説明

定量ポンプの運転装置

【課題】気体や空気を除去するための電磁弁を必要とせず、しかも薬剤が系外に排出されることを防止しつつ薬剤の移送を行うことができる定量ポンプの運転装置を提供することである。
【解決手段】所定量の移動流体を吐出する通常時ストローク量で定量ポンプ11を駆動する通常時駆動手段21と、通常時ストローク量より大きい予め定めた不具合時ストローク量で定量ポンプ11を駆動する不具合時駆動手段22とを備え、気体が発生しやすい移動流体を移送する定量ポンプを運転するにあたり、起動制御手段20は、定量ポンプの起動時には不具合時駆動手段22を動作させ、その後に通常時駆動手段21を動作させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、気体が発生しやすい移動流体を移送する定量ポンプを運転する定量ポンプの運転装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、水処理設備においては、水処理のために薬剤タンクに貯蔵された薬剤を定量ポンプで水処理系統の配管に移送し注入するようにしている。薬剤が次亜塩素酸ソーダ溶液のように気体が発生しやすい移動流体である場合には、定量ポンプのヘッド内や吐出通路内に気体が溜り適切なポンプ圧縮動作ができなくなることがある。また、吸込口側で薬剤に空気が混入した場合も同様に、適切なポンプ圧縮動作ができなくなり薬剤の移送ができなくなる。そこで、定量ポンプのヘッド内のエア抜きを行うようにしている。
【0003】
ここで、ポンプ本体の駆動状態及び流体の吐出状態と、ポンプヘッドの吐出口側の流体の流れとを比較し、両者の出力レベルが異なっているときは、ポンプヘッドの吐出口側の配管系に設置されたエア抜き電磁弁を自動的に開閉制御し、移送流体の性質により左右されることなく自動的にエア抜きを行なうことができるようにしたものがある(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
また、往復ポンプの吐出口から薬注管との間に、制御回路に接続した流れ検知器及び気泡抜き用電磁弁を設け、液体の流れ停止が検出されると、制御回路により気泡抜き用電磁弁を開弁して往復ポンプ内の気泡を除去するようにしたものがある(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平5−60061号公報
【特許文献2】特開2001−207972号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、従来のものでは、気体や空気を除去するための電磁弁が必要であり、また、気体や空気を除去した際に薬剤が系外に排出されるのを防止するための対策が必要となりコスト高となる。
【0007】
本発明の目的は、気体や空気を除去するための電磁弁を必要とせず、しかも薬剤が系外に排出されることを防止しつつ薬剤の移送を行うことができる定量ポンプの運転装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1の発明に係る定量ポンプの運転装置は、気体が発生しやすい移動流体を移送する定量ポンプを運転する定量ポンプの運転装置において、所定量の移動流体を吐出する通常時ストローク量で前記定量ポンプを駆動する通常時駆動手段と、前記通常時ストローク量より大きい予め定めた不具合時ストローク量で前記定量ポンプを駆動する不具合時駆動手段と、前記定量ポンプの起動時には前記不具合時駆動手段を動作させその後に前記通常時駆動手段を動作させる起動制御手段とを備えたことを特徴とする。
【0009】
請求項2の発明に係る定量ポンプの運転装置は、気体が発生しやすい移動流体を移送する定量ポンプを運転する定量ポンプの運転装置において、所定量の移動流体を吐出する通常時ストローク量で前記定量ポンプを駆動する通常時駆動手段と、前記通常時ストローク量より大きい予め定めた不具合時ストローク量で前記定量ポンプを駆動する不具合時駆動手段と、前記定量ポンプの吐出圧力を検出する吐出圧力検出器と、前記定量ポンプの起動時には前記通常時起動手段を動作させ前記吐出圧力検出器で検出された吐出圧力が所定圧力未満であるときは前記不具合時駆動手段を動作させその後に前記通常時駆動手段を動作させる起動制御手段とを備えたことを特徴とする。
【0010】
請求項3の発明に係る定量ポンプの運転装置は、請求項2の発明において、前記吐出圧力検出器に代えて、前記定量ポンプを駆動する電動機の駆動電流を検出する電流検出器を設け、前記起動制御手段は、前記電流検出器で検出された駆動電流が所定電流未満であるときは前記不具合時駆動手段を動作させることを特徴とする。
【0011】
請求項4の発明に係る定量ポンプの運転装置は、気体が発生しやすい移動流体を移送する定量ポンプを運転する定量ポンプの運転装置において、所定量の移動流体を吐出する通常時ストローク量で前記定量ポンプを駆動する通常時駆動手段と、前記通常時ストローク量を段階的に微増させた可変ストローク量で前記定量ポンプを駆動する可変駆動手段と、前記定量ポンプの吐出圧力を検出する吐出圧力検出器と、前記定量ポンプの起動時には前記通常時起動手段を動作させ前記吐出圧力検出器で検出された吐出圧力が所定圧力未満であるときは前記吐出圧力検出器で検出された吐出圧力が所定圧力以上となるまで前記可変駆動手段を動作させその後に前記通常時駆動手段を動作させる起動制御手段とを備えたことを特徴とする。
【0012】
請求項5の発明に係る定量ポンプの運転装置は、請求項4の発明において、前記吐出圧力検出器に代えて、前記定量ポンプの駆動電流を検出する電流検出器を設け、前記起動制御手段は、前記電流検出器で検出された駆動電流が所定電流未満であるときは前記可変駆動手段を動作させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
請求項1の発明によれば、定量ポンプの起動時には通常時ストローク量より大きい予め定めた不具合時ストローク量で定量ポンプを駆動して、起動時だけ一時的に定量ポンプの送出量を多くし、薬剤である移動流体内に気体や空気が含まれているときは移送先の系統に気体や空気も一緒に送ってしまうので、気体や空気を除去するための電磁弁を必要とせず、しかも薬剤が系外に排出されることを防止できる。
【0014】
請求項2の発明によれば、定量ポンプの起動時に通常時ストローク量で駆動し、定量ポンプの吐出圧力が所定圧力未満であるときは、通常時ストローク量より大きい予め定めた不具合時ストローク量で定量ポンプを駆動するので、気体や空気が移動流体に含まれているときだけ不具合時ストローク量で駆動できる。従って、気体や空気が移動流体に含まれていないときに無駄に薬剤を移送先の系統に移送することを防止できる。
【0015】
請求項3の発明によれば、定量ポンプの吐出圧に代えて、定量ポンプを駆動する電動機の駆動電流が所定電流未満であるときに不具合時ストローク量で定量ポンプを駆動するので、定量ポンプの駆動状態に応じて不具合時ストローク量での駆動ができる。
【0016】
請求項4の発明によれば、定量ポンプの起動時に通常時ストローク量で駆動し、定量ポンプの吐出圧力が所定圧力未満であるときは、定量ポンプの吐出圧力が所定圧力以上となるまで通常時ストローク量を段階的に微増させた可変ストローク量で定量ポンプを駆動するので、移動流体に含まれた気体や空気の量に応じて定量ポンプの吐出圧力が所定圧力なるように運転できる。従って無駄に薬剤を移送先の系統に移送することを防止できる。
【0017】
請求項5の発明によれば、定量ポンプの吐出圧に代えて、定量ポンプの駆動電流が所定電流未満であるときに不具合時ストローク量で定量ポンプを駆動するので、請求項4の発明に効果に加え、定量ポンプの駆動状態に応じて不具合時ストローク量での駆動ができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る定量ポンプの運転装置の一例の構成図。
【図2】本発明の第1実施形態における制御装置の運転制御による定量ポンプのストローク量の変化の一例の説明図。
【図3】本発明の第2の実施形態に係る定量ポンプの運転装置の一例の構成図。
【図4】本発明の第2実施形態における制御装置の運転制御による定量ポンプのストローク量の変化の一例の説明図。
【図5】本発明の第2実施形態における制御装置の運転制御による定量ポンプのストローク量の変化の他の一例の説明図。
【図6】本発明の第2の実施形態に係る定量ポンプの運転装置の他の一例の構成図。
【図7】本発明の第3の実施形態に係る定量ポンプの運転装置の一例の構成図。
【図8】本発明の第3実施形態における制御装置の運転制御による定量ポンプのストローク量の変化の一例の説明図。
【図9】本発明の第3の実施形態に係る定量ポンプの運転装置の他の一例の構成図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態を説明する。図1は本発明の第1の実施形態に係る定量ポンプの運転装置の一例の構成図である。定量ポンプ11は電動機12で駆動される。定量ポンプ11が駆動されると、薬剤タンク13に貯蔵された薬剤は、配管14を通り定量ポンプ11の吸込口15に吸い込まれ、吐出口16から移送先の系統への送り出し配管17に送り出される。
【0020】
制御装置18は、操作卓19からの起動指令に基づき、定量ポンプ11の電動機12に駆動指令を出力して定量ポンプ11を運転制御するものである。制御装置18は、起動制御手段20、通常時駆動手段21、不具合時起動手段22を有し、起動制御手段20は通常時駆動手段21と不具合時駆動手段22とを切り替えて定量ポンプ11を運転制御する。
【0021】
操作卓19からの起動指令は、制御装置18の起動制御手段20に入力される。起動制御手段20は、操作卓19からの起動指令を入力すると、まず不具合時駆動手段22を起動し、その後に通常時駆動手段21に切り替える。
【0022】
通常時駆動手段21は、定量ポンプ11のストローク量が予め定めた通常時ストローク量となるように定量ポンプ11を駆動するものである。通常時ストローク量は、薬剤に気体や空気が含まれていない場合に所定量の薬剤を吐出できるストローク量である。従って、通常時駆動手段21は、薬剤に気体や空気が含まれていない場合、つまり、所定量の薬剤を移送先の系統に安定的に移送している状態のときに動作することになる。
【0023】
一方、不具合時駆動手段22は、定量ポンプ11のストローク量が予め定めた不具合時ストローク量となるように定量ポンプ11を駆動するものである。不具合時ストローク量は、通常時ストローク量より大きい予め定めたストローク量であり、薬剤に気体や空気が含まれている場合であっても、その気体や空気も一緒に薬剤を吐出できるだけのストローク量である。従って、不具合時駆動手段22は、薬剤に気体や空気が含まれている場合に、定量ポンプ11を運転制御するものである。通常、薬剤に気体や空気が含まれる状態になるのは、定量ポンプ11の起動時であるので、不具合時駆動手段22は、定量ポンプ11の起動時に動作することになる。
【0024】
一般に定量ポンプ11のストローク量はポンプ容量と必要な薬剤移送量の関係に応じて設定されるが、ポンプ容量に対して薬剤移送量が十分で不具合時ストローク量以上のストローク量であれば薬剤に気体や空気が含まれていても一緒に吐出出来るため問題ないが、ポンプ容量に対して薬剤移送量が少なく通常時ストローク量が少なくなるほど、気体や空気を吐出しづらくなる。
【0025】
図2は、第1実施形態における制御装置18の運転制御による定量ポンプ11のストローク量の変化の一例の説明図である。いま、時点t1で操作卓19から定量ポンプ11の起動指令があったとすると、起動制御手段20は、まず、不具合時駆動手段22を起動する。従って、不具合時駆動手段22により定量ポンプ11のストローク量は不具合時ストローク量S1となり、定量ポンプ11のストローク量は通常時ストローク量S0より大きく操作される。
【0026】
そして、起動制御手段20は、次の運転制御タイミングの時点t2において、不具合時駆動手段22から通常時駆動手段21に運転制御を切り替える。これにより、定量ポンプ11のストローク量は、時点t2以降は、通常時ストローク量S0に維持される。
【0027】
ここで、不具合時ストローク量S1は、前述したように、薬剤に気体や空気が含まれている場合であっても、その気体や空気も一緒に薬剤を吐出できるだけのストローク量であるので、薬剤に気体や空気が含まれている場合であっても薬剤を吐出できる。従って、時点t2においては、定量ポンプ11のストローク量を通常時ストロークS0にしたとしても、薬剤の吐出は継続して行われることになる。
【0028】
なお、薬剤に気体や空気が含まれていない場合には、不具合時ストローク量S1は通常時ストローク量S0より大きいので、薬剤がその分だけ無駄に移送先の系統に移送されることになるが、起動時の1サイクル分だけであるので特に問題はない。また、ポンプ容量に比べて薬剤移送量が少なく、通常時ストローク量S0と不具合時ストローク量S1の差が大きい場合などは、通常時ストローク量S0より多く注入された分だけ、その後の数サイクル分にわたり通常ストローク量S0より少なめに移送し調整するようにしてもよい。
【0029】
第1実施形態によれば、定量ポンプ11の起動時には通常時ストローク量S0より大きい予め定めた不具合時ストローク量S1で定量ポンプ11を駆動して、定量ポンプ11の起動時だけ一時的に送出量を多くするので、薬剤である移動流体内に気体や空気が含まれていたとしても定量ポンプ11の圧縮動作を行うことができる。従って、気体や空気を除去するための電磁弁を必要とせず、しかも薬剤が系外に排出されることを防止しつつ定量ポンプ11を運転できる。
【0030】
次に、本発明の第2実施形態を説明する。図3は本発明の第2の実施形態に係る定量ポンプの運転装置の一例の構成図である。この第2実施形態は、図1に示した第1実施形態に対し、定量ポンプ11の吐出圧力を検出する吐出圧力検出器23を追加して設け、起動制御手段20は、定量ポンプ11の起動時には、通常時起動手段21を動作させ、それでも、吐出圧力検出器23で検出された吐出圧力が所定圧力未満であるときは、不具合時駆動手段22を動作させ、その後に通常時駆動手段21を動作させるようにしたものである。図1と同一要素には、同一符号を付し重複する説明は省略する。
【0031】
起動制御手段20は、操作卓19から起動指令があると、まず、通常時起動手段21を動作させる。そして、起動制御手段20は、通常時起動手段21を動作させた後の次のタイミングで、吐出圧力検出器23で検出された吐出圧力が所定圧力を満たしているか否かを判定する。所定圧力はポンプ圧縮動作により薬剤が所定量を吐出できる圧力である。定量ポンプ11の吐出圧力が所定圧力未満であるときは、起動制御手段20は、不具合時駆動手段22を動作させる。
【0032】
図4は、第2実施形態における制御装置18の運転制御による定量ポンプ11のストローク量の変化の一例の説明図である。いま、時点t1で操作卓19から定量ポンプ11の起動指令があったとすると、起動制御手段20は、まず、通常時駆動手段21を起動する。従って、通常時駆動手段21により定量ポンプ11のストローク量は通常時ストローク量S0となる。
【0033】
そして、起動制御手段20は、次の運転制御タイミングの時点t2において、吐出圧力検出器23で検出された吐出圧力が所定圧力P0であるか否かを判定し、吐出圧力が所定圧力P0であるときは、ポンプ圧縮動作により薬剤が所定量を吐出している状態であるので、起動制御手段20は通常時駆動手段21の動作を継続する。
【0034】
図5は、第2実施形態における制御装置18の運転制御による定量ポンプ11のストローク量の変化の他の一例の説明図である。この一例は、図4に示した一例に対し、時点t2において、吐出圧力検出器23で検出された吐出圧力が所定圧力P0未満の場合を示している。時点t2において、吐出圧力が所定圧力P0未満であるので、起動制御手段20は、通常時駆動手段21から不具合時駆動手段22に運転制御を切り替える。これにより、定量ポンプ11のストローク量は、時点t2において不具合時ストローク量S1となる。そして、起動制御手段20は、次の運転制御タイミングの時点t3において、不具合時駆動手段22から通常時駆動手段21に運転制御を切り替える。これにより、定量ポンプ11のストローク量は、時点t3以降は、通常時ストローク量S0に維持される。
【0035】
このように、起動時制御手段20は、定量ポンプ11の起動時に通常時駆動手段21を駆動し、定量ポンプ11の吐出圧力が所定圧力P0になったときは、そのまま通常時駆動手段21での運転制御を行い、定量ポンプ11の吐出圧力が所定圧力P0にならなかったときは、不具合時駆動手段22での運転を行ってから通常時駆動手段21による運転に切り替える。これにより、定量ポンプ11が通常運転を行えるようにする。
【0036】
以上の説明では、定量ポンプ11の吐出圧力を検出する吐出圧力検出器23を設け、定量ポンプ11の吐出圧力が所定圧力になったときは、ポンプ圧縮動作により薬剤が所定量を吐出している状態であると判断するようにしたが、吐出圧力検出器23に代えて、図6に示すように、定量ポンプ11を駆動する電動機12の駆動電流を検出する電流検出器24を設け、起動制御手段20は、電流検出器24で検出された駆動電流が所定電流未満であるときは不具合時駆動手段22を動作させるようにしてもよい。
【0037】
第2実施形態によれば、気体や空気が移動流体に含まれているときだけ不具合時ストローク量S1で駆動できるので、気体や空気が移動流体に含まれていないときに無駄に薬剤を移送先の系統に移送することを防止できる。
【0038】
次に、本発明の第3実施形態を説明する。図7は本発明の第3の実施形態に係る定量ポンプの運転装置の一例の構成図である。この第3実施形態は、図3に示した第2実施形態に対し、不具合時駆動手段22に代えて、通常時ストローク量を段階的に微増させた可変ストローク量で定量ポンプ11を駆動する可変駆動手段25を設け、起動制御手段20は、定量ポンプ11の起動時には通常時起動手段21を動作させ、吐出圧力検出器23で検出された吐出圧力が所定圧力未満であるときは、吐出圧力検出器23で検出された吐出圧力が所定圧力以上となるまで可変駆動手段25を動作させ、その後に通常時駆動手段21を動作させるようにしたものである。図1と同一要素には、同一符号を付し重複する説明は省略する。
【0039】
起動制御手段20は、操作卓19から起動指令があると、まず、通常時起動手段21を動作させる。そして、起動制御手段20は、通常時起動手段21を動作させた後の次のタイミングで、吐出圧力検出器23で検出された吐出圧力が所定圧力を満たしているか否かを判定する。定量ポンプ11の吐出圧力が所定圧力未満であるときは、起動制御手段20は、可変駆動手段25を動作させ、次のタイミングで、吐出圧力検出器23で検出された吐出圧力が所定圧力を満たしているか否かを判定する。これを繰り返し行い、吐出圧力検出器23で検出された吐出圧力が所定圧力以上となると、通常時駆動手段21を動作させる。
【0040】
図8は、第3実施形態における制御装置18の運転制御による定量ポンプ11のストローク量の変化の一例の説明図である。いま、時点t1で操作卓19から定量ポンプ11の起動指令があったとすると、起動制御手段20は、まず、通常時駆動手段21を起動する。従って、通常時駆動手段21により定量ポンプ11のストローク量は通常時ストローク量S0となる。
【0041】
そして、起動制御手段20は、次の運転制御タイミングの時点t2において、吐出圧力検出器23で検出された吐出圧力が所定圧力P0を満たしているか否かを判定する。この判定で、定量ポンプ11の吐出圧力が所定圧力P0になったときは、そのまま通常時駆動手段21での運転制御を行う。
【0042】
一方、図8に示すように、時点t2において、吐出圧力が所定圧力P0未満であるときは、起動制御手段20は、通常時駆動手段21から可変駆動手段25に運転制御を切り替える。これにより、定量ポンプ11のストローク量は、時点t2において通常時ストローク量を1段階だけ微増させた1段階可変ストローク量Sa1となる。
【0043】
次に、起動制御手段20は、次の運転制御タイミングの時点t3において、吐出圧力検出器23で検出された吐出圧力が所定圧力P0を満たしているか否かを判定する。図8では、吐出圧力が所定圧力P0未満であるので、起動制御手段20は、再度、可変駆動手段25を起動する。これにより、定量ポンプ11のストローク量は、時点t3において通常時ストローク量を2段階だけ微増させた2段階可変ストローク量Sa2となる。
【0044】
さらに、起動制御手段20は、次の運転制御タイミングの時点t4において、吐出圧力検出器23で検出された吐出圧力が所定圧力P0を満たしているか否かを判定する。図8では、吐出圧力はまだ所定圧力P0未満であるので、起動制御手段20は、再々度、可変駆動手段25を起動する。これにより、定量ポンプ11のストローク量は、時点t4において通常時ストローク量を3段階だけ微増させた3段階可変ストローク量Sa3となる。
【0045】
同様に、起動制御手段20は、次の運転制御タイミングの時点t5において、吐出圧力検出器23で検出された吐出圧力が所定圧力P0を満たしているか否かを判定する。図8では、吐出圧力が所定圧力P0を満たしているので、起動制御手段20は、可変駆動手段25から通常時駆動手段21に運転制御を切り替える。これにより、定量ポンプ11のストローク量は、時点t5以降は、通常時ストローク量S0に維持される。これにより、定量ポンプ11が通常運転を行えるようにする。
【0046】
以上の説明では、定量ポンプ11の吐出圧力を検出する吐出圧力検出器23を設け、定量ポンプ11の吐出圧力が所定圧力になったときは、ポンプ圧縮動作により薬剤が所定量を吐出している状態であると判断するようにしたが、吐出圧力検出器23に代えて、図9に示すように、定量ポンプ11を駆動する電動機12の駆動電流を検出する電流検出器24を設け、起動制御手段20は、電流検出器24で検出された駆動電流が所定電流未満であるときは可変駆動手段25を動作させるようにしてもよい。
【0047】
第3実施形態によれば、起動時制御手段20は、定量ポンプ11の起動時に通常時駆動手段21を駆動し、定量ポンプ11の吐出圧力が所定圧力P0になったときは、そのまま通常時駆動手段21での運転制御を行い、一方、定量ポンプの吐出圧力が所定圧力P0未満であるときは、定量ポンプ11の吐出圧力が所定圧力以上となるまで、通常時ストローク量を段階的に微増させた可変ストローク量で定量ポンプを駆動する。従って、移動流体である薬剤に含まれた気体や空気の量に応じて定量ポンプ11の吐出圧力が所定圧力になるように運転でき、また、無駄に薬剤を移送先の系統に移送することを防止できる。
【符号の説明】
【0048】
11…定量ポンプ、12…電動機、13…薬剤タンク、14…配管、15…吸込口、16…吐出口、17…送り出し配管、18…制御装置、19…操作卓、20…起動制御手段、21…通常時駆動手段、22…不具合時起動手段、23…吐出圧力検出器、24…電流検出器、25…可変駆動手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
気体が発生しやすい移動流体を移送する定量ポンプを運転する定量ポンプの運転装置において、所定量の移動流体を吐出する通常時ストローク量で前記定量ポンプを駆動する通常時駆動手段と、前記通常時ストローク量より大きい予め定めた不具合時ストローク量で前記定量ポンプを駆動する不具合時駆動手段と、前記定量ポンプの起動時には前記不具合時駆動手段を動作させその後に前記通常時駆動手段を動作させる起動制御手段とを備えたことを特徴とする定量ポンプの運転装置。
【請求項2】
気体が発生しやすい移動流体を移送する定量ポンプを運転する定量ポンプの運転装置において、所定量の移動流体を吐出する通常時ストローク量で前記定量ポンプを駆動する通常時駆動手段と、前記通常時ストローク量より大きい予め定めた不具合時ストローク量で前記定量ポンプを駆動する不具合時駆動手段と、前記定量ポンプの吐出圧力を検出する吐出圧力検出器と、前記定量ポンプの起動時には前記通常時起動手段を動作させ前記吐出圧力検出器で検出された吐出圧力が所定圧力未満であるときは前記不具合時駆動手段を動作させその後に前記通常時駆動手段を動作させる起動制御手段とを備えたことを特徴とする定量ポンプの運転装置。
【請求項3】
前記吐出圧力検出器に代えて、前記定量ポンプを駆動する電動機の駆動電流を検出する電流検出器を設け、前記起動制御手段は、前記電流検出器で検出された駆動電流が所定電流未満であるときは前記不具合時駆動手段を動作させることを特徴とする請求項2記載の定量ポンプの運転装置。
【請求項4】
気体が発生しやすい移動流体を移送する定量ポンプを運転する定量ポンプの運転装置において、所定量の移動流体を吐出する通常時ストローク量で前記定量ポンプを駆動する通常時駆動手段と、前記通常時ストローク量を段階的に微増させた可変ストローク量で前記定量ポンプを駆動する可変駆動手段と、前記定量ポンプの吐出圧力を検出する吐出圧力検出器と、前記定量ポンプの起動時には前記通常時起動手段を動作させ前記吐出圧力検出器で検出された吐出圧力が所定圧力未満であるときは前記吐出圧力検出器で検出された吐出圧力が所定圧力以上となるまで前記可変駆動手段を動作させその後に前記通常時駆動手段を動作させる起動制御手段とを備えたことを特徴とする定量ポンプの運転装置。
【請求項5】
前記吐出圧力検出器に代えて、前記定量ポンプの駆動電流を検出する電流検出器を設け、前記起動制御手段は、前記電流検出器で検出された駆動電流が所定電流未満であるときは前記可変駆動手段を動作させることを特徴とする請求項4記載の定量ポンプの運転装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−207571(P2012−207571A)
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−73310(P2011−73310)
【出願日】平成23年3月29日(2011.3.29)
【出願人】(000003687)東京電力株式会社 (2,580)
【Fターム(参考)】