容器内壁への衝撃の検知方法及びその検知システム
【課題】 本発明の目的は、遠隔的に光測定することにより、測定装置を損傷させずに且つ流路の形状を変化させずに、容器内壁への衝撃を直接的に検知し、容器内壁の損傷の予測をすることができる容器内壁への衝撃の検知方法及びその検知システムを提供すること。
【解決手段】キャビテーションにより容器2の内壁へ衝撃圧が加わったことを検知する容器内壁への衝撃の検知方法であって、容器内壁に応力発光粒子を固着させておき、キャビテーションにより容器内壁へ衝撃圧が加わった際に発生する応力発光粒子からの放射光を受光する容器内壁への衝撃の検知方法。
この放射光の受光は、液体が容器2内を流れる状態或いは、液体が容器2内に貯蔵された状態で行うものである。
【解決手段】キャビテーションにより容器2の内壁へ衝撃圧が加わったことを検知する容器内壁への衝撃の検知方法であって、容器内壁に応力発光粒子を固着させておき、キャビテーションにより容器内壁へ衝撃圧が加わった際に発生する応力発光粒子からの放射光を受光する容器内壁への衝撃の検知方法。
この放射光の受光は、液体が容器2内を流れる状態或いは、液体が容器2内に貯蔵された状態で行うものである。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、容器内壁への衝撃を検知する方法及びその検知システムに関し、更に詳しくは、応力発光粒子を使って、液体中のキャビテーションの発生に起因する容器内壁への衝撃を検知する検知方法及びその検知システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、液体中で発生するキャビテーションの気泡の挙動やその発生量を調べることが行われている。
ここで、キャビテーションとは、液体の運動(流速等)の変化によって圧力が飽和蒸気圧以下に低下した際に液体が気化して空洞を生じる現象を言う。
この気泡の挙動や発生量を予備調査してデータを蓄積しておくと、キャビテーションによる環境へのダメージ(壊食等)の発生を設計段階で最小限に食い止めることができるので、このデータの蓄積は極めて重要である。
【0003】
そのため、近年、キャビテーション挙動等を観察したり測定したりする方法及びその方法に使用する装置等が種々開発された。
キャビテーションの挙動等を調べる方法としては、例えば、カメラ等により直接観察する方法、光散乱法により測定する方法(例えば、特許文献1参照)、及び静電容量を測定する方法(例えば、特許文献2参照)が開示されている。
【0004】
気泡の発生量を定量化するには、光散乱法により測定する方法と静電容量を測定する方法との二通りの方法が有効である。
しかし、光散乱法により測定する方法の場合、ストロボやレーザー光源等の比較的大型で高価な装置が必要となる。
【0005】
また、静電容量を測定する方法の場合、被測定流体を二個の電極間に挟み込まなければならない。
その上、電極が管内に大きく飛び出す場合には、電極が存在しないときの流路とは異なった流路断面形状になり、液体の流れが通常の流路の場合と比べて変化する。
【0006】
このように、光散乱法により測定する方法にしても静電容量を測定する方法にしても、いずれも装置が複雑になるという欠点がある上、キャビテーションによる壊食を直接的に観察するものではないから容器内壁の損傷(壊食)の予測が困難である。
【0007】
容器内壁の損傷状況の直接的な把握方法としては、圧電センサを用いてキャビテーション衝撃圧を測定するような容器内壁への衝撃の検知方法及びその検知システムが知られている(例えば、特許文献3参照)。
【0008】
【特許文献1】特開2003−057164号公報
【特許文献2】特開平7−198710号公報
【特許文献3】特開2002−267584号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上述したような圧電センサを用いた容器内壁への衝撃の検知方法及びその検知システムでは、液体中に配置された圧電センサがキャビテーション衝撃波により影響を受け、測定装置そのものを損傷させることになるという問題があった。
また、圧電センサ自体が流路内に飛び出すので、圧電センサが存在しない通常の流路の流れ場とは異なった流れ場を生ずることとなる。
【0010】
本発明は、上記のような技術的背景のもとでなされたものである。
すなわち、本発明は、遠隔的に光測定することにより、測定装置を損傷させずに且つ流路の形状を変化させずに、容器内壁への衝撃を直接的に検知し、容器内壁の損傷の予測をすることができる容器内壁への衝撃の検知方法及びその検知システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
かくして、本発明者は、このような課題背景に対して鋭意研究を重ねた結果、容器内壁に応力発光粒子を固着させておき、キャビテーションにより容器内壁へ衝撃圧が加わった際に発生する応力発光粒子からの放射光を受光することにより、上記課題を解決することができることを見出し、この知見により、本発明を完成するに至った。
【0012】
すなわち、本発明は、(1)、キャビテーションにより容器内壁へ衝撃圧が加わったことを検知する容器内壁への衝撃の検知方法であって、容器内壁に応力発光粒子を固着させておき、キャビテーションにより容器内壁へ衝撃圧が加わった際に発生する応力発光粒子からの放射光を受光する容器内壁への衝撃の検知方法に存する。
【0013】
すなわち、本発明は、(2)、前記放射光の受光は、撮像素子を用いて行う上記(1)に記載の容器内壁への衝撃の検知方法に存する。
【0014】
すなわち、本発明は、(3)、前記放射光の受光は、液体が容器内を流れる状態で行う上記(1)に記載の容器内壁への衝撃の検知方法に存する。
【0015】
すなわち、本発明は、(4)、前記放射光の受光は、液体が容器内に貯蔵された状態で行う上記(1)に記載の容器内壁への衝撃の検知方法に存する。
【0016】
すなわち、本発明は、(5)、前記応力発光粒子の母体材料が、スタフドトリジマイト構造、3次元ネットワーク構造、長石構造、ウルツ構造、スピネル構造、コランダム構造又はβ−アルミナ構造を有する酸化物、硫化物、炭化物又は窒化物である上記(1)に記載の容器内壁への衝撃の検知方法に存する。
【0017】
すなわち、本発明は、(6)、前記応力発光粒子の母体材料が、格子欠陥を含むα―SrAl2O4構造である上記(1)に記載の容器内壁への衝撃の検知方法に存する。
【0018】
すなわち、本発明は、(7)、前記応力発光粒子を固着した容器の一部を透明化して該透明化部分を介して放射光を受光する上記(1)に記載の容器内壁への衝撃の検知方法に存する。
【0019】
すなわち、本発明は、(8)、キャビテーションにより容器内壁へ衝撃圧が加わったことを検知するための容器内壁への衝撃の検知システムであって、内壁に応力発光粒子を固着した液体入りの容器と、キャビテーションにより容器内壁へ衝撃圧が加わった際に発生する応力発光粒子からの放射光を受光する受光手段と、を備えた容器内壁への衝撃の検知システムに存する。
【0020】
すなわち、本発明は、(9)、前記応力発光粒子を固着した部分の容器内壁の少なくとも一部が透明材料からなる上記(8)に記載の容器内壁への衝撃の検知システムに存する。
【0021】
すなわち、本発明は、(10)、前記液体入りの容器は、液体が流れることが可能な容器である上記(8)に記載の容器内壁への衝撃の検知システムに存する。
【0022】
すなわち、本発明は、(11)、前記液体入りの容器は、液体を貯蔵しておくことが可能な容器である上記(8)に記載の容器内壁への衝撃の検知システムに存する。
【0023】
なお、本発明の目的に添ったものであれば、上記(1)から(11)を適宜組み合わせた構成も採用可能である。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、容器内壁に応力発光粒子を固着させておき、キャビテーションにより容器内壁へ衝撃圧が加わった際に発生する応力発光粒子からの放射光を受光する。
そのため、放射光を撮像素子で受光すれば、容器内壁での衝撃が加わった位置やその衝撃の程度が正確に分かる。
【0025】
更に、応力発光粒子を容器内壁に固着するので、通常の流路と流路断面形状が変わらず、容器内の液体の流れを妨げることがない。
測定装置を損傷させずに且つ流路の形状を変化させずに、容器内壁への衝撃を直接的に検知することができ、容器内壁の損傷を予測することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、本発明を実施するための最良の形態を図面を用いて説明する。
〔第一実施形態〕
図1は、本発明の容器内壁への衝撃の検知方法及びその検知システムの第一実施形態を示している。
図の容器は液体が流れる液体流通管2の例である。
ここでは、液体流通管2内で発生するキャビテーション衝撃圧による容器内壁への衝撃を検知する。
【0027】
先ず、参考までにキャビテーションの発生原理について簡単に述べる。
例えば、絞り部を介して大径部と小径部とが連結された一本の管においては、上流側の大径部を流れる液体が口絞り部を経て下流側の小径部に流入すると、流路断面積が減少するため液体の流速が増し、その結果、圧力が低下する。
この圧力が飽和蒸気圧以下まで低下すると、その状態では沸点が低くなっているので、沸騰と同様の気化現象が発生、すなわちキャビテーションが発生するのである。
【0028】
キャビテーションが発生した液体が下流に流されて再び大径部に流入すると、流路断面積が増加し、液体の流速が低下して圧力が増加する。
そのため、キャビテーションは縮小し消滅するのである。
このキャビテーションの縮小や消滅時に、数百気圧程の大きな圧力(すなわち衝撃力)が発生する。
【0029】
本発明は、容器内壁に応力発光粒子を固着した場合に応力発光粒子がキャビテーション衝撃圧により発光する原理を利用したものである。
ここで応力発光粒子とは、母体材料に発光中心を添加させたものである(例えば、特開2000−63824号公報参照)。
母体材料としては、例えば、スタフドトリジマイト構造、三次元ネットワーク構造、長石構造、格子欠陥制御をした結晶構造、ウルツ構造、スピネル構造、コランダム構造又はβ−アルミナ構造を有する酸化物、硫化物、炭化物又は窒化物を用いることができる。
【0030】
発光中心としては、Sc,Y,La,Ce,Pr,Nd,Pm,Sm,Eu,Gd,Tb,Dy,Ho,Er,Tm,Yb,Luの希土類イオン、及び、Ti,Zr,V,Cr,Mn,Fe,Co,Ni,Cu,Zn,Nb,Mo,Ta,Wの遷移金属イオンを用いることができる。
【0031】
材料の化学式数字の下付きに関しては粒子の特許、先ほど修正版と同様です。ご参照ください。
母体材料として、例えばストロンチウム及びアルミニウム含有複合酸化物を用いる場合、応力発光粒子として、xSrO・yAl2O3・zMO(Mは二価金属、Mg,Ca,Ba,x,y,zは整数である)、xSrO・yAl2O3・zSiO2(x,y,zは整数である)を用いると良い。
中でも、SrMgAl10O17:Eu、(SrxBa1−x)Al2O4:Eu(0<x<1)、BaAl2Si2O8:Eu等が望ましい。
特に、格子欠陥を含むα―SrAl2O4構造が好ましい。
【0032】
応力発光粒子の粒子径については、高分子材料中に全体に均一に分散し易いものであれば良く、特に限定されない。
しかし、分解能を高くして光強度を測定するのであれば、粒子径は小さい方が好ましい。
具体的には、平均粒子径が50μm以下であることが好ましい。
本実施形態では、高分子材料と応力発光粒子とを混合してペースト状にしたものを被測定対象部に層状に塗布して衝撃の検知を行う。
高分子材料としては、応力発光粒子を強く保持固定できるものであれば、特に限定されない。
例えば一液硬化型又は二液硬化型のアクリル系樹脂やエポキシ系樹脂、ウレタン樹脂を用いることができる。
【0033】
さて、本実施形態の検知システムは、測定装置1と、応力発光粒子を固着した応力発光層Sと、透明な窓3が設けられる液体流通管2とを有している。
測定装置1は、受光手段4、演算手段5、パーソナルコンピュータ6、及びモニタ7を有している。
図1では、液体流通管2の一部に透明化部分である窓3が設けられている。
この窓3のような透明化部分は液体流通管2の少なくとも一部を、例えば透明樹脂、ガラス等の透明材料とすることで容易に設けることができる。
【0034】
応力発光層Sは、高分子材料中に応力発光粒子を分散させて塗布することにより形成される。
そのため、応力発光層Sはミクロンオーダの厚みで極めて薄く形成することができ、透光性となり且つ流路断面形状はほとんど変化しない。
【0035】
この応力発光層Sの近傍でキャビテーションによって発生した気泡が消滅すると、衝撃波が応力発光層Sを直撃することになる。
その結果、応力発光層Sから(詳しくは応力発光粒子から)光が放射され、透明な窓3を通して、受光手段4に入射する。
この受光手段4には、集光レンズ41や撮像素子(受光素子)42が備えられており、応力発光粒子から放射された光は集光レンズ41を介して撮像素子42に受光される。
【0036】
撮像素子42では光電変換が行われ、電気信号が演算手段5に送信される。
演算手段5では、電気信号がA/D変換され、撮像素子42の画素毎の光強度が数値化され、JPEG形式やTIFF形式等でデータが記録媒体に格納される。
【0037】
図1に示す測定装置1では、演算手段5にパーソナルコンピュータ6が接続されており、このパーソナルコンピュータ6に接続されたモニタ7に測定結果が表示される。
具体的な表示形態としては、例えば、応力発光層Sにおける衝撃圧の分布状態が発生位置をXY軸(応力発光層Sに沿った面)とし、光強度をZ軸として立体的な表示が行われる。
【0038】
ここで、キャビテーションが発生していない状態の光強度のバックグラウンドデータを前もって測定しておけば、それを使ってキャビテーション発生時の光強度を補正することにより、その衝撃圧の相対的大きさをより正確に表示することができる。
【0039】
本発明によれば、液体流通管2の内壁に応力発光粒子を固着させておき、液体流通管2の内壁へ衝撃圧が加わった際に発生する応力発光粒子からの放射光を受光する。
そのため、放射光を撮像素子42で受光すれば、衝撃が加わった位置や衝撃の度合いが正確に分かり、結果的に衝撃圧による内壁の破壊食状態が把握できることとなる。
【0040】
更に、応力発光粒子を容器内壁に層状に固着するので、通常の流路と流路断面形状が変わらず、容器内の液体の流れを妨げることがない。
測定装置を損傷させずに且つ流路の形状を変化させずに、容器内壁への衝撃を直接的に検知することができ、容器内壁の損傷を予測することができる。
【0041】
なお、上述した第一実施形態において応力発光層Sが比較的厚い場合は、液体流通管2の内壁に凹部を形成した部分に設けることで内壁が面一となって好ましい。
【0042】
〔第二実施形態〕
第一実施形態では液体流通管2に形成した透明の部分的な窓3を通して光を受光しているが、この第二実施形態は、図2に示すように、液体が流れる液体流通管2の全体を透明にした窓3に対応するように応力発光層Sを形成したものである。
液体流通管2のどの位置においても衝撃圧が加わったことを検知することができるようにすることが可能である。
受光手段4を液体流通管2に沿って移動させ、所望の位置で衝撃波による衝撃状態を観測することができる。
【0043】
〔第三実施形態〕
第一実施形態及び第二実施形態では、液体が容器内を流れる状態にある例、すなわち液体流通管2内を流れる状態の例について説明したが、液体が容器2A内に貯蔵された状態の例がこの第三実施形態である。
図3に示す検知システムは、流れのない液体中において、超音波の影響等の何らかの原因でキャビテーションが発生した場合を想定している。
【0044】
以上、本発明を説明してきたが、本発明は上述した実施形態にのみ限定されるものではなく、その本質を逸脱しない範囲で、種々の変形が可能であることは言うまでもない。
例えば、上述した実施形態では、容器として流体流通管2や容器2Aを用いた例について説明したが、これに限定されることはなく、要するに、液体を収容又は流通させることができるものであればよい。
【0045】
また、上述した実施形態では、液体として水を例に挙げたが、これに限定されることはなく、キャビテーヒョンを発生するものであれば適用可能である。
また、受光手段4として、レンズとカメラの例で示したが、光ファイバーを受光素子に導くような構成にすることも可能である。
【0046】
以下、実施例を挙げて説明するが、本発明は、これらの実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0047】
図4は、キャビテーションにより容器内壁へ衝撃圧が加わったことを検知する実験に用いた検知システムを示している。
図に示すように、測定装置1によって、液体(ここでは水)が貯蔵された容器であるビーカー2B内で発生するキャビテーションの測定を行った。
なお、この実施例では、上述した実施形態と同一の構成要素には同一の符号を付しその詳細な説明を省略する。
【0048】
この検知システムは、受光手段4を含む測定装置1と、ステンレス製の発生容器81を備えた箱型の超音波発生セル8と、液体(水)が満たされたステンレス製の発生容器81の底部に載置されたビーカー2Bとを有している。
なお、超音波発生セル8としては、SNT社製超音波洗浄器(US−1型、38kHz、80W)を用いた。
【0049】
ビーカー2Bの底部には、エポキシ系樹脂と応力発光粒子とを重量比で1:1で混合したペーストを塗布して応力発光層Sを形成した。
材料の化学式数字の下付きに関しては粒子の特許、先ほど修正版と同様です。ご参照ください。
ここで使用した応力発光粒子の平均粒子径は1μmであり、材質はSr0.90Eu0.01Al2O4である。
【0050】
以上のような検知システムを用いて、超音波発生セル8の電源をオンにして超音波振動を発生させると、発生容器81の液体に超音波振動が伝達され、ビーカー2B内の液体にもキャビテーションが発生した。
このキャビテーションに起因して発生する光を受光手段4で受光し、演算手段5を介してコンピュータ処理を行った。
受光手段4のゲート時間は、20msとした。
その結果を図5ないし図11に示す。
【0051】
図5それぞれ、超音波振動を発生させる前の画像データ、及びそのグラフ化処理データ(ここではバックグラウンドデータ)を示している。
【0052】
図6は、時間(s)と光強度との関係を示している。
これは図5に示す正方形領域の光強度の平均値を算出してグラフ化したものである。
【0053】
図7ないし図10は、超音波振動を発生させた後の画像を示している。
ここでは86ページ(1コマ)の直後から超音波振動を発生させている。
【0054】
参考までに、幾つかのグラフ化処理データを以下に示す。
図11〜図15は、それぞれ、図7〜図10における、89ページ(3コマ目)、90ページ(4コマ目)、102ページ(16コマ目)、187ページ(101コマ目)、242ページ(156コマ目)のデータである。
図16は、ページ数で示した時間(横軸)と光強度(Intensity) の平均値(縦軸)との関係を示す。
【0055】
本発明は、測定装置を損傷させずに且つ流路の形状を変化させずに、容器内壁への衝撃を直接的に検知し、容器内壁の壊食を予測することができる容器内壁への衝撃の検知方法及びその検知システムに関するものであるが、その原理を利用する限り、液体中にある物体の表面の衝撃を直接検知することも当然適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】図1は、本発明の容器内壁への衝撃の検知方法及びその検知システムの第一実施形態を示す説明図である。
【図2】図2は、本発明の容器内壁への衝撃の検知方法及びその検知システムの第二実施形態を示す説明図である。
【図3】図3は、本発明の容器内壁への衝撃の検知方法及びその検知システムの第三実施形態を示す説明図である。
【図4】図4は、本発明の容器内壁への衝撃の検知方法及びその検知システムの実施例を示す説明図である。
【図5】図5は、実施例における結果を示す図であり、(a)は画像データ、(b)は、そのグラフ化処理データを示している。
【図6】図6は、時間(s)と光強度との関係を示している。
【図7】図7は、超音波振動を発生させた後の画像データの結果(86ページ〜93ページ)を示す。
【図8】図8は、超音波振動を発生させた後の画像データの結果(94ページ〜101ページ)を示す。
【図9】図9は、超音波振動を発生させた後の画像データの結果(102ページ〜109ページ)を示す。
【図10】図10は、超音波振動を発生させた後の画像データの結果(110ページ〜242ページ)を示す。
【図11】図11は、超音波振動を発生させた後のグラフ化処理データの結果(89ページ)を示す。
【図12】図12は、超音波振動を発生させた後のグラフ化処理データの結果(90ページ)を示す。
【図13】図13は、超音波振動を発生させた後のグラフ化処理データの結果(102ページ)を示す。
【図14】図14は、超音波振動を発生させた後のグラフ化処理データの結果(187ページ)を示す。
【図15】図15は、超音波振動を発生させた後のグラフ化処理データの結果(242ページ)を示す。
【図16】図16は、ページ数で示した時間(横軸)と光強度(Intensity) の平均値(縦軸)との関係を示す。
【符号の説明】
【0057】
1 測定装置
2 容器(液体流通管)
2A 容器
2B ビーカー
3 窓
4 受光手段
41 集光レンズ
42 撮像素子
5 演算手段
6 パーソナルコンピュータ
7 モニタ
8 超音波発生セル
81 発生容器
S 応力発光層
【技術分野】
【0001】
本発明は、容器内壁への衝撃を検知する方法及びその検知システムに関し、更に詳しくは、応力発光粒子を使って、液体中のキャビテーションの発生に起因する容器内壁への衝撃を検知する検知方法及びその検知システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、液体中で発生するキャビテーションの気泡の挙動やその発生量を調べることが行われている。
ここで、キャビテーションとは、液体の運動(流速等)の変化によって圧力が飽和蒸気圧以下に低下した際に液体が気化して空洞を生じる現象を言う。
この気泡の挙動や発生量を予備調査してデータを蓄積しておくと、キャビテーションによる環境へのダメージ(壊食等)の発生を設計段階で最小限に食い止めることができるので、このデータの蓄積は極めて重要である。
【0003】
そのため、近年、キャビテーション挙動等を観察したり測定したりする方法及びその方法に使用する装置等が種々開発された。
キャビテーションの挙動等を調べる方法としては、例えば、カメラ等により直接観察する方法、光散乱法により測定する方法(例えば、特許文献1参照)、及び静電容量を測定する方法(例えば、特許文献2参照)が開示されている。
【0004】
気泡の発生量を定量化するには、光散乱法により測定する方法と静電容量を測定する方法との二通りの方法が有効である。
しかし、光散乱法により測定する方法の場合、ストロボやレーザー光源等の比較的大型で高価な装置が必要となる。
【0005】
また、静電容量を測定する方法の場合、被測定流体を二個の電極間に挟み込まなければならない。
その上、電極が管内に大きく飛び出す場合には、電極が存在しないときの流路とは異なった流路断面形状になり、液体の流れが通常の流路の場合と比べて変化する。
【0006】
このように、光散乱法により測定する方法にしても静電容量を測定する方法にしても、いずれも装置が複雑になるという欠点がある上、キャビテーションによる壊食を直接的に観察するものではないから容器内壁の損傷(壊食)の予測が困難である。
【0007】
容器内壁の損傷状況の直接的な把握方法としては、圧電センサを用いてキャビテーション衝撃圧を測定するような容器内壁への衝撃の検知方法及びその検知システムが知られている(例えば、特許文献3参照)。
【0008】
【特許文献1】特開2003−057164号公報
【特許文献2】特開平7−198710号公報
【特許文献3】特開2002−267584号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上述したような圧電センサを用いた容器内壁への衝撃の検知方法及びその検知システムでは、液体中に配置された圧電センサがキャビテーション衝撃波により影響を受け、測定装置そのものを損傷させることになるという問題があった。
また、圧電センサ自体が流路内に飛び出すので、圧電センサが存在しない通常の流路の流れ場とは異なった流れ場を生ずることとなる。
【0010】
本発明は、上記のような技術的背景のもとでなされたものである。
すなわち、本発明は、遠隔的に光測定することにより、測定装置を損傷させずに且つ流路の形状を変化させずに、容器内壁への衝撃を直接的に検知し、容器内壁の損傷の予測をすることができる容器内壁への衝撃の検知方法及びその検知システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
かくして、本発明者は、このような課題背景に対して鋭意研究を重ねた結果、容器内壁に応力発光粒子を固着させておき、キャビテーションにより容器内壁へ衝撃圧が加わった際に発生する応力発光粒子からの放射光を受光することにより、上記課題を解決することができることを見出し、この知見により、本発明を完成するに至った。
【0012】
すなわち、本発明は、(1)、キャビテーションにより容器内壁へ衝撃圧が加わったことを検知する容器内壁への衝撃の検知方法であって、容器内壁に応力発光粒子を固着させておき、キャビテーションにより容器内壁へ衝撃圧が加わった際に発生する応力発光粒子からの放射光を受光する容器内壁への衝撃の検知方法に存する。
【0013】
すなわち、本発明は、(2)、前記放射光の受光は、撮像素子を用いて行う上記(1)に記載の容器内壁への衝撃の検知方法に存する。
【0014】
すなわち、本発明は、(3)、前記放射光の受光は、液体が容器内を流れる状態で行う上記(1)に記載の容器内壁への衝撃の検知方法に存する。
【0015】
すなわち、本発明は、(4)、前記放射光の受光は、液体が容器内に貯蔵された状態で行う上記(1)に記載の容器内壁への衝撃の検知方法に存する。
【0016】
すなわち、本発明は、(5)、前記応力発光粒子の母体材料が、スタフドトリジマイト構造、3次元ネットワーク構造、長石構造、ウルツ構造、スピネル構造、コランダム構造又はβ−アルミナ構造を有する酸化物、硫化物、炭化物又は窒化物である上記(1)に記載の容器内壁への衝撃の検知方法に存する。
【0017】
すなわち、本発明は、(6)、前記応力発光粒子の母体材料が、格子欠陥を含むα―SrAl2O4構造である上記(1)に記載の容器内壁への衝撃の検知方法に存する。
【0018】
すなわち、本発明は、(7)、前記応力発光粒子を固着した容器の一部を透明化して該透明化部分を介して放射光を受光する上記(1)に記載の容器内壁への衝撃の検知方法に存する。
【0019】
すなわち、本発明は、(8)、キャビテーションにより容器内壁へ衝撃圧が加わったことを検知するための容器内壁への衝撃の検知システムであって、内壁に応力発光粒子を固着した液体入りの容器と、キャビテーションにより容器内壁へ衝撃圧が加わった際に発生する応力発光粒子からの放射光を受光する受光手段と、を備えた容器内壁への衝撃の検知システムに存する。
【0020】
すなわち、本発明は、(9)、前記応力発光粒子を固着した部分の容器内壁の少なくとも一部が透明材料からなる上記(8)に記載の容器内壁への衝撃の検知システムに存する。
【0021】
すなわち、本発明は、(10)、前記液体入りの容器は、液体が流れることが可能な容器である上記(8)に記載の容器内壁への衝撃の検知システムに存する。
【0022】
すなわち、本発明は、(11)、前記液体入りの容器は、液体を貯蔵しておくことが可能な容器である上記(8)に記載の容器内壁への衝撃の検知システムに存する。
【0023】
なお、本発明の目的に添ったものであれば、上記(1)から(11)を適宜組み合わせた構成も採用可能である。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、容器内壁に応力発光粒子を固着させておき、キャビテーションにより容器内壁へ衝撃圧が加わった際に発生する応力発光粒子からの放射光を受光する。
そのため、放射光を撮像素子で受光すれば、容器内壁での衝撃が加わった位置やその衝撃の程度が正確に分かる。
【0025】
更に、応力発光粒子を容器内壁に固着するので、通常の流路と流路断面形状が変わらず、容器内の液体の流れを妨げることがない。
測定装置を損傷させずに且つ流路の形状を変化させずに、容器内壁への衝撃を直接的に検知することができ、容器内壁の損傷を予測することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、本発明を実施するための最良の形態を図面を用いて説明する。
〔第一実施形態〕
図1は、本発明の容器内壁への衝撃の検知方法及びその検知システムの第一実施形態を示している。
図の容器は液体が流れる液体流通管2の例である。
ここでは、液体流通管2内で発生するキャビテーション衝撃圧による容器内壁への衝撃を検知する。
【0027】
先ず、参考までにキャビテーションの発生原理について簡単に述べる。
例えば、絞り部を介して大径部と小径部とが連結された一本の管においては、上流側の大径部を流れる液体が口絞り部を経て下流側の小径部に流入すると、流路断面積が減少するため液体の流速が増し、その結果、圧力が低下する。
この圧力が飽和蒸気圧以下まで低下すると、その状態では沸点が低くなっているので、沸騰と同様の気化現象が発生、すなわちキャビテーションが発生するのである。
【0028】
キャビテーションが発生した液体が下流に流されて再び大径部に流入すると、流路断面積が増加し、液体の流速が低下して圧力が増加する。
そのため、キャビテーションは縮小し消滅するのである。
このキャビテーションの縮小や消滅時に、数百気圧程の大きな圧力(すなわち衝撃力)が発生する。
【0029】
本発明は、容器内壁に応力発光粒子を固着した場合に応力発光粒子がキャビテーション衝撃圧により発光する原理を利用したものである。
ここで応力発光粒子とは、母体材料に発光中心を添加させたものである(例えば、特開2000−63824号公報参照)。
母体材料としては、例えば、スタフドトリジマイト構造、三次元ネットワーク構造、長石構造、格子欠陥制御をした結晶構造、ウルツ構造、スピネル構造、コランダム構造又はβ−アルミナ構造を有する酸化物、硫化物、炭化物又は窒化物を用いることができる。
【0030】
発光中心としては、Sc,Y,La,Ce,Pr,Nd,Pm,Sm,Eu,Gd,Tb,Dy,Ho,Er,Tm,Yb,Luの希土類イオン、及び、Ti,Zr,V,Cr,Mn,Fe,Co,Ni,Cu,Zn,Nb,Mo,Ta,Wの遷移金属イオンを用いることができる。
【0031】
材料の化学式数字の下付きに関しては粒子の特許、先ほど修正版と同様です。ご参照ください。
母体材料として、例えばストロンチウム及びアルミニウム含有複合酸化物を用いる場合、応力発光粒子として、xSrO・yAl2O3・zMO(Mは二価金属、Mg,Ca,Ba,x,y,zは整数である)、xSrO・yAl2O3・zSiO2(x,y,zは整数である)を用いると良い。
中でも、SrMgAl10O17:Eu、(SrxBa1−x)Al2O4:Eu(0<x<1)、BaAl2Si2O8:Eu等が望ましい。
特に、格子欠陥を含むα―SrAl2O4構造が好ましい。
【0032】
応力発光粒子の粒子径については、高分子材料中に全体に均一に分散し易いものであれば良く、特に限定されない。
しかし、分解能を高くして光強度を測定するのであれば、粒子径は小さい方が好ましい。
具体的には、平均粒子径が50μm以下であることが好ましい。
本実施形態では、高分子材料と応力発光粒子とを混合してペースト状にしたものを被測定対象部に層状に塗布して衝撃の検知を行う。
高分子材料としては、応力発光粒子を強く保持固定できるものであれば、特に限定されない。
例えば一液硬化型又は二液硬化型のアクリル系樹脂やエポキシ系樹脂、ウレタン樹脂を用いることができる。
【0033】
さて、本実施形態の検知システムは、測定装置1と、応力発光粒子を固着した応力発光層Sと、透明な窓3が設けられる液体流通管2とを有している。
測定装置1は、受光手段4、演算手段5、パーソナルコンピュータ6、及びモニタ7を有している。
図1では、液体流通管2の一部に透明化部分である窓3が設けられている。
この窓3のような透明化部分は液体流通管2の少なくとも一部を、例えば透明樹脂、ガラス等の透明材料とすることで容易に設けることができる。
【0034】
応力発光層Sは、高分子材料中に応力発光粒子を分散させて塗布することにより形成される。
そのため、応力発光層Sはミクロンオーダの厚みで極めて薄く形成することができ、透光性となり且つ流路断面形状はほとんど変化しない。
【0035】
この応力発光層Sの近傍でキャビテーションによって発生した気泡が消滅すると、衝撃波が応力発光層Sを直撃することになる。
その結果、応力発光層Sから(詳しくは応力発光粒子から)光が放射され、透明な窓3を通して、受光手段4に入射する。
この受光手段4には、集光レンズ41や撮像素子(受光素子)42が備えられており、応力発光粒子から放射された光は集光レンズ41を介して撮像素子42に受光される。
【0036】
撮像素子42では光電変換が行われ、電気信号が演算手段5に送信される。
演算手段5では、電気信号がA/D変換され、撮像素子42の画素毎の光強度が数値化され、JPEG形式やTIFF形式等でデータが記録媒体に格納される。
【0037】
図1に示す測定装置1では、演算手段5にパーソナルコンピュータ6が接続されており、このパーソナルコンピュータ6に接続されたモニタ7に測定結果が表示される。
具体的な表示形態としては、例えば、応力発光層Sにおける衝撃圧の分布状態が発生位置をXY軸(応力発光層Sに沿った面)とし、光強度をZ軸として立体的な表示が行われる。
【0038】
ここで、キャビテーションが発生していない状態の光強度のバックグラウンドデータを前もって測定しておけば、それを使ってキャビテーション発生時の光強度を補正することにより、その衝撃圧の相対的大きさをより正確に表示することができる。
【0039】
本発明によれば、液体流通管2の内壁に応力発光粒子を固着させておき、液体流通管2の内壁へ衝撃圧が加わった際に発生する応力発光粒子からの放射光を受光する。
そのため、放射光を撮像素子42で受光すれば、衝撃が加わった位置や衝撃の度合いが正確に分かり、結果的に衝撃圧による内壁の破壊食状態が把握できることとなる。
【0040】
更に、応力発光粒子を容器内壁に層状に固着するので、通常の流路と流路断面形状が変わらず、容器内の液体の流れを妨げることがない。
測定装置を損傷させずに且つ流路の形状を変化させずに、容器内壁への衝撃を直接的に検知することができ、容器内壁の損傷を予測することができる。
【0041】
なお、上述した第一実施形態において応力発光層Sが比較的厚い場合は、液体流通管2の内壁に凹部を形成した部分に設けることで内壁が面一となって好ましい。
【0042】
〔第二実施形態〕
第一実施形態では液体流通管2に形成した透明の部分的な窓3を通して光を受光しているが、この第二実施形態は、図2に示すように、液体が流れる液体流通管2の全体を透明にした窓3に対応するように応力発光層Sを形成したものである。
液体流通管2のどの位置においても衝撃圧が加わったことを検知することができるようにすることが可能である。
受光手段4を液体流通管2に沿って移動させ、所望の位置で衝撃波による衝撃状態を観測することができる。
【0043】
〔第三実施形態〕
第一実施形態及び第二実施形態では、液体が容器内を流れる状態にある例、すなわち液体流通管2内を流れる状態の例について説明したが、液体が容器2A内に貯蔵された状態の例がこの第三実施形態である。
図3に示す検知システムは、流れのない液体中において、超音波の影響等の何らかの原因でキャビテーションが発生した場合を想定している。
【0044】
以上、本発明を説明してきたが、本発明は上述した実施形態にのみ限定されるものではなく、その本質を逸脱しない範囲で、種々の変形が可能であることは言うまでもない。
例えば、上述した実施形態では、容器として流体流通管2や容器2Aを用いた例について説明したが、これに限定されることはなく、要するに、液体を収容又は流通させることができるものであればよい。
【0045】
また、上述した実施形態では、液体として水を例に挙げたが、これに限定されることはなく、キャビテーヒョンを発生するものであれば適用可能である。
また、受光手段4として、レンズとカメラの例で示したが、光ファイバーを受光素子に導くような構成にすることも可能である。
【0046】
以下、実施例を挙げて説明するが、本発明は、これらの実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0047】
図4は、キャビテーションにより容器内壁へ衝撃圧が加わったことを検知する実験に用いた検知システムを示している。
図に示すように、測定装置1によって、液体(ここでは水)が貯蔵された容器であるビーカー2B内で発生するキャビテーションの測定を行った。
なお、この実施例では、上述した実施形態と同一の構成要素には同一の符号を付しその詳細な説明を省略する。
【0048】
この検知システムは、受光手段4を含む測定装置1と、ステンレス製の発生容器81を備えた箱型の超音波発生セル8と、液体(水)が満たされたステンレス製の発生容器81の底部に載置されたビーカー2Bとを有している。
なお、超音波発生セル8としては、SNT社製超音波洗浄器(US−1型、38kHz、80W)を用いた。
【0049】
ビーカー2Bの底部には、エポキシ系樹脂と応力発光粒子とを重量比で1:1で混合したペーストを塗布して応力発光層Sを形成した。
材料の化学式数字の下付きに関しては粒子の特許、先ほど修正版と同様です。ご参照ください。
ここで使用した応力発光粒子の平均粒子径は1μmであり、材質はSr0.90Eu0.01Al2O4である。
【0050】
以上のような検知システムを用いて、超音波発生セル8の電源をオンにして超音波振動を発生させると、発生容器81の液体に超音波振動が伝達され、ビーカー2B内の液体にもキャビテーションが発生した。
このキャビテーションに起因して発生する光を受光手段4で受光し、演算手段5を介してコンピュータ処理を行った。
受光手段4のゲート時間は、20msとした。
その結果を図5ないし図11に示す。
【0051】
図5それぞれ、超音波振動を発生させる前の画像データ、及びそのグラフ化処理データ(ここではバックグラウンドデータ)を示している。
【0052】
図6は、時間(s)と光強度との関係を示している。
これは図5に示す正方形領域の光強度の平均値を算出してグラフ化したものである。
【0053】
図7ないし図10は、超音波振動を発生させた後の画像を示している。
ここでは86ページ(1コマ)の直後から超音波振動を発生させている。
【0054】
参考までに、幾つかのグラフ化処理データを以下に示す。
図11〜図15は、それぞれ、図7〜図10における、89ページ(3コマ目)、90ページ(4コマ目)、102ページ(16コマ目)、187ページ(101コマ目)、242ページ(156コマ目)のデータである。
図16は、ページ数で示した時間(横軸)と光強度(Intensity) の平均値(縦軸)との関係を示す。
【0055】
本発明は、測定装置を損傷させずに且つ流路の形状を変化させずに、容器内壁への衝撃を直接的に検知し、容器内壁の壊食を予測することができる容器内壁への衝撃の検知方法及びその検知システムに関するものであるが、その原理を利用する限り、液体中にある物体の表面の衝撃を直接検知することも当然適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】図1は、本発明の容器内壁への衝撃の検知方法及びその検知システムの第一実施形態を示す説明図である。
【図2】図2は、本発明の容器内壁への衝撃の検知方法及びその検知システムの第二実施形態を示す説明図である。
【図3】図3は、本発明の容器内壁への衝撃の検知方法及びその検知システムの第三実施形態を示す説明図である。
【図4】図4は、本発明の容器内壁への衝撃の検知方法及びその検知システムの実施例を示す説明図である。
【図5】図5は、実施例における結果を示す図であり、(a)は画像データ、(b)は、そのグラフ化処理データを示している。
【図6】図6は、時間(s)と光強度との関係を示している。
【図7】図7は、超音波振動を発生させた後の画像データの結果(86ページ〜93ページ)を示す。
【図8】図8は、超音波振動を発生させた後の画像データの結果(94ページ〜101ページ)を示す。
【図9】図9は、超音波振動を発生させた後の画像データの結果(102ページ〜109ページ)を示す。
【図10】図10は、超音波振動を発生させた後の画像データの結果(110ページ〜242ページ)を示す。
【図11】図11は、超音波振動を発生させた後のグラフ化処理データの結果(89ページ)を示す。
【図12】図12は、超音波振動を発生させた後のグラフ化処理データの結果(90ページ)を示す。
【図13】図13は、超音波振動を発生させた後のグラフ化処理データの結果(102ページ)を示す。
【図14】図14は、超音波振動を発生させた後のグラフ化処理データの結果(187ページ)を示す。
【図15】図15は、超音波振動を発生させた後のグラフ化処理データの結果(242ページ)を示す。
【図16】図16は、ページ数で示した時間(横軸)と光強度(Intensity) の平均値(縦軸)との関係を示す。
【符号の説明】
【0057】
1 測定装置
2 容器(液体流通管)
2A 容器
2B ビーカー
3 窓
4 受光手段
41 集光レンズ
42 撮像素子
5 演算手段
6 パーソナルコンピュータ
7 モニタ
8 超音波発生セル
81 発生容器
S 応力発光層
【特許請求の範囲】
【請求項1】
キャビテーションにより容器内壁へ衝撃圧が加わったことを検知する容器内壁への衝撃の検知方法であって、
容器内壁に応力発光粒子を固着させておき、キャビテーションにより容器内壁へ衝撃圧が加わった際に発生する応力発光粒子からの放射光を受光することを特徴とする容器内壁への衝撃の検知方法。
【請求項2】
前記放射光の受光は、撮像素子を用いて行うことを特徴とする請求項1に記載の容器内壁への衝撃の検知方法。
【請求項3】
前記放射光の受光は、液体が容器内を流れる状態で行うことを特徴とする請求項1に記載の容器内壁への衝撃の検知方法。
【請求項4】
前記放射光の受光は、液体が容器内に貯蔵された状態で行うことを特徴とする請求項1に記載の容器内壁への衝撃の検知方法。
【請求項5】
前記応力発光粒子の母体材料が、スタフドトリジマイト構造、3次元ネットワーク構造、長石構造、ウルツ構造、スピネル構造、コランダム構造又はβ−アルミナ構造を有する酸化物、硫化物、炭化物又は窒化物であることを特徴とする請求項1に記載の容器内壁への衝撃の検知方法。
【請求項6】
前記応力発光粒子の母体材料が、格子欠陥を含むα―SrAl2O4構造であることを特徴とする請求項1に記載の容器内壁への衝撃の検知方法。
【請求項7】
前記応力発光粒子を固着した容器の一部を透明化して該透明化部分を介して放射光を受光することを特徴とする請求項1に記載の容器内壁への衝撃の検知方法。
【請求項8】
キャビテーションにより容器内壁へ衝撃圧が加わったことを検知するための容器内壁への衝撃の検知システムであって、
内壁に応力発光粒子を固着した液体入りの容器と、
キャビテーションにより容器内壁へ衝撃圧が加わった際に発生する応力発光粒子からの放射光を受光する受光手段と、
を備えたことを特徴とする容器内壁への衝撃の検知システム。
【請求項9】
前記応力発光粒子を固着した部分の容器内壁の少なくとも一部が透明材料からなることを特徴とする請求項8に記載の容器内壁への衝撃の検知システム。
【請求項10】
前記液体入りの容器は、液体が流れることが可能な容器であることを特徴とする請求項8に記載の容器内壁への衝撃の検知システム。
【請求項11】
前記液体入りの容器は、液体を貯蔵しておくことが可能な容器であることを特徴とする請求項8に記載の容器内壁への衝撃の検知システム。
【請求項1】
キャビテーションにより容器内壁へ衝撃圧が加わったことを検知する容器内壁への衝撃の検知方法であって、
容器内壁に応力発光粒子を固着させておき、キャビテーションにより容器内壁へ衝撃圧が加わった際に発生する応力発光粒子からの放射光を受光することを特徴とする容器内壁への衝撃の検知方法。
【請求項2】
前記放射光の受光は、撮像素子を用いて行うことを特徴とする請求項1に記載の容器内壁への衝撃の検知方法。
【請求項3】
前記放射光の受光は、液体が容器内を流れる状態で行うことを特徴とする請求項1に記載の容器内壁への衝撃の検知方法。
【請求項4】
前記放射光の受光は、液体が容器内に貯蔵された状態で行うことを特徴とする請求項1に記載の容器内壁への衝撃の検知方法。
【請求項5】
前記応力発光粒子の母体材料が、スタフドトリジマイト構造、3次元ネットワーク構造、長石構造、ウルツ構造、スピネル構造、コランダム構造又はβ−アルミナ構造を有する酸化物、硫化物、炭化物又は窒化物であることを特徴とする請求項1に記載の容器内壁への衝撃の検知方法。
【請求項6】
前記応力発光粒子の母体材料が、格子欠陥を含むα―SrAl2O4構造であることを特徴とする請求項1に記載の容器内壁への衝撃の検知方法。
【請求項7】
前記応力発光粒子を固着した容器の一部を透明化して該透明化部分を介して放射光を受光することを特徴とする請求項1に記載の容器内壁への衝撃の検知方法。
【請求項8】
キャビテーションにより容器内壁へ衝撃圧が加わったことを検知するための容器内壁への衝撃の検知システムであって、
内壁に応力発光粒子を固着した液体入りの容器と、
キャビテーションにより容器内壁へ衝撃圧が加わった際に発生する応力発光粒子からの放射光を受光する受光手段と、
を備えたことを特徴とする容器内壁への衝撃の検知システム。
【請求項9】
前記応力発光粒子を固着した部分の容器内壁の少なくとも一部が透明材料からなることを特徴とする請求項8に記載の容器内壁への衝撃の検知システム。
【請求項10】
前記液体入りの容器は、液体が流れることが可能な容器であることを特徴とする請求項8に記載の容器内壁への衝撃の検知システム。
【請求項11】
前記液体入りの容器は、液体を貯蔵しておくことが可能な容器であることを特徴とする請求項8に記載の容器内壁への衝撃の検知システム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2007−40724(P2007−40724A)
【公開日】平成19年2月15日(2007.2.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−222285(P2005−222285)
【出願日】平成17年7月29日(2005.7.29)
【出願人】(301021533)独立行政法人産業技術総合研究所 (6,529)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年2月15日(2007.2.15)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年7月29日(2005.7.29)
【出願人】(301021533)独立行政法人産業技術総合研究所 (6,529)
【Fターム(参考)】
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