説明

完食サイズのキャットフード製品およびその方法

【解決手段】 発明者らは、ネコが好む1回分の給餌量を発見した。パッケージされた、複数食分の、ユニット化されたキャットフード製品は、ネコが1回で自然に完食できる質量のキャットフードの1若しくは複数の容器を含む。完食サイズのペットフードの提供する方法は、完食サイズの容器を熱処理する工程、または容器を滅菌充填する工程を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2007年8月29日付で出願された米国仮特許出願第60/968,829号に対して利益を主張するものであり、同出願の全体はこの引用によって本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明はペットフードに関し、特に、総合栄養食であるキャットフード製品およびこれに関連する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
ペットフードは一般的に、含有水分によって3つの種類に分類される。すなわち、ドライ・ペットフード、セミモイスト・ペットフード、および高水分含有ペットフードである。ドライ・ペットフードは一般的に、15重量%未満の水分を含有する。セミモイスト・ペットフードは一般的に、15重量%〜55重量%の水分を含有する。含有水分が55%よりも高い、特に約65〜95%の範囲のペットフードは、高水分含有すなわちウェット・ペットフードに分類される。本明細書で用いた「総合栄養食(complete and balanced)」という表現は、全般的に、National Research Council,Nutrient Requirements of Dogs and Cats,The National Academies Press(2006),Washington D.C.;Association of American Feed Control Officials Incorporated, Official Publication(2007)、またはその他の米国や該当する国の業界団体による記述に従っている。また、フードは、ペットフード科学に詳しい当業者が「スナック」や「おやつ(treats)」と呼ぶものと区別すべきである。一般的に、総合栄養食のセミモイストまたはウェット・キャットフードとして入手できる1回分の給餌量として最小のものは、約3oz.〜4oz(85g〜113g)である。
【0004】
ペットフード、特に本開示の対象として、キャットフードは、栄養分、良好な味覚(palatability)、新鮮さなどの課題を包含する、栄養提供の総合的な効果の研究の対象となっている。発明者らは、ネコが好む摂食習慣に関する洞察、特に、ネコは少量の小分けされた量の食餌を好むことを発見した。本発明は、ネコの好みに関する発明者らの発見および洞察の開示である。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の概要は、選択された諸概念を簡略化した形で紹介するために設けており、以下の実施形態の詳細な説明でさらに詳しく説明する。本発明の概要は、本請求事項の主要な特徴や基本的特徴を特定することを目的としておらず、また、本請求事項の範囲を限定するために用いることを目的としていない。
【0006】
本発明の観点は、ネコの自然な摂食パターンに従った消費に適合した1回分の給餌量による、総合栄養食のセミモイストまたはウェット・キャットフード製品に関するものである。従って、本発明の一実施形態によると、総合栄養食のセミモイストまたはウェット・キャットフードは、1回分の給餌量を10g〜40gとしてパッケージする。例えば、パッケージされた、複数食分の、ユニット化されたキャットフード製品は複数の密封容器を有し、当該容器の各々は1つのパッケージまたは容器群に統合または構成され、且つ商業的に滅菌され、質量が少なくとも10グラムでり、40グラムを超えない総合栄養食のキャットフードのユニットを含み、前記キャットフードは当該キャットフード中の含有水分が少なくとも15重量パーセントである。また、前記キャットフード製品は、1回分の給餌量が10g〜40gである単一のユニットにパッケージ化されてもよい。
【0007】
好ましくは、前記キャットフードは保存安定性があるものとする。キャットフードは、無菌すなわち滅菌状態で容器に充填するか、レトルト処理することができる。前記キャットフードは、好ましくは、質量が少なくとも15グラムであり、40グラムを超えず、より好ましくは、少なくとも20グラムであり、35グラムを超えず、さらにより好ましくは、少なくとも20グラムであり、30グラムを超えないものとする。
【0008】
また、ネコの給餌方法が提供され、この方法は、各容器につき少なくとも10グラムの容量を有する複数の容器を提供する工程と、前記各容器に少なくとも10グラムであり、40グラムを超えない総合栄養食のキャットフードを充填する工程と、前記容器を密閉する工程と、前記充填する工程および密閉する工程の後に前記容器を加熱して前記ペットフードを少なくとも部分的に調理または滅菌する工程と、前記加熱する工程の後に前記ペットフードの容器をパッケージに入れて提供する工程であって、これにより前記パッケージの各容器は個別に開けることができるものある前記提供する工程とを含む。
【0009】
別のネコの給餌方法は、各容器につき少なくとも10グラムの容量を有する複数の容器を提供する工程と、各容器に少なくとも10グラムであり、40グラムを超えない商業的に滅菌された総合栄養食のキャットフードを充填する工程と、前記容器を密閉する工程と、前記ペットフードの容器をパッケージに入れて提供する工程であって、これにより前記パッケージの各容器は個別に開けることができるものである前記提供する工程とを含む。
【0010】
好ましくは、容器は最大容量が約40グラムであり、前記キャットフードの所定の特性が好ましくないレベルまで劣化する前にネコが完食できるサイズである。劣化特性は、良好な味覚の低減、含有水分の減少、脂質または風味剤の酸化、揮発性化合物の減少、匂い成分の損失または劣化、悪臭化合物の増加、色の劣化、および/または食感ー要素の損失または劣化を含む。好ましい容器の容量は、上記の通りである。
【0011】
複数食分のセミモイストまたはウェット・キャットフード製品は、複数の、個別にパッケージされた完食サイズのユニットとして構成され、これらはより大きなパッケージに統合される。従って、一実施形態においては、複数食分のセミモイストまたはウェット・キャットフード製品は、様々な風味でネコのための最適な毎日の食餌を提供するように設計されている。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】図1は、ネコが好む食餌の量を示すグラフである。
【図2】図2は、市販ペットフードの含有水分の経時的減少を示すグラフである。
【図3】図3は、新しく露出されたフードに対するネコの嗜好を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
発明者らは、ネコの自然な摂食パターンを研究したところ、ネコは、平均して、特定の給餌量のキャットフードを好むことを発見した。1つの研究においては、ネコに総合栄養食のキャットフードを与え、ネコの自然な摂食パターンを調べた。当該研究群の中のネコは、最高で21時間の間に16回摂食し、平均すると21時間の間に7回であった。さらに、当該群の中のネコの80%以上は、1食当たり約10g〜40g(0.35oz.〜1.41oz.)のキャットフードを摂食し、ネコの群全体の平均は1食当たり24g(0.85oz.)であったが、これは1食当たり約28Kcalの平均カロリー摂取量に相当する。図1は、この研究を棒グラフでまとめたものであり、グラム単位の食餌の量(10g単位で切上げ)、およびネコが摂食した各々の頻度(摂食した全食餌のパーセントで表す)を示している。また、本発明の譲受人は、ネコの飼主のネコに対する給餌の仕方についてのデータを収集した。そのデータによると、ウェット・キャットキャットフードの小さ目のパッケージ(例えば、3oz.〜4oz.)から給餌する時でさえ、ネコにパッケージ全体分を摂食させたネコの飼主は半分にも満たなかったことが示されている。この点に関し、小さい容器(3oz.〜4oz.の缶またはパウチ)にパッケージされたウェット・キャットフードをネコに与えた飼主のうち、わずか40%しかパッケージ全体分をネコに与えておらず、2%はパッケージの約3/4を与え、27%はパッケージの約半分を与え、31%はパッケージの1/4以下を与えた。このデータから、飼主がネコに与えたウェット・キャットフードの平均量は57gであることがわかった。また、本発明の譲受人は、飼主がウェット・キャットフードの未使用の部分をどのように扱っているかについてのデータを収集した。キャットフード・パッケージの一部しかネコに与えていない飼主のうち、60%は残ったキャットフードを元々の容器に入れて冷蔵し、18%は残ったキャットフードを元々の容器に入れるが、冷蔵せず、3%は残ったキャットフードを別の容器に入れて冷蔵し、1%は残ったキャットフードを別の容器に入れるが、冷蔵しなかった。
【0014】
従って、発明者らは、一般に入手できる完食サイズのパッケージは、(i)ネコが自然に1回に摂食を好む量、および(ii)ネコの飼主が1回に与えるのを好む量の両方よりも多いセミモイストまたはウェット・キャットフードを提供していると結論した。また、一般に入手できる完食サイズのセミモイストおよびウェット・キャットフードに関連する別の問題がある。
【0015】
例えば、冷蔵したキャットフードを直ちにネコに与えると、良好な味覚が低減する。本発明の譲受人は、給餌温度がウェット・キャットフードの良好な味覚に及ぼす影響を調べた。この点に関し、20℃の時と比べ、3℃で与えた時にはウェット・キャットフードの良好な味覚は低減する。従って、このデータから、冷蔵したウェット・キャットフードを冷たいまま与えた場合、室温で与えたキャットフードよりも良好な味覚が劣ることがわかる。
【0016】
さらに、ペットが摂食する前に大気条件の空気に長時間曝されたペット用食餌(例えば、キャットフードの食餌)、すなわち既に開けたが与えていない部分は、好ましくない化学変化、物理変化を生じ、また微生物により汚染される。これらの変化は、ペットにとっての食餌の良好な味覚および食餌の栄養価に大いにマイナスの影響を及ぼし、ペットに対する微生物学的危険を引き起こす。
【0017】
化学変化
大気条件に曝されたキャットフードの化学変化には、栄養上の劣化および酸化が含まれる。この点に関し、ペット用食餌は典型的には、栄養、良好な味覚、およびペットおよび/またはペットの飼主に対する全般的な外観上のアピールを提供する幾つかの成分を含むように設計されている。例えば、ビタミンなどの複数の微量栄養素や無機質を添加して、バランスのとれた栄養食をペットに提供することが多い。しかし、一旦ペット用食餌が保護用パッケージから取り出され、餌用の皿の中でむき出しにされると、これらの成分に変化が起こる。ペットフードへの酸素取込みが急速に起こる。例えば、典型的なペットフード成分を有するサンプル50gは、約10時間で酸素950ミリグラムを吸収する。また、ビタミン(A、E)は、急速に光および酸素に当たった時に劣化し、ペットへのフードの栄養分を損なう傾向がある。特に、カロチノイド成分(ビタミンA)は感光性があり、過剰な光に当たると劣化する傾向がある。
【0018】
ペット用食餌はまた、油脂や、天然または調製風味剤も含み、これらはオリジナル・パッケージ内に密封されている間、酸化保護がされている。しかし、これらの成分が空気や高温にさらされると、脂質成分が酸化され、食餌の良好な味覚が劣ったり、美味しくなくなることがある。
【0019】
物理変化
大気条件に曝されたキャットフードの物理変化には、乾燥、および蒸発による揮発分の喪失が含まれる。この点に関し、ウェット式のペット用食餌は、大気条件に曝された時、食餌の成分が乾くことにより、ペットにとっての食餌の良好な味覚が低減することがある。特に、ウェット式のペット用食餌は従来、ローフ型およびチャンク・イン・グレービー型(chunks in gravy)の2つの形式で提供されている。これらの形式は両方とも、空気にさらされると水分を失う。ただし、チャンク・イン・グレービー形式のものは、チャンクから喪失が起こる他、グレービーからも非常に急速に水分を失う。チャンクは、ローフ形式のウェット・キャットフードが空気に曝された時と同様に、水分を失い、劣化する。例えば、図2は、市販のチャンク・イン・グレービー型キャットフードの2種類(チキンおよびビーフ)の含有水分の経時的減少を示している。この表は、3時間にわたる各種類の水分総喪失量を重量パーセント(ドライベース)で示している。
【0020】
【表1】

【0021】
さらに、ウェット式の食餌は、その露出表面の付近で乾燥することがあるため、ペットフードは皮またはクラストを形成することがある。乾燥に関連したクラスト形成または皮形成により、食感が固くなることがあり、これはペットのネコにとって美味しいとは感じられない。特に、ネコはその歯の構成と舌の構造のせいで食餌をよく咀嚼することができず、その代わりに、食餌物に噛み付いて飲み込もうとする傾向があるからである。皮またはクラストが形成されると、ネコが摂食することができるローフ形式の食餌の方法に悪影響が出ることがある。チャンクおよびグレービー形式の食餌において、チャンク成分は、乾燥した空気条件にさらされると乾燥することがある。すると、チャンク缶は食感が固くなり、製品の食感の咀嚼性(chewiness)により、特にネコにとっての良好な味覚が失われる。食餌のグレービー成分は、乾燥した空気条件にさらされると、かなり急速に乾燥し、グレービー成分がねばねばするようになる可能性もあり、そうなると塩分および無機質成分が経時的にグレービーシステムから結晶化または沈殿する。また、乳化構造の喪失により油脂がグレービーシステムから不安定になり、その結果、脂肪が経時的に搾り出されることになり、グレービーの良好な味覚に影響が出ることがある。
【0022】
ペットフード中の幾つかの成分は、ペットのため、およびペットの飼主のため、の両方で、良い匂いにするためにペット用食餌に混合されている。これらのウェット式食餌中の匂いのための化合物は、典型的には、空気にさらされている時は揮発し易く、長時間空気にさらされると消失する。ウェット式食餌は、匂いの損失により、ペットにとっての魅力を失うことがある。例えば夏の風が強い日など、空気が極度に乾燥しているか暑い条件の時、この影響は強まることがある。
【0023】
微生物による汚染
露出したウェット式の食餌は、微生物汚染のリスクを引き起こす。露出したネコ用食餌におけるこの微生物成長のリスクは、経時的に急速に且つ急激に増大する可能性がある。ウェット式のキャット用食餌に対する微生物汚染は様々な要因により発生する。ネコ自体、口内に微生物の叢を大量に抱えており、これがウェット式のペット用食餌に部分的に接触した時に、このペット用食餌を汚染する可能性がある。ネコの口腔内の病原性微生物の幾つかとして、Pasteurella multocida、Staphylococcus aereus(Westling,K.,et al.,Journal of Infection,Vol 5(6)403-407)がある。これらの微生物は、ウェット式のペット用食餌に植菌されると急速に成長し、後に摂食した時のペットへの微生物学的リスクを生じる。例として、ペット用食餌内に200個の微生物負荷があり、これを4時間未満の期間、大気条件にさらし続けた場合、この食餌サンプルに付いた微生物数は、4時間のうちに、細菌細胞数が100万個を超えるようになることがある。これは、微生物成長の最適化条件で非常に急速に細菌細胞が2分裂するからである(Doyle M.P et al.,Food microbiology,1997,page 17)。さらに、微生物成長により微生物学的または化学的劣化が起こると、ペットおよびペットの飼主にとって不快であるか、魅力のない匂いが出る。多くの微生物は、キャットフードの材料が微生物学的副産物に分解した結果、硫黄またはその他の感覚で感知できる化合物を発生する。
【0024】
図3は、開けたばかりのウェット・キャットフードに対するネコの嗜好を、与える前に30分、1時間、2時間、および4時の間、開封状態で放置されたウェット・キャットフードの場合と比較して示しており、ネコは、所定の期間の間、開封状態で放置されたキャットフードよりも開けたばかりのキャットフードを好むことがわかる。
【0025】
発明者らは、一般に手に入る1回分の給餌量の総合栄養食のセミモイストおよびウェット・キャットフード製品は、ネコが1回に摂食する食餌の量よりも一般的に多いため、ネコの自然な食餌パターンに適合しないことを認識した。その結果として、現在の総合栄養食のセミモイストおよびウェット・キャットフード製品は、ネコが一回で全部完食することはほとんどないのである。このように、キャットフードの残り分は廃棄されるか、後で摂食できるよう保存される。残り分を廃棄するのはネコの飼主にとって無駄・浪費である一方、残り分を保存する場合、別の問題が発生する。キャットフードは冷蔵すれば良好な味覚が損なわれ、冷蔵しなければ、上述したように劣化・汚染するからである。従って、本発明は、キャットフードの無駄、およびキャットフードの残り分を保存する必要性を最低限に抑える総合栄養食のセミモイストまたはウェット・キャットフード製品を提供する。
【0026】
一実施形態によると、総合栄養食のセミモイストまたはウェット・キャットフードは、1回分の給餌量を10g〜40gとしてパッケージする。ネコは1回の給餌で10gしか摂食しないこと、また、これよりも少ないこともあることが示されている。従って、10gを提案範囲の下限として確立した。これは、1回分の給餌量として少量でありながら、生産、パッケージ化、および取扱いに関して機能可能に実際的であるからである。40gという数値は、飼主の給餌上の好みに対応して、提案範囲の上限として確立した。飼主は、より大きい3オンス(85グラム)または4オンス(113グラム)の容器から1回の給餌当たり平均57gのキャットフードをネコに与えることに慣れているからである。最終的にはキャットフードを購入するのは飼主であるため、57gよりも相当に小さいキャットフード・パッケージを購入することに幾分とまどいが感じられることがある。このように、ネコのための理想的な完食サイズは57gよりも相当に少ないにも関わらず、数々の理由から、ネコの飼主が購入するするように、1回分の給餌量をより多くしてパッケージすることが必要な場合がある。40gという範囲の上限は、ネコおよびネコの飼主の好みを包含するように考慮してある。本発明は、少なくとも15グラムで、40グラムを超えない範囲、少なくとも20グラムで、35グラムを超えない範囲、および少なくとも20グラムで、30グラムを超えない範囲、を含む他のサイズでパッケージされたウェット・キャットフードも包含する。
【0027】
本明細書では、1回分の給餌量は質量の単位で提示してある。完食サイズの容器は、これに対応する容量がある。このような容器は、好ましいキャットフードの質量を受けることができる容積を有し、パッケージ、レトルト(該当する場合)、およびペットフードのパッケージ技術に詳しい当業者が容器の容量の意味について理解する、その他の公知の事項に適切な上部空間を有する。
【0028】
総合栄養食のセミモイストまたはウェット・キャットフードの1食分の量(すなわち、上述した質量の範囲)は、好ましくは、個別に入れられ、完食サイズのネコの食餌として給餌されるユニットで提供される。キャットフードの1食分の量を密閉容器内に入れてから、保存安定化するか、商業的に滅菌する。本明細書で用いたように、「保存安定性(shelf-stable)」は、密閉された、実質的に気密性の容器に、冷蔵を不要として入れたキャットフードを指す。容器はプラスチック、金属、またはその他の任意の適切な材料で作ることができ、熱可塑性フィルム、フォイル、またはフォイルとプラスチック薄層で密閉することができる。好適な実施形態においては、キャットフードの容器はレトルト処理を行うか、またはその他の方法で商業的に滅菌することができる。パッケージを保存安定化するその他の公知の方法、例えば、無菌充填、固有水分の調節、水分削減および水分調節(例えば、湿潤剤、糖、および塩を用いた水分の結合)、照射、酸性化、防酵母剤および防かび剤の添加、防腐剤の添加、およびこれらの任意の組合せが予期され、本発明に包含される。
【0029】
本発明の少量の1回分の給餌量により、容器の中心部から外側までの特徴的な長さを短くすることができ、多くの場合、与えられた容器形状について表面面積対容積の比を大きくすることができる(容積がより大きいものと比べた場合)。これらの要因により、商業的レトルトおよび滅菌工程が容易化される。この点に関し、商業的レトルトおよび滅菌工程中に、中心部またはコールドスポットが指定された最低温度に加熱されるまで、境界層を貫いてキャットフードを外的に加熱する。一般的に、キャットフードの塊の中心部が指定温度に達するように、境界層を最適時間よりも長時間、高温にさらすので、その結果、境界層が加熱し過ぎとなり、または劣化することが多い。任意の材料密度による完食サイズの容器は、中心領域までの特徴的な距離が短いため、(また、おそらく表面面積対容積の比が大きいため)容積が大きい容器と比較して、境界層が高温にさらされる時間がより短くなる。従って、キャットフードの小さい塊は、加熱媒体に最も近いキャットフードの境界層を加熱し過ぎたり劣化させることなく中心部を指定温度に加熱することにより、商業的に滅菌することができる。
【0030】
発明者らは、本明細書に記載した1食分の量に関するネコの好みは、容積がより大きいものを加熱する場合と比べて1食分の容積を加熱する時の欠点が低減することが理由の一部である可能性があると推測している。さらに、残ったキャットフードの好ましくない物理変化、化学変化、または微生物的変化の他、レトルト温度に曝される時間がより短いことも、ペットが1回で完食するように理想的に1食分の量を設定したキャットフードを、1食分の量を多くしてパッケージし、複数回に分けて摂食するようにしたキャットフードよりもネコが好む要因であろう。
【0031】
本発明の観点によると、個別にパッケージされたキャットフードの複数のユニットを組合わせて複数食分のパッケージにするか、これに組込むことができる。例えば、個別にパッケージされたキャットフードの多数のユニットを、ネコの1日用の全食餌として機能する単一のパッケージにまとめ入れることができる。例えば、完食サイズの容器の幾つかを収縮クラップ、リビングヒンジ(living hinge)、はぎ取り式ストリップ、テープ、またはその他の任意の取付け技術により一緒に構成することができる。また、個別にパッケージされたユニットの各々は、異なる風味または異なる成分を有しても良い。また、複数食分のパッケージは、ネコの具体的な食餌上のニーズのために設計したり、本質的に食餌により多くの変化を与えたり、本質的に食餌により多くの変化を与えることができる。本発明は、本明細書で説明したキャットフードの個別にパッケージされた単一ユニットを包含する。
【0032】
本発明の観点によると、キャットフードの給餌方法が提供される。方法によると、フードの所定の特性(上述した)が好ましくないレベルまで劣化する前に完食できるようになった、完食サイズの総合栄養食のセミモイストまたはウェット・フードをネコに与える。方法は、無菌または滅菌充填、および/またはレトルト処理を包含する。ペットフードの質量および容器サイズは上述した。上述のように、ウェット・フードが空気に触れると、キャットフードの幾つかの重要な成分上および感覚上の側面が劣化しはじめ、経時的に、ネコにとってのキャットフードの魅力が失われるレベルまで劣化する。露出したウェット・フードが経時的にネコにとっての魅力を失うのは、主に、ネコの摂食上の習性に影響を与えることが実証されている特定の揮発性化合物が減少するからである。例えば、含有水分レベルが低減し、その影響で、キャットフードの味と食感がネコにとって魅力的でなくなることがある。また、油分の酸化が起こることがあり、その結果、栄養分が失われ、ネコにとってのキャットフードの良好な味覚に悪影響を与える異臭を生じる。さらに、酸化した脂肪は、細胞の酸化、体内の栄養分の損失、および下痢などの健康上有害な影響を及ぼすことがある。
【0033】
本説明内容は、本発明の実施形態の観点を示すものである。しかしながら、本発明は、本明細書に記載した特定の実施形態に限定されるものではなく、むしろ、ペットフード技術に詳しい当業者なら理解するであろう合理的な変形を包含する。また、本説明内容は、本発明で明らかにしたネコの好みとして考えられる理由を説明しているが、本発明は、これらの説明に限定されたり、これらの説明により限定されるものではない。むしろ、これらの説明は、本発明の教示内容を補完するために提供されている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
パッケージされた、複数食分の、ユニット化されたキャットフード製品であって、
複数の密封容器を有し、
前記密封容器の各々は1つのパッケージに統合されるものであり、且つ商業的に滅菌され、質量が少なくとも10グラムであり40グラムを超えない総合栄養食のキャットフードのユニットを含み、
前記キャットフードは当該キャットフード中の含有水分が少なくとも15重量パーセントある
キャットフード製品。
【請求項2】
請求項1記載のキャットフード製品において、前記キャットフードは保存安定性があるものである。
【請求項3】
請求項2記載のキャットフード製品において、前記キャットフードはレトルト処理により保存安定性を有するものである。
【請求項4】
請求項1記載のキャットフード製品において、前記キャットフードは、質量が少なくとも15グラムであり、40グラムを超えないものである。
【請求項5】
請求項1記載のキャットフード製品において、前記キャットフードは、質量が少なくとも20グラムであり、35グラムを超えないものである。
【請求項6】
請求項1記載のキャットフード製品において、前記キャットフードは、質量が少なくとも20グラムであり、30グラムを超えないものである。
【請求項7】
請求項1記載のキャットフード製品において、前記キャットフードは充填時に商業的に滅菌状態となるものである。
【請求項8】
請求項1記載のキャットフード製品において、前記キャットフードは、レトルト処理により商業的に滅菌状態となるものである。
【請求項9】
ユニット化されたキャットフード製品であって、
商業的に滅菌され、質量が少なくとも10グラムであり40グラムを超えない総合栄養食のキャットフードのユニットを収納する密閉容器を有し、
前記キャットフードは当該キャットフード中の含有水分が少なくとも15重量パーセントである
キャットフード製品。
【請求項10】
請求項9記載のキャットフード製品において、前記キャットフードは保存安定性があるものである。
【請求項11】
請求項10記載のキャットフード製品において、前記キャットフードはレトルト処理により保存安定性を有するものである。
【請求項12】
請求項9記載のキャットフード製品において、前記キャットフードは、質量が少なくとも15グラムであり、40グラムを超えないものである
【請求項13】
請求項9記載のキャットフード製品において、前記キャットフードは、質量が少なくとも20グラムであり、35グラムを超えないものである。
【請求項14】
請求項9記載のキャットフード製品において、前記キャットフードは、質量が少なくとも20グラムであり、30グラムを超えないものである。
【請求項15】
請求項9記載のキャットフード製品において、前記キャットフードは充填時に商業的に滅菌状態となるものである。
【請求項16】
請求項9記載のキャットフード製品において、前記キャットフードは、レトルト処理により商業的に滅菌状態となるものである。
【請求項17】
ネコの給餌方法であって、
各容器につき少なくとも10グラムの容量を有する複数の容器を提供する工程と、
各容器に少なくとも10グラムであり、40グラムを超えない総合栄養食のキャットフードを充填する工程と、
前記容器を密閉する工程と、
前記充填する工程および密閉する工程の後に前記容器を加熱して前記ペットフードを少なくとも部分的に調理または滅菌する工程と、
前記加熱する工程の後に前記ペットフードの容器をパッケージに入れて提供する工程であって、これにより当該パッケージの各容器は個別に開けることができるものである、前記提供する工程と
を有する給餌方法。
【請求項18】
請求項17記載の給餌方法において、各容器は、開封時に、前記キャットフードの所定の特性が好ましくないレベルまで劣化する前に前記ネコが完食できるサイズである。
【請求項19】
請求項18記載の方法において、劣化は良好な味覚(palatability)の低減を意味する。
【請求項20】
請求項18記載の方法において、劣化は含有水分の減少を意味する。
【請求項21】
請求項18記載の方法において、劣化は脂質または風味剤の酸化を意味する。
【請求項22】
請求項18記載の方法において、劣化は揮発性化合物の減少を意味する。
【請求項23】
請求項18記載の方法において、劣化は匂い成分の損失または劣化を意味する。
【請求項24】
請求項10記載の方法において、劣化は悪臭化合物の増加を意味する。
【請求項25】
請求項18記載の方法において、劣化は食感要素の損失または劣化を意味する。
【請求項26】
請求項17記載の方法において、前記提供する工程は、各容器につき少なくとも15グラムであり、40グラムを超えない容量を有する複数の容器を提供する工程を含む。
【請求項27】
請求項17記載の方法において、前記提供する工程は、各容器につき少なくとも20グラムであり、35グラムを超えない容量を有する複数の容器を提供する工程を含む。
【請求項28】
請求項17記載の方法において、前記提供する工程は、各容器につき容量が少なくとも20グラムであり、30グラムを超えない容量を有する複数の容器を提供する工程を含む。
【請求項29】
ネコの給餌方法であって、
各容器につき少なくとも10グラムの容量を有する複数の容器を提供する工程と、
各容器に少なくとも10グラムであり、40グラムを超えない商業的に滅菌された総合栄養食のキャットフードを充填する工程と、
前記容器を密閉する工程と、
前記ペットフードの容器をパッケージに入れて提供する工程であって、これにより当該パッケージの各容器は個別に開けることができるものである、前記提供する工程と
を有する給餌方法。
【請求項30】
請求項29記載の方法において、前記提供する工程は、各容器につき容量が少なくとも15グラムであり、40グラムを超えない容量を有する複数の容器を提供する工程を含む。
【請求項31】
請求項29記載の方法において、前記提供する工程は、各容器につき容量が少なくとも20グラムであり、35グラムを超えない容量を有する複数の容器を提供する工程を含む。
【請求項32】
請求項29記載の方法において、前記提供する工程は、各容器につき容量が少なくとも20グラムであり、30グラムを超えない容量を有する複数の容器を提供する工程を含む。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2010−537646(P2010−537646A)
【公表日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−523182(P2010−523182)
【出願日】平成20年8月29日(2008.8.29)
【国際出願番号】PCT/US2008/074921
【国際公開番号】WO2009/029893
【国際公開日】平成21年3月5日(2009.3.5)
【出願人】(509248154)マーズ インコーポレーテッド (2)
【氏名又は名称原語表記】MARS, INCORPORATED
【Fターム(参考)】