説明

室炉式コークス炉の炉締め構造

【課題】保護板、ドアフレーム、ドアーの合計重量が常にコーベル部端部の保護板下部煉瓦に集中して作用することがないコークス炉の炉締め構造を提供する。
【解決手段】炉団方向に燃焼室4と交互に複数配置される炭化室3の炉長方向両端に配置するドアー8を、燃焼室4の炉長方向両端に配置した保護板7に取付けたドアフレーム9で保持し、燃焼室4の炉長方向両端に配置したバックステー6で前記保護板7を介して燃焼室4の炉長方向に炉締力を付与すべく構成した室炉式コークス炉1である。バックステー6に設置したスプリング14を介して保護板7を上下方向に支持するように構成する。
【効果】冷間時・加熱中は煉瓦膨張を自由にさせ、加熱後はコーベル部端部での支持荷重が低減されて煉瓦寿命の長期化を実現できる。また、加熱後は、シール材を押え付けてシール機能を保持でき、石炭乾留時に炭化室から炉外へのガス漏れを防止できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、室炉式コークス炉(以下、単に「コークス炉」という。)における炭化室の押出方向(以下「炉長方向」という。)両端部における炉締め構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
コークス炉1の炉長方向断面を図6に示す。この図6に示すように、コークス炉1は、下方(下段)に設けられた蓄熱室2の上方(上段)に、コーベル部(「蛇腹部」とも称される。)5を介して紙面右半分に示した炭化室3と、紙面左半分に示した燃焼室4を、炉長方向と直角の炉団方向(図6の紙面前後方向)に交互に配置した構成である。これら蓄熱室2、炭化室3、燃焼室4、コーベル部5は煉瓦積で構築される煉瓦構築物である。
【0003】
炭化室3の炉長方向両端部には、煉瓦構築物に炉締力を付与するためのバックステー6が配置されている。このバックステー6の炉締力は、炭化室3と燃焼室4の上下の煉瓦構築部におけるバックステー6との間に配置された保護板7(図7参照)を介して、蓄熱室2、炭化室3、燃焼室4、コーベル部5に伝達される。
【0004】
炭化室3の炉長方向端部には、図7に示すように、重量の重いドアー8が配置され、このドアー8は、コーベル部5を構成する保護板下部煉瓦5aの上に配置された保護板7に取り付けられたドアフレーム9によって保持されている。
【0005】
そのため、コークス炉1の炉長方向端部におけるコーベル部5の保護板下部煉瓦5aによって、保護板7、ドアフレーム9、ドアー8の合計重量が支持されることになる。つまり、毎日着脱されるドアー8の着脱時の衝撃荷重をコーベル部5の保護板下部煉瓦5aは毎日受けることになる。
【0006】
コーベル部5の端部における保護板下部煉瓦5aは、前記のように保護板7、ドアフレーム9、ドアー8の合計重量を支持するのとともにドアー8の着脱時の衝撃を受けるため、損傷発生頻度が高くなる。
【0007】
コークス炉1の炉長方向の端部の煉瓦積みが損傷すると、隣り合う蓄熱室2が短絡したり、隣り合うコーベルダクト10が短絡したり、コーベルダクト10と炉外が短絡したりする。その結果、燃料ガスが蓄熱室2で空気と混合して燃焼し、或いは燃焼排ガスと混合して燃焼せずにそのまま廃棄されるなど、燃料ガスの浪費が発生する。さらには、異常燃焼により煉瓦が高温になり過ぎて煉瓦の損傷を招くことになる。また、保護板下部煉瓦5aが損傷すると、保護板7、ドアフレーム9等の炉締め構成金物が下方向にずり落ちることになり、好ましくない。
【0008】
蓄熱室2、炭化室3、燃焼室4、コーベル部5を構築する煉瓦構築物は、構築作業により組上がった段階では常温である。そして、数カ月の期間を要して乾燥加熱され、その後はコークス炉としての操業(炭化室3内への石炭の装入、燃焼室4からの熱で乾留した生成物であるコークスの排出の反復)がなされるが、操業の継続は長い場合には数十年間にも及ぶ。
【0009】
以下、本発明では、前記それぞれの時期を、冷間時(加熱前)、加熱中、加熱後(稼働後)、などと称する。
【0010】
そこで、特許文献1では、冷間時は、バックステーに形成した突起物の上に保護板に形成した突起物が接して保護板を上下方向に支持することで、保護板下部煉瓦に重量が作用しないようにしている。また、加熱中・加熱後は、熱膨張した保護板下部煉瓦で保護板を支持して保護板を上昇させた後にバックステーの突起物と保護板の突起物の間に詰め物を介在させて保護板の重量をバックステーで受けることで、保護板下部煉瓦に重量をかけないようにしている。
【0011】
この特許文献1で提案された構造では、加熱後における保護板下部煉瓦と保護板の下端の隙間は10mm以内とすることが望ましいとしている。
【0012】
しかしながら、コークス炉の操業中は石炭の乾留に応じて煉瓦構築物が多少の膨張量の変化をきたすことはよく知られている。
【0013】
この膨張量変化により炉締力が変化してバックステーの撓み量が変化する結果、炉長方向への移動も伴うことになり、かつ、石炭乾留時の発生ガスの炉外への漏れを防止するために保護板と煉瓦構築物の間に設けられたシール材の機能を保持できなくなる欠点は、特許文献1の構造も同様である。加えて、特許文献1の構造の場合、詰め物が操業中の前記微小な変化で移動または脱落する心配すら懸念される。
【0014】
また、特許文献2では、コークス炉の保護板、ドアフレーム、ドアーの合計重量を支持する炉長方向端部の煉瓦厚みを炉長方向に厚くする構造が提案されている。この特許文献2で提案された構造により、コークス炉の炉長方向端部における煉瓦構築物の損傷を低減することができる。
【0015】
しかしながら、特許文献2で提案された構造の場合も、保護板、ドアフレーム、ドアーの合計重量は常にコーベル部端部の保護板下部煉瓦に集中して作用していることに変わりはない。
【0016】
従って、経年の操業による煉瓦構築物の損傷を防止出来るものではないことから、その効果は疑問と言わざるを得ない。また、蓄熱室の天井レベルがコークス炉の炉長方向の中央部と端部で同一でなくなるため、コークス炉の建築費が増大する。さらに、築炉期間延長によってコークス炉を構築する工期が長くなるという問題を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【特許文献1】特開2008−127529号公報
【特許文献2】特開平8−311455号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
本発明が解決しようとする問題点は、操業中における煉瓦構築物の膨張量変化に起因する欠点を有することは特許文献1の構造も同様であり、特許文献1の構造の場合、詰め物が操業中の前記微小な変化で移動または脱落する心配すら懸念されるという点である。また、特許文献2の構造の場合、保護板、ドアフレーム、ドアーの合計重量が常にコーベル部端部の保護板下部煉瓦に集中して作用していることに変わりはないという点である。
【課題を解決するための手段】
【0019】
コークス炉の炉長方向端部に設けられる保護板、ドアフレーム、ドアーの合計重量はコークス炉の炉長方向端部の保護板下部煉瓦のみによって支持されている。仮に保護板等の重量を保護板下部煉瓦だけではなく、バックステーによっても支持させることができれば、保護板下部煉瓦に作用する負荷が低減する。その結果、たとえ炉長方向端部の保護板下部煉瓦の厚みを炉長方向中央部と同等の厚みとしても、前記保護板下部煉瓦の損傷を防止することができる。
【0020】
しかしながら、コークス炉を構成する煉瓦構造物は、構築時は常温であるが、加熱を開始して温度が上昇すると当然のことながら熱膨張して蓄熱室の高さが上昇する結果、コーベル部の高さ位置も上昇する。従って、従来は、保護板をバックステーで支持することなく保護板下部煉瓦の上に載置し、保護板、ドアフレーム、ドアーの合計重量を支持する構造となっていた。
【0021】
一方、一度加熱して熱膨張した後は、煉瓦構築物の高さは一定に保たれ、それ以降の高さ変化は極めて少ないことが分かっている。従って、最初に加熱して熱膨張が起こった後に保護板をバックステーで支持するようにすれば、加熱中に保護板の重量を煉瓦構築物が支持することがないので煉瓦構築物の損傷の発生を防止することができる。
【0022】
本発明は、保護板、ドアフレーム、ドアーの合計重量が常にコーベル部端部の保護板下部煉瓦に集中して作用することがないコークス炉の炉締め構造の提供を目的として、上記の考え方に基づき成されたものである。
【0023】
本発明のコークス炉の炉締め構造は、
炉団方向に燃焼室と交互に複数配置される炭化室の炉長方向両端に配置するドアーを、燃焼室の炉長方向両端に配置した保護板に取付けたドアフレームで保持し、燃焼室の炉長方向両端に配置したバックステーで前記保護板を介して燃焼室の炉長方向に炉締力を付与すべく構成したコークス炉において、
前記バックステーに設置したスプリングを介して前記保護板を上下方向に支持するように構成したことを最も主要な特徴としている。
【0024】
本発明のコークス炉の炉締め構造の場合、バックステーに設置したスプリングを介して保護板を上下方向に支持することで、特許文献1が有する下記の欠点を解決することができる。
【0025】
1) 操業中の石炭の乾留に応じた煉瓦構築物の膨張量変化に伴う炉締力変化によってバックステーの撓み量が変化する結果、炉長方向への移動も伴うこと。
2) 石炭乾留時の発生ガスの炉外への漏れを防止するために保護板と煉瓦構築物の間に設けられたシール材の機能を保持できなくなること。
【0026】
また、本発明のコークス炉の炉締め構造の場合、保護板、ドアフレーム、ドアーの合計重量を、バックステーと保護板下部煉瓦の両方で支持するので、前記重量を保護板下部煉瓦でのみ支持している特許文献2のように前記重量が作用する保護板下部煉瓦を炉長方向に大きくしなくても経年の操業による煉瓦の損傷を軽減することができる。
【0027】
本発明のコークス炉の炉締め構造では、使用するスプリングの弾性力によりバックステーと保護板下部煉瓦で支持する重量の分配を調整することができる。
【発明の効果】
【0028】
本発明では、冷間時・加熱中は、保護板、ドアフレーム、ドアーの合計重量の殆どをバックステーで支持することで煉瓦膨張を自由にさせ、加熱後は、合計重量の一部を保護板下部煉瓦で支持させることでコーベル部端部での支持荷重が低減されて煉瓦寿命の長期化を実現できる。
【0029】
また、加熱後は、保護板、ドアフレーム、ドアーの合計重量の一部が常時保護板下部煉瓦に載荷されているので、シール材を押え付けてシール機能を保持でき、石炭乾留時に炭化室から炉外へのガス漏れを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】コークス炉の炉長方向断面図であって、炉長方向端部の炉締め構造を説明する図である。
【図2】図1のA部拡大図であって、保護板支持構造の側面構成を説明する図である。
【図3】図2をB−B方向から見た図であって、保護板に取り付けた支持梁構造を説明する図である。
【図4】保護板支持構造の側面方向から見た構成を説明する図であって、(a)は加熱中における煉瓦の自由な膨張を維持する状態の図、(b)は加熱完了後にシール性を確保する状態の図である。
【図5】保護板支持構造の側面方向から見た構成を説明する図であって、保護板の支持梁をバックステー側に設けた構成を説明する図である。
【図6】コークス炉の炉長方向断面図であって、紙面左半分は燃焼室の断面、紙面右半分は炭化室の断面を示す図である。
【図7】コークス炉の炉長方向端部の部分平面断面図であって、保護板、ドアフレーム、ドアー、煉瓦構築物、バックステーの配置を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
本発明は、保護板、ドアフレーム、ドアーの合計重量が常にコーベル部端部の保護板下部煉瓦に集中して作用することがないようにするという目的を、バックステーに設置したスプリングを介して保護板を上下方向に支持することで実現した。
【実施例】
【0032】
以下、本発明のコークス炉の炉締め構造を図1〜図5を用いて説明する。
発明者は、まず、保護板7、ドアフレーム9、ドアー8の合計重量をバックステー6で支持出来るように構成し、加熱中は、バックステー6で全部又は殆どの重量を支持する構成とした。一方、加熱完了後は、保護板7と保護板下部煉瓦5aの間から乾溜中のガスが漏れる等を防止する目的から、シール機能を保持するために操業前に保護板下部煉瓦5aとバックステー6の両方で支持するように調整する構成とした。
【0033】
図6に示すように、コークス炉1の煉瓦構築物は、下段に蓄熱室2、上段に炭化室3と燃焼室4が配置され、上段と下段との間にコーベル部5が配置されている。
【0034】
この煉瓦構築物は、炭化室3の炉長方向両端に配置したバックステー6を貫通するクロスタイロッド16の両端部に設けたクロスタイロッドの炉締スプリング17を締付けることで、両バックステー6に引きつけあう力を与え、結果として両バックステー6の間に配置された煉瓦構築物に炉締力を付与するものである。なお、図1中の20はバックステー6とドアフレーム9間に配置された炉締め金物である。
【0035】
蓄熱室2の上部に配置された炭化室3と燃焼室4の位置(煉瓦構築物の上段)であって、バックステー6と煉瓦構築物との間には保護板7が配置され、この保護板7を介してバックステー6の炉締力は煉瓦構築物に伝達される。
【0036】
炭化室3の炉長方向両端部には、コークス乾留中に炭化室3を密閉するためのドアー8が配置される(図6参照)。このドアー8はドアフレーム9によって保持され、ドアフレーム9は前記保護板7に取り付けられている。
【0037】
炭化室3の炉長方向端部における煉瓦構築物は、下段の蓄熱室2及びコーベル部5に対して上段の炭化室3及び燃焼室4が炉長方向の中央側にやや引っ込み、保護板下部煉瓦5aが炉長方向の端部側にやや出っ張った構造であり、保護板7はこのやや出っ張った部分の上方に載荷される(図1参照)。
【0038】
一般的には、構築後の冷間時、保護板7、ドアフレーム9、ドアー8の合計重量は、コーベル部5の端部の保護板下部煉瓦5aで支持する構造となっている。また、加熱中も同様であり、煉瓦の膨張と一緒に持ち上げられるように構成されている。
【0039】
この場合の問題点は、保護板7、ドアフレーム9、ドアー8はコーベル部5の端部の保護板下部煉瓦5aの上に載荷されたままであるため、加熱時に保護板下部煉瓦5aの自由な膨張を阻害することである。
【0040】
更に、加熱完了後(操業開始後)もコーベル部5の端部に常に保護板7、ドアフレーム9、ドアー8の合計重量が作用したままの状態のため、最近のコークス炉寿命である50年或いは60年間の操業経過によって前記保護板下部煉瓦5aが損傷する等の現象がでることである。そして、最悪の場合は保護板7等の炉締構成物がずり落ちる等の損傷がでて、通常の操業が出来なくなるおそれがある。
【0041】
そこで、本発明では、冷間時・加熱中のかかる欠点を補いつつ保護板7と保護板下部煉瓦5aとの位置関係をも正確に保ち、かつ加熱完了後もある設定範囲の分配にて保護板7、ドアフレーム9、ドアー8の合計重量が分散できるように、図2に示す構成としている。
【0042】
すなわち、本発明では、保護板7からバックステー6に向けて支持梁11を突出状に例えばボルト18で取り付ける。一方、バックステー6には前記支持梁11を貫通する棒13を突出状に設けた保護板受け梁12を取り付け、この保護板受け梁12と前記支持梁11との間における前記棒13の外周部に嵌めたスプリング14を介して保護板7、ドアフレーム9、ドアー8の合計重量をバックステー6に伝えるように構成する。
【0043】
図2の例では、前記棒13にねじ13aを形成し、このねじ13aに前記スプリング14のスプリング荷重調整用ナット15を取り付けることで、この調整用ナット15を調整しスプリング8の長さを変えることによりバックステー6側で支持する重量を変えることが出来るようにしている。すなわち、保護板下部煉瓦5aで支持する重量とバックステー6で支持する重量の分配を調整することが出来る。
【0044】
上記構成の本発明において、バックステー6の炉長方向への動きを阻害しないためには、図3に示すように、前記棒13と保護板7の支持梁11に設けた前記棒13の貫通孔11aの炉長方向の隙間d1をバックステー6の移動量以上としておくことで対応できる。
【0045】
また、バックステー6の炉団方向への動きも阻害しないためには、前記棒13と保護板7の支持梁11に設けた貫通孔11aの炉団方向の隙間d2をバックステー6の移動量以上としておくことで対応できる。
【0046】
上記構成の本発明の炉締め構造の場合、加熱中には、図4(a)に示すように、保護板7の下面角部と保護板下部煉瓦5aの間に配置されたシール材19が少しだけ潰れる程度に押し付けるように調整用ナット15を上方に移動してスプリング14を収縮させる。
【0047】
このようにすることで、スプリング14の反力が大きくなって、保護板7、ドアフレーム9、ドアー8の合計重量のうちの保護板下部煉瓦5aで支持する重量を小さくでき、加熱中における煉瓦の自由な膨張を維持することができる。
【0048】
また、加熱完了後は、図4(b)に示すように、調整用ナット15を下方に移動してスプリング14を伸長させ、スプリング14の反力を小さくする。このようにすることで、保護板7、ドアフレーム9、ドアー8の合計重量のうちの保護板下部煉瓦5aで支持する重量を大きくして、前記シール材19を潰してシール性を確保する。
【0049】
図5は、図1〜図4に示した構成に換えて、保護板7の支持梁11をバックステー側に取り付けた構造である。
【0050】
図5に示した構成は、保護板7の前記支持梁11を、保護板7から突出状に取り付けるのに代えて、前記棒13の長手方向に沿う移動が自在なように、前記棒13に嵌合させたものである。この図5の構成においても、支持梁11の先端で支持する保護板7、ドアフレーム9、ドアー8の合計重量は、スプリング14を介してバックステー6に伝わる。
【0051】
このような図5の構成では、冷間時及び加熱中における従来の炉締め構造の欠点を補いつつ保護板7と保護板下部煉瓦5aとの位置関係をも正確に保ち、かつ加熱完了後においてもある設定範囲の分配にて保護板7、ドアフレーム9、ドアー8の合計重量を分散して保持することができる。
【0052】
この図5に示す構成の場合も、調整用ナット15の上下方向位置を調整して保護板7の支持梁11とスプリング荷重の調整用ナット15に挟まれて設置したスプリング14の長さを変えることにより、保護板下部煉瓦5aで支持する重量とバックステー6で支持する重量の分配を調整することが出来る。
【0053】
図1〜図5に示した構成の本発明の炉締め構造では、加熱中の煉瓦の自由な膨張を維持することができ、煉瓦の損傷も低減でき、加熱完了後のガス漏れの防止にも効果を発揮するとともに石炭乾留中の温度変化による煉瓦膨張量の変化が原因の保護板7と保護板下部煉瓦5aとの相対位置の変動にも対応が可能となり炉寿命の長期化が図れる。
【0054】
本発明は上記の例に限らず、各請求項に記載された技術的思想の範疇であれば、適宜実施の形態を変更しても良いことは言うまでもない。
【符号の説明】
【0055】
1 コークス炉
2 蓄熱炉
3 炭化室
4 燃焼室
5 コーベル部
5a 保護板下部煉瓦
6 バックステー
7 保護板
8 ドアー
9 ドアフレーム
10 コーベルダクト
11 支持梁
11a 貫通孔
12 保護板受け梁
13 棒
13a ねじ
14 スプリング
15 調整用ナット
16 クロスタイロッド
17 クロスタイロッドの炉締スプリング
18 ボルト
19 シール材
20 炉締め金物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
炉団方向に燃焼室と交互に複数配置される炭化室の炉長方向両端に配置するドアーを、燃焼室の炉長方向両端に配置した保護板に取付けたドアフレームで保持し、燃焼室の炉長方向両端に配置したバックステーで前記保護板を介して燃焼室の炉長方向に炉締力を付与すべく構成した室炉式コークス炉において、
前記バックステーに設置したスプリングを介して前記保護板を上下方向に支持するように構成したことを特徴とする室炉式コークス炉の炉締め構造。
【請求項2】
前記スプリングによる前記保護板の上下方向の支持は、
前記保護板から前記バックステーに向けて突出状に支持梁を取り付ける一方、この支持梁を貫通する棒を突出状に設けた保護板受け梁を前記バックステーに取り付け、支持梁と保護板受け梁間における前記棒の外周部にスプリングを嵌めることにより行うものであることを特徴とする請求項1に記載のコークス炉炉締め構造。
【請求項3】
前記棒にねじを形成して保護板受け梁とスプリングの間にスプリング荷重の調整用ナットを設けたことを特徴とする請求項2に記載のコークス炉炉締め構造。
【請求項4】
保護板に設けた前記支持梁と前記棒との間には、バックステーの炉長方向の移動量以上の隙間が設けられていることを特徴とする請求項2又は3に記載のコークス炉炉締め構造。
【請求項5】
保護板に設けた前記支持梁と前記棒との間には、バックステーの炉団方向の移動量以上の隙間が設けられていることを特徴とする請求項2〜4の何れかに記載のコークス炉炉締め構造。
【請求項6】
前記支持梁を、前記保護板から突出状に取り付けるのに代えて、前記棒の長手方向に沿う移動自在に取り付けたことを特徴とする請求項2又は3に記載のコークス炉炉締め構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−104048(P2013−104048A)
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−250892(P2011−250892)
【出願日】平成23年11月16日(2011.11.16)
【出願人】(000006655)新日鐵住金株式会社 (6,474)