説明

家屋のバルコニーの構造

【目的】部材品種の削減、統一化を図り、その管理を簡略化するとともに、施工性を向上しうる。
【構成】家屋本体部Aの本体外壁WAに家屋追加部Bを設け、かつ家屋追加部Bの追加外壁WBと、本体外壁WAとの間の前記家屋追加部Bの屋根部分をバルコニーとするために、家屋本体部Aの屋内床面Fを形成するのに用いる床パネルPを、前記追加外壁WB上端と、前記本体外壁WAを通る梁材Hとにボルト止めし、かつその上面を水密する。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、バルコニーの床面を屋内床面形成用の床パネルを用いて形成することにより、部材の汎用性を高め、部材品種の削減を図りうる家屋のバルコニーの構造に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、屋根上に設けられるバルコニーの床は、家屋内部の床を形成する部材とは別の部材、例えば根太、防火材、防水シートなどを用いて形成されていた。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかしながらこのような従来のものにあっては、部材品種が増大し、その生産、物流などの管理を複雑化する他、施工方法が多様化するため、施工性の低下を招来する原因となっていた。
【0004】本発明は、家屋本体部の屋内床面形成用の床パネルを用いてバルコニー床を形成することを基本として、部材品種の削減を達成でき、その管理を簡略化しうるとともに、部材の汎用性を高めかつ施工性を向上しうる家屋のバルコニーの構造の提供を目的としている。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明は、家屋本体部の本体外壁に、この家屋本体部から張出しかつ家屋本体部よりも低層の家屋追加部を設け、かつ家屋追加部の追加外壁と、本体外壁との間の前記家屋追加部の屋根部分をバルコニーとする家屋のバルコニーの構造であって、家屋本体部の屋内床面を形成するのに用いる床パネルを、前記追加外壁上端と、前記本体外壁を通る梁材とにボルト止めし、かつその上面を水密する。
【0006】
【作用】屋内床面を形成するために用いる床パネルを、追加外壁上端と、本体外壁を通る梁材とにボルト止めし、これによりバルコニー床を形成する。従って、床パネルの共通化、及びこの床パネルを梁材などに取付ける金具等の共通化を図ることができ、施工方法を簡略化し、施工性を向上しうるとともに、部材の汎用性を高め、かつ部材品種を削減でき、生産、物流などの管理を容易とする。
【0007】又前記床パネルの床板を不燃材としかつその上面を防水シートなどを用いて水密しておくことによって、板金工事を排除でき、早期に防水処理を施すことが出来る。
【0008】
【実施例】以下本発明の一実施例を図面に基づき説明する。図において本発明の家屋のバルコニーの構造は、家屋本体部Aの本体外壁WAに、この家屋本体部Aから外方に張出しかつ家屋本体部Aよりも低層の家屋追加部Bを設けるとともに、本実施例では、この家屋追加部Bの追加外壁WBと、本体外壁WAとの間の家屋追加部Bの屋根部分により形成したバルコニー本体部2、および前記追加外壁WBから外方に突出するバルコニー延長部3によってバルコニーを形成する。
【0009】又家屋本体部Aの屋内床面Fを形成するために用いる床パネルP(PB)を、前記追加外壁WB上端と、本体外壁WAを通る梁材Hとにボルト止めし、かつその上面を水密処理する。
【0010】前記梁材Hは、図1、図2に示すように、垂直な立片H1の上下に水平な突片H2、H2を張出した断面コ字の形鋼材からなる長尺な基体20を具えるとともに、該基体20の両端に固着された端板21、21をコ字の基部を有する受金具22、22の向き合う立上げ片22A、22Aに夫々ボルト止めすることにより前記家屋追加部Bの内端に水平に架け渡される。
【0011】なお前記梁材Hの基体20がなす外に向く溝部には、垂直な補強片23…が適宜の間隔を有して固着される。又前記受金具22、22は、家屋追加部Bの家屋本体部Aと直角な追加側外壁WB1、WB1を形成する壁パネルの上面かつ内端部に固定される。
【0012】又家屋本体部Aの屋内床面Fを形成する床パネルPは、図3〜5に示すように、溝形鋼からなる横の枠材24、24の両端を縦の枠材25、25により継いだ矩形の周囲枠26を有するとともに、前記縦の枠材25、25間に、横の枠材24と平行かつ1対の溝形鋼のウエブを溶着した断面I字状の中の枠材27を架け渡している。又中の枠材27と横の枠材24との間には、該中の枠材27、横の枠材24に取付く根太受29、29を介して根太30…がその上面を周囲枠26上面と揃えてかつ適宜の間隔を有して架設され、床パネルPの枠組31を形成するとともに、該枠組31上面には床材32が添設される。
【0013】前記床パネルPは、図1に示すように、前記梁材Hの立片H1に一方の前記横の枠材24がボルト止めし、かつ他方の横の枠材24を家屋内部を通る梁材33に支持金具34を介してボルト止めすることにより水平に配設され、家屋本体部Aの屋内床面Fを形成する。
【0014】前記梁材33は、前記梁材Hと同構成をなすとともに、支持金具34は、梁材33に設けた補強片35にボルト止めされる垂直な取付部36外縁に、垂直かつ取付部36と直角な立上げ片37Aを有するL字の支持部37を固着しており、この支持部37の前記立上げ片37Aに床パネルPの横の枠材24がボルト止めされる。
【0015】前記家屋追加部Bは、家屋本体部Aよりも低層の家屋であって、前記追加側外壁WB1、WB1と、この追加側外壁WB1、WB1の外端を継ぎかつ前記本体外壁WAと平行な壁パネルWFからなる追加外壁WBとにより外壁が形成されるとともに、この追加外壁WBと本体外壁WAとの間に床パネルPBを架け渡すことにより前記バルコニー本体部2を形成する。
【0016】床パネルPBは、前記床パネルPと同構成のパネル体であって、その内端は前記梁材Hの補強片23にボルト止めした前記支持金具34の立上げ片37Aにボルト止めされることにより該支持金具34を介して梁材Hに固定されるとともに、床パネルPBの外端は前記追加外壁WB上端に設けた受金具4を介して該追加外壁WB上端にボルト止めされる。
【0017】受金具4は、図2に示すように、前記壁パネルWF上面にボルト止めされる下片39とその内端から立上がる立片40とその上端から外方にのびる水平な上片41とを有するコ字の基体42に垂直な補強片43、43を設けた中の受金具4A、および前記追加側外壁WB1と追加外壁WBとのなす出隅部上端に固定されかつ前記上片41と同高の水平な上片44を有する隅の受金具4Bを含む。
【0018】前記床パネルPBの外端は、前記中の受金具4Aの立片40にボルト止めされ、本体外壁WAと追加外壁WBとの間に水平に架け渡される。
【0019】又床パネルPBの上面には、外方に向かって斜め下に緩く傾く水勾配を有する不燃性の床板5が下地桟45…を介して添設される。
【0020】前記バルコニー延長部3は、前記受金具4の上片41、44にボルト止めされる固定片46とこの固定片46の外端から垂下する小高さの垂片47を介して外方にのびかつ水平な上板49を有する断面L字の張出し片50とを具えることにより受金具4…から外方に平行に突出する片持梁6…、この片持梁6…外端で立上がる手すり部材7、片持梁6…の上面かつ手すり部材7の近傍に設けた樋状部9、および片持梁6…の上面に設けられ前記床板5近傍から前記樋状部9までのびるバルコニー延長床板10を有する。
【0021】前記手すり部材7は、上枠材7A、下枠材7B間に垂直な縦枠材7Cを架設した枠組を具え、かつ該枠組の内面上部と外面とに面材7D、7Eが添着されたパネル体であって、前記縦枠材7Cを前記片持梁6の外端に設けた取付片51にボルト止めすることにより立設され、バルコニーの手すりを形成しうる。
【0022】なお手すり部材7の上端には、笠木7Fが設けられるとともに、手すり部材7の下端と前記追加外壁WBとの間には、片持梁6…下方においてバルコニー延長部3の軒天井を形成する軒天井パネル52が架け渡される。
【0023】又前記バルコニー延長床板10は、片持梁6の前記上板49上に載置されかつビス止めされるとともに追加外壁WBと平行な2本の床根太53、53により支持され、しかも前記床板5と同勾配で外方かつ斜め下に緩く傾く不燃性の板材からなる。
【0024】バルコニー延長床板10の内端は、前記床板5の外端に上面を揃えて接合されることにより該床板5近傍から外方にのびるとともに、外の前記床根太53外面と整一するバルコニー延長床板10の外端と、前記手すり部材7との間に樋状部9が設置される。
【0025】樋状部9は、手すり部材7の内の面材7D下部に沿って垂下する外壁部9A、この外壁部9Aの下端から内方にのびる底板部9B、この底板部9Bの内端から外の前記床根太53に沿って立上がり前記外壁部9Aと底板部9Bと共に排水溝を形成する内壁部9C、およびこの内壁部9Cの上端から前記バルコニー延長床板10上面に沿ってのびる床板部9Dを有する金属板の折曲げ体からなる。
【0026】なお前記外壁部9A上端は、前記面材7Dにビス止めされる水切り具54によって水切りされる。
【0027】又前記床板5の内端と壁パネルWPとには、鉄製の折曲げ体である防火層55が固着され、床板5、バルコニー延長床板10、樋状部9と共に防火性を高めている。
【0028】前記床板5、バルコニー延長床板10上面には、防水シート13、化粧シート57が順次敷設され、これにより前記床パネルPB上面を床板5を介して水密処理する。
【0029】前記防水シート13、化粧シート57は、前記樋状部9の床板部9D上面に重置され、雨水等を樋状部9に誘導する。
【0030】このように家屋追加部Bの屋根部分におけるバルコニーの床の防火、防水施工を簡略化でき、早期に床仕上げを達成しうる。
【0031】又前記床パネルPBに、予め工場において前記床板5を添設しておくことにより、施工性を一層向上しうる。
【0032】
【発明の効果】叙上の如く本発明の家屋のバルコニーの構造は、屋内床面形成用の床パネルを用いてバルコニーの床面を形成するため、部材の汎用性を高め、部材品種を削減しうるとともに、生産、物流における部材管理を容易とし、しかも施工方法の統一化を図ることができ、施工性を向上しうる。
【0033】又床パネルの床板として不燃材を用い、しかも防水シートを予め貼着しておくことにより水密処理を施すことによって、防火、防水施工を簡略化でき、早期に防水処理を達成できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例を示す断面図である。
【図2】その部分分解斜視図である。
【図3】床パネルを例示する平面図である。
【図4】その正面図である。
【図5】その断面図である。
【図6】本発明の一実施例を概略的に示す斜視図である。
【符号の説明】
A 家屋本体部
B 家屋追加部
F 屋内床面
H 梁材
P、PB 床パネル
WA 本体外壁
WB 追加外壁

【特許請求の範囲】
【請求項1】家屋本体部の本体外壁に、この家屋本体部から張出しかつ家屋本体部よりも低層の家屋追加部を設け、かつ家屋追加部の追加外壁と、本体外壁との間の前記家屋追加部の屋根部分をバルコニーとする家屋のバルコニーの構造であって、家屋本体部の屋内床面を形成するのに用いる床パネルを、前記追加外壁上端と、前記本体外壁を通る梁材とにボルト止めし、かつその上面を水密することを特徴とする家屋のバルコニーの構造。

【図1】
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【図2】
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【図4】
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【図3】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開平6−322814
【公開日】平成6年(1994)11月22日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平5−136748
【出願日】平成5年(1993)5月13日
【出願人】(000004673)ナショナル住宅産業株式会社 (319)