容器
【課題】内面塗料として、塗装されたエポキシメラミン樹脂塗料が剥離せず、且つ、より厚い内面塗膜の形成が可能であり、容器の耐食性の向上を図ることができる容器を提供する。
【解決手段】容器内面に熱可塑性または熱硬化性樹脂層を設け、その上にエポキシメラミン樹脂塗料を塗装する。前記エポキシメラミン樹脂塗料は、ビスフェノールA型のエポキシ樹脂からなる基材と、メチロールメラミンを重縮合して得られるメラミン樹脂からなる硬化剤とを重合してなる。
【解決手段】容器内面に熱可塑性または熱硬化性樹脂層を設け、その上にエポキシメラミン樹脂塗料を塗装する。前記エポキシメラミン樹脂塗料は、ビスフェノールA型のエポキシ樹脂からなる基材と、メチロールメラミンを重縮合して得られるメラミン樹脂からなる硬化剤とを重合してなる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は容器に関し、さらに詳しくは、粉末粒子を溶媒中に分散懸濁させたディスパーション型塗料または低温硬化型塗料を塗装する場合、塗装された樹脂が剥離しないで厚い内面塗膜を形成することにより、容器の耐食性の向上を図ると共に、塗膜形成温度の低減、塗装時間の短縮化により塗装コストの低減を図った容器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、チューブ容器内に充填される薬品には、酸性域からアルカリ性域まで広範囲にわたる薬品があり、またエアゾール容器内に充填される内容物には、同様に容器の金属材料を腐食させる内容物が充填されていた。そして、これらの薬品等の内容物から容器の材質を保護するため、容器の内面には、エポキシフェノール樹脂、エポキシアミノ樹脂、ビニル系樹脂等の内面塗料が塗装されていた。しかし、これらの塗装による塗膜は6〜10μmと薄いため、1回の塗装では、均一に容器の内面を塗装できないという欠点があり、このような不完全な塗装から容器を完全に保護することは不可能であった。そこで、従来は、内面塗膜の厚みを厚く塗装する方法として、ポリエチレン等の熱可塑性樹脂の粉体を静電塗装することが行われていた(特許文献1参照)。第16図は、従来の静電塗装方法を示す図面である。静電塗装される容器がチューブ容器100である場合の実施例である。チューブ容器100はホルダー101内に支持されている。粉体103は、高圧電源102によって陽イオンまたは陰イオンに荷電され、ノズル104からチューブ容器100の内面へと噴射される。一方、ホルダー101は、アース105に連結されており、ホルダー101及びチューブ容器100は、粉体103とは反対のイオンに荷電されている。このように荷電された粉体103は、電気力線の作用により、チューブ容器100の内面に吸着される。
【特許文献1】特開平8−150367号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、このような従来の静電塗装にあっては、以下に示す欠点があった。
(1)熱可塑性樹脂の粉体塗膜の膜厚が約100μmであり、厚くなりすぎると共に、粉体の容器内面への接着力が弱いため、容器の乾燥工程等において、搬送チェーンで搬送中に、衝撃等により容器の内面から粉体が剥げ落ちる欠点がある。
(2)熱可塑性樹脂の粉体塗装(静電塗装)は、特別な塗装装置を必要とし、且つ多大な消費電力を必要とするため製造コストが高いという欠点がある。
この発明は、このような従来の課題に着目してなされたもので、酸変性ポリオレフィン分散塗料またはエポキシメラミン樹脂塗料の塗装時において、塗装されたポリオレフィン系樹脂またはエポキシメラミン樹脂塗料が剥離しないで厚い内面塗膜を形成することにより、容器の耐食性の向上を図ると共に、従来の装置を利用することにより、塗膜形成温度の低減、塗装時間の短縮化を図り、塗装コストの低減を図ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の容器は、容器本体と、その容器本体の内面にエポキシメラミン樹脂塗料を塗装することにより設けた塗膜層とからなることを特徴としている。
このような容器であって、容器本体の内面に熱可塑性または熱硬化性樹脂からなる樹脂層を設け、その樹脂層の上に塗膜層が設けられたものが好ましい。
また、前記エポキシメラミン樹脂が、分子量約5000〜6000のビスフェノールA型エポキシ樹脂と、メラミンとホルムアルデヒドとの反応によって生じるメチロールメラミンを重縮合させて得られるメラミン樹脂とからなり、前記ビスフェノールA型エポキシ樹脂の量が70〜90重量%であり、前記メラミン樹脂の量が10〜30重量%であってもよい。
さらに、前記塗膜層、または、樹脂層と塗膜層とからなる内面塗膜が、10〜70μmであるものが好ましい。
本発明の容器は、チューブ容器、ねじ付金属容器、エアゾール容器に用いることができる。
【0005】
請求項1記載の発明の手段は、内面に、粉末粒子を溶媒中に分散懸濁させたディスパーション型塗料を塗装したことを特徴とする容器であり、また請求項2記載の発明の手段は、ディスパーション型塗料が、酸変性ポリオレフィン分散塗料であることを特徴とする容器である。容器の内面に、ディスパーション型塗料である酸変性ポリオレフィン分散塗料を塗装する場合、ポリオレフィン系樹脂の粒子を単体で塗装するのではなく、ポリオレフィン系樹脂にカルボン酸やマレイン酸などの酸を用いて、カルボキシル基などの極性基を導入し、この酸変性ポリオレフィン系樹脂をトルエン等の溶剤に分散させて液状にすると共に、ウエット状態で塗装する相乗作用により、酸変性ポリオレフィン系樹脂と容器内面、または酸変性ポリオレフィン系樹脂と熱硬化性若しくは熱可塑性の樹脂層との間に強い接着力を得ることができる。したがって、塗膜の厚みを厚くできると共に、乾燥工程中に塗膜が剥がれ落ちない。
【0006】
請求項3記載の発明の手段は、内面に、低温硬化型塗料を塗装したことを特徴とする容器であり、請求項4記載の発明の手段は、低温硬化型塗料が、エポキシメラミン樹脂塗料であることを特徴とする容器である。エポキシメラミン樹脂は、基材としてエポキシ樹脂、硬化剤としてメラミン樹脂からなり、分子量約5000〜6000のビスフェノールA型エポキシ樹脂を70〜90重量%、好ましくは80重量%、及びメラミンとホルムアルデヒドとの反応によって生じるメチロールメラミンを重縮合させて得られるメラミン樹脂を10〜30重量%、好ましくは20重量%とからなる塗膜樹脂組成物が好ましい。ただし、エポキシ樹脂としては、ビスフェノールA型の他、ビスフェノールF型などが用いられても良い。エポキシメラミン樹脂の硬化温度(160〜190℃)は、前に塗装された熱硬化性若しくは熱可塑性の樹脂層の硬化温度(約200℃)より低い温度で硬化するため、再加熱によって、前に塗装された熱硬化性若しくは熱可塑性の樹脂層に与える物理的影響力が小さくなり、塗膜の劣化を防止することができると共に、エポキシメラミン樹脂と熱硬化性若しくは熱可塑性の樹脂層との間に強い接着力を得ることができる。したがって、塗膜の厚みを厚くできると共に、乾燥工程中に塗膜が剥がれ落ちない。
【0007】
請求項5記載の発明の手段は、容器の内面に、熱可塑性または熱硬化性樹脂層を設け、その上に酸変性ポリオレフィン分散塗料またはエポキシメラミン樹脂塗料を、全面に塗装したことを特徴とする容器である。容器の内面に、熱可塑性または熱硬化性樹脂層を設け、その上に酸変性ポリオレフィン分散塗料またはエポキシメラミン樹脂塗料を塗装したものであり、酸変性ポリオレフィン系樹脂またはエポキシメラミン樹脂塗料と熱硬化性若しくは熱可塑性の樹脂層との間に、強い接着力を得ることができので、塗膜の厚みを厚くできると共に、乾燥工程中に塗膜が剥がれ落ちないという作用を呈する。
【0008】
請求項6記載の発明の手段は、容器の内面に、熱可塑性または熱硬化性樹脂層を設け、その上に酸変性ポリオレフィン分散塗料またはエポキシメラミン樹脂塗料を、加工度が高い部位のみに塗装したことを特徴とする容器である。加工度が高い部位として、ネッキング加工、ねじ加工が施された部位等の内面の塗膜は、塗料の剥がれ、割れ等があるため、この発明に係る酸変性ポリオレフィン分散塗料を塗装することで、塗膜形成温度が、下地の熱可塑性または熱硬化性樹脂及び外面印刷やコートの乾燥温度より低いため、これら並びに外面印刷やコートに影響を与えることなく、加工後の最終工程での内面塗膜の修復を行うことができる。その結果、通電値が向上する作用を呈する。すなわち、本発明に係る酸変性ポリオレフィン分散塗料またはエポキシメラミン樹脂塗料は、すでに内面塗装されたエポキシフェノール、ビニルオルガノゾル、ポリアミドイミド等の内面塗膜の補正コートとして有効である。
【0009】
請求項7記載の発明は、この発明がチューブ容器の内面に適用されたものであり、請求項8記載の発明は、この発明がねじ付金属容器の内面に適用されたものであり、請求項9記載の発明は、この発明がエアゾール容器の内面に適用されたものである。従来の粉体塗装は多大な消費電力を必要とするが、本発明に係る塗装方法は、従来の製造装置を利用することができる。
【発明の効果】
【0010】
この発明によれば、内面塗料として、塗装されたポリオレフィン系樹脂またはエポキシメラミン樹脂塗料が剥離せず、且つより厚い内面塗膜の形成が可能であり、容器の耐食性の向上を図ることができる。また従来の装置を利用することにより、塗膜形成温度の低減、塗装時間の短縮化を図り、塗装コストの低減を達成することができる効果を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
剥離しない厚い内面塗膜を形成することにより、容器の耐食性の向上を図ると共に、塗膜形成温度の低減、塗装時間の短縮化により塗装コストの低減化という目的を、容器の内面に、粉末粒子を溶媒中に分散懸濁させたディスパーション型塗料、例えば酸変性ポリオレフィン分散塗料、或いは低温硬化型塗料、例えばエポキシメラミン樹脂塗料を塗装することにより実現した。
【実施例1】
【0012】
図1は、本発明の実施例1〜4を示すチューブ容器であり、このチューブ容器1のA部拡大断面図を図2〜図5に示す。チューブ容器1の容器本体2はアルミニウム等の金属で形成されている。この容器本体2の内側には、熱硬化性または熱可塑性の樹脂層4が形成されている。熱硬化性の樹脂層4としては、例えば、エポキシフェノール等が適する。また熱可塑性樹脂の樹脂層4としては、ビニルオルガノゾル等が適する。すなわち、図2の実施例1に示すように、この熱硬化性または熱可塑性の樹脂層4の内側に、酸変性ポリオレフィン分散塗料3が塗装されている。ポリオレフィン系樹脂の粉末粒子は耐熱性に良好なポリプロピレンが適し、混合比率は溶剤に対して10〜30重量%が適し、好ましくは20重量%である。また溶剤は乾燥性の点でトルエンが適し、混合比率は混合塗料に対して50〜80重量%が適し、好ましくは65重量%である。全体の内面塗膜の厚みは10〜70μmが適する。また、他の溶剤はソルベッソやメチルエチルケトンやアルカリ水等が使用でき、他のポリオレフィン系樹脂の粉末粒子としてポリエチレン等を使用することもできる。容器本体2全体に塗装された熱可塑性または熱硬化性の樹脂層4の上に、さらに酸変性ポリオレフィン分散塗料3を塗装するので、内面塗膜がより確実且つ安定的になる。粉末粒子を溶媒中に分散懸濁させたディスパーション型塗料として、この酸変性ポリオレフィン分散塗料の他に、フッ化ビニリデン樹脂の粉末粒子を溶媒中に分散懸濁した塗料がある。しかし、フッ化ビニリデン樹脂は高い溶融温度であり、本発明の課題である塗膜形成温度の低減という趣旨に反するため、フッ化ビニリデン樹脂の粉末粒子は適さない。したがって、塗膜形成温度の低減という趣旨に合致する、その他のディスパーション型塗料を任意に選択することができる。また溶媒は、有機溶媒の他、水系の溶媒等を用いることもできる。なお、実施例1のチューブ容器1の外面には、通常のベースコート層、印刷インキ層、トップコート層等が印刷されている(図示せず)。
【実施例2】
【0013】
図3は、この発明に係る実施例2を示す図面である。この実施例2は、チューブ容器の容器本体12の内側に、酸変性ポリオレフィン分散塗料13が直接塗装されている。実施例2における酸変性ポリオレフィン分散塗料の粉末粒子は、同様に耐熱性に良好なポリプロピレンが適する。混合比率は溶剤に対して10〜30重量%が適し、好ましくは20重量%である。全体の内面塗膜の厚みは10〜70μmが適する。また溶剤はトルエンが適し、混合比率はポリオレフィン系樹脂に対して50〜80重量%が適し、好ましくは65重量%である。他の溶剤はソルベッソやメチルエチルケトンやアルカリ水等が使用でき、その他のポリオレフィン系樹脂の粉末粒子として、ポリエチレンを使用することもできる。このように、酸変性ポリオレフィン分散塗料13は、容器本体12の内面に直接塗装された場合でも、容器の金属材料を腐食させる内容物に対しては、耐内容物性に優れ十分な効果を得ることができる。さらにチューブ容器の場合、すそをシールする必要があり、このポリオレフィン系樹脂の粉末粒子が内面に施されていることにより、容易に熱溶着によるシールが可能であり、従来のような粘着性のあるゴム系シール剤を塗布しなくてもシールできるという効果もある。
【実施例3】
【0014】
図4は、この発明に係る実施例3を示す図面である。実施例3において、容器本体2aはアルミニウム等の金属で形成されている。この容器本体2aの内側には、熱硬化性または熱可塑性の樹脂層4aが形成されている。熱硬化性の樹脂層4aとしては、同様に、エポキシフェノール、エポキシアクリル等が適する。また熱可塑性樹脂の樹脂層4aとしては、ビニルオルガノゾル等が適する。図4に示す実施例3は、熱硬化性または熱可塑性の樹脂層4aの内側に、低温硬化型塗料3aが塗装されている。低温硬化型塗料3aは、エポキシメラミン樹脂粒子は、混合比率は溶剤に対して20〜40重量%が適し、好ましくは30重量%である。また溶剤はトルエン、メチルエチルケトン、1−ブタノール、シクロヘキサン、ジアセトンアルコール等が適し、混合比率は混合塗料に対して60〜80重量%が適し、好ましくは70重量%である。全体の内面塗膜の厚みは3〜20μmが適する。また、容器本体2a全体に塗装された熱可塑性または熱硬化性の樹脂層4aの上に、さらに溶解された低温硬化型塗料3aであるエポキシメラミン樹脂塗料を塗装するので、内面塗膜がより確実且つ安定的になる。なお、実施例3のチューブ容器の外面には、同様に通常のベースコート層、印刷インキ層、トップコート層等が印刷されている(図示せず)。
【実施例4】
【0015】
図5は、この発明に係る実施例4を示す図面である。この実施例4は、チューブ容器の容器本体12aの内側に、低温硬化型塗料13aが直接塗装されている。実施例4における低温硬化型塗料13aの粉末粒子は、同様にエポキシメラミン樹脂塗料が適する。混合比率は溶剤に対して20〜40重量%が適し、好ましくは30重量%である。全体の内面塗膜の厚みは3〜20μmが適する。また溶剤はトルエン、メチルエチルケトン、l−ブタノール、シクロヘキサン、ジアセトンアルコール等が適し、混合比率はエポキシメラミン樹脂に対して60〜80重量%が適し、好ましくは70重量%である。このように、エポキシメラミン樹脂塗料13aは、容器本体12aの内面に直接塗装された場合でも、容器の金属材料を腐食させる内容物に対しては、耐内容物性に優れ十分な効果を得ることができる。
【実施例5】
【0016】
図6及び図7は、この発明に係る実施例5を示す図面である。実施例5において図6に示す容器は、絞りしごき加工により製造されるねじ付金属容器21であり、図7に示す容器は、インパクト成形により製造されるねじ付金属容器31である。金属容器21、31の内面には、酸変性ポリオレフィン分散塗料または低温硬化型塗料が直接塗装されるか、或いは熱硬化性または熱可塑性の樹脂層を介して塗装されている。そして、ねじ付金属容器21、31のA部拡大断面図は、同様に図2〜図5に示される。使用される酸変性ポリオレフィン分散塗料の粉末粒子は、同様にポリプロピレンが適し、また溶剤は乾燥性の点でトルエンが適する。また低温硬化型塗料は、同様にエポキシメラミン樹脂塗料が適する。
【実施例6】
【0017】
図8及び図9は、この発明に係る実施例6を示す図面である。実施例6において、図8に示す容器は、小型のエアゾール容器41であり、図9に示す容器は、通常のエアゾール容器51である。エアゾール容器41、51の内面には、酸変性ポリオレフィン分散塗料が直接塗装されるか、或いは熱硬化性または熱可塑性の樹脂層を介して塗装される。そして、エアゾール容器41、51のA部拡大断面図は、同様に図2〜図5に示される。使用される酸変性ポリオレフィン分散塗料の粉末粒子は、同様にポリプロピレンが適し、また溶剤は乾燥性の点でトルエンが適する。また低温硬化型塗料は、同様にエポキシメラミン樹脂塗料が適する。
【実施例7】
【0018】
図10及び図11は、この発明に係る実施例7を示す図面である。実施例7において、図10に示す容器は、絞りしごき加工により製造されるねじ付金属容器21の加工度が高い部位Xを示す断面図であり、図11に示す容器は、インパクト成形により製造されるねじ付金属容器31の加工度が高い部位Yを示す断面図である。これらの加工度が高い部位X、Yは、内面塗装が施された後、ネッキング加工、ねじ加工、カール加工等により容器材料の塑性変形が大きい部位である。したがって、加工後の熱硬化性または熱可塑性の樹脂層24、34の内面塗膜の皺、剥がれ、割れが発生し易い。この発明は、このような加工度が高い部位に、酸変性ポリオレフィン分散塗料または低温硬化型塗料23、33を塗装することで、熱硬化性または熱可塑性の樹脂層24、34の内面塗膜に影響を与えることなく修復と通電値の向上を図ることができる。使用される酸変性ポリオレフィン分散塗料の粉末粒子は、同様にポリプロピレンが適し、また溶剤は乾燥性の点でトルエンが適する。また低温硬化型塗料は、同様にエポキシメラミン樹脂塗料が適する。
【実施例8】
【0019】
図12及び図13は、この発明に係る実施例8を示す図面である。実施例8において、図12に示す容器は、小型のエアゾール容器41の加工度が高い部位Xを示す断面図であり、図13に示す容器は、通常のエアゾール容器51の加工度が高い部位Yを示す断面図である。これらの加工度が高い部位X、Yは、内面塗装が施された後、ネッキング加工、カール加工等により容器材料の塑性変形が大きい部位である。したがって、加工後の熱硬化性または熱可塑性の樹脂層44、54の内面塗膜の皺、剥がれ、割れが発生し易い。この発明は、このような加工度が高い部位に、酸変性ポリオレフィン分散塗料または低温硬化型塗料43、53を塗装することで、熱硬化性または熱可塑性の樹脂層44、54の内面塗膜に影響を与えることなく修復と通電値の向上を図ることができる。使用されるポリオレフィン系樹脂の粉末粒子は同様にポリプロピレンが適し、また溶剤は乾燥性の点でトルエンが適する。また低温硬化型塗料は、同様にエポキシメラミン樹脂塗料が適する。
【実施例9】
【0020】
図14及び図15は、この発明に係る実施例9を示す図面である。実施例9において、図14は、ねじ付金属容器21のカール部22の天面に、本発明に係る酸変性ポリオレフィン分散塗料または低温硬化型塗料を天面塗装23aしたものである。ねじ付金属容器のねじ部の内面は、複数回のネッキング加工、ねじ加工により多くの縦皺が形成されており、内容物等がこの皺を伝って容器本体の外部へ漏洩するのを効果的に防止することができる。また図15は、エアゾール容器51のカール部52の天面に、本発明に係る酸変性ポリオレフィン分散塗料または低温硬化型塗料を天面塗装53aしたものである。エアゾール容器51の内面は、複数回のネッキング加工、カール加工により多くの縦皺が形成されており、内容物、プロペラント等がこの皺を伝って、容器の外部へ漏洩するのを、同様に効果的に防止することができる。なお、実施例7、実施例8及び実施例9を組み合わせて、加工度が高い部位X、Y及び天面塗装の両方を行うことにより、より確実で安定した内面塗膜を形成することができる。
【実施例10】
【0021】
本発明に係る酸変性ポリオレフィン分散塗料(ポリプロピレン粉末粒子をトルエン中に分散)を、容器内面全体または加工度が高い部位に塗装し、塗装しない容器との間で内面塗膜の状態を目視により比較した。
「試験条件」
(1)絞りしごき加工により製造される、ねじ付金属容器のねじ部の補正コート(A1)。
・スプレー回数、温度及び時間;1スプレー、180℃、3分
・膜厚;6〜7μm
・充填内容物、保管温度及び保管日数;メタカリパック、40℃、3日
(2)絞りしごき加工により製造される、ねじ付金属容器のねじ部の補正コート(A2)。
・スプレー回数、温度及び時間;1スプレー、180℃、3分
・膜厚;6〜7μm
・充填内容物、保管温度及び保管日数;炭酸飲料、40℃、1ヶ月
(3)インパクト成形により製造される、ねじ付金属容器の内面全体への塗装(B)。
・スプレー回数、温度及び時間;1スプレー、180℃、3分
・膜厚;8μm
・充填内容物、保管温度及び保管日数;パーマ2剤過酸化水素水処方、45℃、1ヶ月
(4)アルミチューブの内面全体への塗装(C)。
・塗装回数、温度及び時間;1コート、180℃、3分
・膜厚;12〜23μm
・充填内容物、保管温度及び保管日数;市販染毛2剤、40℃、1ヶ月
「試験結果」
【0022】
【表1】
【0023】
本発明に係る低温硬化型塗料(エポキシメラミン樹脂塗料)をトルエン中に溶解し、容器内面全体または加工度が高い部位に塗装し、塗装しない容器との間で内面塗膜の状態を目視により比較した。
「試験条件」
絞りしごき加工により製造される、ねじ付金属容器のねじ部の補正コート。
・スプレー回数、温度及び時間;1スプレー、190℃、2.5分
・膜厚;3〜20μm
「試験結果」
【0024】
【表2】
【産業上の利用可能性】
【0025】
本発明の活用例として、チューブ容器、またはエアゾール容器内に充填される酸性域からアルカリ性域まで広範囲にわたる内容物が金属素材を腐食させるため、従来複数回の内面塗装を施すことにより、容器の素材を保護していたが、本発明の塗料を1回塗装するだけで、均一且つ厚肉な内面塗料を確実に塗装できるので、染毛剤容器、パーマ剤容器、薬剤収納容器、食品容器、清涼飲料容器、アルコール飲料容器、特にメタカリ含有アルコール飲料等を広く充填するのに適し、内面塗膜の信頼と安定化を図ることができる。また、加工度が高い部位にのみ、本発明の粉末粒子を溶媒中に分散懸濁させたディスパーション型塗料、例えば酸変性ポリオレフィン分散塗料または低温硬化型塗料、例えばエポキシメラミン樹脂塗料を塗装することにより、すでに内面塗装されたエポキシフェノール、ビニルオルガノゾル、ポリアミドイミド等の内面塗膜の補正コートとして広く利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明に係るチューブ容器を示す断面図である。
【図2】本発明の実施例1である図1のA矢視部の拡大断面図である。
【図3】本発明の実施例2である図1のA矢視部の拡大断面図である。
【図4】本発明の実施例3である図1のA矢視部の拡大断面図である。
【図5】本発明の実施例4である図1のA矢視部の拡大断面図である。
【図6】本発明の実施例5である、絞りしごき加工により製造されるねじ付金属容器を示す図面である。
【図7】本発明の実施例5である、インパクト成形により製造されるねじ付金属容器を示す図面である。
【図8】本発明の実施例6である、小型のエアゾール容器を示す図面。
【図9】本発明の実施例6である、通常のエアゾール容器を示す図面である。
【図10】本発明の実施例7である、絞りしごき加工により製造されるねじ付金属容器の加工度が高い部位(X)を示す図面である。
【図11】本発明の実施例7である、インパクト加工により製造されるねじ付金属容器の加工度が高い部位(Y)を示す図面である。
【図12】本発明の実施例8である、インパクト加工により製造される小型エアゾール容器の加工度が高い部位(X)を示す図面である。
【図13】本発明の実施例8である、インパクト加工により製造される通常のエアゾール容器の加工度が高い部位(Y)を示す図面である。
【図14】本発明の実施例9である、絞りしごき加工により製造されるねじ付金属容器の天面塗装を示す図面である。
【図15】本発明の実施例9である、通常のエアゾール容器の天面塗装を示す図面である。
【図16】従来の粉体塗装(静電塗装)を示す断面図である。
【符号の説明】
【0027】
1 チューブ容器
2 2a 12 12a 容器本体
3 13 23 33 43 53 酸変性ポリオレフィン分散塗料
3a 13a エポキシメラミン樹脂塗料
4 4a 24 34 44 54 熱可塑性または熱硬化性樹脂層
21 絞りしごき加工により製造されるねじ付金属容器
22 52 カール部
23 33 43 53 酸変性ポリオレフィン分散塗料又はエポキシメラミン樹脂塗料
23a 53a 天面塗装
31 インパクト成形により製造されるねじ付金属容器
41 小型のエアゾール容器
51 通常のエアゾール容器
【技術分野】
【0001】
この発明は容器に関し、さらに詳しくは、粉末粒子を溶媒中に分散懸濁させたディスパーション型塗料または低温硬化型塗料を塗装する場合、塗装された樹脂が剥離しないで厚い内面塗膜を形成することにより、容器の耐食性の向上を図ると共に、塗膜形成温度の低減、塗装時間の短縮化により塗装コストの低減を図った容器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、チューブ容器内に充填される薬品には、酸性域からアルカリ性域まで広範囲にわたる薬品があり、またエアゾール容器内に充填される内容物には、同様に容器の金属材料を腐食させる内容物が充填されていた。そして、これらの薬品等の内容物から容器の材質を保護するため、容器の内面には、エポキシフェノール樹脂、エポキシアミノ樹脂、ビニル系樹脂等の内面塗料が塗装されていた。しかし、これらの塗装による塗膜は6〜10μmと薄いため、1回の塗装では、均一に容器の内面を塗装できないという欠点があり、このような不完全な塗装から容器を完全に保護することは不可能であった。そこで、従来は、内面塗膜の厚みを厚く塗装する方法として、ポリエチレン等の熱可塑性樹脂の粉体を静電塗装することが行われていた(特許文献1参照)。第16図は、従来の静電塗装方法を示す図面である。静電塗装される容器がチューブ容器100である場合の実施例である。チューブ容器100はホルダー101内に支持されている。粉体103は、高圧電源102によって陽イオンまたは陰イオンに荷電され、ノズル104からチューブ容器100の内面へと噴射される。一方、ホルダー101は、アース105に連結されており、ホルダー101及びチューブ容器100は、粉体103とは反対のイオンに荷電されている。このように荷電された粉体103は、電気力線の作用により、チューブ容器100の内面に吸着される。
【特許文献1】特開平8−150367号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、このような従来の静電塗装にあっては、以下に示す欠点があった。
(1)熱可塑性樹脂の粉体塗膜の膜厚が約100μmであり、厚くなりすぎると共に、粉体の容器内面への接着力が弱いため、容器の乾燥工程等において、搬送チェーンで搬送中に、衝撃等により容器の内面から粉体が剥げ落ちる欠点がある。
(2)熱可塑性樹脂の粉体塗装(静電塗装)は、特別な塗装装置を必要とし、且つ多大な消費電力を必要とするため製造コストが高いという欠点がある。
この発明は、このような従来の課題に着目してなされたもので、酸変性ポリオレフィン分散塗料またはエポキシメラミン樹脂塗料の塗装時において、塗装されたポリオレフィン系樹脂またはエポキシメラミン樹脂塗料が剥離しないで厚い内面塗膜を形成することにより、容器の耐食性の向上を図ると共に、従来の装置を利用することにより、塗膜形成温度の低減、塗装時間の短縮化を図り、塗装コストの低減を図ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の容器は、容器本体と、その容器本体の内面にエポキシメラミン樹脂塗料を塗装することにより設けた塗膜層とからなることを特徴としている。
このような容器であって、容器本体の内面に熱可塑性または熱硬化性樹脂からなる樹脂層を設け、その樹脂層の上に塗膜層が設けられたものが好ましい。
また、前記エポキシメラミン樹脂が、分子量約5000〜6000のビスフェノールA型エポキシ樹脂と、メラミンとホルムアルデヒドとの反応によって生じるメチロールメラミンを重縮合させて得られるメラミン樹脂とからなり、前記ビスフェノールA型エポキシ樹脂の量が70〜90重量%であり、前記メラミン樹脂の量が10〜30重量%であってもよい。
さらに、前記塗膜層、または、樹脂層と塗膜層とからなる内面塗膜が、10〜70μmであるものが好ましい。
本発明の容器は、チューブ容器、ねじ付金属容器、エアゾール容器に用いることができる。
【0005】
請求項1記載の発明の手段は、内面に、粉末粒子を溶媒中に分散懸濁させたディスパーション型塗料を塗装したことを特徴とする容器であり、また請求項2記載の発明の手段は、ディスパーション型塗料が、酸変性ポリオレフィン分散塗料であることを特徴とする容器である。容器の内面に、ディスパーション型塗料である酸変性ポリオレフィン分散塗料を塗装する場合、ポリオレフィン系樹脂の粒子を単体で塗装するのではなく、ポリオレフィン系樹脂にカルボン酸やマレイン酸などの酸を用いて、カルボキシル基などの極性基を導入し、この酸変性ポリオレフィン系樹脂をトルエン等の溶剤に分散させて液状にすると共に、ウエット状態で塗装する相乗作用により、酸変性ポリオレフィン系樹脂と容器内面、または酸変性ポリオレフィン系樹脂と熱硬化性若しくは熱可塑性の樹脂層との間に強い接着力を得ることができる。したがって、塗膜の厚みを厚くできると共に、乾燥工程中に塗膜が剥がれ落ちない。
【0006】
請求項3記載の発明の手段は、内面に、低温硬化型塗料を塗装したことを特徴とする容器であり、請求項4記載の発明の手段は、低温硬化型塗料が、エポキシメラミン樹脂塗料であることを特徴とする容器である。エポキシメラミン樹脂は、基材としてエポキシ樹脂、硬化剤としてメラミン樹脂からなり、分子量約5000〜6000のビスフェノールA型エポキシ樹脂を70〜90重量%、好ましくは80重量%、及びメラミンとホルムアルデヒドとの反応によって生じるメチロールメラミンを重縮合させて得られるメラミン樹脂を10〜30重量%、好ましくは20重量%とからなる塗膜樹脂組成物が好ましい。ただし、エポキシ樹脂としては、ビスフェノールA型の他、ビスフェノールF型などが用いられても良い。エポキシメラミン樹脂の硬化温度(160〜190℃)は、前に塗装された熱硬化性若しくは熱可塑性の樹脂層の硬化温度(約200℃)より低い温度で硬化するため、再加熱によって、前に塗装された熱硬化性若しくは熱可塑性の樹脂層に与える物理的影響力が小さくなり、塗膜の劣化を防止することができると共に、エポキシメラミン樹脂と熱硬化性若しくは熱可塑性の樹脂層との間に強い接着力を得ることができる。したがって、塗膜の厚みを厚くできると共に、乾燥工程中に塗膜が剥がれ落ちない。
【0007】
請求項5記載の発明の手段は、容器の内面に、熱可塑性または熱硬化性樹脂層を設け、その上に酸変性ポリオレフィン分散塗料またはエポキシメラミン樹脂塗料を、全面に塗装したことを特徴とする容器である。容器の内面に、熱可塑性または熱硬化性樹脂層を設け、その上に酸変性ポリオレフィン分散塗料またはエポキシメラミン樹脂塗料を塗装したものであり、酸変性ポリオレフィン系樹脂またはエポキシメラミン樹脂塗料と熱硬化性若しくは熱可塑性の樹脂層との間に、強い接着力を得ることができので、塗膜の厚みを厚くできると共に、乾燥工程中に塗膜が剥がれ落ちないという作用を呈する。
【0008】
請求項6記載の発明の手段は、容器の内面に、熱可塑性または熱硬化性樹脂層を設け、その上に酸変性ポリオレフィン分散塗料またはエポキシメラミン樹脂塗料を、加工度が高い部位のみに塗装したことを特徴とする容器である。加工度が高い部位として、ネッキング加工、ねじ加工が施された部位等の内面の塗膜は、塗料の剥がれ、割れ等があるため、この発明に係る酸変性ポリオレフィン分散塗料を塗装することで、塗膜形成温度が、下地の熱可塑性または熱硬化性樹脂及び外面印刷やコートの乾燥温度より低いため、これら並びに外面印刷やコートに影響を与えることなく、加工後の最終工程での内面塗膜の修復を行うことができる。その結果、通電値が向上する作用を呈する。すなわち、本発明に係る酸変性ポリオレフィン分散塗料またはエポキシメラミン樹脂塗料は、すでに内面塗装されたエポキシフェノール、ビニルオルガノゾル、ポリアミドイミド等の内面塗膜の補正コートとして有効である。
【0009】
請求項7記載の発明は、この発明がチューブ容器の内面に適用されたものであり、請求項8記載の発明は、この発明がねじ付金属容器の内面に適用されたものであり、請求項9記載の発明は、この発明がエアゾール容器の内面に適用されたものである。従来の粉体塗装は多大な消費電力を必要とするが、本発明に係る塗装方法は、従来の製造装置を利用することができる。
【発明の効果】
【0010】
この発明によれば、内面塗料として、塗装されたポリオレフィン系樹脂またはエポキシメラミン樹脂塗料が剥離せず、且つより厚い内面塗膜の形成が可能であり、容器の耐食性の向上を図ることができる。また従来の装置を利用することにより、塗膜形成温度の低減、塗装時間の短縮化を図り、塗装コストの低減を達成することができる効果を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
剥離しない厚い内面塗膜を形成することにより、容器の耐食性の向上を図ると共に、塗膜形成温度の低減、塗装時間の短縮化により塗装コストの低減化という目的を、容器の内面に、粉末粒子を溶媒中に分散懸濁させたディスパーション型塗料、例えば酸変性ポリオレフィン分散塗料、或いは低温硬化型塗料、例えばエポキシメラミン樹脂塗料を塗装することにより実現した。
【実施例1】
【0012】
図1は、本発明の実施例1〜4を示すチューブ容器であり、このチューブ容器1のA部拡大断面図を図2〜図5に示す。チューブ容器1の容器本体2はアルミニウム等の金属で形成されている。この容器本体2の内側には、熱硬化性または熱可塑性の樹脂層4が形成されている。熱硬化性の樹脂層4としては、例えば、エポキシフェノール等が適する。また熱可塑性樹脂の樹脂層4としては、ビニルオルガノゾル等が適する。すなわち、図2の実施例1に示すように、この熱硬化性または熱可塑性の樹脂層4の内側に、酸変性ポリオレフィン分散塗料3が塗装されている。ポリオレフィン系樹脂の粉末粒子は耐熱性に良好なポリプロピレンが適し、混合比率は溶剤に対して10〜30重量%が適し、好ましくは20重量%である。また溶剤は乾燥性の点でトルエンが適し、混合比率は混合塗料に対して50〜80重量%が適し、好ましくは65重量%である。全体の内面塗膜の厚みは10〜70μmが適する。また、他の溶剤はソルベッソやメチルエチルケトンやアルカリ水等が使用でき、他のポリオレフィン系樹脂の粉末粒子としてポリエチレン等を使用することもできる。容器本体2全体に塗装された熱可塑性または熱硬化性の樹脂層4の上に、さらに酸変性ポリオレフィン分散塗料3を塗装するので、内面塗膜がより確実且つ安定的になる。粉末粒子を溶媒中に分散懸濁させたディスパーション型塗料として、この酸変性ポリオレフィン分散塗料の他に、フッ化ビニリデン樹脂の粉末粒子を溶媒中に分散懸濁した塗料がある。しかし、フッ化ビニリデン樹脂は高い溶融温度であり、本発明の課題である塗膜形成温度の低減という趣旨に反するため、フッ化ビニリデン樹脂の粉末粒子は適さない。したがって、塗膜形成温度の低減という趣旨に合致する、その他のディスパーション型塗料を任意に選択することができる。また溶媒は、有機溶媒の他、水系の溶媒等を用いることもできる。なお、実施例1のチューブ容器1の外面には、通常のベースコート層、印刷インキ層、トップコート層等が印刷されている(図示せず)。
【実施例2】
【0013】
図3は、この発明に係る実施例2を示す図面である。この実施例2は、チューブ容器の容器本体12の内側に、酸変性ポリオレフィン分散塗料13が直接塗装されている。実施例2における酸変性ポリオレフィン分散塗料の粉末粒子は、同様に耐熱性に良好なポリプロピレンが適する。混合比率は溶剤に対して10〜30重量%が適し、好ましくは20重量%である。全体の内面塗膜の厚みは10〜70μmが適する。また溶剤はトルエンが適し、混合比率はポリオレフィン系樹脂に対して50〜80重量%が適し、好ましくは65重量%である。他の溶剤はソルベッソやメチルエチルケトンやアルカリ水等が使用でき、その他のポリオレフィン系樹脂の粉末粒子として、ポリエチレンを使用することもできる。このように、酸変性ポリオレフィン分散塗料13は、容器本体12の内面に直接塗装された場合でも、容器の金属材料を腐食させる内容物に対しては、耐内容物性に優れ十分な効果を得ることができる。さらにチューブ容器の場合、すそをシールする必要があり、このポリオレフィン系樹脂の粉末粒子が内面に施されていることにより、容易に熱溶着によるシールが可能であり、従来のような粘着性のあるゴム系シール剤を塗布しなくてもシールできるという効果もある。
【実施例3】
【0014】
図4は、この発明に係る実施例3を示す図面である。実施例3において、容器本体2aはアルミニウム等の金属で形成されている。この容器本体2aの内側には、熱硬化性または熱可塑性の樹脂層4aが形成されている。熱硬化性の樹脂層4aとしては、同様に、エポキシフェノール、エポキシアクリル等が適する。また熱可塑性樹脂の樹脂層4aとしては、ビニルオルガノゾル等が適する。図4に示す実施例3は、熱硬化性または熱可塑性の樹脂層4aの内側に、低温硬化型塗料3aが塗装されている。低温硬化型塗料3aは、エポキシメラミン樹脂粒子は、混合比率は溶剤に対して20〜40重量%が適し、好ましくは30重量%である。また溶剤はトルエン、メチルエチルケトン、1−ブタノール、シクロヘキサン、ジアセトンアルコール等が適し、混合比率は混合塗料に対して60〜80重量%が適し、好ましくは70重量%である。全体の内面塗膜の厚みは3〜20μmが適する。また、容器本体2a全体に塗装された熱可塑性または熱硬化性の樹脂層4aの上に、さらに溶解された低温硬化型塗料3aであるエポキシメラミン樹脂塗料を塗装するので、内面塗膜がより確実且つ安定的になる。なお、実施例3のチューブ容器の外面には、同様に通常のベースコート層、印刷インキ層、トップコート層等が印刷されている(図示せず)。
【実施例4】
【0015】
図5は、この発明に係る実施例4を示す図面である。この実施例4は、チューブ容器の容器本体12aの内側に、低温硬化型塗料13aが直接塗装されている。実施例4における低温硬化型塗料13aの粉末粒子は、同様にエポキシメラミン樹脂塗料が適する。混合比率は溶剤に対して20〜40重量%が適し、好ましくは30重量%である。全体の内面塗膜の厚みは3〜20μmが適する。また溶剤はトルエン、メチルエチルケトン、l−ブタノール、シクロヘキサン、ジアセトンアルコール等が適し、混合比率はエポキシメラミン樹脂に対して60〜80重量%が適し、好ましくは70重量%である。このように、エポキシメラミン樹脂塗料13aは、容器本体12aの内面に直接塗装された場合でも、容器の金属材料を腐食させる内容物に対しては、耐内容物性に優れ十分な効果を得ることができる。
【実施例5】
【0016】
図6及び図7は、この発明に係る実施例5を示す図面である。実施例5において図6に示す容器は、絞りしごき加工により製造されるねじ付金属容器21であり、図7に示す容器は、インパクト成形により製造されるねじ付金属容器31である。金属容器21、31の内面には、酸変性ポリオレフィン分散塗料または低温硬化型塗料が直接塗装されるか、或いは熱硬化性または熱可塑性の樹脂層を介して塗装されている。そして、ねじ付金属容器21、31のA部拡大断面図は、同様に図2〜図5に示される。使用される酸変性ポリオレフィン分散塗料の粉末粒子は、同様にポリプロピレンが適し、また溶剤は乾燥性の点でトルエンが適する。また低温硬化型塗料は、同様にエポキシメラミン樹脂塗料が適する。
【実施例6】
【0017】
図8及び図9は、この発明に係る実施例6を示す図面である。実施例6において、図8に示す容器は、小型のエアゾール容器41であり、図9に示す容器は、通常のエアゾール容器51である。エアゾール容器41、51の内面には、酸変性ポリオレフィン分散塗料が直接塗装されるか、或いは熱硬化性または熱可塑性の樹脂層を介して塗装される。そして、エアゾール容器41、51のA部拡大断面図は、同様に図2〜図5に示される。使用される酸変性ポリオレフィン分散塗料の粉末粒子は、同様にポリプロピレンが適し、また溶剤は乾燥性の点でトルエンが適する。また低温硬化型塗料は、同様にエポキシメラミン樹脂塗料が適する。
【実施例7】
【0018】
図10及び図11は、この発明に係る実施例7を示す図面である。実施例7において、図10に示す容器は、絞りしごき加工により製造されるねじ付金属容器21の加工度が高い部位Xを示す断面図であり、図11に示す容器は、インパクト成形により製造されるねじ付金属容器31の加工度が高い部位Yを示す断面図である。これらの加工度が高い部位X、Yは、内面塗装が施された後、ネッキング加工、ねじ加工、カール加工等により容器材料の塑性変形が大きい部位である。したがって、加工後の熱硬化性または熱可塑性の樹脂層24、34の内面塗膜の皺、剥がれ、割れが発生し易い。この発明は、このような加工度が高い部位に、酸変性ポリオレフィン分散塗料または低温硬化型塗料23、33を塗装することで、熱硬化性または熱可塑性の樹脂層24、34の内面塗膜に影響を与えることなく修復と通電値の向上を図ることができる。使用される酸変性ポリオレフィン分散塗料の粉末粒子は、同様にポリプロピレンが適し、また溶剤は乾燥性の点でトルエンが適する。また低温硬化型塗料は、同様にエポキシメラミン樹脂塗料が適する。
【実施例8】
【0019】
図12及び図13は、この発明に係る実施例8を示す図面である。実施例8において、図12に示す容器は、小型のエアゾール容器41の加工度が高い部位Xを示す断面図であり、図13に示す容器は、通常のエアゾール容器51の加工度が高い部位Yを示す断面図である。これらの加工度が高い部位X、Yは、内面塗装が施された後、ネッキング加工、カール加工等により容器材料の塑性変形が大きい部位である。したがって、加工後の熱硬化性または熱可塑性の樹脂層44、54の内面塗膜の皺、剥がれ、割れが発生し易い。この発明は、このような加工度が高い部位に、酸変性ポリオレフィン分散塗料または低温硬化型塗料43、53を塗装することで、熱硬化性または熱可塑性の樹脂層44、54の内面塗膜に影響を与えることなく修復と通電値の向上を図ることができる。使用されるポリオレフィン系樹脂の粉末粒子は同様にポリプロピレンが適し、また溶剤は乾燥性の点でトルエンが適する。また低温硬化型塗料は、同様にエポキシメラミン樹脂塗料が適する。
【実施例9】
【0020】
図14及び図15は、この発明に係る実施例9を示す図面である。実施例9において、図14は、ねじ付金属容器21のカール部22の天面に、本発明に係る酸変性ポリオレフィン分散塗料または低温硬化型塗料を天面塗装23aしたものである。ねじ付金属容器のねじ部の内面は、複数回のネッキング加工、ねじ加工により多くの縦皺が形成されており、内容物等がこの皺を伝って容器本体の外部へ漏洩するのを効果的に防止することができる。また図15は、エアゾール容器51のカール部52の天面に、本発明に係る酸変性ポリオレフィン分散塗料または低温硬化型塗料を天面塗装53aしたものである。エアゾール容器51の内面は、複数回のネッキング加工、カール加工により多くの縦皺が形成されており、内容物、プロペラント等がこの皺を伝って、容器の外部へ漏洩するのを、同様に効果的に防止することができる。なお、実施例7、実施例8及び実施例9を組み合わせて、加工度が高い部位X、Y及び天面塗装の両方を行うことにより、より確実で安定した内面塗膜を形成することができる。
【実施例10】
【0021】
本発明に係る酸変性ポリオレフィン分散塗料(ポリプロピレン粉末粒子をトルエン中に分散)を、容器内面全体または加工度が高い部位に塗装し、塗装しない容器との間で内面塗膜の状態を目視により比較した。
「試験条件」
(1)絞りしごき加工により製造される、ねじ付金属容器のねじ部の補正コート(A1)。
・スプレー回数、温度及び時間;1スプレー、180℃、3分
・膜厚;6〜7μm
・充填内容物、保管温度及び保管日数;メタカリパック、40℃、3日
(2)絞りしごき加工により製造される、ねじ付金属容器のねじ部の補正コート(A2)。
・スプレー回数、温度及び時間;1スプレー、180℃、3分
・膜厚;6〜7μm
・充填内容物、保管温度及び保管日数;炭酸飲料、40℃、1ヶ月
(3)インパクト成形により製造される、ねじ付金属容器の内面全体への塗装(B)。
・スプレー回数、温度及び時間;1スプレー、180℃、3分
・膜厚;8μm
・充填内容物、保管温度及び保管日数;パーマ2剤過酸化水素水処方、45℃、1ヶ月
(4)アルミチューブの内面全体への塗装(C)。
・塗装回数、温度及び時間;1コート、180℃、3分
・膜厚;12〜23μm
・充填内容物、保管温度及び保管日数;市販染毛2剤、40℃、1ヶ月
「試験結果」
【0022】
【表1】
【0023】
本発明に係る低温硬化型塗料(エポキシメラミン樹脂塗料)をトルエン中に溶解し、容器内面全体または加工度が高い部位に塗装し、塗装しない容器との間で内面塗膜の状態を目視により比較した。
「試験条件」
絞りしごき加工により製造される、ねじ付金属容器のねじ部の補正コート。
・スプレー回数、温度及び時間;1スプレー、190℃、2.5分
・膜厚;3〜20μm
「試験結果」
【0024】
【表2】
【産業上の利用可能性】
【0025】
本発明の活用例として、チューブ容器、またはエアゾール容器内に充填される酸性域からアルカリ性域まで広範囲にわたる内容物が金属素材を腐食させるため、従来複数回の内面塗装を施すことにより、容器の素材を保護していたが、本発明の塗料を1回塗装するだけで、均一且つ厚肉な内面塗料を確実に塗装できるので、染毛剤容器、パーマ剤容器、薬剤収納容器、食品容器、清涼飲料容器、アルコール飲料容器、特にメタカリ含有アルコール飲料等を広く充填するのに適し、内面塗膜の信頼と安定化を図ることができる。また、加工度が高い部位にのみ、本発明の粉末粒子を溶媒中に分散懸濁させたディスパーション型塗料、例えば酸変性ポリオレフィン分散塗料または低温硬化型塗料、例えばエポキシメラミン樹脂塗料を塗装することにより、すでに内面塗装されたエポキシフェノール、ビニルオルガノゾル、ポリアミドイミド等の内面塗膜の補正コートとして広く利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明に係るチューブ容器を示す断面図である。
【図2】本発明の実施例1である図1のA矢視部の拡大断面図である。
【図3】本発明の実施例2である図1のA矢視部の拡大断面図である。
【図4】本発明の実施例3である図1のA矢視部の拡大断面図である。
【図5】本発明の実施例4である図1のA矢視部の拡大断面図である。
【図6】本発明の実施例5である、絞りしごき加工により製造されるねじ付金属容器を示す図面である。
【図7】本発明の実施例5である、インパクト成形により製造されるねじ付金属容器を示す図面である。
【図8】本発明の実施例6である、小型のエアゾール容器を示す図面。
【図9】本発明の実施例6である、通常のエアゾール容器を示す図面である。
【図10】本発明の実施例7である、絞りしごき加工により製造されるねじ付金属容器の加工度が高い部位(X)を示す図面である。
【図11】本発明の実施例7である、インパクト加工により製造されるねじ付金属容器の加工度が高い部位(Y)を示す図面である。
【図12】本発明の実施例8である、インパクト加工により製造される小型エアゾール容器の加工度が高い部位(X)を示す図面である。
【図13】本発明の実施例8である、インパクト加工により製造される通常のエアゾール容器の加工度が高い部位(Y)を示す図面である。
【図14】本発明の実施例9である、絞りしごき加工により製造されるねじ付金属容器の天面塗装を示す図面である。
【図15】本発明の実施例9である、通常のエアゾール容器の天面塗装を示す図面である。
【図16】従来の粉体塗装(静電塗装)を示す断面図である。
【符号の説明】
【0027】
1 チューブ容器
2 2a 12 12a 容器本体
3 13 23 33 43 53 酸変性ポリオレフィン分散塗料
3a 13a エポキシメラミン樹脂塗料
4 4a 24 34 44 54 熱可塑性または熱硬化性樹脂層
21 絞りしごき加工により製造されるねじ付金属容器
22 52 カール部
23 33 43 53 酸変性ポリオレフィン分散塗料又はエポキシメラミン樹脂塗料
23a 53a 天面塗装
31 インパクト成形により製造されるねじ付金属容器
41 小型のエアゾール容器
51 通常のエアゾール容器
【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器本体と、その容器本体の内面にエポキシメラミン樹脂塗料を塗装することにより設けた塗膜層とからなる、容器
【請求項2】
前記容器本体の内面に熱可塑性または熱硬化性樹脂からなる樹脂層を設け、
その樹脂層の上に塗膜層が設けられた、請求項1記載の容器。
【請求項3】
前記エポキシメラミン樹脂が、分子量約5000〜6000のビスフェノールA型エポキシ樹脂と、メラミンとホルムアルデヒドとの反応によって生じるメチロールメラミンを重縮合させて得られるメラミン樹脂とからなり、
前記ビスフェノールA型エポキシ樹脂の量が70〜90重量%であり、
前記メラミン樹脂の量が10〜30重量%である、請求項1記載の容器。
【請求項4】
前記塗膜層、または、樹脂層と塗膜層とからなる内面塗膜が、10〜70μmである、請求項1記載の容器。
【請求項5】
前記容器が、チューブ容器であることを特徴とする請求項1記載の容器。
【請求項6】
前記容器が、ねじ付金属容器であることを特徴とする請求項1記載の容器。
【請求項7】
前記容器が、エアゾール容器であることを特徴とする請求項1記載の容器。
【請求項1】
容器本体と、その容器本体の内面にエポキシメラミン樹脂塗料を塗装することにより設けた塗膜層とからなる、容器
【請求項2】
前記容器本体の内面に熱可塑性または熱硬化性樹脂からなる樹脂層を設け、
その樹脂層の上に塗膜層が設けられた、請求項1記載の容器。
【請求項3】
前記エポキシメラミン樹脂が、分子量約5000〜6000のビスフェノールA型エポキシ樹脂と、メラミンとホルムアルデヒドとの反応によって生じるメチロールメラミンを重縮合させて得られるメラミン樹脂とからなり、
前記ビスフェノールA型エポキシ樹脂の量が70〜90重量%であり、
前記メラミン樹脂の量が10〜30重量%である、請求項1記載の容器。
【請求項4】
前記塗膜層、または、樹脂層と塗膜層とからなる内面塗膜が、10〜70μmである、請求項1記載の容器。
【請求項5】
前記容器が、チューブ容器であることを特徴とする請求項1記載の容器。
【請求項6】
前記容器が、ねじ付金属容器であることを特徴とする請求項1記載の容器。
【請求項7】
前記容器が、エアゾール容器であることを特徴とする請求項1記載の容器。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2009−102073(P2009−102073A)
【公開日】平成21年5月14日(2009.5.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−293383(P2008−293383)
【出願日】平成20年11月17日(2008.11.17)
【分割の表示】特願2004−2839(P2004−2839)の分割
【原出願日】平成16年1月8日(2004.1.8)
【出願人】(000238614)武内プレス工業株式会社 (72)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年5月14日(2009.5.14)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年11月17日(2008.11.17)
【分割の表示】特願2004−2839(P2004−2839)の分割
【原出願日】平成16年1月8日(2004.1.8)
【出願人】(000238614)武内プレス工業株式会社 (72)
【Fターム(参考)】
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