説明

定着装置および画像形成装置

【課題】無端状のベルトを具備する定着装置において、ベルト寄りを確実に防止するとともに、回転するベルトの内側に磨耗粉が発生した場合でも回収できる定着装置および画像形成装置を提供する。
【解決手段】定着装置60は、定着ベルト3の内周面の各側端部に設けられた寄り止め部材10および定着ベルト3の内周面と当接するベルト寄り規制部材としての被摺動部11と、該被摺動部11との当接によって発生する摩耗粉を回収する磨耗粉回収部材としての磨耗粉回収部12とを筺体に有する。これにより、定着ベルト3のベルト寄りを確実に防止するとともに、回転する定着ベルト3の内側に磨耗粉が発生した場合でも回収できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、定着装置および画像形成装置に関し、詳しくは、無端状のベルトを具備する定着装置およびそれを備えた画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
紙やOHPシート等を含むシート状記録媒体(以下、「用紙」で代表して説明する)上に転写され担持されているトナー像からなる未定着画像を加熱定着することにより、複写物や記録物を得る電子写真方式の複写機、ファクシミリ、プリンタ、プロッタあるいはそれら複数の機能を備えた複合機等の画像形成装置が知られている。
この画像形成装置に用いられる加熱定着処理を行う定着装置として、ローラ同士を圧する状態で接触(以下、「圧接」という)構成や、ローラと無端状のベルトとを組み合わせた構成が知られている。ベルトを用いる構成では、ローラ対を用いる構成における未定着画像に接する側に位置するローラに代えて、1対のローラに掛け渡されたベルトを配置し、この1対のローラの1つには用紙を圧接する加圧ローラを対向させている。
【0003】
ベルトが掛け渡されるローラのうち加圧ローラと対向するローラは定着ローラとされ、定着ローラ以外のローラはベルトを加熱するための熱源を備えた加熱ローラとされている。このようなベルト(以下、「定着ベルト」ともいう)を用いたベルト定着方式では、定着ベルトの熱容量が小さいのでウォーミングアップタイムを短縮できるとともに省エネルギに寄与するという利点がある(例えば、特許文献1および2参照)。
【0004】
ローラに巻き掛けている定着ベルトは、ローラの軸方向に移動しすぎてしまうと、トナー像を定着できないばかりか、自身が破壊してしまう。この不具合現象を「ベルト寄り」という。ベルト寄りを防止するためには、巻き掛けているローラ同士の平行度の精度を上げる必要があることは知られているが、平行度をゼロにすることはできない。
【0005】
ベルト寄りを防止する技術として、ベルトの位置を検出してフィードバックし、モータを制御してローラ平行度を変更させることも提案されているが、多くの部品、複雑な制御が必要となる。
【0006】
また、ベルト端面をそのままベルト側面に配置された部材に突き当てる方法や、特許文献1の背景技術における段落「0003」に記載されているように、ベルト寄り規制部材として定着ベルトの裏面(内側)に寄り止めゴムなどの弾性材料ないし可撓性材料を接着し、巻き掛けている各ローラの端面で突き当てることで、ベルト寄りを規制する手段が知られている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記特許文献1に記載されているような定着ベルトの裏面に固定したベルト寄り規制部材を、巻き掛けている各ローラの端面で突き当てる技術では、高生産性を得るために、より大きい定着ニップを構成し、より高速でベルトを回転させると、ベルト寄りに対して不利になり、ベルトが加熱ローラの当接部に乗り上げやすくなってしまうという問題点(課題)がある。
【0008】
また、例えば、特許文献2で提案されているようなベルト寄りを検知する検知ローラ、矯正ローラおよび変換手段を有する従動ローラユニットを、回転する定着ベルトの内側に配置すると、従動ローラユニットの上記各部材との接触・摺動によって磨耗粉が発生することがある。このような磨耗粉等の異物がベルト内に存在すると、定着ベルトの内周に沿って加熱ローラ表面まで到達して定着ベルト内面と加熱ローラとの間の熱伝達が不均衡となり、画像障害を起こすという問題点(課題)がある。
【0009】
本発明は、上述した事情・課題に鑑みてなされたものであり、無端状のベルトを具備する定着装置において、ベルト寄りを確実に防止するとともに、回転するベルトの内側に磨耗粉が発生した場合でも回収できる定着装置および画像形成装置を提供することを主な目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述した課題を解決するとともに上述した目的を達成するために、本発明では、以下のような特徴ある手段・発明特定事項(以下、「構成」という)を採っている。
本発明は、熱源を有する加熱回転体と定着回転体とに巻き掛けられ、内周側の各側端部に寄り止め部材を有する無端状のベルトと、該ベルトを介して前記定着回転体と対向して配置され、前記ベルトの外周面を押し付けて前記ベルトとの間でニップ部を形成する加圧回転体と、前記ニップ部出口近傍に配置され、前記ニップ部出口を通過するシートを分離する分離部とを備える定着装置において、前記ニップ部出口の前記分離部近傍における前記ベルトの内側にそれぞれ配置され、前記寄り止め部材および前記ベルトの内周面と突き当たり接触するベルト寄り規制部材と、該ベルト寄り規制部材との接触によって発生する摩耗粉を回収する磨耗粉回収部材とを装置本体に具備することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、前記課題を解決して前記目的を達成できる新規な定着装置および画像形成装置を提供することができる。
すなわち、本発明によれば、前記構成により、ベルトの寄り止め部材に加えて、ニップ部出口の分離部近傍に配置されたベルト寄り規制部材および磨耗粉回収部材によって、ベルト寄り防止に対する余裕度が高くなるので、ベルト寄りを確実に防止できるとともに、寄り止め部材およびベルトの内周面と突き当たり接触するベルト寄り規制部材との摺動部から磨耗粉が発生した場合でも回収できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の一実施形態を示す定着装置の要部の正面図である。
【図2】(a)は図1の定着装置の要部の簡略的な正面図およびその拡大図、(b)は定着ベルト、被摺動部および摩耗粉回収部の定着ローラ長手方向での断面図、(c)は(b)の底面図である。
【図3】図1の定着装置の要部の拡大図であって、定着ベルト、被摺動部および摩耗粉回収部の形状・配置状態を示す正面図である。
【図4】本発明を適用する画像形成装置の一例としてのフルカラー複写機全体の構成図である。
【図5】比較例の定着装置の構成図である。
【図6】比較例の定着装置に設けられる寄り止め部材の一部を破断して示す一部断面平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図を参照して本発明の実施の形態(以下、「実施形態」という)を詳細に説明する。各実施形態および比較例等に亘り、同一の機能および形状等を有する構成要素(部材や構成部品等)については、混同の虞がない限り一度説明した後では同一符号を付すことによりその説明を省略する。公開特許公報等の構成要素を引用して説明する場合は、その符号に括弧を付して示し、各実施形態等のそれと区別するものとする。
【0014】
先ず、図4を参照して、本発明を適用する画像形成装置の一例を説明する。図4は、本発明を適用する画像形成装置の一例としてのタンデム中間転写方式のフルカラー複写機を示す全体構成図である。
このフルカラー複写機は、装置本体100と、装置本体100の下部に配置され装置本体100を載せる給紙テーブル200と、装置本体100の上部に配置された画像読取装置であるスキャナ300と、スキャナ300のさらに上部に配置された原稿自動搬送装置(ADF)400とから構成されている。
【0015】
装置本体100のほぼ中央部には、Y(イエロー)、C(シアン)、M(マゼンタ)、Bk(ブラック)の4つの画像形成手段としての画像形成ユニット18Y、18C、18M、18Bk(以下、「18Y〜Bk」と略記する)を横に並べて配置してタンデム画像形成部20が構成されている。各画像形成ユニット18Y〜Bkは、それぞれY、C、M、Bkの各色トナー像が形成される像担持体としての感光体40Y、40C、40M、40Bk(以下、「40Y〜Bk」と略記する)を有している。
以下、各画像形成ユニット18Y〜Bkの構成は、同様であるため、この画像形成ユニット18Y〜Bkおよび感光体40Y〜Bkのみにトナー色を表す添字符号を付すこととする。また、図の簡明化のため、画像形成ユニット18Yのみにこのユニットを構成する装置の符号37、58、38を付し、他の画像形成ユニット18C、18M、18Bkでは省略する。
【0016】
タンデム画像形成部20の上方には、露光装置21が設けられている。露光装置は、各色毎に用意されたレーザダイオード(LD)方式の4つの光源と、ポリゴンミラーとポリゴンモータから構成される1組のポリゴンスキャナと、各光源の光路に配置されたレンズやミラーから構成されている。各色の画像情報に応じてLDから射出されたレーザ光はポリゴンスキャナにより偏向走査され各色の感光体40Y〜Bkに照射される。
【0017】
タンデム画像形成部20の下方には、無端ベルト状の中間転写ベルト26が設置されている。中間転写ベルト26は、3つの支持ローラ27、28、29に掛け回して図中時計回りに回転搬送可能であり、支持ローラ27は中間転写ベルト26を回転駆動する駆動ローラである。また、支持ローラ27と支持ローラ28間には、各色の感光体40Y〜Bkから中間転写ベルト26にトナー像を転写する一次転写手段としての一次転写ローラ62が中間転写ベルト26を間に挟んで各感光体40Y〜Bkに対向するように設けられている。
【0018】
中間転写ベルト26の下方には、2次転写装置22が配置されている。2次転写装置22は、2つのローラ23間に、無端ベルトである2次転写ベルト24を掛け渡して構成し、中間転写ベルト26を介して支持ローラ29に押し当てて配置し、中間転写ベルト26上の画像をシート状記録媒体の一例としての用紙に転写する。
【0019】
2次転写装置22の左側には、用紙上の未定着画像(トナー像)を定着する定着装置70が配置されている。定着装置70は、無端状のベルトである定着ベルト3に加圧ローラ4を押し当てて構成されている。定着装置70の細部構成は、後述する図5および図6に示す比較例で説明する。
【0020】
上述した2次転写装置22は、画像転写後の用紙を定着装置70へと搬送する用紙(シート)搬送機能も備えている。もちろん、2次転写装置として、転写ローラや転写チャージャを配置してもよく、そのような場合は、この用紙搬送機能を別途備える必要がある。
なお、図示例では2次転写装置22および定着装置70の下方に、上述したタンデム画像形成部20と平行に、用紙を反転排紙したり、用紙の両面に画像を形成するために用紙を反転して再給紙したりする反転装置30を備えている。
【0021】
このフルカラー複写機を用いてコピー動作を行うときは、ADF400の原稿台30上に原稿をセットする。または、ADF400を開いてスキャナ300のコンタクトガラス32上に原稿をセットし、ADF400を閉じて原稿を押さえる。そして、不図示の操作部のスタートスイッチを押すと、ADF400に原稿をセットしたときは、原稿を搬送してコンタクトガラス32上へと移動した後、他方コンタクトガラス32上に原稿をセットしたときは、直ちにスキャナ300を駆動して原稿内容を読み取る。その後、操作部でのモード設定、あるいは操作部で自動モード選択が設定されている場合には原稿の読み取り結果に従い、フルカラーモードまたは白黒モードで画像形成動作を開始する。
【0022】
フルカラーモードが選択された場合には、各感光体40Y〜Bkが図4で反時計回り方向にそれぞれ回転する。そして、その各感光体40Y〜Bkの表面が帯電装置37により一様に帯電される。そして、各色の感光体40Y〜Bkには露光装置21から各色の画像に対応するレーザ光がそれぞれ照射され、各色の画像データに対応した潜像がそれぞれ形成される。各潜像は感光体40Y〜Bkが回転することにより各色の現像装置58で各色のトナーが現像される。各色のトナー像は中間転写ベルト26の搬送とともに、中間転写ベルト26上に順次転写されて中間転写ベルト上にフルカラー画像が形成される。転写後の感光体40Y〜Bkは除電ランプにより光除電され、クリーニング装置38により転写残のトナーが除去される。したがって、帯電装置37、露光装置21および現像装置58は、感光体40Y〜Bk上にY、C、M、Bkの各色の画像(トナー像)を形成する画像形成手段を構成している。
【0023】
一方、給紙テーブル200内に複数配置して設けられ(以下、「配設」という)ている給紙ローラ42の1つを選択回転し、給紙テーブル200のペーパーバンク43に多段に備える給紙カセット44の1つから用紙を送り出し、分離ローラ45で1枚ずつ分離して給紙路46に入れ、搬送ローラ47で搬送して装置本体100内の給紙路48に導き、その先端をレジストローラ49に突き当てて止める。または、手差し給紙の場合には、給紙ローラ50を回転して手差しトレイ51上の用紙を送り出し、分離ローラ52で1枚ずつ分離して手差し給紙路53に入れ、同じくその先端をレジストローラ49に突き当てて止める。そして、中間転写ベルト26上のフルカラー画像にタイミングを合わせてレジストローラ49を回転し、中間転写ベルト26と2次転写装置22との間に用紙を送り込み、2次転写装置22で転写して用紙上にトナー像を転写する。
【0024】
トナー像が転写された用紙は、2次転写装置22で搬送されて定着装置70へと送り込まれ、定着装置70で熱と圧力とを加えて用紙に定着された後、切換爪55で切り換え案内されて排出ローラ56で排出され、排紙トレイ57上にスタックされる。または、切換爪55でその搬送方向が切り換えられてシート反転装置30に入れ、そこで反転して再び2次転写装置22へと再給紙され、裏面にも画像を記録した後、排出ローラ56で排紙トレイ57上に排出される。以降、2枚以上の画像形成が指示されているときには、上述した作像プロセスが繰り返される。
【0025】
白黒モードが選択された場合には、支持ローラ15が下方に移動し、中間転写ベルト26を感光体40Y、40C、40Mから離間させる。感光体40Bkのみが図4の反時計回り方向に回転し、感光体40Bkの表面が帯電ローラ70により一様に帯電され、Bkの画像に対応するレーザ光が照射され、潜像が形成され、Bkのトナーにより現像されてトナー像となる。このトナー像は中間転写ベルト26上に転写される。この際、Bk以外の3色の感光体40Y、40C、40M、現像装置58は停止しており、感光体や現像剤の不要な消耗を防止する。
一方、給紙カセット44から用紙が給紙され、レジストローラ49により、中間転写ベルト26上に形成されているトナー像と一致するタイミングで搬送される。トナー像が転写された用紙は、フルカラー画像の場合と同様に定着装置70で定着され、指定されたモードに応じた排紙系を通って処理される。以降、2枚以上の画像形成が指示されているときには、上述した作像プロセスが繰り返される。
【0026】
(比較例)
後述する本発明の実施形態を示す定着装置の特有の構成を明確にするため、図5および図6を参照して、上述した比較例を示す定着装置70の構成を説明する。図5および図6において、Xは用紙(シート)搬送方向を、Yは用紙搬送方向と直交する幅方向(以下、「用紙幅方向」ともいう)を、Zは上下(鉛直)方向を、それぞれ表している。
【0027】
図5に示す定着装置70は、ベルト定着方式であり、加熱回転体の一例としての加熱ローラ1と、定着回転体の一例としての定着ローラ2と、無端状のベルトの一例としての定着ベルト3と、加圧回転体の一例としての加圧ローラ4と、加熱ローラ1を回転駆動することにより定着ベルト3を図示矢印(時計回り)方向に回転させてシートとしての用紙5を搬送する図示しない駆動手段とを備えている。
【0028】
中空状の加熱ローラ1と加圧ローラ4との内部には、熱源の一例としてのヒータランプ6、7が配設されている。加熱ローラ1と定着ローラ2と加圧ローラ4とは、定着装置70の装置本体の一例としての筺体8の長手方向(図5の紙面に直交して紙面を貫通する方向)に各軸を介して回転可能に支持されている。
より具体的には、加熱ローラ1と定着ローラ2と加圧ローラ4とは、図6(a)に示すように、図5に示した筺体8の紙面手前側および紙面奥側に固着されている筺体側板8a、8b参照)に各軸を介して回転可能に支持されている。
ヒータランプ6、7は、筺体8に固定保持されている。
【0029】
定着ベルト3は、加熱ローラ1の外周と定着ローラ2の外周とに巻き掛けられていて、図示しないばね等の付勢手段により、定着ベルト3の内側・内周面に押し付けられるように設けられたテンションローラ9によってテンションを付与されている。テンションローラ9は、例えば円筒形をなすアルミニウム菅で形成さており、筺体8の長手方向に各軸を介して定着ベルト3に回転可能に支持されている。
なお、テンションローラによるテンションの付与は、定着ベルト3の外側からでも構わないが、定着ベルト3の外周表面にキズがつくと、定着した画像に影響を与える可能性があるため、定着ベルト3の外周表面に非接触となる内側から外側に向けてのテンション付与が望ましい。
【0030】
定着ベルト3は、所定の厚さのPI(ポリイミド)層で形成された無端ベルトであって、その外周表面にはPFA膜等のオフセット防止剤がコーティングされたものである。
【0031】
加圧ローラ4は、定着ベルト3を介して定着ローラ2と対向して配置され、図示しない接離手段によって定着ローラ2の中心方向に定着ベルト3の外周面を加圧されている。この加圧状態によって加圧ローラ4と定着ベルト3との間にニップ部Nが形成される。
加熱ローラ1と、ニップ部Nを構成する定着ローラ2とは、ニップ部Nの幅を広くするためローラ表面に弾性体であるシリコンゴムを巻いている。シリコンゴムに代えて、金属ローラとしてもよい。
【0032】
加熱ローラ1の近傍と加圧ローラ4の近傍との各所定位置に配置されている図示されていない温度センサにより、加熱ローラ1、加圧ローラ4の各温度を検出し、図示しない制御装置によって所定の温度に制御されている。
【0033】
上記図示しない駆動手段は、モータと駆動力伝達手段としての減速ギヤ列を備えていて、定着ローラ2にギヤを介して連結・接続され、定着ローラ2を図中矢印(時計回り)方向に回転駆動するように構成されている。この定着ローラ2の回転により、定着ローラ2に圧接する加圧ローラ4は図中反時計回りに、定着ベルト3は図中時計回りに、それぞれ定着ベルト3と同速で回転する。
【0034】
ニップ部Nの出口近傍には、ニップ部Nの出口を通過する用紙5を定着ベルト3および/または加圧ローラ4から剥離・分離する分離手段ないし分離部材の一例としての分離板73、加圧分離爪72を備えた分離部が配置されている。
【0035】
加熱ローラ1に内蔵されたヒータランプ6の発熱による熱は、加熱ローラ1を介して定着ベルト3に伝わり、定着ベルト3が加熱される。加圧ローラ4と定着ベルト3とは、互いに逆回転しているので、用紙5に担持(転写)されているトナー像をニップ部Nで加熱溶融させながら用紙5を搬送する。
【0036】
上述したような基本構成からなる比較例の定着装置70において、トナー像を担持(転写)された用紙5は、2次転写ベルト24によって搬送され、さらにニップ部Nよりも定着ベルト3の用紙(シート)搬送方向の上流側に配置された入口ガイド71に案内されながらからニップ部Nに向かって搬送される。そして、用紙5上のトナー像はニップ部Nで加熱溶融されることによって用紙5上に定着される。定着後の用紙5は、ニップ部Nよりも用紙搬送方向の下流側に配置された加圧分離爪72により加圧ローラ4から、分離板73により定着ベルト3から、それぞれ剥離される。この後、定着後の用紙5は、分離板73よりもさらに用紙搬送方向の下流側に配置された図4に示した切換爪55によって用紙搬送方向が選択された後、選択された用紙搬送方向に搬送されることとなる。
【0037】
図6を参照して、比較例の定着装置における定着ベルト3の寄り止め構成を説明する。図6(a)に示すように、定着ベルト3の内周側(内側)の各側端部(図6の左右両側)には、ゴムで形成された寄り止め部材10が全内周に渡り接着・固定されている。寄り止め部材10は、断面略正方形ないし矩形形状であり、立体視では段差状をなす。寄り止め部材10が、加熱ローラ1の各端面に突き当たった状態で接触(以下、「当接」という)することで、定着ベルト3が移動する力に対してストッパーの役割をしている。
【0038】
(実施形態)
図1〜図3を参照して、本発明の一実施形態に係る定着装置60について説明する。図1は本発明の一実施形態を示す定着装置の要部の正面図、図2(a)は図1の定着装置の要部の簡略的な正面図およびその拡大図、(b)は定着ベルト、被摺動部および摩耗粉回収部の定着ローラ長手方向での断面図、(c)は(b)の底面図である。図3は図1の定着装置の要部の拡大図であって、定着ベルト、被摺動部および摩耗粉回収部の形状・配置状態を示す正面図である。なお、図4において括弧を付して示す符号60は、本実施形態の定着装置60がフルカラー複写機に適用され搭載されることを表している。
【0039】
本実施形態の定着装置60は、図5の比較例の定着装置70と比較して、図1〜図3に示すように、寄り止め部材10および定着ベルト3の内周面と当接するベルト寄り規制部材の一例としての被摺動部11と、該被摺動部11との当接によって発生する摩耗粉を回収する磨耗粉回収部材の一例としての磨耗粉回収部12とを筺体(図示せず)に有する点、接離手段14を有することを明定した点、図5に示した加圧分離爪72を除去した点、図6に示したように、定着ベルト3の加熱ローラ1の長手方向(用紙幅方向Yでもある)における寄り止め部材10の位置を、加熱ローラ1の長さに合わせてその各端面に当接するように設定されている点が主に相違する。これら相違点以外の本実施形態の構成は、図5および図6に示した比較例と同様である。
以下、ベルト寄り規制部材である被摺動部11および磨耗粉回収部材である磨耗粉回収部12を総称して、ベルト寄り規制手段ともいう。
【0040】
被摺動部11は、図1〜図3においてハッチを施して示しており、アルミニウムやステンレススチール等の金属で形成されている。磨耗粉回収部12は、梨地模様で示しており、フェルトで形成されている。被摺動部11と磨耗粉回収部12とは、上記した材質に限らず、定着装置の機能を損なわず、各々の機能を発揮するものであれば何でもよい。
【0041】
被摺動部11と磨耗粉回収部12とは、図2(a)、図2(b)に示すように、ステイ13に図示しないネジで締結固定されている(図2(a)、図2(b)の上下(鉛直)方向Zに縦の破線で示す位置がネジ止め位置を示している)。ステイ13は、所定の強度・剛性を備えた材料として、例えば金属(鋼板やステンレススチール)で形成されていて、被摺動部11と磨耗粉回収部12と保持する保持部材として機能する。
【0042】
図2(b)に示すように、被摺動部11が定着ベルト3の内側から突出して定着ベルト3の内周面に当接している厚さC(ステイ13取り付け面からの高さないし段差でもある)は、定着ベルト3の内側の両側端部に固定されている寄り止め部材10の厚さ(高さないし段差)Bよりも若干大きく形成されている。また、被摺動部11の用紙幅方向Yの長さは、定着ローラ2の長手方向(軸方向、用紙幅方向Yでもある)に巻き掛けられている定着ベルト3の寄り止め部材10間の長さよりもやや長く形成されている。これにより、定着ベルト3にベルト寄りが生じるとき、寄り止め部材10が被摺動部11の段差部分に突き当たるようになっている。
【0043】
ステイ13は、ニップ部N出口の分離部近傍における定着ベルト3の内側に非接触状態で、図1および図2(a)の紙面の手前側および奥側に貫通して配置されている。ステイ13の両端部は、図6に示した筺体側板8a、8bに固着されている不動部材(図示せず)に図示しないネジで固定されている。
これにより、被摺動部11および磨耗粉回収部12(ベルト寄り規制手段)は、ニップ部N出口の分離部近傍における定着ベルト3の内側にそれぞれ配置されている。加えて、被摺動部11および磨耗粉回収部12は、共に装置本体としての筺体8に対して着脱可能に設けられている。換言すれば、被摺動部11および磨耗粉回収部12(ベルト寄り規制手段)は、ステイ13およびネジを介して、交換可能かつ分離可能にそれぞれ配置されている。
【0044】
上述したとおり、フェルトで形成された磨耗粉回収部12が、定着ベルト3の回転方向において被摺動部11配置部の下流側に設置されているので、寄り止め部材10および定着ベルト3の内周面と被摺動部11との当接によって磨耗粉が発生した場合には、フェルト製の磨耗粉回収部12で定着ベルト3の内周面(裏面)を摺擦(摺るように擦る状態を意味する)磨耗粉を回収することができる。
【0045】
接離手段14は、加熱ローラ4をしてニップ部Nを形成する加圧位置と、該加圧位置から離間した非加圧位置との間で変位・揺動させるものである。接離手段14は、加熱ローラ4を回転可能に支持するとともに、軸61を中心として揺動可能なアーム62と、アーム62の自由端部に係わり合う(以下、「係合」という)に設けられた偏心カム63とから主に構成されている。
【0046】
軸61は、図6に示し筺体側板8a、8bの不動部材に所定角度の範囲で時計回りおよび反時計回りに回転可能(以下、「回動」という)に支持されている。アーム62の基端部は軸61に固定され、偏心カム63はアーム62の自由端部に係合可能に設けられている。偏心カム63のカム軸63aには、図示しないモータ等の駆動手段がギヤ等の駆動力伝達手段を介して連結されている。
【0047】
ここで、接離手段14の動作を説明しておく。図示しないモータ等の駆動手段の駆動により、偏心カム63が回転し、図1に示すように偏心カム63の大径部がアーム62の自由端部に係合したときには、アーム62の自由端部が軸61を中心として反時計回りに揺動し、加圧ローラ4が定着ベルト3を介して定着ローラ2に圧接することで、加圧ローラ4が加圧位置を占め、ニップ部Nが形成される。一方、偏心カム63がさらに回転し、偏心カム63の小径部がアーム62の自由端部に係合したときには、アーム62の自由端部が自重またはばね等の付勢力により軸61を中心として時計回りに揺動し、加圧ローラ4が定着ベルト3および定着ローラ2から離間して非圧接(脱圧)状態になることで、加圧ローラ4が非加圧位置を占める。
【0048】
被摺動部11および磨耗粉回収部12(ベルト寄り規制手段)は、図1等に示すように、加圧ローラ4の揺動変位により脱圧時には接触しないが、加圧時には定着ベルト3を介して加圧ローラ4に接触するようにニップ部出口近傍に配置されている。さらに、用紙分離のための分離板73が、被摺動部11および磨耗粉回収部12における定着ベルト3の回転方向の直ぐ下流に配置されている。
【0049】
図3を参照して、被摺動部11および磨耗粉回収部12(ベルト寄り規制手段)と加圧ローラ4との隙間(ギャップ)Aについて説明する(請求項3)。
上述したとおり、被摺動部11および磨耗粉回収部12(ベルト寄り規制手段)のうちでも特にベルト寄り規制部材である被摺動部11は、加圧ローラ4に近接して配置されている。加えて、接離手段14によって加圧ローラ4が非加圧位置を占めているとき、加圧ローラ4の外周面と被摺動部11との隙間Aが、寄り止め部材10(図2(b)参照)の厚さBと比べて小さく設定(A<Bである)されている。
【0050】
加圧ローラ4の隙間Aの一番狭い部位が定着ベルト3内側の寄り止め部材10の厚さBより小さいことで、定着ベルト3の裏面側の各側端部に存在する寄り止め部材10の厚さないし高さ段差分が定着ローラ2の外周面に乗り上げようとしても、定着ベルト3の寄り止め部材10の高さ段差分浮き上がる前に加圧ローラ4の外周面によって押さえ付けられ、定着ベルト3の寄り止め部材10が被摺動部11を乗り越えて、定着ローラ2の外周面に乗り上がることはない。次に説明する場合のように加圧ローラ4と被摺動部11とが定着ベルト3を介して当接している場合は最も有利となるが、当接していない場合、上記した条件にすることでベルト寄りに対して有利となる。
【0051】
次に、加圧ローラ4が加圧位置を占めているとき、加圧ローラ4と被摺動部11とが定着ベルト3を介して当接している場合について説明する(請求項4)。この場合、定着ベルト3の寄り止め部材10の厚さないし高さ段差分が加圧ローラ4の外周面によって押さえ付けられるので、定着ベルト3が寄り止め部材10の厚さないし高さ段差分を乗り越えることがなくなる。
【0052】
ここで、被摺動部11の形状について補説する(請求項5)。図3に示すように、被摺動部11の定着ベルト3の裏面(内周面)と摺り合った状態で接触(摺接)する外周形状は、被摺動部11配置部の定着ベルト3の曲率が、被摺動部11が配置されていない場合のニップ部N出口分離部近傍の定着ベルト3の曲率と比べ、大きくなるように設定されている。
被摺動部11の外周形状が上記のとおりであるため、用紙(シート)分離性が向上する。図1に示した本実施形態においては、用紙(シート)分離性が向上した。
【0053】
上述した構成および動作のとおり、本実施形態によれば、第1に、従来のベルトの寄り止め部材10に加えて、ニップ部N出口の分離部近傍に配置されたベルト寄り規制部材としての被摺動部11および磨耗粉回収部材としての磨耗粉回収部12によって、ベルト寄り防止に対する余裕度が高くなるので、定着ベルト3のベルト寄りを確実に防止できるとともに、被摺動部11および定着ベルト3の内周面と当接する被摺動部11との摺動部分から磨耗粉が発生した場合でも回収できる(請求項1)。
【0054】
第2に、被摺動部11および磨耗粉回収部12の少なくとも一方(本実施形態例では両方)は、筺体8に対して着脱可能に設けられていることにより、被摺動部11の磨耗や、磨耗粉回収部12が経時劣化した場合に該当部位のみ交換できるので、コストダウンになる(請求項2)。
【0055】
第3に、加圧ローラ4が非加圧位置を占めているとき、加圧ローラ4の外周面と被摺動部11との隙間Aが、寄り止め部材10の厚さBと比べて小さく設定されていることにより、寄り止め部材10の厚さないし高さ段差分が定着ローラ2の外周面に乗り上げようとしても定着ベルト3の寄り止め部材10の高さ段差分浮き上がる前に加圧ローラ4の外周面によって押さえ付けられ、定着ベルト3の寄り止め部材10が被摺動部11を乗り越えて、定着ローラ3の外周面に乗り上がることがない(請求項3)。
【0056】
第4に、加圧ローラ4が前記加圧位置を占めているとき、被摺動部11は、定着ベルト3を介して、加圧ローラ4の外周面に当接することにより、定着ベルト3の寄り止め部材10の厚さないし高さ段差分が加圧ローラ4の外周面によって押さえ付けられるので、定着ベルト3が寄り止め部材10の厚さないし高さ段差分を乗り越えることがなくなる(請求項4)。
【0057】
第5に、被摺動部11の定着ベルト3の裏面(内周面)と摺接する外周形状は、被摺動部11配置部の定着ベルト3の曲率が、被摺動部11が配置されていない場合のニップ部N出口分離部近傍の定着ベルト3の曲率と比べ、大きくなるように設定されていることにより、用紙(シート)分離性が向上する(請求項5)。
【0058】
第6に、定着装置60を図4に示した画像形成装置としてのフルカラー複写機に適用し搭載した場合、上述した第1〜第5の利点・効果を奏することは無論である(請求項6)。
【0059】
本発明に係る画像形成装置は、図4に示したフルカラー複写機に限らず、本発明に係る定着装置を適用・搭載できる画像形成装置であればよく、例えば、複写機、プリンタ、ファクシミリ、プロッタを含む画像形成装置、またはこれら2つ以上の機能を備えた複合機等においても適用可能である。
また、シート状記録媒体としては、用紙5に限らず、薄紙から厚紙、はがき、封筒、あるいはOHPシート等まで、特には電子写真方式の画像形成手段を用いて画像形成可能な全ての記録媒体・シートを含むものである。
【符号の説明】
【0060】
1 加熱ローラ(加熱回転体)
2 定着ローラ(定着回転体)
3 定着ベルト(ベルト)
4 加圧ローラ(加圧回転体)
5 用紙(シート状記録媒体)
6、7 ヒータランプ(熱源)
8 筺体(装置本体)
9 テンションローラ
10 寄り止め部材
11 被摺動部(ベルト寄り規制部材)
12 摩耗粉回収部(摩耗粉回収部材)
13 ステイ
14 接離手段
18Y、18C、18M、18Bk 画像形成ユニット(画像形成手段)
40Y、40C、40M、40Bk 感光体(像担持体)
60 定着装置
X 用紙(シート)搬送方向
Y 幅方向
Z 上下方向
【先行技術文献】
【特許文献】
【0061】
【特許文献1】特開2009−151260号公報(段落「0003」〜「0005」参照)
【特許文献2】特開2010−175617号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱源を有する加熱回転体と定着回転体とに巻き掛けられ、内周側の各側端部に寄り止め部材を有する無端状のベルトと、該ベルトを介して前記定着回転体と対向して配置され、前記ベルトの外周面を押し付けて前記ベルトとの間でニップ部を形成する加圧回転体と、前記ニップ部出口近傍に配置され、前記ニップ部出口を通過するシートを分離する分離部とを備える定着装置において、
前記ニップ部出口の前記分離部近傍における前記ベルトの内側にそれぞれ配置され、前記寄り止め部材および前記ベルトの内周面と突き当たり接触するベルト寄り規制部材と、該ベルト寄り規制部材との接触によって発生する摩耗粉を回収する磨耗粉回収部材とを装置本体に具備することを特徴とする定着装置。
【請求項2】
請求項1記載の定着装置において、
前記ベルト寄り規制部材および前記磨耗粉回収部材の少なくとも一方は、前記装置本体に対して着脱可能に設けられていることを特徴とする定着装置。
【請求項3】
請求項1または2記載の定着装置において、
前記加圧回転体は、前記ニップ部を形成する加圧位置と、該加圧位置から離間した非加圧位置との間で変位可能に構成されており、
前記ベルト寄り規制部材は、前記加圧回転体に近接しており、
前記加圧回転体が前記非加圧位置を占めているとき、前記加圧回転体の外周面と前記ベルト寄り規制部材との隙間が、前記寄り止め部材の厚さと比べて小さく設定されていることを特徴とする定着装置。
【請求項4】
請求項3記載の定着装置において、
前記加圧回転体が前記加圧位置を占めているとき、前記ベルト寄り規制部材は、前記ベルトを介して、前記加圧回転体の外周面に突き当たり接触することを特徴とする定着装置。
【請求項5】
請求項1ないし4の何れか一つに記載の定着装置において、
前記ベルト寄り規制部材の形状は、前記ベルト寄り規制部材配置部の前記ベルトの曲率が、前記ベルト寄り規制部材が配置されていない場合の前記分離部近傍の前記ベルトの曲率と比べ、大きくなるように設定されていることを特徴とする定着装置。
【請求項6】
請求項1ないし5の何れか一つに記載の定着装置を具備することを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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