求項１】
ａ．フィルム材料を準備するステップ
フィルム材料として、何れも分解可能な物質である熱可塑性ポリマー材料と媒質との混合物を準備し、前記媒質は、農作物、林業廃棄物またはそれらの混合物であり、それらを粉砕して得られた繊維および粉末である；
ｂ．フィルムを成形するステップ
前記フィルム材料から熱可塑性フィルムを製造し、前記熱可塑性フィルムを冷却システムを有する金属案内ロール上に導入し、前記金属案内ロールの継続した回転ストロークにより、前記熱可塑性フィルムを金属ロールとの接触ポイントまで搬送し、前記金属案内ロールの回転ストロークの設定により、前記フィルムの厚さを均一にすると共に、若干冷却し、それと同時に、前記金属案内ロールの冷却システムにより、前記フィルムが前記金属ロールに搬送されるときの温度を制御する；
ｃ．フィルムをベース布に貼設するステップ
前記金属ローラに分解可能なベース布を前記 フィルムと同時に搬送し、設定された温度の下、前記フィルムの表面を非飽和状態でベース布上に貼設し、これにより、前記フィルムおよび前記ベース布は、必要な結合度を有し、人工皮革が構成される；
を含むことを特徴とする完全分解可能な人工皮革の製造方法。
【請求項２】
前記ベース布は、編布、平織布、不織布またはウォータージェット加工された不織布であることを特徴とする請求項１記載の完全分解可能な人工皮革の製造方法。
【請求項３】
前記ｃのステップの後、
ｄ．表面を処理するステップ
前記フィルムのベース布が貼設された面と反対の表面に模様を形成したり、着色したりする；
をさらに含むことを特徴とする請求項１記載の完全分解可能な人工皮革の製造方法。
【請求項４】
ａ．フィルム材料を準備するステップ
フィルム材料として、何れも分解可能な物質である熱可塑性ポリマー材料と媒質との混合物を準備し、前記媒質は、農作物、林業廃棄物またはそれらの混合物であり、それらを粉砕して得られた繊維および粉末である；
ｂ．フィルムを成形するステップ
前記フィルム材料から熱可塑性フィルムを製造し、前記熱可塑性フィルムを冷却システムを有する金属案内ロール上に導入し、前記金属案内ロールの継続した回転ストロークにより、前記熱可塑性フィルムを金属ロールとの接触ポイントまで搬送し、前記金属案内ロールの回転ストロークの設定により、前記フィルムの厚さを均一にすると共に、若干冷却し、それと同時に、前記金属案内ロールの冷却システムにより、前記フィルムが前記金属ロールに搬送されるときの温度を制御し、設定温度の下、前記フィルムを前記金属案内ロールおよび前記金属ロールにより圧延し、人工皮革に成形する；
を含むことを特徴とする完全分解可能な人工皮革の製造方法。
【請求項５】
前記熱可塑性ポリマー材料は、前記フィルム材料の２５％〜７５％含まれ、さらに、前記熱可塑性ポリマー材料には、酸化防止剤、分散剤、安定剤、有機溶剤を含まない接着剤またはそれらの混合物である補助剤が添加されることを特徴とする請求項１または４記載の完全分解可能な人工皮革の製造方法。
【請求項６】
前記フィルム材料には、着色剤がさらに添加されることを特徴とする請求項１または４記載の完全分解可能な人工皮革の製造方法。
【請求項７】
前記フィルム材料には、発泡剤がさらに添加されることを特徴とする請求項１または４記載の完全分解可能な人工皮革の製造方法。
【請求項８】
前記フィルム材料には、耐燃剤がさらに添加されることを特徴とする請求項１または４記載の完全分解可能な人工皮革の製造方法。
【請求項９】
前記フィルム材料には、防カビ抗菌剤がさらに添加されることを特徴とする請求項１または４記載の完全分解可能な人工皮革の製造方法。
【請求項１０】
前記媒質粉末の大きさは、２０メッシュ（０．８３ｍｍ）〜１００００メッシュ（０．００１３ｍｍ）の間に画定され、前記媒質繊維の大きさは、２０メッシュ（０．８３ｍｍ）〜２メッシュ（８ｍｍ）の間に画定され、前記媒質は、フィルム材料の１％〜７５％含まれることを特徴とする請求項１または４記載の完全分解可能な人工皮革の製造方法。
【公開番号】特開２０１１−１６８９０２（Ｐ２０１１−１６８９０２Ａ）
【公開日】平成２３年９月１日（２０１１．９．１）
【国際特許分類】
【出願番号】特願２０１０−３２３６３（Ｐ２０１０−３２３６３）
【出願日】平成２２年２月１７日（２０１０．２．１７）
【出願人】（５１００４４１３２）捷欣企業股▲ふん▼有限公司 (1)
【Ｆターム（参考）】
【公開日】平成２３年９月１日（２０１１．９．１）
【国際特許分類】
【出願日】平成２２年２月１７日（２０１０．２．１７）
【出願人】（５１００４４１３２）捷欣企業股▲ふん▼有限公司 (1)
【Ｆターム（参考）】
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