説明

容器の搬送用吊り具

【課題】 容器の重心が中心からずれていても、傾けずに吊り上げ、搬送でき、着脱が容易で、脱落のおそれがなく、また容器を損傷させない缶状容器の吊り具を提供する。
【解決手段】 2つの固定アーム2,3と、1つの伸縮アーム4が、基端側で相互角度120°の放射状に連結部材5で結合される。各アーム2,3,4の先端付近に係止部材6,7,8が結合される。アーム2,3は、略容器Cの半径に対応する長さで、先端に容器Cの内フランジC1に嵌合可能な係合部9,10を持つ。伸縮アーム4は、略容器Cの半径に対応する長さとなる伸長状態で固定でき、先端に内フランジC1に嵌合可能な係合部11を持つ。係止部材6,7,8に吊り索Sを掛け止め、クレーン等で容器Cを吊り上げる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、上部開口の内周縁部に内フランジを有するドラム缶状容器の搬送用吊り具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来ドラム缶吊り具として、例えば特許文献1に記載されたものが知られている。このドラム缶吊り具は、ドラム缶を立てた状態でその上縁を自動的に掴み吊り上げ、或いはドラム缶を横にした状態でその両縁を自動的に掴み吊り上げるものであり、以下の構成を有する。
すなわち、掴まれるドラム缶の長さ程度に水平方向に長い補助ビームの両端側に、上下回りに正逆回転自在に掴み爪をそれぞれ取付け、吊り上げられる吊りビームを補助ビームに相対的に上下方向に僅かに平行移動自在に連結し、補助ビームに対して相対的に上昇する吊りビームの両端部で補助ビームの両端側の各掴み爪の後端を押圧して、各掴み爪にドラム缶を掴む方向に作用する回転モーメントによって握力を発生させてドラム缶を吊り上げ搬送することができるようにしたものである。
【特許文献1】実用新案登録第3040007号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記従来のドラム缶吊り具は、この発明を適用しようとする容器とは具体的構造が異なるため適用が困難である。また、2点吊り方式であるため、内容物が片荷状態で、重心が中心からずれている場合には、吊り上げ時にドラム缶が傾くので、内容物によっては搬送が困難である。
したがって、この発明は、上部開口の内周縁部に内フランジを有するドラム缶状容器に特に適用できる搬送用の吊り具であって、3点吊り方式であるため、内容物が片荷状態で、重心が中心からずれている場合にも、容器を傾けずに吊り上げ、搬送することができ、容器への着脱が容易であるが、吊り上げ時には脱落のおそれがなく、また容器を損傷させることのないものを提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0004】
この発明においては、上記課題を解決するため、2つの固定アーム2,3と、1つの伸縮アーム4と、これらアーム2,3,4の基端側を結合する連結部材5と、各アーム2,3,4の先端付近に結合される係止部材6,7,8とを具備させて容器Cの搬送用吊り具1を構成する。2つの固定アーム2,3は、略容器Cの半径に対応する長さとし、先端に容器Cの内フランジC1に嵌合可能な係合部9,10を設ける。伸縮アーム4は、略容器Cの半径に対応する長さとなる伸長状態で固定可能とし、先端に内フランジC1に嵌合可能な係合部11を設ける。連結部材5は、固定アーム2,3と伸縮アーム4を相互角度120°に放射状に開いた状態で、その基端側を結合する。係止部材6,7,8に吊り索Sを掛け止め、クレーン等で容器Cを吊り上げる。
【発明の効果】
【0005】
この発明の吊り具は、3点吊り方式であるため、内容物が片荷状態でも、容器を傾けずに吊り上げ、安全に搬送することができ、容器への着脱が容易で、吊り上げ時には脱落のおそれがなく、クランプを用いないので、容器に損傷を与えるおそれがないという効果を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
図面を参照してこの発明の実施の形態を説明する。図1は本発明の吊り具の斜視図、図2は本発明の吊り具の正面図、図3は吊り具の平面図、図4は図2におけるIV−IV断面図、図5は吊り具の装着過程を示す平面図である。
【0007】
吊り具1は、2つの固定アーム2,3と、1つの伸縮アーム4を具備する。これらアーム2,3,4は、基端側において連結部材5によって結合される。各アーム2,3,4の先端付近には、吊り索Sを掛け止めるための係止部材であるシャックル6,7,8が結合される。
【0008】
2つの固定アーム2,3は、帯板状鋼板からなり、略容器Cの半径に対応する長さを有し、先端には容器Cの内フランジC1に嵌合可能な係合部9,10を有する。係合部9,10は、内フランジC1を挿入できる嵌合溝9a,10aを備えたブロック状鋼材からなる。
【0009】
伸縮アーム4は、伸縮自在で、伸長状態において固定可能であり、この状態で略容器Cの半径に対応する長さを有し、先端に内フランジC1に嵌合可能な係合部11を有する。
【0010】
連結部材5は、固定アーム2,3と伸縮アーム4を放射状に相互角度120°に開いた状態で、その基端側を結合する。
【0011】
伸縮アーム4は、互いに長手方向へ摺動自在に組み込まれたガイドボックス12とスライダー13を有し、伸長状態において両者を固定する固定ピン14を具備する。
【0012】
ガイドボックス12は、平行一対のガイド板15を有し、基端において連結部材15に結合される。2枚のガイド板15の間に、帯板状のスライダー13が、基端側において長手方向へ摺動自在に受け入れられる。すなわち、2枚のガイド板15に設けられた長孔15aに、スライダー13を貫通するガイドピン16の両端部が摺動自在に受け入れられており、スライダー13は、ガイドピン16が長孔15a内を移動できる範囲でガイドボックス12に対して摺動可能である。スライダー13の先端には、係合部11が設けられる。係合部11は、内フランジC1を挿入できる嵌合溝11aを備えたブロック状鋼材からなる。
【0013】
ガイドボックス12と、スライダー13は、伸長状態において相互に合致するピン挿通孔15b,13aを有する。ピン挿通孔15a,13aには、ガイドボックス12とスライダー13を固定するための固定ピン14を貫通させることができる。
【0014】
固定ピン14は、ピン挿通孔15b,13aへ挿通可能な小径部14bと、挿通不可能な大径部14aとを有し、小径部14bはさらに、大径部と一体の基部14cと、この基部14cの先端に屈折可能にスプリングピンで枢着された屈折部14dとを具備する。ピン挿通孔15b,13aへ固定ピン14を貫通させた状態で、突出した屈折部14dを折り曲げることにより抜け止めすることができる。
【0015】
この吊り具1を容器Cに装着する場合には、図5に示すように、固定ピン14を抜いて伸縮アーム4を縮めた状態で、吊り具1を容器C内に入れて固定アーム2,3の係合部9,10を内フランジC1に嵌合させる。この状態で伸縮アーム4を伸ばし、固定ピン14をピン挿通孔15b,13aへ貫通させ、屈折部14dを折り曲げて抜け止めする。そして、シャックル6,7,8に吊り索Sを係止してクレーンで吊り上げる。容器への着脱は、固定ピン14の抜き差しと、伸縮アーム4の伸縮により容易に行える。
【0016】
吊り具1は、3点吊り方式であるため、内容物が固形物で、片荷状態でも、容器を傾けずに吊り上げ、安全に搬送することができる。3点が確実に内フランジC1に嵌合しているから、内フランジC1が変形しない限り脱落のおそれはない。内フランジC1の近傍位置で吊られるので、内フランジC1に曲げモーメントがかかりにくく、変形が回避される。内フランジC1を噛み込むようなクランプを用いないので、容器Cに損傷を与えるおそれがない。
【0017】
伸縮アーム4の他の実施形態を図6に示す。この伸縮アーム4は、伸縮自在で、伸長状態において固定可能であり、この状態で略容器Cの半径に対応する長さを有し、先端に内フランジC1に嵌合可能な係合部11と、シャックル8を有する点において先の実施形態と同等である。伸縮アーム4は、互いに長手方向へ伸縮自在に組み込まれたガイドボックス17とねじ棒18を有し、伸長状態において両者を固定するロックナット19を具備する。ガイドボックス17は、平行一対のガイド板20と、端板21を有し、支持板22を介して基端において連結部材5に結合される。端板21のガイド孔21aを自由に貫通したねじ棒18の基端側が2枚のガイド板20の間に受け入れられストッパ18aで抜け止めされる。ねじ棒18の先端に、係合部11が設けられる。係合部11は、内フランジC1を挿入できる嵌合溝11aを備えたブロック状鋼材からなる。ガイドボックス20とねじ棒18は、伸長状態においてロックナット19で相互に固定される。
【0018】
吊り具1を容器Cに装着する場合には、ロックナット19をねじ棒18の先端側へ移動させて伸縮アーム4を縮めた状態で、吊り具1を容器C内に入れて固定アーム2,3の係合部9,10を内フランジC1に嵌合させる。この状態でロックナット19をねじ棒18の基端側へ移動させて伸縮アーム4を伸ばし、端板21との間で固定する。そして、シャックル6,7,8に吊り索Sを係止してクレーンで吊り上げる。
【産業上の利用可能性】
【0019】
この発明は、例えば、原子力関連のドラム缶状廃棄物容器等に装着して使用する吊り具として利用される。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の吊り具の斜視図である。
【図2】本発明の吊り具の正面図である。
【図3】本発明の吊り具の平面図である。
【図4】図2におけるIV−IV断面図である。
【図5】吊り具の装着過程を示す平面図である。
【図6】他の実施形態の伸縮アームを示すもので、(a)は正面図、(b)は平面図である。
【符号の説明】
【0021】
1 吊り具
2 固定アーム
3 固定アーム
4 伸縮アーム
5 連結部材
6 係止部材
7 係止部材
8 係止部材
9 係合部
9a 嵌合溝
10 係合部
10a 嵌合溝
11 係合部
11a 嵌合溝
12 ガイドボックス
13 スライダー
13a ピン挿通孔
14 固定ピン
14a 大径部
14b 小径部
14c 基部
14d 屈折部
15 ガイド板
15a 長孔
15b ピン挿通孔
16 ガイドピン
C 容器
C1 内フランジ
S 吊り索

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上部開口の内周縁部に内フランジを有するドラム缶状容器の搬送用吊り具であって、
略容器の半径に対応する長さを有し、先端に前記内フランジに嵌合可能な係合部を有する2つの固定アームと、
伸縮自在に構成され、略容器の半径に対応する伸長状態で固定可能であり、かつ先端に前記内フランジに嵌合可能な係合部を有する伸縮アームと、
前記固定アームおよび前記伸縮アームを放射状に相互角度120°に開いた状態で、その基端側を結合する連結部材と、
前記固定アームおよび前記伸縮アームの先端付近に結合される、吊り索を掛け止めるための係止部材と、を具備することを特徴とする容器の搬送用吊り具。
【請求項2】
前記吊り索を掛け止めるための係止部材が、シャックルであることを特徴とする請求項1に記載の容器の搬送用吊り具。
【請求項3】
前記伸縮アームが、互いに長手方向へ摺動自在に組み込まれたガイドボックスおよびスライダーと、伸長状態においてガイドボックスとスライダーとを固定する固定ピンとを具備し、
前記ガイドボックスが、基端において前記連結部材に結合され、前記スライダーが、基端側においてガイドボックス内に長手方向へ摺動自在に受け入れられ、かつ先端に前記係合部を有し、
前記ガイドボックスと、スライダーは、伸長状態において相互に合致し、前記固定ピンを貫通させることができるピン挿通孔を有することを特徴とする請求項1または2に記載の容器の搬送用吊り具。
【請求項4】
前記固定ピンは、前記ピン挿通孔へ挿通可能な小径部と、挿通不可能な大径部とを有し、
前記小径部は、前記大径部と一体の基部と、この基部の先端に屈折可能に枢着された屈折部とを具備し、
前記ピン挿通孔へ前記小径部を貫通させた状態で、突出した前記屈折部を折り曲げることにより抜け止め可能であることを特徴とする請求項3に記載の容器の搬送用吊り具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−131394(P2007−131394A)
【公開日】平成19年5月31日(2007.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−325096(P2005−325096)
【出願日】平成17年11月9日(2005.11.9)
【出願人】(000001890)三和テッキ株式会社 (134)
【Fターム(参考)】