説明

導体パターンの形成方法

【課題】接続信頼性の高い導体パターンを効率的に得る。
【解決手段】長手方向に延びる基板と、該基板上であって、該長手方向先端側に形成された第1導体部、及び長手方向後端側に形成された第2導体部、並びに、前記第1導体部及び前記第2導体部を繋ぐ長手方向に延びるリード部を備える導体パターンと、を有する導体パターンの形成方法であって、前記長手方向に沿って、インクジェット方式でノズルから液滴を吐出して少なくとも前記リード部を形成する印刷工程を有し、前記第1導体部及び前記第2導体部は、少なくとも前記液滴よりも大きいことを特徴とする導体パターンの形成方法を適用する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導体パターンの形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のインクジェット印刷においては、印刷紙などの被印刷体を一方向に移動させつつ、インクジェットヘッドをこの被印刷体の移動方向に対して垂直な方向に移動させることで、所定の印刷パターンを被印刷体上に印刷する方法が知られている(特許文献1参照)。つまり、この印刷方法は、例えば横長、縦長といった印刷パターンの形状の違いなどにかかわらず、被印刷体とインクジェットヘッドとの相対的な移動方向の関係が常に一定であるため、被印刷体へ実際にパターン印刷されて行く印刷進行方向も常に一定の方向となる。
【0003】
また、上記のインクジェットヘッドは、溶融状態のインクにパルス圧力を加えて微小液滴を噴出口から噴出させ、噴出口下方の基板が載置された基台を移動させながらこの基板上にパターンを形成している(特許文献2参照)。
【0004】
このようなインクジェット印刷法は、印刷の対象が、前述したように、一般のインク(カラーインクなど)を用いた例えば普通紙への印刷であっても、また、回路基板上に導体パターンを形成するための印刷などであっても、同様に適用することが可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−35820号公報
【特許文献2】特開2009−212249号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、インクジェット印刷装置においては、インクの状態や微小液滴を噴出させるインクジェットヘッドの使用状況などにより、噴出口に部分的な目詰まりなどが生じる事がある。このとき、描画対象が導電パターンである際には、形成した導電パターンの接続信頼性が低下する、又は導電パターンが2つに分断されて断線するという問題点をはらんでいる。
【0007】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、接続信頼性の高い導体パターンを得ることができる導体パターンの形成方法、及び当該形成方法を電極パターン形成に適用したガスセンサ素子の製造方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明の一態様である導体パターンの形成方法は、長手方向に延びる基板と、該基板上であって、該長手方向先端側に形成された第1導体部、及び長手方向後端側に形成された第2導体部、並びに、前記第1導体部及び前記第2導体部を繋ぐ長手方向に延びるリード部を備える導体パターンと、を有する導体パターンの形成方法であって、前記長手方向に沿って、インクジェット方式でノズルから液滴を吐出して少なくとも前記リード部を形成する印刷工程を有し、前記第1導体部及び前記第2導体部は、少なくとも前記液滴よりも大きいことを特徴とする。
【0009】
すなわち、この導体パターンの形成方法は、長手方向に延びる基板表面上に形成される導体パターンのリード部において、インクジェット方式を適用した印刷ヘッドを走査させる方向(主走査方向)に対し、通常、交差する方向(直交する方向など)に配列された印刷材料吐出用の複数のノズルのうちの幾つかが目詰まりした場合でも、目詰まりしていないノズルから吐出された印刷材料により、長手方向において断線のないリード部を得ることができる。つまり、この方法では、一般に電気信号の伝送方向となるリード部の長手方向についての断線を防止できるので、基板上に形成された導体パターンの接続信頼性を高めることができる。
【0010】
また、導体パターンのうち、第1導体部及び第2導体部はノズルから吐出された液滴よりも大きいため、複数のノズルのうちの幾つかが目詰まりした場合でも、目詰まりしていないノズルから吐出された印刷材料によって形成されるリード部によって第1導体部及び第2導体部が確実に接続され得る。
なお、リード部はノズルから吐出された液滴よりも大きいことが好ましい。この場合、複数のノズルのうちの幾つかが目詰まりした場合でも、目詰まりしていないノズルから吐出された印刷材料によって形成されるリード部によって第1導体部及び第2導体部がより確実に接続され得る。
【0011】
また、この導体パターンの形成方法は、基板表面に対し例えば印刷ヘッドを一方向(主
走査方向)に走査させる回数を実質的に低減できるので、パターン印刷に要する時間を短縮でき、これにより、導体パターンを効率良く形成することができる。
【0012】
また、本発明の一態様である導体パターンの形成方法は、前記印刷工程では、前記導体パターンの長手方向に沿って、前記基板と印刷ヘッドとの相対的な位置を移動させることを特徴とする。
【0013】
このように、基板と印刷ヘッドとの相対的な位置を移動させることで、印刷工程での自由度を担保できる。つまり、基板の位置に対して印刷ヘッド側を移動させることもできるし、印刷ヘッドの位置に対して基板側を移動させることもできる。
【0014】
また、本発明の一態様であるガスセンサ素子の製造方法は、長手方向に延びる固体電解質基板と、該固体電解質基板上であって、該長手方向先端側に形成された電極部、及び長手方向後端側に形成された導体部、並びに、前記電極部及び前記導体部を繋ぐ長手方向に延びる電極リード部を備える電極パターンと、を備えるガスセンサ素子の製造方法であって、前記長手方向に沿って、インクジェット方式でノズルから液滴を吐出して少なくとも前記電極リード部を形成する印刷工程を有し、前記電極部及び前記導体部は、少なくとも前記液滴よりも大きいことを特徴とする。
【0015】
すなわち、このガスセンサ素子の製造方法は、長手方向に延びる固体電解質基板表面上に形成される電極パターンの電極リード部において、インクジェット方式を適用した印刷ヘッドを走査させる方向(主走査方向)に対し、通常、交差する方向(直交する方向など)に配列された印刷材料吐出用の複数のノズルのうちの幾つかが目詰まりした場合でも、目詰まりしていないノズルから吐出された印刷材料により、長手方向において断線のない電極リード部を得ることができる。つまり、この方法では、一般に電気信号の伝送方向となる電極リード部の長手方向についての断線を防止できるので、基板上に形成された電極パターンの接続信頼性を高めることができる。
【0016】
また、導体パターンのうち、電極部及び導体部はノズルから吐出された液滴よりも大きいため、複数のノズルのうちの幾つかが目詰まりした場合でも、目詰まりしていないノズルから吐出された印刷材料によって形成される電極リード部によって電極部及び導体部が確実に接続され得る。
なお、電極リード部はノズルから吐出された液滴よりも大きいことが好ましい。この場合、複数のノズルのうちの幾つかが目詰まりした場合でも、目詰まりしていないノズルから吐出された印刷材料によって形成される電極リード部によって電極部及び導体部がより確実に接続され得る。
【0017】
さらに、前記電極部及び前記導体部の長手方向と直交する長さは、少なくとも前記電極リード部の長手方向と直交する長さ以上に長いことを特徴とする。
【0018】
このように、電極部及び導体部の長手方向と直交する長さは、少なくとも電極リード部の長手方向と直交する長さ以上に長いため、つまり、電極部及び導体部の幅は、少なくとも電極リード部の幅以上に長いため、複数のノズルのうちの幾つかが目詰まりした場合でも、目詰まりしていないノズルから吐出された印刷材料によって形成される電極リード部によって電極部及び導体部が確実に接続され得る。したがって、本製造方法においては、ガスセンサ素子の電気的な接続信頼性を向上させることができると共に、高い生産性を期待できる。
【0019】
また、前記導体部は、前記ガスセンサ素子の表面上に設けられた電極パッド、もしくは前記電極パッドと前記電極リード部とを接続する、前記ガスセンサ素子に設けられたスルーホール導体であることを特徴とする。
【0020】
本発明における電極パターン形成は、ガスセンサ素子を構成する固体電解質基板の表面上であれば、如何なる箇所へも適用可能であるため、例えば長手方向後端側に形成される導体部を、ガスセンサ素子を構成する複数の固体電解質基板のうち、最外層に相当する固体電解質基板の表面上に設けられた電極パッドとして、電極リード部を介して電極部と接続する構成にしても良いし、スルーホールが設けられた固体電解質基板のスルーホール表面上に設けられたスルーホール導体として、電極リード部を介して電極部と接続する構成にしても良い。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、接続信頼性の高い導体パターンを効率的に得ることができる導体パターンの形成方法、及び当該形成方法を電極パターン形成に適用したガスセンサ素子の製造方法を提供することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の導体パターンの形成方法を実施する際に使用する導体パターン形成装置を示す図。
【図2】実施形態の導体パターンの形成方法を説明するための図。
【図3】比較例となる導体パターンの形成方法を説明するための図。
【図4】図2に示す導体パターンの形成方法で電極パターン形成された基板を備えるガスセンサ素子の分解斜視図。
【図5】実施例を説明するための導体パターンの構成を示す平面図。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づき説明する。
図1に示すように、本実施形態で用いる導体パターン形成装置1は、インクジェット方式を適用した印刷装置であって、基台2、印刷ヘッド5、ステージ6、ヘッド移動機構8、ステージ移動機構9、及び制御部10を主に備えている。
【0024】
印刷ヘッド5は、印刷材料吐出用の複数のノズルが互いに一定の間隔を空けて配列されたインクジェットヘッドである。個々のノズルは、例えば508μmのピッチで並列に配置されており、ノズルの数は、例えば128個設けられている。印刷ヘッド5は、その主走査方向Y1−Y2に対して、図2に示すように、ヘッド角度の調整機能を有している。
このヘッド角度θの値を調節することで、パターン印刷される導体パターン7のドットピッチ(解像度)を調整することが可能となる。
【0025】
また、印刷ヘッド5は、ピエゾ素子などの圧電素子を備えており、圧電素子への電圧の印加によってノズルから液状の印刷材料(インク)を吐出させる。液状の印刷材料は、溶媒としてのブチルカルビトールアセテートに対して、金属、金属酸化物、バインダ、分散剤などを含有させて構成されている。なお、金属としては金、銀、銅、白金等が、金属酸化物としてはジルコニアやアルミナ等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0026】
ヘッド移動機構8は、動力源となる駆動モータや、この駆動モータにより駆動されるボールねじなどを有しており、さらにこのボールねじと基端部側で係合しかつ先端部側で印刷ヘッド5を支持するアーム部8aを備えている。このようなヘッド移動機構8は、図1に示すように、アーム部8a先端の印刷ヘッド5を主走査方向Y1−Y2に移動させる。
【0027】
ここで、上述した印刷ヘッド5の各ノズルは、印刷ヘッド5の主走査方向Y1−Y2と交差する方向(ヘッド角度の非調整状態では主走査方向と直交する副走査方向X1−X2)に沿って、一定のピッチを空けて配列されている。
【0028】
ステージ6は、導体パターン7の形成される印刷対象の基板3をセット(設置)するための基板保持部である。基板3は、具体的には、矩形状の基板(子基板)を複数個取り(例えば48個取り)するための親基板であり、最終的には個々の子基板に分断される。親基板である基板3は、矩形状の個々の子基板の長手方向を一方向に揃えた状態で一体的に構成されている。
【0029】
さらに詳述すると、親基板である基板3上の個々の子基板毎に、それらの長手方向に沿った向きに導体パターン7が各々パターン印刷されることになる。つまり、親基板である基板3は、当該基板上に(個々の子基板上に各々)形成されるべき導体パターン7の長手方向が、印刷ヘッド5の主走査方向Y1−Y2と一致するように、ステージ6上にセットされる。
【0030】
ステージ移動機構9は、動力源となる駆動モータやこの駆動モータにより駆動されるボールねじなどを備えており、セットされた基板3と共にステージ6を印刷ヘッド5の副走査方向X1−X2に移動させる。この一方で、上述したヘッド移動機構8は、ステージ6上の基板3表面に形成すべき導体パターン7の長手方向(主走査方向Y1−Y2)に沿って、基板3と印刷ヘッド5との相対的な位置を移動させることが可能となる。
【0031】
制御部10は、印刷ヘッド5の圧電素子に対して印刷材料をノズルから吐出させるための制御信号(電圧)を供給する。また、制御部10は、図1に示すように、印刷ヘッド5を主走査方向Y1−Y2に移動させるための駆動信号をヘッド移動機構8の駆動モータに供給する。さらに、制御部10は、ステージ6を印刷ヘッド5の副走査方向X1−X2に移動させるための駆動信号をステージ移動機構9の駆動モータに供給する。
【0032】
次に、このような導体パターン形成装置1を用いた導体パターン7の形成方法を図1〜図3に基づき説明する。ここで、図2は、実施形態(実施例)に対応する導体パターン7の形成方法を概略的に示す図であり、一方、図3は、比較例に対応する導体パターン7の形成方法を概略的に示す図である。
【0033】
図2及び図3では、4つのノズル5a〜5dを備えた印刷ヘッド5を、その移動方向(主走査方向Y1−Y2)に対して角度θだけ傾けてパターン印刷を行う態様を例示している。また、基板3上に形成される導体パターン7は、一端部側から他端部側に延びて電気信号の伝送路を形成するリード部7aと、このリード部7aの他端部側に配置されて電気信号の取り出しや入力に用いられる第1導体部7bと、このリード部7aの一端部側に配置されて電気信号の取り出しや入力に用いられる第2導体部7cで主に構成される。
【0034】
なお、図2では、実施形態(実施例)における導体パターンの形成方法の技術的特徴を明確にするために、説明の簡略化を図っている。つまり、ノズルの数を少なくし、また、印刷ヘッド5の一回の走査で、導体パターン7におけるリード部7aのパターン印刷が完了する状況を例示している。
【0035】
図2に示すように、実施形態(実施例)の導体パターンの形成方法では、基板3は、当該基板上に形成されるべき導体パターン7の長手方向Rが、図1に示すように印刷ヘッド5の主走査方向Y1−Y2と一致するようにステージ6上にセットされる。すなわち、図2に示す実施形態の方法では、基板3上に形成される導体パターン7の長手方向Rに沿って、インクジェット方式で図2のE方向にパターン印刷が行われる。
【0036】
一方、図3に示すように、比較例の導体パターンの形成方法では、基板3は、当該基板上に形成されるべき導体パターン7の長手方向Rが、印刷ヘッド5の副走査方向X1−X2と一致するようにステージ6上にセットされることになる。このため、図3に示す比較例の方法では、基板3上に形成される導体パターン7の長手方向Rと直交する方向Fに沿って、インクジェット方式でパターン印刷が行われる。
【0037】
さらに、図2、図3に示すいずれの印刷ヘッド5も、4つのノズル5a〜5dのうちのノズル5cに例えば目詰まりが生じており、液状の印刷材料(インク)がノズル5cからは吐出されず、ノズル5a、5b、5dからのみ印刷材料が吐出される状況を例示している。なお、「液状の印刷材料(インク)」は、本願特許請求の範囲に記載の「液滴」に相当する。
【0038】
この場合、比較例の方法では、図3に示すように、導体パターン7を横切る方向(長手方向Rと直交する方向)に導体が印刷されない領域が発生し、電気信号の伝送路となる導体パターン7のリード部7aが断線する結果を招く。
【0039】
一方、実施形態の方法では、図2に示すように、導体パターン7の長手方向Rに沿って導体が印刷されない領域が発生するため、それ以外の導体が印刷される領域により導体パターン7(リード部7a)の長手方向Rに沿って電気信号の伝送路をつなぐことができ、これにより、導体パターン7の実質的な断線を防止することができる。
【0040】
さらにまた、比較例の方法では、図3に示すように、(印刷ヘッド5を長手方向Rに除々にシフトさせつつ)導体パターン7の長手方向Rと直交する方向Fへ、複数回にわたって(繰り返し)印刷ヘッド5を走査させ、導体パターン7のパターン印刷を行う必要がある。
【0041】
これに対して、実施形態の方法では、図2に示すように、導体パターン7の長手方向Rに沿って印刷ヘッド5を走査させるため、基板3表面に対し印刷ヘッド5を一方向(主走査方向)に走査させる回数を実質的に低減することができる。
【0042】
したがって、本実施形態の導体パターンの形成方法によれば、パターン印刷に要する時間を短縮できるので、導体パターン7を効率的に形成することができる。また、本実施形態の導体パターンの形成方法によれば、前述したように、印刷ヘッド5の主走査方向と交差する方向に配列された複数のノズルのうちの幾つかが目詰まりした場合でも、目詰まりしていないノズルから吐出された印刷材料により、長手方向Rにおいて断線のない導体パターン7を得ることができる。これにより、基板3上に形成される導体パターン7の接続信頼性を向上させることができる。
【0043】
次に、図2に示す本実施形態の導体パターンの形成方法でパターン印刷された基板(前述した例えば複数個取り用の親基板から分断された子基板)を含むガスセンサ素子について図4に基づき説明を行う。図4に示すように、ガスセンサ素子20は、ガスセンサ素子本体22とヒータ21とを積層して構成されている。
【0044】
ヒータ21は、第1基体27及び第2基体25、並びに抵抗発熱体26を備えている。抵抗発熱体26は、白金あるいはタングステンなどを主体として構成され、一方、第1基体27及び第2基体25は、酸化アルミニウム(アルミナ)などをそれぞれ主体とするセラミック焼結体から構成されている。抵抗発熱体26は、それぞれ矩形状の第1基体27と第2基体25との間に挟持されている。
【0045】
また、抵抗発熱体26は、蛇行した形状に構成され通電にて発熱する発熱部26bと、発熱部26bに各々の一端部が接続され、かつ第1基体27及び第2基体25の長手方向に沿って延びる一対のヒータリード部26aと、を有している。一対のヒータリード部26aのそれぞれの他端部は、第2基体25を貫通する2つのスルーホール25aを介し、外部回路接続用の外部端子に接続される一対のヒータ通電端子25bと各々接続されている。
【0046】
一方、ガスセンサ素子本体22は、酸素濃度検出セル(酸素濃度検出セル基板)24及び保護層35を備えている。酸素濃度検出セル24は、矩形状の固体電解質基板33、並びに第1電極パターン32及び第2電極パターン34を有する。固体電解質基板33は、酸素濃淡電池用の固体電解質体である。
【0047】
ここで、固体電解質基板33の一方及び他方の主面上には、本実施形態の導体パターンの形成方法により、第1電極パターン32及び第2電極パターン34がその長手方向(後述する第1電極リード部32a及び第2電極リード部34aの長手方向)に沿ってインクジェット方式でそれぞれパターン印刷されている。これら第1電極パターン32及び第2電極パターン34には、固体電解質基板33と協働して検知部(図示せず)を構成する第1電極部32b及び第2電極部34bが、固体電解質基板33を挟んで互いに対向する位置に設けられている。
【0048】
この第1電極パターン32は、第1電極部32bから、固体電解質基板33の長手方向へ延びる第1電極リード部32aを有している。一方、第2電極パターン34は、第2電極部34bから、固体電解質基板33の長手方向へ延びる第2電極リード部34aを備えている。なお、保護層35は、固体電解質基板33との間で第2電極パターン34を挟む位置に積層されるものであって、第2電極部34bを被毒から防護するための多孔質状の電極保護層35bと、固体電解質基板33を保護するための強化保護層35aと、を備えている。
【0049】
第1電極リード部32aの末端である第1導体部32cは、固体電解質基板33に設けられたスルーホール33b及び保護層35に設けられたスルーホール35dを介して信号取出し用端子35fのうちの一方と接続されている。また、第2電極リード部34aの末端である第2導体部34cは、保護層35に設けられたスルーホール35eを介して信号取出し用端子35fのうちの他方と接続されている。このようにして構成されるガスセンサ素子20は、酸素濃度検出セル24の濃淡電池作用により酸素濃度を測定できるようになっており、空燃比センサなどとしても適用することが可能である。
また、インクジェット方式でノズルから吐出されたインク1滴の直径は約100μmであり、第1電極パターン32、第2電極パターン34を構成する第1電極部32b、第2電極部34bの幅が約3.0mm、第1電極リード部32a、第2電極リード部34aの長さが約30mm、幅が約0.5mmであり、第1導体部32c、第2導体部34cの幅が約1.0mmである。つまり、第1電極部32b、第2電極部34b及び第1導体部32c、第2導体部34c幅は、第1電極リード部32a、第2電極リード部34aの幅以上に長く、第1電極リード部32a、第2電極リード部34aの幅は、インク1滴の直径よりも大きい。
【0050】
このように、第1電極パターン32、第2電極パターン34のうち、第1電極部32b、第2電極部34b及び第1導体部32c、第2導体部34cはノズルから吐出された液滴よりも大きいため、複数のノズルのうちの幾つかが目詰まりした場合でも、目詰まりしていないノズルから吐出された印刷材料によって形成される第1電極リード部32a、第2電極リード部34aによって第1電極部32b、第2電極部34b及び第1導体部32c、第2導体部34cが確実に接続され得る。
なお、第1電極リード部32a、第2電極リード部34aはノズルから吐出された液滴よりも大きいことが好ましい。この場合、複数のノズルのうちの幾つかが目詰まりした場合でも、目詰まりしていないノズルから吐出された印刷材料によって形成される第1電極リード部32a、第2電極リード部34aによって第1電極部32b、第2電極部34b及び第1導体部32c、第2導体部34cがより確実に接続され得る。
【0051】
また、ここで、上述した第1電極パターン32及び第2電極パターン34は、溶媒としてのブチルカルビトールアセテートに対して、金属、金属酸化物、バインダ、分散剤などを含有させた液状の印刷材料(インク)を用いて印刷される。既述した構造のガスセンサ素子20は、図2に示した導体パターンの形成方法によって、例えば、酸素濃度検出セル24の固体電解質基板33上に導体パターンが印刷されていることで、内部の電気的な接続信頼性を向上させることができると共に高い生産性を期待できる。
【0052】
以上、実施の形態を具体的に説明したが、本発明は、この実施形態にのみ限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。例えば上述した実施形態では、ガスセンサに搭載されるセル基板などに対し、導体パターンを印刷する態様を例示したが、これに代えて、例えば半導体関連部品のパターン形成などにおいて、本発明の導体パターンの形成方法を適用してもよい。また、第1導体部及び第2導体部を矩形状に形成した態様を例示したが、これに限るものではない。例えば、小判状等、種々の形態をとり得る。
【0053】
また、上記実施形態では、基板上に形成すべき導体パターンの長手方向に沿って、基板と印刷ヘッドとの相対的な位置を移動させるために、基板の位置に対して印刷ヘッド側を移動させてパターン印刷を行うものであったが、これに代えて、印刷ヘッドの位置に対して基板側(基板を支持する支持部材など)を移動させ、これにより、導体パターンの長手方向に沿ってパターン印刷を行うようにしてもよい。
【0054】
[実施例]
次に、本発明の実施例を、図1〜図3及び図5並びに下記の表1に基づいて説明する。ここで、図5は、実施例1、2の方法及び比較例1、2の方法によって、所定の基板上にパターン印刷される対象の導体パターン90を示す平面図である。この導体パターン90は、図5に示すように、所定のピッチPを空けて、長さLが50mm、幅Wが1mmの6本のパターンである。
【0055】
実施例1、2及び比較例1、2では、図1に示した導体パターン形成装置1を使用し、また、液状の印刷材料としては、溶媒としてのブチルカルビトールアセテート66質量%に対して、金属として白金を28質量%、金属酸化物としてジルコニアを4質量%、バインダを1質量%、分散剤を1質量%含有させたものを用いた。但し、表1に示すように、印刷ヘッド(インクジェットヘッド)は、ノズル数が10個、ノズルピッチが508μmのものを共通に使用した。また、実施例1及び比較例1では、図2、図3に例示したように、印刷ヘッドを主走査方向に対して角度θ傾けて、パターン印刷のドットピッチ(解像度)を100μm(254dpi)に調整した。一方、実施例2及び比較例2では、印刷ヘッドを傾けて、パターン印刷のドットピッチ(解像度)を50μm(508dpi)に調整した。
【0056】
さらに、表1及び図2に示すように、実施例1、2では、印刷工程において、所定の基板上に形成される導体パターン90(7)の長手方向Rに沿って、パターン印刷をE方向に行った。一方、比較例1、2では、印刷工程において、表1及び図3に示すように、所定の基板上に形成される導体パターン90(7)の長手方向Rと直交するF方向に沿って、パターン印刷を行った。実施例1、2及び比較例1、2による各パターン印刷の結果を下記表1中の印刷時間の欄に示す。
【0057】
【表1】

【0058】
上記の表1に示されるように、導体パターンの長手方向と直交する方向に沿ってパターン印刷を行った比較例1、2と比べて、導体パターンの長手方向に沿ってパターン印刷を行った実施例1、2は、半分以下の印刷時間でパターン印刷が完了することを確認できた。つまり、比較例1、2では、図3に示すように、導体パターンの長手方向と直交する方向へ、複数回にわたって繰り返し印刷ヘッドを走査させてパターン印刷を行う必要がある。一方、実施例1、2では、図2に示すように、導体パターンの長手方向に沿って印刷ヘッドを走査させるため、印刷ヘッドを一方向(主走査方向)に走査させる回数を実質的に低減でき、これにより、印刷時間の短縮化を図れることが明らかになった。
【符号の説明】
【0059】
1…導体パターン形成装置、3…基板、5…印刷ヘッド、7,90…導体パターン、7a…リード部、7b…第1導体部、7c…第2導体部、8…ヘッド移動機構、9…ステージ移動機構、24…酸素濃度検出セル、32…第1電極パターン、33…固体電解質基板、34…第2電極パターン。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
長手方向に延びる基板と、
該基板上であって、該長手方向先端側に形成された第1導体部、及び長手方向後端側に形成された第2導体部、並びに、前記第1導体部及び前記第2導体部を繋ぐ長手方向に延びるリード部を備える導体パターンと、
を有する導体パターンの形成方法であって、
前記長手方向に沿って、インクジェット方式でノズルから液滴を吐出して少なくとも前記リード部を形成する印刷工程を有し、
前記第1導体部及び前記第2導体部は、少なくとも前記液滴よりも大きいことを特徴とする導体パターンの形成方法。
【請求項2】
前記印刷工程では、前記導体パターンの長手方向に沿って、前記基板と印刷ヘッドとの相対的な位置を移動させることを特徴とする請求項1記載の導体パターンの形成方法。
【請求項3】
長手方向に延びる固体電解質基板と、
該固体電解質基板上であって、該長手方向先端側に形成された電極部、及び長手方向後端側に形成された導体部、並びに、前記電極部及び前記導体部を繋ぐ長手方向に延びる電極リード部を備える電極パターンと、
を備えるガスセンサ素子の製造方法であって、
前記長手方向に沿って、インクジェット方式でノズルから液滴を吐出して少なくとも前記電極リード部を形成する印刷工程を有し、
前記電極部及び前記導体部は、少なくとも前記液滴よりも大きいことを特徴とするガスセンサ素子の製造方法。
【請求項4】
前記電極部及び前記導体部の長手方向と直交する長さは、少なくとも前記電極リード部の長手方向と直交する長さ以上に長いことを特徴とする請求項3記載のガスセンサ素子の製造方法。
【請求項5】
前記導体部は、前記ガスセンサ素子の表面上に設けられた電極パッド、もしくは前記電極パッドと前記電極リード部とを接続する、前記ガスセンサ素子に設けられたスルーホール導体であることを特徴とする請求項3または4記載のガスセンサ素子の製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2013−101090(P2013−101090A)
【公開日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−253391(P2011−253391)
【出願日】平成23年11月21日(2011.11.21)
【出願人】(000004547)日本特殊陶業株式会社 (2,912)
【Fターム(参考)】