説明

実験動物飼育用の給水具

【課題】給水具使用時に貯水壜やキャップが破損するという問題を解消すると共に、マウス等がキャップその他の部材を齧るようなこともなく、長期に亘り正常な使用が可能な実験動物飼育用の給水具を提供する。
【解決手段】耐熱性プラスチック製貯水壜2の口部3には、有底筒状の耐熱性プラスチック製キャップ4が螺嵌されて、口部3の先端面がキャップ4の底壁部内面4oに圧接されるようになっており、キャップ4は底壁部外面4cが角部のないように丸く形成されていると共に、キャップ4の底壁部4a中央に、金属製給水管5の基端部が貫通固着されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マウス、ラット、モルモット、兎等の実験動物を飼育する実験動物飼育ケージに取り付けて使用される給水具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の実験動物飼育用給水具として、下記の特許文献1に記載されたものがある。この給水具は、耐熱性プラスチックで形成された貯水壜の口部に有底筒状の金属製キャップを螺嵌すると共に、前記口部の先端面と前記キャップの底壁部内面との間に、耐熱性シールパッキンを介装し、前記キャップの底壁部中央に、金属製給水管の基端部を貫通固着してなるものである。この給水具によれば、貯水壜の口部に対するキャップの装着及び取り外しを簡単に行うことができ、またキャップが金属製であるため、給水具使用時にマウス等がキャップその他の部材を齧ることがない。
【特許文献1】特許第2941212号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記の特許文献1に記載のような給水具では、貯水壜がポリカーボネート等のプラスチックで形成され、キャップが例えばステンレスのような金属で形成されていることから、貯水壜であるポリカーボネート等プラスチックの線膨張率と、キャップであるステンレス等金属の線膨張率との差異により、給水具の使用時に貯水壜の首部に亀裂が入るなどして破損するといった問題があった。
【0004】
本発明は、上記のように給水具使用時に貯水壜やキャップが破損するという問題を解消すると共に、マウス等がキャップその他の部材を齧るようなこともなく、長期に亘り正常な使用が可能な実験動物飼育用の給水具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するための手段を、後述する実施形態の参照符号を付して説明すると、請求項1に係る発明の実験動物飼育用の給水具は、耐熱性プラスチック製貯水壜2の口部3には、有底筒状の耐熱性プラスチック製キャップ4が螺嵌されて、前記口部3の先端面がキャップ4の底壁部内面4oに圧接されるようになっており、キャップ4は底壁部外面4cが角部のないように丸く形成されていると共に、このキャップ4の底壁部4a中央に、金属製給水管5の基端部が貫通固着されていることを特徴とする。
【0006】
請求項2は、請求項1に記載の実験動物飼育用の給水具において、前記キャップ4の底壁部内面4oには、この貯水壜2の口部3にキャップ4を螺嵌する時にその口部3内に密嵌するシール用円筒部9が一体に突設されていることを特徴とする。
【0007】
請求項3は、請求項1又は2に記載の実験動物飼育用の給水具において、前記貯水壜2及びキャップ4は夫々、ポリサルホン樹脂によって一体形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
上記解決手段による発明の効果を、後述する実施形態の参照符号を付して説明すると、請求項1に係る発明によれば、貯水壜2とキャップ4とが同じ耐熱性プラスチックで形成されていて、両者の線膨張率が同じであるから、給水具1の使用時に貯水壜2やキャップ4がそれらの熱膨張又は熱収縮によって破損するようなことがなく、安全使用が確保される。また貯水壜2及び貯水壜2が弾性体であるプラスチックで形成されていることから、給水具1を使用するにあたり、貯水壜2の口部3に螺合したキャップ4を締め付けると、口部3の先端面3oがキャップ4の内面4oに強く圧接して、貯水壜2の口部3とキャップ4との間を水密シールすることができ、貯水壜2の口部3とキャップ4との間の水密性が確保される。
【0009】
また、給水管5のキャップ4がプラスチック製であるにもかかわらず、その底壁部外面4cが角部のないように丸く形成されていることから、マウス等の実験動物は、その底壁部外面4cを齧ろうとしても、引っ掛かり部がないため齧ることができず、従って長期に亘って正常な使用が可能となる。また、この発明の給水具1は、夫々耐熱性プラスチック製の貯水壜2及びキャップ4と、キャップ4の底壁部4a中央に貫通固着された金属製給水管5とからなるもので、部品点数が少なく、構造が簡単であるから、製作が容易で、コストを安くできる。
【0010】
請求項2に係る発明によれば、キャップ4の底壁部内面4oには、貯水壜2の口部3にキャップ4を螺嵌する時にその口部3内に密嵌するシール用円筒部9が一体に突設されているから、キャップ4の底壁部内面4oに突設したシール用円筒部9が口部3内に密嵌する、つまりシール用円筒部9の外周面9aが口部3の内周面3aに密接することにより、貯水壜2の口部3とキャップ4との間の水密性が一層良好となる。
【0011】
請求項3に係る発明によれば、貯水壜2及びキャップ4は夫々、ポリサルホン樹脂によって一体形成されていることから、給水具の滅菌手段としてのオートクレーブの使用にも十分耐えることができ、そのオートクレーブ処理を長時間行なっても、物性変化がなく、表面光沢の低下するようなこともない。また、ポリサルホン樹脂は、高い高弾性率を有するから、口部3の先端面3oがキャップ4の底壁部内面4oに強く圧接することによる口部3とキャップ4との間のシール作用がより有効に発揮され、またシール用円筒部9の外周面9aが口部3の内周面3aに密接することによる貯水壜2の口部3とキャップ4との間のシール作用もより有効に発揮される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下に本発明の好適な実施形態を図面に基づいて説明すると、図1は、本発明に係る給水具1を実験動物飼育ケージKに取り付けた状態を示し、図2〜図5は給水具1の詳細な構造を示している。この給水具1は、図2に示すように、プラスチック製の貯水壜2と、この貯水壜2の口部3に螺嵌される有底筒状のプラスチック製キャップ4と、このキャップ4の底壁部4aの中央に貫通固着された金属製の給水管5とからなるものである。
【0013】
上記給水具1の構造について更に詳細に説明すると、貯水壜2は、ポリサルホン樹脂によって略角筒状に一体成形されたもので、この貯水壜2の口部3は円筒状に形成されていて、この口部3の外周面には、雄ねじ用凸条部6が、図2、図3及び図4の(b) に示すように例えば3つ、断続的に形成され、また口部3の外周面の基端部には基端凸条部7が周設されている。
【0014】
キャップ4は、貯水壜2と同じポリサルホン樹脂によって有底円筒状に一体成形されたもので、底壁部4aと周壁部4bとからなり、そして底壁部4aの外面4cは角部のないように丸く形成されており、この底壁部4aの中央には給水管5の基端部が貫通固着されている。このキャップ4の周壁部4b内周面には、図2に示すように口部3の雄ねじ用凸条部6に螺合する雌ねじ用凸条部8が連続的に形成されている。
【0015】
またキャップ4の底壁部4aの内面4oには、図2にから分かるように、貯水壜2の口部3にキャップ4を螺嵌する時にその口部3内に密嵌するシール用円筒部9が一体に突設されていると共に、底壁部4aの内面4oの中央部に、給水管5が貫通する貫通孔10を支持する支持円筒部11が一体に突設されている。
【0016】
給水管5は、例えばステンレスにより円筒状に形成されたもので、キャップ4の底壁部4a及び支持円筒部11に設けられた貫通孔10の内径より僅かに小さい外径を有する。この給水管5をキャップ4の底壁部4aに貫通固着するには、図2及び図3から分かるように、キャップ4の貫通孔10にその内側から給水管5を挿入すると共に、給水管5の基端部外周面と貫通孔10との間の隙間、及び給水管5の基端フランジ部5aと支持円筒部11の上端面との間に、キャップ4の内側から銀鑞等の鑞付け材料を流し込んで、給水管5の基端側をキャップ4の底壁部4a及び支持円筒部11に対し鑞付けすることにより、給水管5をキャップ4の底壁部4a中央に貫通固着する。これによって、給水管5はキャップ4に対し強固に固着されると共に、給水管5とキャップ4との間の水密性が確保される。
【0017】
また、給水管5の先端部には給水弁12が設けてある。この給水弁12は、図示のような小径な小孔状の給水口13に形成されたもので、給水管5内の水は小径な小孔状の給水口13で表面張力により滴下することはないが、マウス等が給水口13をつつくことによって水の表面張力が破れ、水が給水口13よりマウス等に供給されるようになっており、これによれば安価に製作することができる。この小孔状の給水口13に代えて、給水管5の先端部に球弁を設け、マウス等がその球弁をつつくことによって開弁するようにしてもよいが、球弁用の球体が必要となり、若干製造費が高くなる。
【0018】
貯水壜2及びキャップ4を形成する耐熱性プラスチック材であるポリサルホン樹脂は、高弾性率と共に高い引張強度を有し、そして融点が235℃と非常に高く、長時間高温下にて使用した後でも物性変化がなく、繰り返し蒸気滅菌が可能で、自動洗浄しても物性、表面光沢の低下するようなことがなく、給水具の滅菌手段としてのオートクレーブの使用にも十分耐えることができ、またアルカリ、無機酸、塩溶液に優れた耐性を示し、洗剤、炭化水素に高温条件下で良い結果を示す。
【0019】
上述したような構成よりなる給水具1は、キャップ4を貯水壜2の口部3に外嵌し、キャップ4内周面の雌ねじ用凸条部8を口部3外周面の雄ねじ用凸条部6に係合させて回すことにより、キャップ4を貯水壜2の口部3に対しきわめて簡単に装着することができ、またキャップ4の取り外しも同様に簡単となる。
【0020】
そして、この給水具1の特徴の一つは、貯水壜2及びキャップ4が夫々、耐熱性プラスチック材で一体成形されていることであるが、このように貯水壜2とキャップ4とが同じ耐熱性プラスチックで形成されていることにより、両者の線膨張率が同じであるから、給水具1の使用時に貯水壜2やキャップ4がそれらの熱膨張又は熱収縮によって破損するようなことがなく、安全使用が確保される。また貯水壜2及び貯水壜2が弾性体であるプラスチックで形成されていることから、貯水壜2の口部3に螺合したキャップ4を締め付けると、図2に示すように、口部3の先端面3oがキャップ4の内面4oに強く圧接して、貯水壜2の口部3とキャップ4との間を確実に水密シールすることができる。
【0021】
また貯水壜2及びキャップ4が耐熱性プラスチック材であるポリサルホン樹脂で形成されていることにより、給水具の滅菌手段としてのオートクレーブの使用にも十分耐えることができ、そのオートクレーブ処理を長時間行なっても、物性変化がなく、表面光沢の低下するようなこともない。
【0022】
また、この給水具1の他の特徴は、キャップ4の底壁部外面4cが角部のないように丸く形成されていることである。即ち、図2、図3及び図5から分かるように、キャップ4は、底壁部4aの外面4c(周壁部4bの外面との境界部も含む)が断面円弧状に丸く形成されているいることから、マウス等がキャップ4の底壁部4a側を齧ろうと試みても、その外面4cが丸くなっていて、引っ掛かり部がないために、齧ることができず、従ってマウス等による齧りを防止することができる。
【0023】
この給水具1の使用に際しては、図1に示すように、この給水具1の給水管5側を、ケージ本体Tに装着された網蓋Rのワイヤー間からケージ本体T内に差し込んで、キャップ4の底壁部4aを網蓋R部分に当接させると共に、水が貯めてある貯水壜2側を網蓋Rの所要部に固定させればよい。しかして、ケージ本体T内のマウス等は、給水管5の先端から一部露出している球体13aをつつくことにより球弁12を開放して、水を呑むことができる。この場合、キャップ4がプラスチック製であるにもかかわらず、その底壁部外面4cが角部のないように丸く形成されているため、マウス等の実験動物は、このキャップ4を齧ることができず、長期に亘って正常な使用が可能となる。
【0024】
この給水具1の貯水壜2の口部3とキャップ4との間の水密性は、プラスチック製貯水壜2の口部3にプラスチック製キャップ4を螺嵌して締め付ける時、口部3の先端面3oがキャップ4の内面4oに強く圧接することによって確保されると共に、キャップ4の底壁部内面4oに突設したシール用円筒部9が口部3内に密嵌する(つまり、シール用円筒部9の外周面9aが口部3の内周面3aに密接する)ことによって更にその水密性が確保されるようになっている。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明に係る給水具を実験動物飼育ケージに取り付けた状態を示す斜視図である。
【図2】給水具の一部断面正面図である。
【図3】給水具の分解図である。
【図4】(a) は図3のX−X線断面図、(b) は図3のY−Y線断面図である。
【図5】キャップを底壁部外面側から見た斜視図である。
【符号の説明】
【0026】
1 給水具
2 貯水壜
3 口部
4 キャップ
4a 底壁部
4b 周壁部
4c 底壁部外面
5 給水管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
耐熱性プラスチック製貯水壜の口部には、有底筒状の耐熱性プラスチック製キャップが螺嵌されて、前記口部の先端面がキャップの底壁部内面に圧接されるようになっており、キャップは底壁部外面が角部のないように丸く形成されていると共に、このキャップの底壁部中央に、金属製給水管の基端部が貫通固着されていることを特徴とする実験動物飼育用の給水具。
【請求項2】
前記キャップの底壁部内面には、この貯水壜の口部にキャップを螺嵌する時にその口部内に密嵌するシール用円筒部が一体に突設されていることを特徴とする請求項1に記載の実験動物飼育用の給水具。
【請求項3】
前記貯水壜及びキャップは夫々、ポリサルホン樹脂によって一体形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の実験動物飼育用の給水具。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2007−135473(P2007−135473A)
【公開日】平成19年6月7日(2007.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−333540(P2005−333540)
【出願日】平成17年11月18日(2005.11.18)
【出願人】(391033137)日本クレア株式会社 (7)
【Fターム(参考)】